今週の範馬刃牙 SON OF OGRE 301話〜最終話(312話)

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2012年5月24日(26号)
第3部 第301話 肩車 (960回)

 長かった範馬家の親子喧嘩も、そろそろクライマックスだ。
 本当にクライマックスらしいですよ。
 そういう情報を何度も聞いています。
 また、ここから長くなるかもしれないという不安もありますが。

 烈からパクった転蓮華が不発して刃牙は勇次郎に肩車しているような状態になった。
 幼年編のときは おんぶだったので、レベルアップしてより上昇したと言えるのかも。(G刃牙19巻 167、168話)
 勇次郎にしてもらった初めての肩車だった。
 刃牙は感動する。

(範馬勇次郎の頭蓋骨……)
(こんなふうに…)
(触れるのは…)
(初めてだ)

(温けぇや…………)


 肩車で頭蓋骨に感想がいく人を初めてみました。
 勇次郎の頭蓋骨は今回のトビラにもなっている。
 周知のとおり、勇次郎の頭蓋骨は鬼のような異形をしているのだ。(26巻 211話
 刃牙の鬼脳に負けない変態度がある。(23巻 184話

 さわったことで刃牙は頭蓋骨の異常性に気がついただろうか?
 戦っている最中だから、あまり重要じゃない情報だけど。
 頭蓋骨にふれたことに感動していて、形状とかどうでも良くなっているっぽい。

 刃牙は、梢江とキスしたときに頭をガッと掴んで内心思ったんだろうか?
 (梢江の頭蓋骨……、こんなふうに触れるのは初めてだ)
 だとしたら、どんだけ頭蓋骨フェチなんだろう。

 で、刃牙の感想その2が(温けぇや…………)だ。
 勇次郎は体温高そうだしな。
 平熱で華氏100度ぐらいありそうだ。(迫力重視の温度単位)
 刃牙の睾丸が高熱で機能障害を起こさないか心配だぞ。

 勇次郎も刃牙を肩車するのが楽しいらしく、ズチャリ ズチャリと歩いている。
 範馬勇次郎が肩車の時間を引き延ばすように円を描いて歩く。
 さりげなく梢江から離れたのは、梢江への気づかいか。
 それとも、もう梢江にジャマされたくなかったのかも。
 範馬勇次郎すら逃げだす雌、それが松本梢江だ。

 円を描いて二人で散歩って、勇次郎が郭海皇と戦う前に車椅子を押していた時ににている。(バキ26巻 226話
 郭海皇は武の最高峰だ。勇次郎も敬意を払っていたのだろう。
 だから父のように接していたのかも。
 で、刃牙にはまさに息子のように接している
 普通に息子あつかいされたは初めてだろうか。

(…………… なんて夜だ……………)

 刃牙は18年の人生で得た技術をすべて使用したようだ。
 勇次郎はすべて受け止めてくれた。
 さらに頭蓋骨おさわりの特典(サプライズ)まである
 刃牙は大満足だ。

 って、刃牙はもうネタ切れなのか?
 引き出しは空っぽ状態で、やりきって満足しちゃっている。
 まだ決着がついていないのに達成感が生まれちゃったのか?
 う〜む。この状態は負けるぞ。

 さらに、刃牙は当初の目的というか喧嘩のキッカケを忘れているっぽい。
 喧嘩の原因は「なんで親父はお袋を殺したの」という刃牙の疑問だ30巻 250話
 回答も無いのに、刃牙は満足しきっているみたいだけど、イイのか?
 でも、コレで良さそうな感じだよな。
 真の目的は父と仲良くなることだから、大局的に見れば問題解決ですね。

 静かな親子の語らいが終わろうとしていた。
 話すまでもなく、二人とも再スタートを感じている。
 まるで夢枕獏作品のような無言とあいづちだけで進む会話だ。
 よっぽど仲が良くないとできない暗号のようなやりとりですな。

『それぞれが』
『それぞれに』
『宴の終了(おわ)りを予感し………』
『覚悟していた』


 勇次郎が刃牙の足を外す。
 刃牙は勇次郎の背後におりたった。
 目の前にあるのは無防備な父の背中だ。
 刃牙は迷わずジャーマン・スープレックスで勇次郎を投げる。

 合図もなく戦闘再開だ。
 ここまで言ったのだから、今度こそ決着が近いのか。
 刃牙の容赦ないジャーマン・スープレックスで勇次郎は後頭部をモロに地面に打ちつける。
 受身を取っていない。
 コンクリートの地面が砕けた。
 だが、勇次郎は余裕だ! どんな頭蓋骨しているんだよ!?

「はは……」
「こらこら…………」
「イカンな…」
「俺とて辛い」
「継続(つづ)けたいのだ」
『何にだって終わりがある……』


 刃牙の右フック、右ボディーアッパー、左上段廻し蹴り、すべてノーガードで受けた。
 やはり勇次郎の耐久力は尋常じゃない。
 刃牙が勇次郎に追いついたような気がしたが、絶望的な差がまだ残っている。

 範馬勇次郎にとって初めて全力で戦う事ができた相手が息子だった。
 全力をふるう喜びを、生涯はじめて味わう。
 だが、楽しい時間も終わりだ。
 範馬勇次郎は倒すための全力攻撃にうつる。

 ノーガードだ。
 防御に両腕を使わないので、即攻撃できる。
 花山薫の構えと同じコンセプトだ。
 刃牙のハイキックを顔で受けつつ、勇次郎が反撃した。

 両手で相手の耳を同時に打つ。
 試合では許されない危険な技、鼓膜打ちだ。
 打ったさいの空気圧で鼓膜を破る。

 双手鼓膜打ちは、かつて勇次郎が愚地独歩を仕留めるさいに使用した技だG刃牙7巻 61話)
 実際は仕留めきれず目をえぐり、鬼哭拳を出した。
 それでも仕留めたつもりになるほど信用する技なのだろう。

 もう一つ。
 双手鼓膜打ちは、朱沢江珠を殺害する際にも使われた技だ
 江珠の金的蹴りに反応して出している。勇次郎もキンタマはNGなのだろう。(G刃牙20巻 172話)
 鼓膜打ちから、折れるほど抱きしめて江珠を殺した。
 刃牙にも同じパターンが待っているのだろうか?

 今度こそ本当に決着がつきそうだ。
 刃牙は母・江珠と同じ運命をたどるのか?
 それとも勇次郎を抱き返して倒すのか?
 祖父も見守る親子対決、決着が近い。
 次回につづく。


 さすがに、このヒキは決着寸前でしょう。
 江珠が死ぬときと同じ状況だ。
 刃牙の問い「なんで親父はお袋を殺したの」ってヤツの答えが身体に刻みこまれる。
 本人は忘れかけているかもしれないが、勇次郎が解答する気だ。

 チョット残念なのは、この状況が江珠の死と同じだと知っている人間が刃牙しかいないことだ。
 ストライダムか栗谷川さんがいれば「コノ状況ハッ!?」「お、奥さまッッ!」とか言って盛り上がるのに。
 なんでも知っているオリバでも、さすがにコレは知るまい。

 刃牙と勇次郎の決着をかざるのに相応しすぎる。
 だが、それを知る者がいない。
 最高の美酒があるのに、器が貧相な感じだ。
 キャプテン・ストライダム、今からでもいいから出てこないかな。
 実はピクルがニセモノで中からストライダムが出てきてもいいんだけど。

追記 (12/5/30)
 掲示板で指摘を受けたのですが、勇次郎は郭海皇にも双手鼓膜打ちを使用(つか)っている。(バキ27巻 237話
 と言うわけで喰らった人間は……
・ 愚地独歩 → 死亡(その後、鎬紅葉により蘇生)
・ 朱沢江珠 → 死亡
・ 郭海皇 → 死亡(死んだフリ。その後、自力蘇生)

 死亡率100%だ!
 これはキビシい。
 たとえ刃牙であっても心拍停止は覚悟したほうが良さそうだ。
 もっとも刃牙なら自分で心臓に打震をして自力で復活とかしそうだけど。
 そして、死にかけたことでナニかを掴んでさらにパワーアップだ。

 とにかく、現在の刃牙はいつ『範馬刃牙・完!』になってもおかしくない状態にある。
 本当に最終回が近づいているのだ。

 板垣作品の最終回と言うと……
 『メイキャッパー』『餓狼伝BOY』などを見ると、未来に続くって感じに終わることが多い。
 『グラップラー刃牙』や『バキ』の最終回も同じような感じだ。

 読みきりの『メイカー』や『MARIA』、自衛隊物は、クライマックスで終わると言う感じがある。
 イチバン良いシーンを描いちゃえば、あとは蛇足という主義なのかもしれない。
 ならば『範馬刃牙』は、勇次郎を倒して『勝ったぞ!』と腕を上げたところで、完! かもしれない。
 逆に、「やっぱ親父が地上最強だ……」完! になるかもしれないけど。

 とにかく、今度こそ最終回が近づいている予感がある。
 夏本番になる前に、決着だろうか?
 そして、烈海王のボクシング挑戦と、第二回最大トーナメント(?)の外伝が始まるのだろう。
 ドカベンがオリジナルキャラを優遇しまくる『ドリームトーナメント編』を開催するんだから、俺もやったる!ってところですね。

 しかし、徳川さんは地上最強の親子喧嘩(融和)を見たんだから、満足しちゃって最大トーナメントはいらないと言い出したりしないだろうか?
 というか、親子喧嘩(融和)の大興奮でガン細胞が溶けて尿と一緒に出ましたとかで回復していたりして。


2012年5月31日(27号)
第3部 第302話 壁画が表すもの… (961回)

 双手鼓膜打ちが刃牙に決まった。
 範馬勇次郎がトドメをさす前に多用する技だ。
 強烈な風圧で鼓膜が破れる。
 刃牙の耳穴から血がッッ!

 さらに三半規管へのダメージもあるだろう。
 聴覚と平衡感覚を奪われることで、一瞬無防備にならざるを得ない。
 そこに必殺の一撃を撃ちこむ作戦なんだろうな。
 つまり、鼓膜打ちを喰らった今、刃牙の余命はのこり数ページか!?

『森羅万象 諸行無常』
『全てに終了(おわ)りがある』


 母・朱沢江珠の死に様が、勇次郎の鼓膜打ちをうけた刃牙の脳裏に浮かぶ。
 もう走馬灯を見ているのか?
 死に際の集中力と言うか、死に際そのものだよ。

 だが、刃牙が見ている走馬灯は江珠が死ぬ前の状態だ。
 江珠が死ぬのは、その後の抱きしめである。(G刃牙20巻 172話)
 ってコトは、刃牙もハグされるまで死なないかも。
 ハズされる前に脱出するんだ!
 というか、両手ではさまれた刃牙の顔がオモシロいことになっている。
 この顔は勇次郎と読者だけの楽しみだ。


 そのころ、エジプトのピラミッドでは、クリス教授が……
 って、この話つづいていたのか!
 34巻283話で初登場したエジプトのハンマ壁画だ。

 その後で範馬勇一郎が出てきちゃったから、インパクトで負けて忘れかけていた。
 また出てくるとは思わなかったぞ。
 この伏線はどこまでつづくのだろう。
 エジプトから範馬一族が日本に来たとなると、その経路を描けば壮大な物語になる。
 スタートのエジプト範馬から、中東範馬、インド範馬、タイ範馬と続きそうだ。

 決着が近いとか言ってんのに、話をエジプトに戻しちゃって大丈夫なのか?
 古代ミイラの範馬がよみがえって襲ってきたら収集がつかなくなるぞ。
 範馬・オブ・ザ・デッドだよ。

「見たまえ君たち」
「絵物語だ」
「壮大な一大絵巻なのだよこれは」


 新手の壁画は、二人の範馬が対峙する図だった!
 これはワイルドターキーを鼻から噴く。
 なんで、親子対決がエジプトでも描かれているんだよ。
 超時空的なナニカで未来予知したのか!?
 それとも、エジプト範馬も親子喧嘩したのか!?

 クリス教授の解釈では、この二人は悪魔(デビル)親子だ。
 父悪魔(デビル)の背後には多くの人がいる。
 まるで現在の親子対決みたいだ。
 本当に予知……なんだろうか。

「実に変化(バリエーション)に富んでいる」
「人種も」
「性別も」
「年齢も」
「一見 部下に見えるこれらの群れだが……」
「或いは彼父親悪魔(デビル)を讃える存在なのではないだろうか」


 多彩な人種ってコトはやっぱり場所はエジプトですか。
 古代エジプトでも範馬の親子喧嘩があると聞いてあちこちの国から見学者がきたのだろう。
 父親の背中にだけ見学者がいるってのが、実力と知名度の差なんだろうな。
 古代から範馬は喧嘩して代替わりをしていたのだ。

 いや、もしかしたら現代日本の姿を予知しているのかもしれない。
 日本人の容貌はけっこうバリエーションに富んでいる。
 海外生活経験のある人から見ると、まるで多民族国家みたいだと思われているらしい。(『生物と無生物のあいだ』『99.9%は仮説』のどっちかで読んだおぼえがあるが、見つからなかった。後で再チャレンジ)
 映画『テルマエ・ロマエ』では、濃い顔の日本人にローマ人を演じさせていた。アントニヌスとルクス(ルシウスの友)は現地の人だと思って気がつかなかったぐらいだ。
 また、DNAの観点から見ても日本人は世界でも珍しい多様性をもっていることがわかっている。(DNAでたどる日本人10万年の旅

 人の行動範囲が短いであろう古代エジプト人からみたら、現代日本人は超多民族国家に見えるかもしれない。
 顔の平たい族から顔の濃い族まで幅広くいる。
 でもって、範馬一族すら受けいれる懐の深さがあるのだ。
 日本人がサブカルチャー好きなのも、この懐の深さが原因なのかも。

 この壁画がナニを意味するのか、ハッキリとはわからない。
 そして、この壁画が現在の親子喧嘩に影響するのかどうかもワカりません。
 意味があるようで、とくに意味のなかったエジプト範馬であった。
 まあ、インパクトがあったからイイか。


 そして、舞台は日本にもどる。

「聴覚のないまま」
「聴こえぬまま聞け」


 刃牙の顔をワシ掴みしたまま勇次郎が言う!
 このムチャぶり、さすが勇次郎だ。
 自分で鼓膜やぶっといて、聴こえないだろうけど聞けときたよ。
 シビれるほどのワガママっぷりだ。

 人間は鼓膜以外にも骨伝導で音を聞いている。
 刃牙の頭蓋骨をつかむ勇次郎の手から、音が届いているのかもしれない。
 耳の聞こえない人でも相手の口に触れることで声を感じることができる。(最新脳科学でわかった五感の驚異
 刃牙なら勇次郎の声を感じることができるだろう。

 もっとも、勇次郎なら迫力で言葉を伝えているかもしれない。
 勇次郎なら、言葉の通じない相手だろうと迫力で説教するだろう。
 刃牙も勇次郎の迫力に聴こえない耳で聞くしかあるまい。

「大将スンマセン」
「これ以上は進めません」
「蹴ちらしましょうか」

「いや」
「ここでいい」

 花山薫と芝千春が喧嘩祭りに到着した。
 けっきょく着たのかよ!
 親子喧嘩は家庭の問題だからと遠慮していた花山だった。(34巻 281話
 しかし見たい欲求には勝てず、来てしまったらしい。
 それでも遠慮して遠くから見守るのが喧嘩の美学だ。

 もうちょっと早く到着すれば刃牙が鼓膜打ちをくらう歴史的瞬間を目撃できたのに。
 解説が足りない!
 もっと、本部的な誰かをッッ!

 刃牙を応援する友も到着した。
 確実にフィナーレが近づいている。
 ……と思うのだが、エジプトのせいですこし遠ざかったかもしれない。

「今から成すこと」
これまでの継続(つづ)きではない」
「ましてや」
「開始(はじ)まりでもない」
「これを以て〆とする」
『これを以て終了(おわ)りとする』


 勇次郎が改めて宣言した。
 今までやっていた喧嘩(融和)ではない。
 そして、始まりでもないそうだ。

 なんか禅問答みたいなコトを言いだしたぞ。
 鬼の親子喧嘩はむずかしすぎる!
 いや、もう親子喧嘩じゃないのか。
 殺し合いの始まりでもない。
 ただ、終了するのみ、だ。

 これから訪れる決着はどんなモノなのか?
 それは刃牙の死かもしれない。
 逆に刃牙が勇次郎を殺すのかも。
 範馬が最強であるために、最強の前任者を殺すことが必要なのか?
 勇次郎も勇一郎を殺していたりして。

「小指から」
「こう……」
「順に……」


 勇次郎は刃牙の手をとり、拳の握りかたを教える。
 小指から順番ににぎっていく。
 空手などで基本となる正拳の握りかただ。

 正しく握った拳で俺を殴れとでも言うのだろうか?
 本当に親殺しが範馬の決着だったりして。
 いや、勇次郎は公平を期して、同時に殴りあって生きているほうが勝ちとしたいのかも。

 どちらにしても、決着が近づいている。
 だが、エジプトのせいで遠ざかっているかも。
 二つの意味で、この戦いはどうなる!?
 次回につづく。


 エジプトの壁画につづきがあれば、古代と現代の親子対決が同時に決着つきそうだ。
 刃牙と勇次郎、どちらかが死ぬのか?
 それとも、二人とも……
 不吉な予感が消えない。

 とりあえず、勇次郎はてこずったことがないと言っていた。(294話
 だから、範馬勇一郎と戦ったことがないのだろう。
 さすがに勇一郎は簡単に倒せまい。正直、刃牙より強そうに見えるし。
 つまり、勇次郎は勇一郎を殺していない

 そう考えると、勇次郎が刃牙の手で死ぬことを望んでいるってのは、たぶん間違いだろう。
 ならば、同時攻撃で試し合いする気だろうか?
 花山薫と芝千春というプリキュアに混じっても違和感のない名前の二人がやってきた。
 防御よりも攻撃を優先する二人が到着したのは偶然だろうか?
 終了(おわ)りはノーガードの殴り合いか?

