今週のバキ131話〜140話
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2002年7月11日(33号)
第2部 第131話 毒功完成(511+4回)
久しぶりにバキの掲載位置がトップだ。
編集部がバキと梢江がイチャつく度に人気が落ちていると判断して、アレをヤングチャンピオンへ追いやったのだとすると、この掲載位置は読み通りの効果が出たと言う事でしょうか。
まあ、アレはアレでセックスを立ち合いとして表現したのが興味深く奇抜で笑えたし、板垣恵介と言う作家が肉体表現の境界線を更に広げた貴重な瞬間を目撃できたわけです。どっち方面に広げたかは、別問題ですが。
「空中で…」
「和紙を捕らえる…って………」
前回から圧倒されっぱなしの御老公が「空掌」の極意を国松先生に教えてもらいます。
話は以後、「空掌」の鍛錬をしている柳とシンクロしながら進む。
床に敷いた和紙の上に手をかざす。和紙と掌にはわずかな距離がある。
それが紙の方から、手に吸いつく。更に宙に紙を投げ、落ちてくる紙を掌に吸いつける。
手と物体の間を密着させて真空を作る、以上の能力です。瞬時に真空を生み出しているのか?
まるで、外科手術によって体内にパイプを通しているような吸引力を出している。
とにかく、これだけの能力があるなら真空も十分に作りだせそうです。
「まァ傍で見りゃ手品みたいなもので」
国松先生がおっしゃる通り、まさに手品ですね、こりゃ。
すでにネタバレとなっている「空掌」も、まだまだ奥が深そうです。
これなら、スパイダーマンの様に壁や天井に張りつくのも不可能ではない?
ご機嫌で「空掌」の凄さを解説してくれた国松先生に、御老公は「毒手」の事を再びたずねる。
「あんたァ…………」
「その歳で暗殺でも企んどるのかね」
「いやいやいやいや」
「まさかまさか」
普通に喋ると逆に怖い恐い国松先生の一言でメチャクチャ恐縮して、御老公は首も手も振りまくって体全体を使って否定する。
あんまり必死になったのか、なんか顔がオバケのQ太郎みたいになってしまっています。ちょっと可愛いかも…。
その慌てっぷりを見て、こいつになら話しても大丈夫だろうと判断したのか国松先生がまたもや解説をしてくれます。
「話したところでできるハズもなく…………」
「聞くだけ無駄というものではあるが…………」
正確に計量した薬物――――― 天然の毒虫や毒草をスリ潰し粉にして熱湯を注ぐ。猛毒のエキスが詰まった危険な液体を、砂の入った大きなツボに流しこむ。
これを数回繰り返すと、中の砂は毒砂(どくさ)となる。
そして、毒砂に抜き手を打ちこむ。
普通の砂に抜き手を突き入れるだけでも痛い。子供の頃にやった事があるが、爪の間に砂がはさまって痛いし、指先はボロボロにすりむけるし、砂場には猫のフンが埋められている事もあるから精神的にも痛い。
柳も汗を流し、痛みに耐えながら左右交互に抜き手を打ち込む。
もちろん、スリ傷から毒が入る。
そこで、毒を中和させるために洗薬(せんやく)に手をひたす。中和した後は、再び毒砂に抜き手を打ちこむ。
毒砂と洗薬、これを日中は七分毎(ごと)、夜間は9分毎。繰り返し繰り返し……
………やっぱ、寝ちゃダメですか?
「空道の修行ではこれが最も苦痛を伴う」
「痛みに耐えかね手首を切断する者までおりますからな…………」
何気なくとんでもない事を言うのが国松先生ですが、今は真剣に話をしているせいか「ひゃッ ひゃッ」と言う例の笑いも出さずに丁寧に説明してくれる。
痛い、だけでは無いだろう。
この修行はとてつもなく単調だ。筋トレをやった事がある人はわかると思うが、単調なトレーニングを長時間続けるのは辛い。
その単調さをごまかすために、ウォークマン等で音楽を聴きながらトレーニングをするする人もいる。
ただ、中には肉体を動かす事自体に喜びを感じる人もいる。
柳は、苦痛と単調な修行の果てにある、毒手という魔技を会得する瞬間の大きすぎる感動を知っていたのではないだろうか。
五日目に入り皮膚がサツマイモ色になり始める―――――――
咲く花も、サモ…とつまんだだけで枯れ果てる。
毒功完成というワケだ。
「あの… もしその毒手で人間を打ったとしたら」
「肉が腐りますな」
「骨髄も侵されますな」
「はァ…死にますな」
「死ぬっ……て アナタ……」
「わたしら殺法家ですから」
「ヒァッ ヒァッ ヒァッ」
「なるほど…………」
アホみたいにわかり切った事を聞き返すミッちゃんに、思わず国松先生も笑いを取り戻す。
徳川さんも、メチャクチャ物騒な技を教えてもらって大満足である。
アンタ、自分の面(ツラ)ァ鏡で見てみな、笑ってるぜ!
今更言う事ではありませんが、徳川さんの好感度の基準は強さ優先で、後は白かろうが黒かろうが関係無いんですね。
一方、柳龍光は常に影ができる奥目の瞳に、毒功完成という喜びの火を灯し、ちょっぴり嬉しそうな表情で朝日を浴びて登場します。
「お久しぶりですね」
「バキさん」
「ワルいね お疲れのところ………………」
推定48時間にも及ぶ雌雄を決する激闘を経たバキに、最後に残った最も危険な男が迫る。
どうなる次号!?
物語の主人公に必要なのは困難な試練と、それを乗り越える偉大な姿だと思います。
そんなワケで、たぶん最大のピンチを迎えているはずのバキですが、困ったぐらいに緊迫感が無いですね。
今のバキは11本の指を動かす事すら困難なほど疲労していて敗北必死の状態なのに……
一方、言葉のままの技だった「毒手」ですが、世間ではラーメンマンや男塾のネタだと言われています。まあ、実際そっくりなんですけど、実は似た物が他にもあるのです。
それは、中村日出夫先生の率いる空手道拳道会の名物「砂袋打ち」です。
砂袋に拳を打ちこみ、傷ついた傷を塩で殺菌し、また砂袋に打ちこむ。肉が飛び散り拳の骨が剥き出しになっても、砂袋を叩き続ける。
そしてできあがった拳は「黒ずんで見えた手の甲はサツマイモ色に染まっている」状態となる。
またもや「板垣恵介の激闘達人烈伝」からの引用ですが、常識を超えた荒行から生み出される異形の「手」はこの逸話から来ている気がします。
元ネタについてはともかく、柳は刑務所務めの間に「毒」を失っていたみたいですね。
脱獄後、隠れ家でこっそりと、毒砂を作り直していたのでしょう。ひょっとすると、渋川先生のお宅ではヤカンを盗むのが目的で、バキの学校に行ったのもムカデなどの毒虫採取のためかも知れません。
たまたまバキが通りかかったので、毒功成らぬまま戦闘開始となってしまい、思った以上に苦戦をしたので、姿を隠して毒砂の原料探しに専念したと言う考えもできます。
で、これまた多くの人に指摘されていますが、やっぱり柳はバキと梢江の闘争を目撃したと思われます。
ドラクエIの宿屋のオヤジみたいな気の効き過ぎたセリフからすると、事が終わるまで待っていたのでしょう。
まあ、カーテンも閉めずに戦闘を開始しちゃったんで、思わず覗いちゃって「シィィット」なんてこったい。こりゃ急いで毒功完成しなきゃ。
そして、毒の手でバキのチンポをワシ掴み!
などと思って、毒功完成を急いだのかも知れません。
それから、お詫びと訂正です。
ボナンザさんに以下の指摘を受けました・
『129話のレビューの中に「10歳の克巳は、父を殺したライオンを・・・」とありますが、これは5歳の間違いだと思われます。』
これは私のミスです。ちょっと日が離れているので、直接129話の部分を変更しました。
ご指摘ありがとうございます。
さて、次回の予想ですが、ズバリ毒を持って毒を征す。
バキはとっさに紙を投げつける。柳は思わず「空掌」で紙を吸いつけてしまう。
「シィィット」
そう、その紙は落書きハウスの部屋中に散らばっていた使用後のティッシュペーパーだったのだ。バキと梢江の愛の絞り汁が柳の毒を包み、使用不能にする。
次号は、究極奥義・愛の結晶攻撃が炸裂するはずです!
2002年7月18日(34号)
第2部 第132話 毒手との闘い(512+4回)
皆さん、バキじゃなくて柳を応援していませんか?
私はしているようです。だって、不眠不休で毒砂ですよ。この執念で鍛えた技なんですから、成功させてあげたいと思うのが人情じゃないですか。
まあ、バキだって不眠不休でしたが…。彼の場合は、読者の意図がどうであろうとせいこうしちゃいそうですけど。
「柳さん」
「あなた達にしてはきれいだな」
ふむ、今まで汚いモノでも見続けていたのでしょうか。柳さんがきれいに見えちゃっているようです。
ドロドロかな? バキ君?
