餓狼伝 (VOL.211〜VOL.220)

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2008年8月26日(18号)
餓狼伝 Vol.211

『ハッキリ言ってヤ○ザと機動隊』

 ハッキリ言いすぎ!
 さすがアナウンサー!
 おれたちにいえない事を平然といってのけるッ 丹波もシビれる! あこがれるゥ!
 丹波もなにか おもしろいことをいわないと出番がもらえないぞ。
 解説だって、まっているだけではチャンスが来ないんだ。

 秩序を乱すものと、秩序を守るもの。
 ベクトルの向きは逆だが、強者という意味では同しだ。
 『中国では昔から「よい鉄はクギにならぬ、よい人は兵にならぬ」と言う。』(中国の大盗賊・完全版
 昔の兵士は政府にやとってもらっているだけで、盗賊とかわらない。
 武士も、暴力の体現者という意味でヤクザににている。

 というワケで、中身はどちらも暴力の塊だ。
 黒強者であるヤクザは白いスーツに身をつつんでいる。
 白強者である機動隊隊員(以下は略して機動隊)は黒いプロテクターを装備していた。
 色と所属が反転しているのは、ちょっとした皮肉だな。

 先にヤクザが動いた。
 やはり、専守防衛よりも先手必勝なのか。
 いや、自衛隊と機動隊は別物ですが。
 ヤクザは自分の戦いが、表にだしていいモンじゃないと松尾象山にいう。
 まあ、たぶん法にふれるようなケンカなんだろうな。

「是非おやりなさい本物をッ」
「刃物もッ 不意打ちもッ」
「全てを"演武"として処理します」


 さすが松尾象山、太っ腹だ。
 ちょっと処理するには問題が大きすぎる気もするけど、松尾象山なら何とかしちゃう。
 そして、逆に松尾象山がなにをしても処理する気だ。
 たとえ無抵抗の人間を殴りたおしたとしても。

 ヤクザは、自分の状況を悟ったのだろう。
 表情が"ヤる"気になっている。
 予告なしにボスバトルに突入したような気分だ。
 大魔王からは逃げられない!

「もう……」
「まいったな……………」


 サングラスをはずしながら、ボヤく。
 視線は松尾象山から外れている。
 サングラスを砕いて、破片を投げつけたッ!
 相手の虚をついた目潰しだ。

 松尾象山は目を見開いたまま、破片を受ける。
 白目とはいえ眼球にも当たった。

 だが、松尾象山は動じない。
 目に刺激をうけると、角膜反射で目が閉じるはずだ。
 反射を意志の力で押さえこんだのか?
 不意打ちだったから、意識する時間もなかったハズなのに?
 常住坐臥 闘いを意識しているのだろうか?

 ヤクザは破片を投げつけてすぐ、次の行動にうつっていた。
 ふところからナイフを取り出し、突く。
 なんの迷いもない。
 目潰しをして、すぐに刺す。
 無意識に動いていそうなほど完成されたコンビネーションだ。

 だが、松尾象山の頭突きが先に炸裂した。
 ヤクザの鼻に頭がメリこみ、一発で勝負アリだ。
 ナイフ攻撃よりも速い頭突きだと!?

 なんで、殴らずに頭突きなんだ?
 刃物攻撃の途中なんだし、頭を前に出すのはキケンすぎる。
 理由はよくワカらんが、スゴいと言うことだけがワカった。
 ボクサーの打つ一流のジャブより、松尾象山の頭突きのほうが速いのかもしれない。

 あと、ヤクザは目潰しとナイフの2動作をしている。
 松尾象山は頭突きの1動作だけなので、おそい攻撃でも先に当たったのかも。
 動きが読めなかっただけで、早目に動き始めていた可能性もある。
 また、体のカゲになって見えていないけど、左手でナイフからガードしていたのかもしれない。

 なんにしても、松尾象山が拳もつかわずに勝利した。
 拳を叩きこまなかったのは、松尾象山なりの温情かもしれない。
 いちおう、頼んで試合場に上がってきてもらった友人なんだし。
 拳で撃っていたら、もっと酷いダメージだったはず。


「次はアンタだ」

 破片を喰らったため、白目から出血している。
 だが、松尾象山はなにもなかったかのように、次の対戦者にむかいあう。
 機動隊も暴力のプロだ。
 今の攻防をちゃんとみていた。
 ヤクザが一流の喧嘩師であり、松尾象山が怪物であると観察している。

 ちなみに、この間 丹波文七は「…ッッ」状態だ。
 なんか しゃべれ。解説しろ。驚愕だけなら観客にだってできるぞ。
 実況はアナウンサーがもっていった。解説は機動隊にとられる。
 丹波にはナニものこっていない。本日の丹波文七は、活躍できなかった。
 仲間になるのを断られたモンスターのようにさびしい姿だ。

 機動隊はヤクザの攻撃にミスはないという。
 奇襲、目潰し、ナイフという3コンボは並みの人間なら勝負アリだ。
 喧嘩なれしている丹波でも回避できるかどうかあやしい。
 では、なぜ失敗したのだろうか?

「松尾象山とて所詮は人間(ひと)
「―――という戦力分析の甘さに尽きる」


 松尾象山は人間ではなく、もっとおぞましい何かだ。
 ついに、松尾象山が非人間級の戦力であると認定されました。
 機動隊のお墨付きだから、国家認定と考えてイイのだろうか。
 範馬勇次郎も人外の筋肉を持つと中国4000年の保障つきだ。(バキ27巻 236話)
 松尾象山も、範馬勇次郎と同じステージに立とうとしている。

 相手が人間じゃないんだから、機動隊が戦闘を辞退してもいいはずだ。
 猛獣と戦う訓練は受けていません。
 だが、機動隊は松尾象山と戦うつもりがあるらしい。
 ライオンと戦うようなもんだが、本気でやるのか?

「完全武装」
「そして わたしも あなた同様 武道家でもある」
「敗北(まけ)る要素が見つけられません」


 右手にジュラルミンの盾、左手に警棒、頭にヘルメット、体には特殊プロテクターという装備だ。
 武器は弱いが、防具はドラクエでいうなら最後のカギを手に入れる直前ぐらいの守備力がありそうだ。
 魔王と戦うにはちょっと心細いですが。

 盾をかまえる機動隊の姿は、まるで重装備の剣闘士だ。
 盾をもった重装備の剣闘士は、たいてい網をもつ軽装の剣闘士と戦う。
 打撃と組み技のように、戦いのかけひきを楽しむ。(図説 決闘全書
 だが、今回の戦いは盾をもつ重装備と、ハンマーをもつ重装備の対決だ。
 盾と矛の壮絶な耐久テストがはじまるのかッ!?

 右手に盾をかまえるということは、防御を重視しているのだろう。
 重く頑丈そうな盾が壁のように立ちふさがる。
 素手でジュラルミンの盾を破壊することができるのか?
 敗北(まけ)る要素がなどと言うのはかえって死亡フラグじゃないのか?
 松尾象山のワガママ試合がはじまる。

「開始は……?」

「始まってるさとっくに」

 ! ドキャ


 機動隊が死亡フラグの上塗りをしたと思った瞬間、ジュラルミンの盾が松尾象山の足に打ちつけられたッ!
 盾のWikipedia記述にも書かれる技術『大型の盾は、下辺を相手の足の甲に叩きつける』だッ!
 人間の足の甲やツマサキは隠れた弱点である。
 足をねらう古武術の裏技もあるらしい。
 『秘拳伝キラ』にもでてきたし、映画『カンフーハッスル』(AA)でみせた震脚で相手の足を踏むのも裏技だそうだ。

 なんにしても、地味でセコイ技だけどダメージの大きい反則技をいきなりだしてきた。
 武道家などと言っていますが、道から外れ気味だ。
 でも、勝って生き残るのが大事なんだし、松尾象山相手にこれぐらいはやってもイイんだろうな。

 裸足にジュラルミンの盾を喰らい、予想外の大ピンチとなった松尾象山である。
 実は全然きいていないという反応もありうるが。
 なんせ、人間を超えちゃった存在なんだし。
 次回、松尾象山の反撃となるのか!?


 ヤクザと機動隊が思ったより強かった。
 これなら松尾象山が多少苦戦しても意外ではない。
 ヤクザは、ケンカだったら梶原よりも強そうだし。(微妙な評価)
 そして機動隊だ。コイツもけっこう強そうだ。油断したら、丹波だって危うい。

 そもそも、武器の使用を認めているから強いのだろう。
 原作の餓狼伝でも武器の使用は戦闘を優位にする。
 まあ、当たり前ですが。
 武器をもったら強いのはワカっているが、素手にこだわる。
 それが餓狼伝の美学だ。

 相手が武器をもっているからこそ、素手で戦う空手が光る。
 松尾象山はそこまで計算しているのかもしれない。
 目に眼鏡の破片が入ってもまったく動じない精神力は、さすがだ。
 まさに武神である。
 次回は、ジュラルミンの盾ごとくだく正拳突きを撃ったりするんだろうか?

 そして、飛んでいった機動隊が審判に当たって、一撃二殺の偉業達成。
by とら


2008年9月22日(20号)
餓狼伝 Vol.212

 盾は身を守るだけの防具にあらず。立派な打撃武器となる。
 黄金聖闘士(ゴールドセイント)・天秤座の武器にもシールドがついているし。……今、ちょっと信憑性が落ちたか?
 機動隊は、ジェラルミンの盾を松尾象山の足の甲に叩きつけたッ!
 金槌で足を打ちつけるような一撃である。
 普通なら苦痛でのたうちまわるだろう。

 今まで名解説をしていたアナウンサーもはじめて見る技らしい。
 まあ、空手の試合じゃ出てこないよな。
 そもそも、盾をもっている人なんて日本では希少種だよ。
 機動隊と戦うことを前提にした訓練をやるのは問題になりそうだし。

「残念だ」

 だが、打たれた松尾象山は無反応だった。
 なんか残念な攻撃を受けたらしい。
 とにかく、まったく効いていないようだ。
 ネズミに噛まれた象なみに効いていない。

 ドコッ

 そして、反撃ッ!
 実戦に不向きとされる騎馬立ちに変化して、正拳突きを放った。
 一発でジェラルミンの盾が変形する。
 盾に拳の跡がくっきりと刻まれていた。
 まるで城門をブチ壊す破城槌だ。

 盾は足に打ちつけられていた。
 かなり密着した位置にあったハズだ。
 直近の間合いからの一撃だったが、充分すぎる威力だった。
 寸勁の要素も入った攻撃なのだろう。

 松尾象山はナニが残念だったのか?
 前回の機動隊は、ヤクザに対し松尾象山の戦力を見誤っていると批判していた。
 だが、その機動隊も松尾象山の戦力を見誤っているという。
 そんな安く見られていたなんて残念だ。
 むしろ、自分の盾を見てみろ。

 

 盾のほうが凹んでいる。
 松尾象山の足はジェラルミンよりも硬いのかよ!
 しかも、縦につぶしている。盾だけに……
 いや、そんなコト言ってる場合じゃないって。
 松尾象山の足はリアル象なみの頑丈さかよ。

 背足(足の甲)は、廻し蹴りで使用する部位だ。
 だから打撃に耐えられるように鍛えているのかもしれない。
 拳道会の中村先生は『足の全ての部位を砂袋に叩きつけて鍛え』た。激闘達人烈伝
 松尾象山も全身あますところなく鍛えまくっているのだろう。

「松尾象山を人間(ひと)扱い」
「これは高くつく」
「俺を嘗めた」


 松尾象山が怒った!
 しかも、非・人間宣言までしちゃった。
 この人はヒト型の象なのか!?
 イカ娘(AA)ならぬ象オヤジだ。
 かたいッ、おもいッ、つよいッ! 鼻は短いッ!

