今週のバキ 第2部101話〜110話
2001年10月18日(47号)
第2部 第101話 合気(481回)
扉の向こうには、オリバが立っていた。血だらけの床に直立不動だ。
「ヨウ(はぁと)」「ソノダ」
と、相変わらず陽気に喋るオリバさん。でも右頬からは血が出まくっています。
「お…おい」「その顔………」
と、園田警視正も突っ込まずにはいられません。
そして、現場をよく見てみると…
オリバは血まみれのナイフを持っている。床には大量の血痕がある。そして、女性用のハイヒールが一つ転がっている。
「納得のゆく……………」
「説明をしてもらうぞアンチェイン」
と、いつもバカにされている園田警視正ですが、ここでは最大限の胆力を振り絞りオリバを問い詰めます。
まあ、この状況だと最悪の場合オリバが女性を一人解体して喰ったと解釈されても仕方ありません。なんかオリバならやりかねないような気がしますし。
そんな疑問を受けてのオリバさんの説明とは…
「ど〜ゆ〜教育受けてんだよ君ンとこのフケイはァ」
「チョットなんだ…」
「ほんのチョットだけわたしが口説いたら」
「叩くわ 蹴るわ 切るわ 刺すわ」
と一気にまくし立てます。こんな時でもジョークを絶やさない精神的なタフさはさすがだと言うしかありません。
死刑囚の個人名も出していませんし、実は説明になっていないんですけど、この笑顔になんとなくごまかされてしまいそうです。
ただ気になるのが、変装を解く前のドイルに話しかけていたのって、口説いていたんでしょうか。スケベ親父が色気を出して不意をつかれたと言う構図が簡単に当てはまっちゃうのがなんとなく情けない気がします。
それはともかく、これだけキケンな単語が飛び出しては園田警視正も冷や汗をかくしかありません。
「刺すわ……ってアンタ」
と、園田警視正は、この男が叩かれたり、蹴られたり、切られたりしている所は十分見なれてしまったのか、刺すだけに反応してしまっている。
で、わざわざオリバさんも「ホラァ」とご丁寧にシャツをめくって刺された所を見せてくれます。
ヘソの上約5cmの所を刺されているのですが、相変わらずの超回復力でもう出血が止まっています。
ここまでのパフォーマンスをされれば受けて立つしかありません。
「だ…大丈夫………」
「なのか…………ッッ」
と、オリバさんの誘導尋問にあっさりと引っかかってしまいます。
「わたしの筋肉の厚さは世界一だ」
「こんなちっぽけなナイフじゃとてもとても内臓までは…………」
と、ジョジョの奇妙な冒険に出て来るサイボーグのナチス将校のようなこの台詞を言うために、長い前置きを話して、傷跡を見せていたのでしょう。
そして、園田さんはきっちりと驚き、信じられないと言うように、もしくは呆れたように首を振り、渋川先生は豪快に笑う。
「そして…」
「その婦警はそこの点検坑から脱出と………………言うつもりかな」
さすが捜査のプロです。園田さんの洞察力はドイルの逃走経路をきっちりと読みきっていたようです。
どうやら、天井にある点検坑からドイルは脱出をしたようです。まあ、予想の範囲内ですけど真のアンチェイン決定戦は引き分けと言う所でしょうか。
一通り園田警視正を驚かせ、自分の肉体の自慢をしたところでオリバさんの興味は、その隣に立つ漢―――渋川剛気に移る。
渋川剛気 1926年生まれ ミステリアス パワー合気をベースとする渋川流柔術の総帥――――――
現在、警視庁の正式課目として逮捕術の指導にあたる………
と、さっそく「知らぬ事などない」所を見せてオリバさんが渋川先生のプロフィールを言ってのけます。
地下闘技場にも一人で来るなどと、お弟子さんが居るのかいないのか分からなかった渋川先生は今まで何で収入を得ているのか不明でしたが、警視庁の指導員としてちゃんと収入があったようですね。
「渋川流は筋肉では対抗できないそうだが………」
「このわたしの筋肉でもダメかな」
自分の筋肉に絶対の自信を持つオリバさんが渋川先生のミステリアス パワー合気に挑みます。
1度は冗談として笑い飛ばしておき、油断をさせて握手に持ちこみ、そこで超握力を発揮する。
が、これこそ合気の餌食だッ!
倒れるとか、転ぶとかでは無く、足の筋肉が完全に切れてしまったかのように足から崩れるオリバさん、見開きページで豪快に崩されている。
一方の渋川剛気は片手ハンドポケットで余裕の合気!
さらに、オリバを倒し、完全に寝かせ腕を固めます。
この思いっきり握手させ、それに対し合気をかけると言うのは合気道でよく語られるエピソードですが、まさに理想の合気です。
「ア〜〜… 園田さん」
「とりあえずは……………」
「連行するンじゃろ……? この人」
と、とぼけた顔して何物にも縛られないはずの男・オリバを見えない合気で縛り上げる。
この渋川先生の勇姿には園田警視正も
「はは……」「さすが!」
と、喜ぶしかありません。
一方、逃亡したドイルは女装を解き、いつもの黒の上下に着替え一服しています。
座っているところは、どうも土管のような円筒形のコンクリートのようですが下水かどこかに逃げ込んだのでしょうか。
激闘に汗をかいている事からもドイルなりにあの闘いはヤバ気だったようです。それでも、再びドイルは真のアンチェインと言う称号を求めオリバに喧嘩を売りにいくのでしょうか。
今週は、ここで終り。
結局、今回1番得をしたのは渋川先生だったようです。
今後の展開ですが、ハンターであるはずのオリバが連行されたとしたら、それはアンチェインとしてのプライドに関わる問題です。となると、オリバvs渋川剛気の突発的バトルが発生する可能性が高くなります。
そして、渋川先生が出て来たと言うことは、柳もおそらく出て来るでしょう。
そこにオリバを狙うドイルが再び現われるとすると、ドイル → オリバ → 渋川 → 柳、と言う図式が成り立ちます。
そこに刃牙も加わって、乱戦が繰り広げられる、…かも。
正直な話、今の所は柳だけが一人勝ちをしている状態なので、他の人と関わって少しピンチを味わったほうがいいのかもしれません。
そして、脱いだ服の中にパンツがありませんでしたが、ドイルのパンツは豹がらのままなのだろうか…。
彼のパンツはナチュラルに豹がらと言うことなのでしょうか。ヘクター・ドイル、…恐るべき自由人だッッ
2001年10月25日(48号)
第2部 第102話 柔道(482回)
女装したままゴツイ男と密室で2人っきりと言うヤバイ状況を逃げ出したドイルさんは先週に引き続き煙草をふかして一息ついています。
根元まですった吸い殻が6つある事からかなり長い間休憩休憩していたみたいですね。
「アンチェイン………」
「ビスケット オリバ」
「あれほどの実力者とは…」
と、改めてオリバの実力に感心しているようです。わざわざ喧嘩を売りに行った事からも、ドイルはオリバを舐めていたのでしょう。が、ナイフを使っても倒しきれなかったと言う事実にちょっと驚いているみたいです。
普通の人間ならこれでこりて二度と喧嘩を売ろうとは考えないんでしょうけど、敗北を知りたい死刑囚ならば再びオリバの前に現われる可能性が高そうです。
その前の前菜として刃牙に喧嘩を売りに行くと言う可能性もありますが…。
などと、今後の展開を考えるよりも目の前の状況も気になります。
前回、下水と書きましたがこれはハズレで、正解は地下鉄の坑内でした。整備用か何かの横穴に隠れていたようですが、休憩も終わったようで外に出ます。
外とは言ってもそこは地下鉄のトンネルです、出口なんてありません。
と、そこに電車が…。
通過していく電車を見つめるドイル、そしてその姿が消えたッ!
一方、電車の中では会社帰りと思われるラッシュのようです。
上司らしき人が部下らしき人に説教をすると言うありふれた光景がそこにはあります。
「最初(はじめ)はみんなそう………………」
「わたしだってそうだった」
「若いころは何度も失敗していいんだよ」
と、上司の説教のセオリー通り『俺の若いころは…』から入っているようです。正統な基本技は伝統の裏打ちもあり強力な力を持っています。こんな攻撃をされては部下もたまったものではありません。
が、この部下は少し様子が違うようです。まるで違う方向を見て汗をだらだらとたらしている。
「オイ 聞いてンのかオイ」
と、上司も様子が変な事に気がつき絡みます。が、その様子があまりに異様なので、部下の視線の先を見る。
地下鉄の窓にドイルがへばりついているッッ!!
若いころは失敗してもいいとは言いますが、これはさすがに失敗したら死にますよ。
ちょっと指から血も出ているし、滑っちゃったらどうするんですかッッ!?
なんか、シコルのビル落下もお遊びに見える無謀な行為です。
ところでドイルは電車の外にいるのですが、これも無銭乗車になるんでしょうか?
