餓狼伝 (VOL.221〜VOL.230)

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2009年5月12日(11号)
餓狼伝 Vol.221

 バトル系マンガの主人公は、ほぼ全員 学生かニートだ。
 そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
 仙人じゃないのでカスミを食って生きていくわけにも行きません。
 刃牙なら食事もリアルシャドーでなんとかなるかも知れませんが、普通の生物はちがう。
 そんなワケで丹波文七も働きます。

 原作での丹波は、まともに就職したことはなく、臨時雇いの仕事で生活費を稼いでいる。(格闘士真剣伝説
 ときにはトラック運転手として。ときにはダムの工事現場に。また、あるときはストリップ劇場の照明係。
 生きるために日銭を稼ぐ。肉体を使う仕事はけっこう得意だ。
 マンガ版で丹波の働く姿が描かれたのは、初めてだ。
 今回は、道路工事で交通誘導をする勇姿をみせてくれる。
 不況の世の中だけど、たくましく生きるんだ。俺も、がんばろう。

 でも、丹波は(作中時間で)ちょっと前に堤と試合をしている。(読者時間だと7年以上前)
 当然、ファイトマネーが出たんだろうけど。
 もう金が尽きたんだろうか?
 どっちが死んでもおかしくないような死闘をえんじて、安いファイトマネーだったら浮かばれないな。

 それとも、グレート巽がまだはらっていないのかも。
 だから、丹波はFAWの選手を襲っているのか?
 範馬勇次郎みたいに米軍の接待で生きていける身分がうらやましい。

 丹波は交通整理をやっているようだ。
 だが、ライトセーバーじゃなくて、誘導棒を持っていない。
 昼だから使っていないのだろうか?
 それとも、空手家らしく素手と気迫で車道誘導しているのかも。
 暴走車が突っこんできても、三戦(サンチン)立ちで止めるッ!
 いや、丹波じゃムリか。松尾象山ならできそうだけど。


 働く丹波にたいし、文句をいうチンピラが登場した。
 工事中のところを通せといっている。ムチャをいう。
 いつもの丹波ならすぐにチンピラを叩きのめすかもしれない。
 だが、仕事中の丹波は低姿勢でお引取りをねがう。

「口で言ってワカンねェか」

 とうとう車からおりて、丹波につめよる。
 いきがるチンピラは、いがいと背が低い。
 まあ、丹波がデカいから小さく見えるんだろうけど。
 体も細いし、強そうには見えない。

 体格差から予想される実力差がわからないシロウトだ。
 シロウトが相手なら余裕の丹波文七である。
 昔の丹波は、うるさい男に尿を飛ばして攻撃していた。16巻 140話
 当時に比べると人間的に成長している。
 大人になったというか、ホモサピエンスになったというか。文明人らしくなったね。

 おどしが通用しない丹波にいらだったのか、チンピラがいきなりミドルキックを打つ。
 バランスが悪く上段まで届かない蹴りだ。
 丹波文七にとってこんな男は、耳の遠いお婆ちゃんよりも容易な相手だ。
 わざと喰らって弾きかえし、タフネスをアピールしちゃうぜ。
 丹波はグラリともせず、逆にチンピラがよろける。

「カンベンして下さい」
「どーも…」


 あくまで丹波は紳士的に対応する。
 ド素人のチンピラもさすがに実力差を感じたのか、すなおに逃げ出した。
 せまい路地で方向を変えられないのか、ひたすら車をバックさせて帰る。
 うむ、タンバくん通行止めの表示を出す場所まちがえたでしょ。
 だから、こんなところまで車で入ってきちゃうんだ。

 しかし、丹波はデカくて強そうなのに、よくケンカを売られる。
 よっぽど普段の態度が悪いのだろうか?
 むやみにケンカを売り買いするのは、武道家として未熟だ。
 『敵がいる、ということは武道家としてはまだ未熟である』
 と、宇城先生もおっしゃっているぞ。(板垣恵介の激闘達人烈伝


 仕事が終わり、ビジネスホテル マーキュリーに丹波は帰ろうとする。
 背後から名前を呼ばれた。
 振りかえると浅黒い肌をした男が立っている。
 丹波はちょっと油断していた。

 太った男だ。だが、シャツから胸板や腕にはブ厚い筋肉が見えている。
 脂肪太りではなく、過剰な筋肉がついた体だ。
 身長はやや丹波より大きく、体重はかなり重いだろう。
 単純な力の面で丹波を上回っているかもしれない。
 強敵の予感がする。

「どちらさん…?」

「へへ… 名乗らなきゃ……」
「顔貸してもらえませんかね……?」

「い〜ー〜ー〜え」
「同行しますよモチロン」


 人気のない駐車場へ移動する。
 地面は舗装されており、投げつけられたら死ぬ かもしれない。
 投げ技をもつ人間にとっては有利な地形だ。
 だが、空手家の丹波はビビらない。
 試合よりも路上の喧嘩のほうが得意な男だ。こういう場面も想定内なのだろう。

 黒い老レスラーは丹波と向かい合って、タバコを吸いはじめる。
 闘いのまえだというのに余裕だ。
 丹波とおなじく、この男も路上の経験が多いのだろう。
 試合じゃ使えない技もいくつか持っていそうだ。

「額の傷――― 体格(にく)の持つ空気――― 物腰―――」
「情報がいっぱいだ」
「プロレスラー」
「それも超ベテランのね」


 鞍馬を倒したことにより、グレート巽が動いたッ!
 丹波は状況を正しく理解する。
 噛みつくだけの餓狼ではない。
 あらゆる手段で生きのこる武術家・丹波文七が知力を振りしぼる。

 巽からの刺客というのなら、まちがいなく外道だ。
 なにしろ巽自身が外道の王様です。
 部下は外道の手下となる。
 気さくに話しかけてくる おっさんだが油断できない。

 マンガ版で丹波が倒したレスラーは若手が多い。
 梶原・風間・長田・鞍馬……。梶原と長田はそれなりにベテランか。
 体力あふれる若手を倒した実績が丹波にある。
 なので、丹波はプロレスラー狩りに絶対の自信があるのだろう。

 まして、あいてはロートルのおっさんだ。
 知らない顔だから、有名ではない。三流レスラーだろう。
 仕事中にからんできたチンピラなみにチョロい。
 自分よりも相手のほうが、身長も体重も上だが丹波は余裕だ。
 体格差がそのまま実力差ではない。丹波文七は強気に考えているのだろう。
 きっとチンピラも体格差は関係ないと強気に考えていたんだろうな。

「幼児(こども)が相手でも反則で―― って面(つら)だ」

 いちおう丹波は油断していないようだ。
 だが、左右に目を配り伏兵の確認はしていない。
 レスラーが吸いつづけるタバコを意識しているのだろう。

 火のついたタバコをどう使うか?
 ケンカなれしている丹波にとって、みなれた戦法だろう。
 タバコを投げつけて「熱ッ!」となったところを攻撃する。
 熱いものをさわって手を引っこめるのは反射の動きだ。
 そこで生まれる一瞬のスキを逃さない。

 丹波にしてみたら「遅れてるなロシアの喧嘩はよ……」とカッコつけたいところだろう。
 来るとワカっている奇襲など、奇襲ではない。
 犯人モロわかりの推理小説みたいなものだ。
 手品でタバコを タコスに変えてみせるとか、もっとサプライズを見せなきゃ驚愕しない。

 黒レスラーは予想どおり、タバコを投げつける。
 丹波はタバコを余裕でよけて、反撃の……
 横から来た!
 足にタックルだ。一気に倒されてしまう。

(二人掛かり(タッグ)……ッッ?!!)
(なんてェ バカ力……ッッ)


 さすがの丹波もあせる。
 相手をナメて油断しすぎた。
 タバコによる奇襲ではない。
 横から奇襲するため、タバコに注目させたのだ。
 路上経験の豊富さが、かえってアダとなった。

 丹波の足にタックルしたのは、白髪の老レスラーだ。
 両ヒザの部分をかかえて、はなさない。
 脚でもっとも力を生む関節はヒザだ。
 そこを押さえられてしまった。
 脚力でふりほどくのはむずかしい。

 ならば、腕による打撃で相手を弱らせるか?
 だが、ヒザ部分にいる相手はびみょうに間合いが遠く殴りにくい。
 オマケに倒れていたら、腕の力だけで殴ることになるから打撃力は半減する。
 どうやって切り抜けるか?

「ごっつぁんです」

 丹波に考える時間は与えられなかった。
 黒レスラーが近づき、丹波の鼻を蹴りつける。
 鼻血が飛びちった。
 脚を開放するどころではない。顔面を守ることすらできていない。

 ひとりが足を封じ、もうひとりが攻撃する。
 おそるべき分担作業だ。
 攻撃をするとき人間にはスキが生まれる。そのスキをつくから脱出できるのだ。
 しかし、攻撃せずに押さえ込むことに集中されたら、脱出は難しい。
 丹波文七、はプロレス地獄にはまった。

「こりゃあ…………」
「出る幕ないかァ……」


 刺客・老レスラー三人衆、最後のひとりは離れたところで様子をみていた。
 ヒゲの老レスラーだ。
 足元に落ちるタバコの数から判断すると、かなり長い時間待機していたようだ。

 ヒゲレスラーの役割はなんだったのだろう。
 後詰にしては離れすぎている気がする。
 丹波を倒しきれなかったときの援軍というより、罠かもしれない。
 ヒゲレスラーのほうへ逃げ、追ってくる丹波に奇襲をかけるとか。
 孫子 軍争篇の『佯北(しょうほく)には従う勿(なか)れ(偽って敗走する敵を追ってはならない)』だな。

 ただでさえ、最悪の状況なのに、さらなる罠もありそうだ。
 最近ひとを罠にはめて倒していた丹波に、報いが来たのだろうか。
 もう、鞍馬のことをバカにできない。
 ついでに、へたれチンピラもバカにできないぞ。

 今回の教訓は『人のふり見て我がふり直せ』ですね。
 ぷっ、丹波くん、カッコ悪ッ!
 俺なら、あんな封に油断しないぜ!