 松尾象山のプレッシャーに耐え切れなくなったのか、機動隊が警棒を振りあげ襲いかかる。
 だが、警棒は松尾象山の手刀で真っ二つに斬られた。
 折れたのではない。斬れたのだ。
 これぞ、伝説の垂木切りッ!

 手に残ったのは、半分に斬れた警棒だった。
 具現化した伝説の残り香がある。
 盾も武器も破壊されたが、機動隊はめげない。
 たとえ実行困難な命令でも遂行するのが職業戦士だ。
 すぐさま気持ちを入れかえ、機動隊は横蹴りを放つ。

 松尾象山がよけた。やわらかい身のこなしだ。
 老いも巨体も感じさせない軽量級ボクサーのような動きをする。
 機動隊が必死に盾を振りまわす。
 だが、松尾象山はスウェー&ジャンプでぜんぶよけた。
 やはり、おそろしく身が軽い。象の重さに猿の身軽さだ。

「腹ッ」

 まだ空中にいるうちから、松尾象山が打撃予告をする。
 すかさず機動隊は盾を地面に落とし防御の構えだ。
 不動の態勢で防御戦闘するマケドニアの重装甲歩兵のごとく、鉄壁の防御態勢をとる。
 そして、松尾象山の――――――

 グド

 全力前蹴りが来ッたァ――――!!

 盾がへの字に曲がり、防御の意味なし。盾ごと蹴られた。
 機動隊は吹っ飛んで場外にズリ落ちる。
 文句なしの一撃必殺だ。
 勝負ありッ!

 突きは下半身の力も利用して打つ。
 『ボクシングって……大地を蹴る格闘技なんだ』の名言どおりだ。(バキ25巻 223話
 同様に蹴りは、蹴るほうの足だけではなく、軸足の力も利用している。(最強格闘技の科学
 そして、松尾象山の全力前蹴りは、両足が180度開くほど足を広げて踏みこんだ蹴りだ。
 ありえないほど、踏み込んでいる。
 これなら、腰に当たっただけでも充分すぎる威力だろう。

(途中放った横蹴り―――…
 あれがイチバンよかった……
 君の最大の誤りは完全武装……)
(自らの武器に縛られてしまったことか…………)


 相手の敗因をしっかり分析しつつ、松尾象山は試合後の礼をするのだった。
 命を与えてくれる食事に感謝するように、引き立ててくれた試割人にも感謝を忘れない。
 きっと、北辰会館の裏には犠牲者の供養塔が立っているのだろう。
 イチバン多い犠牲者はムエタイ選手だろうな。

 非武装こそが強いなんて、なんか花山と戦ったときのスペックみたいですね。
 「最も信頼に足る武器として使用したのは己の肉体でしたよ」(片平恒夫・談 byバキ5巻 39話
 なにかに依存することは弱さにつながるのだろうか?
 けっきょく、バキの死刑囚たちは武器に逃げた連中ばかりだったので、底が割れると弱かったというオチだし。

 ただ、松尾象山に唯一当たった攻撃は盾による奇襲だ。
 松尾象山もちょっと油断していたのかもしれない。
 横蹴りをほめているのは、照れ隠しだったりして。

 もっとも、武の神・松尾象山だけに、足への攻撃はあえて受けたのかもしれない。
 機動隊にとっては必勝かつ最大効果を期待できる奇襲だったハズだ。
 足への盾攻撃が不発になるのは、野球で言えば自軍の四番バッターが三球三振にされるようなモノだ。
 ベンチから応援団・観客まで、みんなガッカリですよ。
 精神へのダメージは脳を疲労させ、運動機能を大きく低下させるらしい。(〈勝負脳〉の鍛え方
 機動隊は、奇襲の不発でかなり精神的ダメージを受けたのかも。

 となると、その後の蹴りで機動隊は自分を取りもどしたのかもしれない。
 武器を失うことで開き直ったのだ。
 ならば出番を失った丹波も開き直って活躍する可能性がある。
 今回は1コマ驚愕するだけの活躍だった。
 だが、次回こそはッ!

 松尾象山の圧倒的強さを見せつけられながらも、餓狼・丹波文七は立ち上がるだろう。
 なにしろ、この作品の主人公なんだから。
 トーナメントもやっと終了し、次からは丹波のターンだッ!
 イブニング読者に丹波文七を見せつけろ。ちゃんと覚えてもらえ!


 トーナメント偏が終了した。
 次回に後日談があるかもしれないが、とりあえず全試合終了だ。
 ほとんどの人間が傷つき、優勝者の姫川も重傷である。
 藤巻は……、やはり逮捕されたのだろう。

 今後の予定に「北辰会館 vs. FAW」がある。
 漆黒の空手家・久我重明が参戦するといううわさもあり、実現の可能性は高い。
 丹波にもスカウトが来ている。
 こりゃもう開催するしかないっしょ。

北辰会館    FAW
松尾象山 vs.  グレート巽
姫川 勉 vs.  久我重明
新キャラ vs.  丹波文七
ゲスト vs.  長田 弘
堤 城平 vs.  鞍馬彦一

 こんな感じでお願いしたい。
 ただ、コレだと北辰会館の数が足りないんだよな。
 FAWは梶原の出るワクがないし。
 まあ、出ないほうが梶原にとって幸せかもしれないけど。
 丹波は気をかえて北辰会館から出場するのがいいかもしれない。

 北辰会館トーナメントの参加者は、かなり実力を出し尽くしちゃった感のある人ばかりだ。
 再登場は難しいかもしれない。
 神山さんには、ぜひとも当てる空手を見せて欲しいのだが……
 あと静かなる前回優勝者・立脇如水にも機会(ジーフィー)をッッッ!
 経歴だけなら、堤よりずっと上なんだよな、この人は……

 立脇如水 − 梶原年男
 もう、この試合なんて黄金の鉄板カードですよ。
 金メッキって意味ではなく。



 聖闘士聖衣神話 黄金聖闘士 ライブラ童虎
 黄金聖闘士 ライブラ童虎
 ちゃんとシールドも装備しています。
by とら


2008年10月14日(21号)
餓狼伝はお休みです

 次回は10/14って書いてたじゃん!
 証拠画像だそうか!?
 いや、めんどいから、イイや(弱っ)

 長かった北辰会館トーナメントが無事(?)に終了した。
 終わってみれば松尾象山の一人勝ちだったな。
 今後どうなるのだろうか。
 原作だと、新キャラ(外伝からのキャラもいる)が多数登場することになる。
 漫画版もおなじ展開をたどるのかもしれない。

 原作の餓狼伝は、現実世界と微妙にかかわりながら話が進んでいる。
 初期はプロレスラーの復権が裏テーマだったのだろう。
 当時はプロレスが八百長かどうかで言い争っていた。
 そこで、プロレスラーは毎日試合をしているから強いという夢枕獏理論が小説で展開された。
 漫画版だと、もうプロレスのショー性について語るまでも無い時代になっている。
 だから、プロレスラー梶原の賞味期限が異常に短いのだ。

 餓狼伝には、もう一つの裏テーマがある。
 古流柔術という日本古来の総合格闘技を描くことだ。
 竹宮流とか、そのうち出てくるかもしれない●流や○○流とか。
 古流の技はロマンだよね。

 最近ではかえって古流にたいするイメージが良くなっている。
 だから竹宮流は漫画版でのあつかいが良いのだろう。
 小説のころはサンボもけっこう人気あったんだよな……


 小説の餓狼伝では、ブラジリアン柔術が来日する。
 ……現代から見るといまさらだよな。
 いまさら、マウントポジションの優位性を説かれても、困るよ。
 漫画版の餓狼伝は原作を現代風にアレンジして再構築した話になっている。
 ならば、ブラジリアン柔術の来日は別のエピソードとなるだろう。

 ちなみに原作ではさらに一週まわって、やっぱプロレスって強い! という世界になっている。
 漫画版もプロレスラーの復権があるのだろうか。
 でも、梶原の活躍は無いんだろうな。
 うっかり大相撲の最強列伝を語りだすという可能性もある。
 相撲はけっこう優遇されているからな。

 なんにしても、今イチバン大切なことは主人公・丹波文七に活躍の機会を与えることですよ。
 イブニングから読みはじめた人は、丹波のことを大量の尿を出す人としか認識してないハズだ。
 もしくは、毎回表紙になっている謎の人。
 でなければ丹波という存在に気がついていない。
by とら


2008年10月28日(22号)
続・餓狼伝はお休みです

 今週も休みだ。
 またかよ!
 これでまるまる1ヶ月お休みになってしまった。
 いつまでも困ったときの松尾象山で場をつなげるわけにも行かないのだろうか?

 せっかく丹波文七に主人公らしい活躍の場が与えられそうなのに。
 天は丹波に活躍ではなく七難八苦を与えるのか。


 小説・餓狼伝は現代の宮本武蔵をイメージして書かれている。
 そのわりに表舞台で試合をすることが多いけど。
 現代社会で毎日ストリート・ファイトをするわけにもいかんのだろう。
 ちゃんと理由のある喧嘩をさせようと思うと、設定に苦労するのだ。

 また、現実世界でも ここ十数年間はリングの上で多くの異変が起きていた。
 打撃系の新ジャンルK-1や、格闘ファンの夢だったガチの総合格闘技が始まる。
 世はまさに異種格闘技時代だ。
 リングの上は、野試合をするよりもエキサイティングな状況ですよ。

 ひょっとしたら、丹波だって大晦日に戦っちゃうかも知れない。
 戦えば、丹波が紅白に視聴率で勝つのがお約束だ。
 リングで大の字になって倒れる丹波の姿がスポーツ新聞にのりまくる。
 まさに餓狼伝世界のアケボノとして知名度アップまちがいなし。
 いや、ダウンするとは限りませんけど。

 ちなみに小説における丹波の汚れた負けっぷりは伝説の域に達している。(10巻のあたり)
 漫画版でも、アレやるんだろうか?
 つうか、ココまで話がすすむのに何年かかるんだろう。


 イブニングに移籍してから、……いやアッパーズに移籍してから、丹波たちは試合ばかりしていた。
 そろそろ、揺りもどしで路上での戦いをやるかもしれない。
 路上での戦いは"武"を語るうえで外せないのだ。
 刃物にどう立ち向かうのか?
 人質を取られたらどうするのか?
 大勢の前で恥をかいたショックで、30過ぎにもかかわらず自分さがしの旅に出ちゃったオッサン(主人公)を、どう慰めるのか?

 最近は物騒な事件も多いので、丹波がそれらに関わるのも面白いかもしれない。
 刃物をもった相手に不意打ちされると、須藤元気でも負傷する。(参考
 変則ファイターである須藤は、トリッキーな動きをするため距離に気をつかう。だからディフェンスも上手いほうだ。
 でも、不意をつかれたら優秀な選手でもよけられない。

 武道は心技体を鍛えるものだという。
 だが、技体だけでは足りないようだ。
 武術家にとって一番大切なのは、普段の心がけなのかもしれない。
 まあ、いきなり背後から切りつけられるなんて普通は想像しないだろうけど。
 そういう意味では自分さがしの旅で心を鍛えるのも大切なんだろうか。
 あと、試合の前にはトイレに行っとこう!