追記 (12/6/6)
 今度こそ親子対決に決着か!? って、コレ言うの何回目だ?
 なんか、ココ最近の引きが寸止めすぎて、暴発しそうです。
 もう、ひとおもいに楽にしてくれ。

 マガジンでは『さよなら絶望先生』が最終回間近で超展開の連続だ。(参考:ヤマカム:絶望先生関連の記事
 刃牙もこのあと、超展開がまちかまえているのだろうか?
 初めて敗北を知った勇次郎が「実は、オマエは俺の子供じゃない」と『タフ』みたいなことを言いだすとか。
 いや、刃牙でそれやると話がムチャクチャになるな。

 やっぱり超展開ならば、刃牙の異母兄弟やら勇次郎の異母兄弟やらが大量に出てきて終わりだろう。
 通常の人間よりはるかに強い範馬が1000人もいたら、地球の生態系が乱れてしまうにちがいない。
 刃牙に課せられた使命は人類を守るため、心を鬼にして同族を狩ることだ。
 人間にバケモノ扱いされ、一族の裏切り者と呼ばれながら、戦う鬼狩りの刃牙編が始まるのだった。

 ……などという悲壮な中二病感あふれる展開は刃牙らしくない。
 刃牙のコンセプトモデルとなったのは平直行選手だ。
 シュートの選手なのに空手の大会に出場しちゃうようなムチャをやり、悲壮感のない明るいキャラクターが現代的で良いと板垣先生がモデルにした。

 つまり、刃牙はゆとり主人公である。
 昔ながらの、つめこみ式の修行はしないで、自分らしさを演出した、成果主義の主人公だ。
 刃牙も、ゆとり教育問題のひとつだったのだッ!

 勇次郎と刃牙の対決って、熱血漫画的な頑固親父 VS. ゆとり息子だったんですね。
 こりゃ、ゆとりが勝てると思えない。
 いや、ゆとりだから勝てるのか?


2012年6月7日(28号)
第3部 第303話 拳に込めるモノ (962回)

 地上最強の親子喧嘩もそろそろ決着が近い。
 近いのはワカるのだが、どれぐらいで着くのかがワカらん。
 駅のすぐそばと言う物件だけど、坂道があって体感的に長距離みたいなモノかもしれない。
 徒歩10分と言いながら踏み切りと信号につかまらなければという但し書きがあるような感じだ。
 ココ、本当に近いんですか?

 とにかく、勇次郎は「これを以て〆とする」宣言をした。
 そして、刃牙に拳の握りかたを教える。
 最終決着はシンプルにしてディープな、拳決着か!?
 策も術も技も使わず、ただ殴りあう。
 地上最強の肉体と言う素材のよさをイカすには、よけいな手を加えないほうがイイってことだ。

 そして、回想シーンに突入するッ!
 言ってるそばから、ゴールが遠ざかった。
 光速に近い速度では時間がゆっくり流れるよ。
 決着に近い展開でも時間がゆっくり流れるのだ。

『この世で一番優れた道具だ』

 範馬勇次郎の言う『この世で一番優れた道具だ』とは、人間の手だった。
 手が優れた道具なのは認めるが、一番じゃなかろう。
 そもそも手の機能を拡張するためにつくられたオプションが道具だよね。
 というのは一般論だ。
 たぶん勇次郎が伝えたいのは、人間の偉大さなのだろう。

 五本の指を器用に動かし、つかみ、すくい、保持し、たたく。
 人間の手はあらゆる動物のなかでもっとも汎用性の高い器官だろう。
 手じゃできない事をやるために道具を作ったけど、その道具を使うのは手だ。
 やっぱ、人間最高ってコトですね。

 進化の歴史や文化史は置いといて、こういう人間賛歌が勇次郎の思想なのだろう。
 でも、技術とかには否定気味だ。純粋な肉体大好き派なんだろうな。
 だから、動物 虐待 を素手で狩ることで、人間の肉体の優位性を見せつけている。
 まあ、狩りは趣味と言うか、単純に好きなだけなんだろうけど。

「そして」
「言わずもがな」

「が……な…」


 勇次郎が話しているのは、本当に子供の刃牙だ。
 小学生前ぐらいだろうか?
 そんな子供に対しても「言わずもがな」と言ってしまう勇次郎、容赦なしッ!
 理屈や知識で理解しようとするな。迫力を感じとれいッ!
 ってところですかね。

 意味がよくワカらない刃牙を置いといて、勇次郎は容赦なく進む。
 超スパルタ教育だ。
 さすが、『ボクの格闘技修行は、父にコンクリートに叩きつけられるところから始まりました…………』というだけある。(G刃牙4巻 31話)
 え、じゃあ今回のエピソードはコンクリートに叩きつけられた後なのか?

 いやいや。今回みたいな学習は修行のうちにはいりません。
 バナナがおやつに入らないようなものですよ。
 あれ、バナナはおやつだっけ?
 とにかく、痛みのともなわない練習は修行じゃないってのが範馬の考えなのだろう
 マゾになるワケだ。

『武器になる』
「ハンマーとなり刃となり」
「槍となる」


 手は武器だ!
 って、刃や槍はかなり難易度高いぞ。
 打撃だけじゃなく、つかんだり、絞めたり、さばいたりと言った使用法も教えてほしい。
 ひっかきとか、つねるのって女子供の攻撃と言われるけど地味にダメージ高いので護身術で教える事もある。

 二足歩行と言う肉体を選択した人間にとって最大の武器は牙でもツメでもなく、手そのものだ。
 まず、勇次郎はハンマーの造りかたを教える。
 範馬だけにハンマー……

 小指から握るのは空手なんかと同じだけど、その先がちがう。
 これは範馬流なんだろうか?
 それともボクシング流か?
 空手とボクシングだとグローブの有無があるので握りかたに違いが出ることはワカる。
 勇次郎は素手での戦いを想定しているので、拳を痛めないように握りこむタイプを教えると思うのだが。

「何を握った…」
「力だ」
「力を掴むのだ」
「掴んだ力を打ち込むのだ」

(人類最古にして最良の武器)
(それが拳だ)


 力を握りこむのが拳だ。
 そして、つかんだ力を打ち込む!
 力だけでなく、気持ちも込めている。
 牙もツメも持たぬ人間の武器は、拳だ!

 拳が最古の武器ってのは違うと思う。
 人間の拳は弱いから殴ると手を傷める。これは生物学的な弱点だ。
 手はモノをつかみ・使うようにできている。
 やっぱ、最古の武器は石器だろう
 石器をもつ前は、貧弱ながらツメを使っていたんじゃなかろうか。

 ただ、石器をもった後の人間が裸で戦うときの武器は拳だったかもしれない。
 そういう意味では人類最古の武器というか闘法だ。
 人類は格闘技を手に入れた。

 なお、化石からワカる人類進化の順番は次のように言われている。(人類進化の700万年
『700万年前〜 直立二足歩行・犬歯の縮小
 400万年前〜 歯のエナメル質の厚み増大?(根など硬い食べ物に適応)
 250万年前〜 石器の作製・脳の大型化が始まる
 200万年前〜 体毛の喪失?』

 人類がまず立って手を開放し、牙を失ったことがわかる。
 ……そうなると、拳が最古の武器であっている気もするけど。
 いやいや、やっぱり人間の拳は貧弱だから、それは無いだろう。

 とにかく、拳を武器化したのは石器の後ぐらいだと仮説をたてる。
 まだまだ全身モジャモジャの時代だ。
 でも脳は大きくなっている。
 知性をもった人間が、力を掴み拳をつくる。

 拳は人間をかたちづくる精神が生みだした技なのかもしれない
 人は祈る時にも手をにぎる。
 呪術的な感じで力や思いがこめられた武器が拳なのだ。

(構えには拘るな)
(拳の配置は)
(肉体(からだ)に訊け)

(防御の一切を忘れろ)
(重心を前足 拇指球へと集めろ)
(打ち込むことだけに集中しろ…)
(その他一切を濁りとしろ)
『己の全存在を乗せた"拳"は全てに勝る』
『通用するもしないもない』
『思う必要すらない』
『"強さ比べ"ってな そういうもんだぜッッ』


 教えかたが、思想が、あまりにも範馬勇次郎だ。
 細かいコトは言わず自然体になれ。
 でもって、攻撃に集中しろ!
 防御を考えるな!

 肉にすべてゆだねて、攻撃に集中する。
 護身術だと落第になる理論だけど、それが範馬流なのだろう。
 不純物がなく透明に澄みきった肉による攻撃だ。

 範馬勇次郎の"強さ比べ"は、まさに肉の比べあいだ。
 焼いたり調味料をかけたりしない。
 生肉オンリーの対決である。
 厚生労働省の規制もブッ飛ばす究極の肉対決だ!

 息子・範馬刃牙の若い究極の肉が上か?
 父・範馬勇次郎の熟成した至高の肉が上か?
 ノーガードで今、親子が殴りあうッ!
 まちがいなく決着が近い!

 己の全存在を乗せた"拳"は全てに勝る。
 刃牙と勇次郎というものを根こそぎ使って根こそぎ比べあおう。
 俺とおまえの――――
 どっちが上か!!?


「大将……」
「あと10列くらいだと思いますが………」
「どうしましょう」
「蹴ちらしましょうか」

「イヤ…」
「ここでいい」


 そのころ、花山薫と柴千春は前回と同じようなやりとりをしていた。
 花山さん「ここでいい」と言いながら、けっこう進んでいますね。
 べ、別に前で見たいなんて思ってないんだからね。ここでいいって言ってるでしょ!
 って感じのツンデレさんですか?
 ということは千春は花山の秘めたる思いを組んで前進したってことだ。
 忠臣の鑑ですね。

 立川談志は弟子の心得を次のように言った。
「前座の間はな、どうやったら俺が喜ぶか、それだけ考えてろ。患(わずら)うほど、気を遣え。お前は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ」(赤めだか
 千春は惚れた相手に死ぬ気で尽くしている。
 実際、蹴ちらしていないのは、花山が見たいけどカタギに迷惑かけたくないと思っているからだろう。

 二人がディズニーランドに行ったら、列に並ぶたびに同じような会話をしそうだ。
 で、千春が花山の心を察してミッキー帽子とか買っちゃう。
 路上にいるミッキーもムリヤリつれてきて強制写真撮影だ。
「大将、真ン中へどうぞ」
「いや、ここでいい」
 なので、千春とミッキーが移動して花山を真ン中に変える展開が予想できる。

 刃牙と勇次郎が最後の打撃戦に入ったっぽい。
 決着がつく前に千春は花山を最前列に移動させることができるのか!?
 急がず、人に迷惑をかけず、人ごみをつらぬけ、巖駄無(ガンダム)ッ!
 次回につづく。


 こりゃ決着間近っぽい。
 だが、ここからどれだけ時間が必要なのだろうか?
 刃牙とオリバの戦いは殴り合いだけで1話つかったことがある。(10巻 75話
 相手が勇次郎なら、3話ぐらい使って殴りあいそうだ。

 そうなれば、花山と千春は1話につき3列ぐらい突破すれば間に合う。
 到着と同時に決着だ!
 その時、二人が眼にした衝撃の光景とはッ!
 などという展開がありそう。

 どちらにしても、出口が見えてきた。
 扉のむこうに、どんな景色があるのかワカらない。
 だけど、進む方向がハッキリと見えた。
 でも、距離感がつかめません。
 刃牙世界は迫力によって大きく見えたりするんで遠近感が狂いがちなのだ。

追記 (12/6/13)
コミックナタリー - 板垣恵介が「バキ」トーク、あと10回以内で連載終了を宣言
最後に刃牙と勇次郎の親子喧嘩について、板垣は「決着のイメージはまだない。どちらが勝つかすらもわからないが、僕の計画ではあと10回以内で終わる」と、なんと「バキ」の完結を宣言。だが「まだまだ描きたいことはたくさんあるし、『バキ』は実家のようなものだからまた戻ってくる」と、インターバルを空けて再び「バキ」を描くことを明言し、トークを締めくくった。

 花山の外伝『創面』がリフレッシュスタートした新創刊・別冊チャンピオンの創刊イベントで、板垣先生が刃牙はあと10以内で終了を宣言した。
 勇次郎との親子喧嘩に入る前後から、これでいったん最終回という話は出ていたのでそれほどオドロかない。
 だが、あと10回以内ってのはビックリしたぞ。

 たしかに最近は決着が近いを連呼していた。
 このまま1年もつづいたらサギだよな。
 10回以内とは短い。
 だが、10回と言えばコミックス約1巻分だ。
 最短打ち切りされた作品が出したくても出してもらえなかったコミックス1巻分の内容になる。

 たとえば明日で最終回となる『ちぐはぐラバーズ』なんて14話しかなかったワケだ。
 もっとも刃牙の場合だと、これから2〜3話ぐらい殴りあうだけの展開がありえますが。
 1991年の連載開始から21年ッ!
 どのようなラストが待ちかまえているのだろう。

 で、ちょっと休んでから烈のボクシングと、新地下闘技場編の開始ですね。


2012年6月14日(29号)
第3部 第304話 比較(くら)べっこ (963回)

 己の全存在を乗せた"拳"は全てに勝る!
 範馬刃牙と範馬勇次郎の親子は全存在を拳に乗せて殴りあう。
 会話よりも、セックスよりも、深く理解(わか)りあうコミュニケーションだ。
 長い断絶があった親子関係を修復するかのように、刃牙と勇次郎がすべてさらけ出して殴りあう。

 ノーガードのまま、全力の打撃だ。
 これはオリバ戦やピクル戦のクライマックスとおなじ展開である。10巻 75話22巻 180話
 闘争が極まってきた。やっぱり決着が近いのか。
 刃牙と勇次郎の拳は同時に顔面に当たった。
 そして、反動で2人はフッ飛ぶ。

『拳骨が』
『顔面を打つその音は――』
『今宵 2人が放った 一番大きな音だったろう』


 反動で数歩後退し、踏みとどまる。
 崩れた体勢を立てなおし、スルドく踏みこんだ第二撃が、またも同時に激突だ。
 まるで鏡にうつった姿のように、刃牙と勇次郎はおなじフォームで殴りあっている。
 己の全存在を乗せた"拳"を打つ姿が、親子でこれほど似るなんて。
 戦いを人生の命題として生きてきた、刃牙と勇次郎は存在が似ているのだ。

 二撃でふたりの腰がくだけた。
 ダウンするか、と思われたが両者ともに踏みとどまる。
 顔面の打撃跡がまるで砲撃を喰らったかのように煙ふいているよ。
 範馬親子の打撃は爆撃の域に達したのか!?

『急所が集中する人体前面を――』
『防御をかなぐり捨て』
『刃に晒す』
『最早それは』
『武術ではなく』
『格闘技ですらなく』
『強さ比較(くら)べ』
『男雄漢(おとこ)比較(くら)べ』


 格闘技や武術とはちがう。
 もっと原始的な闘争だ。
 全力で殴り、全力を受けとめる。
 痛みとダメージに耐えられなくなったほうが負けだ。

 華麗な技や、老獪な駆け引きなど一切ない。
 より強い打撃を出したほうが有利な戦いだ。
 そして、痛みとダメージに音をあげない、強い精神力を持つものが最後まで立っている。
 まさに強さの根源を比較する『男雄漢比較べ』だ。

 男(お)ッ、雄(と)ッ、漢(こ)ッ!
 おとこくらべッ!
 なんという当て字だよ。
 これ以上なく高い雄度ッ!
 酒類のアルコール度数で言えばワイルドターキー並だ。簡単に燃えるレベルの度数だ。

 ワガママを、我が意を、通すのが強さだった。
 ならば男らしさは、苦痛に耐えてこそ男らしさだ。
 幼子でも泣きわめけばワガママを通すことができる。
 だが涙をこらえて、苦痛を耐えるのは幼子にはできまい。
 ある意味、『男雄漢比較べ』は究極のガマン大会だ!

 苦痛を避けて、相手へのダメージを最大にしようとする武術・格闘技とは正反対の精神性である。
 覚悟を決めて攻撃をうけるプロレスのような意地の張り合いだ。
 見ているだけで痛そうな『男雄漢比較べ』を範馬親子が続行(つづ)ける。
 自称ワイルドなんかじゃ出せない、天然素材すぎて頭悪そうに見える生肉食男子のぶつかりあいだ!

 終わり無き、防御も無き、打撃戦だ。
 木刀を使用し防具無しでやる剣道のような超危険行為である。
 というか、もう真剣での勝負だよな。
 いや、爆撃なみだった。
 実弾勝負だ。

 この壮絶な打撃戦に惹かれるかのように、一人の男が群集をかきわけ前に出てきた。
 中年ぐらいの黒人男性である。
 だれだ? 大統領じゃないよな。

「アレガ…」
「アレガ オーガ」


 男は涙を流し、ひざまずいて勇次郎に祈りをささげる。
 いったい、勇次郎とどんな因縁があるのか?
 というか、この人のセリフから考えるに生の勇次郎を見たのは今回がはじめてっぽい。
 彼はなぜ、あった事もない勇次郎に祈りをささげているのだろうか?