しかし、この地下鉄って線路が1車線のような…。地下鉄は線路の間に薄めの壁があったと思うのですが、この路線はその壁が厚いのでしょう。
あと、中釣り広告ですが、一方は「餓狼伝」、そしてもう一方が「PC MONA」…。モナ…ってアンタ、2ちゃんねるですかい…。
でも、載っている文字は1ch.tvだったりします。
多分アシスタントさんの遊び心なんでしょうけど、ネタのチョイスが恐いです。なんかわざわざアフガニスタンに行ってをウサマ・ビンラディン氏(参考:米著名人(?)と並んで笑顔を見せるウサマ・ビンラディン氏)を探しに行くのと同じで、紛争地域には近づかない方が良さそうなんですけど…。
所変わって警視庁――――
「OH(オー)ゥッ」
と、オリバさんが悲鳴を上げています。
それはもちろん渋川先生が技を極めているからなのですが、なんと握っているのはオリバの人差し指1本のみ。ですが激痛が走っているようです。
「ワカった………」
「歩く…」
「おとなしくするからもっと優しくしてくれッッ」
と、セリフだけ聞けば誤解してしまいそうな言葉をオリバさんが唾を飛ばして叫んでいます。
ミステリアス武術・合気道の達人は指一本を握るだけで相手の体を制したり、相手が自分の腕をつかんでいる状態で相手の体を制したり(なぜか握っている手が離せないらしい)できるそうですが、あのオリバを完全に手の内に収めるとは、さすが達人・渋川剛気です。
そして、オリバを連衡しようと歩く達人とオリバ(おまけで園田警視正)は偶然に警視庁内の柔道場の前を通ります。
「オ〜… 柔道…」
「君もやるのかミスター」
達人がいてくれているおかげで気が大きくなっているのか、園田警視正も余裕を見せています。
「イヤ」
「やったことはない…」
「しかしもし やったなら」
「今日にでも金メダルを取れる」
と、かつてロシアの大統領が言っていたような台詞を吐いて、自分の筋肉に対する絶対の自信を見せます。
ちなみにガーレンとは違いルールはすでに覚えているようなので、ガーレンよりも1日早く頂点を極められるようです。
ガーレンの場合、レスリング以外に格闘技をやらなかったのはルールを覚えられなかったのかもしれませんね…。
「そうきたか…………」
と、柔道には自信がある園田警視正がなにか企んだような笑みを浮かべる。もっとも、柔道に自信はあってもとっさに出る技は金的蹴りだったりするあたりが、この人の場合は問題なんでしょうけど。
「ここにはオリンピック級がゴロゴロいるぞ」
「そいつァ楽しみだ」
と、言うわけでスペシャルマッチ決定ッ!
どちらが誘ったと言うでもなく、いきなりの危険ゾーンに突入です。しかし、園田警視正は始末書を書くのが趣味なんでしょうか。とても、平和に終わるとは考えられないんですけど…
「ええのか園田くん」
「こやつは犯人やろ」
と、さすが年長者である渋川先生は心配しています。無事に押さえこんではいるもののオリバの底知れぬ筋力に危険を感じているのでしょうか、ちょっとだけ汗もかいていて心配そうです。
「先ほど全婦警の無事を確認しています」
「被害届が出るまではいいでしょ」
い、いい加減だぁ〜〜〜〜ッ!
いいのか警視正!?
と言うか、こんなところでオリバを解き放ったら被害届を出さざるをえない状況になるに決まっているじゃないですか。いい加減な部下がいるのは伊達ではなく、トップの方もいい加減だったんですね。
ところで、オリバさんはいまだにドイルの襲撃を隠しているようです。何を考えているんでしょうか。こっそり発信機でもつけていて、後でゆっくり楽しむつもりなのかもしれません。
それとも、彼の女装好きを武士の情けで隠してあげているのでしょうか。
とりあえず、このいい加減な発言に渋川先生もあきれてしまう。
「そしてなにより」
「彼がどんな柔道をするのかが興味に堪えません」
と、実はこっちが園田警視正の本音だったようです。オリバの実力に対する興味は渋川先生も同じくあるようで、この台詞を聞いてものすごくいい笑顔をします。
しかし、上司の興味とやらで命を賭けて柔道しなくてはならない部下たちは不幸です…。
「ソノダァ〜」
「これじゃ小さすぎるぜェ」
と自慢の肉体をさらして柔道着オリバ入室。
相変わらずのバケモノのようなサイズの腕と胸に、引き締まりすぎているウエストがセクシーです。完璧なボディービルダー体型ですね。
そして、その超肉体にきつすぎる柔道着の袖を紙でも扱うかのようにバリ ベリと破り捨てる。
「オウ」
「これならOKでェす」
と肩から先をやぶった違反胴着に改造し上機嫌です。
「柔道着って………」
「破れるのか?」
規格外の腕力をいきなり見せつけられビビる警察官たちを前にオリバさんは宣言するのだった。
「とりあえず」
「今日は五段まで取りまァす」
…なんで急に助っ人外国人みたいな喋り方に??
と疑問を持ちつつ、次回へ続く。
このパターンはアレですね、次回片っ端から柔道の技を力だけで返していって大暴れするオリバさんを「その辺にしときや若いの…」と渋川先生が止めに入って次回に続くってパターンでしょうね。
今の所は渋川先生の対オリバの相性は良さそうなのですが、乱取りでオリバが柔道に対する理解を深め合気への対抗手段を編み出したりするかもしれません。
それとも、警察官の中に一人金髪の男が混じっていて「ラウンド5ゥ」とシコルスキー奇跡の復活! ――――――――と言うのはないですね、やっぱり。
どちらかと言うと、柳がまぎれこんでいると言う方が面白みがありますね。
どっちにしろ、もうしばくオリバさん話が続くようです。
それにしてもオリバさんは自分の肉体美を見せびらかすチャンスは決して逃さない人ですね。
なにか理由をつけてまた服を脱ぎ捨てそう。もちろん下も。
2001年11月1日(49号)
第2部 第103話 超筋力(483回)
皆さんの予想通りのタイトルで今週のバキは始まります。
「取りあえず今日は」
「五段ぐらいは取って帰らなきゃ……………」
と相変わらず自信満々のオリバさんですが、帰るってどこに帰る気なんでしょうか?
日本に自宅があるわけでもないし、まさかアメリカに帰るわけでも無いだろうし…。ただ単に園田警視正に嫌がらせのつもりで言っているのかもしれませんね。
それは、それで大言を吐くオリバさんに皆さん冷たい笑い声を浴びせます。
「はは…」
「いいかもしんなァい」
アメリカからたった一人でやってきた気のいい男性に対して、それは少し冷たい仕打ちではないでしょうか。オリバさんが繊細な神経の持ち主なら精神的なストレスで失語症になってもおかしくありません。もっとも、オリバさんなら筋肉にモノを言わせて逆に相手が言葉を失うぐらいボコボコにしちゃうんでしょうけど。
で、そんな勘違いをしているオリバさんに説明するのはやはり園田警視正でした。
「残念だが」
「今日は………」
「五段………取れないんだ」
ガーン ショックッ! な顔をしてその言葉を聞くオリバさんは冷や汗までかいて詰め寄る。
「ホワ〜イ?」
「わたしガンバリまァす」
「一生懸命やりまァす」
と、なぜかまたオリバさんが外国人選手のような喋り方になっています。
なんかこのまま幼児退行して「ソノダがね、黒帯くれ無いの。ボクは5段が欲しいのに…」と言い出しそうで恐いのですが、なんかこの口調は全部わかっている上で微妙に園田警視正をからかって困らせようとしているような気がします。
なんで、このヒゲの警視正は危険な囚人にからかわれるんでしょうか。留置場や刑務所から自由に出入りするような人は、この手のいかついヒゲのおっさんが好みのタイプなのかも知れません。
そんな複雑なオリバの心情があるのか無いのか、それはわかりませんが、園田警視正の方は本気で申し訳なさそうな表情でオリバさんに説明します。
「柔道の黒帯(ブラックベルト)はそういうものじゃない」
「公式(オフィシャル)な試験(テスト)を経て修得できるものなんだ」
講道館の昇段資格について書かれているページによると、五段はどんなに優秀でも1.5年以上修行年数が無いとダメなようです。
逆に、1.5年の修行年数があれば5段まで取れちゃうと言う方が意外と言う気がします。
とりあえず、修行年数が無くても取れるのは初段までなので、オリバさんは初段だけでガマンするしか無さそうですね。
心の内で何を考えているかはともかく、みんなに笑われるオリバさんを見て園田警視正も気の毒に思ったようです。
「まァでも…」
「ちょっと やってったら いいや」
と、なんかヤバイぐらい危機感無しで余裕をかましています。園田警視正は自分が左遷では済まずに辞表を書くハメになるようなヤバイ状況にどっぷり漬かっているのがわからないのでしょうか。と、言うかいつ頃からそう状況になっているのか、見ているこっちもわからなくなって来ているので、本人ヤケクソなのかもしれません。付き合わされる部下は本気でいい迷惑ですが。
この場合、労災はおりるんでしょうか?
そんな中、一人部外者っぽいポジションにいる渋川先生は黙って神妙な表情で話を聞いています。何を考えているのか、達人・渋川剛気ッ!?