 主人公の丹波に出番を与えるのも大切だ。
 だが、北辰会館トーナメントで育ったキャラクターに出番を与えるのも重要だと思う。
 個人的には人間凶器の片岡輝夫(空手・志誠館)と寸止め伝統派空手の神山徹に再登場してもらいたい。
 片岡は破壊力だけなら松尾象山やグレート巽に次ぐ実力を持っていそうだ。
 神山が本気で拳を当てたらどうなるのか、けっきょく見ることができなかった。

 この二人と丹波が戦ったら、どっちが勝つのか?
 丹波には打撃カウンター技の『虎王』があるから、片岡には勝てるだろう。
 神山さんには勝てる気がしない。
 でも、相打ちの乱打戦に持ちこめば勝機は充分だ。
 ちょっとカッコ悪い勝ちかたですけど。

 それと鞍馬彦一も使い切れていない感じがする。
 ヤツはもっと面白い負けっぷりを披露できる実力があるハズだ。
 久我さんにもう一度修行をつけてもらって再登場を期待する。
 髪を切って浅黒く日焼けして無精ヒゲをはやせば、梶原みたいなダークパワーっぽい感じもでる。
 金髪の光属性とガングロの闇属性が両方そなわり最強に見える。

 見かけが強そうになった鞍馬を踏み台にして、丹波 復ッ活ッッ!
 ついでに梶原もライバルのポジションに戻る。
 そんな展開でどうか?
by とら


2008年11月11日(23号)
餓狼伝 Vol.213

 ついにッ、やっとッッ、大会が終了だッッッ!
 大会がはじまったのが、読者時間の2002年12月17日(111話)だ。

 その間、5年と11ヶ月ッ!
 長かった。本当に長かった。
 小学生がほとんど卒業しちゃうよ。餓狼伝もアッパーズを卒業しちゃったもんな。

 戦った選手たちをたたえる表彰式が行われる。
 だが、判定決着がひとつもない大激戦だったので、表彰式に参加できたのは32名中15名だけだった。
 そもそも優勝した姫川が欠場している。
 なにしろ、舌を半分噛み切ったんだしな。(206話)

 ベスト4に残った鞍馬も姿を見せない。
 鞍馬は頑丈なので肉体は元気なんだろうが、反則負けしたから世間体が悪いのだろう
 プロレス代表は長田がつとめているので引っ込んでいるのかも。
 姫川がいないから、実質的なトップは長田だ。
 プロレスが勝ったという事実を印象づけるため、グレート巽が鞍馬を下げたのかもしれない。

『しかし その15名の生還者』
『一人として無傷な者はおりません』


 寸止めで敗北を知った志門剛俊とチャック・ルイスは無傷っぽいけどな。
 いや、心に深い傷を受けたのかもしれない。
 もっとも、姿を見せているから、立ち直れる程度のダメージなのだろう。

 姫川に敗れた神山さんの姿がない。
 リアルシャドー的な金的ダメージに打ちのめされたのだろう。
 松尾象山に空手を辞めるだろうと言われたほどの精神的ダメージだ。(20巻 180話
 空手から逃げるように、会場を出たのかもしれない。
 惜しい才能を失った……

 生き残った15人の勇者たちがならんでいる。
 ロングカットなので、誰がのこっているのかワカりにくい。
 ハッキリしているのは、姿に特徴のある者たちだ。
 準優勝の長田弘、ベスト4の畑幸吉は問題ない。

 背後にいる人たちを右から順番に書いていくと……
・ ソデのない道衣を着ているアレクセイ・コッホ
  不明1
・ 肩を外された八木正美
  不明2(黒い人)
・ 茶髪の仁科行男
・ 遠目に見てもわかる片岡輝夫
・ 特徴的な安原健次
・ ムエタイ戦士ラクチャート・ソーアジソン
・ ヒジを破壊された遠野春行(竹俊介もヒジを負傷したが、道衣がちがう)
・ 柔道着の井野康生
・ ドレッドヘアーのチャック・ルイス。
  不明3(ボウズ頭)
  不明4(ボウズ頭)

 不明1は特徴のない短髪の黒髪だ。
 顔面を負傷した選手が紹介されているので、チャック・ルイスのヘビー級ジャブを喰らった瀬津浩二と思われる。
 ゲームの餓狼伝(AA)だと最弱候補のチャック・ルイスですが、このころは強そうだった。(15巻 131話
 ヘビー級ボクサーも不憫な扱いをされているよな。

 不明2の人は肌が黒い。
 候補はブラジル支部のカルロス・バジーレと、烈海王に似ている志門剛俊だ。(15巻 129話
 ダメージのことを考えると、志門だろうか。良く見ると毛も無さそうだし。
 肉体的にはノーダメージなんだから、表彰式に出席しないともったいない。

 不明3はたぶん立脇如水だろう。
 身長も、ちょっと大きそうだし。
 設定上のサイズだともっと大きくてもイイのだが、敗北して縮んだのだろう(迫力的に)。
 優勝候補の筆頭なんだから、せめて表彰式ぐらいには出ていて欲しい。
 今後の活躍は、……無理なんだろうな。
 丹波や梶原だって、立脇にくらべたら未来が明るいぞ。

 不明4が、本当にわかりません。
 拳を負傷している可能性があるのだが、今大会で拳を負傷した人っていたっけ?
 坊主頭なので、君川京一・早川満・加納武志が候補だ。

 ただ、ベスト8にのこりヒグマ人間・工藤健介に敗れた君川はボウズでも黒髪が見えている。
 姫川による最初の犠牲者・早川満はやや黒い肌をしていた。
 加納武志は柔道王・井野康生に投げられて拳を痛めるヒマもない。
 それを言えば、早川も拳を姫川に当てることなく負けたか。
 みんな決め手に欠ける状態だ。というわけで、不明4は本当に謎のままです。

 登場しなかった加山明・川田治・工藤健介・会田勝・門田賢次・西脇実・ドルゴス・宮戸裕希・椎野(椎名)一重・畑中恒三たちも、立派な勇者だ。
 そして、優勝した姫川勉と、行方不明の神山さんと、サボり(推定)鞍馬彦一をあわせて32名ッ!
 彼らの祭は、ようやく終わる。
 丹波にとっては、長き冬の祭であった。

 なお、片岡輝夫と戦った相手は全員式に欠席している。片岡こそ今大会の撃墜王だ。
 鞍馬の敗因は、片岡戦での骨折だしな。
 戦った相手は全員 打撃で骨折している。
 まさに人間凶器だ。

 しかし、ムエタイ選手の回復力は驚異的です。
 ヒグマ人間・工藤の攻撃をくらったのに復活している。
 同じく工藤と戦った君川は欠席しているというのに。
 噛ませ犬として、打たれてきた歴史が違いすぎるのだろうか。
 ならば、サムワン海王の復活だってありえるぞ!


 一方、大会の裏側では、もうひとつのドラマに幕がおりようとしていた。
 逃亡犯・藤巻十三が逮捕されるのだ。
 気絶したところを、そのまま連行されるワケではなかったらしい。
 松尾象山の温情だろうか。
 って、ことは松尾象山が特別試合で暴れていたのは、藤巻復活をねらった時間かせぎだったのか?
 いや、ありゃ趣味だな。

 この状況でも自主的に逮捕されれば、すこしは免責になるのだろうか?
 藤巻の場合、最初の犯罪が過剰防衛による殺人だったワケで温情の余地がありまくる。
 最初の事件で素直に自首していれば、執行猶予はもちろん免罪だってありえた。
 素直になれない過去因縁と、素直になれないツンデレを持ちあわせていたのが藤巻の不幸だ。

 逃亡生活中で、公務執行妨害・障害(北辰会館闇討ち事件)・のぞき・ストーキング行為など罪を重ねている。
 どちらかというと、逃亡生活中の罪のほうが大きいんだろうな。
 このへんで罪をつぐなって、スッキリしたほうがいいだろう。

「おめェさんほどの逸材」
「犯罪者のままってのはさすがに具合が悪い」
「我々はいつまでも君を待つ」
「泉さんを」
「安心させてやりなさい」


 松尾象山があたたかな言葉をかける。
 藤巻は松尾象山を狙っていた。……いまでも狙っていそうだ。
 それでも松尾象山は待つという。
 別にケンカを仕掛けてくるのを待つわけじゃないんだろうけど、とにかく待つ。

 世間に藤巻十三を見せてやりたい。
 興行的な打算もあるかもしれないが、たぶん純粋な好意で言っているのだろう。
 せっかくの才能なんだし、光をあてて輝かせたいのだ。
 他流の人間にたいしても親身になれる松尾象山は度量も太い。いや、広い。

「お二方の御提案―――― 疑問の余地はございません
 しかし―――― もし仮に――――
 もし我が身に藤巻性なるのもがあるとしたなら――――」
「お二人の意に沿うこと すなわち――――――
 自身への裏切りとなるのです」


 藤巻、大爆発だッ!
 辻警部にのど輪をきめダウンさせると、三人の刑事を一気に倒す。
 ひとりの腕を取りつつ、四方投げをきめながら、のどを蹴る。
 投打極をぜんぶ決めてしまった。
 才能があふれすぎッ!

 そして、藤巻十三は夜の街へと疾走(はし)る。
 もう誰にも止められない。
 ヒジが折れていたはずなんだが、ありゃウソだ。
 いや、脱臼していたので、さっきハメたから治ったのだろう。
 松尾象山が特別試合で暴れたのは、治療のための時間稼ぎか?
 いや、ありゃ趣味だな。

 のこされた松尾象山も泉さんも、逃亡する藤巻になんか納得しつつ、大会は終わった。
 33人目の勇者は ふたたび闇の中に消える。
 ストーキングはほどほどにしとけよ。
 次回につづく。


 藤巻が逃亡生活にもどったッ!
 とりあえず、最初の事件の時効はむかえることができそうだ。
 でも、今回でまた新しい罪状が増えたので、やっぱり逃亡生活になるのだろう。
 世の流行にしたがってネットカフェ難民化しそうな勢いがある。
 とことん修羅の道を行く男だ。

 さて、今後の展開は「北辰会館 vs. FAW」の5対5マッチになるのだろうか?
 恐ろしいことに、藤巻も謎のマスクマンとなって参戦可能になってしまった。
 現在、話の焦点は藤巻十三にあたっている。
 せっかく丹波が主人公として活躍できそうなんだけど、阻止されたかもしれない。

 これから逃亡者・藤巻十三編がはじまっても違和感ないしなぁ。
 今回の丹波は、勇者たちの姿を満足気に見て去っていった。
 藤巻のインパクトで忘れてしまいそうな存在だ。
 ならば、追跡者・丹波文七となって、藤巻を追えばいいのかもしれない。
 藤巻以上に、丹波の存在感がピンチだ。

 藤巻を藤巻たらしめている個性のみなもとが藤巻性なのだろうか。
 その性、素直な言動よりも、ツンデレを好む。
 その性、男女の情事をチェックしたら、女ではなく 男の前に姿をあらわす。
 その性、変装したら、目立つべし。
 その性、保身よりも、立合いを望む!