「こうして俺が外に出てしまう前に……」
「いくらでも襲うチャンスはあったハズなのに」
外に出せッ! じゃなくて、外に出る前に襲うメリットってどの程度あったんでしょうか。バキの家なんですから、武器や罠があるかもしれないし、不用意に敵地に飛びこむのは得策では無いはずです。
更に、あの状態で窓を開けると、もわァ〜〜〜と臭いそうだと判断して引き返したんでしょう。
「買かぶられては困る」
「今こうして声を掛けるのは頃合と見計らっただけのこと………」
臭いの消える頃合を見計らっていたのか、体力消耗の頃合を見計らっていたのか不明ですが、毒手完成を待って攻撃を仕掛けたということも考えられそうです。
しかし、柳はバキには1度勝っているのですが、そんなに息の根を止めたい相手なのでしょうか。
それとも、あの時殺っておけば事件は起きなかったのに……と後悔しているとか。
「立ち合いは今度ってワケには…………」
「無事にゃすまないよ…………その娘が」
ぞわァ
バキの髪が逆立つ。まるで彼の父・勇次郎のように。
闘う理由が無いまま闘い敗北した前回とは違い、今度の闘いには守る理由と意志がある。
だが、これも勇次郎の計算のうちなのかもしれない。勇次郎のアドバイスはバキに闘いの正統性を与える結果になっている。
範馬の血を目覚めさせるために、勇次郎はあの忠告をしたのだろうか。
精神的な物以外にも効果がありそうだ。範馬家の男は飽くまで喰らい続けると、苦痛に対してエンドルフィンが分泌されるように、範馬エキスが分泌されて肉体的に強くなるのかもしれない。
ジャック兄さんも背を伸ばしているヒマがあれば喰らい続けていれば良かったかもしれない。
ジャックはトム・ハリソンに昔、「ハード・トレーニングもやり過ぎるくらいなら彼女とベッドでイチャついているほうがまだ強くなれるってものだ」と言われていましたが、実はこれが今回の伏線だったんですね(ほぼ確実に違う)
「近くに空地がある」
「そこで白黒つけようや」
「仕掛けられん あれほどあった少年ぽい甘さが」
「すっかり消え去ってしまっている」
死刑囚の最後の砦である柳も、いきなり鬼《オーガ》モードに入ったバキに驚いて冷や汗を流している。
汗はイケませんねー。冷や汗と歯が折れるのは格闘士にとって敗北の前兆です。この状況から逆転できるのは主人公ぐらいのものですよ。
どちらにしろ、二人は近くの空地で対峙する。
風に草がざわめき、17歳の格闘王者とサツマイモ色の右手をしたおっさんが向かい合う。そして、何故か顔を赤らめながらバキを見る松本梢江嬢。小さい絵だがこの顔はいつもに増して、いただけ無い。まるで黒澤明の映画作品のような決闘シーンだ。
「い〜〜〜〜い娘(こ)をみつけたなバキさん」
「最愛の娘(ひと)さ」
声を交し合い、構える。
バキは知らない。柳の右手が危険な凶器になっている事を。
この状況は非常に不利なのだが、バキはどう乗り切るのか。
「バキ…くん…」
「わたしもやるッッ」
梢江が吼えた。
最愛の人を守るために戦うバキの姿を見て、自分も闘う決意をしたのだろうか。
もちろん梢江はこの闘いは命のやり取りになりかねない危険な物だということを知っている。全身を振るわせて涙を浮かべながら、一緒に闘うと言う。
お世辞ではなく、バキはいい娘を見つけたと思う。
たぶん、今の梢江のポケットには石がいっぱい詰まっていて、靴のつま先には鉄板が仕込んであるのだろう。ヤクザを撃退した勝利が梢江を獅子に変えちゃったんだろうな、やっぱり。
「ありがとうな」
「危くなったらたのむわ」
梢江の命を賭けた戦闘参加宣言にバキも不退転の決意を新たにした事だろう。
気負った表情が消え、バキは一直線に柳に突っ込んでいく。
ジャブ気味に左平拳を打つ。
だが、それはフェイントだった。意識を上に向けさせ、左のローキックを膝にブチ込むッ!
ザキッ
(折……)
更に、右拳をロシアンフック気味に叩き込む。
左→右と体の捻りを利用した怒涛の攻撃に柳の歯は砕け、目が左右に広がり、泳ぐ。
屈めた上体を起しながら、右足で蹴り上げる。
自分の胸に密着するほどに高く上げられた足は柳のアゴをとらえ、一気にダウンを奪う。
目、鼻、口、耳と頭部にある穴から血を流し柳は敗北寸前だ。
段違いに強くなってしまったバキに、梢江も驚いているがバキの表情もなんか驚いているっぽい。
やはり推定48時間以上と言う健康に悪そうな荒行を乗り越えて、生物として凄い事になってしまったのでしょうか。
それにしても久々に見せた怒涛のコンビネーションでした。突きと蹴りを交互に打ちこみ、上下にも揺さぶる見事な連携です。
しかし、Hして強くなると言うのは血筋で強くなるのと似ていて、ちょっと不条理を感じてしまいます。
まあ、精神的に吹っ切れるきっかけになったと言う事なのでしょう。
次回のバキは作者取材のためお休みです。
このまま敗北する柳とは思えませんし、毒手と言う切り札があるので油断できません。
梢江が巻き添えになると言うベタな展開も考えられますが、バキの背後に注射器を構えたジャックが現われるかもしれません。
なんにしても国松師匠と同じく,黒目がヤバイ感じに外を向いてしまった柳さんが、思わぬところで散眼完成となりバキの攻撃をかわしまくると言う展開だけは無いと思いますが。
2002年7月25日(35号)
バキはお休み
範馬バキ(17)のパワーアップは不評のようだ、結果では無く方法が。やはり、トレーニング以外でパワーアップは反感を買うのだろう。
そんなバキだが、今週はお休みです。
それにしてもオリバ&渋川、ジャック&烈&ドイル&克巳&独歩、などのストーリー途中で置いて行かれた人達に、活躍の機会はあるのでしょうか。
柳がうっかり右手で傷口をさわって自爆して、死刑囚編終了になったりしたら本気でこの人達は報われません。
まあ、そうなってもオリバが死刑囚編のラスボスになってくれると思いますが。
このタイミングで板垣先生が取材に入ったと言うことは、そろそろ死刑囚編以後の展開を考えているのかも…。
前回の感想に関して、柾木匡(まさき きょう)さんから次のような指摘を受けました。
『実は、今回メールを出したのはちょっとアレ?と思ったことがあったためです。
バキ131話のレビューにおいて、毒手の話の所の
「柳も汗を流し、痛みに耐えながら左右交互に抜き手を打ち込む。」
の所です。
すでに先週号の為、直接確認は取れませんが(すいません、立ち読みビトです)、132話で見る限り、「右手」のみが毒手になっている模様なのですが…131話でも右手のみで毒砂を突いていたと思います。
さすがの柳も両手を毒手にするには時間が足りなかったということでしょうか?某男
塾の毒手使い(あまり詳しくは呼んだことないですが)は足まで毒手(毒足?)にし
ていましたが…』
これは私の勘違いでした。
確かに柳は右手のみを毒砂に突っ込んでいます。
勘違いしたのは、砂に抜き手を打ちこむのは、左右交互に行うものだと言う先入観があったからです。
ふと、思った話ですが、毒功完成した柳さんが自信を持って国松先生に右手をみせたが、
「ほう、よく鍛えてている毒手だな。
で、左手と両足は?」
あっさり言われて二の句が継げない柳氏であった。なんて話だとちょっと面白いかも。
抜き手を交互に行えば同じ時間で毒手を鍛える事ができると思います。だから、右手だけ鍛えたのは、日常生活が不便になるからでは無いでしょうか。
ハンバーガをセットで頼み、ポテトを食べようとして悩むハメになったり、小便するときも油断できなかったり、ストレスが溜まりそうです。
武道家たるもの、常に体調を整えておくものです。今は体調が悪いから闘え無いと言う言い訳は通用しません(あれ?)。
体調を崩さないように食事やストレスにも気を付けるのが真の武道家でしょう。
ところで「魁! 男塾」の毒手使い・影慶にも言及されているので、少しわき道にそれて突っ込ませていただきます。
影慶の「毒手」は毒液を腕に振り掛ける事で毒の腕にすると言うお手軽な技でした。最初は。
この技は、毒が皮膚から浸透して自分も確実に死ぬ、決死の技です。
ですが影慶は敗れ、邪鬼に介錯を頼み真空殲風衝で胸にドでかい風穴を開けられます。
だが、脅威の中国医術で穴も毒も「一切無かった事にして下さい」(by 樹海少年ZOO1)って感じで復活する。
毒手も少しづつ毒を手に馴染ませると言う設定に変更して、死ぬ事も無く使えるようになる。ついでに足も毒足に。噛みきった小指だって生えてくる。
なお、影慶が倒した月光は血を吹き掛けて透明なブーメランを見えるようにしてかわしたが、後に盲目だと判明する。
つまり、私が言いたいことは、バキの矛盾や不条理ぐらいでガタガタ言うなッ!!