そんな、冷ややかでありながらも、どこかほのぼのとした雰囲気の中で試合は始まります。
まずは丸坊主の警官がオリバさんに挑みます。
肉付きではもちろん負けていますが、身長はややオリバよりも高そうです。
「さァ…」
「組もうぜ」
と、自信たっぷりに袖の無いオリバさんの柔道着に手をかけます。
袖がちぎれちゃっているので、ほとんど肩のあたりを掴む。これだと技をかけにくそうですが、ちゃんと付き合ってあげるところが妙に律儀で、さすが警察官です。
そして、オリバさんは相手の両襟をつかみます。
ついさっき、ドイルの襟を掴んでカミソリで指をズタズタにされたはずですが元気があふれていますね。
基本から大きく外れたオリバさんの組み方に相手も苦笑する。
「ちがうちがう そうじゃねェよ」
と、言っているが、そう言うあんたの組み方も似たようなもんだからしょうが無いだろう。それに同じ側の襟や袖を6秒以上取るのは反則ですが、両手で襟をとるのは別に反則ではないはずです。
でも、とりあえず基本から入りたがる律儀さは、やはり警察官だからなのでしょうか?
そんな抗議も全く気にせず、オリバさんは自慢の超筋力で締め付ける。
技とか、相手の体制を崩すとかそう言う技術では無く、ただひたすら筋力で押しきるオリバ流の戦法です。
「ちッ…腕力(ちから)……ッッ」
「腕力(ちから)だけで………ッッ」
腕力だけで体を捻られて、スキンヘッドの警察官が地面に押し倒されそうとしている。
「うッそ」
と、今更ながら園田警視正もビックリしている。
あんた、アメリカまで行って何を見てきたんだ? まだ、オリバに常識が通用するとでも思っているのか?
それに対し、渋川先生は冷静にオリバの動きを見極めている様子です。やはり、最後に頼れるのはこの人しかいないようです。屈強の男が20人はいるでしょうが、身長が160センチに満たない老人の頼らなくてはならないと言うのが、この警視庁の現実と言った所でしょうか。
そして、先陣を切ったツルツルあたまの警察官はオリバの超筋力に耐えきれず、地面に叩きつけられる。
「フンッ」
と鼻息も荒く自慢げに立つオリバさん。
「あれが技か?」
と、ご丁寧に教科書通りの驚き方をしてくれる園田盛男さんでした。
恐るべきオリバの筋力に息を呑む警視庁の猛者たちであったが、一人立ちあがった男がいた。
「警視庁きっての巨漢―――――梅澤……………ッッ
大小の大会 優勝 準優勝の経験数知れず………………ッッ」
と、ただの驚き役だけではない所を見せて園田さんが彼、梅沢の経歴を簡単に教えてくれます。でも、オリンピック級がゴロゴロしているのであれば、この梅沢も並クラスの実力者と言う事なんでしょうか。
そもそも、刃牙ワールドでは無駄に巨漢だとメリットよりもデメリットの方が大きいですし…。
その梅澤は、先ほどのオリバの超筋力を見せつけられているだけに、かなり警戒して簡単に組みに行きません。
「慎重に――――………………」
と、思っていると、恐るべき早さでオリバの腕が襟に伸び一気に梅澤をブン回す。
何しろ片手で80キロを振り回す人なんですから、両手なら160キロです。はい、これも技じゃありません。
「ソノダッ」
「全員に勝ったらッッッ」
「わたしに黒帯(ブラックベルト)をくれッッ」
と、梅澤をブン回しながら、オリバさんは園田警視正におねだりする。と言うか、黒帯をくれなかったらコイツを壁でも地面でもとにかくヤバイ所に叩きつける!と言う脅迫に聞こえます。
そして、こんなとき頼りになるはずの渋川先生はッッ!?
「あ〜〜〜〜あ」
と、かなり他人事のように見ちゃっています。盛男大ピーンチ(梅澤はもっとピンチ)で次回へ続く!
しかし、オリバさんは何でそこまでして黒帯が欲しいのでしょうか。
何物のにも縛られぬ男・アンチェインが服を縛りつける物を欲しがるとは、どう言う心境の変化なんでしょうね?
で、渋川先生の大活躍は次回へ持ち越しのようです。
次回こそ、大暴れのオリバさんを止めに入ってくれることでしょう、…………多分。
2001年11月8日(50号)
第2部 第104話 一本ッッ!!(484回)
「力の神が最も愛した男 その名は―――――
ビスケット・オリバ!!」
と、表紙のあおり文に書かれていますが、この文章だとオリバは花山のように天然のファイターと言う事になりそうです。
そうなると、やっぱり彼の知力はオマケなんでしょうか。柔道に関しての知識はかなり怪しいですし。
さて、先週に引き続き巨漢警察官の梅沢さんを振り回しながら「全員に勝ったら黒帯(ブラックベルト)だッ」とオリバさんは要求する。
更に振り回しながら左手を離し、右腕一本だけで振り回す。
「か…ッ 片手で130キロ…」
この恐るべき行為にギャラリーも驚きます。ちなみに勇次郎は15歳の花山薫(160キロ)を片手で無造作に投げているのですが、オリバさんの腕部積載量は最大でどこまで行けるのでしょう?
片手で十分過ぎるほどに梅澤を振り回したオリバは天井の照明めがけて投げ飛ばす。
天井に打ちつけられ、落下して床に叩きつけられると言う2重の衝撃を味わって梅澤は冷や汗をだらだらと流す。……だけで済んでいると言うのがものすごくタフなんですけど、この人。さすが、園田警視正の部下です。半端な鍛えられ方はしていません。
「ど〜よソノダ」
「見事なイッポンだったろう」
と、オリバさんは力こぶを造って見せて、満面の笑みを浮かべます。ただし、この笑いには何か毒の入ったような邪悪さを感じます。やっぱり黒帯が欲しいと言う動機が不順だからなんでしょうか。
そのオリバさんに園田警視正は無念の極みと言った表情で反論します。
「いいや…」
「今のは一本じゃない」
「手を離した時点で君は相手へのコントロールを失っている」
「さらには背中から落とす事が柔道の原則だ」
と、今ごろ言うのもどうかと思うのですが、柔道の一本の定義を説明する。今ごろルールの確認とはのんびりしていると言うか、間の抜けた事と言うか…
さすがにルールとなればオリバさんも納得するしかないようです。
「わかったよ…」
とオリバさんは切なげに視線を落し、一本ではない事を認めます。
「ミスター梅澤」
「もう一度だ」
と、次の瞬間には気を取り直し、再び黒帯に挑戦する気です。はっきり言って、付き合わされる梅沢の方が可哀想ですね、こりゃ。
そして、負傷を理由にでもして断ればいいのにお人好しの梅澤くんはちゃんと付き合ってしまうのでした。
今度は先手を打とうと、梅澤は自分から組みに行き一気に投げを狙う。
が、動かない!
柴千春がガーレンを殴った時は鋼鉄の肉体を殴ったためか、千春がガーレンの肉体を岩と感じたシーンがありました。餓狼伝では松尾象山の鍛えられた肉体をまさに岩に見たてたカットがありました。
そして、オリバは巨木!
大人が3人抱えはありそうな太さの巨木に帯を巻きつけ打ちこみ稽古をしているかのような錯覚を梅澤は感じた。
梅澤が止まった瞬間、オリバの巨腕が襟をつかみ、片手で一気に引っこ抜く!
背から激しく床に叩きつけられた、文句の無い一本だった。
「い…」
「一本ッッ」
と、自分から誘っておきながら園田警視正はメチャクチャ悔しそうにオリバさんの勝利を告げる。
それを聞き、満面の笑みを浮かべるオリバさん。本気で嬉しそうです。
相手を崩す事もせずにいきなり投げに行くとは梅澤さんもかなり追いこまれていたようです。技量の差も圧倒的な筋力差には勝て無いのが刃牙ワールドの掟とは言え、可哀想です。
それでも、警視庁の威信なのか、3人目の闘士が登場します。
彼も坊主頭…じゃなくて身長ではオリバさんを上回っている身長なのですが、組みつくと同時にオリバさんの体落し気味の技を食らってしまいます。
腰を落として踏みこらえようと頑張ってみるのですが、オリバさんの腕力はもちろん規格外。
そのパワーで引かれ脳裏にパワーショベルを思い浮かべながら3人目の彼も地面に叩きつけられるのでした。
この技のかけ方は正確には体落しでは無いのですが、ちゃんとした技のように見えますし、やっぱりオリバさんはルールを知らないフリをして園田警視正に嫌がらせをしているだけのような気がしてなりません。
どこまで本気なのか分かりませんが、調子に乗り始めたオリバさんは次々と警察官たちを投げ飛ばし始めます。
園田警視正はただ冷や汗をかきながら呆然と見るだけしかできません。
そんな園田さんに達人・渋川剛気先生は親切な忠告を与えるのでした。
「ええじゃないか園田くん」
「黒帯ぐらいくれてやりゃ………………」
自分の流派とは違って柔道の権威問題の事だけに、わりと無責任な事を言っている気もしますが、まあ妥当な意見でしょう。
と、言うわけで今週は全く話が進まないまま、次回に続く。
次回は作者取材で刃牙はお休みです。
その代り特別企画があるらしいので、このコーナーも問題無くやれそうです。
今週は板垣先生と空手家の加藤清尚さんの対談があるのですが、ある意味では刃牙本編よりも内容があったりして…。
対談によると、板垣先生は「ここ1〜2年自分の主義として『不自然主義』を標榜して」いて「不自然なことを日常的に意識してやっていなければ悲願を達成することなどできない」と思っているそうです。
最近の刃牙の展開と板垣先生のこの主張の間に何らかの相関関係があるのか無いのか分かりませんが、普通の事をやっていては普通の事しかできないと言うような意味ならなんとなく理解はできます。
まあ、天才となんとかは紙一重と言う世界なんでしょうけど。
作者コメントを見ると板垣先生が大学で講師をする事になったそうです。講義内容は『不自然主義』について!?