 丹波も個性の核として丹波性を確立すれば、もっと目立てるかもしれない。
 でも、あまり難しい課題を与えると悩んで自分探しの旅に出ちゃうのが丹波なんだよな。
 ……つまり、丹波性とは旅なんだろうか?
 まあ、餓狼伝は現代風「宮本武蔵」なんだから、丹波性はバガボンド(放浪者)で良いのかもしれない。
 掲載紙に関しては、みごとに放浪しておりますが。
by とら


2008年11月25日(24号)
餓狼伝 決勝戦まとめ

 ついに北辰会館トーナメントも終了した。
 餓狼伝の休載を利用して、決勝戦以降の展開をまとめてみる。(以前のまとめ:一回戦二回戦三回戦準決勝

 のこるは決勝戦だけッ!
 と、思っているとエラい目にあうのが餓狼伝の世界であった。
 常住坐臥 戦う覚悟ができてこその武術家だ。
 ゆっくりイスに座って見学をすることもできない。
 ……丹波も危なかったのかも。


松尾 象山(空手・北辰会館総帥) VS. チェ・ホマン(格闘家)
 193話  松尾象山が喧嘩の相手にチェ・ホマンを指名した。
 194話 チェ・ホマンは松尾象山の挑発にのり、手を出してしまう。    
 195話 松尾象山がチェ・ホマンを本気でブチのめす。

 観客席に座っているだけで、呼びだされて公開試し割りをされてしまう。
 これが北辰会館トーナメントの醍醐味だ。
 武術関係者は変装して見にいかないと、救急車で帰るコトになるというウワサが広まるにちがいない。
 幕間の戦いは、前フリのほうが長いという秒殺劇であった。
 今回の松尾象山は、ちょっとヒドいよな……


長田 弘(プロレスリング183cm・123kg) VS. 姫川 勉(北辰会館 186cm・87kg)
 196話  長田は巽からムチャな激励をうける。まさに背水の陣ッ!
 197話 ついに決勝戦だ。主審も決意をかため、いよいよ試合がはじまる。
 198話 長田は顔面以外ノーガード戦法だ。だが、姫川が心とガードの隙間から撃ってきた。
 199話 意識の飛んだ長田は、プロレス入門を決めた夜を回想する。
 200話 長田は一撃では倒れないッ! 逆転の虎王が決まる。だが……
 201話 姫川は肩を外されながらも、逆転の蹴りをはなつ。長田の敗北に、たまらず藤巻が飛び出した。  

 決勝戦のワリにあっさりと終わってしまう。
 長田は準々決勝あたりで燃えつきてしまったのだろうか。
 準決勝のVS.鞍馬戦でもあまりピリっとしなかったし。
 それでも、姫川の左腕を破壊できたのが最大の功績だ。

 一方、姫川は回想シーンを消費することもなく勝利する。
 まだまだ余力をのこしている状態だ。
 だからこそ、藤巻が飛びだしたのだろう。
 弱っている姫川を倒しても自慢にならない。

 ところで、藤巻が隠れていたカーテンって、汗で濡れていそうだ。
 飛び出さなくても、すでに見つかっていたのかも。


藤巻 十三(竹宮流) VS. 姫川 勉(北辰会館 186cm・87kg)
 202話  逃亡者・藤巻十三は時効を目前にしながら、姫川と戦うため表舞台に出てきた。
 203話 左肩を負傷している姫川にあわせるため、藤巻は自らの左ヒジを破壊する。
 204話 二人は互いに負傷箇所を狙った攻撃をする。放送できない戦いが始まったのだ。    
 205話 藤巻が仕掛けた。竹宮流の秘投必殺 地被(じかぶり) 見参。
 206話 姫川は舌を歯に挟み、半ば切断することで失神を防いだ。まさに放送不能ッ!
 207話 限界を超えた藤巻と姫川は互いに認めあい、自分らしさを捨てて、殴りあう。
 208話 殴り合いのなか、姫川はかつて東郷を倒した技を回想する。
 209話 藤巻が最後に放った極上の一打を、姫川がカウンターで返し勝利する。

 裏の決勝戦、いや真の決勝戦がはじまる。
 藤巻と姫川の因縁はとても深い。
 なにしろ女がらみですから。
 もっとも藤巻の横恋慕だから三角関係ではない。

 竹宮流の必殺技や姫川の気絶防止など、互いに秘術と執念をみせる。
 そして、二人の間には友情に似た感情まで生まれているっぽい。
 センチメンタルな藤巻は乙女座だろうか?
 仮面をかぶってミスター竹宮とか名乗って試合に参加してみるのも 一興。

 藤巻と姫川の勝負は、最終的に姫川の才能がまさったのだろうか。
 姫川が見せた回想シーンの重要性がイマイチ感じないのですが、とにかく姫川の勝利だ。
 藤巻は逃亡生活が長かったから、地味なところで肉体がすさんでいたハズ。
 小さい部分の積み重ねが勝敗をわけたのだろう。


松尾 象山 VS. ヤクザ + 機動隊
 210話  松尾象山のスペシャルマッチ! 相手はヤクザと機動隊ッ!
 211話 ヤクザは不意打ちをする。だが、松尾象山には通用せず、あっさり倒された。    
 212話 機動隊は盾や警棒 そして肉体を駆使して戦うが、まるで歯が立たない。。
 213話 生還者15名で大会は終了する。そして、藤巻はふたたび逃亡するのだった。

 戦わずにはいられない松尾象山であった。
 そこまでして戦いたいのか。
 もう、戦う必要性が無いのに、戦わずにはいられない。
 松尾象山こそ、餓狼中の餓狼だ。
 誰よりも戦いに餓えている。

 試合ばかりやっていたので、ルール無き戦いは久しぶりだ。
 身近なものを武器に変えたり、武器そのものを持ちだす。
 地面や壁、イスなども武器に変える。
 武器をめぐる駆け引きも餓狼伝の魅力だ。
 そして、どんな戦いであっても松尾象山は強さを発揮するのだった。


今後の展開について
 原作では新キャラが多数登場し、新展開となる。
 新キャラと同時に、ブラジリアン柔術と総合格闘技もやってくるのだが……
 総合格闘技はすでに出ちゃってるんだよな。
 まあ、新キャラは出てくるハズだ。……たぶん。

 とりあえず、当面の課題は主人公・丹波文七の復権である。
 イブニング読者に、だれが主人公なのか教えるところから始めないといけない。
 今では連載を通じて丹波が活躍していない期間のほうが長くなっているのだ。改善せねば。
 というわけで、次回からは丹波文七がメインになる話を期待しよう。
by とら


2008年12月9日(01号)
餓狼伝 Vol.214

 主人公不在で行われていた北辰会館トーナメントも終了した。
 つまり、今日からが主人公のターンだ。
 春がくる。丹波文七が大活躍するぞ。……たぶん。

 トーナメント準優勝の長田弘は街をあるく。
 優勝できなかったとグレート巽にお仕置きされなかったようだ。
 巽はムチャな人だから、ムチャな罰をムチャに与えて、ヤムチャみたいな状態にされる。
 梶原なんて、もう現役絶望ですよ。
 負け犬のニオイは、一度ついたらなかなか落ちない。

 まあ、長田は負けかたがあまり悪くなかったので、たぶん大丈夫だろう。
 金玉だって ふたつ残っているし。
 つまり、梶原と花田は……

「仮に…」
「今 俺が」
「オマエさんを殺そうとしたら」
「ラクショーだったぜ長田さん」


 長田の背後に丹波文七がいたッ!
 なんか急にチンピラっぽいコトを言っている。
 無精ヒゲも増量し、ヒョウ柄のシャツを小粋に着こなす。
 いったい丹波の身にナニがあったのか?

 プロレスラーである長田は、キャップとサングラスで目立たないようにしていた。
 でも、イチバン目立つのは鍛えられた身体そのものだろう
 ちょっと努力の方向性をまちがえている気がする。
 実際、丹波はあっさり長田を発見しているし。
 やっぱり長田はプロレス馬鹿だなぁ……
 いつまでも純粋なバカでいてもらいたい。

 丹波は計画的に長田をつけたのだろうか?
 それとも街で見かけただけかも。
 いずれにしろ、油断していた長田にたいしラクショー宣言をする。
 ちょっとセコい……

 長田がスキだらけなのは ふたたび逃亡生活になった藤巻を思っていたのかもしれない。
 トーナメントでの激闘も思いかえすコトが多いだろう。
 かるい燃え尽き症候群状態だった可能性もある。
 長田が弱る最適な時期を、丹波は狙ったのか?


 丹波は人目につかない夜の駐車場に長田をつれこむ。
 武術家二人なら夜の公園で勝負でしょうが、空手家くずれとプロレスラーなら、どうなる。
 丹波はヤる気らしい。
 だが、長田は理由がないのでケンカする気はないようだ。

「男同志どっちが強ェか知りたい」
「理由がいるのかい」


 丹波はどっちが強いんだ比べをやりたいらしい。
 主人公らしい積極的な態度である。
 でも、なんかインネンのつけかたがチンピラっぽいんだよな。

 そういえば、丹波は堤にインネンつけて「理由がない」と言われたコトもあった。(餓狼伝4巻 21話)
 あの時の丹波は自分のことを「まるでノラ犬」と感じていた。今はどうなんだろうか。
 とりあえず、丹波の精神テンションはッ、話の中心で活躍していたころに戻っている!
 輝いていた あの時にッ!
 ヤッてやるさ………………ッッ (何を!?)

 ノリノリの丹波にたいして、長田は困っている。
 むしろ、ビビっていると丹波が指摘した。
 路上に落ちている石も武器に使用するような丹波が相手だ。
 ルールもなく、地面はアスファルトである。
 もし、戦ったら死ぬかもしれない。

 丹波は巧みな話術と路上の石を利用したパフォーマンスで長田を追いつめる。
 精神テンションは4巻どころか、BOYだったころのタンバくんにまで戻っているようだ。(餓狼伝BOY2巻 11話
 いや、それはチョットもどりすぎ!
 喧嘩をハッタリでのりきるコトは卒業したハズじゃなかったのか?

「―――ッてバカ……」
「本気にする奴がいるか………………」


 丹波の挑発で、長田は思わず構えてしまった。
 長田の両手を丹波はにぎる。
 緊張状態から一変して、事態を解決する優しさに転じた。
 これは計算されたツンデレだ。
 藤巻という偉大なツンデレをよく知る長田は、おもわず緊張をとく。

 そこへ丹波の蹴りッ!
 ヒザ蹴りか!?
 虎王クラスの突風が長田を襲い、汗が天にむかい流れた。
 金的ッ!
 だが、寸止め。

「甘ェよ……」
「スポーツマン」


 長田のガードを封じたうえで股間に急襲をかけた。
 でも、つぶさない。
 計算された丹波のパフォーマンスだろうか。
 やはり、BOYだったころの丹波文七に似ている。

 丹波は敗北感だけを長田にあたえて去っていくのだった。
 長田は失禁しなかったのがせめてもの救いだろうか。
 試合ではなく路上でなら、丹波のほうが圧倒的に上だと見せつける。
 長田をイケニエとし、丹波文七が過激に復活したッ!
 次回につづく。

 ……次号はまたお休みだ。またかよッ!?
 今年の餓狼伝はこれにて終了です。
 最後に活躍して年を越すあたり、丹波も駆け引きがうまくなったな。


 丹波が活躍したのはうれしいのだが、こういうカタチになるとは……
 本当にコレでいいのだろうか?
 実は長田を精神的に鍛えるために、丹波がわざと喧嘩をうったのかもしれない。
 グレート巽の指示で……
 いや、さすがにソレはないか。

 丹波はFAWから仲間にならないかという誘いをうけていた。
 長田にしかけたということは、丹波はFAWから距離をおく考えかもしれない。
 FAWと組んだら巽に利用されるだけという気がしちゃうもんな。
 鶏口なるも牛後となるなかれですか。
 巽のところは、どっちかというと虎口だけどな。