いや、日本で一番ガタガタ言っているの私かもしれませんけどね。
それにしても中国医術と言うのは凄い物です。
ジョジョ4部の主役スタンドであるクレイジー・ダイヤモンドでも「ダメ、部品足りない」と言われそうなダメージだろうと見事復活しています。
思い切って劉海王にも出陣していただいて、脅威の技を見せてもらいたいものです。
別雑誌ですが、モーニング連載の三国志漫画「蒼天航路」の今回出て来た医者の華佗(かだ)は「五禽の術」と言う健康体操を考案していて、それが太極拳の祖であると言う説があります。
漫画の中で語られている様に古代の中国では技術者の地位は低い上に、中国では武官は文官よりも低く見られていたそうで格闘技や武術に関する記述はほとんど無いそうです。
そんな訳で中国武術の開祖と呼べる特定の人物となると、西暦200年前後の人物である華佗ぐらいまでしか遡れないらしい。ちょっと夢の無い話ですが。
話をチャンピオンに戻しますが、最近のチャンピオンの新連載ラッシュは何事でしょうか。
本当ならチャンピオンを支えているはずの山口貴由 先生、曽田正人 先生、西条真二 先生が他誌に行ったので、戦力不足に泣いているのかもしれません。
だから、ヒステリックなまでに次々と新連載を打ち出しているんでしょうね。当然、この後にシベリアブリザードよりも過酷な打ち切り地獄が待っているはずですが…
なんで最初の犠牲者が連載再開したばかりのキリエなんですか?
コミックスのページが足りなかったのかなぁ…。
…………となると、バキ特別編もコミックス化のためにヤングチャンピオンで短気集中連載再開なのかッ!?
2002年8月1日(36号)
第2部 第133話 毒手との闘い(2)(513+4回)
折れた左足は無かった事にしてください。
いや、むしろそっちは忘れてもいいぐらい深刻に殴られてしまった柳さんが完ッ璧ッに気絶して血涙を流しています。
ダウンしている柳をバキは余裕の表情で見下している。早くも勝利を確信しているのかッ!?
なんかこのまま勝利の前祝のメイクラブとかしちゃいそうで心配です(いや、もう出ないだろ…)。
柳さんの両目もやっと正常位置に戻り意識を取り戻します。頬を思いっきり腫らしているが、頑張って起き上がる。
「強いな……」
「刃牙さん」
「本当に強い……………」
な〜んかワカって来たんでしょうか。この人は童貞を捨てているもの…って感じで。
それはともかく、バキがパワーアップしたのに対し、柳には切り札があるのだった。それも1枚や2枚では無い。
「鞭打(べんだ)?」
「鞭(むち)ですな」
強烈過ぎる個性で読者のハートを猛禽掴みした国松先生がまたまた登場です。まだまだシンクロニシティー解説は続けてくれるようです。
今回の秘儀は「鞭打」と言う技だ。すでに名前の出ている、空掌、毒手、活手、殺手、縛法に加え第6の殺法が出てきました。なんか、もう1つぐらいは出てきそうですね。
それにしても、国松先生は秘伝をベラベラ喋ります。やっぱり「話したところでできるハズもなく、聞くだけ無駄というものではあるが」と言う事なのでしょうか。
それとも、無事に帰すつもりが無いのか……
「鞭なんてものは皆さん せいぜい馬のケツ叩くものくらいにしか思っとらんが」「ありゃアンタたいへんな武器だで」
「中東あたりじゃまだ」「鞭打ちの刑が残っとってなァ」「刑の重さに従い叩く回数が決められとるんだが……」「これがまったくの無駄」
「決められた回数に達する前に死んじゃうから」
「ヒャッ ヒャッ」
「ショック死ですな」「激痛(いたみ)のあまり………………」
「前面の数倍は強靭と言われる」「背面………背中や尻を的にするんだが―――――――」
「急所でもないそんな部分を叩くにもかかわらず」「せいぜい十数回……悪くすりゃ数回で――――」「死に至る」
「それほど激痛(いたい)んですな」
「肉体(からだ)が死を選択(えら)んでしまうほど」
「想像できますかな」「今後の永い人生どれほどの幸福があろうと」
「わずか数回で帳消しにしてしまうほどの激痛(いたみ)!」
それはもう嬉しげに長々と語ります。
国松先生は己の肉体を凶器に変える壮絶な修行を繰り返し、想像を絶する激痛を耐え、それ以上に人を攻撃して苦痛を与えていたと考えられます。
地獄の底の底にある泥を啜った経験があるから、ふざけた様な態度を取らないと辛くて痛くてまともに語れないのかもしれません。つらい話はシラフじゃ出来ないって言う感じでしょうか。
まあ、わずか4回の特別編で帳消しにしてしまうほどの激痛に心当たりがある人も多いかもしれませんけど。
そして、場面はバキと柳の闘いの場に変る。
「バキさん」
「痛いのは平気かね」
「苦手だよ…………」
「痛いのは」
「それは気の毒なことになる」
「この攻撃(わざ)は……………」
「痛いよ」
ぶらんと脱力して表情もちょっぴり嬉しそうだ。冷や汗も引っ込み、鞭打を打つ体勢が整ったようだ。
もっとも、バキは痛みには強いはずです。いや、むしろマゾです。人前で失禁するのも大好きです。
う〜ん、これは戦闘方法が噛み合っていません。
空道の奥深さを知らないバキも不利ですが、健康な神経を切られてもうめき声ひとつ出さずに笑って見せる変態を相手にする柳はもっと不利な気がします。
ところでバキは鎬昂昇戦で切れた神経を傷口に押し込んでいました。押しこんでも直るわけじゃないし、神経を直に触って痛いだけでいい事は無いと思うのですが、なんで刃牙はそんな事をしたんでしょうね。やっぱ、マゾだから?
またバキはここで、痛いのは苦手と言っていますが、これもそう言えばきっと物凄く痛い攻撃を柳がしてくれるのだろうと期待して言ってそうですね。
さて、そして鞭打の技法ですが…
「脱力ですな……………」
「肩から先の骨が………」
「ないものとイメージする」
「腕全体が水…」
「重い液体と信じ」
「振るッ」
ピッ
コーラのビンが切れる。
腕を振るうたびにビンが次々とカットされていく。まるで真剣による斬激だ。
これは凄い。ビン切りで騒いでいた神心会空手の面々がこれを見れば驚いて失禁しかねない。
しかも、このビンは中身が入っていない。中身の入っていないビンは軽いため安定性がなくビン切りが難しいらしい。(参考:吉福康郎「最強格闘技の科学」)
空のビンをスパスパ切って行く技術はほとんど魔術の世界と言える。
「柳ほどじゃないにしろ」
「このくらいはアンタ………」
「柳龍光は……………」
「もっと使えるんですね」
「あれはもう人の手ェじゃなくて」
「あえて形容するなら―――――」
「水銀の鞭!!!」
その水銀の鞭が唸るッ!
折れた左足を上げて片足で腕を振るのだが、勇次郎のMAXパンチ・鬼哭拳(勝手に命名)の速度に匹敵するのか、腕が早すぎて見えない。
宙を舞う草が腕に触れたのか、次々と斬れる。
脱力する所は「低酸素の毒」と同じ構えなのだから、手の内を見せずに闘えば良いと思うのですが「痛いよ」発言をしたり、技を先に見せたりと実は余裕たっぷりです。
まあ、実は「鞭打」ですら前フリで本命は「毒手」なんでしょうけどね。なにしろタイトルが毒手との闘い(2)ですから。
恐らくこの闘いでは毒手対策が最大のポイントとなるのでしょう。
いまだ柳の右手が毒手だと知らぬままバキは前進する。
間合いに入った瞬間、水銀の鞭が唸るッ!
バキの左首にヒット、かッ!?
そして、次回へ続く…
一応打撃は当たっているようですが、毒手による追加ダメージを考えると首に受けるのは致命的ですし、これをかわしていないと次回第2部完、第3部はバキと梢江の子供・刃牙太郎が主人公になると言う展開になりかねません。
と、言うわけで攻撃をかわしている事を希望なのですが、そうなるとバキ君は期待していたムチを貰えない事になりますね。
そうなるとフラストレーションが溜まるワケで、ますます勝利のメイクラブに走りそうです。
ところで「sabra」と言う雑誌で板垣先生が井上雄彦氏と対談をしています。
そこに載っている「『バキ』のこれから」で「本当に失って悲しいのは誰かと考えたときに、」と言う文がありました。
この記事からはバキが梢江を本当に必要な人物として認識したときに失ってしまうのではないかと言うイメージを受けたのですが、板垣先生の事ですから額面通りに受け取ると全然違う所から奇襲を受けることになりそうですね。
しかし、バキが更に1皮むけには、これぐらいの試練が必要なのかもしれません。
そうなると、梢江は死闘のとばっちりを受ける展開が予想できます。まあ、バキが梢江を飽きるまで喰らい切れて無さそうなので、まだ死ぬ事は無いと思いますが。
でも、かなりの人数が梢江の死を望んでいそうだなぁ(不憫なヒロイン…)。
2002年8月8日(37+38号)
第2部 第134話 もう一人の殺法使い(514+4回)
今回、バキのマゾとしての資質が問われるッ!
いや、その前に「毒手との闘い」が始まる前にサブタイトルが変っちゃってんですけど、毒手の出番はもう無しですか?