2001年11月15日(51号)
バキはお休み
今週はバキはお休みです。
代わりに第二分に入ってからのストーリーを紹介していますが…。スペックの紹介で「格闘術:無呼吸打撃」と書かれています。いくらなんでも、それは「格闘術」では無いと思うんですけど…。
現在残っている死刑囚は柳とドイルと言う事になるのですが、オリバが登場した事で、まだノルマの半分と言う事になるんでしょうか。
ところで、今週の新連載「刀真」は5本の変形刀を狩ると言う、なんとなくシンクロニシティーを感じさせる話で今後が楽しみです。
非常にあたりさわりの(内容も)無い話で今週は終わりです。
2001年11月22日(52号)
第2部 第105話 持ってけ(485回)
1週休んだものの話の流れは変わりません。前回と同じく規格外の力だけで闘うオリバさんでした。
どう言う理屈か知りませんが、腰を落とすまでもなく技をこらえ、片手で相手を持ち上げ、そのまま頭上に掲げると言う荒業を連発しまくっています。
「なァ ソノダよ」
「いったい何人投げたら黒帯(ブラックベルト)くれるんだい」
「もういいんじゃねェか?」
「くれてやっても……………」
と、なんか他人行儀な言い方でねっとりと園田警視正に迫っています。今までのお人好しな外国人風の喋り方は演技だったのでしょうか?
これも全て園田警視正をいぢめるための策略だったとか?
どちらにしろ、オリバさんにすっかり弄ばれてしまった警視庁柔道軍団は、ただ黙ってこの屈辱に耐えるのみのようです。
「バカ共が………」
と、自分は見ているだけの園田警視正がなんかとんでもない発言をします。言うのと実行するのとでは差が相当あると言う事を忘れずに…
と、そこに登場したのが渋川先生!
「お〜〜〜〜〜い」
「次が控えとるぞォ〜〜〜〜」
と、上下を柔道着に着替えて登場です。
「いつの間に着替えたの?」
と、素直に突っ込んでしまうオリバさん。すでに達人のペースに巻き込まれているようです。
実際のところは、オリバさんが目を離し過ぎなんでしょうね。ちょっと、いい気になって人を投げすぎていたようです。
渋川先生は袴を脱いだだけと言っていますが、いまいち信用できません。どうもオリバさんにのされた警察官からこっそりズボンを脱がせてはいているような気がするのですが…。
なんにせよ、元々柔道出身の渋川剛気が久々に柔道で勝負するようです。
「アリガトよ ジィさん」
「理想的な展開だ」
と、今までのバカ陽気な態度を一変させ、危険な笑みを浮かべてオリバさんが迫ります。やはりフェイクをかましていたと言う事なんでしょうか。いい様にあしらわれた、101話の屈辱をここで晴らそうという計算をしていたのかも知れません。
さすがに学習しているのか、オリバは渋川先生の袖の手前で手を止める。
「簡単には取らねェよ……………」
かつて、ジャック・ハンマーが取った作戦をちょっと思わせる方法で迫ります。ここ最近、オリバさんは本当に凄い知能の持ち主なのか疑わしく思っていましたが、どうやら筋肉だけではなくちゃんと物を考える事ができるようです。
「取った―――――――――ッ」
が、急に動く事で渋川流をかわせると思いこんでいたのか、大喜びで渋川先生を持ち上げて今までの連中と同じように地面に叩きつけようとする。
大喜びな所に悪いのですが、やっぱりこの人頭悪いのかも…。勢いをつけたら、それを利用されるぐらいの考えを導き出してもらいたかったものです。
が、渋川先生は足から着地するだけで、特に反撃なくオリバさんの投げを凌ぐ…。警察官の方々は驚いていますが、その程度の身のこなしができないとガーレンスペシャルにも勝てません。
逆に渋川先生の限界が出てきたのかと、ちょっと心配になってしまいます。
「チッ」
と、オリバさんはドイルに腹を刺された時並に悔しそうな表情を浮かべる。
「黒帯(ブラックベルト)はあきらめた」
「手首(リスト)を外されちまったぜ……………」
と、見えないところで渋川先生はオリバさんの手首の関節を外していたのだ。これにはジョイントフェチもビックリだ。
と、そのオリバさんに渋川先生は自分が巻いていた黒帯を投げつける。
「持ってけ」
「渋川剛気のおスミ付きじゃ」
と、言うわけでオリバさんは念願の黒帯を手に入れる事ができたのでした。
ただ、袴をはいていた時は帯をしていなかったような気がするので、この帯も倒れていた警察官の腰から無断で借りてきた物のような気もします…
結局、今回の闘いは渋川先生の1人勝ちと言う所でしょうか。
これで警視庁の所員の心もがっちり掴み、渋川流に入門する人が多数出て来る事でしょう。全ては、渋川先生の思惑通り…??
2001年11月29日(53号)
第2部 第106話 斬撃(486回)
結局、先週までの黒帯騒動は何だったのかわからないまま終了し、舞台はがらりと変わります。
床に置かれたバスケットボール。そのバスケットボールに手を置くのは黒い空手着に長髪と言う、昭和中期ならば何で収入を得ているのか分からないウサン臭い空手家として、柔道家に倒されそうなスタイルです。
そう、彼こそが斬撃空手の雄・鎬昂昇である。刃牙では貴重なビジュアル系格闘家として読者層の幅を広げたいと思う、兄ラブな漢だ。
騎馬立ちのような状態からバスケットボールに手を重ねておき(下手をすると和式便器にまたがっている様にも見えますが…)、奇声を放つ。
「つッッ」
なんと、その状態からバスケットボールが破裂する!
たとえ金龍山クラスの巨漢が体重をかけただけでも破裂しないであろうバスケットボールが、踏ん張りが効くとも思えないスタイルから、しかも寸勁のごときノーモーションでッ!!
更に3つのバスケットボールが投げられる。その3つのボールが宙にあるうちに昂昇の両手が閃き、全て切り裂かれる。
ついでに、異常なほど緊張しているヒゲの空手家に持たせている紙を手刀で断る。この際、踏みこみの足が半透明に透ける描写があり、おそらくロングレンジから音も無く一気に踏みこみ、紙を斬ると同時に引くと言う一撃離脱の技を披露したものと思われます。
そして、この神技を見ていたのは神心会の方々であり、鎬昂昇(久々の登場のせいか顔が時々餓狼伝の姫川になっています)を召還したのは愚地克巳であった。
「すげ…」
「いやマジすげェわ」
と克巳は拍手で昂昇を誉める。かつては天才の名を欲しいままにしていた男が、同じ空手家を妙に誉めると言う地下闘技場の頃では考えられないような状態です。
もっとも、(驚き役の)師匠である加藤ならば「ダンクにも耐えうる頑丈なバスケットボールを……」などと的確に驚いてくれたところなのでしょうが、その辺の驚き方はまだまだ師匠に遠くおよんでいないようです。
「見たかよオマエら」
「人間の手ってやつァ鍛えりゃ鈍器――――――」
「ハンマーにだってなり得ることはオマエらも知っている」
「しかしどうよ」
「刃だぜ」
「こんな丸っこいものが刀にもカミソリにもなるってことだ」
と、館長(?)の克巳自ら昂昇の凄さを的確に解説してくれる。この辺はなんか烈をおだてていた時と同じパターンですね。
ところで真の館長・愚地独歩の様態はどうなっているのでしょうか。こんなのんきな事を言っている事から、それなりに回復しているのか、計算通り独歩とドリアンをぶつけて共倒れに成功させて神心会を見事乗っ取ったと黒い事を考えているのか…。真実は依然闇の中です。
「二皮ぐらいむけたンじゃないッスか 昂昇さん」
と、相手の技をおだてて気分を良くさせた上で、フレンドリーな口の訊き方(名前で呼んでるし…)をして相手の心をつかむと言う見事な人身掌握術を見せています。
ところで、特別コーチとして鎬昂昇を呼んでいるのですが、烈の姿は見えません。キャンディーを買う資金の工面に忙しいのでしょうか。
まあ、なんにせよ烈の後釜として鎬昂昇を呼んできたようです。
「報酬は一切要求しない」
「ただ居所をわたしに報らせる」
「それだけでいい」
鎬昂昇が望んでいたのは死刑囚との闘いであった。更なる研鑚を積みより自信を深めた鎬昂昇が再び闘いに見を投じようとしている。
愚地独歩が戦線離脱したので古流の空手の凄みを伝えられる事ができるのは鎬昂昇しかいないという事なんでしょうか。もしかすると、アラミド繊維を手刀で切った独歩に憧れて、近づこうとしているのかもしれませんね。
クラシックな闘い方をするとは言え克巳はやはりスポーツマンのイメージがあります。それに対し昂昇には、何で収入を得ているのか分からないウサン臭い空手家と言うイメージがピッタリです(だから柔術家と相性が悪いと言う訳では無いのですが…)。
実際に報酬は要求しないと言っていますが、何をやって暮らしているんでしょうね。兄貴に養ってもらっているのかな??
