今週の範馬刃牙 SON OF OGRE 21話〜30話

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2006年4月27日(22+23号)
第3部 第21話 自由の種類 (677+4回)

 刃牙がみんなと並んで普通にメシを喰っている。
 すっかり飼いならされてしまったようだ。
 オリバを倒すはずが、No.2と闘うハメになって、今では刑務所生活に適応しちゃったようだ。
 どんどんワキ道にそれている。
 そのうちに、所内ではじめた野菜作りに運命を感じて農業に転職するかもしれない。

「サムよ ワルいんだが…」
「席を譲ってもらえんかな」


 サムとか言うから、サムワンかと思ったら別人だった。
 刃牙と同室のジイさんが、サムをどかして刃牙のとなりに座る。
 ダテにセカンと同じ部屋にいるワケではないらしい。
 それなりの権力を持っているようだ。
 刑務所などではお約束である外部調達が特技で、重宝されているのだろうか。

 それにしても刃牙は普通にそのた大勢の中に埋もれちゃっている。
 マイケルのとなりに座って食事の合間に質問するとか、情報収集を考えたらどうか。
 そんなにメシが喰いたいか?

「2(セカン)の方を見な」

 バキ君はよそみをしていたらしい。
 喰うことしか頭にないのか。
 前回のラストは事後の回想だった。
 で、リアルタイムの刃牙はこんな感じのダメ主人公である。

「デカいッスね」

 ジイさんにいわれて、2(セカン)をにらんでいる囚人をみる。
 シンプルにしてチープな感想だ。
 たとえばスゴいモノを見せられて「こいつをどう思う?」と聞かれても「デカいッスね」と平凡に答えそうだ。
 ある意味、強烈な返事かもしれないけど。
 でも、格闘漫画なんだから「あの体、かなりの実力者ですね」「きれいな耳をしている。打撃系だ」とか急につごうよく鋭い観察眼を発揮すればいいのに。

 刃牙はダメ感想だったので、ジイさんがフォローする。
 向かいの男は大相撲出身で総合格闘技の元王者だ。
 路上でケンカして相手を殺め、ブラックペンタゴンへやってきた。

 あいかわらず大相撲出身といえば、問答無用で強者である。
 彼の名前は出てこない。大相撲+総合格闘技の元王者なので、仮にリキシマンと呼ぶ。
 名前の元ネタはアニメのキン肉マンだ(参考12)。
 ウルフマンだと、千代の富士に怒られるからTVで放送できない。

 表の格闘技会では有名そうなリキシマンだ。しかし、刃牙は知らないらしい。
 刃牙の意識は目前のポークビーンズに集中しちゃっているのだろうか。
 さすがに妄想では栄養にならないし。

 今回もミスター2(セカン)の名前は出てこない。
 しかたがないので、今回も本部+アライ(荒井)で本井さんとする。
 名前を呼んではいけない理由でもあるんでしょうか。たとえば、苗字がハンマーだとか。
 オリバはトップでもボスでもなく「Mr.オリバ」だから、ブラックペンタゴンのルールってワケでも無さそうだ。


「アンタが2(セカン)と呼ばれるなら とりあえず俺は1st(ファースト)とでも名乗るか」

 はやくもリキシマンが本井(仮)を挑発する。
 刃牙もこれぐらいの積極性を見せて欲しい。
 肉にたいする異常なまでの積極性と執着心はあるようだが。

 刃牙とリキシマンには共通点がある。
 日本人(たぶんリキシマンも日本人)であることと、周囲の空気を読まないところだ。
 本井にたいしていきがるだけではなく、知らずにオリバまで挑発している。
 無知とはいえ、命知らずな男だ。
 もっと空気を読め。刃牙も空気を読め。

「周囲(まわり)の反応は冷たいッスね」

 リキシマンがスプーンを引き裂くパフォーマンスを見せるが、周囲はもくもくとメシを喰う。
 完全に空気あつかいされている。
 本井とオリバを同時にバカにしただけに、かかわりたくない。
 トップの二人を怒らせると、たぶん今後の人生と性格が激変するようなヒドい目にあわされる。

 本井は負けじとスプーンを振ってみせる。
 一瞬手元が見えなくなるような、高速の動きだ。
 手を静止させるとスプーンがグニャグニャに曲がっていた。
 なんという高速の震動だ。
 でも、闘争に大きな意味あるのか?


 リキシマンがテーブルをひっくり返し料理を本井へぶっかける。戦闘開始だ。
 止めに入る看守を本井が片手で制した。
 周囲の囚人たちは無言で食事をつづける。
 本井がなにをやるか、周囲はすでに知っているのだ。

「手品(マジック)じゃなく…」
「力で乗り切るしかねェなミスター2(セカン)


 あいかわらず空気の読めないリキシマンであった。
 調子にのってボディスラムを連発して自滅するタイプだ。
 そういえば高名なマジシャンであるデビッド・カッパーフィールドが手品で強盗を乗り切ったそうです。
 今日のニュースだけに、とんでもないシンクロニシティーかもしれない。

 リキシマンは本井に勝って、すこしでも自由になりたかった。
 好きなメニューを喰いたいのだ。デザートにはプリンをつけて欲しいのだろう。
 あと、清掃箱で立ったまま寝るのもチャレンジしてみたい。
 そんな自由への渇望があるらしい。

「君から自由を奪う」

 相手のもっとも欲するものを奪う。
 恐るべき残虐な制裁だ。
 本井は、早業で看守の拳銃を奪いとり、リキシマンにさしだす。
 ちなみに看守も大事なものをうばわれた。
 本井は職業・怪盗さんなのか?

「急所に当てて…………」
「さァ」


 本井はリキシマンに銃をにぎらせ、自分の額に銃口を押しつける。
 すこし指に力を入れれば、本井の頭がフッ飛ぶ。
 緊迫した状況だが、周囲の囚人たちは見向きもしないで食事を続けている。
 もしかして、見なれた風景なのか?

「俺が撃てねェとでも」

 リキシマンの指に力が入る。
「キュ…」と筋肉がかすかに音を鳴らした瞬間、リキシマンの股間に電撃が走った!
 打撃!? どこから!?
 本井の右足が消えている。
 金的蹴りか!!?
 まさに電光石火の早業だった。攻撃はオーソドックス(刃牙世界では)な金的蹴りだが、速さが段違いだ。

 スプーンを曲げ、看守の銃を抜きとることを可能にしたのも、超スピード故にだ。
 オリバが超筋力によるパワーが武器ならば、本井は電光石火のスピードが武器なのだろう。
 となると、テクニックが命のナンバー3がいて、トリッキーでCOOLな人もいるのかもしれない。

 ところで、上で指の筋肉が鳴る音と書いたが、あくまで推測だ。
 映画『レモ 第一の挑戦』には、指の筋肉が鳴る音で銃弾をよける技術が出てくる。
 もしかすると、同一の技なのかもしれない。
 ちなみに、『レモ』はけっこう面白い映画なのだが、第二の挑戦は作られなかった。


「カワイそうになァ………」
「引き金を引く以外 何一つ自由がない」
「2(セカン)の思うツボじゃ……」


 リキシマンは嘔吐しながら のたうちまわるのであった。
 空気を読まなかった男の末路である。
 って、ことは刃牙もリキシマンのようになるのか?

 2(セカン)は相手に銃を押しつけて攻撃の選択肢を奪った。
 銃をすてるとか、そういう選択もあっただろうが、けっきょく銃に依存した行動になってしまう。
「戦略とは、われにとって、できるかぎり有利な時と場所での戦闘を整え、敵にとって不利な状況において、敵に戦闘を強要することである」(『The Art of Modern Warfare』Hermann Foertsch, Oskar Piest:訳は松村劭『名将たちの戦争学』)
 相手に武器を与えているようで、自由をうばって弱めているのだ。

 映画『七人の侍』でも「よい城にはきっと隙がひとつある」と言っている。
 弱点でもうまく利用すれば武器になるのだ。
 戦いにおける駆け引きをよく知っているので、2(セカン)はスピードと戦略の人らしい。


 刃牙も2(セカン)の恐ろしさはじゅうぶんに理解したはずだ。
 そろそろ飯を喰うのをやめて闘いに参加してはどうか?
 でないとアイアン・マイケルのような目にあう。
 って、マイケルがいない。
 私語をしたから食事抜きなんでしょうか。
 やっぱり、トップの二人にかかわると不幸になる。


 かつてはシコルスキーにパンツの自由を与えなかった刃牙だが、食事の自由で満足しているようだ。
 次回こそ範馬刃牙というタイトルに恥じぬ活躍を見せて欲しい。
 まあ、現状の驚き役としての刃牙も好きなんですが。
by とら


2006年5月4日
チャンピオンはお休みです

 最近書き忘れが多いので、ちょっと補足します。

20話
 看守の拳銃をいじくりまくるミスター2がポイントだ。
 周囲の武器に変更があったので、確認したくなったのだろう。
 また、この時点からミスター2のスピードの速さが目立っている。

 でも、食べる速度は普通だ。
 立って寝るのに、食べるときは座るのか。
 日本の立ち食いソバに対しては、根本的に相性が悪いかもしれない。

 その他に考えうる、戦士らしい行為はなんだろう?
 宮本武蔵は、セックスのとき女性を上にしていざと言うとき楯にするという話が『板垣恵介の格闘士烈伝』にある。
 もっともミスター2は、さらにその先を行ってセックスをしないと言う境地に至ったのかもしれない。
 どちらにしても、清掃箱の中で寝ているうちは、できんな。

21話
 ミスター2の口グセは「死ぬにはいい日だ」らしい。
 掲示板でいただいた情報ですが、「死ぬにはいい日だ」ってのはネイティブ・アメリカンの言葉らしい。
 どうも同名の本があるようです。
  (関連:本「今日は、死ぬにはいい日だ。」、はてな - うってつけの日検索 It's a good day to die

 まあ、ミスター2の場合は戦士の心得としての「死ぬにはいい日だ」なのだろう。
 自分はやるだけの事をしたので悔いは無い。
 日本だと『葉隠』の思想にちかい。(参考:Wikipedia
 普段からいつでも死ぬ覚悟をしていれば、大事のさいでも武士の面目を失いことなく働けるという思想だ。
 この辺は小説の「死ぬことと見つけたり」を読むと、なんとなくワカった気になります。

 とにかく、ミスター2は戦士としていつでも死ぬ覚悟をしているのかもしれない。
 さて、我らが主人公である刃牙はどれぐらいの覚悟をしているのだろうか。
 とりあえず、日米関係を決定的にダメにするぐらいの覚悟はある。
 ミスター2の覚悟は個人レベルだが、刃牙の覚悟は国家レベルだ。
 いや、まて。勝手に国を巻きこむな。

 しかし、国家の指導者を拉致監禁をしておきながら友情(少なくとも信頼関係)を結んじゃうあたりが、範馬の血筋か。
 闘いが終われば、わだかまりも憎しみも消え友情のようなものが芽生える。
 刃牙のモデルである平直行さんも著書で書いている。
 最終的にはミスター2とも友情を結びそうだ。
 郭春成の例を考えると、一分ぐらいは闘わないと友情が芽生えないぞ!
 5/3に行われた「山本“KID”徳郁 vs. 宮田和幸」も時間が足りないんだろうな。
by とら


2006年5月11日(24号)
第3部 第22話 挑戦権 (678+4回)

 ミスター2(セカン)の金的蹴りが炸裂だ!
 股間を蹴られて悶絶するなんて、刃牙世界じゃ下っ端とシコルと刃牙ぐらいしかいない。
 その程度の器でNo.2を狙おうなんて、十年早い。
 まずはコッカケからだ。腹筋の力で引きあげろ。

「拳法か……?」

「イヤ…」
「2は流儀を持たない」


 ダメな刃牙の予想は正解にかすりもしなかった。
 ジイさんにあっさり否定される。
 だいたい、金玉蹴り上げているだけだ。
 どのへんに拳法のはいる余地があるのだろうか。

「おおっ、あの股間の蹴り上げかたは!」
「知っておるのか本部ッ!?」

 などという感じに各流派で蹴りあげるフォームに違いがあるのかもしれない。
 Amazonで調べてみたら「金蹴り姉妹〜厳格な父の金玉を破壊し、家を飛び出す2人の姉妹の物語〜」というものがあった(注:18禁)
 世の性癖には金的打撃系と言うものがあるらしい。
 当サイトもそれっぽい検索にときどき引っかかっています。金玉率高いから。

 ちなみに、今回刃牙が登場するのはココだけである。
 その数 実に1コマ!!!