毒の鞭打が行ったァ――――――
ベッシィッ
先週のラストでは首でしたが、今週は肩口に当たっている。まあ、良くある事です。驚いてはいけません。
まさにムチのごとく肉体にまとわりつく独特の打撃は、バキの皮膚をはぎ取り肉をむき出しにする。それどころか、肉も少しはぎとられているように見える。
鞭打の理合はインパクト時の接触時間を増やすことによって表層部分へのダメージを高める点にあるようだ。
「痛いだろうねェ………」
やっと反撃できた柳が余裕の笑みを浮かべる。
全身の力をぬいて、液体のような柔らかい動きで ゆらァ… と鞭打で蹴る。軸足が折れていることを感じさせない見事な右のローキックが防御(うけ)たバキのスネに巻きつく。
やはり、皮膚がズルむけ肉が剥き出しになる。
手とは違って関節の間が長い足でも鞭のしなりを生み出すとは……
国松先生が「柳ほどじゃないにしろ」と言っていたのは、技の威力だけではなく柳は足でも打てると言う意味合いが含まれていたのかもしれません。
しかし、ガードしなければ、この攻撃は股間に入る軌道だったようです。
惜しい……
それはともかく、国松先生と徳川御老公の格闘問答に場面が移ります。
「鍛えた身体(からだ)が」
「通用しない…………?」
「たしかに人体は鍛錬により飛躍的に強靭(つよ)くなるし――――――」
「そんな実例を示す」「演武も存在する」
「しかし鍛え上げた筋肉の鎧にも」「耐えられぬ打撃――――――」
角材を腹で受けてみせる中国拳法家っぽいおさげの人や、腹の上に車を通過させてみせる空手家っぽい人が例として背景に出てきます。
………これって演武なの?
「皮膚への打撃――――― ワカリやすく言やァ 張り手ですわな」
「鞭打の正体は平手打ちッッ」
「たしかに平手打ちの痛みは鍛えた肉体にも女性の柔肌にも無差別だ」
どうやら、鞭打は内臓や骨などに与えるダメージは捨てて、皮膚のみに狙いを絞った攻撃だったようです。
前回、技の入り方を見た感じでは腰が入っていない「手打ち」的な攻撃のようだったのでダメージは少ないのではないかと思っていましたが、普通の技とは狙いが違っていたようです。
皮膚には触点・痛点・冷点・温点などの刺激を感じる部分がありますが、このなかで痛点は最も多く、体全体で触点50万、冷点25万、温点3万、痛点200万と言われています。
敵に痛みを効果的に与えよう考えられた技が、皮膚のみに狙いを絞った鞭打だったようです。
痛みと簡単に言ってもなめちゃいけません。
本日、放送していた格闘技世界一決定戦(すごいタイトル付けてるなぁ…)でのガファリは痛みによる嫌ダウン負けをしていた感じがします。
まあ、バキ世界の住人にそんなヤワな人がいるとは思えませんが。
「思い出した…」
「鞭打だな」「これは……」
「知っているのか………………」
柳、大ショック。
そりゃ師匠の国松先生は、初対面の人にも簡単に毒手の秘密や鞭打の技を教えてしまう人ですが、まさかこんな高校生にまで知られているとは思っていなかったでしょう。
せっかく、いい気になってペシペシ叩いていたのに、イマイチ効いていなさそうだし、オマケに技を知られている。
柳さん、またもや負けモード?
「むか〜し 父親が教えてくれた」
「使用(つか)えると言うのか」
「きさまも鞭打を…?」
「父親はこう説明していたよ」
「しょせんは 女子供の護身技」
「「大の男が使用(つか)うシロモノじゃねぇ」…ってさ」
やはり勇次郎の影響力は絶大です。
神心会の人間ならピンチに独歩の教えを思い出すように、バキもピンチには勇次郎の記憶がよみがえるようです。
しかし、勇次郎さんは「女子供…」と言う言葉が好きですね。
それにしても相変わらず勇次郎は物凄い表情しています。
笑ってるの? 怒ってるの? あきれてるの? どれにも見えるようで、どれにも見えません。
「せっかく身に付けたものだし……」
「使ってみようかな久し振りに」
「たしか… こう……」「全身の…」「液体を…… イメージ…」
「これだッ」
ビタ〜〜ン
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……………………ッッッ」
バキの鞭打蹴りが柳の背中に巻き付く。
背中の皮膚を剥ぎ取られ声にならない悲鳴を上げてヨロケまくる。
え、柳さん毒手の方で傷口押さえているんですけど大丈夫なんですか?
「あ〜あ」
「見ちゃいらンねェな」
「痛ェだろ」
「愛がねェとな」
「もういいだろ 終わらせるぜ」
やはり、真性マゾは痛みに対する耐久力がまるで違う。
バキは合計3発喰らって冷や汗をかいているが、それでも十分な余裕がありそうです。
しかし柳さんは1発だけでかなり効いてしまったようです。
そしてバキを真性マゾに鍛え上げたのは「愛ある痛み」だったようです。
愛があったから、痛みも喜びに変ったのか。
バキがマゾになったのは困った家庭環境が原因のようですね。
そして、終わらせる発言までして、殺る気満々のバキさんですが、毒手のダメージは平気なんでしょうか。最初の一撃はちゃんと喰らっているはずなんですが、今の所は影響なさそうです。
とりあえず、毒に犯された皮膚は鞭打ではがされたので助かった、とでも考えておけば良いのでしょうか。
次回、いきなり毒が効いてきてガクッって事になる可能性もある訳ですが、今の流れを見る限りでは、次回なんの迷いもなく柳が倒されると言う展開が起きる確率の方が高そうです。
やっぱり、ラストは梢江が乱入して来てトドメ刺す、とか?
2002年8月22日(39号)
第2部 第135話 もう1人……(515+4回)
愛無き打撃は確かに痛いが、(変質的な)愛情たっぷりの打撃はもっと痛いッ!(色々な意味で…)
バキの鞭打がしなる。頭の右側から手が回りこんで、後頭部を通過して、左側の頬に達して、柳の皮膚を叩き破る。
皮膚がはじけ飛ぶ痛みに、柳は再び声にならない悲鳴を上げてのたうつ。
いや、だから、痛くても毒手になっている右手で押さえちゃダメだって…。
バキは闘いを早く終わらせて勝利のメイクラブをしたいらしく「ゆるぅ〜」と舞のような柔らかい水の動きで鞭打を打つ構えを見せる。
痛みに対して正常な反応をする柳は、これ以上痛い思いをしたくない。
もう鞭打はたくさんだ。殺られる前に殺れ、とばかりに毒手+鞭打のコンボ攻撃でバキの太ももを叩く。……だから、毒手って本当に効果あるの?
しかし、真性マゾにとってこの程度の打撃は遊びにもならない。
表情1つ変えずにバキが反撃する。やられた所をやり返す。柳の太ももに痛っい一撃が炸裂する。
蓄積する激痛(ダメージ)に、ついに柳はへたり込んでしまう。ヤロウ、萌えキャラのツボを押さえていやがるッッ。
しかし、戦闘中に敵から目をそらして倒れてはいけません。左腕を取られて、あっさりと腕十字を極められてしまう。
肘関節は小指の方向に極めろと私は柔道で習いましたが、バキも基本に忠実に柳の手首を返して小指の方向に肘を極める。柳龍光、絶体絶命だ。
「やっぱりな」
「手足が液体――――― ってどんなに脱力をイメージしたところで」
「人体ってやつはどうしようもなく関節が存在する」
「折るよ」
マゾだけに痛みに関しての知識は豊富なバキです。逆も真なりで、人に痛みを与えるのも得意なのでしょう。
実際に、紅葉の胃を破ったり、金的蹴りが好きだったり、危険な攻撃を好んでいます。
今回は言葉責めで精神的に苦痛を与え、その上で肉体に痛みを与えるつもりのようです。
しかし、液体をイメージしただけで関節が無くなる訳がないのに、何を解説しているんでしょうか。
そんな事を言いつづけていると「骨が無いから痛みを感じない by 悪魔将軍」と言う名言を生んだゆでたまご先生に並んでしまいますよ。
「あッ」
「あぶなああああいッッ」
危ッ!
バキの圧倒的優位な状況で、梢江が叫ぶ。
天を突くような豪快な蹴りが唸る。謎の乱入者が襲撃をかけたのだ。
とっさに柳への技を解き、飛びはねてバキは逃げる。
「ふしゅる…………」
無精ヒゲを生やした正体不明の襲撃者は、グラップラー刃牙1・2巻に登場した本部のちょびヒゲ弟子(栗木似)のような不気味な呼吸音を発している。
え、誰? 新キャラ?
「忘れていたよ」
「アンタとの決着はまだだった……」
って、シコルスキーかいッ!
2001年9月27日にバキ98話で死亡確認されてから(されてません)1年近い空白を経て奇跡の復活です。
「ふ…」
「ふしゅる…ふ」
「ふしゅ」
……この人汗かきまくって血管を浮かせてフルフルしているんですけど、大丈夫なんでしょうか。
なんか、人語を忘れちゃっていませんか?