 そして、前回追記でも書いたが範馬刃牙はあと10回以内で連載終了だ。(板垣恵介が「バキ」トーク、あと10回以内で連載終了を宣言
 突然のゲストを出して、10回以内に収まるのか!?
 ここから先は、まばたきもできない。眼球が乾くのを耐える、そんな読者の『男雄漢比較べ』だ。
 次回へつづく。


 あと10回以内で範馬刃牙が終了する。
 そう言われても、なかなか本当だと思えない今週の刃牙でした。
 この期におよんでまた回想しそうなんだよな。
 うっかりベトナム時代の思い出をはじめて9話ぐらい回想しちゃうのが刃牙クオリティーってものだ。

 もっとも、範馬の親子喧嘩はきっちりと決着にむかっている。
 謎の黒人さえ出てこなきゃ、次回最終回でも違和感ないぐらいだ。
 今週最終回とコメントしていた『ちぐはぐラバーズ』が、カン違いで来週が本当の最終回って言っているが、刃牙のほうがよっぽどクライマックスですよ。
 まあ、ココまでにかかった年月がハンパないから、終わることができるんだろうけど。

 全存在をかけて競いあう『男雄漢比較べ』だ。
 乗せられるもの、賭けられるものは、全部かけるしかあるまい。
 愛犬ムサシも、彼女の松本梢江も全部賭けるんだ!
 梢江も賭ければ、……負けてもナンか得した気分になるかもしれないぞ。


2012年6月21日(30号)
第3部 第305話 闘いが停止(とま)るとき (964回)

 刃牙と勇次郎の親子喧嘩も今度こそ本当に最終局面にはいっている。
 いつだって、男雄漢(おとこ)比較(くら)べは素手でノーガードの殴りあいだ!
 気力・体力の削りあいだから、もう戦闘続行はできなくなる。
 決着が近い。

 ひとりの黒人男性が親子喧嘩を見て、ひざまずき祈りはじめた。
 なんだ、この人は?
 勇次郎の関係者なのか?
 回想空間に入ったら、3話ぶんぐらい簡単に消化しちゃうぞ。
 エンディングが近いようで遠い。

 などと心配していたら、スルーした!
 男の過去とか現在の心境とか、なんで勇次郎に祈りのポーズとるのとか全部無視だ。
 グラップラー刃牙最終話にでてきたジャックの母・ジェーンなみに流したよ。(G刃牙42巻
 ジェーンさんは約13年も放置されている(記録更新中)のですが、どんな気分なのだろう。

 黒人男性が、なぜ祈っているのかワカらない。
 だが、観客のひとりは周囲の人間に変化が起きていることに気がついた。

(なんか…)
(いつの間にか)
『外国人増えてね?』


 西欧系、中東系、アフリカ系、アジア系と人種のバリエーションが増えている!
 そこにまたひとり、中東系らしい若い女がひざまずいて勇次郎に祈りをささげた。
 勇次郎は抑圧された人たちに人気があるのだろうか?
 でも、白人も見にきている。
 単に勇次郎は世界規模で有名ってだけかもしれない。

 勇次郎は、超大国である米国を素手で屈服させることができる。
 でも、米国を攻撃しているのは虐げられている弱者への義侠心とかじゃない。
 単に強い相手を求めていたら、強い国家に喧嘩を売ることになっていただけだ。
 しかも、米国が握手をもとめてきたので喧嘩売ることに興味をなくし、今じゃわりと友好的な関係になっている。
 弱者が勇次郎に祈る理由とはならない。

 彼らはなぜ勇次郎に祈るのだろう。
 ひとりの人間として限界を超えた強さを身につけた勇次郎に神を見たのだろうか?
 そりゃまあ神は全知全能かもしれないが、神がわざわざムエタイ選手をデコピンで倒したりしないだろう。
 もし、勇次郎が神だとしたら、神はどんだけムエタイに試練を与えていると言うのだ。
 デレのないツンデレなんて、ただの嫌がらせですよ。

 謎は謎としてのこる。
 しかし、親子喧嘩は止まることなく加速し、決着へ向かいフルスロットルだ。
 全力で、連続で、顔面に、最高の打撃を打ちこむ!

 ガガッ
 ゴッ
 ギッ
 ガギッ


 打撃音すら歪みひずむ脅威の攻撃だ。
 見開き4連発のインパクトは文章では伝えられないし、打撃音も日本語じゃ表現できなくなっている。
 これは、まさに迫力を感じとるしかあるまい。
 迫力音だ。迫力語だッッ!

 お互いに一歩もひかず顔面狙いをしている。
 と、思ったら最後に勇次郎が刃牙の腹を殴っていた
 身長の高い勇次郎が刃牙の腹を殴るのは、すこし手間になる。
 勇次郎め、手を抜いているのか?

 全力で攻撃しているのは、間違いないだろう。
 だが、最善の攻撃はしていないのかも。
 もっとも、本当に最善の攻撃をするのなら、相手の攻撃をよけてカウンターを打ちこむのがベストだろうけど。
 勇次郎は暗黙のうちにかわされたルール内でなるべく手加減しようとがんばっているのかしれない。
 クックックッ、勇次郎め、息子を勝たせようと手こずっていやがる。

「オーガと正面からブン殴り合う」
「この世にそんな奴がいたのか…」


 徳川さんとオリバは同時に同じコトを考える。
 勇次郎は地上最強の生物だ。
 その勇次郎と互角に戦えるのは奇跡のような存在といえる。
 ある意味、ゾウより力があり、チーターよりも速く走るようなものだ。

 オリバは刃牙と正面から殴り合った経験がある。。(10巻 75話
 最後には負けたものの、ほぼ刃牙と互角だったと言って良い。
 だから、『オリバ ≦ 刃牙 ≒ 勇次郎』で、『オリバ ≒ 勇次郎』と言いはることもできる。
 自分の強さをアピールしないで、ただ刃牙の強さに驚愕するだけだ。
 オリバはけっこう謙虚な人なんですね

「大将……」
「信じられねェや…」
「あの……」
「あの範馬勇次郎と」
「ブン殴り合ってますぜ」

「妬ける…」

「なんならもう少し」
「前へ……」

「いや…」
「ここでいい…」

 花山と千春はいつのまにか最前列に立っていた!

 ここでいいと言いながら、しっかり前進している。(303話
 千春は花山の語らぬ心情をよみきっているのだ。
 つまり、花山はまだ前進したい。

 周囲の人に「最前列じゃん…」とツッコまれている。
 だが、花山の本心はもっと近づきたい! なのだろう。
 シャチショーに行ったのなら、最前列で水飛沫を浴びたいタイプだ。
 きっと、拳の風圧を感じるほど近づきたいのだろう。
 いや、本当はいっしょに殴り合いたいのかも。

 花山と千春は刃牙世界における「防御せずに殴るタイプ」の代表選手である。
 その二人ですら範馬勇次郎とブン殴りあうのは、キビしいと考えているようだ。
 範馬勇次郎の実力は二人にも実感できている。
 そして、刃牙と戦ったことがある二人ですら驚いているのだ。
 やはり刃牙は勇次郎との死闘で急成長している

 花山は自分の美学を貫くことにこだわる。
 だれかに憧れたり、だれかのマネをしたりはしないのだろう。
 そんな花山が「妬ける…」と言った。
 花山ですら憧れ嫉妬してしまうほどの強さと男雄(オス)度が今の刃牙にはあるのだ。

(この……)
『無呼吸連打が停止(とま)るとき……』
『そのときこそが この親子喧嘩(たたかい)の決着!!!』


 独歩は決着の予兆を感じていた。
 後先考えない無呼吸連打だ。
 マラソンで言えばラストスパートをかけた状態でもある。
 意地の張りあいは、どこかで終わりをむかえるハズだ。

 やはり、決着が近い。
 なにしろラストスパートで競い合っている距離なのだから。
 でも、範馬ならスタート直後からラストスパートかけて、そのままゴールしちゃいそうだけど
 とにかく決着が近い。祈りの謎も解明が近い気がする。
 次回につづく!


 チャンピオン誌上でも別冊少年チャンピオンでの「バキはあと10回くらいで終わる!!」発言が取りあげられている。
 そして作者コメントも『21年間に渡るシリーズ、ひとまずのピリオド。残り10話に満たない…。』となっていた。
 まちがいなく決着が近い。
 しかし、微妙に遠い気もする。

 両者ノックダウンで決着だろうか?
 いや、21年かかった戦いの決着が、そんな曖昧なものじゃ許されない。
 なんらかの衝撃的なエンディングが待ちかまえているハズだ。
 最後の最後で、刃牙にあって勇次郎に無いモノが勝負をわける、とか。

 刃牙にあって勇次郎に無いモノはなんだろう?
 友情、敗北、達成感、あと例の彼女だろうか。
 なんどか敗北したからこそ、鍛えられる。
 弱かったからこそ、努力して全力を出しきり、達成感を味わった。
 そして、すべて出してぶつかり合った相手とのあいだに友情が芽生える。

 刃牙の強みは近づいてくる花山薫に集約されているのだ。
 近づきすぎた花山が巻きこまれて死亡したら、刃牙が怒りの覚醒をするかもしれない。
 いけにえの山羊(スケープゴート)として宿命的に引き寄せられているのかも。

 花山は仁義を知る男だ。
 もともと、仁は『人と人との間に通う親しみ』、義は『羊をいけにえとして刃物で殺すさまから、厳粛な作法にかなったふるまいの意味』だ。(漢語林
 親友のために犠牲になりそうなポジションすぎる。

 あー、ところでもうひとりのイケニエ候補である梢江さんの姿が見えないんですが……。
 はイケニエじゃなくて、悪魔の魚だからなー

追記 (12/6/20)
 刃牙の最終回まで、あと10回ぐらい
 このハッキリワカらないところが刃牙っぽいな。
 読者的には、どーでも良いンですけど編集者からしたら「ぐらいってなんだよ!」ってカベ殴って穴あけるところですよ。
 新連載のスケジュールとか告知とか発行部数の予測・調整とか、刃牙が終わる事の影響ってイッパイあるじゃないですか。
 秋田書店の株主総会があったらツッコまれるところだよ。

 とりあえずチャンピオン的にはドカベンの最大トーナメント編がはじまったから穴は無いってコトかもしれない。
 Kジローが出てきたら、思いのほか嬉しかったので懐古層には人気でるかもしれないが、将来の展望はあるのだろうか。
 刃牙も連載はじまってから ずいぶんたつ。
 この辺でリセットして若い読者を獲得する方向に動くのも悪くないと思いますが……
 刃牙後の刃牙新作とチャンピオンはどうなる!?

 先の話より、現在の話だ。
 勇次郎を知っている外国人がなんか増えてきた。
 アレは勇次郎が国際的に活躍した証拠だろうな。
 もしかして、勇次郎が旅行先で滞在したところの関係者だろうか。

 勇次郎は野生動物を素手で狩るのが趣味だから、世界各地で狩って伝説を残していそうだ。
 ついでに種も残しているのかも。
 と言うわけで、来ている外国人の数だけ勇次郎の子供がいる説はどうか?
 次回作は、今度こそ最大範馬トーナメントだ!
 刃牙よ、ここではオヌシも大勢いる勇次郎の息子の一人にすぎんのじゃ!

 それとも、イキナリ二十数年後になって息子の世代になっているかも。
 刃牙と梢江の子供、もうイロイロな意味で最強遺伝子っぽいヤツが登場する。
 で、勇次郎の娘と克巳の間の子、勇次郎の娘と花山の間の子、オリバとマリアの子供、海王の弟子、とかが出てくる、とか。
 たぶん愚地独歩と渋川剛毅はまだ現役だ!

 次世代最強トーナメントの優勝者は伝説の戦士・範馬刃牙と戦う権利を得る。
 でも、その前に烈のボクシング編を解決してあげないと。
 二十数年後の次世代トーナメントでも、まだボクシングを放置していたら、結婚もできない。


2012年6月28日(31号)
第3部 第306話 対峙する相手 (965回)

 範馬刃牙、終了まであと9回ぐらいッ!
 いや、8回ぐらいか?
 もしかしたら、7回ないのかも。
 でも、、6回以内には終わりそうにないよな。
 とにかく、クライマックスは近いッッッ!

 そして、今回は回想シーンだ!
 回想かよッ!?
 のこりわずかなのに!
 決して予定調和にも予想通りにも進まないのが刃牙なのだ。
 油断すると、次回最終回の状況で新キャラが乱入してくるかもしれない。

『弱き民の前に立つ…』
『鬼がいた』


 弱き民の前には範馬勇次郎がいた。
 前にいるから、いつも背中を見せている。
 だから背中の"鬼"を見せつける結果になっているのだろう。
 もっとも、戦う相手も去りゆく勇次郎の背中に鬼を見るのだけど。

 勇次郎は野生動物を素手で狩るのが趣味だ。
 だけど、この狩りを見ることができるのは凄腕の狩人(ハンター)ぐらいである。
 だから、勇次郎伝説は主に軍人・弱き民・狩人の間で広まっているのだろう。
 あと、もちろん格闘技関係者の間でも。

『弱き者の味方…?』
『否(ノン)…ッ』
『正義の味方…?』
『さらさら否(ノン)……ッッ』
『彼等 弱き者の正面(まえ)には必ず……』
『そう……』
『強き兵士達がいた』
『男は決意(きめ)ていた』
『己の立ち位置は常に強者の正面(まえ)!!!』


 ノンッ!
 なぜかフランス語だ。
 傭兵をやっていた勇次郎に近い感じで、フランス外人部隊へのインタビューっぽくしているのだろうか?

 勇次郎が暴力を振るうのは強きものたちだ。
 すこしでも自分を苦戦させる可能性のある相手を探し、試し、結果的に倒す。
 それが勇次郎のささやかな娯楽だ。

 難民然とした弱き民たちの前で勇次郎が戦う。
 相手は黒人の部隊だ。
 同一の武装、だいたい同一の軍服を着ているので正規軍だろう。
 本来であれば装備も訓練も行きとどいた正規軍は強いのだが、勇次郎は素手で蹂躙していく。

 ちなみに国の軍隊ってのは軍服(戦闘服)をちゃんと着なくちゃいけない。
 有名な「捕虜の扱いを人道的にする」というジュネーヴ条約を適用してもらうために、国の正式な兵隊であると証明する軍服が必要なのだ。

 第二次世界大戦中の小説『鷲は舞い降りた』(AA)では、イギリス軍に偽装しようとするドイツ兵が、無理解な上官に「敵の軍服着るのは条約違反だから下にナチスの軍服着とけ」と言われて困ったりしている。
 映画『大脱走』(AA)では、脱走用に軍服を背広風に改造した男が、捕まったとき「これ、ちょっと変形しているけど軍服だから」と必死になっているシーンがあった。
 子供の時は理解できなかったけど、今見るとアレって軍服と認められるかどうかで、兵士として捕虜になるかテロリストとして処刑されるかの瀬戸際だったんだよな。

 そんなワケで今回 勇次郎がブッ殺したのは多少着くずれているが正規兵だ。
 アフリカだと失敗した国家の軍隊は私兵やギャングと区別つかない状態だったりする。
 この相手は、装備の統一感があるのでかなりマシな部類だ。
 勇次郎は、より練度の高い相手を探したのかもしれない。

 装備の行き届いた正規軍であっても勇次郎にとっては敵じゃない。
 カステラをちぎるがごとくに顔面のパーツをえぐり飛ばしている。
 肉まんを割るよりたやすく兵士を引き裂き、両手を血に染め、ひとり立つ。

『正義もない……』
『悪もない……』
『そこに存在(ある)のは"力"のみ』
『男の肉体(にく)は飢餓(うえ)ていた……………』
『裡(うち)なる"戦力(ちから)"解放に!』


 勇次郎にとって正義などどうでもよく、ただ全力で暴れたいだけなのだろう。
 しかし、勇次郎のレベルは周囲の人間より圧倒的に上だ。
 本気を出したくても、本気を出す前に相手を倒している状態だろう。
 ワン・ツーで殴りたいのに、最初のジャブだけで相手が倒れちゃう感じだ。

 より本気を出せる相手を探して勇次郎の戦いはエスカレートしていく。
 最強の肉体をもっているせいで、精神力も行動力もハチャメチャなんだろう。
 勇次郎がブラック会社に入社したら、一週間で会社のほうが「おねがいだから、もう働かないで!」と音をあげるにちがいない。
 むしろ、入社4日後に勇次郎が社長になっているかも。

『やがて…』
『巨大国家は指導者(トップ)の眼前(まえ)へ』
『難なく辿り着くこの男を…………』
『「鬼神(オーガ)」と呼び心底戦慄(おのの)き』
『"神"の陰に身を隠し………』
『莫大な"金銭(ドル)"で取り入った』


 とうとう最大最強の米国も勇次郎に和睦をもとめる。
 安全保障料ですね。
 でも、勇次郎のことだから金をださなくても弱気な態度を見せただけで興味をなくしそうだけど。

 ゴルゴ13もそうだけど、本人が殺す気になったら一国の長でも逃れる事ができない相手ってのがいたら、本当に困る。
 国の代表だから表に出なくちゃいけない場面も多々あるし、暗殺の危険が常にあるだろう。
 金である程度の保障と安心が得られたら、安いものだ。

 勇次郎が怖いからと、対勇次郎用の暗殺集団を作ったりしたら、大喜びで返り討ちにしそうだし。
 攻めるばっかりでなく、時には守る。
 国には柔軟な対応が必要なのだろう。
 金が目的じゃないから、そんなに大金を要求しないだろうし。
 勇次郎の衣服へ金をかけてなさそうっぷりはスゴイよ。

『迫害(おい)つめられる"弱き民達"は』
『強大国家にとっての最大の"脅威"を』
『"神"と崇め…………… "天使"のように愛した………』


 そして、勇次郎は弱き民に神としてあがめられた。
 本人は自分勝手にやっていたんだけど、結果がすごいから尊敬されまくりだ。
 巨木とか巨石が、ただデカいだけでまつられちゃっているのと同じで、ただ強いからまつられちゃっている部分もあるのだろう。
 強いスポーツ選手が、強いと言う理由で尊敬されるように。

 弱き民にとっては、強国を屈服させる存在ってのが、それだけで痛快なのだろう。
 でも、この理論だとテロリストも敬意を集めちゃうな。
 実際に、それなりの敬意を集めているのだろうけど。
 昔チャンピオンで連載されていた『アクメツ』みたいに、普段威張っている連中を殺すテロにはある種の高揚が生じるだろうし。

 前回感想で、勇次郎の行動は「弱者への義侠心とかじゃない。」「強い相手を求めてい」るだけ。「弱者が勇次郎に祈る理由とはならない。」と書きました。
 半分当たっていたけど、残りが間違っている。
 勇次郎が勝手に戦うのはその通りだけど、みんなも勝手に尊敬していたのだ。
 強いは美しい。ストロング イズ ビューティフルが、世界の法則である!