 うわぁあああああ、ダメだ。この主人公は、もうダメだ。
 しかし、地獄からはいあがるのがヒーローである。
 刃牙の次回にご期待ください! 長い間、応援ありがとう!


 元力士(以下、リキシマン)はそれでも立ち上がった。
 必殺の金的を喰らっても立ちあがれた人間は少ない。
 リキシマンはかなり打たれ強いようだ。

 もしかすると、ミスター2(以下、本井)が軽く蹴ったのかもしれない。
 金的を打ちぬくのに全力はいらない。
 空気の読めない日本人をこらしめるため軽く蹴っただけなのだろう。
 とりあえず陰嚢もやぶれていないし、過剰な攻撃ではなかったようだ。
 素っ裸のシコルにパンツの着用を許さず、やぶれて血しぶくほどに蹴りこんだ刃牙とは大違いである。
 本井さん 股間打撃が紳士的。

「なにを使いやがった」

 リキシマンがうなる。
 へっぽこ野郎が、ナニを言いだすか。
 俺が素手で負けるわけがない。 → でも負けた。 → 負けたのは相手が卑怯なことをしたからだ。 → たぶん、なにか武器を使った。 → なにを使いやがった。
 たぶん、リキシマンの脳内ではこういう図式が組みあがっているにちがいない。

 勇次郎を倒す。 → でも勝てない。 → まずはオリバ。 → でも勝てない。 → まずは2。 → なんか入りづらい。
 図式が刃牙と似ている。

 リキシマンの脳内事情をしらない本井は、どう答えていいのかワカらない。
 ちょっと悩む。かなり悩む。
 前回かぶったソースをぬぐいもしないで、ひたすら悩む。
 だれかタオルを渡してくれればいいのに。No.2の自由はいがいと少ないようだ。

「スモウ…?」

「キサマ…」
「俺に相撲で勝った気か」


 今、超音速で論点がブっとんでズレました。
 なにを使ったのかと問われて、本井はふざけたのか、挑発しているかで「相撲」と答えたのだろう。
 というか、ナニを使ったと聞かれてもこまる。あえて言うなら「フェイント」か?
 回答もフェイントだ。思いっきりはぐらかした答えをしている。

 でも、リキシマンが元力士だと知っているのはさすがだ。
 あらかじめ情報を入手していたのだろう。
 もしくは、優れた洞察力で相手の戦力を見抜いたのだ。
 前回「デカいッスね」と脳をつかわない回答をした刃牙とは ずいぶんちがう。

 で、リキシマンはぶちきれる。
 前回の勝負がなんで相撲勝負だと思えるのだろう。脳回路があきらかにおかしい。
 別に だれも相撲をバカにしているわけではないのに、なぜそこまで怒るか。
 まるで竹宮流をバカにされた藤巻十三なみの怒りっぷりだ。
 力士を辞めても相撲をすてたり嫌いになったりしたワケじゃないのだ。

「君が望むなら相撲で勝負してもいい」

 本井がさらなる挑発をする。
 相手の土俵にあがったフリをして、ひどい事をする作戦だろう。
 かなり論点がズレちゃったので忘れかけているけど、勝負ってのはNo.2の座をかけているのか?
 オリバへの挑戦権 すなわちNo.2の座をかけて、異色の相撲バトルがはじまろうとしている。

「看守くん」
「彼と食後の運動をしたい 体育館を借りるよ」


 リキシマンの返事も聞かずにかってに決めてしまう本井であった。
 看守たちは視線をあわせず、知らんぷりだ。
 本井は看守たちの態度を「正式な許可」と自己流解釈した。
 ナニからナニまで、オレ流をつらぬいている!
 ッッッ!! やはり、No.2になるとワガママしほうだいなのか。

 さりげなく喰っていたオムライスも実は地鶏卵のオムライスかもしれない。
 いや、ダチョウかも。
 ウズラの卵をひたすら集めた力技の一品だったりして。
 とにかく、すごいワガママな材料でできているにちがいない。


 で、体育館にやってきました。
 かなり さっぱりしているので途中で風呂に寄ったのだろう。
 ここでもワガママ発揮だ。
 リキシマンもきっと風呂につき合わされたのだろう。
 食堂のシーンから二時間後ぐらいだろうか。

「大相撲アリゾナ場所」
「DOSKOI!」


 バスケ用の円を土俵に見立てて、本井が相撲をいどむ。
 せまい土俵で立会いの作法もあったもんじゃない。
 一方的に「DOSKOI!」とはじめてしまう。俺イズム爆発だ。
 発音をちょっと間違えているのは、油断させるためだろうか。

 本井はようしゃなく組みつく。
 相撲というよりは、胴タックルを決めた状態だ。
 かなり有利なポジションといえる。

 だが、リキシマンも負けていない。
 いや、負けられない。相撲は最後の砦なのだ。
 勝てば、俺も食後のデザートが一品増える!
 リキシマンは本井のズボンの腰部分をつかんで、マワシがわりにして持ちあげようとする。
 だが、動かない!

 本井は力をいれずに、リキシマンに体をあずけているように見える。
 しかし、まったく動かない。
 本井の手は空中にぶらりと浮いているだけで、どこもつかんでいない。
 でも、動かない。

「動かせるハズがない」
「地面に立っているだけの君らではね」


 本井が不敵かつ意味不明なことを言う。
 ならば本井は、普通じゃない方法で地面に立っているのか?
 見たかぎりだと、本井はヒザを曲げて腰を落とした構えだ。
 逆に、リキシマンは上体がそっている。
 見えないところで、本井はリキシマンのバランスを崩して、力が出ないようにしているのだろうか?

 相手にとって有利で得意な状態にすることで、相手の行動を限定する。自由をうばう。
 今回も本井の戦術が爆発しているようだ。
 力士なら反射的にマワシをとって投げをうってしまう。それが力士DNAなのだ(注:DNAは「ダイナミック」の略)。
 そして、投げが失敗してスキだらけになってしまう。

 パン

 キケン度の高い技―――― 鼓膜打ちだッ!
 耳に叩きつけた一撃で、リキシマンの鼓膜が破れた。
 だが、本井の技はまだ終わらない。
 髪をよりあわせて抜きとる。棒状にまとめた髪をリキシマンの耳に突っこむ。
 鼓膜がないため髪は内耳にまで侵入し、三半規管や蝸牛にからみついた。

 髪を一気に引き抜く。
 からみついた髪によって、リキシマンの三半規管ふきんはズタズタに切り裂かれる。
 三半規管は体の平衡感覚をつかさどる器官だ。(参考:耳 - Wikipedia
 リキシマンはいきなり無重力空間に放り出されたような状態になった。
 もう、ただ立つこともできない。

「勝負あり」

 バランス感覚を失い倒れてしまったリキシマンを見おろし、本井が勝利宣言をする。
 まさに完全勝利だ。
 でも、相撲勝負で耳を攻撃するのは反則っぽい。
 相撲の反則には「両耳を同時に両掌で張る」というものがある。
 片方を張るだけなら、ギリギリ セーフだろうか。

 なんにしても、リキシマンは今度こそ再起不能っぽい。
 そして、刃牙はナニをやってるのだろうか。
 本井が喰わなかったぶんの豚肉にガッついていたりして。
 なんか、今の刃牙では本井に勝てる気が、まるでしない。

 ミスター2の戦闘スタイルは、クール&トリッキーな奇策を使用するようだ。
 刃牙は基本的に頭が悪い。
 オマケに攻撃を最低一度は喰らわないと気がすまないヤッカイな性癖も持っている。
 金的ぐらいなら耐えられるが、必殺・耳掃除を喰らったりするとヤバいだろう。
 刃牙は、ミスター2の攻撃を防ぐことができるのか?

 まあ、守りの心配より、ちゃんと戦ってもらえるかどうかを心配したほうがいい。
 イロイロと理由をつけて逃げられる予感がする。
 刃牙も刃牙で、相手の言うことをおとなしく聞いちゃうし。
 服役してからの刃牙は、ドラクエシリーズの主人公なみに主体性がない。
by とら


2006年5月18日(25号)
第3部 第23話 2(セカン) (679+4回)

「相撲で俺が負けた……!!?」

 驚くところ、そこかよッ!?
 三半規管などを破壊されて平衡感覚を失っているのだ。
 でも、相撲のほうが大切なのか?
 SEXより、食事より、水より、酸素よりも、相撲を優先する。
 体は相撲で出来ている。血潮は塩で心は土俵。幾多の場所を越えて不敗。

 なんと言うか、相撲という言葉にダマされたお人よしだ。
 相撲がらみの詐欺にコロっとダマされそうだ。
 よりきり詐欺とか、うっちゃり詐欺には気をつけろ。

 それとも、元力士はなんでも相撲で考える人なんでしょうか?
 大食い対決 → 大食いといえば、ちゃんこ → ちゃんこといえば相撲 → 相撲対決 → 相撲で俺が負けた……!!?
 遅刻する → 相撲は立合いが命 → 遅刻は相撲での敗北 → 相撲で俺が負けた……!!?
 エロ同人誌を描いてみる → 裸が力士になってしまう → 相撲で俺が負けた……!!?
 刃牙系ファンサイトを開く → 訪問者がほとんど男 → 相撲で俺が負けた……!!?
 今週の「ゾクセイ」は100cmのIカップ → 相撲で俺が負けた……!!?