 だからといって、松尾象山の陣営に入るのも危ない。
 松尾象山はけっきょく自分が喧嘩したい人だから、巻きこまれる恐れがある。
 でも、それぐらいのリスクをとらないと姫川クラスの活躍はできないのだろう。
 ……つねに松尾象山のそばにいる姫川って、あらためて考えるとスゴいな。

 とりあえず丹波は長田に勝ったので、北辰会館トーナメント準優勝相当の実力があるとアピールできた。
 これで北辰会館とFAWの争いにおける丹波の存在感が増す。
 松尾象山・グレート巽・姫川勉につぐ実力者になった。
 未来を見すえた丹波の作戦勝ちだ。

 試合に向けて体調をピークにもっていくのがスポーツマンだ。
 いっぽう、武術家は常に戦えるよう体調に山谷を作らないようにする。
 とつぜん戦うことになったら、武術家のほうが有利だろう。
 リングのうえで戦うなら、ピークをもってくるスポーツマンが有利だ。

『まず初めに試合用の練習をできる身体にして、そこから、試合用の練習が始まる。
 試合用の練習をする時間はそれほど長くない。きちんと集中してできる時間は限られているからだ。』(平直行の格闘技のおもちゃ箱
 練習するための練習が必要なほど、スポーツマンのピークは高いのだ。

 丹波はスポーツマン長田を自分のテリトリーに引きこみ勝利した。
 単純に勝つという意味では、丹波の見事な戦術だったといえる。
 まあ、ちょっとずるいけど。
 巽みたいな恐い社長をもっているわりに長田は精神的に弱かった。
 試合後でピークがどん底だったのだろう。

 長田は緊張から弛緩という丹波のツンデレ作戦にダマされた。
 野性の荒波でもまれた本物のツンデレを知りながら、丹波の作られた養殖のツンデレに敗北したのだ。
 それとも藤巻がいなくなったコトによる喪失感が、それほど大きかったのだろうか。
 しかし、出番に餓えた主人公がここまで恐ろしいことをするとは……
 2009年の丹波文七と範馬刃牙からは眼が離せない。良くも悪くも。
by とら


2008年12月22日(02号)
餓狼伝はお休みです

 今年最後のイブニングを欠席するッ!
 さすが、丹波文七だ。
 来年から本気を出すのだろう。

 掲示板で庭さんに教えていただいた情報ですが、VOL.214で丹波の名前が『丹羽』となっていました。
 主人公の名前を間違えるって、それはヒドい。
 いくらイブニングに移籍してから、ろくに出番もないしセリフも無かったとはいえ……
 範馬刃牙を範間刃牙と誤植するようなものですよ。
 ググると範間刃牙もけっこう見つかりますが。

 ちなみ、丹羽文七で検索してみる。
 46件しかありません。世間もあまり間違えていないようだ。(2008/12/23現在)
 ちなみにトップは……
 双葉社ッ!
 小説『餓狼伝』の販売元じゃないですか?
 弾幕うすいよ、なにやってんの!
 2008年を衝撃的な形でしめた、丹波文七であった。


 丹波は長田をへこまして強者アピールをした。
 来年は飛躍の年になるのだろうか。
 なんかFAWに恨まれて刺客を送りこまれてきそうな気もする。
 まあ、そういう展開はバトルマンガの主人公として本望だろう。
 観客席で驚愕しているだけの主人公なんて……

 刺客がやってくるなら、敵側だったハズの梶原が裏切って頼れる味方になる展開もアツいかもしれない。
 この戦いに勝ったら、新しくプロレス団体を立ち上げるんだと死亡フラグを立てて、丹波をかばい倒れたり。
 相手は未知の武術を使うようだから、まず俺が戦って様子をみる。と言って、一撃で倒されたり。
 丹波についていけば、活躍する姿がどんどん浮かんでくるぞ。
 そんな梶原なら長田にだって勝てる!

 ふたたび逃亡した藤巻の動向も気になる。
 殺人容疑については時効になるのだろう。
 でも公務執行妨害を繰りかえしているから、警察から逃げる生活に変わりはない。
 やはり今後は覆面をかぶって参加しそうだ。

「その技! 竹宮流だな!」
「私は藤巻十三ではないッ!」
(自分からバレバレの否定しちゃったァ!?)

 そんな、うっかりな展開があるかもしれない。
 なんにしても、2009年も餓狼伝は波乱に満ちていそうだ。
 ただ、なるべくなら休載は少なくして欲しい。
 あと、主人公への誤字も……
更新(2008/12/23)
by とら


2009年1月13日(03号)
餓狼伝 Vol.215

 コンクリートのつまった缶を貫手で突く。
 狂気の修行だ。
 貫手ってヤツは、人体のやわらかい部分を狙うものです。
 愚地独歩だって、束ねた竹に貫手をかます修行が痛かったといっている。(バキ3巻 25話)
 金属を打つのは止めようや。硬いし、痛い。

 こういう異常なことをするのは志誠館・片岡輝夫だ。
 人間の頭蓋骨に穴をあけるつもりだろうか。
 あきらかに過剰武装だ。

 片岡は、まだ包帯をまいている右手でも缶を打つ。
 鞍馬との戦いで、開放性の骨折をした指だ。(19巻 170話
 今度は鞍馬の頭蓋骨をくだくつもりの修行だろうか。
 矛と盾がぶつかって、矛が折れる展開は空手家として悔しい。

 折れた指をさらにぶつける修行は回復に悪そうだ。
 いつまでたっても治らないぞ。
 そう考えていた時期が俺にもありました。

 人体が骨折を回復するとき、まず軟骨が形成される。(自分の骨のこと知ってますか
 骨のなかには血管があるが、軟骨には血管がない。
 だから、軟骨は関節液で栄養補充している。
 関節を動かすさいの衝撃を利用して軟骨内に関節液を出し入れしているのだ。(骨と関節の不思議

 つまり、関節を完全に固定するより、適度な衝撃を与えるほうが治りがはやい。理屈のうえでは。
 平直行はヒザをひねって医者に全治三カ月といわれた。
 だが、アンディ・フグに「ファイターは普通の人ではない。できる範囲でいいから練習するんだ。今、ここでやれ」みたいなことを言われる。
 平直行はサボることも許されず毎日練習して、三週間で完治した。医者も呆然だ。(格闘技のおもちゃ箱
 適度な衝撃は軟骨の成長を促進し、治療効果があるのかもしれない。
 もっとも、格闘家限定の荒療治かもしれないけど。


 片岡の貫手2000本という鍛錬が終了した。
 一回につき3秒だとすると100分間の鍛錬だ。
 けっして短い時間ではない。
 宙吊りになっている缶を打つのだから、狙うのも難しいだろう。
 すごい集中力と、すごい持続力が必要だ。

 佐野は、その修行を座ってみていた。
 どうも片岡に個人稽古を受けているようだ。片岡のことを先生と呼んでいる。
 片岡は右手を負傷しているので、鍛錬のペースが狂って時間が遅れたのかもしれない。

「早朝稽古から始まり―― 午前と午後の個人稽古 夜には連合稽古」
「その後に続く拳足 脛 指の部位鍛錬」
「先生はなぜ そこまで自分に厳しく……」


 佐野は片岡の猛稽古を見て、ショックを受けたようだ。
 常識をはるかに超えている。
 おそらく予備知識も無しに、バキSAGAを見せられたようなショックだろう。
 そりゃ「自分にはムリ…ッす」と言いたくもなる。

 片岡は空手師範として給料をもらっているようだ。
 朝から晩まで働く人がいるように、自分も仕事をしている。
 武術だけをやって生きていくのは現代日本ではけっこうむずかしい。
 だから別に職を持ちながら掛け持ちで武術をやる人も多いのだ。

 空手だけをやって生活できる片岡はめぐまれた環境にいる。
 めぐまれている自分を自覚しているのだろう。
 だから、己に厳しい鍛錬を課す。

 と、思っていたら別の理由があるらしい。
 片岡は"怖い"のだ。
 もし仮に路上の実戦で倒されたら……
 20年も武に打ちこんできた自分は、なんだったんだろう。
 きっと、敗北に耐えられず自我が崩壊する。
 それが、片岡の恐怖だ。

 門田戦の前にも、片岡は同じような不安を言っていた。(餓狼伝16巻 143話
 負ける不安を思うと、鍛えずにはいられないのだ。
 だが、それだけではない。
 空手が好きで楽しいからつづいているのだ。

 自分の不安を口にだせるのは器がでかい。
 しかも、軽い不安ではなく、けっこう深刻な悩みだし。
 実戦を想定して修行するものにとって、未知なる実戦は不安だろう。
 このへんは自分のボクシングが通用しない恐怖を味わった板垣先生の体験が反映されていそうだ。(格闘士烈伝

 空手好きな点についての説明を佐野にしないのは、テレがあるのだろうか。
 たしかに、ちょっとカッコつけすぎかもしれない。
 怖いという話をしておいて、でも楽しいから継続できると話をつづけるつもりだったのかも。
 片岡の話にはつづきがあったのかもしれないが、ある男の登場により中断となった。


 獣臭をまとった男が土足のまま道場へあがった。
 無礼なこの男こそ、実戦空手の雄・丹波文七である。
 片岡も空手界に身をおくものだ。
 1ページほどの時間をかけて丹波の名前を思いだす。
 すぐに思い出せてもらえないのは、まだ知名度が低いのだろう。

 丹波は喧嘩を売りにきたのだ。
 前回は、やや燃えつき気味の長田を襲った。
 そして今日は右手の負傷がいえぬ片岡をねらう。
 なんか……、ズルい。

 パッと出の新キャラが古参キャラ倒し名をあげることはよくある。
 だが、丹波は主人公だ。むしろ挑戦を受ける立場じゃなかろうか。
 もうちょっと王道で戦って欲しい。
 闇討ちをしていたころの藤巻だって、相手が酔っているときは喧嘩を止めようとした。
 丹波は負傷者を襲う気か?
 まあ、片岡はさっきまで右手を使っていたし、じゅうぶん戦える状態かもしれない。

 誰よりも厳しい鍛錬をしている片岡の実戦を見てみたいだろう?
 丹波は佐野をたきつける。
 教え子の前で無様な姿はさらせない。
 そんな計算もあるのだろう。片岡を心理的に追いこんでいく。

 丹波はじりじりと片岡に近づく。
 蹴りの間合いをあっさり越え、拳の間合いも越える。
 互いのつま先が触れるような近距離だッ!
 空手家にとっては近すぎる距離かもしれない。

「片岡…」
「本番だッッ」


 丹波の殺気がほとばしる。
 片岡の右手が動いたッ!
 ついに本番がはじまってしまったのか!?
 次回へつづく。


 丹波は主人公だが、新規読者にとって新キャラとたいしてかわらん。
 そういう意味では新キャラを活躍させる状況とおんなじだ。
 新キャラと同じ立場で、改めて自分をアピールしているところなのだろうか。
 鞍馬が登場したときに梶原を噛んだように。
 噛むぜ〜、超噛むぜ〜。今の丹波は、まさに危険な餓狼だ。

 丹波はどこまで噛むつもりだろうか?
 大会準決勝にのこった畑幸吉は候補のひとりだ。
 体格に恵まれていないが畑は危険な精神性をもつ男である。
 餓狼モードの丹波も苦戦する可能性が高い。
 完全復帰の相手としては申し分がないと思う。

 あとは、丹波vs.鞍馬も見てみたい。
 鞍馬は余力をのこして負けた。
 久我重明と戦ったときのように、完全燃焼してほしい。
 丹波と戦えば、名勝負になりそうなんだけど。

 とりあえず目前の片岡戦が気になる。
 あの間合いだと腕が伸びきらないので、パンチはむずかしい。
 ならばヒジか?
 丹波は考えがあって近い間合いにしたのだろう。
 ワナが待ちかまえていそうだ。
 なにも考えていない可能性もあるけど。

 丹波は組み技もできる。打撃のための間合いをなくし、投げる気か?
 いまの丹波は相手の長所をつぶし、自分の領域に引きずりこむ戦いをしそうだ。
 最終的にマウントポジションを取って、なんでもありの恐ろしさを教えるのだろうか。
 だが、片岡は握力も死ぬほど鍛えているだろうから、丹波の生爪を素手でむしりとることもできるだろう。
 組み技にばかり頼るのはキケンだ。

 あと、そんな勝ちかたばかりだと、イメージが悪くなる。
 心の動揺につけこんで戦ってばかりだ。
 因果応報で、いずれ自分が心の動揺を攻められるぞ。
 喧嘩に勝って、人生で負けないように気をつけろ!
by とら


2009年2月10日(05号)
餓狼伝 Vol.216

 今年の丹波文七は一味も二味もちがう。
 蟹座で言えばデスマスクマニゴルドぐらいの差がある。
 手負いの獣がキケンなように、追いつめられた主人公もキケンなのだ。
 相手の片岡も手負いだから、キケン度では互角なのか?