鎬紅葉あたりに脳をいじられたとか、オリバさんに愛を教えられちゃったとか、なんか人生感が変る体験でもあったのでしょうか。
「入院なんかしてられねェってか………」
だが、色々な意味でヤバそうなシコルスキーに対して、バキは憎たらしいまでの余裕を見せる。
入院したところでバキに潰された睾丸が回復する訳もなく、色を知った身として、優越感に浸っているのでしょうか。
そんなバキに対しシコルスキーが正義の拳をふるう。中指一本拳で切りつける必殺のブローがバキの顔面を捕らえた。
「不思議だねェ」
「顔が切れてない」
バキ本人が言う通り、顔には傷1つついていない。
拳がヒットする瞬間、当たる方向へ首を回転させ威力を消していたのだ。
せっかく復活したシコルスキーの攻撃を「あんまりパンチがノロいんでやってみたよ」と言い放つ恐るべき17歳である。
バキさん、そりゃ悪役の言うセリフだよ。
九死に一生を得た柳は、引き立て役になるためだけに復活したドラゴンボールのフリーザ状態になりつつあるシコルスキーに声をかける。
「アンタが今感じているとおりだ」
「もう以前の坊やじゃない」
「我々1人ずつでは手に余るということだ」
ニ対一………………ッッ
と言う訳でなりふり構わずバキを仕留めにかかる死刑囚の2人であった。
一応、バキがピンチらしい状態で次回へ続く。
あ、ちなみに柳さんはロシア事情に詳しく無いので知らないようだが、バキはとっくの昔にシコルスキーの手には余りまくっていました。
シコルスキーの手に収まったのは猪狩ぐらいか…
過去に柳に対しニ対一を挑んだ因果が巡ったのか、複数対決です。
次回、バキに心強い援軍がくるのか!?
とりあえず、猪狩と言う線は無さそうですね。
出番が極端に少なかった渋川先生の最後のチャンスか、なんのために背を伸ばしたのかわからなくなりそうなジャック・ハンマーが覆面闘士・範馬グレートとしてバキとタッグを組むのもいいかもしれない。
それよりも、最終兵器・松本梢江がついに参戦かも。
「合わせろや、バキッ!」「危ッ!」と合体技を完成させるか!?
なお、シコルスキーのヒゲですが、バキ世界ではちょびヒゲに強者無しと言う仮設が検証中なのですが、彼はこの仮設をより強化する方向に活躍しちゃいそうです。
独歩はヒゲをはやしていた時は手首を切られました。克巳は活躍しそうでいて、何もできずにヒゲを剃りました。
果たして、シコルスキー氏にチャンスはありますか…
予想ですが、「シコルさんとやら、バキの鞭打には気を付けなされ」と、親切にシコルに忠告する柳であったが、うっかり毒手でシコルスキーの肩を叩いてしまった。
「ふしゅるッ…」シコルスキー猛毒により死亡。
やっぱ、ダメかなこりゃ。
ありがちな予想として、オリバの電撃参戦!
鞭打で迎え撃つ柳。
「OH(オー)ゥッ! ITE(イテ)ッ! 待った、おとなしくするからもっと優しくしてくれッッ」
なんとなくオリバさんは痛みには弱かったような…
2002年8月29日(40号)
第2部 第136話 遅すぎるッ(516+4回)
主役の活躍を期待している人は何人いるんでしょうか?
少しだけ不憫です。活躍できそうもない柳とシコルが。
2対1でも余裕をみせるバキに対し、柳とシコルスキーは追い詰められた表情である。
協調性には縁が無いまま人生を歩んでいそうな死刑囚だけに、コンビネーションがうまく作用するとは思えません。実はこれでもバキの楽勝ムードか?
しかし、数の上ではピンチであるらしいバキに、遅すぎた援軍があらわれる。
「バキくん」
「や」
「やる」
「わたしも」
ついに最凶の女が宣戦布告をした。
数多くの読者を視殺せしめた松本梢江がファイティングポーズをとる。
ちゃんと拳を握れていない所が萌えポイントである。また、両手を上げてガードを固めているのに、体が正面を向いている所も素人臭くて追加萌えコンボが期待できる。
……いや。やっぱ期待しなくていいや…。ごめん。
「アリガトウな」
「梢江……」
「心配してくれて……………………」
女性のファイティングポーズを見ると、刃牙ママこと朱沢江珠さんの勇ましい姿を思い出します。
バキも梢江のなっていないファイティングポーズに懐かしさを感じ、新たなる 劣情 闘志を燃やしている事でしょう。
なお、「心配してくれて…」のシーンですが、バキの口元のみが描かれたカットになっています。笑っていない口元と紙面から見えない目の表情など、微妙な切なさを感じました。やっぱり江珠さんの事を思い出しているのでしょうか。
それとも格闘経験の無さそうな構えにあきれているのでしょうか。
それはともかく、今はイチャついている場合では無い。闘っている最中なのだ。
「でも……」
「この2人じゃ俺を倒せない」
「これは自信というより予感だ」
「そして予感より確かなものだ」
―――――ッ、なんかメチャ態度でかいでコイツッ。
だが、範馬バキがムカツク態度を取った時は、くやしいほどに強いのだ。そりゃぁもう、シャキーンって感じになるほど強い。
今回もいきなり性格悪くなってパワーアップ状態なのだろう。
「この2人が揃ってからー」
「ずいぶん時間が経っている」
「なのに2人は前へ出られない」
あぁ―――っと痛ッい所を突きました。
柳とシコルはガチガチに緊張して構えているのに、バキはだらりと腕を下げたままの無防備な状態でいる。
数の上では不利だが、圧倒しているのはバキだった。圧力をかけているのもバキだ。
そして、構えないまま散歩のようにシコルの前まで歩いていく。
「ホラよ」
「間合(エリア)だぜ」
「モタモタしてっと…」
「ヒネり潰すぞ(はぁと)」
最初にシコルを狙ったのは、こいつの方が弱そう、だから?
心と体に深い傷を負ったシコルスキーに効果的に響く「(残りの睾丸も)ヒネり潰すぞ(はぁと)」と言う脅し文句がただならぬ天性を感じさせます。
こいつ、弱者の潰し方を知り尽くしていやがるッッ!
挑発的な言葉と、何かをヒネり潰したがっている手に動揺したのか、シコルスキーは思わずバキの手首を握る。
瞬間、ブン投げられた。
まるで合気のような投げでバキはシコルスキーを投げ飛ばす。
シコルの吹っ飛んだ先には柳がいた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
ケツから突っ込んでくるシコルスキーに柳も焦りまくるしかない。かなりカッコ悪い。
なんかエイケンを彷彿とさせる尻からのダイビングに対して、柳は自然な流れでエイケン流・尻キャッチをする。
この時、布越しだが毒手がシコルの股間付近を触っている。シコルスキーの残存兵力が腐れてしまうのでは無いかと少し不安だ(まあ、バキが平気なんだし、シコルも平気でしょう)。
「立て」
倒れる二人の横にバキが立つ。
鬼父さんを彷彿とさせる、それは、それは見事な範馬立ちです。
白目をむいて、メチャメチャ偉そうに立っています。
移動速度の事を考えると、こっそり瞬間移動もマスターしていたようです。この調子なら背中に鬼が出っぱなしでしょう。
更に、バキはシコルと柳の襟首をつかみ引き寄せる。
「歯ァ喰い縛れいッッッ」
目を白黒反転させて、2人を平手で打ちのめす。
なぜ殴るか分かるか? 意味など無いッって感じです。
語尾が「れいッッッ」なのも範馬語っぽいですね。
「”敗北をプレゼント”どころじゃないぜ」
「足腰立たなくなるまでブッ叩くッッ」
彼女の前だから張り切っているのかも知れませんが、この人は完全に鬼です。
なんか巨凶範馬の血が目覚めきっているような状態で次回へ続く。
あちこちで指摘されていますが「遅すぎるッ」って何のことだったんでしょうか。
次回のお楽しみでしょうか…
そんな次回の展開ですが、柳の毒手がちゃんとバキに効いていれば、2人とも逃げ出すことができるかも……、可能性低そうですけど。
その前に暴走しているバキを止めにジャック・範馬が電撃参戦しそうです。
バキの腕をつかむジャック。「ヨスンダ、モウ勝負ハツイテイル」
だが切れてる17歳の暴力はそんな事では止まらない「ウルセェんだよ、このシークレットシューズ野郎ッ」
背が伸びているから兄と気がつかなかった、と言うよりジャックの背が更に伸びているのを見てムカついた刃牙は柳たちにも見せなかった本気のラッシュをしかける。ジャック死亡。
暴走する巨凶範馬の血を止めたのは梢江だった「バキくん、どうしちゃったの」
ジャックの死体を前に正気を取り戻すバキ。「オメデトウ坊や、童貞を捨てたな」地面の下からオリバが拍手をしながら登場する。
いつの間にかいる勇次郎は当然のように仁王立ちだ。
梢江との48時間耐久バトルは、肉体と精神を極限状態に追いこみ巨凶範馬の血を目覚めさせると言う、勇次郎の計画だったのだ。
「俺はアンタとは違う」「うむ、お前の方が趣味悪い」バキは勇次郎を睨みつける。
とっくに背景からに消えている柳とシコルスキー、…ついでにジャック。
なんて、展開は無いでしょうね、やっぱり。
2002年9月5日(41号)
第2部 第137話 アンタの勝ちだ(517+4回)
「足腰立たなくなるまでブッ叩くッッ」
人間性を捨てた暴言を吐くバキに対して、梢江が物言いをつける。
「チョット…言い過ぎてない………………?」
この発言はバキに無視されました。
いくら文句を言われたからって、無視するのは可哀想です。
克巳みたいに「やっぱり そう?」と確信犯の笑顔で返すぐらいの黒さを見せていただきたかった。
彼女の前でいい所を見せようと張りきり過ぎているだけかも知れませんが、少しはしゃぎすぎて裏目に出てしまったようです。
自分が足腰立たなくなるまで、ナニかやっていたからって、それを他人にも強要しようとする思想はちょっと…。
ワガママなだけでは無く、圧倒的な強さもみせるバキに対し、柳はゆっくりと立ちあがった。
今まで攻防では劣勢だったはずなのだが、その表情には余裕がある。
「強いね………」
「人は必ずしも日々の稽古だけで強くなるものでもない」
「たった一つの勝利………」
「たった一つの敗北………」
「そして」
「たった一つの出会いが」
「人を格段に強くしてしまうこともある」
最大トーナメント編で勇次郎に鎬昂昇が戦いを挑んだときも、このセリフが出てきました。
勇次郎のセリは「たかだか1時間余りで蚊トンボを獅子に変化(かえ)る」「勝利とはそういうものだ」でした。
勝利の例しか出していないのは、範馬勇次郎は敗北に価値を見出していないからでしょうか。
そして、柳にとって「たった一つの出会いが」「人を格段に強くしてしまうこと」とは国松先生との出会いだと思われます。
国松先生と出会い空道を学び柳龍光は強くなり、そこから修羅道が始まったのでは。
「しかしどうだろう」
「君は初恋の果て女を知り」
「大変な神通力を手に入れたように感じているようだが」
「そんな人生で誰もが体験するような出来事だけで」
「今までの自分より何倍も強くなるなんてことが…………」
直前に話した自説を否定して、今度は文句をつけています。
そんな事言っても、目の前の少年がやたらと強くなっているのは事実であり、現実から目をそらしても状況は改善されません。
これは一種の現実逃避でしょうか?