どちらにしろ、最大トーナメントでの自分は未熟だった事を認め、その上でレベルアップをした自負があるようです。
「現在(いま)のわたしは烈海王にだって勝てる!!!」
と、やや暴言気味の発言まで飛び出し、鎬昂昇も闘技場戦士 vs 死刑囚の闘いに電撃参戦です。
ここで渋川剛気に勝てると言っていないところが、修行内容を予想させます。
寸勁に似たバスケットボール割りからも想像できるのは、中国拳法に似た何らかの技をマスターしたと言う事では無いでしょうか。
一方、某所のホテルの一室ではオリバから逃れたドイルが静かに鍛錬を行っています。
左肘から飛び出す刃物…。肘を伸ばしていた時は引っ込んでいるようにも見える事から、この刃物は飛び出し式なのかもしれません。
猛獣の爪のような形状の刃物…。映画・小説「ハンニバル」でレクター博士が好んで使っていたナイフがハーピーと呼ばれるカギ爪状のナイフですが、それを連想させます。
刃物には「断ち切る」「刺す」「撫で切る」と言う使い方と形状があります。
「断ち切る」のは斧のようなタイプの刃物で物に垂直に当てて断ち切ります。断ち切る事を目的にした武器は真っ直ぐな刃をしている物が多い。
「刺す」はシンプルに突く物で、尖った先端を持っています。
「撫で切る」は日本刀の様にカーブを描いたそりを持った刃を持ち、刃物を当てて手前に引きながら切ります。
ドイルの肘の武器は尖った先端を「刺し」かき切る武器のようです。
カギ爪のような形状は動脈などを引っ掻けて切るのに都合が良さそうで、高い殺傷力がありそうです。
「断ち切る」には刃物自体にある程度の重さが無いと効果が薄いですし、「撫で切る」武器は刃こぼれや切った時の人の油ですぐに使い物になら無くなると言う弱点を持っています。意外な事ですが、日本刀はメンテナンスが最も難しい兵器の一つで、現在かなりの古刀が残っているのは使い勝手が悪くて戦争ではあまり使われなかったからだと言う説もあります。
その点「刺す」事に主眼が置かれているこの形状の刃物なら小さくても効果を期待でき、何ども使用する事ができると言うドイルの戦闘スタイルに合った武器のようです。
さて、そのドイルの潜むホテルへ克巳は昂昇を案内します。
1人、道場でも普段着だった克巳ですがそのままホテルに直行しています。ついて来た鎬はジャージのような物を着ているようですが…、とりあえず服のセンスは悪そうな二人です。
「奴の行動は24時間体勢―――――」
「チクイチ把握済みでっせ」
と、相変わらずの監視網で日本一死刑囚の居場所にくわしそうな様子です。
おそらく、格闘家仲間にこの情報を切り売りして色々と便宜を図ってもらっているのでしょう。
そして、無料コーチ第1号(?)の鎬昂昇がまずはドイルに挑むのであった。
次回は、女性ファン失禁必死の美形対決か!?
2001年12月6日(1号)
第2部 第107話 見せてやるぜ!!(487回)
今週はパンツ1丁なドイルの全身図からスタートです。
ピッチピチのビキニパンツは刃牙世界で大流行のヒョウ柄で、時代の先端をひた走り独走状態だ。
もっとも彼だって無意味に裸になっているわけではない ナルシストだから 。左肘の刃物をカチリと出して引っ込め、装備の点検をしているようです。
と…、それだけでは無かった。左手首からも、手の平からも、刃が飛び出す。
手の甲側の手首の付け根は孤拳(こけん)と呼ばれる打撃で使用する部位であり、敵の攻撃をさばく時にも使用する。更に手首を取られた時にこの部位から刃が飛び出せば、思わぬダメージを与える事ができる。実に考え抜かれた位置に刃が埋まっている。
手の平は掌底と見せかけて使えそうですし、やはりキケンな技が飛び出しそうな所に埋め込められています。
さらに、ヒザ、右カカト、右足の外、と今回判明しただけで6箇所に隠された牙が潜んでいる…。
まさに、この体は全身凶器だ。脱がずに刃物を出したら、服がズタボロになってしまいます。だから、裸だったんですね。
「たしかに…」
「強力な武器には違いないが」
「そんな身体(からだ)では日常生活が不便ではないのかね」
と、読者が突っ込もうと思っていたセリフを先取りしたのは、キャプテン・ストライダムだった。最大トーナメント編では回想シーンにしか出てこなかった超なつかしのキャラクターです。
グラップラー刃牙とバキには数多くの登場人物が登場していますが、勇次郎と言う移動する地雷原のような人間の近くにいても死んでいないと言うのは並大抵の事ではありません。
そして、今回も危険の真っ只中に居座るようです。
イギリスの軍用機に乗って日本へやって来たドイルには、当初から軍関係の人間ではないかと言う予想が立てられていましたが、軍人の代表格であるストライダムと面識がある事はその予想がかなり真実に近いと証明している気がします。
そして、もう一つ予想されていたのが、ドイル・サイボーグ説です。
全身に刃物を埋めこんでいるドイルはまさに人間凶器。そんな体では着る服がすぐに破けてしまうのでは無いかとストライダムさんが心配するのも無理ありません。
ところが心配無用、ドイルの右手に内臓されているスイッチを指を曲げると言う動作でONにしない限り各部の武器は作動いたしません。
なんとなくダイナマイトキャンペーンで9,980円と言う感じです(送料別)。
この仕掛けにはストライダムさんも呆れるしかありません。
「プロフェッショナル マジシャンの世界ではごく常識的なことだ」
と、ドイルさんが解説をしてくれます。
空のグラスに一瞬でビールを満たし、指先を吸うとたちまち煙が出て来ると言ったマジックを、外科手術によって体内にパイプを通すことで生み出している。
これがドイルの説明だった。
このマジックの話は信憑性があまり無いのですが、だからこそ本当かもしれません。人の心理の裏をかくのがマジックであるのなら常識的では無いと思えることほどやる価値がある。
そして、誰もやらない(やれない)事をやると言うのは価値がある事ですから、実現性はともかく真理は突いています。
「今さら驚くことでもあるまい」
「心臓 関節 呼吸器 それらの人工物を内蔵した 普通人が現実にいくらも存在しているじゃないか」
と、ドイルが駄目押しに人の体内に埋めこまれている医療器具の話をします。
そう言えば、右手に爆弾を埋めこんでいる人や心臓部分にプレートを埋めこんでいる人もいましたし、そう言う改造手術を受けているのも不思議ではありません。
って、言うかドリアンの繊維の時もそうでしたが「バキ」はマジシャンネタが多いですね。
他の人達にしても、驚異の深海大脱出とか、瞬間の意識昏倒術とか、絶頂ロッククライミングとか…。どちらかと言うと、吹きすさぶ風がよく似合う改造人間集団と言うよりは、愉快な中国雑技団と言う感じもしますが。
すっかり感心してくれたストライダムにサービスのつもりなのか、ドイルは更に右拳を突き出す。机に向かい合って座っているだけの距離があるのにもかかわらず、その動作でストライダムの帽子が飛ぶ。
「まだまだ仕掛けがありそうだな」
と、恐るべき改造人間・ドイルにストライダムさんもお墨付きを与える。
そこにチャイムが鳴り、乱入して来たのは鎬昂昇であった。
「君は………」
と驚くストライダムを押し飛ばし、素早く靴を脱いでドイルに迫る。
そう、手首と足首の先の変化を生むためには靴は不要なのだ。早くもグローブを取った事になる。
「東京ドーム地下闘技場正戦士」
「鎬昂昇だ」
名乗りをあげているところが、まだまだ美意識に対するこだわりがありそうですが、有無を言わせず間合いを詰めたのは容赦の無い正しい判断です。
もっとも、相手がドイルでは無くて渋川センセだったりすると「はぁ〜、もうちょっと大きな声で喋ってくれんかのぉ」と、トボケられて不意打ちを仕掛けられそうですが…
「敗北を知りたいそうじゃないか……………?」
ですが、汗をかいて血管を浮きだたせて迫ってくる昂昇を見るまで動かないのが、紳士の国からやってきたドイル君です。
そこまで言われても、イスから立とうとして「ドントムーブ(動くな)」と言われると思わず言う事を聞いてしまうのも彼らしいところです。
「これは試合ではない」
「迂闊だったな敵が目の前にくるまで座っているなんて」
と、今までの鎬昂昇には見られなかった容赦の無い発言をする。どちらかと言うと昂昇は相手に対して余裕を見せているような態度が多かったのですが、今回は一味違うようです。でも、これも相手に警告を与えていると言う点では余裕ぶっていることなんでしょうか…。
ポジション的に不利な状況になったドイルは「フン」とイスに背を預け、ると見せかけ全身のバネを使い一気に跳ね起きる。
それより速く、鎬の足刀が突き刺さる!