 すべての道がローマに通じるように、元力士の嗜好は相撲につながるのであろう。
 秋葉原にはスク水相撲カフェがあると確信しているにちがいない。
 『ゲーム脳の恐怖』で一発当てた森昭雄が、現在『相撲脳の恐怖』を構想中という未確認情報もある。
 おそらくノストラダムスも相撲について言及していることでしょう。宇宙人も中身は力士です。


 三半規管を(相撲で?)破壊され、元力士は立つこともできなくなった。
 ミスター2はふり返らずに去る。
 去るついでにエディー・マーフィー似の看守からタバコを一本もらっていく。
 ちょっとセコいミスター2であった。

「こんな所でたった1人」
「なにをしている」


 ミスター2がいなくなると急に強気になる看守たちだった。
 元力士の後頭部に銃口を押しつけおどしている。
 体育館は「警告ナシ」で発砲できる危険地帯になっていた。
 いわば、末堂にとっての遊園地に相当する死地だ。
 いつ姿が見えなくなっても おかしくない。

「本来なら警告なしで即発砲だが」
「新入りのオマエには大目に見て―――――」
「一言声をかけた」

 ドン

 撃ちやがったッッッ!!
 本当に声をかけただけッ!
 ダウンした曙のように、元力士が血しぶきをあげて転がる。

 どこに当たったのだろうか。死んだのだろうか?
 いくらアメリカでも射殺したらイロイロと手続きがあるだろうし、射殺ってことはないと思いたい。
 まあ、生きていたところで元力士に活躍の場はないんだけど。

 ミスター2は、警告なしで発砲できる場所を戦場に選んだのだろう。
 勝つのはとうぜんだが、恨まれると厄介だ。
 セコイ策略で万が一の損害を受けたくない。
 あとくされがないように、根源から断ちきる。
 ミスター2が黒いことを考えていた可能性は否定できない。
 相撲で元力士が負けた……!!?


 相撲でミスター2が勝った間に囚人たちの食事は終了していた。
 風呂上りのようにホクホクと湯気(砂ボコリ?)をたててミスター2が帰ってくる。
 タバコは吸いおわっていた。やはり、風呂によってフルーツ牛乳を一杯やってきたのだろう。
 なんとなく、ミスター2って風呂好きという気がする。
 みんなが働いている時間を狙って、ゆっくりと風呂に入るのが趣味と見た。

「マズい飯だったろう」

 目の前にあらわれた刃牙をみてミスター2が言う。
 暗に「オマエの飯はマズいが、オレの飯は特別性だから美味い」と言っている気がする。
 犬の首輪を定期的に絞めつけて、自分の優位性を教えているようだ。
 しかし、刃牙は与えられた肉はおいしく いただく人だった。食事に不満はない。
 むしろ、ミスター2への挑戦を忘れている。

「2(セカン)とは二代目」
「"繋ぎ止められぬ男(ミスターアンチェイン)"…………の二代目」


 いきなり「2(セカン)という呼び名の由来があきらかになる。
 二番目の男ではなく、二代目の男だったのだ。
 とりあえず、今回は2を二代目と呼ぶことにする。
 二代目と呼ぶことで 朝風呂が好きな遊び人という雰囲気がでた。

 初代アンチェインであるオリバが引退していないのに勝手に二代目を名乗るとはどういうことか?
 刃牙が問いつめる。
 加勢大周がいるのに新加勢大周とはどういうことか。みたいなノリである。(参考:加勢大周新加勢大周
 新加勢大周なんて、古すぎて知らないですか?
 なら、勝手に海王を名乗っていたら中国から海王と海皇が10人ぐらい押しかけくるような状態と思ってください。

「ミスターオリバの時代は終わりを告げた」
「皆もそれを望んでいる」


 アンタの時代は終わった、これからはオレたちの時代だ。
 一度は上司に向かっていってみたいセリフです。
 むしろ新興刃牙サイトに 私が言われそうなセリフかもしれない。
 どっちかと言うと新興シグルイサイトに 私が言われそうで、危機感あります。

 超贅沢な暮らしをしているオリバさんはけっこう恨みをかっているらしい。
 壁にオリバの素敵イラストを描かされるハメになったりと、囚人たちにも実害が出ている。
 オリバの権力を保障しているのは腕力であり暴力だった。
 力で他者を屈服させワガママを通す。オリバ流のアンチェインだ。

 二代目も暴力で他者を支配しているようにみえる。
 しかし、看守や他の囚人たちの協力があるのだろう。
 元力士への仕打ちも、囚人たちのためとの言い訳を用意していたのだ。
 みんなが楽しみにしている食事を妨害したため、制裁をくわえた。そういえば、囚人たちも納得するかもしれない。
 二代目は刑務所の新秩序を作りあげようとしている。
 刑務所内で革命を起こすつもりだろうか。

 しかし、一人だけオムレツを喰った二代目が許せないのか、刃牙はきびしい表情のままだ。
 囚人全員が二代目を支持しているかどうかもワカらない。
 なにしろ、アイアン・マイケルは二代目のせいで殴られた
 二代目に恨みをもつ人間も 少なからずいるであろう。

「喋り過ぎるなァ君は」

 二代目の言葉が合図であったかのように、看守が警棒を刃牙に振りおろした。
 私語は禁止なのだ。
 しかし刃牙は仮にも範馬の男である。
 警棒をあっさりとうばっていた。
 飽食の中で眠っていた豚がついに目覚めたかッ!?

「この警棒…………」
「グニャグニャだァ………」


 二代目の見せたスプーン曲げを、刃牙が警棒にやってみせた。
 高速の震動ならキサマに負けん。
 刃牙の自信がにじみでている。
 警棒の長さを見誤って、自分の頭に当てていたら見事なお笑い芸になって、さらにポイント高かった。

 だが、二代目ほど自由な立場に刃牙はいない。
 警棒をうばったことで、銃を抜いた警官四人に包囲されるのだった。
 刃牙は同時に四人を倒せるので、この場を切り抜けることができる。
 しかし、刃牙はナニを思うのか素直に捕まるのだった。

 看守たちにかこまれる刃牙を見て、二代目はニンマリとわらう。
 ちょっとダメキャラ臭のする笑いかただ。
 …………梶原のニオイがする。
 二代目の株がちょっと下がった。


 刃牙は独房へたたきこまれる。懲罰といえば独房だ。
 しかも、刃牙にはオマケつきだ。
 左手を上から、右手を下から回して背中でつなげる。
 さらに両手の親指同士を金属の道具で固定した。

 SM完成!

 いや、SMではないのだが、肉体的 精神的に苦痛をあたえる状態だ。
 私なら二分で泣きをいれる自信がある。
 ウルトラマンよりも、カップラーメンよりも早くッ!
 おそらく、この状態が狙いだったのだろう。
 なにしろ刃牙はマゾだから痛いぐらいがちょうどイイのだ。

「飯だッッ」

 刃牙が拘束を楽しんでいるところへ、食事がくる。
 運んできたのは、二代目と同室のジイさんであった。
 イロイロと刃牙に説明と忠告をしてくれる親切なジイさんである。
 飯を喰いながら説明をしてくれるのだろう。

 刃牙は拘束されているので、飯を喰うなら「はい、ア〜〜〜ンして」というたまらぬ展開である。
 正直、どっちかが美少女ならかなりたまらん。
 梢江だったら、べつの意味でたまらん。
 あ、ところでアイアン・マイケルは無事なのか?


 アオリ文句から判断すると、ジイさんは刃牙に二代目のヒミツを教えてくれるようだ。
「あのバンダナの下、実は若ハゲなんじゃよ。アンチェインに適合する人間は、みな禿げる
「適合者が全員巨乳のウィッチブレイドじゃなんだから」
 ちなみにアンチェインになると放送地域の少ないアニメも見ることができるのだ。そして、ハゲる。
 やはり、バンダナの下が気になるのだ。
 餓狼伝もバンダナの下が気になる。


 もし、二代目が革命を起こす気なら刃牙の戦力は魅力的だろう。
 刃牙を仲間にすることができれば、初代アンチェイン・オリバを倒すことができるかもしれない。
 二代目はイロイロと策略を考えていそうだ。
 考えるのが苦手な刃牙にとって、二代目は相性が悪い。
 刃牙は最大のピンチをむかえているのかもしれない。
by とら


2006年5月25日(26号)
第3部 第24話 掟 (680+4回)

 刃牙はとりあえず飯を喰う。
 今まで八割ぐらい冗談で 刃牙は喰うことしか頭にないと書いてきた。
 でも、今回の出だしをみて、九割ぐらい本気で思った。刃牙は飯を喰うことしか頭にない。

 なんだ、その永遠の育ちざかり+食べざかりッぷりは。
 エターナル・ショクヨク野郎がッ!(注:とらは英語が苦手です)
 世のダイエットしている人すべてと、減量しているボクサーすべてにあやまれ。


 横からのアングルで、刃牙は汗だくになりながらパンにかぶりつく。
 見ようと思えば、ちがうモノをくわえているようにも見える。
 ごく一部にいる女性ファン向けのサービスカットだろうか。
 ちなみに、美少女系の漫画だと意味もなくバナナやアイスキャンディーをくわえる現象が発生する。
 しかし、なんでそんなに汗だくなのかワカりません。
 こういうプレイに興奮しているのか?

 予想通りジイさんに喰わせてもらっている。
 刃牙かジイさんのどちらか(あるいは両方)が美少女なら……というのは前回書いたので省略する。
 いや、両方美少女ってのは書いてなかったな。
 フッ……
 一週間で俺も成長したもんだ。


 パンとカップスープのみで、手を使わなくても食べることができる。
 ―――― 嘘だッ!
 カップスープは飲めないだろ。
 カップに入ったアツアツのスープを飲もうとすると、かなり確実にこぼれる。
 若手芸人のおこなう体をはった仕事みたいな 地獄絵図になるぞ。

 刃牙はジイさんが来てくれたので、存分にカップスープを堪能することができたのだった。
 一言も口をきかずに食べることに専念している。
 カップスープとパンを半分食べたところで、やっと刃牙は話を聞く気になったらしい。
 ミスター2(セカン)は何者かと問う。

 初登場した19話から、五話もすぎている。
 完全に時機をのがした質問だ。
 飯を喰わせてもらったから、義理で質問したんじゃないかとうたがってしまう。
 今の刃牙にとって、飯以上に大切なものなど 無い。たぶん。

「本名ジュン・ゲバル」
「日系3世 21歳―――――」


 若ッ!
 オマケに日系人かよ。
 って、や〜〜〜ー…っと本名でた。
 末堂が復活する確率よりも、2の本名が出る確率のほうが低いんじゃないかと思っていたぐらいだ。
 そして、ジュン・ゲバルは南米の離島―― 人口二万人にも満たない小さな国の大統領だった。

「漢字はワカらぬがたしかこんな…」

「純粋のジュン…」


 ヤマジュンこと「山川純一」のジュン…。(参考:まとめWikipediaAmazon
 ウホッ! いい革命家…
 19話の感想でも書いたが、モデルはキューバのゲリラ指導者・革命家であるチェ・ゲバラのようだ。

「英語ではJ(ジェイ)・ゲバルで通っている」

 なんか、語感がJ・ガイルに似ている。
 両方とも右手ではないが、髪の毛を硬くすることのできる能力を持っていそうだ。
 通称はゲバジュンでいいんだろうか?
 やはり、かっこよくJ・ゲバルにしておこう。