柳さんも少々ヤキが回り始めたようです。
もっとも、この会話は間を作るための物かもしれません。現に、このスキにシコルは立ち上がって体勢を整えています。
毒手の効果が出てくるのを待つ、時間稼ぎも兼ねているかもしれません。
だがバキは自分と梢江の神聖な儀式をバカされたとして怒ったのか、再び鞭打で攻撃してくる。
慌ててよける柳さん。
とりあえず、初恋相手が初Hの相手という幸せ者はそんなに居ないと思います。これに関しては、自慢するに値する事だと思います。
(なぜ効かない……………!?)
(この男にだけ何故(なぜ)………ッッ)
(毒が効かないッッ)
バキの攻撃をよけながら、頭の中は「?」だらけの柳であった。
読者の大半は第132話あたりから疑問に思っていた事なのですが、本当になんで効かないのでしょう??
そうなると、先週のサブタイトル「遅すぎるッ」は「毒が効くのが遅すぎる」と言う柳の悲鳴だったのでしょうか。
しかし、内心では弱音を吐いていても柳は頑張る。
バキの掌を自分の掌で吸いつけて捕らえる。空掌の応用技のようだ。
そのまま肘を決めつつ体を崩し、投げに持っていこうとする。
このチャンスにシコルスキーも走る。メチャ嬉しそうな表情だ。
まだ、この人はこう言う悪い表情ができたのかと、少しうれしく思う。
だが、シコルスキーの放った掌底アッパーは、バキに足を払われバランスを崩した柳のアゴに誤爆する。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
白目をむいて崩れ落ちた柳に申し訳なさそうな表情を見せる。
やっぱり、この人はこう言う情けない表情しかできないのかと、少し悲しく思う。
こんなスキだらけのシコルをバキが見逃すはず無かった。
左の上段回し蹴りが頬に決まる。
「ッシャアァッ」
たとえ彼女に言い過ぎと思われていても、公約通り「足腰立たなくなるまでブッ叩くッッ」つもりのようです。
「つ…」
「つよ…」
梢江もバキの強さに驚愕する。
己の強さを見せつけて、彼女のハートを再キャッチ大作戦を狙っていたのだとしたら、ものすごく効果的だったようです。
そんなメロメロ状態になりつつある梢江の肩に手をかける男がいた。
マスクのヤクザマン・花山薫の登場だッ!
「こないだはゴメンナサイ」
梢江はとりあえず謝った。
まあ、スネを何度も蹴って顔面に石を投げつけたんですから謝罪して当然です。
梢江もチョッピリ大人の階段登って礼儀を理解できるようになったようです。
でも、花山はまだちょっぴり怒っているのか視線も合わせず返事をせずに淡々と語り始める。
「守る女ができたってだけであんなに変わっちまう」
「あの漢(おとこ)は―――――」
「そこいらを散歩するだけで強くなる理由を見つけてくるんだろうぜ」
それが本当だったら、1日中散歩をしているだけで良かったのかも知れません。
まあ、モチベーションは闘いに必要だと言う事はわかりますが。
しかし、花山のベストタイミングな登場は、やっぱりストーキングしていたんでしょうか。
かつて、刃牙と心を通わせ合い必勝を誓った部屋がティッシュまみれにされているのを見てどう思ったのでしょうか…。
最愛に比べりゃ 最強なんて……………
「アンタの勝ちだ」
花山は敗北を知りました。次号へ続く。
と言うわけで、花山さんは改めて愛の凄さを嫌過ぎるほど見せつけられたようです。
本当はバキのピンチを救うためにこっそり様子をうかがっていたんだけど、このままだとバキが圧勝しそうだったので慌てて決着する前に出て来たのだとしたら、ちょっと切ないです。
それはそうとバキにはなぜ毒手が効かなかったのでしょうか。
花山という援護が出て来たので次回で突然効き始めて花山が助けに入ると言う展開も考えられますが…
ひょっとすると、範馬の一族には強烈な解毒能力が備わっていると言う可能性もあります。
勇次郎は最大トーナメント時に、麻酔銃で撃たれて眠らされていました。麻酔は人体に対して有害で量を間違えると死んだり肝機能に障害が残ったりします。
でも勇次郎は数時間後には元気に暴れていました。
その後の行動が、影でこそこそするようになったり、試合に乱入しなくなったりと目立ちたがりの勇次郎にしては地味な行動が多くなりました。体調が完全ではなかったのかもしれません。
そもそも、麻酔銃の影響で前後の記憶を無くしていて、自分がなんで寝たのかも憶えていないのかもしれません。
とにかく、範馬一族に強力な解毒能力があるのなら、勇次郎の速攻目覚めもバキの耐毒性も説明がつくような、つかないような…。
人は肝臓で毒を分解し、腎臓で血液から取り除き、尿として排出します。コーヒーやお茶を飲むとトイレが近くなるのはカフェインを排出するためのようです。
つまり、今のバキは毒を排出するため、膀胱がいっぱいいっぱいの状態かもしれません。それはもう、ちょっとした刺激で失禁するほどに…
思えばバキ・ジャックの範馬兄弟がやたらと失禁しているのは、強力な内臓を持つが故の悲劇なのかも知れません。
すぐに膀胱が満タンになっていそうです。
次回のバキは「勝利、愛の爆流大失禁!」ではないかと…
2002年9月12日(42号)
第2部 第138話 逃亡 (518+4回)
戦闘中によそ見をしてはいけません。
でもバキは相手に思いっきり背を向けて花山に挨拶するのだった。もう、柳もシコルスキーも眼中に無いって事でしょうか。
ほとんど精神的な嫌がらせです。
餓狼伝の丹波文七がこんな事をされたら「オレのことなんか……」「眼中にねェでやんの………………」と泣きます。
「強ええな」
「たった何日か会わねェだけで」
「人が違ったように強くなっちまってる」
前にあった時は川に蹴り落とすことができたのに、今のバキには手が出ないようです。もっとも、下手に手を出すと横にいる彼女がスネを蹴ったり石をぶつけてくるので止めたほうが良さそうです。
強くなったと言われてもバキは嬉しそうな表情をしなかった。
どちらかというと、たそがれたような表情で静かに喋る。
「べつに…」
「いいんだけどね 強くなくても」
「自分を」
「守り… そして―――」
「もう1人」
物事に執着しすぎるとかえって失敗する事があります。バキは強さに対するこだわりを捨てることで、少し自由度が上がったのかもしれません。
とりあえず、バキはあんまりステキじゃない笑顔を見せる。
実父を素手で殺すことを誓いながら、母の没地で怨念をこめて石を積み上げていたかつての執念はどこかに消えてしまったようです。今のバキの状態は、自分と自分の大切な人を守ろうとする、武道家的な境地に近いのでしょうか。
破滅的な思想から建設的な思想に変る。
「覚悟のススメ」で言えば人類抹殺のために闘う散の思想から、牙無き者を守るために闘う覚悟の思想に変化したようなものです。
滅ぼす闘いと違い、守る闘いは長く困難であり、相当な覚悟をしたはずなのですが、その覚悟の量に対して世間の評判はあまりよろしく無いようです。当たり前か?