鍛えぬかれたつま先の一撃にドイルが壁まで吹っ飛ぶ。
「見せてやるぜ」
「斬撃拳…ッッ」
と、昂昇が気迫を込めて次号へ続く。
今回は人間凶器ヘクター・ドイルの秘密の一端が明らかになりましたが、なんでオリバさんに足をつかまれたときなどに刃を出さなかったんでしょうか。
ナイフを刺しても倒せなかった相手ですから、それより小さい隠し刃で倒せるとも思えませんが試す価値は一応あったと思います。
ひょっとするとお気に入りの婦警の衣装がズタズタになるのが嫌だったのでしょうか…。謎は深まります。
昂昇に突き飛ばされているストライダムがちょっと可哀想と言う声を聞きますが、これには訳があると思います。
刃牙と闘った夜、昂昇はストライダムに「ごとき」扱いされてしまいました。
もちろん、昂昇がその事実を知るはずは無いが、口の軽そうな主人公がポロっと言ってしまった可能性は非常に高い。だからこそ、鎬流を更なる高みに近づけようと努力して真・紐切りを完成させたのではないでしょうか。
でも、それはそれ。かつて自分を侮辱した相手の事に多少恨みを持っていてもおかしくありません。
で、思わずストライダムを突き飛ばしてしまった、と思われます。
しかし、鎬昂昇と言う格闘家は刃牙以上に成長する格闘家なのかもしれません。
刃牙に敗れた後、鎬流を更なる高みに上げ、勝利することで蚊トンボから獅子に化け、更に2皮ぐらいむける。いくらむいても皮があるタマネギ武道家です。涙が出ます。
そう言えば、1皮むけたと期待されるもう1人の空手家・愚地克巳は何をやっているんでしょう。部屋にも入らず、見学か?
2001年12月13日(2+3号)
第2部 第108話 ゲハァッ!!(488回)
「ゲハ〜〜〜〜〜〜〜〜」とサブタイトル通りの悲鳴を上げてドイルが転げまわる。
つま先でノドを攻撃すると言うのは烈海王が刃牙に放った足拳を連想させます。そう言う意味で昂昇は烈海王にも負けないと言ったのかもしれません。
その昂昇は蹴りを放った左足を静かに下ろし、待ちの体制に入ります。惨めにヨダレをたらし転げまわるドイルを冷静に観察する。
やがて、ヨロリと立ち上がるドイルを見るもやはり動きません。
「油断のカケラもないッッ」
「瀕死のダメージを与えておきながら」
と、軍人ストライダムさんが昂昇の冷静さに驚いています。
ドイルへ与えたダメージが瀕死であると言うのはかなり疑問の残るところですが、奇襲を成功させた後むやみに攻撃しないと言うのは軍隊のエキスパートから見ると評価すべき点なのでしょう。
本来ならば攻勢をかけた時は一気に攻めるべきなのでしょうが、この場合は敵であるドイルの戦力が不明であり、不用意に近づくのは思わぬ逆襲を受ける可能性があります。
そもそも奇襲は不意をつくから有効なのであって、相手が体勢を立て直すと逆襲を受ける可能性が非常に大きいものです。
鎬昂昇はvs刃牙戦とvs渋川戦で肉を切らせて骨を絶つ奇策で逆襲し勝利を確信した所で油断により敗れています。つまり、過去2回の敗北から鎬昂昇は最後の瞬間まで油断をしない冷徹さが必要だと学習したのでしょう。
スキを見せない昂昇の姿にドイルは汗を流し眉間にしわを寄せながらも、唇の端を歪め「ニィ…」と不敵な笑みを浮かべる。
そして、静かな歩行で間合いを詰めていく。
誘われるように昂昇が左掌を放つ。
それを予想していようにドイルは最小限のダッキングで左にかわし、踏みこみ、右手の小指を曲げる。スイッチが入った。左にかわした体勢が右肘による攻撃の態勢になっている。凶器の肘が光を放ち、走る。
ザクッ
だが、ノドに入ったのは昂昇の肘だった。
後屈立ちの構えだったのが、後ろ足を更に1歩後ろに引くことでドイルの肘の間合いを外し、右肘でカウンターを撃ち込んだのだ。
昂昇の髪が数十本の単位で切れる、まさに紙一重で相手の攻撃をかわしてのカウンターだ。
「……………………………………………………」
ドイルはノドを潰され声にならない悲鳴を上げる。
「なに!?」「いったい なに!?」
と、ストライダムもなにが起きたのか分からなかったほどの見事な一撃だ。
ここでも昂昇はむやみに追撃をせず、軽く後ろに飛び間合いを取る。
「ごんッ」と頭から落ち、ドイルは頭頂を中心にゴリッと回転しながら「ガハッ」とのたうつ。
「狙っている」
「同じ個所を狙っているんだ」
と横から見ている分、冷静に観察できているストライダムさんが驚いてくれます。
「ずっとそうしてろ…………」
「起きあがり続ける限りは倒す」
今週のバトルはここまで。この後は久しぶりに主人公の登場です。
ま、それはともかく、今回の鎬昂昇の戦闘スタイルを分析したいと思います。
敵に対して、消極的・甘いと言われそうな態度ではありますが、これを違った角度から見ると今までにない厳しい戦闘スタイルが浮かびます。
まず、昂昇は「空手家」です。分類でいけば打撃中心の格闘家・ストライカーになります。
総合格闘技における打撃系ファイターの中で完成されたスタイルを持っていると板垣先生が評価している選手にジェラルド・ゴルドーがいます。
少々長いのですが「板垣恵介の格闘士烈伝」から引用します。
『そんな醜悪なゴルドーだが、キックボクサー=打撃系ファイターとして、これ以上ない戦い方をやってのけたのも事実だ。打撃でダメージを与え、転んだ相手に対して、他の打撃系選手のように、慌てて組みつきに行くこともせず、冷静にその状況を見極めていた。
ケビン・ローズイヤーが立ち上がろうとすると、待ち構えてパンチを放り込む。素手で、しゃがんでいる状態の相手に、思いっきり拳を入れる。もんどり打つ相手に対しても、かさに掛かって攻めることなく、また少し後ろに下がって距離を取る。狙いは、ずっと変わりない。何度も、立ち上がろうとした瞬間に打撃を放り込み、ローズイヤーは立ち上がりたくても、立ち上がることができない。』
今の昂昇の戦法はまさにこれです。倒れている相手に無理に攻撃をかけると、寝技に引きこまれる可能性があります。空手家である昂昇はあくまでも自分の得意分野、立ち技での攻防で戦いをする事を狙っているのです。
そして、最後の「起きあがり続ける限りは倒す」と言うセリフは逆にドイルに「いかに起きあがるか?」と思わせる事で寝技に引きこまれる可能性を減らしているのではないでしょうか。
そして、ドイルが駄々をこねて寝たままだとすると…
愚地克巳と神心会の皆さんが鉄板入りの安全靴などをはいて踏みつけの刑にするべく、部屋の外に待機しているに違いありません。
勝ち台詞:足首から先の頑丈さが違うぜ!って感じで。
さて、話を進めて久しぶりの登場となる主人公の出番です。
ここ最近の傾向通り、刃牙のいる所に梢江ちゃんあり。今回も彼女同伴です。
川原で石きりと言うオーソドックスな手法でいちゃつき、刃牙は己の超人的身体能力で対岸まで石を跳ねさせて見せます。
人がいないから良いようなものの、釣り人が居た日には刃牙の投げた石で怪我人が続出していたでしょう。と、言うより周囲に誰も居ないのは、石が飛んで危ないから避難したからかもしれません。
ソフトボールすらロクに投げられない刃牙ですが女絡みだと信じられない力を発揮します。身体測定のときも、梢江ちゃんが見学をしていれば余裕で世界新記録を連発していた事でしょう。
明るく振舞う梢江ちゃんですが刃牙の表情は冴えません。
「なんで怒らないンだ………………?」
「あんなめに会っているのにさァ……ッッ」
この辺のわだかまりはまだ解決していなかったようです。しかし、どっちかと言うと梢江ちゃんがさらわれたことよりも、救助時に梢江ちゃんの身柄よりもシコルへの制裁を優先した刃牙の行動の方が問題がありそうなんですけどね。
刃牙の問いに梢江は黙ったまま答えない。
と、そこに花山薫があらわれる。
爆破したため顔の下半分を黒いマスクで隠しているものの元気そうな姿です。
果たして、花山のやって来た意図とは?
次回へ続く!
ちなみに次回は、チャンピオンがお休みです。替わりに刃牙増刊として勇次郎特集号が出るようです。
来週のこのページでは、勇次郎増刊号の感想と、ここに書いた内容に対してメールをいくつか頂いているので、それらの紹介をしたいと思います。
最近、メール・掲示板へのレスが遅れて申し訳ありませんm(_ _)m
なるべく返事は書いていくつもりですので、気長に待っていてください。
2001年12月20日
範馬勇次郎特集(チャンピオンはお休み)
チャンピオンがお休みなので替わりに増刊号で勇次郎特集が出ています。
金額は750円!
…高ッ!