 範馬勇次郎の強さは、もはや生きながら伝説と化し、もはや神の域にたっした!
 ――――それ、言いすぎ!
 言いすぎですが、実際に生き神様あつかいですよ。
 刃牙はリアル神話と戦っていることになる。

 刃牙はこんな強大な相手を倒せるのか?
 親子の相克は神話時代から続けられてきた、命題でもある。
 神殺し・父殺しの大罪を刃牙は負うことができるのだろうか?
 父を殺し母と交わったギリシャ悲劇オイディプースのように、刃牙は悲劇から逃れられないのだろうか。

 次回、時間は再び現代にもどるだろう。
 そこでどんな展開がまちかまえているのだろうか?
 つづく。


 勇次郎がついに神になってしまった
 神話どころの騒ぎじゃないね。
 私たちが知らないだけで、どこかの国じゃオーガ像を毎日拝んでいるのかもしれない。

 強いということを極めてしまうと、神話的存在になってしまうのか。
 三国志の英雄も死後まつられ神になった。
 一番有名なのは関羽で、現在も世界各地の関帝廟でまつられている。
 わりと早い段階から民間でまつられていたらしい。
 死後300年ほどたった隋初期には玉泉山に「顕聖(神として姿をあらわすこと)」したという伝承もある。(三国志演義

 勇次郎はカベ抜けして息子の情事に武力介入するぐらい日常的にやっていた
 すでに奇跡を起こしているようなものだ。
 もっとも、神様が息子の情事に介入するものなのか不明ですけど。

 刃牙が勇次郎を殺すことで、神話が完成するのかもしれない。
 生きていれば、どこかで失敗をすることもある。
 だが死んでしまえば、生前の事はいくらでも美化できるのだ。
 宗教は創始者が死んで弟子たちの世代が布教し始めてからが本番と言える。
 それとも、勇次郎はやっぱり敗北しないのだろうか?

 どちらにしても、勇次郎に宿った神性を刃牙は受けつぐだろう。
 なにしろ伝説のオーガと互角に殴りあえたんだから。
 どんどん強敵と戦う作品は、強さのインフレが起きて、最後に神と戦うしかなくなると言う。
 刃牙世界において最強の勇次郎はとうとう神になってしまった。強さ表現の終点だ。
 つまり、今の親子喧嘩が刃牙世界の最終決戦なのだろう。

 世界最終戦争(ハルマゲドン)は、父と子の素手による殴りあいだ。
 なんか家庭的で暖かなかんじのする最終戦争ですね。

追記 (12/7/4)
 範馬勇次郎が神の領域に達した!
 みんなに祈りをささげられるなんて、本当に生き神様だよ。
 でも思いだすと、刃牙だって戦いへの覚悟は「神にも負けない」と言っていた。
 コミックス収録時に「ここは地上最強を決定(きめ)る聖地(ところ)だからね…」と変更されましたが。(G刃牙3巻 20話)

 初期のネタを振りかえるあたり、本当に最終回が近い気がする。
 最終決戦をやっているんだから最終回が近いってのはワカるんだけど言われないと気がつかなかったかも。
 刃牙が勇次郎に勝ったら最終回だろうけど、刃牙が負けたらまだ続きそうだし。

 さて、初心に帰って刃牙が勇次郎に勝てる可能性があるのか検証してみよう。

 範馬勇次郎の強さはその精神力にある。
 というのがストライダムの説だ。
 長年接待役として勇次郎と向かいあっていただけに、その分析も信用できる。
 ……いや、どうかな。
 なんか、ストライダムが勇次郎に戦いをいどむときに精神力が必要な感じだ。
 おなじ精神力を刃牙にも求めるって感じで。

 さて、刃牙は勇次郎クラスの強靭な精神を身につけたのだろうか?
 性格が悪くなった気はするけど、強くなったのか不明だ。
 でも、範馬脳というか鬼脳があるかぎり、精神力はなんとかなりそう。

 私が思うに、勇次郎の強さは純粋に肉体の強さだ。
 ネコとライオンを戦わせるようなもので、根本的な肉体としての強さがちがう。
 どんなにネコを鍛えようが、ライオンには勝てない。
 いや、死ぬほどドーピングしたり寄生虫バオーでもいれたら勝てるかもしれないけど。
 とにかく、軽自動車でF1カーと勝負するようなモノで勝てんものは勝てんのですよ。

 肉体の強さの問題はクリアしている。
 刃牙はここ100年ほどで3人しか確認されていない、鬼の背中をもつ男だ。
 けっして勇次郎に負けない筋肉をもっている。

 だが、根本的な問題があった。
 刃牙と勇次郎では体格差が大きい。
 アイアン・マイケルも言っていたが、格闘技において体重差ってのは強さの差につながる。(10巻 74話

 戦士の中でも小柄な刃牙と、体格に恵まれた勇次郎の二人だ。
 同じ質の筋肉をもっていれば、大きいほうが勝つ。
 今まで体格でおとる刃牙が勝ってきたのは、範馬肉のおかげだ。
 だが、勇次郎も同じ範馬肉の持ち主である。
 理屈で考えると刃牙に勝ち目はない。

 だが、話をもどすと精神面で刃牙有利な部分がある。
 勇次郎は刃牙に負けたがっているのだ。(29巻 242話
 刃牙に対し、勇次郎は肉体面で有利だが、精神面に問題を抱えている。
 きっと、最後の最後で勇次郎は息子愛で滅ぶ。


2012年7月5日(32号)
第3部 第307話 拳から伝わるモノ (966回)

 刃牙と勇次郎の範馬親子ケンカもクライマックスだ。
 ふたりの無呼吸連打が終わったとき、決着がつく。
 限界が近づくなかで勇次郎は回想効果を発動し、オーガに神格化を与えた。
 鬼神<オーガ>となった勇次郎に刃牙は勝てるのか?

 対抗して刃牙も回想発動する!
 なんてコトはなかった。
 一方的に強化されちゃっただけだぞ。
 刃牙もパワーアップするために、回想とか応援を呼ぶんだ。
 梢江の愛のパワーで勇次郎に負の効果を与えろ。

 しかし、勇次郎も回想シーンでの神格化など、無かったようにふるまっている。
 なんか回想シーンは不発だったのかもしれない。
 ジャック・ハンマーと戦ったときのガーレンも穴掘り回想したが意味なかった。
 回想もときに失敗するのだ。
 ってコトは勇次郎の負けペースなのか?

『文字通り……』
『ビルの谷間を埋め尽くす』
『幾万余の群集(ひと)……』


 気がついたら、さらに人が増えてる!
 コミケ会場なみかそれ以上の混雑ぶりだ。
 みんな、どんだけヒマなんだよ。

 夜にはじまった喧嘩も、数時間が経過している。(300話
 つまり現在は夜中だ。たぶん終電も終わっているだろう。
 なのに人が増えているのだ。みんなアクティブすぎ!

 さらに言うと、喧嘩開始は地震が起きていた。(30巻 250話
 それでも人が集まる。
 範馬親子の集客力は東京スカイツリーにも負けていない。
 むしろ墨田区で戦っていたら、スカイツリーを巻きこんで倒壊させていたかも。

『父と子を囲むその"輪"は』
『少しずつ大きさを縮小(ちぢ)めていた』
『終了(おわ)りの近付いた この』
『父と子のエネルギー体を』
『至近距離(すぐそば)で』
『眼の前で感じ取りたい』
『脳裡(のうり)に刻み込みたい!!!』


 みんな、シャチショー・イルカショーで水飛沫を浴びたい症候群にかかっている!
 花山が近づいたせいで、安全だとカンちがいしているンじゃなかろうか?
 たぶん花山ですら巻きこまれたら入院級のダメージをうけるだろう。
 一般人なら即死ですよ。

 それでも近づきたくなるエネルギーがほとばしっているのだろう。
 危険とわかっていても魅入られてしまう魔性が範馬親子にはある。
 力に憧れ、力を得ようとする人間の本能に訴えかけるからかもしれない。

 それにしても近すぎる。
 餓狼伝に出てきたチャック・ルイスの5mリードブロウならとっくに当たっている距離だ。(餓狼伝15巻 131話
 いくらなんでも怖くないんだろうか?
 猛獣とおなじオリの中にいるようなものだぞ。
 観客を守り遠ざけるべき機動隊たちは姿を消している。群集に飲み込まれたのだろうか?
 今や機動隊たちの身の安全のほうが心配な事態になっている。

 人間は恐怖の原因に近づきすぎると、逆に恐怖がマヒしてしまうらしい。
 ダムが決壊する恐怖をもつ住人は下流からダムに近づくにつれて増えるが、あるポイントから逆に減ってしまう。(文明崩壊
 恐怖を感じすぎると生活が困難なので、無意識に危険を考えなくなる「心理的拒否」状態だろう、という話だ。
 群集は範馬を近くで見すぎたので、範馬に対する恐怖が薄れてしまったのかも。

『息子の拳は父を感じていた』

『父の拳は何を思う……』


 刃牙は拳で、父の骨や皮膚・重量・衝撃・耐久力などを感じていた。
 飲みニケーションならぬ、殴りニケーションだ。
 会社の上司も部下に声をかけて、自分をサンドバックにしてもらったらどうか?
 変な性癖の持ち主と誤解される恐れがありますけど。

 とにかく刃牙は殴る。その手ごたえ、感触で父を感じていた。
 ならば、父の拳は刃牙を感じているのか?
 一方的な愛だとストーカーになってしまうよう。
 おなじく一方的な理解だと、絆にならない。
 勇次郎は刃牙を感じているのか!?

 範馬親子がえんじる世期の殴りあいはTVやネットで中継されていた。
 プライバシーのかけらも無いですね。
 勇次郎にイロイロ迷惑をかけられてきた日本政府が行った、ささやかな嫌がらせだろうか?
 もっとも刃牙と勇次郎だったら、全国的に有名になった反作用として中傷されてもへこたれないだろうけど。

(見てるかい……………)
(親父……)
(俺は… この試し合い)

(この立ち合い)
(どっちの勝ちを…… 望む………?)


 愚地克巳が、渋川剛気がテレビを見ていた。
 こういう識者に映像が届くことを考えると、中継も悪くないですね。
 渋川さんがたどりついていないコトを考えると、やっぱり現場は危険なのかも。

 克巳はジャージ姿でテレビを見る。かなりラフな格好ですね。
 範馬勇次郎は父のカタキだ。
 いつか自分が倒すべき相手だと思っている。
 その勇次郎が他人の手で倒されても良いのか?

 渋川さんも勇次郎を倒したいと思っているひとりだろう。
 ふたりとも刃牙とは交友があり、勇次郎よりも親しい間柄だ。
 友の勝利を望むのか?
 それとも、宿敵が無事なのを期待するのか?
 見守る人たちも複雑な心境だ。

(親父(チチ)ヨ………)
「俺ダッテ出来ルンダ!!!」

 そして、テレビを見ながら涙をためるのはジャック・ハンマーだ!
 勇次郎の息子として挑戦したかった。
 今日勝てれば、明日死んでもかまわない。その心境で戦ってきた。
 だが、勇次郎にはとどかず、弟である刃牙に「アンタはもう」「戦士(ファイター)として終わりなんだよッッ」と言われる。(19巻 153話

 終わった男として、正座しながらテレビを見るしかできないのだ。
 ジャックの周辺には薬が散乱している。
 ドーピング生活はあいかわらず続けているようだ。
 明日なき戦士ジャック・ハンマーは、勇次郎への挑戦という"今日"も失ったのかもしれない。

 なお、発掘された初期人類の化石よりも粉々に砕かれたジャックのアゴなんですが、再生しているっぽい。
 ちゃんと口を開いているし、歯もある。
 ピクルに喰われた口周りの皮膚も色がちがうが再生しているようだ。
 この再生力が範馬の力なんだろうか?
 紅葉が見たら解剖してホルマリン漬けにしたがるんだろうな。

『己の耐久力(タフネス)を誇示(ほこ)る為…?』

『全力疾走(スパート)する愛息を抱き締める為…?』
『開手したその掌を』
『父は静かに広げた……』


 無呼吸打撃のなかで、範馬勇次郎が攻撃を止めて、両手をひろげた。
 まさに抱きしめるポーズだ。
 もしや、朱沢江珠を死に至らしめた抱きしめ ――博愛固め―― が来るのかッ!?
 くしくも母と同じ運命をたどると言うのか、刃牙よ!

 それとも刃牙は運命を跳ねかえすのだろうか?
 抱くか、抱かざるのか。
 次回、鬼神抱擁(オーガ・ハッグ)がふたたび炸裂する!?


 範馬の親子対決はついに無呼吸連打が止まりそうだ。
 そして、周辺事情も整理しはじめている。
 イチバンせつないのはジャックの存在かな。
 自分があそこで勇次郎と殴り合っていたかったのに、見る立場だよ。

 ジャックは、刃牙以上に努力と覚悟を積み重ねてきた。
 それでも勇次郎に届かない。
 強くなると言う点において、ジャックは誰よりも真剣に命がけで努力してきた。
 報われなかったのは切ない。

 逆にジャックは過剰になりすぎたのかも。
 筋トレには適度な休息も必要だと言う。
 睡眠は体を休めるだけでなく、記憶を整理するのにも必要らしい。
 ジャックには休む勇気が無かったのだろうか。

 刃牙は猛トレーニングをしているけど、適度に休んでいる。
 学園生活だって楽しんでいるようだ。
 オマケに彼女と充実した性生活も経験している。しかも、セックスで強くなった。
 刃牙は弛緩と緊張を生活でも実践して、大きなインパクトを生んだのかもしれない。

 でも、意図的に休むのと怠惰は見分けがつきにくいから困る。
 あえて休む勇気!
 と書くと、サボリの口実にしか見えないな。


 今週のチャンピオンの情報エクスプレスはロックバンド『ドレスコーズ』のインタビューだった。
 1stアルバム『Trash』の宣伝もかねていたのだが、バンド名『ドレスコーズ』の由来が『それはやっぱり範馬勇一郎の必殺技である"ドレス"からでしょう!!』と言っている。
 油断すると刃牙トークになって『僕等が目指すのは柴千春です』と言い出す。
 下手したら、死ぬよ。まあ、心意気の話なんだろうけど。
 なんか、自分のイチバン弱いところを楽器にぶつけるバンドとかになりそうで、ちょっと注目していきたい。


 もうひとつついでに、今週の『シュガーレス』は身長の低いシロと巨漢のマリモが戦いはじめた。
 『シュガーレス』はノーガードの打ち合いが多いのだが、今回もそうだ。
 リーチの差を逆に活かし、前に出ることでマリモのパンチを殺している。

 刃牙と おなじ展開といえるかもしれない。
 つまり、刃牙も前に出れば勝てる!
 って、もう殴りあいじゃなくなっているか。
 いま前にでたら勇次郎の胸に飛びこむかたちだ。
 骨が折れるほどに抱擁されてしまう。


 ところで、独歩ちゃんが『無呼吸連打が停止(とま)るとき』『そのときこそが この親子喧嘩(たたかい)の決着!!!』と言っていた。(305話
 百戦錬磨の愚地独歩も、まさか無呼吸連打が停止(とま)ったあとで鬼神抱擁(オーガ・ハッグ)があるとは思うまい。

 もしかして、抱擁も無呼吸でするの?
 死ぬまで離さない無呼吸抱擁だ。
 親子ふたりとも酸欠でノックダウンなら、どちらにも傷がつかないかな?

追記 (12/7/11)
 愚地克巳、渋川剛気、ジャック・ハンマーも見ていた。
 なんでこの三人なんだろう。

 愚地克巳は一般人の天才、そしてもう一組の親子として登場だろうか。
 刃牙と同じく偉大な父をもった息子だ。
 ただ、克巳は刃牙より一足はやく父親越えを達成したっぽい。
 直後にピクルと闘って片腕になってしまったが、それは逆に片腕と言うオリジナルを与えた。
 今の克巳は独歩より強いかもしれない。

 で、もう一組の親子である克巳だけど、範馬親子のように壮絶なケンカはしていない。
 範馬親子のケンカがうらやましいのかも。
 で、どこかにいる父・独歩に自分たちも闘うべきじゃないかと問いかけているのだろうか。
 これは次回最大トーナメントで独歩vs克巳のカードが組まれるな。

 渋川さんは日本の達人代表だろう。
 技術を極めた人間代表だ。
 でも、範馬一族には技術だけじゃ勝てないと勇次郎vs郭海皇で証明されてしまった。
 技術組の人は離れて見ているしかできないのだ。

 でも、それでも、渋川さんは勇次郎に勝ちたいのだろう。
 かつて範馬一族のジャック・ハンマーに敗れた渋川さんだけどリベンジを狙っていそうだ。
 次回最大トーナメントでは、ふたたび範馬一族と闘うかも。
 ムエタイを学んだ、ディーノイ・デントラニー・チャモアン・サムワン・範馬とかが出てきたら勝てる!