「うしろ」
なんかヘラヘラしているバキとは違い、花山は冷静に状況を把握していた。
そう、バキの背後では柳とシコルスキーが闘気を燃やし復活をはかっていたのだ。
息を乱し、汗を流し、膝をふるわせながらも、2人は立ちあがる。
柳もシコルも立つのがやっとなぐらいに足を震わせている事をバキは目ざとくチェックしている。
2人は弱者と判断したのか、バキが走った。
低い姿勢から一気に…梢江をさらって走り出す。秘技・お姫さま抱っこだ。
「逃げよ(はぁと)」
抱きかかえた時に梢江のシャツがめくれているのは、ちょっとセクシーであって欲しいと願います。
いくらなんでも、バキが逃げ出すとは誰も思っていなかった。
置いてかれた3人の空気が重い。
花山は「…………」と無言だった。
何を思っているのかは分からない。ひょっとしたら思考が停止しているのかもしれない。
「逃げやがった………………」
柳は呆然としている。まあ、当然だろう。
シコルスキーは相変わらず喋らない。やっぱり、どこかに後遺症があるのかもしれない。
黙っていても話が進まないので、とりあえず花山は柳とシコルスキーを眺めてみる。
慌てて構えを取る二人であった。なんか、気まずい。
「やらねェよ」
「帰るぜ」
花山さんは帰りました。
広い空地がますます広く感じられた。
なんか、世界からいらない言われてしまったような居たたまれない空気が蔓延している。
一方、バキと梢江は嬉しそうに街中を疾走していた。お姫さま抱っこのままで。
運良く人通りは無いようですが、なんか走るわいせつ物陳列罪化している。
それにしてもバキは好きな女性を抱えて街中を走り回るという悪癖がいまだに直っていないようです。
「い……」
「いいの?」
「勝たなくていい」
「守れりゃいい」
守る相手ができた喜びがあるのか、バキは笑顔で走る。
まあ、相手は足をブルブル言わせていたし、俺ルールの採用の判定により「足腰立たなく」なっていたと認定したかもしれませんが。
今すぐ政治家になれそうな大物ぶりです。
一方、放置プレイ続行中の柳とシコルスキーは向かい合って構えていた。
人間はなにかをやっていないと落ちつかない動物だそうですから、二人っきりで放置されちゃったので仕方なく闘いをはじめるつもりだったでしょうか。
表情がかなり真剣なのが、かえって寂しさを演出しています。
やがて、両者の手はどちらからともなく下げられる。
虚しい。
「なにをやっているんだ我々は」
「これほどの屈辱」
「オオオオォオオオォ」
柳、号泣。
BGMはプロジェクトXのテーマである、中嶋みゆき「地上の星」なんかが似合います。
♪風の中のすばる 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく……
柳は慟哭した。
さり気なく「我々」と言って勝手にシコルスキーを仲間にして、泣いた。
そして、今回の話は終了した。
バキの腑抜けっぷりは欲求不満を解消すれば治るものではなかったようです。
むしろ、色を知って強くなってからの方が腑抜けっぷりがレベルアップしている感があります。
なんか、ますます範馬バキの人気が減っていきそうな予感が…
一方、母性本能をくすぐる切ない泣き姿で同情票を集めていそうな柳さんですが、彼には修行をやり直してバキへの復讐を誓ってもらいたいです。。
国松先生の所に戻って1からやり直しでしょうか。ついでにシコルも弟子入りしたりして…。
とりあえず涙を毒手でぬぐわないようにしましょう。
柳が復活するのであれば、無精ヒゲを装備している事を希望します。
さらに復活のドイル(装備:無精ヒゲ)とシコルスキーを合わせて、無精ヒゲ3人衆として最後の活躍を見せていただきたい。
まあ、ものすごい勢いで刈られて、なぎ倒される運命なんでしょうけど。
そう、彼らは狩られる雑魚と言うよりは、刈られる雑草と言うイメージが似合います。
2002年9月19日(43号)
第2部 第139話 セ・イ・ケ・ン(519+4回)
男の別れだ。余計な言葉はいらない。
ドイルがくわえているタバコに、克巳はマッチで火をつけた。互いに無言だった。
夜だ。
薄汚れた倉庫の前で克巳とドイルが無言で立っている。
ドイルはいつもの黒い服を着て、スポーツバックを下げている。
このバックが129話で克巳が持っていたバックと同じ物であったら面白かったのだが、デザインが違うので別物のようだ。
烈に潰された左目には黒い眼帯をつけ、さらにサングラスをかけている。
傷を隠すには、どちらか1つで十分だと思う。ギミックに凝りたい性格だからこう言う小技をしてしまうのだろうか。
眼帯の下にビームが仕込んであっても一向にかまわない。
なお、眼帯は独歩のような一般的(?)な紐と丸い布を合わせた物では無く、皮製らしい素材で紐の所から自然に広くなっていく(ひし形に近いのか?)デザインです。
やはり美形だけにビジュアル重視と言う事なのでしょうか。
一方の克巳は相変わらず空手着を着ている。
やはり、空手着は正装であり勝負服なのでしょうか。でも対ドリアン戦の時はジャージでした。
いずれにしても、天才的な服のセンスです。常人はマネをしないほうが無難でしょう。
火傷がまだ治っておらず、帽子をかぶっている。
この帽子がワンポイントとなりワイルドな空手着の臭みをスポーティーな爽やかさに変えている。かもしれない。
「感謝シテイル……………」
今回の話が始まってから2ページと3分の2が経過して、やっと出てきた最初のセリフは、ドイルの感謝の言葉であった。
克巳はそれには答えない。
礼を言うまでもないさ。無言の裏にはそんな思いが隠されているのかもしれない。
「タイミングも良かった」
「たまたま門下生に関係者がいた」
「中東カ………」
「ああ」
「来週には中東だ…」
港に停泊中の巨大タンカーを前にしての会話であった。
逃亡中の死刑囚を国内でかくまうには限度があったのか、海外へ高飛びするようだ。
行き先は情勢不安定な中東。
やはりドイルのような人種は負けを認めてもおとなしく牢に繋がれるようなタイプでは無いのだろう。
戦場で野垂れ死にたい、とドイルが希望したのかどうか分からないが、安全な土地よりも紛争地域に行くのがドイルらしい。
オリバをおちょくりに敵地に潜入したり、神心会を爆破しに敵地に乗りこんだりと、危険な行為が好きなようです。
それにしても、神心会の犯罪行為はどんどんエスカレートしていきます。
海外逃亡への協力もこれが初めてじゃ無さそうです。「たまたま門下生に関係者がいた」と言っていますが、本当は関係者を狙って門下生にしたのかも。
私が空手を習っていたとき、指導員の2人が「飲みに誘って連れ出して、ウチの人間で囲めば1発で入門するんじゃないですかねー」と入門者の勧誘方法を冗談っぽく話ていたのを聞いた事があります。
神心会はもっと徹底的にやっていそうで、怖いです。
ほぅ、中東にコネがあるのか。是非ともウチに欲しい人材だ。などと言っていそうで、マジ怖いです。
「克巳ヨ…」
「モウ一ツ ワガママヲ聞イテクレ」
「空手ヲ教エテクレナイカ」
「一ツダケデ イインダ」
「君トノ繋ガリニシタイ」
色々な格闘技を学んでいそうだったんですけど、実はドイルは空手未体験だったようです。
自分の弱みを見せると言うことは、信頼していると言う事でもあるのでしょう。
バキが激闘の果てに梢江と絆を作り上げちゃっていたように、克巳は闘いを通じてドイルと絆を生み出していたようです。
繋がりにしたいと言うあたに『もう出会う事もないだろうから』と言う意味が込められているような気がします。
ここに烈がいればやっぱり中国拳法を教えてくれと言うのでしょうか。
そうなると「四千年かけて完成された中国拳法をこの短期間で学ぼうと言うのか……。キサマは中国武術を嘗めたッッッ」「ミギャアアアアアアアア」
………だから、呼ばなかったのか?
このドイルの申し出に克巳は帽子も脱いで本気の構えだ。
小指から握りこむ正しい正拳の握り方で拳を作り、突く。
足をしっかり踏みしめ、腰、肩、手首の捻り、と正統派の正拳突きであった。
「……………」
「セ・イ・ケ・ン」
空手の技で最初に習う技であり、最も使用頻度の高い技である。
武神・愚地独歩が数十年の空手人生で疑問を持ちつづけたのも正拳突きだった。
単純に見えて奥の深い技である。
克巳はドイルのフォームを正し、正拳突きを丁寧に教える。
元々、身体能力は高いので、パシュッと良い音を立てた正拳を放てるようになる。
もっとも、この一発を放つためにドイルなりに苦労したらしく、汗をかいて息も乱しています。
「さすがだな」
「たまんねェや」
克巳も認める見事な正拳だったようだ。
ちょっと前の克巳は、独歩に対し「才能がない」と言ったりして性格的に問題がありましたが、傲慢な所が直ってよかったです。
ドイルも敗北を認めて素直になったのか、ちょっと照れています。萌え?
「それを一日百本――――」
「毎日だ」
「守ルヨ」
「必ズ…」
それが、克巳との絆だから。
独歩は基本技を1日千本以上やっているそうです。
独歩に比べて練習量が少ないのは、克巳の感覚では百回で十分だったと思っているからでしょうか。
夢枕獏先生の「獅子の門」では天才には感動が無いと表現していますが、この辺が克巳の弱点なのかも知れません。
もっとも、漫然とでは無く、つま先の位置から、足の踏み方、足首の状態、突きの角度から上体のバランスといったあらゆることを意識して1日百本の正拳突きをするのはかなり大変です。
これだけの練習でも十分なのかもしれません。
船上でライトが光った。
合図だった。
再び、克巳とドイルは無言になる。
男の別れだ。余計な言葉はいらない。
無言のままドイルは背を見せタラップを登る。
「ドーイルッ」
タラップを登りきったドイルに克巳が声をかけて、なにかを投げた。
克巳の黒帯だった。
愚地克巳・三段。
貴重で重大なものだ。三段の黒帯を欲しがって、規格外の筋肉を持った黒人が無駄に大暴れした事件が過去にあったぐらいだ。
克巳は背を向けたまま手を振った。
顔を見せないのは涙を流しているからだろうか。
車に乗りこみ、去って行く。
「ア・リ・ガ・ト…………………」
なんか、切ない恋の別れと言う感じなんですけど…
感傷的な気持ちを引きずったままなのか、ドイルは暗い海面を静かに見ている。
そこに不気味な笑い声が聞こえてくる。
「フフ……」
「見ちゃおれん」
「まるで生娘同士のお別れだな」
先週、女子供のように号泣していた柳の登場だ。
柳龍光なにを企むッ!?