2009年5月26日(12号)
餓狼伝はお休みです

 餓狼伝は休載なので、北辰会館トーナメントを振りかえる。
 と、思っていたけど、すでにまとめていた。(過去まとめ:一回戦二回戦三回戦準決勝決勝戦+α
 すっかり忘れていたよ。

 なので、トーナメント後の話をすこし振りかえってみる。
 丹波文七がイブニング移籍後、はじめて主人公として活躍する話だ。
 そうか、はじめてなんだよな……
 はじめてが、コレかよ。

闇討つ 丹波文七(途中)
 Vol.214  丹波文七が、長田に不意打ちを仕掛け勝利する。ズルい!
 Vol.215  傷の癒えぬ片岡輝夫に、丹波文七が襲いかかる。ズルい!
 Vol.216  武器の使用もじさない丹波文七が、片岡を撃破した。ズルい!
 Vol.217  路上でも強い鞍馬彦一に、丹波が武を教えてやる宣言だ!
 Vol.218  鞍馬にあえて武器を持たせることで、丹波は勝利する。ズルい!  
 Vol.219  グレート巽が鞍馬に仕置きをする。丸焼きだ。ヒデぇ!
 Vol.220  手段を選ばぬベテラン・レスラー三人が丹波への刺客だ!
 Vol.221  ベテランのコンビネーションで、丹波ピンチだ。自業自得だ!

 とにかく、丹波はズルい! 汚い! でも勝つ!
 そう思ったら、負けそう! 大ピンチだ!
 しばらく審判のいる試合がつづいていたから、バランスをとるためにもルールの無い戦いになるのは理解できるんだが。

 とりあえず、現状はいかに卑怯に勝つかという勝負になっている。
 じゃなくて、力と技だけじゃなく、駆け引きが重要なのだ。
 相手の長所を殺し、弱点を攻めれば、ヤムチャだってベジータに勝てる。
 いや、勝てないか。
 とにかく丹波はそんな感じに勝つのだった。
 正面から殴り合ったら、片岡には勝てない気がするし。

 まあ、ちょっと(かなり)ズルいけど、これが武術の戦いだ。
 勝ちのこり、生きのこるのに、手段は選んでいられない。
 もともと、武士の生きかたってのは最強を目指すものであり、勝つために手段を選ばないものだった。(戦場の精神史
 もちろん乱世でも「卑怯カッコ悪い」という意識はあるから、だんだんと後世の武士道に近づくんだけど。

 そんなワケで卑怯も武の内という丹波がピンチからどう脱出するかなんだけど。
 弟子ポジションの凉二が近くに隠れていて、助けに入るという作戦はアリだとおもう。
 切り札は最後まで取っておくものだし。

「よう、オッサン。二人がかりでピンチじゃねーか」
「バカな…… 丹波の、弟子、だと?」
「やはりな。仲間を潜ませていたか」
「バカな…… 3人目のレスラー、だと?」

 なんか、ジャンプ漫画っぽい感じで人気急上昇しそうだ!
 主人公サイドにだけベストタイミングで仲間が助けにくるご都合主義は餓狼伝らしくない。
 やっぱり、丹波には自力でなんとかしてもらうしか ないだろう。
 たまには、(というかイブニングからの読者に)主人公らしい逆転劇を見せてやれッ!

2009年6月9日(13号)
餓狼伝 Vol.222

 プロレスラーを闇討ちしていた丹波文七が、プロレスラーに闇討ちされるッ!
 まさに因果応報ですな。
 憎しみの連鎖が止まらない。
 どうしても許せないから、オレはもう一回闇討ちするけど、これで最後にしようぜ!
 などと建設的(?)に話しあっても止まらないのだ。

 屈強なレスラーが脚にからみつき、上半身にはもう一人の蹴りが浴びせられる。
 容赦のない路上のプロレス技が炸裂だ。
 いまの丹波にできることはガードを固めて丸くなるだけ。
 イブニング移籍後、最大にして最初のピンチだ。
 出番があるだけマシなんだけど。

(空手家のこの俺がッッ)
(プロレスラーに遅れを取ってる…………ッッ)


 巽も認める、戦争に勝つための技術=武術だ。(219話
 チーターなみにプロ中のプロである。(範馬刃牙17巻 137話
 プロフェッショナルな空手家が、ショー格闘技のプロレスに遅れをとった。なんという屈辱だ。
 丹波の精神テンションは、今ッ、餓狼伝1巻(AA)のころにもどっている。
 プロレスをなめたまま梶原と戦って惨敗したこと、都合よく忘れてンな。

 過去の失敗による恐怖をわすれ萎縮しない。
 一流選手にとって、あると嬉しい性質だ。
 なぜ失敗したのかという原因追及と、二度と失敗しないための対策は必須である。
 だが、反省は必ずしも必要ではない。
 ふてぶてしい精神も時には重要なのだ。

 しかし、丹波の台詞はいただけない。
 「やったか!?」「この高さなら助からない」「冥土の土産に教えてやろう」クラスの敗北台詞ですよ。
 台詞を「エリートであるこの俺がッ!」にかえると、ヘッポコさが強調される。
 試合しかしない空手家をバカにしていた丹波だが、しょせん君も空手エリートだったのか。
 丹波文七は、たいせつなナニかを失ったのかもしれない。

 丹波の口に指が入ってきた。
 口の端に指を引っかけて起こす。
 古流柔術ではよくある危険なつかみだ。
 ムリに抵抗すると口が裂ける。たしか原作・餓狼伝でそう解説されていた。

 体を起こされた丹波は、黒いレスラーに背後から羽交い絞めされる。
 正面には白髪のレスラーが待ちかまえていた。
 反射的に丹波は蹴る。
 だが、羽交い絞めされて踏み込むこともできない。
 蹴りはとうぜん防がれた。

 そして、リンチ第二章がはじまる。
 防御もできないまま、丹波は一方的に殴られていく。
 しかし、最初のポジションで充分に有利だったのに、なぜレスラーたちは丹波を立たせたんだろう。
 体勢をかえることで新鮮な気持ちで攻められるからか?
 丹波の心までも砕くような容赦のない責めがレスラーたちの狙いだろう。

 丹波から力がぬけた。
 きっちり全殺ししたのかと黒レスラーは油断する。
 その ゆるみを見逃さない。丹波は後頭部を黒レスラーの鼻にぶつけた。
 鼻血が飛びちる。腕がゆるんで、脱出成功だ。
 さらに、後ろ蹴りでダメ押しをする。

 正面には白レスラーがいる。
 だが、視界に入っている相手なので対応できると後回しにしたのだろう。
 さらに背後の黒レスラーはちょっと弱っていた。
 追撃して倒せれば、あとは白レスラーとタイマン勝負になる。
 後方を優先して攻撃したのは、そんな理由からだろう。

 間髪いれず、丹波は正面の白レスラーに対応する。
 構えた。パンチを打つ気か?
 だが、せまい間合いでハイキックだ。
 不意打ち効果もある。一発逆転だ。

 丹波は二人に挟まれている不利なポジションから脱出した。
 やっと、ここからが丹波の時間だ。
 だからといってすぐに攻撃しない。
 文句を言わずにはいられないようだ。

「こちとら真剣で生きてんだぜ」
「殺(や)るか殺(や)られるかで生きてんだよ」
「空手家 嘗(な)めんじゃねェェッッ」


 プロレスラーにボコられたのがよっぽど悔しかったらしい。
 このあとに、「空手エリートであるこの俺…」と続いたら、死亡フラグだったけど。
 とりあえず言葉でへこませたいというのは、BOYだったころの名残だろうか。

 窮鼠猫を噛むような咆哮で丹波が一喝した。
 レスラー二人は、顔を見合わせる。
 丹波くんは、思ったより甘い人だ。
 そんな風に思っているのかもしれない。
 とりあえず、レスラー二人は土下座した。

「丹羽さん……」
「おみそれしました」


 いきなり土下座され、思考停止してしまう丹波であった。
 餓狼伝とおなじアッパーズ連載だった『不死身のフジナミ』にも、相手の思考停止させる土下座技がある。
 なにしろグレート巽の部下だ。美しい土下座は、それ自体が武器となるのだ。
 虚をつかれて丹波は行動できない。

 なお、この白レスラーは丹波の名前をおぼえ間違えている。
 それともワザとだろうか?
 相手の名前を間違えて怒らせるのは、ギャンブルの常套手段だ。
 ジョースターさんも言っている。元ネタの『スティング』(>AA)でも言っている。

 困惑した丹波の背後はスキだらけだった。
 そこに拳が振りおとされる。
 最後に残ったヒゲのレスラーだ。
 仲間のピンチを見て、こっそり近づいてきたんだろう。

(不覚…ッッ)
(もう一人……?!!)


 戦争のための技術にしては、なんともお粗末だ。
 ちっとも残心がとれてない。
 油断しまくりの丹波文七である。
 空手家を名乗るのを止めてもらえないかと、北辰会館から苦情がきそうだ。

 まだ目がゆれている丹波にヒゲレスラーが絡みつく。
 コブラツイストッ!
 小学生時代の経験では卍固めよりコブラツイストのほうが痛かった気がする。
 というか、卍固めは不安定すぎて維持するだけで精一杯だ。

 コブラツイストで固められている丹波に白黒のレスラーが殴りかかる。
 まるで集団リンチの宝石箱やぁ〜
 打撃系格闘者は体が柔らかいという説があるのだが、丹波に通用しないのか?(G刃牙33巻 287話)
 丹波なら自力で乗りきると思っていたが、ちょっと危うい感じだ。
 イブニング移籍後、初敗北となってしまうのか?
 次回へ つづく。


 丹波がピンチなのは変わらない。
 しかし、ガンバったかいあって、レスラー3人衆を全員引きずり出すことに成功している。
 もうこれ以上の落とし穴は無いはずだ。
 あとは、逆転するのみ。

 単独での逆転がむずかしいなら、だれか援軍が来て欲しいところだ。
 「カン違いするなよ。お前を倒すのはオレだから、ここで負けてもらったら困るってだけだ」
 などと言いながら梶原が参上しそうだ。
 そして、丹波より弱いせいで足を引っぱる。

 まあ、イチバン心配なのはグレート巽が出陣することだ。
 「コイツら三人は、しょせん前座よ」
 巽がでてきたら、今度こそ丹波の命も尽きそうだ。

2009年6月23日(14号)
餓狼伝 Vol.223

 コブラツイストと打撃の複合技だッ!
 わざわざコブラツイストで拘束するあたりがプロレスラーの矜持なんだろうか。
 丹波文七はプロレスラー三人に、ボッコボコにされている。(現在進行形)
 現在「チームワークによる闘いが存在するのは」「プロレスのみ」と言われている。(範馬刃牙4巻 30話
 まさに今、プロレスによるコンビプレイが炸裂だ。

 コブラツイストで動きを封じ、防御もできないところを殴りまくる。
 殴った反動で関節もきしむだろう。
 無間地獄ともいえる痛みが丹波を襲っているはずだ。
 逆転の策は、なにか無いのか!?
 ……相手のミス待ちだよな。

 打撃系の格等家はプロレスラーよりずっと体がやわらかいハズだ。(G刃牙33巻 287話)
 だが、丹波は逃げられない。
 卑怯な手段に逃げて練習をサボってしまったのだろうか?
 まあ、殴られながらだと落ち着いて脱出できませんな。
 私も同じ状況なら、くりあがりのある足し算すらできないと断言しようッ!