 最後にジャック・ハンマーだ。
 もうひとりの範馬一族である。
 刃牙は「努力しても 努力以上が 手に入っちまう」と言っていた。(296話
 ジャックは薬物も含めた努力の果てに、努力以下の成果しか手に入らなかったのだろうか。

 噛みつき容赦なく相手を叩きのめすジャックの戦いはダーティーかもしれない。
 だが、強さに対する態度は真摯であり、妥協なく、明日死んでも良い覚悟だ。
 常人にできない覚悟を見せつけるジャックは、常人である私から見ると凄みのある戦士だった。
 男泣きするジャックに、もう一度たたかう機会を与えてほしい。
 でも、刃牙や勇次郎と戦ったら、やっぱり負けるんだろうな。

 ジャックには、なにが足りなかったのだろう。
 いや、薬が余計だったのか?
 パーフェクト・ナチュラル・パワーが範馬の強さなのかもしれない。


2012年7月12日(33号)
第3部 第308話 父からの抱擁 (967回)

 ついにカウントダウンがはじまったッ!
 最終話まで残り5話ッッ!!
 ほんとうに5話で決着がつくのか!?
 最後に大増60ページ(通常の三倍)になったりして。
 選手入場をやった時の、あのページ数だ。

 闘っている当事者はページ数の都合なんてしらない。
 刃牙と勇次郎はラストスパートでハジけまくっている。
 というか勇次郎は抱きの構えに入っているので、刃牙だけが一方的に殴っているぞ。
 勇次郎が無防備っぽい状態なのだが、刃牙は疑問をもっていないのだろうか

『見えているのか………』
『聴こえているのか…………』
『父の肉体(にく)を打つ拳……』
『拳打つ 父親の確かな感触…』
『痺れ続ける拳のみが』
『父と我が身を繋ぐ唯一の絆』

 殴っている刃牙の目はうつろで何もうつしていない。

 鼓膜はすでに破られている。(301話
 見えず聴こえない刃牙は何も考えられず殴っていたらしい。

 刃牙はとっくに限界を超えていたのだ!
 範馬の肉体がもつ超回復などと思っていたが、回復しきれないダメージがあった。
 それでも刃牙は攻撃をつづけている。
 なんという闘争本能だ。まさに格闘の申し子だよ。

 音も光も失った刃牙にとって、拳に伝わる感触だけが確かなものだ。
 唯一の感触が親子の絆か。
 闘争(たたか)いの人生をあゆむ親子に相応しいものかもしれない。

 殴る感触だけを刃牙は感じている。
 つまり、刃牙はすでに自分が殴られていないコトもワカらなくなっている
 当然、勇次郎のかまえが変化したことを知らない。
 一方的に殴っているが、むしろ無防備なのは刃牙のほうだ。
 ヤバい。勇次郎の動きに気がつけ。

『せっかくの触れ合いじゃないか』
『"打つ"ように打ったんじゃ勿体ねェよ…』
『そう……』
『抱擁(だき)しめるようにね
 打つんだ…』


 刃牙は打撃の質を抱擁にかえる気だ。
 抱擁(だき)しめるように打つ――――抱擁拳の完成か?
 親父の面倒を覚悟の介護拳もあった。(296話
 刃牙の攻撃はどんどん優しくなっていく。
 たぶん攻撃力は落ちていないんだろうけど。

 普通に打つと、相手は後方にフッ飛ぶ。
 そのため、運動エネルギーが相手の移動に使われてしまい、損失となる。
 抱擁拳は相手をフッ飛ばさないで肉体になるべくダメージを与えたいという技なのかもしれない。
 拳の動きがフック系になっているから、殴ったらすぐ反対側を殴って移動を相殺しているのだろうか。

 あまり現実的な技じゃない。
 もしかしたら、殴るときの気持ちの問題と言う技かも。
 どちらにしても、刃牙の表情がヤバい。
 あまりにうつろでイッちゃってる。

 刃牙は殴りながら、すでに意識を失いかけているのかも。
 もはや夢うつつの状態で殴っていそうだ。
 このままだと、勇次郎よりも早く刃牙がダウンしそうだ。

 ! ガキッ

 ッと、ついに来た。
 勇次郎が刃牙を抱擁するッ!
 刃牙の限界が近いことを感じたのだろうか。
 地上最強の抱擁だ。
 これは脱出不可能、万事休すか!?

『米国(アメリカ)合衆国ホワイトハウス』
『AM08:30』


 そのころ米国では、バラク・オズマ大統領がテレビに釘づけだった。
 オズマさん、勇次郎のファンだったしね。
 奥さんが呼んでも気がつかない状態だ。

 そして、なぜかイスの上で正座している
 ブシドーっぽい作法で見ているんでしょうか。
 ジャックも正座して見ていたけど、イス文化の人は正座がキツいらしい。
 闘っている二人が苦痛にまみれているのだ。
 見る側だって、少しは厳しい状態に身を置きたくなるのかも。

 これがボッシュ前大統領なら、ソファーで寝そべりながらポップコーン食べてそう。
 それか、今すぐあの親子喧嘩とところをピンポイントで空爆して勇次郎を亡き者にしろと指令を出しているところだ。
 空爆されたら、勇次郎が超人的なカンで察知して反撃にきそうだけど。

 大統領が朝から正座してナニを熱心に見ているのか。
 不安になったオズマ婦人が、ワールドカップでも見ているのかと声をかける。
 ゆっくりと振り返ったオズマ大統領が言う。

「TAWAKE…」

「誰の真似?」


 マネとわかった奥さん、あなた素質ありますね。
 口の歪めかたとか、オズマ大統領はかなり渾身のマネをしている。
 これなら刃牙芸人に参加できるかもしれない。

 オズマ大統領は勇次郎のファンだけにモノマネを練習したのだろう。
 努力の結果が「TAWAKE」だ。
 意味もちゃんとワカっているっぽい。
 もっとも、勇次郎にみせたら、それこそ「たわけ」と言われそうだけど。

 勇次郎に抱かれた刃牙は、一瞬だけ勇次郎と目をあわせた。
 動きを止められたことで、意識がもどったのかも。
 だがそれは、無意識ゆえの無痛が解除されたかもしれない。
 つぎに喰らう一撃は、とてつもなく痛いぞ。

 たった一瞬だけ視線を交換した親子はふたたび動く。
 地上最強の生物・範馬勇次郎が地上最強の筋肉で抱きしめる。
 刃牙の母・朱沢江珠を絶命させた死の抱擁だッ!
 鬼神抱擁、範馬抱擁、親子抱擁。名前はともかく必殺の抱きしめだ。

 メキャッ

 折れたッッ!?

 なかなか骨の折れない範馬刃牙だが、ついに骨をやってしまったのか?
 決着まで、のこり4回だ。
 これで決着なのか?
 次回へつづく。


 ついに勇次郎のハグが決まった。
 打たれ強い刃牙なら抱きしめなんて効かないだろう。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
 だが、すでに刃牙は満身創痍だ
 いまなら梢江の一撃でも昇天してしまう。
 加藤の一撃ぐらいなら問題ないと思うけど。

 逆に刃牙復活のカギを握るのが梢江かもしれない。
 幼年編の刃牙が花山と闘ったとき、口のなかにガラスを入れて痛覚で気つけにしていた。(G刃牙14巻 122話)
 梢江は、花山に痛いといわせた女だ。(バキ13巻 110話
 痛みを与えるのなら、梢江に限る!
 別冊チャンピオンの『バキどもえ』でも、梢江はどエラい事やらかしていますし。

 それとも、ここで花山登場だろうか?
 花山は、朱沢江珠が勇次郎に抱殺された瞬間を見ていた。
 範馬親子以外で、この場にいる目撃者は花山だけである。
 花山がなにかを刃牙に伝えるかもしれない。

 しかし、それでも刃牙が受けているダメージは深刻だ。
 抱擁される前からボロボロだった。
 勇次郎の抱擁は、刃牙の限界を感じたから「もう休め」という抱擁だったのかもしれない。
 まさに父性愛の抱きしめだ。
 ピクル抱き枕よりも熱く狂おしく抱きしめる。

 でも、刃牙息を吹き返し、勇次郎の首根っことらえてチョークかまして逆転とかもあるかもしれない。
 いやいや、こんな展開だと「TAWAKEッ!」と言って観客が暴動おこす。

追記 (12/7/18)
 ついに刃牙が抱きしめられた。
 のこり4話で最終決戦状態だ。
 配分を考えると、309話「刃牙が抱擁される」、310話「刃牙が反撃?」、311話「決着」、312話「その後」って感じかな。

 とりあえず刃牙は勇次郎の激烈な抱きしめに耐えなくちゃならない。
 もう、骨格で耐えられるってレベルじゃないだろう。
 筋肉を盛りあげて骨を支えないと。
 けっきょく範馬肉に頼らざるをえないのだ。

 相手が勇次郎じゃなければ、絞めている腕のほうを折るって選択肢もあるだろう。
 しかし、勇次郎の腕を折るのは倒すのと同じぐらいに困難だ。
 勇次郎の骨を簡単に折れるぐらいなら苦労しないよ。

 刃牙は殴りながら限界をむかえていた。
 もう逆転できる要素はなさそうだ。
 あるとしたら、江珠の思い出ぐらいだろうか。

 勇次郎を鈍らせ曇らせるのは、息子・刃牙への愛だ。
 刃牙を高めるのは、母・江珠の愛かもしれない。
 抱擁で決着ってのは、愛の戦いに相応しい決着かも。


2012年7月19日(34号)
第3部 第309話 母と同じ (968回)

 最終回まで……あと4話ッッ!!
 ついにラストまで一ヶ月をきった。
 9月からは刃牙無しの生活だ。
 どーしようかな、このサイト……

 まあ、とにかく、現在は範馬親子の決着を見守るしかない。
 勇次郎が選んだ最後の攻撃は、抱きしめだ。
 刃牙の母・朱沢江珠を殺害した因縁の技である。
 自分の愛人を屠った技で、最愛の息子も倒すというのか。
 勇次郎のあゆむ魔道にふさわしい技だ。

 抱かれる刃牙は、すでに満身創痍だ。
 限界をむかえる肉体は、勇次郎の抱きしめに耐えられるのか?
 骨格をささえるべき筋肉に力が入っていなさそうだけど……

『折!!!』
(イッたな…)(肋骨…)(2本…)(3本…)(もっと…)
(さすが…)
(さすが)(親父…)
(何度め…?)(今宵…)(何度めの…)
("さすが"…?)


 ダメでした。
 予想以上に折れている。
 てっきり、ヒビ入っただけだからギリギリOKとか言うんじゃないかと思っていた。
 だけど、しっかり折れてしまったようだ。

 刃牙は何度目かとなる勇次郎への賛辞をおくる。
 こうやって勇次郎をほめるときは、刃牙が心が折れかかっている時だ。(34巻 281話35巻 285話
 骨が折れて、心も折れる。
 こんどこそ刃牙も敗北だろうか。

 勇次郎は刃牙の体をはなす。
 コンクリートの地面に刃牙は落下した。
 呼吸はしているようだが、目はうつろだ。
 そして刃牙はピクリとも動かない。
 勝負、アリ……だろうか?

『同じだ…』
『5年前のあの時と……』

 花山は、この光景を知っていた。

 正確には同じ光景を見ている。
 5年前に朱沢江珠が絶命したときと同じだ。
 地面に横たわる体を見下ろす勇次郎の姿も同じである。

 江珠とちがうのは、刃牙は死んでいないと言う点だ。
 かすかに望みがあるのかもしれない。
 だが、かすかすぎる。

 のこった火種をふたたび燃やすには、燃えやすい材料が必要だ。
 倒れた刃牙を立ち上がらせるのに必要なのは、復活のキッカケである。
 5年前の目撃者である花山がなにかイイ影響を与えてくれればいいのだが。

 本来は、ヒロイン的なポジションである梢江のがんばりに期待すべきなのだろう。
 実際に刃牙が毒手でたおれたときは梢江の涙で復活した。(バキ21巻 187話
 奇跡よもう一度!
 梢江の毒液(※ 涙)で復活するんだ!
 と、思ったけど梢江さん姿を見せませんね。なにやっているんだろう

 勇次郎は刃牙を見下ろしている。
 相手の弱点を見破ることができる勇次郎の特殊能力が発動した。
 刃牙の内部状況をレントゲン撮影のように見抜く特殊能力だ。(24巻 194話
 的確にダメージを読み取っていく。

 具体的なダメージは省略しますが、とにかくヒドいやられようだ。
 もう無事な部分を探すほうが難しい状態である。
 でも、手足の骨が折れていないのがすごい
 刃牙の武器はまだ生きている!

 もっとも、本体である内蔵や脳に出血が見られるほどのダメージを受けているのだ。
 これは普通にドクターストップですね。
 とくに脳だ。
 刃牙の脳は飾りかもしれない。だが、それでも出血しているのはおだやかじゃないぞ。
 なんらかの障害がでるかもしれない。

「いいだろもう」

 勇次郎が闘争の停止を申し出た。
 三度の飯より、空気より、闘争が好きな勇次郎が自らやめる宣言をしたのだ
 刃牙は勇次郎を満足させたのだろうか?
 いや、やっぱり息子・刃牙のダメージが心配なのだろう。

 多くの人命を奪ってきた勇次郎の拳がとまった。
 今、やめておけば刃牙は回復してまた戦えるのかもしれない。
 そんな判断もあったのだろう。
 しかし、闘争に貪欲な勇次郎が止まったのは歴史的な珍事だ。

『それでいいッッ』
『続行は……………… これ以上の加撃は…… 格闘(たたかい)ではない…』
『巨凶ではない…』


 独歩が勇次郎の判断をたたえる。
 死ぬまで戦った男がなにを言うか。
 自分が戦っているときは自己責任で死ぬこともできたのだろう。
 だが、親子対決を見ている立場だと、最後までやらせるのは間違っていると判断したのかも。

 しかし、『巨凶ではない…』ってなんだろう。
 戦闘不能の相手にも容赦なく攻撃を仕掛けるほうが『巨凶』って感じがするんだけど。
 それとも、巨凶はもっと誇り高いものなのだろうか?
 独歩さんの考えがイマイチ良くわからない。
 これだけの死闘を見せられて、独歩も動揺して思考が乱れているのかも。

 たおれる刃牙に背を向けて勇次郎は去っていく。
 たちまち群集が割れて道ができる。
 まるで、モーゼの海渡りだ。

「……あ」「あ」
「あざァすッッ」
「ありがとうッッ」
「ありがとうございます」
「アザースッ」
「ありがとーッ」
「オスッ」


 ハンドポケットで去っていこうとする勇次郎にかけられたのは感謝の言葉だった。
 人間がもつ力を見せてもらった。
 100mを最速で走ってみせるコトも超える、最高のパフォーマンスだ。
 スゴイものを見せてもらった。
 驚きと興奮に観客たちは感謝したくなったのだろう。

 範馬親子は、べつに観客のために闘ったワケじゃない。
 それでも神話になるような闘いをしたのだ。
 この親子喧嘩は世界遺産になりうる貴重な闘いだった。
 勇次郎もそれがワカっているのだろう。おとなしく賞賛をあびている。

『佳き時間を過ごした…』

 そして、なによりも勇次郎は満足していた。
 達成感を得られない人生だった勇次郎にとって、はじめて満足できた闘いなのだろう。
 江珠を殺したあとは、周囲の人間をまとめてフルボッコにしていた。
 幼年編の刃牙じゃ、満足しきれなかったのだろう。

 花山とか、あそこでまた勇次郎にボコられているんだよな。
 勇次郎の友人であるはずの安藤さんも殴られているし。
 今回は無事に終わって、すこしホッとしているのかも。

 去ろうとした勇次郎は背後にナニカを感じた。
 立ち止まり、振りかえる。
 刃牙は倒れたままだ。
 だが、さっきまであおむけに寝ていたハズが、うつぶせになっている
 まるでゾンビのような不死身っぷりだ。

「蹴ったな…」

 範馬勇次郎が満面の笑みをうかべた。
 蹴った?
 刃牙の気が、勇次郎の背中を蹴ったのだろうか?
 それとも、「いいだろもう」という勇次郎の提案を蹴ったってコトですかね。

 どちらにしても、範馬刃牙には戦闘続行の意志がある。
 身体だって動いているぞ。
 あとは立ちあがって構えるだけだ。
 キッカケは、ヒロイン・花山薫がくれるのか?
 のこり3回だ。つづくッッッ!


 みんなが感謝して、お祭り終了の空気になっているなかで刃牙だけが空気読んでいない。
 さすが主人公ってかんじですけど。
 わが道を行くたくましい姿だ。
 ただ、奇跡の主人公補正だけじゃ立ちあがれないコトが前回で判明している。
 やっぱり、立ちあがるキッカケが 必要だろう。

 花山だけじゃ足りない。
 刃牙が今まで闘ってきた相手や関わってきた相手が、駆けつけてくれれば。
 闘ってきた人たちとの絆が、刃牙の強さのはずだ。
 みんなで応援してくれ!