 丹波が狙うのは空手・志誠館の片岡輝夫だ。
 空手の実力では、おそらく片岡のほうが上だろう。
 そこを何とかできるのか?
 丹波の経験とセンスが問われるところだ。

 近い間合いから、丹波と片岡の拳が激突する。そして光が爆裂だ。
 片岡の弟子・佐野は、師匠の拳が生みだす破壊劇を想像し たまらん笑顔をみせた。
 ちょっとお気楽すぎる弟子ですね。
 だが、閃光がしずまったあと、佐野は驚愕の光景を目撃する。

 片岡の右腕は丹波の左手につかまれていた。
 本気の打撃をつかみとる。
 恐るべき動体視力と運動能力だ。
 つかむということは、カウンターで殴りかえすこともできたハズ。

 連打を基本とするボクシングは、次の攻撃・防御のため素早く拳を引く。
 だが、空手は拳を引く動作を重視しない。
 基本稽古だと打った後も腕は伸ばしたままだ。
 拳を引く動作をすると、腕が伸びきる前に減速をする必要が発生する。(吉福康郎「最強格闘技の科学」)
 経験則でそのことを知った空手は、威力重視のスタイルを選んだのだろう。

 試合をするようになった空手は、連打や防御も重視するようになり、ボクシングのパンチ技術を学ぶようになった。
 純粋な空手家である片岡はボクシング技術を学んでいないだろう。
 とうぜん丹波も、片岡のスタイルは研究しているハズだ。
 拳をもどす遅さを狙われたのか?

 柔術家ならつかまれた状況から反撃するのも朝飯前だ。
 しかし、空手家には厳しい。
 片岡は不覚にも汗を流してしまう。

「片岡さん」
「アンタらしくもない……」
「仮にも俺たちは武道家同志」
「まずは握手からだろう……」


 動揺している片岡の右手をにぎった。
 片岡は鞍馬戦で右手の指を開放性骨折している。(19巻 170話
 握力100kg超を自称する丹波が負傷している部分を握っているのだ。
 この恐怖感・危機感はそうとう大きかろう。
 片岡の意識は手に移っただろう。

 その瞬間、丹波は頭突きをする。
 片岡のコメカミにかするような鋭い攻撃だ。
 この一撃で流血した。片岡は思わず身を丸める。
 相手から視線を外すのはマズい。

 だが、攻撃はなかった。
 丹波の足――靴をはいたまま――が、遠い位置にある。
 頭突きの間合いから引いたのか?
 片岡は、丹波の足だけを見て、突進する。

 視線を上げ丹波の全身を見た片岡は、動きを止めた。
 丹波がトンファーを手にしている。
 片岡がのたうっている間に入手したらしい。
 そこで数秒でも良いから丹波の動きを阻止するのが弟子である佐野の役割だと思うのだが……
 まだまだ未熟か。

 丹波はトンファーの柄を折る。
 木片はギザギザの断面をもつ投擲武器となった。
 それを片岡に投げつけたのだ。
 トンファーは足の甲に刺さって流血となる。
 痛みの耐性には定評のある片岡だったが、武器による痛みで動揺した。
 完全に丹波に飲まれている。

 丹波はトンファーの残りを天井の蛍光灯へ投げつけた。
 大量のガラスが片岡に降りそそぐ。
 片岡は、またも丹波から視線をはずしスキをみせてしまう。
 動揺しまくる片岡へ、丹波は上段回し蹴りを打ちこむ。
 防御のかまえができていなかった片岡は、この一撃でダウンする。

『手に何も持たぬから――――空手』
『そう教えられてきたハズの両雄だった…』
『しかし―――』
『歩んだ日常があまりにも違っていた』
『その違いが―――』
『一方を空手家へ』
『もう一方を空手愛好家へと道を分けた』


 実戦空手の雄・丹波文七が激勝するッ!
 ちょっと、セコいけど。
 まっとうな戦いをした場合、丹波が勝てた保証はない。
 むしろ、負ける確率のほうが高そうだ。
 逆転したのは、実戦を潜り抜けてきた経験の差だろう。

 セコいし、ズルい気もするけど、丹波は勝った。
 勝ってみれば、なんとなくカッコよさそうに見えるのが餓狼の法則だろうか。
 丹波は順調に主役としてのリハビリをこなしている。
 すでに立派な獣臭をまとっていそうだ。

 放浪の丹波はさらなるエモノを求めるのか?
 それとも、リングに戻るのか?
 丹波の年ははじまったばかりだ。
 次回につづく。


 とりあえず丹波が快進撃をつづけている。
 こんな勝ち方ばかりしていたら、試合では勝てない体になりそうで不安だけど。
 戦うのが上手い……ではなく、不意打ちが上手い人になるのは後で困りそうな気がする。

 丹波のコメカミには傷跡がある。
 偶然かもしれないが、今回の片岡と似た傷だ。
 もしかすると、丹波は自分が昔やられたことを人にやっているのかもしれない。
 ルール無用の餓狼の世界へ。丹波は有望な選手をスカウトしているのかも。

 小説の餓狼伝だと、丹波は梶原に反則攻撃を仕掛けて餓狼の世界に来いと誘いをかけている。
 梶原も応じて、餓狼の世界へ行こうと覚悟をきめていた。
 漫画版にも同じような意図があるのかもしれない。
 もう、梶原は活躍できない体になったので、新キャラ狙いで。

 次回、丹波が狙う相手は誰だろうか?
 それもと、今度は丹波が狙われるのか?
 これだけ活躍する丹波文七というのもかえってアヤシイ。
 ハデに落とすための前フリじゃないよね?
by とら


2009年3月10日(07号)
餓狼伝 Vol.217

 主役の復権を目指す丹波文七は、北辰会館トーナメントの成績優秀者たちをズルく倒す。
 それで、イイんだろうか。
 王道じゃないよな。
 もう、丹波は試合じゃ勝てない身体になってしまったのだろうか。
 丹波文七のゆく荒野は、前向きなのか後ろ向きなのか!?

 今回の舞台はプロレスFAWの道場だ。
 さまざまなトレーニング器具がおいてある。
 打撃用のサンドバックや、組み技用の柔道衣もあった。
 総合的な技術を学ぶのがFAW流なのだ。
 プロレス団体だけど、ガチの試合もやります。

 現在、道場にいるのは鞍馬彦一ただひとりだ。
 ひとりでトレーニングをしている。って、ことは自主トレですね。
 鞍馬だって、ときには練習するのだ。
 技術ではなく、体力を鍛えるのが鞍馬らしい。

『カードをめくり―――』
『出た数字の分だけ 腕立て伏せ(プッシュアップ)を行う』
『この道場伝統のトレーニング法である』
『全てを終了するまでに』
『合計364回こなすことになる』


 トランプ52枚をめくっていき、腕立て伏せを行う。
 寺門ジモンによれば、「飽きずにあっという間に回数をこなせる」そうだ。(参考
 トレーニングは時間もかかるし、単調なので飽きやすい。
 好きな音楽を流して聞きながらやるのも一つの方法だが、こうやって回数に変化をつけるのも面白そうだ。
 うつり気な鞍馬にはぴったりの練習かもしれない。

 ひとり静かに筋トレをする鞍馬に声をかける男がいた。
 丹波文七である。
 問答無用でいきなり肥をかけたりしないだけマシなんだが、また不意打ちのニオイがただよう。

 意外にも鞍馬が地道なトレーニングをしているのを見て、丹波は誉めてみる。
 試合中でも携帯の電源を切らないような困り者である鞍馬だが、練習はマジメだ。
 師匠であるグレート巽の教えがいいのだろう。
 巽に逆らうと金玉蹴り潰されることもあるから、教わるほうだって必死だ。

「なつかしいな……」
「何年振りだ」
「けっこう変わったな……」


 FAWの道場へ丹波は来たことがあり、人生を大きく変える転機となった。
 丹波が最後にやってきたのは、クマのきぐるみを着て乱入する数日前だ。餓狼伝1巻 4話)
 このとき丹波はFAWの若手選手・風間をあっさり倒している。
 かつて敗北したプロレスに成長した姿を見せつけたのだ。

 ……あれって、何年も前の話だろうか?
 連載時は1996年なので、読者時間としては13年かもしれないが作中時間は1年ぐらいだろう。
 作中でも時間がたっているかもしれませんが。

 とうぜんFAWでは丹波の情報が広まっている。
 そのうえ、丹波はFAWのリングで堤城平と死闘したこともあるのだ。
 FAWのトップであるグレート巽は、丹波を自陣に引きこもうとしている。

「有名だぜ道場(ここ)では」
「あの―――― カジワラくんに」
「悲鳴をあげたタンバくん


 丹波が梶原に関節技をきめられ悲鳴を上げたのは、風間と戦う3年前だった。
 プロレスラー梶原年男と戦うことで、打たれ強い強靭な肉体と関節技の重要さを知る。
 手痛い敗北だった。忘れえぬ屈辱を受けた。
 強くなるためには関節技と、筋肉が必要だ。そう悟る。
 まさに丹波文七にとってターニングポイントとなる戦いだ。
 ちなみに刃牙世界なら筋肉だけで、じゅうぶんやっていけます。

 丹波はこの敗北から復活し、飛躍した。
 だが、梶原はどんどん落ち目になっていく。
 まさにヤムチャ現象だ。

 現状の梶原がへっぽこイメージなので、梶原に負けて悲鳴をあげたんだって?と聞くのは最大の屈辱になる。
 温厚じゃない丹波も、これにはムカついただろう。
 だが、もともとケンカを売りにきた丹波だけに、これはイイきっかけだ。

 だが、先手をうって鞍馬がドロップキックで奇襲する。
 丹波は紙一重でよけた。
 コメカミにかすっている。
 危ないところだった。

 今までの丹波は、つねに先手をうってきた。それで、長田と片岡に勝利した。(214話215話
 相手にとって望まない展開に持ちこむことで動揺させ、主導権をにぎる。
 だが、今回は鞍馬に主導権をにぎられてしまった。

「プロレスは喰うための仕事……」
「俺の本質は街のゴロツキだ」
「喧嘩の気配には敏感なんだよ」


 鞍馬は13歳のときにグレート巽にスカウトされた。(餓狼伝14巻 122話
 当時から、街のゴロツキなんだろうか?
 どうも強がっているように見える。
 昔の俺は不良だった伝説みたいな感じで。
 まあ、BOYだったころのタンバくんも昔は強がっていたしな。

 強がるトリックスター同士の対決だ。
 そして、現役ペテン師ファイター同士の対決でもある。
 この二人、さりげなく噛みあっているぞ。
 より汚い手段を使ったほうが勝つのだろうか。
 そしてより激しく梶原を踏み台にしたほうが勝つのか!?