思わずレジでやっぱり止めますと言いそうになってしまいました。正直な話、値段に対して新規ページが少ないので、馬鹿みたいにブ厚いわりに読みごたえが無いような気もします。
アンケートの「D:次回「バキ」の増刊号を出す時、どういったものを希望しますか?」
と言う部分は「ウ:薄くなってもいいから値段を安くしてほしい」でしょうか。
特集の中では「範馬勇次郎語録 オーガイズム」が中々楽しい仕上がりになっています。
勇次郎のセリフに編集者がコメントを書いているのですが「色を知る年齢か!」に対して、「女にうつつをぬかす刃牙に対する怒りか、息子の成長を見守る父の優しさか、その意味は計り知れない。」とコメントが書かれていて、やっぱり勇次郎のあの台詞は編集部でも意味不明だったようです。
こう言った、オーガイズム特集を締める言葉は次のようなものだった。
「これで勇次郎の考え方がわかったはずだ!
みんな勇次郎に近づこうぜ!!」
……ムチャ過ぎです。人間には人間の限界って物があるんだから…
巻末には板垣先生のコメントが載っているのですが、どうも餓狼伝別冊での板垣恵介+夢枕獏+関根勤の3者鼎談で「強い」と言うことに対して結論が出た時の事を語っているようです。
99年の夏の段階では、まだ板垣先生は「強さ」とは何か結論が出ていなかったようですが(お客さんを前に真剣に悩んでいる姿が印象的でした)、とりあえずの結論は出たようです。
田中芳樹の小説「銀河英雄伝説」でも、皇帝になるのは誰かの言いなりになるのが嫌だからと言ったニュアンスの台詞がありましたし、土門周平氏(日本帝国軍で実戦を経験し戦後自衛隊幕僚に配属され戦史戦略研究を行っていたホンマモンの軍人。退役後、作家へ)の著書「勝敗の本質」には「相手の意思を屈服させ、わが意思を通すため”力”を行使して、勝を争うことを戦いという」と書かれています。
つまり大は国同士の交渉から、小は食卓で一つだけ余ったケーキの争奪まで、我が意を通せる者こそが「強い」と言えるのでは無いでしょうか。
夢枕獏さんは「世界征服」こそが男の夢だと言っていますが、これも「我が意を通す」と言うことなのかもしれません。
で、地上最もワガママな範馬勇次郎さんは作者である板垣先生ももてあましているようです。
刃牙が勇次郎の前に立てるのはいつになるのやら…
話は変わりますが、103話で「講道館の昇段資格について書かれているページによると、五段はどんなに優秀でも1.5年以上修行年数が無いとダメなようです。」と書きましたが、大音さんから教えていただいた情報によると、ここで書かれている年数は前の段を取ってからの年数だそうです。
つまり5段は0.5+1+1++1.5=4年となるそうです。
やはり、五段を取るにはそれくらいの年月が必要なんですね。
そして、渋川先生の袴ですが、袴と言うのは道着の上からはくそうです。
これは星野さんとs36さんに教えていただいた情報です。
有段者になると袴がはけると言う事は、私も知っていたのですが袴の下がどうなっているのはまったく知りませんでした。非常に勉強になりました。
また、達人のモデルの塩田剛三先生の養神館では、有段者でも演舞会などでしか袴をはかず、普段は袴を脱いで練習しているらしいです。
36巻の渋川先生の回想では黒帯の方も袴ははいていないので、袴をはかないのが基本なのかもしれません。
ちなみに、袴をはくのは膝の動きを見ている人に知られないためと言う話を私は聞いた事があります。他流派に必要以上の情報を教えないのも武なのかもしれません。
もう一つ、ドイルの隠し刃についてワカシムさんから以下の指摘を受けました。
「たとえば、ヘクターの刃でオリバをブスリとやったとしましょう。ここからが怖いのです。オリバさんが馬鹿力で、隠し刃を取って(ひっこ抜いて)しまうのです。
どんな方法でもよいのですが、王道としてなら、刺されたオリバが、筋肉を収縮させて刃物を抜けなくする。
そして、隠せない状態になった刃を、ドイルの体から引っこ抜くのです。
これは痛い。
だって身体に埋め込んである部品を引っこ抜くんですよぉ。。これは危険です。
花山やオリバなどの腕力の人ならば、ヒジの刃をつまんで引っこ抜くだけでドイルは腕一本使えなくなるはずです。」
確かに外科手術でムリヤリ武器を体内に入れているドイルにとって、刃は武器であると同時に弱点なのかもしれません。
ドイルはドイルなりに色々と作戦を考えて闘っているのでしょう。
ところで、ドイルが携帯電話を使うとメカが誤動作を起こしたりしないのでしょうか?
確か、オリバさんは携帯電話を持って居ましたが、それで動いたのが肘の刃だけだったりして…
今回も色々な人から貴重な情報を頂きました。
最近は本誌の内容を追う(突っ込む)ので精一杯になっていますが、間違いや疑問点があれば気軽にメールや掲示板に書きこみをお願いいたします。
2001年12月27日(4+5号)
第2部 第109話 上等ッ!!(489回)
マスクマンになって久しぶりに登場した喧嘩師・花山薫がバカップルの前に仁王立ち。
なんだか知りませんがメチャメチャ険悪な表情をしています。徳川邸で御老公に言いがかりをつけられた時の怒りの表情がそのまま固定しているかのようです。
その厳しい表情でジロっと梢江ちゃんを見る。当然びびる梢江ちゃん。
全身の服を破りとられる妄想が浮かんで来たら親からの因果と言う事なんでしょうが、花山さんはそう言う興味を梢江ちゃんに持っていないようです。
「その娘が……………」
「欲しいのか…………」
「それとも…………」
「オンナが欲しいのか…………」
「どっちだ…………」
ガードをせずにひたすら真っ直ぐ打ちこむ花山の戦闘スタイルそのままの質問だ。本当にストレートに疑問をぶつけてきています。
先日、父親から色を知ったと心配された(?)ばかりの刃牙君ですが、今度は友人からも心配されているようです。
「どういう意味かな」
「言っていることがワカらねェや」
と、刃牙はとぼけて見せる。どういう意味も無いと言うほどにストレートなこの問いに対しても一応ごまかしてしまおうと言うつもりなのでしょうが、花山の怒涛の連撃は拳だけではない。
「その娘じゃなくてもいいというなら………」
「話が早ええ」
「オンナだったらいくらでも世話するぜ」
「キレイどころよりどりだ……………」
やはり、花山の論法はいきなり核心を突きます。
ただたんに性欲をもてあましているのか、ちゃんとした意味で梢江ちゃんが好きなのか問いただしています。
こう言う事を聞くって事は花山もやはり刃牙の腑抜けっぷりにいきどおりを感じているのでしょうか。
刃牙が奥手なだけだから、2人の仲が進展せずに刃牙が腑抜けているのでしたら、この方法で解決しそうですが、梢江ちゃんに心底惚れていた場合だと、どうやって刃牙を立ち直らせるんでしょうね?
やっぱり、梢江ちゃんを誘拐するぐらいはしないとダメなんでしょうか…。勇次郎が指示した様に。
さて、花山のこの申し出に、ゴクリと刃牙は思わずつばを飲みこむ。
そんな刃牙に呆れたのか梢江ちゃんは「よかったわねステキな 」と言おうとするが、「だまってろッッッ」と怒鳴られだまってしまう。
正直な話、彼氏にこう言う話を持ちかけられた時、本当にその男が好きだったら、女の方はムチャクチャ腹が立つと思います。それこそ即答で断わらない限り、数年間(かそれ以上)は責め続けられる可能性があります。
なのに、いきなり「よかったわね」と皮肉な事が言えちゃうのは梢江ちゃんの心が刃牙から離れているか、飽きているか、どちらにしろ今はあんまり刃牙のことが好きじゃないのかもしれません。
やっぱり、誘拐事件の時に刃牙が救出した梢江ちゃんの側にいる事よりも、復讐を優先させた事が微妙な心のすれ違いを生んでいるのかもしれません。
梢江ちゃんも「キレイどころ」の所までは冷や汗をかいていたのですが、この辺にきちゃうと逆に無表情になって何か冷めた感じになっています。
一方、熱くなっているのが刃牙の方でした。
「それを言いにきたのかい」
「だったらそれ以上言わないほうがいい」
と凄んで見せます。
さっき、つばを飲みこんでちょっと気乗りした様子を見せた事をごまかしているのかもしれませんが…。
「なるほどな………」
「彼女の前じゃ答えにくいこと」
と、それでも全力で攻撃する事を止めない花山がさらなる追い討ちをかける。たまらず刃牙は花山に飛びかかる。案外図星だったのかもしれない。
その刃牙を前蹴りで迎撃する花山!
吹っ飛んだ刃牙は惨めに川に落ち、全身ズブ塗れ状態だ。
「上等だよ花山」
「やってやるぜ」
と、意外なところで白格闘同士のバトル開始か!?