 刃牙の応援にみんなが駆けつけてくれれば、力になる。
 花田が、ズールが、リチャード・フィルスが、シコルスキーが来てくれれば!
 金玉を血が出るほど蹴られた漢(おとこ)たちが集まったら、恨みのパワーでスゴいことになるぞ。

 親子対決の決着は刃牙シリーズを象徴する必殺技・金的蹴りしかあるまい。

追記 (12/7/25)
 ラスト3回だ!
 エピローグに1話つかうとすれば、実質あと2話しかない。
 いや、もうエピローグは無いかも。
 最後に刃牙が(勝利か敗北の)咆哮をして、投げっぱなしな感じで終わるかもしれない。
 夢枕獏先生も小説の餓狼伝は、疲れていて負けそうだから丹波との決戦の場から走って逃げる松尾象山というイメージだと言っていた。
 投げっぱなしぐらいのほうが、想像の余地があって良いのかも。

 さて、前回のラストからイロイロな感想・予想がよせられています。

> >しかし、『巨凶ではない…』ってなんだろう。
> ここなんですが、つまり『勇次郎は巨凶じゃなかった』ってことなんじゃないですかね。
> 『息子の前ではただの強すぎる格闘好きな親父に過ぎない』って意味だと自分は思いました。強すぎるが常識を超えてるのがアレですが……。

 これは深いですね。今まで人を殺傷しつづけてきた巨凶・範馬が愛を自覚してしまった。もう巨凶ではない。
 ストライダムは、勇次郎の強さを支えているものが精神の強さと言っていた。
 優しくなると弱くなるのかも。
 愛が人を弱くするなんて、非道徳的なオチが逆に巨凶だ。


> 結局いつもの相手が追撃やめる→回復→ゾンビアタックで勝利の流れか
> 相手の譲歩ありきの勝利じゃん

 刃牙とゴキブリ師匠はきっちりトドメを刺せってことですね。
 逆に言うと、勇次郎もトドメ刺しとかないと復活しちゃう。


>>花田が、ズールが、シコルスキーが来てくれれば!
> とらさん、両玉を蹴りつぶされて宙を舞った、リチャード・フィルスをお忘れです。

 しまった! 忘れていた! おそらく刃牙史上の金的打撃による最大高度・最長距離を記録した人なのに。追加しておきました。


> 蹴ったのは。
> @バキの背中が地面を蹴った。
> ⇒戦い継続。これはない。残り3話で収まらない。
> Aこずえがバキを蹴った。
> ⇒勇次郎、独歩でさえ、「もういいよ・・・」ムードなのに、ハイテンション。
>  バキにキツケ。涙でなく、頭にまたがり、小水。バキがこずえを肩車。
>  おしみない拍手でフィナーレ(次回作に入りやすそうな終わり方)。

 確かに刃牙が立ち上がっちゃうと、3話で終わるのが難しそうだ。
 普通なら立つだけで1話消費しちゃうもんな。
 花山も痛がる梢江キックってのは、ありそうで怖いですね。
 でも、これも梢江キックだけで1話消費しちゃいそう。
 のこり話数が圧倒的に足りない!


> 「巨凶ではない」そのまんまの意味だと思いますよ
> 加撃しない=優しい=巷で言われているような巨凶ではないイイ親

 勇次郎も優しいパパせつがまた一つ。
 世間では凶悪な犯罪者だったけど、わたしには優しいパパだった! みたいな感じで、ちょっと困った感じですけど。


> 多分範馬一族その他はカエル型宇宙人みたいに永久歯が抜けても
> 超永久歯 超々永久歯が生えてくるんでしょうw

 たまに歯が生えてくる世界がありますね。『ろくでなしBLUES』とか。


> 「蹴ったな…」の台詞に、何となく「地球拳で6400km地下の核を蹴ってバキが動いたのか?」などと思ってしまったw

 ゲバルの地球拳も投げっぱなしの技だった。
 せめて成功例を見せてから負けて欲しかったな。

>>ついにラストまで一ヶ月をきった。
> 休載あるで?
 9月にはバキを描いていないという板垣先生の言葉を信じるなら、あと3回休むチャンスがある!


2012年7月26日(35号)
第3部 第310話 巨凶からの贈り物 (969回)

 残すは。あと3話ッッ!!
 もう、後がないッ!
 刃牙よ、このまま寝ていたら終わってしまうぞ。
 立ち上がるんだ。
 いや、3話内で終わりたいのなら、そのまま寝といたほうが安全かもしれないが。

 もちろん刃牙は寝たまま終わるような男じゃない。
 勝利を確信してさろうとする勇次郎を止めた。
 なにやら"蹴った"らしい。
 とりあえず無礼っぽい行動が刃牙らしい感じだ。

「蹴ったな」
「歩き去る 俺の横ッ面に一パツ」
「見舞いやがった」


 念だ!
 いや、リアルシャドーか?
 とにかく、刃牙の戦うイメージが勇次郎の頭を蹴った。
 本人は寝返りをうつのが精一杯という状態だ。
 しかし、心は折れていない。気力はのこっている。

 刃牙の蹴りは、とうぜん勇次郎だけに見えて観客には見えない。
 超常現象だな。
 また新しい都市伝説が生まれてしまう。
 都市伝説の親子喧嘩だったけど、はじまってから新作の都市伝説が生まれまくりだ。

 コレは勇次郎の願望が生みだしたリアルシャドー(妄想)かも。
 妄執といえるほど、息子を愛しているのだ。
 と、思ったけど刃牙はちゃんと意識して闘志をぶつけている。
 刃牙の目は死んだままだ。
 もしかして、幽体離脱してンじゃね?

 とにかく、一流の戦士である勇次郎は刃牙の闘志体の攻撃を味わう。
 エア刃牙のくりだす攻撃は鋭く、元気だ。
 妄想の刃牙は、トランクスにテーピングという地下闘技場スタイルをしている。
 寝ている刃牙と格好がちがう。理想化された刃牙なのだろうか?

 とにかく勇次郎はRS(リアルシャドー)刃牙の攻撃を堪能している。
 虚空にむかって「ふむ……」「ふむ……」「ホウ…」と口走る様子は完全に危ない人だ。
 いや、今までも地上最強に危ない人だったんだけど、違う方向に危険です。
 観客の中にいる武神・愚地独歩はRS刃牙のコトを理解できているようだ。

『闘志……… なお衰えず』
『見るに堪えん』


 なんかネガティブ(弱含み)な感想だ。
 つまり、悪い意味で言っているようだけど良くワカらん。
 刃牙が死ぬほど力を振りしぼってRS攻撃しているのが、悲しく見えるのだろうか。
 それとも、けなげで悲壮感が出すぎていて見てられないのかも。
 けなげや悲壮感は、チョット刃牙のイメージと違うけどな。

 刃牙の闘志に勇次郎はどう答える?
 と、手をポケットから抜いた!
 これは武士で言えば抜刀した状態である。
 つまり戦闘体勢にはいった。
 ヤる気かッ!?

「フフ……」
「わかった…………」
「刃牙……」
「もういい」


 ナニをやる気だ!?
 RS刃牙ですらオドロいて攻撃の手をとめてしまう。
 妄想体にすら精神的動揺を与える。さすが勇次郎だ。
 幽霊相手を説教してへこませたり、ビビらせて失禁させるぐらいはヤる!

 勇次郎は腹の前に両手をだす。
 なんの構えだ?
 どんな動きか?
 勇次郎がする謎動作の正体に気がついたのは、美少女・松本梢江だった。
 あ、ちゃんといたんだ。

「………え?」
(ウソでしょ…)

 る…

 なぜか、泣いた!
 美少女の涙で全米No.1ヒットだよ。
 なんで泣くの?
 泣くぐらいなら、眉毛を整えろ!

 リアルシャドーにはリアルシャドーだッ!
 勇次郎もリアルシャドーを開始した。
 だが、刃牙と戦うのではない。
 別の戦いだ。

『と!!!』
『豆腐!!?』

『夥しい数の見物人が』
『確かに目撃した』
『地上最強の手が』
『慣れた手つきで』
『かき回す"鍋"……』
『刻むネギ…………』

『漂う匂いまでもが……』

『それほどまでに…』
『父親の動きは完璧だった』


 リアルシャドークッキングだ!
 なぜか料理対決になった!
 どんな芸だよ!?
 すごい芸人だよ。

 なんだ、"慣れた手つきで"って!
 アンタ、毎朝みそ汁つくってんのか!?

 何から何までツッコミどころ満載の芸であった。
 完璧ゆえにツッコミどころ満載である。
 もう、範馬勇次郎なら、ナニやっても芸になるよね。
 またまた新手の都市伝説が誕生しちゃったよ。
 地上最強の生物といわれている男は、パントマイムも超得意なのだ!

 範馬勇次郎が作りしエアみそ汁だ。
 いったい、みそ汁をどうやって使用(つか)うのか?
 みそ汁で顔を洗って出直して来いってコトかも。
 いやいやいや、範馬勇次郎は武器を使用しない男だ。
 幻想とはいえ、みそ汁の武器化などありえない。

「おい」
「出来たぞ」
「起きろ」
◆「シャドークッキング」で息子へのみそ汁完成ッッ!!?
 先生!! 打ち合わせと
 全ッ然違うじゃないですか!!?(担)
 最終回まぢかで、まさかの「打ち合わせと違うじゃないですか」が二度目の炸裂だ!(一回目は19巻 150話
 そして、刃牙がたつ!
 みそ汁の芳香に誘われるかのように立ちあがる。
 範馬刃牙、復ッ活ッ!

 ラスト2回で主人公復活だ。
 このタイミングで立ちあがって、あと2回で本当に終わるのか!?
 あと二ヶ月つづくといわれても、ふつうに信じちゃうよ。
 打ち合わせとは全ッ然違うけど、次回へつづく!


 刃牙のリアルシャドー能力は天井知らずに高まっている。
 いや、刃牙とまだ戦いたいという勇次郎の無意識と刃牙の闘争本能が共に作り出した虚像かもしれない。
 そして、勇次郎は刃牙を優しく(?)起こす。
 みそ汁の匂いで目覚めさせるなんて、アンタはお母さんですか!?
 いや、あんまり考えたくないけど、新妻のつもりかもしれない。

 どちらにしてもラブラブの起こしかたですよ。
 女子更衣室でパンツやらブラジャーをかぶったりポケットの中に入れたりした状態で見つかった男なみに、言い訳不能だ。
 腕利きの弁護士やとっても覆せない。
 刃牙が大好きなのがバレバレだ。

 刃牙はかつて勇次郎に飯を炊いてほしいと言っていた。(25巻 202話
 それに対する勇次郎の答えは、力尽くでしたがわせろ、だ。(27巻 219話
 ところが刃牙は弱ることで勇次郎にみそ汁をつくらせた。
 まるで北風と太陽ですね。

 勇次郎にみそ汁をつくらせた。
 これは、刃牙の勝利といってイイのかもしれない。
 刃牙は勇次郎相手に、自分のワガママを通したのだ。
 逆にいうと、勇次郎が自分のワガママを犠牲にするほど刃牙を愛しているのかも。

 梢江が涙を見せたのは、親子愛に感動したからだろうか?
 それとも、雌の本能で自分がないがしろにされる予感があった、とか?
 どちらにしても、勇次郎が見せた"刃牙への愛"がポイントだったと思う。
 刃牙を復活させるのは、本当ならヒロイン梢江の仕事なんですけどね……
 イヤボーン効果ですな。

 刃牙は傷つき、立つのがやっとかもしれない。
 だが、もう勝ったも同然だ。
 あとはどうオチをつけるのか、なんだけど……

 もう、殴って決着とかそういう状態じゃなくなっている。
 少なくとも刃牙は、もう出せるものは全部出しているハズだ。
 ならば、刃牙は勇次郎のエアみそ汁にどうこたえるべきか?

 シャドーにはシャドーを。
 刃牙がエア飯炊きで対抗だ。現実なら飯を炊くのに時間がかかるけど、リアルシャドーなら問題ない!
 エアみそ汁に、エアご飯、エアちゃぶ台を用意すれば、食事会の第二ラウンドだ。
 そろそろ夜明けかもしれない。
 朝日のなかで、幸せなエア家族団欒となる。

 範馬刃牙、完!
 なんという大団円だろう。
 そして、勇次郎がエアちゃぶ台をひっくり返す!
 TAWAKEッ!
 意味不明のまま、終わる。
 最終回は、むしろ投げっぱなしのほうがふさわしいのかも。

 しかし、どーいう打ち合わせか知りませんが、"全ッ然違う"とは穏やかじゃない。
 常に読者の予想を破壊してきた範馬勇次郎だ。
 作者の思惑や、編集部の意向も通じないのかも。
 ラスト2話、はたして世界は範馬勇次郎を押さえこむことができるのか?
 でないと、ラストは……範馬刃牙・未完! になってしまうぞ。

追記 (12/8/1)
 先生!! 打ち合わせと 全ッ然違うじゃないですか!!?(担)
 ラスト2回しかないのに大丈夫なんだろうか?
 普通に考えたらダメなんだろうけど。

 ジャックのときも打ち合わせと違ったらしいが、たぶん最終的な着地点はかわらなかっただろう。
 ならば、刃牙も着地地点はかわらないハズ!
 でも、着地までの時間はどーなんだろう。

 妙なアクションを入れちゃったから時間がかかるかもしれない。
 そうなると、尻切れトンボで終わるかも。
 最後に両者殴りあうところで、完! となって時間切れという展開もあるだろう。
 それでこそ、打ち合わせと 全ッ然違うじゃないですか!!? だよ。

 あと2回というのが信じられないぐらい、オチが見えてこない。
 『範馬刃牙』はどこに向かおうとしているのだろう。

 未回収のエピソードは外伝として描いていくと板垣先生は言っていた。
 烈海王のボクシング挑戦と、地下格闘技場スペシャルマッチが待っている。
 さらに現在やっているオリンピックが板垣先生に何らかの化学反応を起こす可能性もあるだろう。
 オリンピック戦士を屠るのは刃牙シリーズの常套手段だ。
 試し割りの素材として強いもの・頑丈なものを破壊するというアピールなのだが、オリンピック選手ならいうことあるまい。


2012年8月2日(36+37号)
第3部 第311話 親父の味 (970回)

 最終回まで2話ッッ!!
 時間のないこの状況で、範馬勇次郎のとった行動は、エア味噌汁つくりだ!
 あまりにリアルな動きで観客たちも匂いを感じるほどだった。
 勇次郎のもつ強力な精神力が迫力となって、観客たちを説得してしまったのだろうか。

 刃牙のリアルシャドーは、格闘知識をもたない人間に見えないらしい。(1巻 7話
 勇次郎のリアルシャドー味噌汁はみんなに見えている。
 やっぱり勇次郎のほうが精神力が強いからだろうか?
 いや、格闘技とちがって味噌汁はみんな知っているからだろう。
 となると、オリバだけ見えてなかったりして。
 いやいやいや。オリバさんは物知りだからミソスープぐらい知っているか。

『見物人(ギャラリー)はハッキリと見た』
『掌の上で切れ目を入れられる豆腐を』
『まな板の上で刻まれるネギを』
『巨凶 範馬勇次郎 会心の作』

『豆腐のお味噌汁を』


 範馬勇次郎の手料理を見ることができたみんなは超ラッキーだ!
 なんでも知っている本部さんでも、勇次郎の手料理は知るまい。
 檄レアな勇次郎の味噌汁は効果も高いぞ。レアというよりエアだけど。
 この味噌汁の効果か、戦闘不能だった刃牙が起きあがった。
 やはり奇跡をよぶ味噌汁だ。

 意識もなかったハズの刃牙が体をおこして、正座する。
 ケンカ相手を蘇生させてどうする。
 敵に塩をおくったつもりか。
 いや、塩というより味噌だな。

『前代未聞……』
『空前絶後の』

『エア夜食!!!』


 夜食かよ!
 味噌汁だから朝食かと思ったぞ。
 刃牙は(そんな時間か……)と言っているが、つねに夜食の習慣があるのだろうか。

 エア味噌汁を支えるのは、エアちゃぶ台だ。
 さすがにエア座布団とかは出てこない。
 範馬一族には座布団など不要なのだろう。
 コンクリートのうえに直座りでじゅうぶんだ。

 刃牙の対面に勇次郎もすわる。
 いつの間にか味噌汁には箸と箸置がそえられていた。
 エア小道具が増えている!
 ふたりのエア夜食はどこまで高まるのだろう。
 そのうち、エア朱沢江珠が出てきたりして。

(こんなものしかねェ…)

(充分すぎるほどです)
("お父さん")

(よしやがれバカ)
("親父"でいい)


 エア家族団欒だ!
 ものすごいイチャつきようである。
 勇次郎がかなり嬉しそう。

 大勢に見守られるなか、コンクリートの上での夜食だ。
 かなりコンディションは悪いが刃牙はかまわないと言う。
 マゾだから、羞恥プレイも大好物なのだ。
 いちおう場所なんて関係ないというスタンスみたいですが。

 正座している刃牙に、勇次郎は膝をくずすようにうながす。
 団欒だからリラックスだ。
 さっきまで命をかけて殴り合っていた二人とは思えない空気をかもしだしている。

 ところで、範馬親子は口を開かずに会話している。
 フキダシが通常の線で囲うものではなく、モノローグのようなフラッシュ系フキダシだ。
 親子は念で会話をしているのだろうか?
 リアルシャドーをこじらせて、とうとう会話までリアルシャドーしているぞ。

 勇次郎は念話で刃牙の箸のもちかたに文句をいう。
 持ち方が成ってない。
 先ほどの夕食前に礼儀をちゃんと教えられたことがないと刃牙が言ったので、あわてて礼儀を教えるつもりだろうか。30巻 249話
 だが、刃牙は料亭じゃないんだからと無礼をつらぬく。

 でも、日常でできないことが料亭でできるとも思えない。
 練習でできない技が本番でできると思うな!
 でも、刃牙の場合は興奮状態になって本番で最大のパフォーマンスを発揮する男だから侮れない。
 勇次郎の本音も礼儀作法を教える事じゃなかろう。
 問題は美味いかどうかだ。いや、もっと突き詰めると刃牙の好きな味かどうかが重要である。

(ああ……)
(美味い…)


 刃牙は大満足のようだ。
 勇次郎もちょっと嬉しそう。
 そして、勇次郎のちょっと嬉しそうは、スゴク嬉しいってコトだ。
 勇次郎はツンデレだし。
 喜怒哀楽の喜を表現しにくい男だし。あと、楽はもっと出さないな。

(ちょっと しょっぱいけど………)

「!」


 物言いがついた!
 今まで無言を貫き通してきた勇次郎が思わず「!」と息を漏らしてしまうほどショッキングだ。
 ちょっと勇次郎さん、いくらなんでもビックリしすぎじゃね?
 だが、勇次郎は1コマつかって気持ちを立て直す。

(フフ……)
(味噌汁の味ひとつわからんか……………)

 汗かいとる!
 一筋の汗がチョットだけ出ているぞ。
 動揺しすぎだ、勇次郎!
 そんなに、しょっぱいのがショックか!?