 若き日の ゲバジュン J・ゲバルは海賊だった。
 ……って、海賊かよ!
 「フルアヘッド! ココ」、「ONE PIECE」、「キャプテンハーロック」みたいな、粋な男たちのロマン炸裂なのか!?
 と、思ったら普通に客船に乗りこんで金品強奪していたのだった。

 実際の海賊ってのは、あまりロマンとか関係ない武装集団だったりする(参考:Wikipedia
 日本には大規模な盗賊団や山賊、海賊がいないのであまり実感がわかない。私もイマイチワカらん。
 いちいち乗りこんで金品強奪していると手間のわりに儲からない。
 だから金持ちを誘拐して身代金を要求するのも海賊のお仕事だ。

 さらにレベルアップすると、誘拐して欲しくない金持ちが自分から金を出してくる。
 こうなれば、通行料で暮らしていけるようになるらしい。
 情報元は「中国の大盗賊」ですが、海も陸もやることは大体同じだろう。


「17歳―――― ゲバルに転機が訪れた」
「島の独立を目指したのだ」


 現在の刃牙と同年代だ。
 まだ少年といっていい。そんな少年が革命を目指したらしい。
 転機といっているし、何者かがバックについたのだろう。

 ふたたび「中国の大盗賊」の力を借りる。
『政治や社会の不公平・不合理が見えるには、自己の中に公正で合理的なしくみのイメージがおぼろげながらでもなければダメで、それには知的な基礎や訓練が要る。』
『「世の中まちがっている!」と言い出すのは、たいていいつでも知識人である。』

 食べたことのない料理の味を言うことができないように、知らない事に怒ることは不可能なのだ。
 誰かがJ・ゲバルに、オマエたちは不遇なのだと知恵をつけたのだろう。
 もしかすると、オリバなのかもしれない。

「幼少期から祖父に武術の英才教育を受けていたゲバルは」
「手下にそれを伝授し始める」


 武器をすて素手で闘うと決めたのだ。
 熾烈な訓練をおこない、徒手 → 刃物 → 銃器 → 爆薬とあらゆる相手に素手で勝利する方法をあみだす。
 ………ちょっと、ヤリすぎなんじゃ……。
 どこの零式防衛術(by 覚悟のススメ)ですか。布(?)で対爆薬防御とか、ムチャすぎでしょう。

 「板垣恵介の激闘達人烈伝」でのエピソードだ。
 空手道拳道会総帥の中村日出夫先生は板垣先生に質問した。
「戦場で銃を持った相手に、素手でどう立ち向かいますか?」
「どうにもできません」
「それは拳が弱いんだッ!」
 『固まった。ビビった。どうしていいかわからなくて、「すみません」と俺は謝ってしまっていた。それしかできないだろ。』

 第二次大戦中、武専で国を守るための訓練をつづけてきた中村先生には本物の覚悟があるらしい。
 拳=肉体・精神・全存在なのだ。
 極限まで鍛えぬき、覚悟を決めれば銃であろうと恐れることはない。と言うことなのだろう。

 素手の戦いにこだわるJ・ゲバルには、必勝の作戦があった。
 作戦の内容はまだ不明だが、素手であることが重要なのだろう。
 素手で闘うことで、恐れを捨てた精神力を身につけるのか?
 謎は謎を呼ぶばかりだ。


 J・ゲバルは独立を扇動するが、島民たちは若すぎるゲバルの言葉にたいして半信半疑だ。
 荒木飛呂彦も総理大臣が二十歳の若造ならだれもついていかないと言っている。
 経験と判断力はなかなか育たないものなのだ。

 しかし、アメリカ大統領ボッシュはJ・ゲバルに反応してしまう。
 反乱は芽のうちに摘みとりたいと思っているのだ。
 これは「はらぺこあおむし」で学んだ哲学だろうか。蝶になる前に倒せ!

「事件はその時起こった」

 なんかNHKの歴史番組みたいな演出だ。
 ナレーションのジィさん、ノリノリです。
 視聴者の興味を引きつけたまま、次回へつづくのだった。
 でも、刃牙はきっと残ったパンに夢中だろう。
 次回、刃牙が姿をみせたとき、パンが無くなっていたら、かなり尊敬する。


 本当にJ・ゲバルは革命家だった。
 この後、独立を成功させて大統領になるのだろう。
 しかし現在は刑務所暮らしだ。
 最終的には革命が失敗すると思われる。

 J・ゲバルの独立にむける必勝の策とはなんだろう?
 素手で戦えば、武器をもっている軍隊が卑劣にみえる。
 武器を持っていないと、米軍も発砲許可を出しにくい。
 そういう戦いにくい部分をついて戦うのだろうか。

 TVのない時代なら、容赦なく機関銃でなぎはらう事もできた。
 しかし、素手の人間を一方的に射殺している映像が全世界に流れたら、アメリカが正義だと主張しにくい。
 アメリカ国民を味方につけることが成功への最低条件だ。
 9/11テロのように市民をターゲットにするのは、自己満足にはなるが戦略的にはマズい。(参考文献:松村劭「ゲリラの戦争学」)


 ところで、J・ゲバルは日系人だ。
 そして素手にこだわっている。
 もしかして、範馬の血を引いているのだろうか。
 あんまり期待すると、範海王のようにガッカリするハメにあう。
 今のところは可能性だけに止めておこう。
by とら


2006年6月1日(27号)
第3部 第25話 若き獅子 (681+4回)

 アメリカからの独立をめざすJ・ゲバルが計画する「必勝の作戦」とは?
 今回は範馬刃牙ヌキで話をすすめる。タイトルもカッコよく「若き獅子」だ。
 主人公の立場がないのは、いつもの事だ。そうやって慣れてしまうのが、イチバンよくない。

「島の上空をジェット機でさァ」
「2度3度往復してさァ 地上スレスレで……
「イッパツだろ あんなちっちゃい島ァ…………」


 ちょっとまてジョージ!
 アホか、あんたは。自国民を空爆するバカがいるか。
 このキャベツ野郎が。

 という倫理面で失格なのはさておき、軍事的に見てもダメっぽい。
 軍事計画は「目的を定めて」「目的達成のための目標をえらび」「目標に向かって行動する」ことが必要だ。
 山に登るなら、まずどの道を行くのか決めなくてはならない。
 目標を決めずに、いきなり登っても遭難する。

 ボッシュは「独立を阻止したい(目的)」→「空爆(行動)」と、目標が抜けている。
 言いたいことは、なんとなくワカるけど、ダメな人の発言みたいだ。
 J・ゲバル個人の排除をしたいのか、組織ごと焼きたいのか、島ごと爆破なのか。
 作戦の規模が見えてこない。
 ドラクエの命令なみの大雑把さだ。
 しかも、「ガンガンいこうぜ!」しか選択肢がない。

 ジェームズ副官が、独立も良いじゃないですか とたしなめる。
 いまどき、爆破しちゃマズいでしょ。
 アメリカだってイギリスから独立したんだし。
 おまえ、馬鹿か。(by 久我重明


「ここは国民が見守るカメラ前ではないのだよ 空気読めっつーの

 大統領が怒った。
 むしろ、本人が空気を読めていないようだ。
 汗までかいて、ブチ切れています。
 独立されたら、大国の名誉にかかわる問題だと思っているらしい。

 一国の長が、まるでダダっ子だ。
 やっぱり刃牙がボッシュを監禁したときに、横にウェイターがいなければ厄(やく)いところだった。
 不名誉な約束として闇にほうり、漫$画太郎のように なかったことにした可能性がある。
 ただ、本能と反射だけでしゃべっているような感じは刃牙にちかい。
 共に偉大な父を持つ者同士の共有感(シンパシー)で、仲良くなったのだろうか。


「さし当たり………」
「島へ軍を投入しましょう」

「名目はクーデター制圧 有無を言わせない」


 レイ長官がもうちょっと具体的な話をした。
 実際に独立運動はクーデターと見ることができる。
 民衆を扇動したJ・ゲバル一味として逮捕すれば、問題はかたづく。
 元海賊だけに余罪にはこまらない。
 合法的に監獄おくりだ。

 クーデター制圧という発想はボッシュにはなかったらしい。ボッシュ、大喜びだ。
 部下が優秀だとなんとかなるモノらしい。
 トップが目的だけ決めれば、部下が最適な目標を設定し行動してくれる。
 すごく便利だ。

 レイ長官はボッシュの賞賛に返事もしないで、国防長官に配備の確認をする。
 ムシかよ!
 冷たい態度に、レイ長官の忠誠心が見える。
 大統領が人質にとられて、ムチャな要求を突きつけられたら、普段の声のまま「死んでください」と回答しそうだ。
 やはりボッシュは空気が読めていない。むしろボッシュが空気みたいに透けている。

「これこそが開拓精神だよ」

 すごい勢いで議題から置いていかれているのだが、ボッシュは感動していて忙しいらしい。
 ふるえるほどにヒートしてボッシュは大興奮だ。
 そんなに開拓精神を発揮したいなら、火星旅行にでも挑戦してください。

「おやめなさい」

 感動するボッシュの両肩にシークレットサービスの男が手をのせた。
 男は、素手で大統領の頚椎を360°捻転させことができると豪語する。
 護衛の中にひそんでいた男の名はカモミール・レッセンと名乗った。
 J・ゲバルの部下である。

 まさか、護衛の中にゲバルの刺客がいたとは!
 ボッシュ大統領が大ピンチだ。
 刃牙のときと同じく、調子にのって失敗するパターンが多すぎる大統領であった。
 だからスタッフの忠誠心がさがるのだ。
 ムチャな要求だったら、死んでもらうか。みんな そう思っている。

 こんなときに天内悠がいてくれたら……。
 よけいな事かもしれないが、大統領を助けることができたはずだ。
 まだ復活できていないのだろうか?
 間接的に範馬勇次郎が歴史を変えてしまったような気がする。

 J・ゲバルの素手戦闘部隊はアメリカ50州すべてに2名ずつ潜入している。

「そして その全員が――――――」
「素手のままハイジャック 及び原子力発電所の奪取が可能です」


 おもいっきりテロ集団ですな。
 素手だからボディーチェックに引っかからず潜入しやすい。
 そして、どこでもテロができる。
 素手テロリズムこそが、J・ゲバルの考えた必勝の作戦だった。
 誰も考えつかないことを、考えて実行しちゃうのが ある意味天才だ。

 相手の船に乗りこんで、金品や人質をとるのが海賊流だ。
 やっていることは海賊時代の延長線上である。
 しかし、おどして手に入れた独立では健全な国際関係を作ることができない。
 長続きするのかどうか、あやしい。


 今回の作戦でシークレットサービスに入りこめたのはラッキーだった。
 トロイの木馬テロ状態だ。
 作家・隆敬一郎の発言だと思うが、独裁者を殺してクーデターを起こすのは独裁者の親衛隊と相場が決まっているらしい。
 三国志でいえば独裁者・董卓を殺したのは腹心の呂布だ。
 身辺を守らせている人間に裏切られると、ほぼ完全にアウトになる。

 ボッシュの失敗は、身を守る盾をちゃんとチェックしなかったことだ。
 やっぱ、その場のノリで採用を決めたのだろう。
 最低でも出身地には注意しておくべきだった。
 やはり、天内さえいれば人手不足に悩むことも無かったのに。