と、言う状態で次回へ続く。
で、何をしに来たんでしょうね。
女は経験しちゃっているから、男を経験してパワーアップしようと狙っているとか。
と言うのは当たり前過ぎるので、別の説を考えてみる。
バキの強さの源は守るべき存在=梢江を手に入れたことにある。つまり、梢江を失えばバキは弱くなる、かも。
そこで、ドイルの出番となる。
チャンピオン読者をヒョウ柄のパンチラで鼻血の海に沈めた女装の達人がバキに迫る。女装しているとは知らずバキはドイルに心を奪われてしまう。
梢江に愛想をつかされ、フラれたところで、実は男と正体をばらす。ハートブレイク状態のバキなら赤子の手をひねるように倒す事ができる、と柳は計算しているのかも。
ドイルが仲間に入ると、毒蛇・柳、片金犀・シコルスキー、海鷂魚・ドイルがそろった事になり、三体合体でパワー、スピード、技…すべてを兼ね備えた死刑囚ジェノサイダーにッ!?
なお、製品間の互換性と相性の関係で必殺技は常に不発します。
死刑囚5人のうち、柳・ドイル・シコルスキーの3人がバキにあしらわれたのも、負け組みトリオ結成の伏線だったとか?
2002年9月26日(44号)
第2部 第140話 制裁(520+4回)
良い話があった後は、悲惨な話になるのがバキの宿命のようです。
感動的に終わったドイル編の最終章に合わせるようにヤングチャンピオンの特別編が始まったのも偶然ではありません。たぶん。
「堕落だ」
柳が吐き捨てるように言った。
侮蔑の言葉を投げつけられたドイルは無言でサングラスを取る。臨戦体勢に入ったようだ。
暗い光りを宿した柳の目がドイルを睨む。
「敵に遅れをとり………」
「あまつさえ和解」
「恥を知れッッ」
自分の事は棚に上げて……、と簡単には言えません。
ドイルの敗北は、最後まで闘い抜いた後に敗北を受け入れ、開放という名の歓喜(よろこび)得たものでした。
それに対して柳は、理不尽な理屈で強くなった主人公に完全な敗北を押しつけられかけたのに、最後まで闘う事すら許されず最終的には放置プレイという行詰った屈辱を受けました。
まるで正反対の過程をたどり、やっぱり正反対の結果を得ています。
ドイルに対する、嫉妬、でしょうか。
俺が敗北する事も闘う事もできず屈辱に号泣したのに、貴様は敗北を受け入れ幸福を感じ、さらに絆まで得たと言うかッッ!
大人気ないですが、気持ちはわかります。ちょっと同情もしちゃいます。
家が金持ちで勉強しなくても成績が良くて練習しなくてもスポーツ万能で女の子にモテモテの友人(そんなヤツはいないだろうが)と一緒に宝くじを買ったら、自分は外れて友達だけが1等1億円を当てやがったような心境でしょうか。
「制裁だ」
何の権限で制裁を加えるのか知りませんが、とにかく柳はヤル気です。
怒り(逆恨み)の鉄拳をドイルにぶち込みたがっています。
先手必勝とばかりに、動いたのはドイルだった。
サングラスを握りつぶし、その破片を柳に投げつける。
跳躍した。猫科の獣を思わせるしなやかな肉体が跳ねた。
ドイルの長い手足が一直線に伸び、柳に襲いかかる。
ライトに照らされた2人の影が、長く伸びたまま交差した。
ドイルの手首から刃が飛び出す。
だが、その隠し刃は柳の頬をかすっただけだった。
顔面にサングラスの破片を投げつけられても、柳はまばたき1つしない。目を開いたままドイルを睨みつけている。
そのまま、柳はサツマイモ色をした拳を、ドイルの無事な方の目に叩きつけた。
互いに一撃ずつを繰り出し、すれ違う。
どちらの攻撃も浅く、致命とはならないはず、だった。
ドイルは闇の中にいた。
「視界ヲ奪ワレタッッ」
「アンナ軽イパンチデ ナゼ!!?」
毒手を喰らった人の正しい反応です。
バキにも見習って欲しいものです。
ダメなら、バキがなんで毒手を受けても平気なのか説明していただきたいものです。
毒の拳が触れた事によってドイルの視力は一瞬で奪われた。鎬昂昇の紐切りよりも速く有効な攻撃のようです。
しかし、軽い攻撃とはいえドイルが拳を目に受けたのは失敗です。
ドイルからの攻撃も外れていますし、片目のせいで距離感が狂ったままなのかも知れません。
いずれにせよ、完全に視界を無くしドイルは大ピンチである。
「ドッチダ!?」
「ドコニイル!?」
「!!」
「タバコ!?」
視界を奪われた状態で、タバコの臭いを頼りに敵を探し当てる。まるで「A.-D.O.G.S」のジャッカル vs シマ戦の再現です。
しかし、戦闘前に柳はタバコを吸っていなかったはず。
また、この状態で意味も無くタバコに火をつけると言うのもおかしい。
つまり、これは…、罠だった。
「近イッッ」
「4メートル イヤ3メートル………………!?」
タバコは手すりに置かれているものとも知らず、ドイルは全身に仕込まれた刃を開放して攻撃態勢を取る。
この程度の罠を見ぬけなくなっているとは、いきなり視界を奪われてかなり動揺しちゃったようです。
柳はタバコをオトリにして注意を逸らし、ドイルの背後に回りこんでいた。
そして、背後から柳がドイルに対して仕掛けた攻撃とは…
自分が受けた精神的苦痛を人にも味あわせたいと思っていたのだろう。
自分が金持ちになりたいと願うのでは無く、隣りにいる金持ちを貧乏にしてくれと願うような廃退した思考と言える。
非道な攻撃だった。
ドイルが敗北の末に手に入れた絆、それを象徴する証、愚地克巳の黒帯だ。
いつ奪い盗ったのか、柳は克巳の黒帯を取り出し、それでドイルの首を締めた。
「いかがかな…………? ミスタードイル」
「憧れの黒帯(ブラックベルト)を巻いた気分は……」
いやらしい台詞だ。
自分が大切にしている物が敵に利用されて、自分を苦しめる道具になっている。
本来であれば、ナイフで刺されても懐に入れてあった黒帯に刺さっていて助かった 的に働くべきアイテムです。それが、自分を苦しめる。
愛がある。哀しみもある。そして、陵辱があるッ!
例によって首を締められ舌を出すドイルであるが、この台詞を聞くと見えなくなった目を無念そうに閉じる。
友から貰った物を守れなかった。
自分への苦痛だけでは無い。友を奪われ汚されたようなものだ。
その友との絆を取り戻すようにドイルは拳を握る。
小指から、1本ずつ。克巳に習った正しい正拳の握り方だ。
「セイイッ」
そのセイケンを叩きこむ。
敵の姿も見えず、首を締められたままの状態でありながら、拳は柳の顔面を捕らえた。
ニィ…
柳が笑った。
口と鼻から出血しているがダメージは無いようだ。
むしろ、ドイルが抵抗する様子を楽しんでいるようにも見える。
ドンッ
柳の掌底がドイルのボディーを突いた。
ドイルの体が宙に浮き、手すりを越えて船の外にまで飛ぶ。
首に巻かれたままの黒帯がドイルの落下を許さなかった。
まるで絞首刑のように、克巳の黒帯がドイルを締め上げる。
ドイル友情の証にて死すかッ!?
次回へ続く。
こう言う展開だと、ドイルを応援したくなります。
友情の証で攻撃すると言うのは、ちょっと残忍すぎる攻撃です。
その反面、柳も先々週の男泣きの事を思うと、ちょっと頑張って欲しいとも思えます。
辛すぎる経験のせいで性格が歪んじゃったんでしょうね。
そうやって因果関係をたどってみると、全ての元凶はバキにあるような…
これがドイルでは無くドリアンだったら首を締められても死なないと言うオチが待っているので安心ですが、ドイルではそうは行きません。
ドイルは意外と虚弱体質っぽいところがあるような気がするので、助けが入らないとマジに死んじゃいそうです。
友情の証である黒帯が勝手に切れると言う劇的な脱出方法があるかも知れませんが、どなるのか予想もつきません。
ジャックかオリバがやって来ると展開はありがちなので、逆に可能性が低そうです。
実はこっそり見送りに来ていた烈が助けに入るとか。
いつの間にかドイルが加藤とスリ替わっていたとか。いや、スリ替わっても、良い事無さそうですが、彼は吊るされる事になれてそうなので。
考えうるイチバン最悪な状況は、「なんだアンタも伊達に死刑囚じゃないんだ」と言いながらバキが登場する。もちろん梢江を駅弁で抱えたままの姿で。シィィィットッッ!
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バックナンバー(仮) 今週の餓狼伝(最新版) 今週のグラップラー刃牙(アニメ版)(5月26日更新予定)