 思い返せば、勇次郎は味見をしていなかった。
 味見だ!
 漫画やアニメにでてくる料理下手ヒロインが最初につっこまれるであろう穴が「味見しろよ!」ですよ。
 勇次郎さんも味見してください。_orz(土下座)

 ワイルドな男料理には味見が不要といいたいのだろうか?
 いや、数多くの技を身につけている勇次郎は繊細なこともできる。
 もっとも、少量を味見するのと食事で大量に口にふくむのとでは味の感じかたがちがう。
 味見をしても失敗することがあるのだ。

 人は運動をすると汗で体内の塩分がでていく。
 そのため動いたあとは、普段より塩辛い味を好むという。
 勇次郎は刃牙の疲労を計算して塩分を増やしたのだが、多く入れすぎたのかも。
 刃牙の疲労度を読み誤ったってコトか?

 ただ、しょっぱいという文句は刃牙のイチャモンかもしれない。
 刃牙は過去に勇次郎とのリアルシャドー食事会をしている。
 そこで刃牙はリアルシャドー親父に、味噌汁がしょっぱいと文句を言っていた。(25巻 207話
 刃牙はこういう日常のいさかいからケンカをはじめたいと思っていたのだ。
 って、今から再スタートなのか!?

「くだらん」
「真似事は」
「しょせん真似事」
「"水"ほどの味もない」


 会心の味噌汁にモンクをつけられて勇次郎が怒った。
 とうとう声に出して怒りだしたぞ。
 余裕がなくなっている証拠だ。

 自分からエア味噌汁を始めたのに、水ほどの味もないと言いだす。
 過去の自分を否定するような矛盾した発言だ。
 勇次郎は刃牙が好きすぎるあまり、追いつめられている。
 肉体的に刃牙はピンチかもしれないが、精神面で優位だ。

(あ……そう)

「ああ〜〜〜〜ッッ」


 刃牙は更なる暴挙にでた。
 味噌汁を置いたちゃぶ台をひっくり返す。
 エアちゃぶ台返しだ!
 思わず勇次郎も叫んじゃう。

 ちゃぶ台返しが刃牙の反撃だ。
 『巨人の星』で有名なちゃぶ台返しは父親による爆発だった。
 それを息子がやる。
 まさに親子喧嘩だ。そして、下克上の暴挙である。

 これで親子喧嘩はふりだしに戻ってしまった。
 ラスト1回で、どう収拾をつけるのか!?
 もしかしたら、つけない。いや、つかないのかも。
 とにかく次回だ。
 次回、最終回!

 予想のつかない状態のまま最終回をむかえてしまう。
 最終回のひとつ前なのに、これほど終わりそうにない感じがするのは初めてだ。
 次回、どんな結末がまっているのだろう。
 もしかして、エア最終回だったりして。

追記 (12/8/15)
 ついに、明日発売のチャンピオンで『範馬刃牙』が最終回だ。
 コミケや、その他で「刃牙はこれからどうなるのか? 放置されたままの烈とかどうするのか?」「本当にあと一回で終わるのか?」と聞かれたり聞いたりしまくった。

 今後の刃牙については板垣先生自身が語っている。
 『ラジオデイズ:対談 板垣恵介の巻』感想追記2 でも書きましたが、とりあえず親子喧嘩の決着をつけて、その後の話に移行する予定らしい。
 また、板垣先生は『板垣恵介が「バキ」トーク、あと10回以内で連載終了を宣言』でも「まだまだ描きたいことはたくさんあるし、『バキ』は実家のようなものだからまた戻ってくる」と言っている。

 おそらく遅い夏休みのあとに刃牙シリーズは再開するのだろう。
 烈海王のボクシング挑戦編が置きっぱなしだし。
 ボクシング王者のボルトは、ロンドンオリンピックのおかげで二倍にパワーアップしている。

 現実の短距離王者ウサイン・ボルト脊椎側湾症の持病をもっている。
 病気のハンデを超えて王者になったのだ。
 しかし、異形の背骨というキーワードは板垣先生の脳にスパークしそうだ。
 彼も実はハンマだったのだよ! とか。

 だが、最大の問題は当面のラスト1話だ。
 あと2話しかないのにエア家族団欒とかやってる場合じゃないでしょ!
 本当に間に合うのだろうか?
 まったくわからない。

 お互いに殴りあってフラッシュの中で完結とかになりそうだ。
 または、刃牙が放り投げたエアちゃぶ台とエア味噌汁が落ちてきて打撃と火傷で両者ノックダウンかも。
 とにかく、予想不能だ。
 いきなり刃牙三倍祭りとか、なんかの漫画を強制的に休ませてページもらったりしないと終わらないんじゃないか。

 次回が最終回だというのに、まるで終わる形が見えてこない。
 こういうのが刃牙らしい最終回なのかも。
 たとえ、決着がつかなかったとしても。


2012年8月16日(38号)
第3部 最終話(312話) さようなら (971回)

 ついに範馬刃牙が最終回だ!
 グラップラー刃牙が1991年にはじまってから、21年の長きにわたり闘いつづけた範馬刃牙の物語もこれで決着となる。
 範馬の親子喧嘩、最終ラウンドのゴングはエアちゃぶ台返しとしてはじまった。

 せっかく勇次郎がエア調理してくれたエア味噌汁をエアちゃぶ台ごと宙に舞いあげる。
 思わず勇次郎も大声をあげてしまう非常事態だ。
 だが、範馬勇次郎の反射神経は野生の獣なみである。
 すかさず、空中のちゃぶ台・椀・箸をつかんでいく。
 ものスゴい早業だ。ジャッキー・チェンでも、こうは行くまい。

 だが、エアの悲しいところ。つかんだ椀や箸が消えてしまった。
 両者の合意が解けてしまったので、共同妄想も失われたのだろうか。
 二人の共同作業が消えてしまい、勇次郎も悲しそうだ。
 あの範馬勇次郎が、なんて表情をしていやがる。

「親父……」
「救われたなァ……」


 なぜか刃牙が勇次郎を救った宣言している。
 ちゃぶ台返しという暴挙をしておいて、なんでココまでえらそうなんだ?
 勇次郎もハンドポケットで怒っている。
 と、思ったら様子が少しおかしい。

 勇次郎が汗ダラになっている。
 こんな困った勇次郎はゲバ純の妄想勇次郎以来だ!8巻 53話
 つまり、リアルじゃ初めてってコトになる。

 そういえば手をポケットに入れるのは心を隠すという心理状態らしい。
 勇次郎のハンドポケットは心をかくす行為なのかも。
 意外とシャイなんだろうか。

「その通りだ………」
「思い当たるフシがある」
「あの味噌汁は少ししょっぱい」

「認めたッッ」
「しょっぱいんだ……」


 観客もどよめく。範馬勇次郎、痛恨の味ミスである。
 味見していないのに、なにを思い当たるんだろう。
 そもそもエア調理なのに、どこをミスったというのか?
 思い込みが足りなかったのか?

 とにかく勇次郎はどこかでミスをしていたらしい。
 自覚できるようなミスをすれば、体の動きにも動揺が生じる。
 刃牙はダウンしながらも勇次郎のエア調理をしっかりと観察・分析していたのだろう。

 勇次郎は自分のミスを認めたくなく、嘘で誤魔化そうとした。
 迫力があれば説得力が生まれるこの世界では、嘘だろうと迫力で誤魔化せる。
 だが刃牙には迫力が通じなかった。
 つまり刃牙は勇次郎の迫力をハネ返せるだけの強さをもつようになったのだろう。

「俺の動揺を察したオマエが」
『ちゃぶ台で……… 俺を救った……………』


 救ったのか!?
 味付けのミスを指摘して追い込んだだけに見えたのだが……
 ミスはミスとして指摘して、ちゃぶ台返しで無かったことにしたのか?
 範馬親子の会話は意味がつかみにくい。

 自分のミスを認めて気が楽になったのか、勇次郎の汗が引いた。
 勇次郎はポケットから手をだしている。
 今の勇次郎はきっと素直だ!
 ツンが裏返ってデレった!

「強さの最小単位とは」
『"我が儘を通す力" "意思を通す力"』
「貴様はこの俺を地上最強を炊事場へ立たせた」
「我が儘というならこれ以上はあるまい」
『ここに………』
『地上最強を名乗れ』


 範馬勇次郎が刃牙を地上最強と認めた!
 310話感想で書いたとおり、勇次郎にメシをつくらせたのは我が儘を通したことだ。
 刃牙は勇次郎を意のままに動かした。
 つまり、刃牙の勝利なのだ。

 素直になった勇次郎は刃牙を地上最強と認める。
 衆目のなかで、範馬刃牙が地上最強と認められた。
 二代目"地上最強の生物"の誕生だ!
 観客たちは伝説が生まれる瞬間を目撃し、興奮の声をあげる。

「決着の際…………」
「どちらが高見に立っているのか」
「頭の位置」
「頭部の標高が上にある者」
「見下ろしている者こそが勝利者」
「親父の言葉だ」
『親父は確かに俺を見下ろし去っている……』
「あの時 俺は殺されていた」
「争えない事実」
『俺の敗北(まけ)です』


 鼓膜を破られている刃牙には勇次郎の声が届いていない。
 さっきまで無礼な態度とっていたのに、急にしおらしくなった。
 勇次郎の威圧感が消えたので、対抗意識も消えたのだろうか?
 殺気を消せば、お互いに認め合える。
 二人は、そんな仲だったのだろう。

「勝負ありッッ」

『各々が共に』
『自己(おのれ)にとっての最大を差し出した』
『地上最強の』

『親子喧嘩…………』

『ここに終了……!!!』


 長き戦いの決着を告げるのは、徳川さんだった。
 やっぱり地下闘技場の主催者は決着への嗅覚が鋭い。
 だが、なにがどう勝負あったのだろうか?

 勝ったのは誰だ?
 強いのはどちらか?
 そんな優劣を比べるのではない。
 どちらも全力を出して、相手を最大限に認めた。
 この形こそが決着なのだろう。

 刃牙と勇次郎はかたく手をむすぶ。
 敵が欲しいという欲望から始まり、憧憬、嫉妬、憎しみ、殺意、敬意ときて認め合う。
 複雑な感情が入り乱れた果てに、範馬親子は手をむすんだ。
 刃牙の母である江珠殺害の真意とかイロイロ投げっぱなしだけど、とにかく決着だ。

「いい気なもんだ…」

「治ってやがる…」


 そして、もう一つの奇跡が起きていた。
 徳川さんの病気が治った!
 クララが立って歩いたどころの奇跡じゃない。
 立てなかったけど、カポエイラを極めてメチャ強くなったって感じの奇跡だ!

 徳川さんに奇跡を起こし、新たな都市伝説を生みだし、親子喧嘩は幕を閉じる。
 これじゃ、地下闘技場スペシャルマッチも不要になってしまいそうだけど。
 元気になったら元気になったで、快気祝いスペシャルマッチを開催しそうだ。

 刃牙は勇次郎を倒せなかった。
 だが、勇次郎の心を折る……ほどじゃないにせよ、曲げるぐらいのダメージを与えている。
 勇次郎を倒し、踏みつけるのではなく、並び立つ。
 これが刃牙にできる最高峰だったのかも。
 バキシリーズ第三部『範馬刃牙』完!


 そして、次回作だ。
 具体的な日時はのっていないが『我が青春の陸上自衛隊 習志野第一空挺団シリーズ』を執筆するらしい。
 今までヤングチャンピオンで二回掲載されている陸上自衛隊モノの最新作をやるようだ。
 画業20周年を記念して、増刊で予告されていた新作がついに描かれる!

 『習志野第一空挺団シリーズ』は名作なんですが、どちらも入手困難です。
 どっちも40ページの作品だから、もうちょっと追加すれば待望のコミックス化するかもしれない。
 自衛隊の中でも精鋭無比といわれる最強の部隊・習志野第一空挺団の話は本当に面白いからな〜

 でも、烈のボクシングはどうなるんだ?
 とりあえず新作第一弾と書いてあるので、すこし刃牙から離れてイロイロやってみるのかも。
 今週のチャンピオンのアンケートには、板垣先生に描いてほしいジャンルがのっている。
 みんなも応募してみよう。最近は携帯からでも応募できるしね。
 え〜と、とりあえず「(9)料理・グルメ」か?

 徳川さんの病気が治ったのはどんな奇跡なんだろう。
 武術・格闘技は戦争の延長で強くなるために編みだされたといわれている。
 だが、神に奉納する神事としての側面もあるのだ。
 相撲漫画『バチバチ』でも言っているが、相撲も神事の側面が強い。

 地上最強といわれる範馬親子は神の領域に近い。
 その二人が戦うのだ。
 これはもう神話の戦いであり、神もみんなに混じって応援するほどのモノだろう。
 奇跡ぐらいおこしてみせる!

 なによりも『範馬刃牙』が無事に終わったコトが奇跡なのかもしれない。
 よくぞ、1話でまとめたものだ。
 正直なところ、どちらかが完膚なきまでに敗れる完全決着が見たかった。
 範馬勇次郎が敗北する姿か、刃牙がやっぱりかなわず心砕ける姿を期待していた。
 でも、次善のエンディングとして親子の和解ってのもいいかもしれない。

 強さこそ美しく価値あるものとして進んできた範馬一族が譲り合いの精神を身につけた。
 歴史的な瞬間だ。
 そして、バキシリーズは(たぶん)まだ終わっていない。
 妄想の余地をのこしてのいるので、明日の刃牙を思い浮かべることができる。
 でも、とりあえず範馬一族は置いといて烈と地下格闘技スペシャルマッチを開催して欲しいな。

 なんにしても、21年のあいだ本当に楽しませていただきました。
 楽しみ、かつ突っ込む。
 この喜びを再び味わえる日が、近いことを祈りつつ……

 っと、来週のチャンピオンは板垣先生のロングインタビューが掲載されるらしい。
 素でもムチャ発言がよく飛びだす板垣先生だけに、来週も突っ込みどころ満載だろうな。
 というわけで、来週も感想を更新します。


2012年8月23日(39号)
板垣恵介ロングインタビュー

 先週『範馬刃牙』は最終回をむかえた。
 そして今週は板垣先生のロングインタビューがのっている。
 最終話を書き上げた直後のインタビューらしいが、まだ達成感とかがないらしい。

「物語は完結したんだけど、まだ走り続けている感覚。」

「この最終話は、あくまで『範馬刃牙』の完結。この世界観はずっと続くという感覚は、最終話を描き始める前から持っていたことだから。さっき「ピリオドを打った」と言ったけれど、文字通りひとつの句読点を打ったという感覚しかない。」


 というコトで刃牙世界はまだまだ続くぞ!
 板垣先生は「自分を、刃牙世界のドキュメンタリー作品を撮影している監督と見立てて」いる。
 だから、時に手に負えない展開になって傍観者風のコメント出したりするんですね。
 そりゃ、担当も「打ち合わせと 全ッ然違うじゃないですか!!?」となるワケだ。
 ライオンが打ち合わせどおりに狩りをしてくれると思うなッ!

 寝てばっかりのライオンにいらだつ時もあるだろう。
 だって、ドキュメントだから。
 作者ですら先が見えないライブ感が刃牙のたまらない魅力である。
 もっとも、思惑がハズれてライオンが一向に起きないという危険もあるのが困ったところだ。
 アライJr.とか、作者がどれだけ煮ても焼いても美味しくならなかったし。

 『範馬刃牙』は刃牙と勇次郎がお互いをたたえあって終わった。
 これは、勇次郎の完成度が上がるにつれて、刃牙も勇次郎へ憧れるようになったことに原因があるそうだ。

「作者でありながら俺自身が勇次郎を讃えている気持ちが反映されていったんだな。」

 勇次郎は作者すら憧れてしまう存在だったのだ!
 確かに、『グラップラー刃牙』時代だと刃牙は勇次郎を母のカタキとして憎んでいた。
 だが、『バキ』時代で徐々に勇次郎の強さを刃牙が讃えるようになっていく。
 『範馬刃牙』が始まったころには、すでに勇次郎をあきらかに尊敬していた。
 戦い、相手を理解するにつれて、尊敬が勝ってきたのだろう。

 または、刃牙が巨凶範馬となり、勇次郎の価値観を受けいれるようになったのかもしれない。
 刃牙は方向性はともかく成長した。
 だが、それ以上に勇次郎も成長したのだ。
 今じゃ、完全に人間の領域を超えて、頭蓋骨まで変形しちゃっているし。

 インタビューのなかで板垣先生の人となりが垣間見えるところがいくつかある。
 当時担当だった沢編集長が資料や道具を買ってくれとポケットマネーで30万だしてくれた。
 ポンポンと資料を買う板垣先生に、もっと吟味してくれと言って、自分の感性でチョイスしていると言い返す。
 感性の買い物に口を出されるのはイヤらしい。

 花田が登場した時、キャラが弱く刃牙と一試合戦えそうになかった。
 沢編集長が「こういう展開になったのは自分のせいだ。申し訳ない」と言ったら、自分のミスなのに勝手に謝ったのが許せない。
 で、カッとなって花田を瞬殺して斗羽を出した。

 ココは作家を怒るのが正解だったのだろうか?
 板垣先生は扱いにくいなぁ。
 自分の尻は自分で拭きたい人なのだろう。

 最大トーナメントの選手入場で60ページという刃牙三倍祭り状態の原稿を描いたときは、5日間で睡眠時間は1時間だった。
 人間の限界に挑戦するような荒行だ。
 さすがの板垣先生もモウロウとしてくる。
 で、アシスタントが刃牙が間違っていると恐る恐る指摘したら、