(プロレス……ッッ)
(強ええ…ッッ)
(エゲツねェ…ッッ)


 なんか、一巻のころに戻ったようにプロレスの強さを再々認識する丹波文七であった。
 噛ませ犬臭がしみついた梶原ばかり見ているから、大切なことを忘れるんだ。
 もっと上を見ようよ。
 なんでグレート巽の恐ろしさを忘れてしまうんだ?

 コブラツイストにより、丹波の股が無防備になっている。
 そして、股間を蹴られました。
 餓狼伝では定例行事ですね。
 老レスラーたちが狙わないから、どうしたのだろうと思っていたよ。
 金的を打たれて丹波は前かがみになる、両手はガッチリ股間をガードだ。
 顔とかガラ空きですよ。

 ヒゲのレスラーは丹波を解放した。
 急所への攻撃に同情したのだろうか?
 いや、そんな甘い連中ではない。
 開放と拘束を交互に行うことで、精神的ダメージを狙っているのかも。
 人間は希望を打ち砕かれたときに大きな精神的ダメージをうける。(〈勝負脳〉の鍛え方
 このまま丹波が壊されたら、開放という希望すら恐怖するようになりそうだ。

 股間をかばって前かがみになった丹波の両腕を白髪レスラーがクラッチする。
 なお、地面はコンクリートだ。
 だが、白髪のレスラー・康ちゃんは容赦なくダブルアームスープレックスを決める。
 下手をすれば殺人になる攻撃だ。
 ある意味、それだけ丹波の頑丈さを信頼しているというコトなのか?

 マットとはちがう音を立てて丹波が叩きつけられた。
 さすがの老練レスラーたちもコンクリートに人を投げつけた経験はないらしい。
 つまり、丹波は過去の誰よりも粘った証拠だろう。
 最後に残った小さな誇りだ。

 叩きつけられても何とか動いている丹波だった。
 だが、レスラーたちは容赦なく追い討ちで踏みつけ攻撃をする。
 さすがの丹波文七も、これは死にそうだ。
 連載中で、もっとも死に近づいているかもしれない。

 この現場を目撃していたピザ屋の兄ちゃんは、ついに110へ電話することを決意する。
 いや、119のほうが良いんじゃなかろうか。
 だがボタンは押せなかった。
 黒いレスラーが制止したのだ。
 こんな人に止められたら、青信号でも道を渡れません。

 黒いレスラーは万札をわたし、ピザをもらっていく。
 店の信用問題にかかわるから金では解決できない。
 でも、3人のプロレスラーがリンチしているところに遭遇したといえばお客さんも許してくれよう。
 信じてもらえればの話だけど。

「はいィィッ」

 黒いレスラー・麻田さんは熱々のピッツァを丹波の顔に叩きつけたッ!
 ここに来てオモシロプレイかッ!?
 体を張った若手芸人でも、なかなかコレはできないぞ。
 冷たいコンクリートの上でのびている丹波だったが、顔面だけはピザのおかげでホッカホカだった。

 悲惨なピザ拷問だ。
 アンパンマンならぬピザ男(マン)が完成した。
 実にシュールな映像だ。
 丹波文七の完全敗北か?

「強かったンでしょうかね 丹波は……」
「ン〜〜〜〜… あまり興味ないけど……」
「ワカる前に終わっちゃったと………………」
「一パイやってきますか…………♥(はぁと)


 老スレラーたちは勝利を確信して帰っていく。
 トドメも刺さずに帰るらしい。……ちょっと甘くないか?
 腕を折るぐらいしておかないと巽社長に怒られそうだけど。
 でも、睾丸を蹴りあげたのはプラス評価だな。
 巽社長も よろこぶぞ!

 せめて、丹波がピザ男になっている姿を撮影してネットで公開すればいいのに。
 肉体的ダメージではなく、社会的ダメージだ。
 もう二度と丹波とよばれず、ピザさんとよばれるコトだろう。
 熱心なファンがすぐに丹波にのっかっているピザを特定して注文してくれるよ。

 丹波の実力を封じ、完勝した手並みは見事だ。
 だが、やはり武術の残心がない。
 きっちりトドメを刺さない甘さは、ショーレスラーの悲しい習性なんだろうか。
 プロレスの場合だと 完全に倒しちゃうと次回の試合に影響するし。

 老レスラーたちは背を向けていたので気がつかない。
 丹波の顔面に鎮座するピザに変化が起きていることにッ!
 ピザの生地に人の顔が浮き上がる。
 その表情は激怒ッ!

 メキュッ

 ナゾの音を鳴らし、人面ピザの激誕だ。
 眉間の部分はどうやってピザが集まっているんだろうか。
 丹波文七は、目でピザを噛むッ!?

 次回、超ピザ男の逆襲がはじまる。……のか?


 丹波文七が裏返ったのだろうか。
 ポパイがホウレン草でパワーアップするように、丹波はピザでパワーアップする。
 勝利のキーワードはピザだったらしい。
 いや、チーズやトマトといった要素が効いたのかも。

 それとも、顔面を温めたことが良かったのかもしれない。
 飲食店に入ったときに出される温かいおしぼりで顔をふくのはオッサンの特徴だといわれる。
 だが おしぼりは疲れたオッサンがリフレッシュするためのアイテムなのだ。
 年齢的にオッサンが近づいている丹波も顔を温かいモノでふくとリフレッシュするのだろう。

 今後、丹波がピンチになったらピザを投げつければOKだ。
 おそらく歴史の画期となる丹波とピザの出会いであった。
 餓えた狼はピザを得て満ちたりる。
 スゴいね、ピザ♥(はぁと)

2009年7月28日(16号)
餓狼伝 Vol.224

 前号休載につき、丹波文七はピザをはりつけたまま一ヶ月放置されていた。
 つまり、ピザ充電率が一ヶ月なのだ。単位は気にするな。
 月のように丸いピザが、月刊誌状態の丹波文七に新しい力を与えてくれる。

 ベテランレスラー三人衆がふりかえると、ピザ男(マン)が立っていた。
 アメコミ発のニューヒーローか?
 ピザ男の表情は憤怒の状態に見える。
 さらに変化が生じていた。ピザが顔の中心に吸い込まれていく。
 中心というか、口だ。丹波が口だけでピザを喰っているッ!

 じょじょに丹波の顔が出てきた。
 ピザの下にかくれていた顔も怒っている。
 だが、こんな面白芸を見せておきながら怒るのか?
 説得力ないというか、これは笑うところだろ。
 綾波だってどんな表情すればいいのか、迷わずに笑う。
 ゲンドウだって笑う。

 虎眼流の門弟が出てきて「お美事にございまする」と言いそうなスバらしい芸であった。
 丹波には芸の自覚がないのだろうか?
 ここで丹波に怒られてもリアクションにこまる。
 テストで満点とって怒っているようなモノだ。
 丹波は蹴られすぎて、脳機能に異常が起きているのかもしれない。

 手を使わずにピザを完食した丹波はモニュモニュ咀嚼する。
 丹波の見事な芸に、老レスラーたちは見とれてしまったのか、手出しをしない。
 丹波の前に缶が置いてあったら、思わず金を投げこんでしまいそうだ。
 思い切って、丹波文七秘座衛門(たんばぶんしち ぴざえもん)と芸名を変えてみたらどうか。

 ホウレンソウを喰ったポパイのように、丹波はピザで復活だ。
 そして、ピザを武器にもする。
 口中のピザを吹きかけた。目潰しか!?
 いや、ダメージは無い。ただの嫌がらせだ。
 このピザ噴射が、丹波文七の逆襲をつげる第二ラウンドの鐘だった。


 そのころ、今回の黒幕である巽は川辺から質問を受けていた。
 FAWには格闘技に精通した人材がいくらでもいる。
 なのに、なぜ三人を丹波への刺客としたのか?