 カモミールは室内のモニターをつける。
 すると、モニターにJ・ゲバルが映しだされた。
 場所は、ボッシュの家だ。
 究極の手段、家族を人質作戦が開始されたのか!?
 ボッシュ本人が人質なら、スタッフにも余裕があったが、家族を人質にとられるのは痛い。

 J・ゲバルはボッシュの妻と子供にあいさつをして、何事もせずに外に出る。
 警備の人間たちは全員倒れていた。
 素手でありながら、武装したシークレットサービスを倒してのける。
 J・ゲバルの恐るべき戦闘能力だ。
 この場に徳川亭の警備隊長・加納秀明がいても役に立たんのだろうなぁ。


 独立を認めない場合、飛行機をハイジャックして原子力発電所をのっとって家族を人質にとる。
 おそるべき素手テロリスト集団だ。
 正直、ちょっとヒドいと思う。
 ヒドいレベルを比べたらボッシュもどっこいどっこいかも知れないが。


 ヒドい爆撃といえば、イスラエルの例がある。
 サウジアラビアの領空を通過して(もちろん無断で)イラクの原子炉を爆撃したのだ。
 作戦としては、おそろしく思い切ったもので大成功だ。
 ただ、倫理面としてはどうなんだろうか、と言うところだ。
 ボッシュもイスラエルを意識して、開拓精神で爆破をしたかったのかもしれない。

 とりあえず優位に立ったJ・ゲバルだけど、タネを明かしてしまったのが痛い。
 テロリスト狩りが始まれば、各州に2名の少人数ではつらいものがある。
 なにしろ、現地のアメリカ国民から協力は得られない。
 自国の原子力発電所を爆破するのに協力する国民なんていないだろう。
 本気で警戒態勢をとられたら潜伏するだけでも大変だ。

 武器を持っていないのは有利に働くだろうけど、正体がバレたらそこで終わりだ。
 動きを完全に見張られて、捕獲命令が出た瞬間に捕まってしまう。
 次回はアメリカ軍の逆襲だろうか?
 地上最強の接待係キャプテン・ストライダムに出動要請がかかるかもしれない。
 そして、オリバも出陣するのか?

 そして、刃牙は飯を喰いながら、話を聞いているのだろう。
 むしろ「親父のほうがすごい」と勇次郎自慢をはじめるかもしれない。
by とら


2006年6月8日(28号)
第3部 第26話 次世代 (682+4回)

 J・ゲバルは素手によるテロで独立を勝ちとった。
 そして、現在はブラックペンタゴン住まいだ。
 正義超人のペンタゴンと悪魔超人のブラックホールがコンビを組んだような運命の大転換だ。
 人生ゲームでいえば、人生最大の賭に失敗して開拓地へいくようなものである。

「それほどの実力者が刑務所入りってのはいったい………」

 おおおッッッ、刃牙が普通にツッコンだ!
 すごい。知的にみえる。
 今までダメさ満開だっただけに、ナミの行動で思わず◎をあげたくなってしまう。
 不良少年がネコに牛乳をあげているのを目撃したような衝撃だ。ツンデレ殺法だ。
 最近はブタのように飯を喰ってばかりだったから、ちょっとイイことを言うだけでカッコよく見える。

 ジイさんは刃牙の質問にこたえる。
 アメリカで一番喧嘩が強ぇ男・オリバに挑戦するためである。
 どっちが強いんだ対決からおりていない人間にとって、最強こそが目指す場所だ。
 アメリカで一番になれば、次は地上最強の生物に挑戦するつもりだろう。
 下位ランキングから攻めるあたり、ゲバジュンは礼儀正しい人だ。

「オリバと喧嘩してェ………」
「そんな野郎が刑務所(ここ)には何人もいる」


 アイアン・マイケルはちがうけどな。
 J・ゲバルはオリバへの挑戦をもとめるライバルたちを蹴散らした。そして、敬意をうけたようだ。
 だから、だたの「No.2」ではなく二代目さん = Mr.2(セカン)と呼ばれている。
 でも、オリバはゲバルを「No.2」と呼んでいるので、後継者と認めていないのだろう。まあ、当然だけど。

 J・ゲバルは外堀から埋めて、オリバ包囲網を完成させたようだ。
 単純に戦闘能力が高いだけではない。高度な作戦も使う。
 素手によるテロリスト育成も高度な作戦だった。
 きっと、うまい事を考えてブラックペンタゴンに入っただろう。

 自分が大統領になって独立させた国を放ったらかすってのは、飽きっぽい性格なんだろうか。
 政治に興味がもてなかったのかもしれない。
 天下統一をするようなシミュレーションゲームでも、楽しいのは統一までの過程だ。
 八割がた征服しちゃうと、ちょっと飽きはじまる。
 ゲバルは新しい戦いを求めていたのかもしれない。

「素手の時代だ………」

 なんか刃牙がほこらしげに言う。
 ワケわからんことを言いやがる。いつ世界は原始時代にもどった?
 今回のサブタイトル『次世代』は『素手の時代』ということなんでしょうか。
 きっと、次世代DVDも素手でまわす。
 次世代ゲーム機は加速度センサーによる素手の時代だ!

「とことんまで強くしちまった肉体ってヤツは天下無敵だ」
「どこだって通れる」
「喧嘩が強ぇからって反応するセンサーはどこにもねェ」


 高度な技術に頼ってしまった現代社会は、究極の肉体に対応できないのだ。
 天然素材な刃牙の発言を、ジイさんが食べられるように調理してくれた。
 おかげで、ちょっとワカりやすくなった。

 昔から権力者ってのは、暗殺をさけるために武器の持ちこみを禁止にしていた。
 映画『英雄 〜HERO〜』でも主人公は裸にされて身体検査を受けたうえで秦王への面会が許されている。
 『史記』の刺客列伝には、丸めた地図に匕首を隠し秦王を殺そうとした荊軻や、調理した魚の腹に匕首を隠し暗殺に成功した専諸(参考)などの話がある。
 みんな武器の持ちこみに苦労していた。
 素手で人を確実に殺すことは、人類暗殺史の夢なのだ。たぶん。


 アメリカは素手でも危険な三人の人物を監視することにした。
 一人は地上最強の生物・範馬勇次郎である。
 二人目は繋ぎ止められぬ男(アンチェイン)、ビスケット・オリバだ。
 最後が ウホッ! 素手のテロリスト…、ゲバジュンだった。

「あろうことかこの3名は衛星偵察の対象になっている」

 E〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!??
 むちゃしすぎだよ、合衆国! 国家予算をなんだと思っているんだ。
 超VIP待遇ですよ。
 うっかり野グソとかしたら警察官が飛んできて紙をわたしてくれそうだ。

「その3名のうち1人でも―――――」
「時速4km以上で動いたとき」

「半数以上の衛星が緊急動作を強いられるため――――――」
「軍事衛星を使用する世界中のカーナビゲーションが70mもズレてしまうと言われているのだッ」

 E〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?? × 10
 GPSの調子がときどき狂うのは勇次郎たちのせいだったのか!
 オリバとJ・ゲバルは定住しているので、おもに勇次郎のせいだ。
 すごいトリビアを聞いてしまった。
 極秘情報を知ってしまった以上、CIAにマークされるかもしれない。ちょっと心配だ。

 GPSってのは、アメリカの衛星を借りているから精度がイマイチという話がある。
 だが、真相は範馬勇次郎が原因だったのだ。
 地震が起きたら範馬勇次郎で、地震が止まっても範馬勇次郎である。
 まさに、宇宙の特異点を悪魔にさずかった筋肉でネジ曲げている生物だ。

 先代大統領が勇次郎と仲良かったのは、国策だったのかもしれない。
 ボッシュ現大統領は、大国の見栄をはることでムダにお金をつかうハメになったようだ。
 アメリカ経済の影にも範馬勇次郎の影が見える。
 範馬勇次郎・陰謀説は宇宙規模で応用のきく便利な学説に進化した。
 たとえば、勇次郎が走ると経済が混乱して株価が下がり、カーナビが狂って交通事故が増える。

 勇次郎のすごい話をきいて、刃牙は大興奮だ。汗がダラダラと出ている。
 いろいろあるけど、鬼父は刃牙にとって誇りなのだ。
 刃牙は本気で勇次郎と戦うつもりがあるのだろうか。


 話が盛りあがっているところに看守が入ってきた。
 警棒をもてあそび、威圧感を出しまくる。
 私語は厳禁だと、まずジイさんに一撃を打ちこむ。
 監獄物には欠かせない、暴力看守の登場だ。

「厳罰はテメェだよ」
「ジィちゃんを痛めつけたところでよォ…」
「アンタの髪の毛が生えるワケでもねェだろう」


 刃牙が暴力看守の帽子を蹴とばす(?)と、満月のように禿げあがった頭が登場した。
 ハゲキャラにはこまらない刃牙作品だが、ハゲ…いや薄毛を攻撃した発言ははじめてだ。
 刃牙はいままでに無く怒っている。
 相手が抵抗できない立場だということを利用して、一方的に暴力をふるう。
 卑劣を絵に描いたような男に、刃牙の義憤が燃えあがっている。
 禁じ手の薄毛攻撃だって、ヤるのだ。

 刃牙と看守の構図は、大国からの圧力に似ている。
 立場の強さを利用して無理難題を押しつける点がおなじだ。
 弱者からの反撃こそが、少年漫画らしい反逆である。

「わたしがこの仕事を続けてきたのは」
「心からこういうシチュエーションに出会いたかったからだ」


 すさまじい警棒さばきで刃牙を威嚇する暴力看守は不敵に笑う。
 両手を拘束されていても、範馬刃牙だって不敵に笑う。
 次回、縛られていても獅子は獅子、猫にはならぬ的展開に大期待だ。


 次こそ、刃牙世界でたびたび主張されている「強さとはワガママを押し通すことだ」の実例が登場しそうだ。
 小公女みたいに、耐え忍んで最後に逆転する(ちょっと違うか)もアリだと思う。
 でも、やっぱ不遇の時代ってのはつらい。エウレカセブンも真ん中あたりがつらい。
 現実では暴力で解決するもんじゃないとワカっている。
 だから、マンガの中ぐらいでは痛快な行動ってのもアリなんじゃないか。
 というワケで、刃牙には最大限の応援をするのだった。

「この痛みは小公女セーラの分!」
 コキャ
(セーラって、だれ?)