ちなみに梢江ちゃんはこの状況でもあんまり表情を変えずボーっと見ているだけです。
一方、ドイルvs鎬戦の行われているホテルでは、鎬昂昇の抜き手がドイルのノドに突き刺さっていた。何度目かの血を吐きうずくまる。
だが、鎬昂昇は近づかない。
「空手家の俺が倒れた相手に襲いかかることはない」
そう言って、様子を見ていたのですが、何度も打撃を加えつづけて十分なダメージを与えたと核心が持てたのでしょう。
「キサマの肉体にはもう反撃の体力は残っていない」
と断言し、倒れているドイルに試しに足刀を打ち込んでみる。それでも無抵抗なドイルを見て勝利を確信したのか、ドイルの側にかがみこんで様子を見る。
「秘密兵器は」「刃物か爆薬か……………」
だが、闘いの外に居る者はもっと冷静にこの事態を見ていた。
「射程距離……」
ストライダムがその言葉を脳裏に描いたとき、ドイルの左薬指が曲げられる。
「キン…」
スイッチが入った。
地面に仰向けに倒れたままの状態から、ガシャンッと機械音を立ててドイルの左手が走る!
「…………ッッ」
昂昇のアゴが外れた!?
寝たままドイルは一息をつく余裕をみせる。
両者の違いが明確になったところで次号へ続く。
しかし、昂昇はあれだけ警戒しておいて不意打ちに敗れるのでしょうか。こんな事ではドリアンのバーベキュウ死んだふりを見破った烈先生に並ぼうなんて、とてもとても…。
ただ、これはドイルの擬態が優れていると言う可能性もあります。
ドイルの戦闘スタイルは、相手が絶対有利にたったと思った状態に罠を張っていて、そこから逆転すると言うものです。
電気イスから軌跡の脱出や、襟にしこまれたカミソリなど、相手の心理的なスキをつくのが多い気がします。オリバと闘った時も、死んだふりをしてオリバに袖をつかませたのかもしれません。
ひょっとすると、刃牙を学校で襲った時もわざと反撃を受けてコンパスなどの貧弱な武器を見せて油断させようと企んでいたのかも。でも、刃牙が想像以上に腑抜けだったので予想に反して逃げられ苦笑するしかなかった…とか。
そして、もう一つの隠し武器ですが、どんな武器だったんでしょうか。単純に見ると腕が伸びる攻撃だったような感じですけど。
昂昇には勝てないまでも活躍を期待しているので、もう少し頑張って欲しい所なのですがアゴと言うのはちょっとヤバ目な気がします。まあ、自分ではめるぐらいはできそうですが…。
そして、腑抜け大王の名を欲しいままにして来た刃牙がついに汚名返上なるかと言う所ですが…、まあ来年の頭は包帯ぐるぐる巻きになって登場する事でしょう。
正直な話、闘える人が少なくなって来たので話に緊張感を保たせるのが厳しくなっているのかも知れません。刃牙が入院する事で今までの負傷者のその後が明らかになったりして。
と、言うわけで2001年に刃牙がした事は体力測定に始まり、色を知り、童貞を捨て損ねた事ぐらいのようです。来年こそは捨てられると良いですね(投げやり)。
2002年1月9日(6+7号)
第2部 第110話 最愛(490回)
今の腑抜けた刃牙に花山の攻撃を受け切る事ができるのか。むしろ、受け切れずに沈んで欲しいと思っている人も多そうですが、誰も予想していなかった刃牙vs花山戦が始まろうする!
と、思ったら花山の袖を引っ張り闘いを止めようとする者が居た。
そう、梢江ちゃんだった。
ギャルゲーでならば強烈な有効打になる「そで引っ張り」も、刃牙の純正美少女・松本梢江が行えば、鬼も笑いだしそうな力を感じます。
「いないじゃん」
「いまのハナシじゃさ………」
「わたし どこにもいないじゃん」
「しつれいじゃん」
「恋人の前であんなハナシ…」
「わたしのこと嘗(な)めてンじゃん」
何があったのかは知りませんが急に「じゃん」を連発して横浜の人みたいになってしまいました(違うじゃん)。
前回は心が冷え切っているような態度を見せていた梢江ちゃんですが今週はガラリと変わって情熱的な言動を見せています。自分から恋人宣言していますし、今日の梢江ちゃんはヤル気かッ!?
そして、梢江ちゃんは更に過激な行動に出る。
ハイヒールのツマ先で、花山のスネを蹴る。梢江が蹴るッ、蹴るッ、蹴りまくるッ!
「いっつもそうじゃん」「強くなるんだ」「勝つんだ」「負けられないんだ」
「女は」「いつだって」
「いつだって蚊帳の外じゃん」
と、彼氏に似たのか、エンジンのかかりは遅いもののキレ始めたら止まらない、暴走する17歳だ。
そして、花山薫に蹴りを入れると言う大胆過ぎる行為に、さすがの刃牙も慌てて止めに入る。
「殺されちゃうぜマジで」
と突っ込みを入れるもの、梢江ちゃんの決意は堅い。
「もう……」「負けられないわ」
「最強を目指す本能なんてタカが知れている」
「最愛にくらべたら」「最強なんて」
と、刃牙の目指すものをいきなり否定するような発言をブチかます。
この辺の強烈な押しはグラップラー刃牙における最強の雌・朱沢江珠を思い出させます。で、マザコンの刃牙にとってこう言う姿を見せられると言うことは、どういう事なんでしょうか…。あんま、積極的に想像したくない事ですが…
そして、刃牙と梢江の素敵な二人だけの世界が完成するのを阻止しようと、花山が話に割り込んでくる。
「バキ……」
「正念場だな」
「その娘と歩むかい」
「おまえの問題だ」
と一応最後の忠告をしてみる花山さんですが、二人の世界に入ってくるなと言わんばかりに梢江が石を顔に投げつける。
「そしてわたしの問題よ」
恐るべき早業でいつの間にか石を拾い攻撃し、続けて有無を言わせず畳み掛ける。
となりに居る刃牙君も「ゴク…」とつばを飲んで冷や汗を流すが精一杯の迫力だ。
かつて無い梢江ちゃんの積極姿勢が、夜も炸裂しそうでこの先の展開が怖くなってしまいます。
そして、なんだか急に覚悟完了してしまった梢江ちゃんにとうとう花山もサジを投げてしまうのだった。
「そうだったな……」「2人で…」「決めたらいい」
と花山さんは去っていく。小さな声で「痛ってェ…」と言っているのが少し物悲しい。
そして、花山さんを無言で見送る馬鹿ップル。もっとも、馬鹿を突き抜けてえたいの知れない化け物に成長しちゃった気がしますが…。
さて、この後の2人はどうするんでしょうか。すっかり作中の季節がなんだったかわから無くなっているのですが服装を見る限りでは冬のようですし、冬に水浸しになってしまった刃牙のとる行動は風呂に入って着替えるしかないでしょう。
なんかエロゲーのイベントが発生したような状況下で、かつて無いほど雌に目覚めている松本梢江嬢がこの状況を黙って見過ごすとは思えません。
当然、刃牙が風呂に入っていると侵入者が…、もちろんお湯に因縁深い柳龍光が入ってくるのです。
慌ててパンツをはこうとする刃牙に対し「ドント ブリーフ(パンツ禁止)」とメチャメチャな英語で制止をかけ、刃牙は因果と言う言葉を噛み締める事になるのでしょう。
次回タイトルはズバリ「梢江ちゃん、こんなんなっちゃった…」
さて、闘いにもならなかった主人公は置いといて、まさに死闘が始まったばかりと言うのが鎬昂昇とヘクター・ドイルの闘いです。
ドイルのズームパンチ(?)を喰らいアゴを外された鎬昂昇が己のアゴを両手でつかみ「ガキッ」っとはめ込みます。
「外れた顎を…」「ハメた……?」
とストライダムも驚愕するほどあっさりとアゴをはめ、ダメージも感じさせずにクールに構えを取る。だが、カッコつけてもアゴが外れていたときの顔はビジュアル系としては致命的だったと思う。
アゴをはめる姿は刃牙に首を捻られた時の烈の姿を少し思い出しました。そう言う意味でも昂昇は烈に対してこだわっているのかも。
この昂昇の一見無謀な行動は、我が身を危険にさらす事で相手の余力を測ったのかもしれません。そして、ここに来て昂昇は掌が上を向く不自然な構えを取る。
その構えにストライダムも戦慄する。でも、あんた最大トーナメントの時には居ませんでしたよね…。独自の情報網で試合内容を把握しているのでしょうか。
そして、本気の構えをとった昂昇に対し、ドイルも指のスイッチを入れまくり、両肘、両膝、右掌、左手首、と6本の刃をむき出す。
ついに真の刃vs刃の闘いが始まる!
と、言うわけで次回へ続く。
美形対決の方はようやく両者本気を出し始めたようですが、ほとんど改造人間になっているドイルに紐切りは不利のような気がします。神経の位置とかがずれていそうだし。
そして、ドイルの伸びるパンチ(?)ですが、仕組みに関しては説明無しでした。と、言う事はまた出すのでしょうが、気になるのでどんな技なのか多少は説明して欲しかったです。
ところでドイルの刃の位置が、幼年編に出て来た双子の傭兵の物と似ているのは軍隊で有効性を確かめて、低位置が決まったからなのかも知れません。と、言うわけでそろそろガイアにも復活の機会を与えてやって欲しい所です。
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バックナンバー(仮) 今週の餓狼伝(最新版) 今週のグラップラー刃牙(アニメ版)(5月26日更新予定)