 三人を選んだ理由は、たしかにワカらない。
 だが、格闘技が得意な人間をさけた理由はワカる。
 丹波は空手をベースとした格闘技・武術のエキスパートだからだ。
 おなじ属性の格闘家をぶつけた場合、丹波のほうに分がある。

 さらに、丹波は格闘家との戦いになれているのだ。
 丹波と同等以上の実力がある片岡ですら、子供あつかいされた。23巻 215話
 お上品な格闘家では丹波に勝てない。
 だから、ドぐされた卑怯な人材が欲しいのだ。

 三人の老レスラーは20年以上もプロレス一筋だった。
 つまり、20年以上もウソをつきつづけていたことになる。
 真剣勝負ではないショーとしてのリングで、打ち合わせどおりの勝敗を演じるのだ。

「もし――――――
 正直者になり変われるチャンスがあったなら――」
「もし――――――
 嘘つきではなかったと認めてもらえるなら」
「アイツらは針の先ほどのキッカケにだって喰らいつくさ」


 そう語るグレート巽の表情は悪(ワル)だった。
 だれかに認めてもらいたい。そんな人間的な欲求を利用する。
 人の心をもてあそんでいると言われても仕方がない。
 すべてグレート巽のシナリオどおりの展開なのだろうか。

 プロレスラーの執念は、丹波の武を超えるのか?
 20年の重みは技術・体力の差を凌駕するのか?
 川辺も元レスラーだ。
 八百長試合の悔しさも理解している。理解しているだけに軽々しく口にできない。
 レスラーの執念が丹波を倒す展開を川辺は期待していそうだ。

「……………じゃあ」
「ヤラれちゃいますか丹波が」
「あの3人に」

「なワケねェーだろ」

「……!? !?」
「……え……?」


 巽は とってもイイ笑顔で否定した。
 川辺は おどろきとまどっている。
 プロレスラーの意地はどこにいったんだよ。

 今までの説明は、巽がボケるための前フリだったらしい。
 このボケのために何ページ使ってんだか。
 グレート巽は前フリのスケールもグレートだ。

 すると、三人衆のあとに本命が出てくるのだろう。
 三人衆の役割はプロレスのスゴ味を見せることにありそうだ。
 丹波に見せつけるのだろうか?
 巽は丹波を自陣に引きこみたいと思っている。
 プロレスを敵にまわすとヤバイ。そう思わせたいのかも。

 または、丹波を見ている第三の男がいるのかもしれない。
 もしかしたら、ピザ屋のニイちゃんが実力者だったりして。
 今ごろ「へぇ〜、プロレスもやるじゃん」と言いながら、ピザ食っているかも。
 どちらにしても、巽の目的はいったい……?


 場面は丹波文七にもどる。
 丹波はいきなり、レスラーの目を突いた
 空手における禁じ手、目潰しだ。

「何をするのかワカらねェ…………」
「何人いるのかさえワカらねェ…………」
「警戒レベル5(ファイブ)
「死に至る重傷――」
「一生にわたる重大な傷害」
「つまり――――」
「戦争レベルの技術解除だ」


 覚悟完了……
 下手をしたら殺すことも辞さない。
 日本の法を考えれば、過剰防衛で有罪になる可能性もある。
 丹波は、相手の人生と 自分の人生を破壊する覚悟を決めたのだ。
 まさに戦争レベルの覚悟といえる。

 さらに、人の目をえぐるということは、自分も目をえぐられる覚悟があるということだ。
 丹波は自分の命も賭けた。
 恐るべき全面戦争が始まろうとしている。

 丹波の覚悟は、すでにグレート巽が指摘している。
 「戦争に勝つため編み出されたもの」「それが武術だ」219話
 極限状態に追いこまれた丹波は、ついに武の本質を出そうとしている。
 次回、開戦ッ!


 レスラー三人は異常にツメが甘かった。
 これも巽の指示なのだろうか?
 本当に強いところを見せたいという欲求があるため、卑怯になりきれなかったのかも。
 その心構えはスポーツの延長にすぎない。
 戦争の覚悟を決めた丹波は、もっと卑怯な手を使ってくるぞ。これは、逆転されそうだ。

 しかし、丹波のピザ芸はどこで学んだのだろうか?
 思いつきでできるような動きではなかった。
 梶原あたりに教えてもらったのかもしれない。
 もしかしたら、FAWの伝統芸なのかも。
 三人衆が思わず見守ってしまったのは、自分たちの芸だったから、とか。

 次回以降で丹波が逆転するのは、ほぼ間違いない。
 肝心なのは、そのあとだ。
 巽がなにを狙っているのかが重要となっている。
 丹波がいくら暴れても、それはお釈迦様の手の上で暴れる孫悟空のようなものだ。
 真の敵に気がつくことができるのか?


 今回の名言は、まちがいなくコレだな。
「……………じゃあ、ヤラれちゃいますか丹波が。あの3人に」
「なワケねェーだろ」


 さんざん誉めといて、落とす。
 逆ツンデレ殺法だ。
 刃牙でも採用しないかな。

「……………じゃあ、ヤラれちゃいますかピクルが。あの刃牙に」
「なワケねェーだろ」



2009年8月25日(18号)
餓狼伝 Vol.225

 丹波文七をナメるなッ!
 アレでも いちおう超実戦主義の武術家だ。
 十数巻ぐらい前は試合にも出ていて一流の戦いを見せてくれたんだぞ。
 いやいやいや。ノーノーノー。
 なんか、すごい過去形の思い出になっているな。

 丹波は喧嘩も試合もやっている。
 路上の実戦と試合での勝負を両方やっているようなものだ。
 車で言えば、路上最速伝説とサーキット最速伝説の両方を目指しているといえよう。
 下手するとどっちつかずの中途半端になりかねないけど、丹波はバランスよく完成している。
 それは現代武術が実戦を想定に入れつつ、力試しとしての試合もやっているからだろう。

「闘争(たたか)いが」
「命のやり取り」
「仮に殺し合いまで純度を増したとするなら」
「あの丹波を相手に」
「立っていられる漢(おとこ)は……」
「この巽 真を含め」
「この世に数人てところだろう」


 巽は丹波をベタぼめする。と、同時に自分だって世界最強の数人に入っているとアピールした。
 ほめると同時に自己宣伝だ。 うまい! カウンター・リスペクトだ!
 夢枕獏がいうには、ほめながら自己宣伝するのは上田馬之助が上手かったらしい。
 アントニオ猪木はレスリングの実力が高い。できるヤツなら組んだ瞬間にわかる。
 などといって、猪木をほめつつ自分はわかる側だとアピールしたそうだ。(「本朝無双格闘家列伝」だったと思う)

 マンガ通を気取るならイブニング作品をほめろ! みたいな感じで。
 『もやしもん』は、情報・ギャグ・萌えの要素がそれぞれ高レベルで、デキる人間なら一発で上質な作品だとわかる。などと言ってみよう。
 作品名を『バキSAGA』に変えても通用するぞッッッ!!!
 説得力を生むのは、迫力だ!

 巽はベテラン三人衆より丹波のほうが強いと考えている。
 丹波がピザ男になる直前までのシーンを見たら、どう言い訳したんだろう。
 ピザが無ければ、丹波はあのまま沈んでいた。
 たまたま通りかかった出前がソバ屋だったら、餓狼伝・完!になっていたところだ。

 今回も巽が勝てぬとわかりながら、社員を死地に送りこんだ理由が判明しない。
 たんなる嫌がらせか?
 これで丹波が講義にやってきたら、卍固めを極めつつ自分の部下になれと説得するのかも。
 それとも、社員をリストラするつもりで丹波にぶつけたのだろうか?
 とにかく、FAWは黒すら白に見えるほどの超ブラック企業だということはワカった。

 今回も巽社長の表情が黒すぎてドキドキします。
 いや、むしろ胃が痛む。
 急に本名を名乗ったのは、本気を出す前触れだろうか?


 ピザ喰って復活した丹波文七が反撃開始だッ!
 つかみかかってきたヒゲレスラーに、いきなりハイキックを撃ちこむ。
 頬につま先をメリ込ませた。歯が飛び散る。
 不安定なハイキックを、いきなり撃ちやがった。

 丹波はトドメとばかりに、ヒゲレスラーのヒザに飛び蹴りをかまして破壊する。
 復活のピザパワーだけにヒザを狙ったのか!?
 いやいやいや、こんなジョークは米国人でも言わない。
 だって、英語でヒザはニー(knee)だもの。

 これで正面のヒゲレスラーは戦闘不能となった。
 って、正面なのか!?
 集団戦闘の場合、攻撃の基本は「翼から攻める」だ。
 『将軍は大胆に敵の翼を攻撃せよ。そうすれば、勝利は君の手の中におさまる』(ナポレオン、「名将たちの戦争学」より引用)

 翼とは部隊の端のことをいう。
 中央を攻撃すると、左右の部隊に囲まれる危険がある。
 なので、翼を攻めるのだ。
 もっとも敵だって翼を攻められては困る。
 そこで翼への動きを警戒することになり、結果的に敵陣のスキを突く中央突破が効果を発揮するのだ。

 丹波は中央のレスラーと最初に闘った。
 けっこうな危険を冒していることになる。
 いや、攻撃を警戒している左右のレスラーよりも、油断している正面に奇襲をかける作戦だったのかも
 なんにしても、速攻で一人倒したのは大きい。

 ピザ内のチーズが丹波の脳髄を活性化させているのか?
 スゴイ冴えているぞ。
 いまの丹波には、ナポレオンもビックリな発想力がある。
 イタリアが育んだピザの奇跡はいつまでもつ?
 最近はイタリアというとヘタリア(AA)って感じもしますが。
 ……ダメっぽい。

 敵のほうが多数の場合、なるべく早く敵数を減らして互角の勝負に持ちこみたい。
 丹波は休むことなく黒レスラーに襲いかかった。
 レスラーの口に指を突っ込んで、引っかける。
 口、鼻、眼窩、耳、鎖骨などを利用して相手をつかむ。
 古流柔術で使われる、試合では使えぬ技だ。

 丹波は容赦なく口から頬にかけて引き裂く。
 客商売にとって厳しいダメージとなる容赦ない攻撃だ。
 この一撃で黒レスラーは戦意を喪失する。

 またたくまにレスラー二人を倒した。
 これで残った白髪レスラーとタイマン勝負だ。
 しかし丹波は油断したのかタックルを足に喰らってしまう。
 せっかくココまでもりかえしたのに、今倒れたらまた逆転されてしまう。

 だが丹波文七も空手家のはしくれだ。
 そう簡単に倒れてしまっては商売あがったりである。
 倒れない。簡単には倒れないぞ。
 今日の丹波はちょっと男前だ!

 倒れない丹波にあせったのか、白髪レスラーはさらなる攻撃に出る。
 丹波の足に噛みついた!