 刃牙の活躍は、次回に期待する。
 今回は範馬勇次郎による影響が判明した。
 まさに国家規模だ。
 国連が勇次郎を要注意人物としていたのは、正しい判断だった。

 乗り物による移動をのぞき、つねに動きをチェックしているとはご苦労なことです。
 監視されていることを前提とした行動をとらなくてはいけないなんて窮屈な生活だ。
 まあ、勇次郎なら気にせず立ちションとかしそうだけど。

 オリバとJ・ゲバルはブラックペンタゴン在住だからあまり気にしなくても大丈夫だ。
 しかし、勇次郎はきびしい。
 まず世界中を飛びまわっている。
 そして日本は地下街が発展しているので、衛星で確認するのが大変だ。
 JRと地下鉄でややこしい乗りかえをすると衛星で追跡するのはムリなんじゃないのか?
 勇次郎が地下鉄を利用すると、カーナビが150mぐらいズレます。

 しかし、勇次郎をずっと監視していたと言うことは…………
「色を知る年齢(とし)か!」
 も、監視されていたのだろう。

 つまり、刃牙と梢江のデートもようは、アメリカ最高機密情報の中に収録されているのだ!
 ある意味、生物兵器である。
by とら


2006年6月15日(29号)
第3部 第27話 対峙 (683+4回)

 両手を拘束されたまま、刃牙は暴力看守に闘いをいどむ。
 圧倒的に不利な状況でも、友のために闘う。
 まるで、少年漫画の主人公みたいだ。

 ジイさんにはメシを食わせてもらった恩がある。
 それに、まだ全部食べていない。
 範馬刃牙は友のため、飯のために闘うのだ。


 暴力看守はすばやい警棒さばきを披露している。
 「バキ 2巻」に登場した不良たちなみのショボいオーラが出ている。
 きっと、警棒も通信販売で買ったのだろう。

 だいたい、前口上が長いし、もう汗をかいている
 ナニ? 威嚇行為で息切れデスカ。
 投球練習で燃えつきたキャシャリンなみのダメっぷりだ。(by セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん

 闘う前から汗を出しては、勝てるものも勝てない。
 というか、独房に男三人だ。オマケに刃牙も汗をかいていた
 体臭フェチにはたまらないシチュエーションである。
 一般人なら、鼻で呼吸をしたくない状況だ。

「しかも君は」
「わたしの身体的欠点にも触れている」


 それは、刃牙が悪い。
 私もよくハゲをネタにするが、あまりほめられたものではない。
 しかし、特定の個人に対していうのは、いかがなものか。
 超暴力的だ。言葉の暴力だけど。
 みんながブレーキをふむ場面でアクセルを床まで踏みこむようなヤバさが今の刃牙にはある。
 放送禁止コードを秒間十連発ぐらいしそうな勢いだ。

 刃牙が、いきなり蹴る!
 無言で蹴りやがった。しかも、必殺のハイキックだ。
 看守が外までフッとんで柵にぶつかった。

 範馬刃牙、容赦せんッ!
 軽口もたたかず、だきょうのない攻撃が炸裂した。
 まるで無邪気な子供が巨大カマキリを無慈悲に叩きつぶすような行為だ。
 勇次郎直伝の範馬主義が炸裂しまくる。

「関節を外すくらい…」

 さらに刃牙は、肩関節を外して拘束具を無効化する。

 ヨガのポーズ拘束から、後ろ手でしばられている状態に変化(かわ)った。
 さすが、ヨガの修行者もおサイフ忘れて街までと……いわれる柔軟性だ。

 って、肩関節を外せばできる行為なのか?
 腕を360度ねじらないとダメな気もするんですが。
 一度、ねじってから 逆にねじって戻すのか?
 なんか、ふつうの人間にはない関節を持っていそうな感じだ。

 刃牙は24話で拘束されたまま食事していた。
 いまさらなんですが、やっぱり状況を楽しんでいたらしい。
 不自由なまま飯をくうプレイに、刃牙は大興奮だ。
 あの汗はちがう汗だ。サワヤカじゃない。きっと成分もちがう。
 塩分のかわりにフェロモンとかエロモンが入っている。


 今度は刃牙がしゃべりすぎる番だった。
 調子にのって柔軟性をアピールする。
 油断しまくりの刃牙に看守が反撃の警棒アタックをしかけた。
 この うかつっぷりが範馬刃牙の真骨頂だ。
 スキだらけで全ての金的攻撃を受けいれる。ボクらの範馬"うかつ"刃牙が帰ってきた。

 だが、看守はシロウトなので股間を狙わない。
 狙えば、刃牙は大喜びでくらいそうなのに、惜しいことです。
 逆に刃牙が蹴りで反撃する。

 最初のハイキックで倒せなかったのは、拘束されているためフォームが崩れているのだろうか。
 刃牙の反撃は頭部とアゴの二箇所だった。
 もしかすると、加減しているのかもしれない。
 相手は看守だから、あまりハデに倒すとあとで問題になりそうだ。


 刃牙の攻撃により、看守の体は柵を乗りこえ落下していく。
 マズい!
 とんだところで、童貞(※)喪失かよ! (※ 敵を初めて殺すこと)

 刃牙が走ったッ!
 拘束された腕を前にまわし、必死にさしだす。
 間一髪で看守が刃牙の手をつかんだ。

 ギリギリ セーフだ。
 だが、看守はつかまるので精一杯らしい。
 刃牙の指をしめつける拘束具が皮膚を破って出血する。
 汗と血で、看守の手はいまにもすべり落ちそうだ。

「たす……けて…」

「必ず助ける」


 弱音を吐く かつての敵と、過去を忘れて助けようとする主人公の図だ。
 なに、このカッコイイ人は?
 少年漫画のお手本みたいな行動をする刃牙なんて、はじめて見たかも。
 思わずホレてしまいそうな好青年っぷりだ。
 少年ジャンプに移籍しても違和感なく活躍できそうだ。
 いや、それはムリか。(理由:♀)

 刃牙の攻撃を三発もくらったのだ。
 郭春成なら即死するダメージである。
 看守にのこされた力はほとんどない。
 力ゲージがみるみる減って、今にも落ちそうな状態だ。
 刃牙は、看守を助けることができるのか?


「そいつからはなにも返ってこない」
「アメリカ人だからな…」


 いつのまにか、ゲバジュンが横に出現していた。
 冷静に刃牙の行動を見ていたらしい。
 そして、看守など捨てろと暗にいう。
 どうして、米国人がそこまで憎いのか?

 もっとも、ジュン・ゲバルが本心を語っているとは限らない。
 思いつきで行動しているようだが、J・ゲバルの行動は計算されている。
 なにしろ米国にケンカをうって独立を勝ちとった男なのだ。

 たとえば、20話でアイアン・マイケルに話しかけたのも作戦かもしれない。
 昨晩の会話を聞いていれば、アイアン・マイケルと刃牙が親しい間柄であるのは、すぐにワカる。
 すかさず アイアン・マイケルを排除すれば、刃牙は友人からの情報入手ができない。
 じっさいに刃牙はいまだに「掟」がナニか知らないのだ。
 さりげない、情報封鎖だ。

 看守の銃をもてあそんだのは、周囲の武器をチェックするためだ。この仮説は以前に書いた。
 元力士を体育館に連れていったのも、看守に撃たせるためかもしれない。
 そして、今回のケースだ。
 刃牙が看守を殺せば罪はより重くなる。
 敵対者の助言をすなおに聞くのはキケンなのだ。


 J・ゲバルの話を聞いているあいだ、刃牙の動きは止まっていた。
 看守の手が、血と汗ですべってしまう。
 六階の高さから落ちているのか。
 だが、刃牙がとっさに手をのばし、看守を一気に引きあげる。
 看守は無事 通路に帰ってきた。

 人命を助けるのに、報酬は関係ない。
 刃牙とJ・ゲバルは一瞬だけ睨みあった。

「人のいいことだ…」

 J・ゲバルは去っていく。
 本当に、刃牙をハメる計画だったのだろうか。
 J・ゲバルの考えはまだ不明のままだ。

 看守は無事だったものの尿を漏らしてしまった。
 まあ、板垣作品であれば失禁は基本というか、基礎なのでまったく問題ない。
 むしろ、「範馬刃牙」になってからの初失禁だ!
 みんなで、祝福しよう。

「だいぶちらかしちゃって…」

「本日も異常なし」
「一部 食物運搬用ワゴン 転倒するもわたしの個人的ミスによるもの…………」


 恩義には恩義でこたえる。
 刃牙の流血をともなう救出に、看守は感謝をするのだった。
 敵すら味方にかえてしまう友情パワーだ!
 またまた、刃牙が少年漫画の主人公みたいなことをしやがった。


 J・ゲバルの罠(?)にハマらないですんだ刃牙だった。
 しかし、J・ゲバルの言葉にさからっている。
 もしかすると、今後さまざまな嫌がらせが発生するかもしれない。
 たとえば、カレーの肉が少なくなるとか。
 ―――――― 刃牙にとっては重大事だ

 とりあえず、今後はオリバへの挑戦権をかけた獄内競争になるのだろう。
 今の刃牙は友情パワーまっしぐらで、つぎつぎと仲間を増やしていきそうだ。
 まず、ダメなアイアン・マイケルが仲間になる。ジイさんも仲間に加わるだろう。
 暴力看守だって、トモダチだ。
 魔王たおすのムリそうなパーティーが完成しちゃった。

 今後もどんどんガンバって範馬刃牙と ゆかいな仲間たちが増えていきそうだ。
 J・ゲバルも仲間になって、オリバも加わり、アイアン・マイケルの出番はますます無くなる。
 あんまり少年漫画の主人公っぽいことをやっていると、反動がこわい。
 少年誌には掲載できない、本当の暴力を見せたる という感じに刃牙が爆発したら、エライこっちゃ。
by とら


2006年6月22日(30号)
第3部 第28話 徒手 (684+4回)

 すっかり主人公のようになった範馬刃牙である。
 最近、刃牙を読みはじめた人は主人公が刃牙だと思いこむにちがいない。
 主役坂を登っている刃牙は止まることなくJ・ゲバル → オリバと闘いつづけるのだろう!

『3日間の独房生活を終え―――――――――
 通常の生活へ戻される』


 日常にもどって どうする。
 なんか普通に労働しています。闘争は忘れたのか。
 18話でオリバがNo.2と来週闘う予定だといっていた。
 刃牙が刑務所にきてから四日が経過している。
 あと三日で来週だが、それまでにJ・ゲバルを倒せるのか?