「「作者の俺が描いた刃牙になんでおまえがクレームをつけるんだ!」って怒鳴り返した。よくよく見たら刃牙の指が6本………(笑)」

 やっぱり、指摘しても怒るのだ。
 ほめようがミスを指摘しようが怒るのに違いはない。

 板垣先生の怒るポイントって、自分のセンス・作品に対する自負心に根ざしている。
 この圧倒的な自負心が刃牙世界を支えているのだろう。
 ミスも含めて全て受けきるという心意気だ。

 そして、次回作の発表日はまだ未定だった。
 ヤると言ったからにはヤるんでしょうけど、いつヤるんだろう。
 自衛隊モノ楽しみにしています。
 でも、変に催促すると、怒ったりしそうだよな。


2012年8月30日(40号)
範馬刃牙最終回について

 刃牙ののっていないチャンピオンはすこし寂しい。
 と言うワケで、ちょっと刃牙最終回について振りかえってみる。

 最終回感想で書いた通り、完全決着が見たかったが和解エンドでも良いのかも、ってのが最初の感想だった。
 2週間たってみると、刃牙の物語はまだ終わっていないから、あのエンディングで良かったのかもしれないと思うようになっている。
 一刻も早く新作プリーズって感じですね。

 刃牙シリーズを見直すと、気がつく点がある。
 それは刃牙の出番が減って、態度が悪くなるところだ。
 まあ、これは定期的にツッコンでいたので、気がつくというより気がついていたって感じだけど。
 原因は刃牙が強くなりすぎた所だろう。

 刃牙は勇次郎と戦う宿命を背負っている。
 勇次郎と戦い勝つためには、同等以上の実力が必要だ。
 しかし勇次郎は作者ですら困るほどのスピードで強くなっていく。
 最終的に一国の軍隊に匹敵する戦闘力とか言いだすほどだ。

 刃牙には勇次郎に追いつく強さが必要なのだ。
 イロイロあって刃牙は勇次郎に匹敵する強さを得ていく。
 だが、そうなると戦う相手がいない。
 『範馬刃牙』になってから刃牙がちゃんと戦った相手はオリバとピクルぐらいだろう。

 勇次郎が最強すぎるのと同じように、刃牙も強くなりすぎたのだ。
 刃牙における世紀のガッカリ対戦「刃牙 vs. 郭春成」「刃牙 vs. アライJr.」は、刃牙が強すぎてマッチメイクに失敗した例だろう。
 中国武術の最高峰・郭海皇の息子と、最高のボクサーであるアライの息子だ。

 刃牙と同じく偉大な父をもつ二世である。
 本当なら同じ境遇同士の二人ということで盛りあがるハズだったんだけどな。
 どっちも一方的に刃牙がボコって終わりだった。
 もし、郭春成とアライJr.が戦ったら、どっちが弱いのだろう。
 なかなか興味深い対決になりそうだ。

 範馬親子喧嘩が終わったことで、ひとつの呪縛が解放された。
 もう、刃牙と勇次郎が戦うという宿命はなくなったのだ。
 ……とりあえず、かもしれないけど。

 今後の刃牙世界は自由だ。
 郭春成とアライJr.が戦ってどちらの心が折れるのか見届ける事もできる。
 もう、刃牙をムリに強くする必要もないだろう。

 新たなバキシリーズが再開したら、今まで以上に自由でカオスな戦いが待っているハズだ。
 夜叉猿とピクルが超野性で戦うかもしれない。
 もしかしたら、強いムエタイ選手も登場するかも。
 いや、それは無いか。


2012年9月6日(41号)
刃牙雑談

 やはり刃牙のないチャンピオンはさびしい。
 浜岡先生も『最近何か物足りないな〜……あっ、バキだ! バキがないんだ! バキバキバキバキバキバキバキバキバキ』とコメントしている。
 と言うワケで、特に意味もなく刃牙の話をしよう。

 また地下闘技場が開かれるとして、気になる戦士は愚地克巳だ。
 右腕を失い、新たな個性を手に入れたらしい。
 いったいどんな戦いかたをするのだろう。
 ちょうどパラリンピックを開催している所だけど、ほんとうに人間って限界がないんだなと思い知らされる。
 五体満足の私より、ずっとスゴイよ!

 もちろん片足の烈海王も気になる。
 だけど、ボクシングで活躍する烈は、あまりに烈海王すぎるのだ。
 変わらぬ烈海王だよ。
 足を失ったハンデがまるで感じられない。

 前にも書いたけど、本当なら烈と克巳は肉体を失ったショックを描くべきだったと思う。
 以前にできたことができなくなるショックと悔しさがあったハズだ。
 加藤と末堂に手も足もでず、「今日はコレぐらいにしておきましょうか?」と言われ、こっそりトイレで悔し涙を浮かべる克巳だってアリだろう。

 板垣先生は加藤清尚選手の復帰をしっかりと追いかけていた。
 交通事故で、一時左足切断という誤報が流れたほどの大怪我をしながら復活た加藤選手だ。
 左足の骨をかなり失ってしまった加藤選手がうけた骨延長手術は、ジャックの元ネタだろう。

 と言うワケで、肉体を失った状態から這いあがる戦士を見たい。
 ちょっと過去にさかのぼって克巳と烈海王の復活をやってもらえないだろうか。
 でも、復活編なんてやっちゃうと、ますます烈海王のボクシング挑戦が放置状態になっちゃうんだよな。


2012年9月12日(10号)
板垣恵介スペシャルインタビュー

 刃牙フィギュアの発売を記念して『別冊少年チャンピオン10月号』にて、板垣先生のインタビューが掲載されていた。
 あいかわらず板垣先生は筋肉大好きですね。
 オリバと筋肉について語る語る。
 ボディービルダーへの興味は尽きる事ないみたいだ。

 大きいだけの巨人は噛ませ犬になるけど、デカいマッチョは強いの法則ですね。
 闘争において力の強さは大きな要素になる。
 刃牙はトンデモバトルをしているけど、パワーの前だと多少の技やスピードじゃ歯が立たないというリアルな部分もあるのだ。

 花山については、最近あまりマッチョにしないように心がけているらしい。
 『ダイハード2』(AA)を例にだして鍛えあげた肉体より、ゆるいぐらいの肉体で戦うほうがカッコイイとなったそうだ。
 ライオンや虎が鍛えないように、パーフェクトナチュラルパワーで戦うほうがカッコイイって理屈ですね。
 花山は飲み食いを自制しないし、トレーニングもしないけど強い。
 天然の強さが魅力なのだろう。

「手のもたらす情報は強さを表現する上ではかなり重要。」

 花山に関しては、手の描写にこだわりがあるらしい。
 格闘家じゃなくても、手ってのは人生があらわれる。
 上野正彦「死体は語る」でも、手はおおくの情報をもたらしてくれると書いていた。

 刃牙たちの拳には多くの情報がある。
 打撃系戦士たちの拳は傷だらけだろう。
 組み技系の戦士たちは、また違った手をもっているハズだ。
 貫手の練習で指を折ったり、ドリアンに手首を切断されたりした独歩の手とかは、名刀のように見ただけでもゾクリとしそう。

 最後に花山の学園ドラマ『創面』について語っている。
 というか、板垣先生は自分がイチバン楽しんでいるのかもしれない。

「「猫の集団にライオンが入ったら、何が起こるか」がコンセプトだから。ライオンが自分の戦闘力を隠しながら猫として生きるとしたら、それだけでエピソードだらけになるし面白くなるに決まっている。」

 コンセプトがコントですね。
 ストーリーよりもシチュエーション重視で。
 バトルよりもコメディー重視って展開でしょうか。
 確かに花山が天然ボケを発揮する話が多い。

 というか、花山は自分が戦闘力を隠せているとカン違いしているよな。
 やっぱトレーニングをしない天然素材は感性が違うんだろうな。
 とことん天然だ。

 怪物が無理に一般生活をおくるってのは、ハズレなしのネタになる。
 範馬勇次郎の小学生編とか人前じゃ読めないほど面白そうだし。
 きっと範馬勇次郎なら九九で人を殺せる。

 ガイアなら合唱コンクールで「奇ッ!」と大声だして全生徒を気絶させそうだ。
 ジャックは食器ごと給食を食べてしまうだろう。
 うむ、やはり超人がムリヤリ学校に通うのはネタになる。
 ふりかえると、わりと無事に学生生活をおくっていた刃牙って、芸人的にはハズレだったんじゃなかろうか。

別冊 少年チャンピオン 2012年 10月号 [雑誌]
別冊少年チャンピオン2012年10月号



2012年9月27日(176号)
板垣恵介スペシャルインタビュー

 『フィギュア王No.176』(AA)で板垣先生へのインタビューが掲載されている。
 週刊チャンピオンでのインタビュー別冊チャンピオンでのインタビューと内容がかぶっている部分もあるが、初見と思われる情報も多い。
 刃牙作品に関して興味深い部分もあるので、ちょっと感想書いてみます。

 板垣先生は、いじめられっ子であり、ガキ大将のいじめっ子でもあった。
 SとMが入り混じった刃牙みたいな状態ですね。
 なんで、こんな状態になったかというと、『当時5歳上の兄貴に、毎日30回くらい相撲を付き合わされてたから、自分でも気付かないうちに強くなってたんですね。』と言うコトらしい。
 なんか範馬勇次郎の教育みたいだ。

 で、体育の授業で相撲をやったら自分の圧倒的な強さに気がついた。
 刃牙が範馬の血に目覚めて強くなったら性格が悪くなったのは作者の実体験なのかもしれない。
 一度いじめられていたから、恨みも加わってキッツイことをやったんだろうな。

 こういう体験があるから死ぬほどの猛特訓が肯定されるのだろう。
 刃牙では科学的トレーニングより根性的なトレーニングのほうが多い。
 ゴチャゴチャ考えるより、行動しろってことだろうな。

 全力でぶつかりあう親子ってのは、やっぱり理想の形らしい。
 越えられない壁としての父と、それにぶつかる息子だ。
 建前でなく本音でぶつかるってのがキーワードですね。
 空気を読むことを強要される現代社会で、本音をぶつけ合える相手がいるってのはスゴいことだよな。
 もっとも、闘争も本気をぶつけ合うモノだから、嘘のない空間かもしれないけど。

 勇次郎のモデルについて、ここでも触れている。
 父親のモデルにしようと写真集を買うときに、マット・ディロンマーロン・ブランドの二人ですこし迷ったそうだ。

 やや嘘っぽい。
 二人の写真集を前に迷ったのは確かだろうが、連載前には最強の父親は考えていなかったと思われる。
 勇次郎の誕生は連載がはじまって、刃牙の戦う理由を問われた時だ。
 連載前から構想があったとは思えない。
 マット・ディロンをモデルにしたとんでもないキャラを作ろうとしていたコトだけは確かだろうけど。

 親子喧嘩は、担当と打ち合わせをしないでひとりで考えていた。
 それでも、大筋の話はするんだけど、エアちゃぶ台返しは、それすら上回っちゃったらしい。

『担当にも「ホントに来週終わるんですよね?」って聞かれましたけど(笑)。』

 読者も、次回最終回とは思えなかったよ。
 なにしろ板垣先生も、どうなるか考えていなかったらしいし。
 刃牙と勇次郎を信じて最終回に突入したそうだ。

 その他、作品へのスタンスとかフィギュア監修でのこだわりとかイロイロと興味深い話があった。
 漫☆画太郎に同業者と言われているってのはスゴい新情報だ。

 刃牙の新シリーズにも言及があった。
 予想を裏切る方向ですでに考えはじめているらしいが、描くのは遠い先にしたいとか。
 自衛隊シリーズの告知もまだだし、刃牙の新シリーズはまだ先みたいですね。
 それまでは、別冊チャンピオンの『創面』で刃牙分を補充だ。

フィギュア王No.176 (ワールド・ムック950)
フィギュア王No.176



2014年1月9日(6号)
バキ再開決定記念 板垣恵介スペシャルインタビュー

 更新サボっててすいません。
 とにかく、バキ再開決定で板垣先生インタビューだッ!

「描く内容は以前から決まっていたので、もういいやってことになったんだ。」
 編集者が刃牙をわすれて油断したころに再開を発表してオドロかせようとしていたら忘れてくれなかったので、再開発表したらしい。
 ……実生活でも不意討ちしなくていいのに。

 刃牙シリーズは予想のつかない展開で、奇襲・不意討ちの作品だったが、作者も同じような人生を実践しているらしい。
 きっと、原稿入れる袋の取り出し口にカミソリを仕込んだこともあるのだろう。
 口にカミソリ!!
 原稿血だらけで、その週の刃牙はお休みです。

「キャラクターを動かしたい! ガタイを良くしたい! そういう欲求は強かった。」
 他紙で連載はしていても、アクションと筋肉が恋しかったそうだ。
 謝男で、拝がいきなりマッチョになったら、そりゃ違和感ありまくりだよ。

 アクションや筋肉を封印することで、逆にその欲求が高まる。
 刃牙から離れるコトで板垣先生は自覚したそうです。

「自分は刃牙屋だ」

 刃牙こそが、ホームであり最大の持ち味らしい。
 持ち味を自覚したってことは、今まで以上にトガったノリになりそうだ。
 アレ以上先鋭化しちゃったらどーなるのか心配でもありますが。

 刃牙は1年半休載だった。
 しかし、板垣先生はしっかりと溜めこんで充電していたようだ。
 これは初っ端から大活劇が展開されるかも。

 新シリーズは、刃牙の親子喧嘩後のレギュラーの心情がテーマになるらしい。
 これは喧嘩中でも見られていた風景だ。
 みなが親子喧嘩を見ていた。ジャックが吼えていた。(第307話
 自分たちとレベルの違いすぎる闘いを見ても、心折れぬ戦士たちがいたのだ。

 刃牙は父との決着・和解を果たした。
 人生最大の目標を達成したといってもいいだろう。
 もう刃牙に戦う理由はないハズだ。

 だが、他の者はちがう。
 圧倒的な力の差を見せつけられたまま黙っていられない。
 刃牙と勇次郎を倒すため、さらなる研鑽を積んでいることだろう。
 でも、勝てるんですかね?

 ところで、烈海王のボクシングはどうなっていますか?
「あぁ! そのことはよく読者にも言われるんだよなぁ……あれは書き残しているな、確かに。」
 うぉおい!
 なんか忘れているっぽい反応だぞ!
 板垣先生、素で忘れていたようだな。
 インタビュアーのナイス質問だった。

 でもって、新シリーズの内容とは、新キャラの登場に尽きるらしい。
 新キャラがレギュラー陣にどう絡むのかに味があるそうだ。
 ピクルの時いらいのインパクトで登場しそうだな。
 ちゃんとパンツはいているんだろうか……

「彼が登場するに至るプロセスが、俺の専門外というか、知らない世界」
 異分野からの刺客ってワケか。
 こりゃ、そうとうな異分野なんだろうな。
 いままでの異分野は、ドクター鎬紅葉や原始人ピクルなどがいた。

 彼らを超える異分野なのだろうか?
 でも、マッチョなんだろうな。
 マッチョだけど、インテリな職業だろうか。
 法律用語を連発して精神的動揺をさせるマッチョ弁護士だったりして。

 刃牙の再開予定は、まだ未定だ。
 桜が先か、刃牙が先か……
 気温があたたかくなると同時に筋肉も温まっていくぞ。
 勝負は春だ!
 ……たぶん。


2014年3月6日(14号)
板垣恵介×山本"KID"徳郁 超雄対談

 刃牙道の連載直前ってことで「板垣恵介×山本"KID"徳郁」二回目の対談だッ!
 なんでも一度目の対談のあとで偶然あって、飯代をどっちが払うかでもめたそうな。
 奢ったほうが上ッ! みたいな精神的勝負の世界になっているっぽい。
 ささいなコトでも譲らない勝負根性が二人を一流にしているのかも。

 なんで、飯を奢るだけで「地位と富を取り戻す」とかの話になるんだよ。
 刃牙は「そこいらを散歩するだけで強くなる理由を見つけてくる」と言われる男だ。(バキ16巻 137話
 板垣先生も飯を奢るだけで強くなる理由を見つけるっぽい。

 話題はかわって、UFCと日本の格闘技界についての話になる。
 日本では格闘技ブームが落ち着いちゃっているが、二人ともそろそろ復活して欲しいとの思いが強いようだ。
 グラップラー刃牙の連載開始時も格闘技ブームの谷間だったおぼえがある。
 刃牙道の開始とともに再びブーム再燃してほしい。

 好きなキャラの話になる。
 やっぱ、刃牙シリーズの魅力はキャラクターの魅力だッ!
 なかでも山本選手は、刺青キャラが好きらしい。
 本人もすごい刺青しているからな。

「ストーリーが始まってすぐ、いきなり登場する刺青を入れたキャラがいますよ」

 って、第一話情報だよッ!
 刺青の双璧は花山と芝千春だが、どっちだろう。まさかスペック復活ってことは無いよね?
 この話しぶりだと新キャラっぽい気がする。
 板垣先生がよくしらない分野からの刺客は、刺青キャラなのか?

 板垣先生は50代半ばだが、ここからヒット作を生みだす気迫だ。
 年齢の壁を破るというのが、現在のモチベーションらしい。
 範馬勇次郎は、ベトナム戦争に16歳で参加したという経歴があるので順調に時間がたっていると2014年で55歳以上になる計算だ。
 そうなると、板垣先生と同年代となる。
 はじけたオッサン像が投影されたら、勇次郎はますます元気になりそうだ!

 漫画家はともかく、アスリートだと年齢による衰えがきついだろうな。
 と、思っていたら山本選手が言うには、コーチになって教え子に伝えると言う道があると言う。
 道場なんかのシステムってのは、古くからある流派や伝統に近いところがあるんですね。
 この考えが"道"、つまり刃牙道の考えだったりして。

 なんとなく見えてきた方向性は50すぎてもカッコイイ親父だ!
 って、それは勇次郎だな。刃牙はどうなる。
 まさか範馬刃牙50歳ってことは無いよね。


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