『噛みつき――』
『男女の性別なく追いつめられた人間の最後の武器』


 噛みつきは、原始的かつ強力な攻撃だ。
 獣となって丹波のふくらはぎに歯を突きたてる。
 人を投げとばすプロレスラーは、奥歯がボロボロになるほど歯を食いしばるらしい。
 鍛えられた咬合力で、丹波文七が大ピンチだ。

『この技術には注意すべき点がある』
『そう――』
『噛みつく対象の着衣――』


 つまり、グラップラー刃牙42巻 370話をちゃんと読んどけってコトですか。
 範馬勇次郎も服の上から噛むときは注意しろといっていた。
 狙うのは頚動脈だ。

『プロレスラー犬飼五郎の不運』
『対象の布が頑丈なジーンズだったこと――』
『そして もう一つ』
『相手が純正の武術家』
『丹波文七だったということ……』


 ジーンズに前歯を全部もっていかれ、トドメで横蹴りを喰らう。
 犬飼五郎は鮮血にまみれて倒れた。
 丹波文七の大逆転勝利だ。
 ピザがなければ危ないところだった。

 だが、この勝利もグレート巽の計算どおりだ。
 一時の勝利に安堵する丹波は、自分が釈迦の手の上でおどっていることをまだしらない。
 巽は次にどんな手をうってくるのだろうか?
 ピザの宅配がつねにやってくると思うな!


2009年9月23日(20号)
餓狼伝 Vol.226

 ピザを喰った丹波文七が逆転パワーアップをした事件から数日たったようだ。
 襲ってきたレスラーたちはグレート巽の命令を受けている。
 二人は今後どのような反応をしめすのだろうか?
 だが、丹波が向かったのは伝統派空手・神山徹のもとだった。

 神山さんは少年部の子供たちに稽古をつけている。
 ものすごい大人数だ。百人ぐらいいそう。
 神山さんの道場はかなり大きな所なのだろう。
 少年部でこの人数なのだから、一般部はさらに多いハズだ。
 神山さんの人徳が人をひきつけているのだろう。

 道場の入り口に丹波がすがたを見せただけで少年部たちの動きが止まった。
 ただならぬ獣臭を感じたのだろうか?
 あるいはピザ臭を。
 ピザを布団にして毎晩寝ているような圧倒的な芳香がしているかもしれない。
 どちらにしても、泣く子も黙る丹波文七といったところか。
 ピザの臭いが頭から離れず、練習に身が入らなくなることマチガイなし。

「泉先生から聞きました」
「神山さんが俺と会いたがっている…………と」


 最近の丹波はやたらとケンカをふっかけている。
 だから、弱体化した神山さんを狙いにきたのではないかと心配していた。
 どうも取り越し苦労だったようだ。
 丹波はピザで更生できたのかもしれない。

 携帯電話も持たず住所不定な丹波文七と連絡を取りたければ、泉さんに頼むしかない。
 文明社会から背を向けるように生きているな。
 もしかしたらインターネット未経験者かもしれない。
 丹波はいちおう定期的に泉さんと連絡をしているようだ。
 武道家として情報収集も大事なのだろう。
 だれがいつ敵になり、だれが味方になってくれるのか知っておいて損はない。

 とりあえず神山さんは丹波の敵じゃないようだ。
 初婚で新婚の神山家におじゃまして、酒と肴をご馳走になる。
 名酒「灘の生一本」で出迎えるなど、かなり歓迎している様子だ。
 丹波もあまり面識のない人の家で飲み食いするのは気をゆるし 信頼しているのだろう。
 古い武術家は酒はもちろん、人の家で飲む茶にも油断しないのだ。(「激闘達人烈伝」p202〜)

「強くなる為の空手はもう辞めました」

「わたしと共に――」
「青少年の育成―― 教育――」
「神山流空手の道場経営をやってみませんか」


 神山さんの目的は丹波文七のスカウトだった。
 そして、松尾象山の予言どおり空手を引退したらしい。(20巻 180話
 もっとも「強くなる為の空手」を辞めただけで、空手そのものは続けている。
 松尾象山にとっての空手は、あくまで「強くなる為」のモノなのだろう。
 また、丹波にとっても空手は「強くなる為」のモノだと思われる。

 そんな丹波を指導員としてスカウトするのか?
 三国志でいえば呂布に内政をやらせるようなものだぞ。
 と、思ったが丹波には涼二という弟子がいた。いや、まだ現在形か?
 どちらにしろ、弟子をもつという実績はあるのだ。
 神山さんはけっこう目のつけどころが良いのかもしれない。

 すべてを捨てて空手に打ちこんできたつもりだった。
 しかし、リア充な姫川に完敗する。
 残ったものは、すべてを捨てたため何ものこっていないバカひとりだ。
 それが神山さんの認識だった。

 なんか、丹波のことみたいだ。
 定職にもつかず空手バカ行脚をつづけている。それが丹波文七である。
 いつか丹波が敗北したとき、残されるものはなんだろう。
 徳川家康は三方ヶ原の戦いで敗走したとき恐怖で脱糞したが、君主で在りつづけることができた。
 しかし、丹波文七が敗北したらあとがない。
 丹波が他人に思えず、神山さんは援助したくなったのだろうか?

 神山さんは先月まで童貞だった。
 フランス料理やイタリア料理も初めて食べる。
 酒も飲んだ。葉巻もおぼえた。
 今まで修行のジャマと切り捨てていたものに手を出したのだ。

 なにかに専念するというのは、言い訳にもなる。
 空手以外の楽しみや責務から逃げた、のかもしれない。
 敗北してから、空手に逃げていた自分が見えてきた。

「そして――」
「最強の称号から目を背けようとする自身も」
「ですか……?」

「地上でイチバン強(つ)ええ空手」
「バカじゃなければ務まりません」
「俺や神山さん――」
「あなたのような」


 丹波文七はバカを恥じなかった。
 空手に全てをささげ、空手に裏切られ、なにもかも無くしても、後悔しない覚悟だ。
 神山さんは自分を上回るバカを目前にしている。
 だけど、バカは誇らしげだ。
 かつての自分のように。

 神山さんは空手で敗北したのが初めてだったのだろう。
 だが丹波はちがう。何度も敗北している。
 梶原にズタボロにされたり、松尾象山に凹まされたりした。
 それでも立ち上がり、今も闘っている。
 打たれ強さがハンパじゃない。

 自分以上の空手バカっぷりを見せつけられた。
 一流の人間は、一流の負けず嫌いだ。
 とにかく人に負けたくない。
 丹波文七という空手バカが、神山さんの中でくすぶる空手バカに火をつけた。
 俺のほうがもっと空手バカだと見せつけたくなるハズ。

「ミチエ」
「わたしの道着――」


 言われたときには、すでに道着を取り出している新妻ミチエさんであった。

「ナイスなカミさんだ」

「引き戻してくれると思っていたよ……
 丹波文七ならきっと…………」


 復ッ活ッ!
 神山徹ッ! 復活ッ!
 餓狼がふたたびよみがえる。
 って、最初から丹波を復活の呼び水にするつもりだったのかよ。
 あなどれない策士・神山が丹波の仲間となった!


 その後を心配されていた寸止め空手の神山徹が復活だ!
 ついでに童貞を卒業していたらしい。
 しかも、デキた奥さんをゲットしている。
 この短期間でなんという偉業を達成しているんだ!
 なんか人間力がハンパじゃない。
 金儲けにすべてをかけていたら、大企業の社長になっていたかも。

 今まで溜めこんできたモテ力(ぢから)が一気に開放されたのだろうか?
 未経験者が童貞すてるだけでも大変そうなのに、良妻まで手にいれている。
 たぶんミチエさんは、道場の関係者で以前から神山さんのことを慕っていたのだろう。
 で、姫川に敗れて傷心の神山さんを励ますうちに……
 まあ、それはともかく、エア金的で不能にならなくて良かったですね。

 そして、丹波は心強い仲間を手に入れたことになる。
 丹波は空手家といっても、ほとんど独学みたいなものだ。
 どちらかというと、泉さんに教わった竹宮流柔術が得意技になっている。
 神山さんの高度な空手技術を吸収すれば、進化した空手家・丹波文七が完成する! ……かも。

 神山さんが目指すのは姫川へのリベンジだろう。
 丹波は松尾象山に挑戦したい。
 そうなると、FAWの巽と手を組む展開がありうる。

 これは巽の考えたシナリオなのだろうか?
 レスラーに丹波を襲わせたのも、会うための口実かもしれない。
 策謀のレベルもまさにグレートだ。
 そして、対する北辰会館の動きはどうなるのか?
 話は北辰会館 vs. FAWへと向かいつつある! と期待する。

 ところで大食漢の丹波なのに、肴を50前の神山さんと同じぐらいしか食べてない。
 神山さんのもてなしがピザじゃなかったのが、丹波にとって不満だったんだろうか。


2009年10月27日(22号)
餓狼伝 Vol.227

 前回、丹波文七が主人公として復活した。
 復ッ活ッ! 丹波文七、復活!
 そして今回は出番がない。
 復活して いきなりお仕事ください状態ですか。
 就ッ活ッ! 丹波文七、就活!

 さて今回は空手北辰会館の館長・松尾象山が主役だ。
 一見すると肥満体だが、実は筋肉のカタマリである。
 ちなみに大相撲最強論だと力士は体脂肪率が意外と低いので、筋肉量もスゴイんですと言っていた。
 関取クラスだと筋肉だけで102.4kgもあるぞ!(格闘技「奥義」の科学
 でも、総合格闘技に参戦した力士の戦績をみると、最強論はイマイチ信用できない。

 話をもどす。
 松尾象山は肉厚をおさめるジャケットに身をつつんでいる。
 スニーカーをはくなど、動きやすさも考えた格好だ。
 これが松尾象山流の喧嘩ファッションらしい。
 オプションに「斑牛(まだらうし)」ことプロレスラーの伊達潮男をそえることで、華やかな男くささを演出している。

 って、なんで松尾象山と伊達がいっしょに歩いているんだ?
 グレート巽の指示だろうか。
 かつて伊達は松尾象山に泣き叫ぶほど痛めつけられている。(5巻 26話)
 恐るべき強さと痛みを身体に刻みつけられて、伊達は松尾象山に敬意をもつようになったのかもしれない。

 北辰会館とFAWが交流戦をする予定がある。
 打ち合わせのために伊達が北辰会館にやってきて、そのまま松尾象山に拉致されたのかも。
 いつも付き人をしている姫川勉が負傷しているので、代役だ。
 北辰会館とは関係ない人なのに……
 ひとりで外出しない松尾象山は、けっこう寂しがりなのか?