 で、刃牙は道路の基礎工事とやらで地面に杭を打っている。
 労働は囚人の義務だろうから、働かないとダメなのだろう。
 サボると飯抜きになりそうだし。
 学校の授業さえサボリ気味だった刃牙が、ちゃんと作業をしている。本当に成長したなー。

 もっとも、刃牙はずっと独房に入っていた。J・ゲバルと闘うチャンスなんてない。
 今晩こそ襲いかかるはずだ。
 朝食時におそいかかる手もあったと思われる。
 しかし、ケンカしていては食事できない。だから、パスしたのだろう。

「あのマイケルでさえ3発は必要だってのによォ」

 マイケルと申したか!
 ゲバジュンの微妙な嫌がらせのエジキになり姿を消したマイケルが生きていたのだ。
 てっきり、もう出てこない人かと思いましたよ。
 武器をもたず解説もしない本部なみの扱いになるかと思っていた。
 ところで、解説する本部が輝いていたのは、理論で武装していたからだろう。
 本部は 武装しないと とことんダメなのだ。


「聞きましたよマイケルさん」
「来月 出所(でる)って…」


 休憩時間に刃牙とマイケルが雑談をする。
 マイケルはまだ王者の座をあきらめていない。
 出所後はチャンピオンを目指して闘いつづける。
 日本の小学生に全盛期じゃないとか、いわれたマイケルですがファイティング・スピリットは失っていない。

 だから、刑務所でのランキングには興味がない。刃牙は好意的な解釈した。
 19話で見せたアイアン・マイケルの醜態はなかったことにしてください。
 むしろ、アレは刃牙が思いこんだ結果の幻聴なのかもしれない。
(しょせんアイアン・マイケルなんてダメなやつなんだ。ブロンズ・マイケルに改名しろ)
 妄想で作った全盛期のアイアン・マイケルを倒した刃牙なら、ひどい思いこみをしている可能性が高い。

「世界があなたを待っているんだもの…………………………」

 しかし、今の刃牙はさわやかにアイアン・マイケルを応援するのだった。
 バキだったころの刃牙なら違和感のある行動だ。
 いや、今の刃牙でもちょっと違和感あるけど。

 でも、範馬刃牙になった今なら主人公らしい、納得の行動である。
(チャンピオンなんて、アンタにゃムリだろうけどな!)と内心で思っているかもしれないけど。
 とりあえず(オレのほうが強いけどな!)は普通に思っているだろう。


「こいつを見てくれ」

 金額が すごく…大きいです…。なにしろ200万ドルの小切手だ。
 見せてくれたのは、アリゾナ州立刑務所の表ボスであるM(マイケル)・ホールズだ。
 なにやら裏のありそうな金だ。
 「シグルイ」でいえば興津三十郎のニオイがする。
 億の金で人は裏切るのだ。
 …………関係ないのだが、シグルイを買う人は「デトロイト・メタル・シティ」も良く買っているらしい。

「IBA…………… 国際ボクシング協会会長 ボブ・マーフィから」

 誰かは知らんが……、おのれ、会長めッ! 汚いマネをッ!
 Koedameに落ちて溺死しろッ!

 かつて「刑務所でボクシングを身につけた男―――― ソニー・リストンがヘビー級の王者だった。
 当時、ボクシングの興行成績は悪かったらしい。
 最も偉大なる(グレイテスト)キャシアス・クレイが登場するまでは暗黒時代だったそうだ。
 刃牙世界では、アリとアライが共存しているとはいえ、ちょっとアリが出すぎかもしれない。(参考:Wikipedia映画

 歴史は繰りかえす。
 過去に起きたことは、現在や未来に起きる可能性があるのだ。
 巨大組織が利益を守ろうと、アイアン・マイケルに狙いをつけた。

「再びボクシングが出来なくなるだけでいいのだ」

 マイケルにとってボクシングは全てだろう。
 金とか名誉だけじゃなく、人生そのものだ。
 マイケルからボクシングを奪うのは、命を奪うことに等しい。
 残酷なことをいいやがる。

 しかし、アイアン・マイケルを倒せる男などめったにいない。
 刑務所内は素手の時代だ。
 ボクサーはとても厄介である。
 でも、20話でのダメっぷりを見たあとでは、普通の看守でじゅうぶんだと思う。


マウスを呼べ」

 マウスとは「唇(リップ)」「歯(トゥース)」「舌(タング)の三人組だ。
 ネズミ(mouse)ではなく、口(mouth)に関係する三兄弟(?)らしい。
 それも、三つ子 ―――看守三兄弟だ!

「君ら3人が揃うと……」
「化学反応を起こす」

ね」


 三人が別のフォントで同時にしゃべった!
 すごいんだか、すごくないんだかワカらン 特技でマウス三兄弟が登場だッ!
 ボクシングの亀田三兄弟に対抗して、鼠口三兄弟と命名しよう。
 と思ったが、ゴロが悪いのでやめます。


 兄弟といえば、幼年編にでてきたレンジャーの双子がいる。(アニメ版での名前は「千葉」)
 ハッキリいって強くなかった。
 刃牙世界では技より基礎体力のほうが重要なのだ。
 さて、マウス三兄弟の体力はどれぐらいあるのだろうか。
 そして、コンビネーションの妙技をどういかすのだろう?

 だいたい刃牙世界では一人に複数でおそいかかっても勝てない。
 刃牙も渋川先生と組んで柳龍光と闘ったら、負けた。
 ぎゃくに柳龍光がシコルスキーと組んで刃牙と闘ったら、実質的に柳たちが負けたのだ。
 弱いから群れるという理論が働くのだろうか。
 本気で勝ちたかったら、百人用意しないとダメだ。


 過去の例から考えて刃牙の心配はしなくてもいい。
 三人組だから、二人組より弱いだろう。
 しかし、アイアン・マイケルはヤバい。
 あっさりヒドい目にあって、夢が断たれる可能性がある。

 この状況で「出所したら結婚する」とか言ったらアウトだ。
 「今度子供が生まれる」もヤバい。
 「来月除隊」あたりは即死ワードだ。って、同じようなこと言ってんじゃん!
 これは非常に厄い。みどろさんと同じ車にのっているぐらい厄い。


 しかし、マイケルにも希望がある。
 同室にはゲバルや刃牙といった実力者がいるのだ。
 いざというときは助けてくれるかもしれない。
 昔のバキならともかく、今の刃牙なら積極的に助けてくれるはずだ。

 でも、すごいコンビネーションで地味に攻められると刃牙は弱そうだ。
 油断しやすい人なので、一発目をたいてい喰らってしまう。
 刃牙が間に合わない可能性も高い。

 ボクサーを壊すのは、拳をつぶすというのが定番だ。
 目を狙うという可能性もある。
 金的は狙われても大丈夫だ。
 目標が小さいと刃牙も守りきれないかもしれない。

 やはり、刃牙にたよっているうちはアウトだ。
 ブラジルにニ点差以上で勝つぐらいの奇跡が必要かもしれない。

 ところで、マイケルがハゲたのはマウス三兄弟のしわざだろうか?
 マウス三兄弟を見ただけでマイケルの体が恐怖に震える展開もありうる。
 今度は下の毛を剃られるかもしれない。
 無修正で無毛な写真をネット上に晒されたら、精神的なショックで再びボクシングが出来なくなるかな。
by とら


2006年6月29日(31号)
第3部 第29話 戦争 (685+4回)

 ちょっと刃牙をほめると、すぐにダメになる。
 今回はまったく出番なし。
 好調と不調の波が激しい。
 ってことは、次回は刑務所中の人間がほれるような大活躍をするのか?




 マウス三兄弟がついに顔を見せた!
 加納秀明とアライJr.をたしたような さわやか顔である。
 この顔は弱い系だッ!

 バキ三巻あたりで死刑囚全員が集合したときのような迫力がない。
 たとえ迫力だけだったとしても、あの時感じた高揚感は本物だ。
 マウス三兄弟にはにじみ出るワクワク感がない。ネタ臭はかなりあるけど。
 エモノがアイアン・マイケルってのも良くない。
 普通に私語注意でマイケルを殴れば、数週間姿を消すダメージを受けるぞ。

 マウス三兄弟の別々に声をだす攻撃で職員は混乱してしまう。
 「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」に出てくる「聖徳太子(三つの単語を同時に聞き取る)」のような状態か。
 一人で二人分しゃべるいっこく堂の逆をいく芸かもしれない。
 シロウトのために、マウス三兄弟はワカりやすく、ひとりずつ話してみる。

わたしは「お」と「そ」
「ボクが「元」と「う」」
オレは「気」と「で」


 全員あわせてとなる。
 ……やっぱりワカりにくい。
 だが、そっくり同じにみえても、兄弟にはちがいがあるのがワカった。

 まず一人称がちがう。
「わたし」「ボク」「オレ」と三タイプいる。
 まとめ役で弟思いの長男と、やんちゃ者で兄さん思いの三男と、ナルシストで自分がイチバン次男だろうか。
 次男はさりげなく「げん」でセリフ数をかせいでいる。あなどれない。


「連携の中の連携」
「キング・オブ・コンビネーション」
「それが唇と」
「歯と」
「舌だ…」


 所長M(マイケル)・ホールズは、「唇」「歯」「舌」のコンビネーションこそ最強と力説する。
 この時の絵が、ちょっと「バキSAGA」の裏表紙みたいだったので、ダメージを受けた。
 刃牙と梢江とSAGAのコンビネーションも人を廃人にできるぞ。


 三人のコンビネーションがどうスゴいのかは、いずれ判明するだろう。
 バラバラにしゃべって一つの会話にしちゃう連携もすごいが、本質はすこしちがうところにある。
 三人はまったく同じ内容をしゃべることができるのだ。
 ほとんどテレパシーでつながっているような現象である。

 意志の疎通が取れていないと、連続でしゃべっても_という感じに意味不明になってしまう。
 ちなみに、それぞれ「お元気そうで」「お元気ですか」「元気?」と言おうとした。
 同じような言葉でも、語尾の変化でめちゃくちゃになってしまう。
 きっと、言い回しを統一させるため、自己を発狂寸前にまで追いこむような修行をしているのだ。

 イブニング13号の「サトラレneo」で三人のサトラレが同調して闘うという話があった。
 なんか、シンクロニシティーだ。
 マウス三兄弟も完全同調して闘うのだろうか。
 とりあえず、紹介されているときの表情がそれぞれ微妙にちがうので、ちゃんと個性を持っているようだ。
 目を閉じてすましている次男の「歯」は、やっぱりナルシストだと思う。


 そして、マウス三兄弟は夜中にアイアン・マイケルを中庭に呼びだす。
 三兄弟は格闘技の幻想を打ち砕くと豪語する。
 マイケルを破壊することで証明する気だ。
 いきなり、破壊されることを前提にして話を進めている。ひょっとして、もうエンディングまで選択肢がないのか?

 刃牙が助けに入ることなく、マイケルはあっさりと呼び出されてしまった。
 マイケルの死亡フラグを心配する間もなく死地にいる。
 基本的にマイケルには危機察知能力がないらしい。
 危険を察知できるなら、範馬勇次郎を倒すための敗者連合に入ったりしないよね。
 勇次郎討伐に参加しなかったマイク・クインは、生物としての生存本能は一流なのかもしれない。
 レスラーとしてはペイントしているだけのピエロだったけど。


歯……
いくつだ……?

「2.5…………………」
「多くて3.0から3.2ってところか…」


 なにやら、アイアン・マイケルの戦闘力を測定しているようだ。
 まるでハンターのような冷静さである。
 ペイントしているだけのピエロに匹敵する生存本能がありそうだ。
 キケンな芳香(かおり)をただよわせるマウス三兄弟と闘い、マイケルは生きのびることができるのか?