「北辰館の大会でヘマをした……」
「――で罰として頭ァ丸められた…………と」


 頭からタオルを取った鞍馬は、ボウズだった。
 どうもグレート巽に切られたらしい。
 確かに鞍馬はヘマを何度かやらかした。

 鞍馬の身体能力はズバ抜けている。
 だが、強いせいで油断しているのか、鞍馬は敵の攻撃を喰らいやすい。
 キックボクシングの安原健次と戦ったときは、二段蹴りを喰らって危ないところだった。(餓狼伝17巻 147話
 片岡輝夫と戦ったときは、その攻撃力を知りながら、あえて打たれて見せた。
 結果は骨折だ。(餓狼伝19巻 168話
 こういうダメージがつみかさなって、鞍馬はリタイアする。

 鞍馬のアホな脳みそが原因で敗北している。
 これは仕置きの対象だ。
 髪を切られたぐらいですんで、良かったと思っておこう。

 ちなみに鞍馬は安原戦のあとから、頭にバンダナを巻いたままになる。(餓狼伝18巻 164話
 この時点で巽から軽い仕置きとして、頭頂部を刈られたりしたんだろうか?
 エロガッパとあだ名されるよりは、ボウズを選んで現在の状態になったのかもしれない。

「口数が多いな」
「喧嘩の最中だぜ」


 丹波が鞍馬の髪をネタにするので、ちょっと腹が立ったようだ。
 そこは触れんといてくれ。
 だが、これは丹波の作戦なのだ。
 鞍馬にペースを握られそうだから、間をとって仕切りなおしたい。
 さらに相手にとってイヤな話題をふれば、嫌がらせにもなって一石二鳥だ。

 鞍馬の髪型をいじることで丹波は主導権を取りもどした。
 ここからの丹波は上から目線だ!
 なんかエラそう。
 超得意げ。

「初心に帰って腕立て伏せ…………と」
「ナルホドね…………」
「ついでに喧嘩も初心に帰ってもらおうか」
「街頭ルールと武の違い」
「体で教えてあげよう」


 ヤロウ、「体で教えてあげよう」を使いやがった。
 その辺の三下が言うと、死亡フラグになるキケンなセリフだが丹波は使いこなせるのか?
 お前は路上の喧嘩が得意かもしれないが、俺のは"武"だ!
 丹波は戦うまえから勝った気でいるのかもしれない。

 次回、鞍馬ヒコイチをどう料理するのか?
 鞍馬なら、思いっきり噛んでも文句をいう人が少ない。
 目標を鞍馬にした時点で勝ったも同然だ。
 次回、街頭ルールと武のちがいがあきらかになる!

 最初から鞍馬を狙っていればよかったのに。
 丹波くんの選択がよくわかりませんよ。
 弱っていそうな人から狙って自信を高めていったのだろうか?

 鞍馬に勝ったら、つぎに姫川とたたかう予定かもしれない。
 あんまり調子に乗りすぎないほうが、いいと思うぞ。
 つうか、鞍馬相手にコケそうな不安もある。
 主人公の復権は まだまだ遠い。
by とら


2009年3月24日(08号)
餓狼伝 Vol.218

 カラテ餓狼道・丹波文七と、無頼派プロレスラー・鞍馬彦一が戦う。
 得意の喧嘩ルールで、北辰会館トーナメント上位者を倒しまくっている丹波文七が、調子コキまくる。
 今回の『もやしもん』(AA)が「イブニング誌上、最も活躍しない主人公」対決に勝利宣言しているが、むしろ良し。
 その対決に勝っちゃダメだ。

 鞍馬彦一は中学生のときに偉大なプロレスラー・グレート巽にスカウトされる。(餓狼伝14巻 122話
 それ以後、携帯電話だけが心のなぐさめとなる生活をしていたようだが……
 路上のケンカ術もあるらしい。
 舞台度胸をつけるためとしょうして、巽にケンカ現場に放りこまれたのだろうか。

 純粋培養でルールに縛られたプロレスラーを喧嘩ファイトで倒すつもりだったのだろう。
 現に、鞍馬の先輩である長田弘を、丹波はアッサリかたづけた。(214話
 長田弘はトーナメントで鞍馬に勝っている。(21巻 187話
 だが、鞍馬も喧嘩術に長けているらしい。
 丹波文七、痛恨の計算ちがいか!?

「街頭ルールと武の違い」
「五体に刻んでやろう」


 なんかスゴい自信だ!
 自分の学んだ"武"は古代よりつづく闘争術であり、殺し合いを前提にしている。
 それにくらべると路上の喧嘩など、子供の遊びにすぎない。
 武の優位性にたよった論法だ。

 たしかにプロレスと武では歴史がちがう。
 これだけで勝った気がする。
 料理も武術も中国四千年というだけで優位に立てるのだ。

 棒立ちしているようで、丹波はゆっくり近づく。
 鞍馬は持っていたタオルを丹波に投げつけた。
 すぐに動かなかったのは、タオルの間合いまで引きつけたのか?
 百戦錬磨の丹波はタオル程度で動揺しない。
 顔に当たっても、目を閉じず不動のままだ。

 だが、丹波にわずかなスキが生まれたハズ。
 鞍馬はそれを逃さず横に走り、バーベルを手にとる。
 片手用の物だがけっこう重そうだ。10〜20kgはあるだろうか。
 ちなみに、↓で10kgらしい。

YAMAZEN Circulate クロムダンベルセット 10kg SD-10

 まず最初に武器を確保する。
 鞍馬が磨いた路上の喧嘩術は本格派だ。
 やはり、丹波も苦戦しそう。
 内心では、鈍器の登場にあせっているかもしれない。
 刃牙世界じゃないんだから、鈍器で殴られたら死ぬよ!

 鞍馬は武器を手に入れて余裕たっぷりだ。
 殴るも良し、投げるも良し。イイ武器を入手した。
 だが、鞍馬は驚愕することになる。
 丹波は抜き身の刃物を取りだしていた。

 ヤクザの定番アイテムといえる匕首だ。
 いま警察に調べられたら、まちがいなく銃刀法違反で逮捕される。
 バーベルとは設計思想からことなっている道具だ。
 人を殺傷するために作られた、武器。

 さすがの鞍馬もナイフ戦の経験はないらしい。
 丹波は刃物をだし、鞍馬は冷や汗をだす。
 ベーベルをもつ手が下がっているぞ。

 小説・餓狼伝(AA)では川辺さんが「レスラーだから刺されても死なないもん!」みたいなムチャをしていた。
 海外巡業恐るべし。
 日本は平和でよかった。
 海外巡業で荒っぽい空気にもまれた経験が、鞍馬にはないのだろう。
 誰だって未知の物は怖い。
 鞍馬は、ああ見えてけっこう大事に育てられていたようだ。

 丹波は匕首を投げた。
 鞍馬の足元ちかくの床にささる。
 はずした?
 いや、わざと捨てたようだ。

「使用(つか)えよ…………」

 丹波が挑発する。
 刃物を使って攻撃すると、傷害や殺人の意思があったとみなされてしまう。
 その点、バーベルなら練習中の事故と言い張ることもできる
 逃げずに刃物を使ってみろ。それが丹波の挑発だった。

 こういう誘いにのってはいけない。
 敵の挑発には意味がある。
 挑発にのるということは、敵の策に落ちてしまう。
 孫子いわく「故に将に五危有り」「忿速は侮られ」(将軍には五つの危険がある。短気は侮辱され策に落ちる)だ。(参考孫子

 こらえ性がなく怒りっぽい鞍馬は挑発にのってしまう。
 武器としてなら、バーベルだって強力だ。
 刃物を使う必要なんてない。

 武は生きのこるための技術だ。
 相手をただ倒すだけはまだ未熟で、今後も敵を作らないような勝ちかたが望ましい。
 刃物を使うのは武ではなく、路上の喧嘩術だろうか。
 シグルイ68景のように、抵抗すらできない状況だってある。

『ひと度 刃物を手にしてしまったら――――』
『もはやそれを使用するしかない』
『他の選択肢は閉ざされ――』
人を刺す――――
 初体験の動きへと追い込まれる』


 バキで純・ゲバルが相手に拳銃をわたし、選択肢をうばった行動ににている。(範馬刃牙3巻 21話
 相手の行動を限定することで、対策をとりやすくするのだ。
 剛速球のピッチャーでも球種とコースがわかれば打てる。

 まして、鞍馬は刃物のシロウトだ。
 はじめてするペッポコな攻撃などこわくない。
 鞍馬は匕首をすててドロップキックをしたほうが、まだマシだった。

 丹波の左正拳突きがカウンターで入った。
 タフな鞍馬だったが、この一発でダウンする。
 刃物をつかう精神的動揺が、鞍馬の集中力をうばったのだろうか?
 丹波文七、鮮やかな勝利だ。
 やっぱり、ちょっとセコイけど。
 次回へつづく。


 今回は、刃物にたいする経験値の差で勝った。
 丹波は16歳のとき、腕を刺されている。
 さらに目の前で斎藤センパイを刺殺された。(餓狼伝11巻 85話)
 修羅場を経験しているから、刃物にたいする度胸がちがう。
 丹波は自分の優位点をうまく引きだして勝った。

 どうも、いまの丹波は"武"にこだわっているらしい。
 片岡輝夫と戦ったときも、武道家として武器にどう対応するかの勝負に持ちこんだ。(216話
 ケンカ屋というより、現代の武術家・武道家を目指している。

 そうなると、今後の展開でリングの上での試合をすることになったら……
 辞退するんだろうな、たぶん。
 武は人前で見せるものじゃないし。

 今後の丹波は路上での武術対決しかできない体になっているかもしれない。
 しかし、餓狼伝は定期的に試合をする展開がまっている。
 そうなると、また「イブニング誌上、最も活躍しない主人公」になってしまう。
 なんちゃって主人公。エア主人公。名ばかり主人公。
 偽装主人公と呼ばれる前に、体質改善したほうが良さそうだ。

 ……表紙をかざるグラビア主人公としては活躍できるからいいか。
 また表紙に騙された。by 夜神月
by とら


2009年4月14日(09号)
餓狼伝 Vol.219

 鞍馬彦一は丹波文七に一撃で倒された。
 ざまーミソづけ〜〜〜!!
 というワケで巽社長に呼びだされて反省会です。

 ちなみに今回は主人公の丹波文七が出てきません。
 前回、手段をえらばず鞍馬を倒したのだが、同時に大切なナニかを失ったのかもしれない。
 丹波はどえらいものを落としていきました。
 自分の出番です。


 鞍馬はホテルの3000号室に呼びだされた。
 このホテルは梶原が金玉をひとつ失った「GRAND HOTEL BAYSIDE」だろうか?(餓狼伝5巻 28話)
 FAWの社長であるグレート巽だけに利用するホテルもグレートだ。
 きっと袋がやぶれて睾丸が飛びだしても最高のサービスで病院に連れて行ってくれるにちがいない。