 歌舞伎町をウロついていれば喧嘩に出くわすだろう。
 松尾象山はそういってウキウキ気分だ。
 とにかく実戦=喧嘩をやりたくて しょうがないらしい。
 地位も名誉もある人なのに、まるで小学生のような行動だ。

 そして、見事に喧嘩の現場に立ち会う。
 スゴい嗅覚しているな。
 どうも本職(ヤクザ者?)と空手家が争っているようだ。
 二人の空手家が大口を叩いたのを、二人のヤクザ者が聞きとがめて喧嘩になったらしい。
 喧嘩なれしているヤクザ者は、あいてを精神的に追いつめ金的ヒザ蹴りで落とした。
 そこに割ってはいったのが松尾象山である。

「許してやっては下さらんか」
「実はこの2人」
「私の弟子でして…」
「常日頃(つねひごろ)から」
「弱い者イジメだけは禁じてまして…ハイ」


 相手をたきつけるフォローだッ!
 小火にガソリンまいて消化しようとするようなもの。
 そもそも松尾象山の表情が謝罪していない。
 これから楽しい喧嘩がはじまると期待している顔だ。

 侮辱を感じたヤクザ者はいきなり頭突きをしかける。
 先手必勝で攻撃をするのは 喧嘩の方法として正しい判断だ。
 しかし、相手が悪い。
 喧嘩を売るべき相手かどうかを、瞬時に見分ける眼力がコイツにはなかった。

 松尾象山が頭突きで返したッ!
 一発でヤクザ者は失神して倒れる。後頭部から。……死ぬぞ。
 松尾象山は、もうひとりのヤクザ者に、前蹴り!
 アゴ先だけを打ちぬく。
 一流スナイパーの仕事みたいな精密な攻撃だった。
 彼も一発で沈む。頭から。……死ぬぞ。

 二人目の男がたおれるよりはやく、松尾象山は反転して走りだしていた。
 かつて伊達を倒したときと同じだ。
 喧嘩に勝ったあとは、めんどうを避けるため、さっさと逃げる。
 あらかじめ逃走経路も考えて喧嘩をするのが松尾象山だ。

 ふたりのヤクザ者は頭から地面に落ちていた。
 かなりキケンな状態だ。
 そして、松尾象山は肉体そのものが凶器といえる。
 訴えられたら、わりとマズい。
 過剰防衛だ。世間体もある。だから逃げる。
 逃げるんだけど、ここまでして喧嘩がしたかったらしい。

 あやうく取り残されそうになった伊達はあわてて追いかける。
 部下を困らせると、松尾象山はハッピーなんだろうな。
 姫川だと如才なく立ちまわって先に逃げているかもしれない。
 松尾象山は伊達の不器用さを堪能していそうだ。

「伊達よ」
「い〜〜〜い獲物が引っかかったぜ」

「引っかかった…………って」
「終わっちまったじゃないスか アッという間に」

「バーカ」
「追われてるのさ 俺らは」


 今の騒動で、何者かが松尾象山に気がついた!?
 松尾象山を追う命知らずは、バカ者か?
 それとも自信があるのか?
 歌舞伎町で合計年齢100歳くらいのオヤジコンビが大暴れの予感だ。
 次回へつづく。


 丹波が新生ピザ丹波となったところで、松尾象山の話になった。
 いまだに北辰会館とFAWの交流戦をやるのか不明だが、いちおう交流戦をやる方向がみえている。
 ちなみに原作だと交流戦は中止になりました。
 漫画版は平気で原作ブレイクするので、今後も油断できない。

 しばらく試合ばかりだったから、反動で喧嘩ばかりになっているのだろうか。
 丹波文七だけでなく、松尾象山も参加してきた。
 試合にむけて、両陣営のスカウト合戦になっていそうだ。
 つまり、この展開だと松尾象山が追ってきた相手を返り討ちにして、なぜか仲間にしてしまう。と見た。

 追う人間は誰だ?
 既存キャラだと藤巻十三が有力候補だろうか。
 でも、過去に松尾象山に勝負をしかけて負けているから、二度目はないな。
 ムリヤリ覆面をかぶせられて、正体バレバレなんだけど「私は藤巻十三ではない!」とゴマかす藤巻は見たい。
 藤巻は性格的・体質的に潜伏にむいてなさそうなんだよな。

 そろそろ新キャラが登場するかもしれない。
 デビュー戦がVS松尾象山ってのは、あきらかに間違えているのだが、インパクトを出すことができそうだ。
 とりあえず迫力が大事なんですよ。迫力が。
 まあ、松尾象山に喧嘩をうったら、デビュー戦がそのまま引退試合になる可能性高いですけど。

 追跡者の正体が丹波文七というオチはどうか?
 いくらなんでもピザ喰ってパワーアップだけじゃ、勝てない。
 せっかく復調しかけているのに、はやまるな。
 でも、丹波の場合だと地名を読み間違えて迷子になって、知った人にあったから必死で追いかけているという可能性もあるよな。

 松尾象山はとても魅力的な人物だ。
 それだけに、あまり活躍しちゃうと「もう丹波は、いらなくね?」と言われそうだ。
 丹波にかかったピザの魔法は30分でとけてしまうのか?


2009年11月10日(23号)
餓狼伝 Vol.228

 ぶらり路上喧嘩の旅。
 今夜は松尾象山がデンジャラス&ホットな歌舞伎町を中心に散策し、喧嘩をさがします。
 おともはプロレスラーの伊達潮男さん。
 さて、どんなステキな出会いがまっているのでしょうか?

 歌舞伎町でヤクザ二人をたおした松尾象山は走って逃げた。
 自分を狙う人間がクイついていることを知りながら。
 そして、神社に到着する。
 夜の神社は人目をさけるのに絶好のスポットなのか?

 夜の公園で武術家2人。勝負でしょう。バキ18巻 153話
 ならば夜の神社でも勝負なのだろうか?
 さすがの松尾象山でも走ったら息が乱れるようだ。
 しかし、伊達よりもはやく回復している。
 汗も引いた。準備万端だ。

「追われてますか」「まだ……」

「歌舞伎町に足を踏み入れたあたりから」
「ずっとな……」


 松尾象山はつけられているのを知っていたらしい。
 だが、あえて放置してヤクザと喧嘩をした。
 実力を見せつけるアピールだったのだろうか?

 また松尾象山は走って逃げることで相手の体力も試したのだろう。
 歌舞伎町で戦わず神社を選んだのは、じっくり楽しむためだ。
 一撃では終わらない。通報されそうな程度に長引きそうな予感。
 松尾象山が長期戦の可能性も考えるほどの相手ッ!

 伊達は気がつかず、松尾象山だけが追跡者を感知していた。
 それは武術家とスポーツマンの差だろうか。
 グレート巽はプロレスなら武術に勝てると言っていた。(219話
 ダラっとプロレスやっていただけでは、勝てないのだろう。
 まあ、今夜の伊達は松尾象山のムチャっぷりに手一杯だったので周囲をさぐる余裕が無かったのかも。

「そこの人……」
「そろそろ出てきてはどうかね」

「なんか…」
「出るタイミングがワカんなくて…」
「スミマセン」


 出てきたのはボウズ頭の若い男だった。
 巨人というほどではないが、背は大きそうだ。
 両耳がつぶれている。柔道などの寝技経験者とワカる。
 大胸筋は発達し胸のしたに影ができていた。首も太い。
 鍛えられた体と、みょうに軽いしゃべり方がアンバランスな男だ。

 出るタイミングがワカらなかったというのは、闇討ちに慣れていないのだろう。
 まあ、慣れている人もどうかと思うが。
 犯罪的な行為に走りそうな男だが、根はイイやつなのかもしれない。
 ストーキングなら藤巻十三もしょっちゅうやっている!

「用があるのは」
「わたしにかね 伊達 潮にかね」

「はい」
「松尾先生に……」


 押忍! 松尾先生、伊達潮男の男が抜けています。
 梶原年男ならば、男が抜けても「梶原だしな」ですませられるが、伊達はまずいのではないでしょうか?
 まあ、口で言うぶんには違いがワカらないからイイのかも。

 それはともかく、男の目的は松尾象山だった。
 先生と呼ぶので敬意をもっている。
 空手界の巨人・松尾象山と立ち合いたい。
 武をこころざし、腕に覚えがあれば、わきあがる思いだろう。
 ハネっかえりの若手武道家が松尾象山に喧嘩を売る気か?

 喧嘩をしようと街まで出かけたら「こんな男前が」声をかけてくる。
 ちなみに男の顔は石井慧に似た感じ。(参考:Google画像検索
 松尾象山は顔ではなく筋肉で善し悪しを判断しているのだろう。
 姫川に美を感じているとしても、しなやかな筋肉に対してなんだろうな。

 楽しい喧嘩ができそうだと松尾象山は笑顔を見せる。
 だが、間に伊達がはいってきた。
 なぜか伊達が男に立ち合えという。
 ムシされて腹が立ったのだろうか?
 または、松尾象山に万が一のことがあってはならないと体を張るつもりかも。

 試合とはちがい、喧嘩だとなにが起きるかワカらない。
 刃物・スタンガン・催涙スプレーなど武器をつかってくるかも。
 相手の流派もワカらない。
 伊達はあえて捨石になるつもりだろうか?

 たとえば道場破りがきた場合、普通はまず弟子と戦わせる。
 道場主と戦うに値する実力を見せてみろというのが建前だ。
 だが、本音は敵の戦力分析と体力消耗が狙いだったりする。
 板垣先生は身をもって、それを経験した。(参考
 男は伊達の挑戦を拒否する。なぜか?

「あなたではキケンです」

「キマリだな」
「俺がいいっちゃいいワケだ」


 戦う男にとって、許せぬ言葉であった。
 たとえば「アンタじゃムリだオレがかわる」などと言われたら、ダチだろうと回し蹴りを叩き込みたくもなろう。
 伊達はガチで戦えばプロレス随一とも言われたこともある。
 闘士の炎はまだ消えていない!
 ヤラれる覚悟があるから、戦いを選択するのだ。

 侮蔑の言葉を聞いた時点で伊達にゆずる気になったのか、松尾象山はハンドポケットで表情を曇らせている。
 伊達は松尾象山を見もしないで、帽子を投げる。
 ゴングは鳴らされた。
 伊達がつっかける。

 伊達のヒザに男の蹴りがメリこんだ。
 関節へのダメージがあるキケンな蹴り。
 耳がつぶれているけど、男は打撃系なのか?
 この一発で伊達の動きが止まってしまう。

 伊達の手首をとった。
 かつぐ。一本背負い。
 いや、肘関節を逆に極めながら投げる古流の一本背負いだ。
 伊達の右ヒジが折れた。そのまま投げられる。

(受け身を)

 地面は石畳だ。
 頭からおちたら死ぬ。……かも。
 いつも投げ・投げられているプロレスラーの生存本能が受け身に意識を集中させた。
 だが、伊達は木に投げつけられる。
 背を思いっきり叩きつけられた。

 男は伊達を手で押さえる。
 伊達は意識を失っているようだ。
 このまま落ちれば、気絶して弛緩した首に全体重がかかる。
 伊達を助けたということだろうか?
 意外と紳士だ。

 と思ったら、伊達の左胸にヒザを蹴りこむ!
 無防備な状態だから、ダメージが大きい。
 アバラが不吉な音をたてている。
 容赦ない攻撃をするこの男は、いったい何者だ!?
 松尾象山も伊達を心配するのも忘れて見入っている。
 次回へつづく。


 謎の新キャラが登場だ。
 松尾象山に先生をつけるなど腰が低そうで、お茶目な面をもちながら、エゲツナイ戦いをする。
 関節を狙った打撃と投げ。
 古流柔術がベースの武術家だろうか。
 あまり近代総合格闘技とはちがうタイプの技だ。

 コイツの一本背負いは、刃牙で言えば本部以蔵や本部門下のサンボ使い黒川が似た技を使っている。(G刃牙2巻9話、4巻29話)
 関節+打撃・投げという複合技だ。古流によくある技ともいえる。
 竹宮流ならもっと固め技を多用する。なので別の流派なのだろう。

 松尾象山なら流派も見破ることができるかもしれない。
 新勢力が表舞台に立とうと動き出したのだろうか?
 こうなると空手と竹宮流で有名になった丹波文七も危ない。
 丹波はけっこう知名度のある男なのだ。

 ピザの奇跡が二度起きるとはかぎらない。
 丹波よ、周囲に気をつけろ。
 それにしてもトーナメントが終わったのに丹波の出番があまり増えない。
 出番がなさすぎて、カンが鈍ったのだろうか?
「なんか…、出るタイミングがワカんなくて…」
 と丹波も言っていそうだ。


2009年11月24日(01号)
餓狼伝 Vol.229

 謎の襲撃者が伊達潮男を粉砕した。
 伊達潮男はグレート巽よりも強い。そんなふうに考えていた時期が丹波にもありました。(5巻 26話)
 伊達はけっして弱いワケじゃない。
 圧倒した男の実力がスゴいのだ。

 倒れる伊達をみても残心をわすれない。
 心技体すべてが高水準だ。
 仕掛ける攻撃はエゲツないけど、ちょっと紳士っぽい。
 松尾象山が「それまで」をかけると、ちゃんと とまってくれる。
 非情だけどルールは守るらしい。

「左脚――」
「右腕――」
「肋骨と胸骨だが……」
「折れた肋骨が肺に刺さっている」


 松尾象山はさわりもしないで骨折のダメージを判断した。
 さすが、なれていますね。
 いったい何人の骨を折ってきたのやら。

 折れた骨が太い血管や内臓を傷つけている場合は、キケンな状態だ。
 つまり伊達はキケンな状態である。
 デンジャラスライオンならぬ、デンジャラスブルだ。
 残念ながらすぐに救急車をよばなくてはならない。
 せっかく喧嘩できると思ったのに、松尾象山はガッカリだ。

 襲撃者もおなじ思いなのだろう。
 ほそい目をさらにほそくして、こころもちションボリしている。
 これは伊達が手加減できない相手だったということだろうか?
 相手が弱かったら、もっと簡単にあしらって絞め落としたりできるだろう。
 伊達もまだまだ衰えていないようだ。

 また会おうと言い、松尾象山は男に背をむけ伊達にちかづく。
 そのとき、松尾象山はなにかを感じとる。
 油断させといて奇襲をする気か?
 だが、松尾象山は甘くないぞ。

「ひょっとして兄ちゃん」
「アンタ泉さんと…………」

「……………はい…」
「自分がやりました」


 なんだ、襲わないのか。
 やはり紳士だ。
 エリのない服を着ていても紳士力がみなぎっている。
 日曜日に果し合いの約束ができそうなぐらい紳士力がたまっているよ。

 つうか、泉さんをヤった……だとッ!
 武術界のド真ン中に君臨する松尾象山は早耳だ。
 この紳士な襲撃者の容赦ない攻撃に思い当たるものがあるらしい。

 そして、闇討ち紳士はとくに感情をこめずに自分がやったと肯定する。
 会社の業務報告よりも日常的なコトのように。
 コイツはしょっちゅう人を闇討ちしているのだろうか?
 藤巻十三みたいな人間がまだ日本にいたとは。

 ただ強いだけじゃない。
 暴力になれしたしんだ獣臭がただよっている。
 このキケンな犯罪臭はやはり藤巻十三クラスだ。……紳士だけど。
 男に惹かれたのか松尾象山は改めて再会を強く誓うのだった。
 ところで、押忍、はやく伊達さんのために救急車よんであげてください。


 竹宮流の泉宗一郎は入院していた。
 ベッドに横たわったままの姿で丹波文七をむかえる。
 泉さんは、かつて丹波文七と戦ったこともある現役の武術家だ。1巻 3話)

 ちなみに、このとき丹波が着ていた服には柔道衣のようなエリや袖がなかった。
 なので竹宮流の技で使えないものが多く実力を発揮しきれていない。
 と、原作ではあとからフォローが入っていた。
 だから、泉さんはけっこう実力があるのだ。
 相手が柔道衣を着るなら、鞍馬にも勝てるんじゃないかと期待する。

 その隠れた実力者である泉宗一郎はいかに敗北したのか?
 丹波に語りはじめる。

『自宅の庭先――』
『気づいたときには開始(はじ)まっていた………………』


 庭に侵入者がいた。
 そして、泉さんが庭におりたときに開始(はじ)まっている。
 縁側からゲタをつっかけて庭に。
 そして、すぐさまゲタをぬぎすてる。
 おそろしく早い展開だ。

 普段から襲撃にたいする気構えを養っていないと、構えることもなくヤられていただろう。
 対応できているだけで、泉さんが一流の武術家であるコトがわかる。
 泉さんなら振り込め詐欺にダマされることもあるまい。
 娘の冴子にダマされることはあるかもしれないが。
 つうか、この親子関係がどうなっているのか、想像つかなすぎる。

『自宅の庭と背後の家の灯かり』
『地の利はわたしにある』


 太陽を背にすると、まぶしくて相手は自分が良く見えない。
 真剣勝負で使われるテクニックだ。
 古流武術である竹宮流も地の利をいかす技をつたえているのだろう。
 不意討ちによる精神的動揺を、地の利で帳消しにした形だ。

 すると、襲撃者から殺気が消えた。
 挨拶でもするように近づいてくる。
 そして、手をだしてきた。

『正々堂々(フェアプレー)を約束(ちか)う握手』

 泉さんは、そう思ってしまった。
 だが、いきなり男は、泉さんの右目に親指を突っこむ!
 眼窩を引っかかりにして頭をつかみ、腰投げ!
 相手が裸の場合、古流柔術では耳や眼窩、口、鼻、鎖骨などをつかんで投げるという。
 やはり古流の遣い手か?

 泉さんは岩に後頭部を叩きつけられる。
 この時点でじゅうぶんに勝負アリだ。
 だが、男はさらに容赦なく腕十字をかける。
 完全なるトドメかッ!?

『毫(ごう)も迷うことなく 折るッッ

 ギブアップを聞く気がない。
 ブレーキを1mmも踏まず疾走するが如くだ。
 現代の日本にうまれて、ここまで思い切れる精神に育つものなのだろうか?
 まるで戦国の世から迷いでてきたような男だった。
 紳士でありながら野武士だ。

 使ってはならない古流の技がオンパレードだ。
 まるで とある武術の禁じ手目録ですな。
 そのうち噛みつきも出してくるかもしれない。

(なんと迷いのない………… なんと清々しい……)

 やられながらも、泉さんは男の攻撃を賞賛していた。
 だが受けたダメージは大きく、意識は遠のく。
 意識を失った泉さんにたいし、男は正座して礼をする。
 やはり、紳士だ。

 ヒドい攻撃するけど、紳士だよ。
 蛮性をもちながらも基本が紳士なので、あまり恨まれないらしい。
 泉さんも、もう一度会ってみたくなると言っている。

 丹波も外道な攻撃で闇討ちした。(24巻あたり)
 だが、けっこう恨まれているっぽい。
 これは丹波に紳士力がたりないせいかも。
 紳士じゃないから恨まれるのだ。
 丹波の属性はピザだもんな。

 この謎の外道紳士は丹波文七に会うのが目的だった。
 外道ピザvs外道紳士というスペシャルマッチの予感がする。
 つまり、外道をとってしまえば、ピザと紳士の対決だ。
 人はどこまでエレガントかつ紳士にピザを食すことができるのか!?
 次回へつづく。


 と言うわけで、すっかり外道属性になった丹波にライバル出現だ。
 禁じ手なしの武術家としてキャラがかぶっている。
 そして人気で負けそうだぞ。
 丹波はもっと爽やかになるんだ。
 8×4のフローラルティアラ(AA)とか使って、女子高校生っぽいニオイになってしまえ。