 日本のプロレスラーたちには「おしおきホテル」ってアダ名がついていそうだ。
 グレート巽からホテルに呼びだされたら用心せい。
 なにをしてもムダだけど。
 へんに抵抗すると、もっとヒドい目にあいそうだ。

 鞍馬は丹波に敗北した状況を巽に説明する。
 丹波に刃物をわたされた。
 鞍馬がそこまで言った時点で、巽にはオチが見えたらしい。
 さすが餓狼伝世界・二大巨頭のひとりだ。
 経験した修羅場の数がまるでちがう。殺人経験だってあるぐらいだし。

「勝てるハズもなかろう…」
「向かう相手は街の喧嘩屋ではない」
「生粋の武術家 丹波文七だ」


 巽が丹波を高評価する。
 なんか昔から巽は丹波を評価していた。
 グレートはグレートを知るということなんだろうか。
 期待されてますよ、丹波さん。

 巽は若いころ、空手会の巨人・松尾象山の強さを目撃している。
 だから空手家を高く評価しているのかも。
 丹波はただの空手家ではなく、プロレスラーに敗北することでレスラーに敬意をもてる男になった。
 レスラーから空手に興味をもった巽とは逆のパターンだ。

 巽は鞍馬に「武術とはなんだ」と質問する。
 だが、鞍馬は答えることができない。
 そりゃ中学生のころからプロレス一筋に鍛えてきた男だ。
 武術について考えたこともなかろう。

「戦争に勝つため編み出されたもの」
「それが武術だ」


 格闘技の起源はイロイロある。
 たとえば、相撲は神事の意味合いがつよい。
 弓道などの飛び道具は戦争の道具といえる。
 武器を使っても長剣は護身だし、短剣は暗殺だ。

 武術は勝つための技だ。
 そういう意味では戦争の道具という巽の解釈がおおむね正しい。
 長田と片岡はスポーツ気分で、鞍馬もせいぜい喧嘩のつもりだった。だが、丹波は覚悟がちがう。
 スポーツテニスの高校生と 超人テニスの中学生ぐらいの差がでてしまった。(参考:1234
 超人テニスは死人がでてもおかしくない武術なんだぜ。
 チャンピオンのサッカーも死人が出たけどな。(チャンピオン30周年の思い出

 鞍馬が肉体的に優れていようと、丹波のようなAクラスの武術家に通用しない。
 巽は言いきる。
 でも、リングにあげてスポーツやらせたら丹波なんて楽勝だろう。
 自分の得意分野で闘うのが武の心得ですぞ。

「とてつもない武術に一つだけ勝てるものがある」
「そう」
「プロレスだ」


 これには鞍馬もビックリ!
 スポーツどころか、ショーとすらいえるプロレスが武術に勝てるのか?
 だが、巽は自信タップリだ。
 投打極となんでもアリだし、反則・八百長・裏取り引きすらやってしまう。
 プロレスこそ、真の"何でも有り"だ。
 う〜む、その考えはなかったわ。

 鞍馬は納得したのだろうか?
 だが、鞍馬に考えるスキを与えず、巽は先に動いていた。
 奇襲的な発言で相手が動揺しているスキに、容赦なく畳みかける。
 まさにプロレスだ。

 百円ライターがふたつある。プロレスラーならどう使う?
 投げつける? 握りこんで武器にする?
 そもそも、なんで二個なの?
 いきなりの質問で鞍馬は答えることができない。

 巽の正解はコレだッ!?
 ライターをひとつ握りつぶし、ガスを吸いこむ。
 残ったライターで着火して、ガスをふきつけ火炎放射だッ!
 高アルコールの酒で火炎放射ならありうるが、ライターガスで放射しやがった。
 一瞬で鞍馬が火ダルマだ。

「あとは――――」
「焼きあがるのを待つだけ……」

 ヒデェ! 最高だッ!
 最強のプロレスラー巽真(本名)がひさびさに本性を見せた。
 本当は北辰会館トーナメントで鞍馬に優勝してもらう予定だったのに、ブザマに負けやがる。
 巽は鞍馬へ仕置きをする機会をずっと狙っていたのではなかろうか?

「どんな手を使ってでも最後に勝つのがプロレスラーだ」餓狼伝5巻 25話)

 昔から おなじ主張をしている。
 グレート巽はぶれない男だ。
 鞍馬の焼き加減やいかに。
 そして、丹波文七の出番はどこへゆくのか?
 次回へつづく。


 なんか正しい鞍馬のいじりかたを講義(レクチャー)するような話だった。
 まだまだ鞍馬からはネタがしぼりとれる。そんな感じだ。
 戦う活躍よりも、やられる活躍のほうが光る人なのかもしれない。
 やられ役の代名詞・梶原年男の後継者は鞍馬彦一なのか?

 次回予告を見ると、プロレスラー3人が丹波への刺客となるらしい。
 ならば、主役中心の話にもどりそうだ。
 でも、原作の展開からは離れるよね。
 三人という人数が重要なのかもしれないが……

 ここしばらく、実力者を奇襲気味に倒してきた丹波である。
 だが、今度は自分が狙われる番だ。
 攻めるだけではなく、自分を守りきるのも武術の目的です。
 次回は丹波文七の護身術が見れるかもしれない。
 たとえば、芸術的に美しい土下座で相手の油断をさそうとか。
 もう、卑怯なコトをするとしか考えられない。
by とら


2009年4月28日(10号)
餓狼伝 Vol.220

 放送不能はもちろんのこと お客さんにも見せられない、プロレス外道道がはじまる。
 まずは門下生・鞍馬彦一の丸焼きだ。
 社長・巽真は時に敵よりも恐ろしい。
 だいたい、一年のうち300日ぐらいは注意しておいたほうがいいだろう。

 100円ライターを使用したミニ火炎放射器で鞍馬は焼かれた。
 さいわい重傷ではないようだ。
 ただ、マユゲがぜんぶ焼けてしまい、ツルンとした顔になっている。
 鞍馬彦一、一皮ムケました。
 帽子をかぶっていたのは不幸中のさいわいだ。
 髪が燃えて毛根まで死滅したら、もう色物レスラーになるしかない。

「焼きあがるのはいいのだが…………」
「この…」
「匂いがなァ…………」


 過去に何度か燃やしたことのある、経験者の発言だ。
 さすがグレート巽である。
 容赦ない攻撃は得意で、好物です。
 なんか、失敗した部下に仕置きをするため、死なないけどスゴく痛い技を開発していそうだ。
 目標は49種類! 達成したら、100種類を目指す。

 巽は鞍馬に「フンドシ担ぎ」から やり直せという。
 つまり、最下層からリスタートだ。(参考:Yahoo!辞書 - ふんどし‐かつぎ【褌担ぎ】
 梶原にジュース買ってこいといわれるようなポジションへ転落した。
 まあ、実力は鞍馬のほうがずっと上なので、すぐに梶原のほうがジュース買いに行くようになるだろうけど。

 巽は、まるで鞍馬が居ないかのように電話をする。
 もはや、鞍馬という存在は気にかけるまでもないというコトなのだろうか。
 さすがにチョットかわいそう。
 鞍馬はどうしていいのかワカらず、立ちつくす。

「何をしている」
「とっとと失せろッッ」


 巽が一喝した。
 鞍馬はすごすごと部屋を出ていく。
 まともな言葉もだすことなく、みじめな姿だった。
 とりあえず、早く病院へ行こうや。

 巽は鞍馬に八つ当たりしているようにも見える。
 期待の新人である鞍馬が丹波に負けたのが悔しいのだろうか?
 ならば、鞍馬への冷たい仕打ちも愛情の裏返しだ。
 とんでもないツンデレだよ。


 鞍馬を帰らせた巽は川辺に三名のレスラーを呼ぶよう伝える。
「麻田 亮」「犬飼 五郎」「須黒 康介」
 やってきた三名は、シワが深くきざまれたベテランの風格だ。
 なにか、タダモノではない危険なニオイがする。
 鞍馬が焼かれた部屋だからというワケではなく。

 巽は、三人にまず札束をわたす。
 一人あたり100万円だろうか。
 みんなはすぐに受け取らないのだが、札束を引っ込められそうになるとつかみとる。

 巽がわたす金はキケンだ。それを知っている。
 知っててなお、金に手がでてしまう。
 貧乏なのか、キケンに勝つ自信があるのか。
 コイツらこそ、本当の意味で餓狼なのかもしれない。

 金に餓えているヤツらは怖いぞ。
 恥も外聞もなくなっているから、どんな汚い手も平気で使う。
 闇討ちばかりやっていた藤巻のほうが、まだキレイな闘いかたをするだろう。

「ロートルレスラー」
「客も呼べねェ」
「センスもねェ」
「未来(あした)もねェ」
「そんなお荷物3人を」
「何故(なぜ)呼んだのか」


 つまり、決して強くない三名をなんでわざわざ呼んだのだろうということだ。
 丹波への刺客にするのなら、イキのいい若手を選べばいい。
 まあ、鞍馬のように丹波のペースにのせられて負ける可能性はある。
 でも物量作戦でいくのなら、おっさんより若手のほうがイイのではないだろうか。
 数人がかりで体力勝負に持ちこませれば、丹波も泣くだろう。

 なぜ、選ばれたのか。
 三人は無言をつらぬく。
 ここは巽のターンだから、気持ちよく喋らせるという配慮が働いているのかもしれない。
 やはり、老獪さをかっているのだろうか?

「3人共が生粋のプロレスラー」

 プロレスラーこそが最強と言いつづけて、あとに引けなくなった男たちらしい。
 イマイチ理由がわからん。
 プロレスラーにしか通じない会話なのだろうか。
 なんか、ケーフェイっぽい会話だ。

 三人を選んだ理由につづいて、目的を話す。
「丹波文七を囲め」「3人で」
 これまた、ハッキリと言わない。
 警察に尋問されても切り抜けられる指示の出しかたなんだろうか。
 巽は、とことん悪をつらぬくつもりらしい。

 三人は自分たちが戦力的に劣っていると聞かされて、なお余裕を消さない。
 肉体の強さは勝負を決める要素にすぎないと思っているような、不敵な笑いだ。
 やはり、コイツらヤバい種類の人間っぽい。

「フフ目的を聞いて誰一人 金を返す者がいねェ」
「見込んだ通りのドグサレ振りだ」


 巽もまた不敵な笑いを浮かべるのだった。
 外道がドグサレに危険な指令を出す。
 丹波文七の身に危険がせまる。
 因果応報というか、報いが返ってきてしまうのか?
 次回、丹波にピンチと出番がやってくる!


 ブキミなプロレスラーが三人も出てきた。
 プロレス最強を言いつづけるために、どんな汚いことでもする連中なのだろうか?
 世間的に背水の陣になっている。
 孫子いわく、『之(こ)れを行く所毋(な)きに投ずれば、死すとも且(は)た北(に)げず。』だ。(孫子
 敵地深くに侵入して逃げ場をなくすと、生きて帰るため兵士は逃げることなく死に物狂いで闘う。
 弱兵は追いつめて死力を尽くさせるのが吉らしい。

 この三人も追いつめられていて、非常に危険な状態なのかも。
 巽は鞍馬にも、これくらいの危機感を持って欲しいと思っているのかもしれない。
 最近の丹波が変に強かったのは、出番が無くて追いつめられていたタメだろうか?
by とら


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