 トーナメントでの試合が長くつづいた反動で、しばらく路上の"武"が炸裂しそうだ。
 路上での喧嘩こそ丹波文七のホームグラウンドといえる。
 丹波文七、飛躍の時ッ!
 唯一の不安材料は、丹波が地名を読み間違えて迷子になることぐらいか。
 敵にたどり着けないのも、また"武"なり。


2009年12月8日(25号)
餓狼伝 丹波放浪記まとめ

 餓狼伝は休載なので、北辰会館トーナメント後をふりかえる。
 (過去まとめ:一回戦二回戦三回戦準決勝決勝戦+α

 トーナメントに丹波は参加していなかったので、実質的な主人公デビューと言ってもいいだろう。
 イブニングからの読者は初めて丹波が戦う姿をみるのだ。
 今まで悪い意味で保護されていたからな。
 あんまり保護しすぎると自然で生き抜く力を失っちまうよ。

丹波文七あばれ旅
 Vol.214  丹波文七が、長田に不意打ちを仕掛け勝利する。ズルい!
 Vol.215  傷の癒えぬ片岡輝夫に、丹波文七が襲いかかる。ズルい!
 Vol.216  武器の使用もじさない丹波文七が、片岡を撃破した。ズルい!
 Vol.217  路上でも強い鞍馬彦一に、丹波が武を教えてやる宣言だ!
 Vol.218  鞍馬にあえて武器を持たせることで、丹波は勝利する。ズルい!  
 Vol.219  グレート巽が鞍馬に仕置きをする。丸焼きだ。ヒデぇ!
 Vol.220  手段を選ばぬベテラン・レスラー三人が丹波への刺客だ!
 Vol.221  ベテランのコンビネーションで、丹波ピンチだ。自業自得だ!
 Vol.222  3人目のレスラーも参戦し、丹波は徹底的にボコられる。油断大敵だ!
 Vol.223  ついに丹波はダウンして、起きあがれない。ピザでトドメを刺される。だがッッッ!?  
 Vol.224  ピザを食べた丹波は劇的な復活を遂げる。
 Vol.225  武術家・丹波文七はピザの力を得て逆転勝利した。
 Vol.226  神山さんは丹波に刺激をうけて、ふたたび武への道を歩む。

 丹波文七がトーナメントで活躍した人間を喰う。
 優勝者を狙わず、喧嘩ファイトが弱そうな相手をあらずあたり、抜け目ない。
 好意的に解釈すれば。

 暗黒面というか、悪役サイドに足をふみいれかけた丹波をすくったのは、神山さんだった。(まだ確定してないか?)
 人を救うことで、自分も救われることがあるのだ。
 または、ピザを喰ったから復活したのかもしれない。


新たなる襲撃者(途中)
 Vol.227  松尾象山と伊達潮男はケンカをもとめて歌舞伎町を徘徊する。
 Vol.228  謎の襲撃者があらわれて松尾象山を狙う。間に入った伊達を一蹴した。  
 Vol.229  襲撃者はすでに泉さんを倒していた。狙いは丹波と松尾象山だ。

 丹波が闇討ちを止めはじめたら、別の人間がはじめた。
 松尾象山と丹波を狙う男の正体はッ!?
 躊躇なく目に指を突っこみ、相手の関節を破壊する。
 かなり異質な人生を歩んできた男のようだ。
 丹波文七の武は、この男に通用するのか!?


 餓狼伝にはストーカー気質の人が多い。
 藤巻という逸材が闇のなかに消えたとたん大型新人が現れた。
 そして、狙われるのが また丹波と松尾象山だ。
 丹波はほんとうにストーカーに愛される男ですね。

 新手のストーカーを相手に丹波文七はどう闘うのか?
 やっと、話が丹波を中心に回りはじめたようだ。
 トーナメントがはじまったのが、だいたい7年前だった。
 7年分のおくれを取りもどせるか!?
 って、遅れすぎだ。小学生も入学して卒業しちゃうよ。
 丹波文七、ホントのホントに出番なかった。


2009年12月22日(02号)
餓狼伝 Vol.230

 世界最小の餓狼・堤城平が登場だッ!
 たしかイブニングには初登場ですね。
 167cmという格闘家としては小柄な体格ながら、つねに全力を出しきる戦いをする漢(おとこ)だ。
 ペース配分をしないためトーナメントでの優勝経験はない。だが実力はトップクラスだ。

 寸止め空手の神山さんですら身長は175cmある。
 堤はかなり体格で恵まれていない。
 その差を埋めるために、すさまじい努力をしている。
 堤と闘った丹波は、そう感じていた。

 今日の堤は筋トレをやっているようだ。
 ベンチプレス250キロッ!
 小錦山本山を持ちあげるようなものだ。
 堤は1/4トンを見事にあげてみせる。
 これは腕力だけで小錦を持ちあげたに等しい。

 数回しか持ちあげられない重さを使うのは筋肉の最大出力を高めるトレーニングになる。
 と、大学時代の体育教科で教わりました。
 丹波に敗れた堤はより高い打撃力を得ようとしているのだろうか。
 堤は竹宮流の虎王に倒れた。
 虎王対策を考えるのではなく、攻撃力をあげようとするのが真っ直ぐな堤らしい。

 ベンチプレスを終えた堤は、スクワットに挑もうとする。
 あくなき挑戦をつづける逸材を前にトレーナーもテンション高い。
 ちゃんとトレーナーに指導を受けているのが、堤のマジメな性格を反映している。
 丹波は泉さんに教わる前はずっと独学に近かっただろうし。やっぱり丹波は大雑把な性格なんだろうか。

 堤は250キロのバーベルを置きっぱなしにしている。
 それを左の人差し指一本で持ち上げる男がいた。
 泉さんと伊達を倒した謎の襲撃者だ。
 今度は堤を狙いか。
 丹波はどうしたッ!?

 襲撃者は足払いでバーベルを回転させ、台へ静かに着地させる。
 この男の筋力は堤以上だ。
 そしてあくまで紳士的に襲撃するらしい。

「村瀬豪三と云います」

 村瀬豪三ッ!
 村瀬豪三ッッ!
 村瀬豪三ッッッ!

 ……誰だよッ!?


 ここにきて また大幅原作ブレイクですか?
 予想外のところからオリジナルキャラが出てきた。
 鞍馬彦一につづいて餓狼伝世界に破壊と混乱をもたらしそうだ。
 そして、ついに実力者に襲いかかろうとしている。
 狙いは堤城平だ。

 場所は問わず戦って欲しい。
 と村瀬が言えば、堤はこの場でかかってくれば良いと答える。
 人目が多いなかで堤と村瀬が激突するのか。
 村瀬が人目を気にするタイプなら、ここは引くかもしれないが……
 次回、どうなる!?


 原作の流れに軟着陸すると見せかけて、別の滑走路に落ちてしまった。
 この道はどこへ通じているのだろう?

 つうか、村瀬は前回丹波狙いだと言っていたよね。
 なんで堤を襲うかな。
 丹波は住所不定だから見つけにくいのだろうか?
 レスラー三人組には襲われていたけど。

 で、村瀬豪三とは何者だろうか?
 容赦なく目に指を突っこめるなど、普通ではない育ち方をしている。
 名前はちゃんとした日本人だけど、コレって本名だろうか?
 警察対策として偽名を名乗っているかもしれない。

 村瀬は心技体のすべてが高水準の戦士だ。
 自信からくる余裕が、さわやかな印象を生み出しているのかも。
 やたらと噛みつく丹波とは逆のキャラクターだ。
 でも、丹波はさわやかじゃないけど愛され属性はスゴいからな。
 いまだに松尾象山とグレート巽からの評価は高いし。

 さて、はやくも置いてきぼり感が強くなった丹波は、どう挽回するのだろうか?
 丹波も闇討ちしていたが、どうも内容で負けている気がする。
 250キロのバーベル、丹波は持ちあげられるのだろうか……

 昔の堤は「理由のない戦いはリアルじゃない」と言って丹波の喧嘩を買わなかった。(餓狼伝4巻 21話)
 今は心境の変化があって仕掛けられたら闘うつもりなのだろうか?
 路上でもじゅうぶん強い堤であれば、村瀬を返り討ちにすることも可能だろう。
 でも、そうなると ますます丹波の出番が……
 餓狼伝世界の丹波は彗星みたいな存在になりつつある。
 見ることができたら、ラッキー!


2010年1月26日(04号)
餓狼伝はお休みです

 ファック!
 餓狼伝がのってないッ!
 なんてこったい、1月は餓狼伝ヌキかよ。
 堤城平vs.村瀬豪三というスペシャルマッチを寸止めとは残酷すぎます。

 これは、アレだろうか?
 村瀬豪三によく似ている石井慧が大晦日で敗北したことが原因だろうか?
 脳内で新たなイメージがスパーク!
 裏返ったッ!
 先生、打ち合わせと違うじゃないですかァァ〜!!!(担当)

 でも、板垣先生は『sabra (サブラ) 2010年 02月号』で『石井選手のことは10年スパンで見ていきたいと思っているから。もし、ボロ負けしても、それはそれで総合格闘家・石井慧の面白いオープニングだとさえ思っている。』と言っていた。
 一度の敗北ぐらいで、予定変更になるのだろうか?
 それとも、負けが足りないということなんだろうか?

 もっと激しく負けたほうが盛り上がったのに!
 よし、俺が負けさせてやる。
 命乞いをしながら逆転を狙うんだけど、堤が全然止まってくれないから、無様に沈む感じで。
 いや、折っちゃおうか?
 そういえば、最近つぶしてなかったな。

 ぐらいの火花がスパークして脳を焼いているのではなかろうか?
 俺の怒りがアングリー!
 みたいな気迫を出して素でアシスタントさんたちに心配されちゃう感じ。

 本来なら堤がボロ負けして、丹波が敵討ちをするところだ。
 ここで堤が勝ってしまったら、丹波の今後はどうなるのだろう。
 世界は丹波不要の方向に動いている。
 なんか裏で"組織"が暗躍しているんじゃないかという気がしてきたぞ。
 それとも丹波が活躍できないのはノストラダムスに予言されているのだろうか?


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