 歯が測定している数字は戦闘力だろうか?
 平均的な成人男性の戦闘力を1として、マイケルは最大3.2である。
 微妙に少ない数字がアイアン・マイケルらしくて、なんか納得してしまいそうだ。

 戦闘力が最大3.2のマイケルなら、一般人三人と同時に闘っても勝てる。
 しかし、マウス三兄弟の連携は足し算ではない。掛け算だ! たぶん。
 一人の戦闘力を仮に1.3とする(少ないようだが、1.3倍は普通のザクとシャア専用ザクぐらいの差がある)。
 掛け算だから三人で約2.2ッ!
 なんだ、マイケル楽勝じゃん。

 アイアン・マイケルは刃牙の手助けがなくても生き残れるかもしれない。


 掲示板でもすこし指摘されていましたが、ヤングジャンプで連載中の「TOUGH(作:猿渡哲也)」でシンクロニシティーが発生した。
 元ヘビー級王者と闘うために監獄へ行く話があったのだ。
 ちょっと、話かぶりすぎかも。
 TOUGHの元王者は一足先に噛まれました。一話分にしか登場しない、見事な噛ませ犬です。
 来週のアイアン・マイケルも女のような悲鳴をあげるのかな…………

 TOUGHの元王者を見ていて思ったのだが、アイアン・マイケルは顔に刺青をしていない。
 変化の余地があるということは、勝利の余地もありそうだ。
 ピンチになったとき、小宇宙(コスモ)を燃やすと刺青が顔に浮きでるッ!
 「聖闘士星矢」の龍星座(ドラゴン)紫龍(シリュウ)が背中にやどす龍の刺青のようにッ!
 もう、刃牙が出てこなくてもマイケル勝つよ。

 体温が変わると刺青が浮きでる展開も、アリだと思う。
 板垣作品である「メイキャッパー 2巻」で、皮膚の温度変化で色がかわる化粧品が出てくる。
 体が戦闘状態になって、顔から血が引くとメイクが浮きあがるという話だ。
 マイケルも恐怖で蒼ざめると、尻尾を股にはさみこんでいる犬の刺青が浮かび上がるかもしれない。

 うん、やっぱりマイケルには刃牙の助けが必要だ。
by とら


2006年7月6日(32号)
第3部 第30話 チームワーク (686+4回)

 アイアン・マイケルがピンチですね(棒読み)。
 明日は範馬刃牙三巻の発売日であり、七夕です。
 だれかマイケルの無事を祈ってあげてください。
 私はムダなことはしたくないので、やりませんが。

「多くても3.0から3.2ってところだろう」
そんなところだろうな
さすがは アイアン・マイケル
3.2とは………


 会話が自分たちだけで完結しているマウス三兄弟であった。
 キミたちあれでしょ、合コンに行っても自分たちだけで話して盛りあがるタイプでしょ。
 たのむから他人と会話する余地をのこしておいてくれ。

 おかげでアイアン・マイケルは黙りっぱなしだ。
 夜中に呼びだされたのに、放置プレイだよ。すごい高度なプレイである。
 このスキを利用して攻撃するか、逃げるんだ。
 でも、マイケルにはそういう才覚がない。あれば勇次郎に闘いをいどんだりしない。

「高い身体能力を持っているが骨格(フレーム)による筋量に限界がある」
「4.0に届くことはあり得ない」
「一般成人男性の3.2倍…………」


 "歯"が解説するところを聞くと、けっきょく謎の数値は戦闘力だったらしい。
 てっきり噛ませ犬のレベルかと思っていたよ。
 アイアン・マイケルが3.2なら、アライJr.が10(約三倍)で、ムエタイ選手なら62悟空の界王拳もビックリ二十倍だ。
 キング・オブ・ムエタイのサムワンなら……。スカウターが壊れました。

「どこをどう見てアイアン・マイケルが一般人の3.2倍だ」

 職員がツッコむ。
 そうだよな、大きいよね。
 私語をして殴られるような禿げマイケルなんて1.5倍がいいところだ。

 いや、そうじゃなくてマイケルなら10人以上倒せるといいたいらしい。
 10ッ! そりゃ、デカすぎる。
 2mのカマキリなみにあり得ない設定だ。
 10なんていったら、アライJr.の噛ませ犬レベルぐらいですよ。

「格闘技に精通しているようだが…」
「見た目はシロウトだな」


 過剰にほめられて、ちょっとうれしいアイアン・マイケルであった。
 自分の3.2という数値には納得しているらしい。冷静に、己を知っている。
 でも、3.2は最大値だから、2.5が正解かな。


 ボクサーの観察眼でアイアン・マイケルも相手を分析している。
 筋肉のつきかたでどういう鍛え方をしているか、判断したようだ。
 孫子の兵法でもいっているように、相手の戦力を把握するのは戦闘の基本である。
 呼び出しをうけても、アイアン・マイケルはよゆうを見せている。
 判断力が三歳児なみになったためでなく、相手に勝てると判断したからなのだろう。


 世の中にはひとりで三人や五人の相手を倒したなどという話がある。
 だが、彼らは常人の三倍や五倍強いかというと、ちがう。

世界チャンピオンクラスでもせいぜい2.5倍

 となると、やっぱりアイアン・マイケルはかなり強いらしい。
 ならば、全盛期だと3.9倍ぐらいか。
 アライ父の全盛期なら、4.0超えしているかもしれない。

 なぜ2.5倍の人間に三人がかりで勝てないのか?
 答えは、三人で闘うことになれていないからだ。
 集団で闘うことの特性をいかせず、本来なら3.0の戦闘力を発揮できないでいるらしい。

 マウス三兄弟が初登場した28話感想でも書いたが、過去の戦いを見てもコンビネーションは負けている。
 ヘタなコンビネーションは、かえって弱くなるらしい。
 三週間以上前にみたWEBニュースで、二人以上で作業をすると状況確認をする必要が生じるので作業効率が落ちるという話があった。(情報元を探したが見つからなかった)
 コンマ一秒を奪いあう闘争の場で、仲間の位置やタイミングをよけいに考えることは、足に鎖をつけて闘うに等しい。

 また、闘っているうちに一対一の状況になることもあるはずだ。
 一対一で倍の戦力差があると、とてもきびしい。

 高島俊男「お言葉ですが…(8) 百年のことば」という本に、昔軍隊にいた人の話がある。
 元軍人さんの記憶だと『新鋭陸偵「彩雲」は「零式三座水上偵察機(零水)」の三倍くらい速い。』らしい。
 しかし、『彩雲は609キロ、零水は367キロなので、実際には三倍速いというわけはないのだが、実際乗ってみると(あるいは飛んでいるのを見ると)「三倍くらい速い」と感じられたのだろう。』
 1.7倍ぐらいの速度差でも、体感的には三倍ぐらいになる。
 二倍の戦力差というのは、数字以上に大きく感じるのだ。

 つまり、一対多数の戦いは単純な足し算で計算できない。
 それでも勝ちたいなら、強い多数をつれてくるか、数で押して消耗戦を強いるかだ。


 競技は個人で闘うものだから、チームワークは存在しない。
 唯一チームワークがあるのはプロレスだけだ。
 ジリジリとアイアン・マイケルを包囲しつつ、マウス三兄弟が解説地獄をしかける。
 三方向からの連続解説を受けて、逃れるすべなどない。

 ただし、マウス三兄弟は競技限定で話をしている。
 武術では複数対複数の戦いも想定の範囲内だ。
 たとえば、北辰一刀流は複数対複数の乱取りをしていたらしい。
 どこまで本当かわからないが、新撰組も三人一組のコンビネーションで戦っていたときく(参考:森村誠一「新撰組」)。

 実戦の意識があった時代では、ちゃんと集団戦闘の戦いかたも存在するのだ。
 というわけで、アイアン・マイケルは渋川先生のところで修行するといいかもしれない。
 いやもう、すでに遅いんだけど。


 解説のターンが終了し、マウス三兄弟が攻撃のターンにうつる。
 マイケルのターンなんてありません。
 ひとりがマイケルの背後で指を鳴らす。
 マイケルが背後に気を取られた瞬間、正面の"唇"がマイケルを殴った。

 マ、マイケルがやられたァ!
 噛まれる姿も、すっかり板についているゥ!
 髪剃ったあたりから、活躍できそうな風格が無くなった。
 しかし、マイケルはファイティングポーズをとって闘おうとする。

 横から、足を引っかけられてバランスを崩す。
 鼻に平手打ちをされて、少し泣いた
 ヒザの裏を蹴られて、バランスを崩す。足元がお留守ですよ。
 殴られる。殴られ、殴られ、蹴られた

 アイアン・マイケルがいじり倒されている。
 最近のハマーよりもヒドい いじられ方だ(by ピューと吹く! ジャガー)。
 もう、ギャグ漫画から帰ってこられませんよ。

 だが、アイアン・マイケルは元ヘビー級王者なのだ。
 闘えば強いんだぞと、正面の相手に殴りかかる。
 だが逃げられた。迷いもなく逃げる。おそろしく実戦的な戦法だ。
 マイケルは追いつけない。
 呆然としていると背後から"舌"に蹴られた。

 ふたたび集団リンチがはじまる。
 予想通り。
 否、予想以上にアイアン・マイケルがボコボコに殴られる。
 鉄ってのは、金を失うって書くんだよな……。やっぱり、ちょっとイメージ悪い。

(崩壊(こわ)れてゆく…ッッ)
(権威が……ッッ)


 マイケルがあまりに悲惨なせいか、職員まで同情気味だ。
 いっそうのこと、はやく楽にしてあげてください。
 次回につづく。


 いろいろ想像した答えの中で、いちばん地味な予想があたった。
 予想外だったのはマイケルのやられっぷりだ。
 見ていて、本当にかわいそう。
 今回の感想は、悲惨さをギャグでゴマかすしかない。
 べつに塩をスリ込んでいるわけじゃないんですよ。

 しかし、マウス三兄弟は地味だけど、強い。
 特に逃げたりするところが武術的だ。
 危険地帯には踏みこまない。タチの悪い強さだ。

 多数が闘うときは、ひとりが出すぎたりすると、瞬間的に一対一になる。
 マイケルとしてはそういう展開にもって行きたかっただろう。
 同時に攻撃するにしても、タイミングが微妙にちがえば逃げることもできる。

 横山光輝「闇の土鬼」では、タイミングをあわせるためみんなで歌いながら剣を振りおろすシーンがある。
 狂信的な暗殺集団っぽい雰囲気のでている名シーンだ。
 マウス三兄弟もやってくれないかな。なにしろ"口"は歌う事だってできるのだから。
 でも、"歯"は出番なしでヒザを抱えて座っているかもしれない。


 マイケルがやたらと弱く見えるのは、スポーツマンだからだろう。
 武術家であれば集団との闘いもこなせるはずだ。
 たとえば、渋川先生なら攻撃してくる"歯"を投げかえして"舌"にぶつけたりするだろう。
「ホッホッ。歯が舌を噛みよった」
 渋川先生なら、これぐらいヤッてくれる。

 J・ゲバルも少人数による非武装テロの親玉らしく、多数を無力化する技をもっていそうだ。
 だから、職員もJ・ゲバルに手出しできない。
 そして、われらが範馬刃牙はどうなるか?
 刃牙には、同時に四方の敵を倒せれば全世界の人間とケンカしても勝てるの法則がある。(グラップラー刃牙 9巻 77話)
 やはり、たよりになるのは父である範馬勇次郎なのだ。


 アイアン・マイケルが完全に破壊されないうちに、刃牙に出てきてもらいたい。
 死角無しのカマキリにもよゆうで勝てる刃牙だから、マウス三兄弟だって余裕だろう。
 マイケルは汗を流してしまったが、鼻血は出ていない。じゅうぶん助かるチャンスはある!
 わりとマジメに刃牙の助けをのぞむ。

 しかし、マイケルが2.5 〜 3.2ならば、刃牙の数値はどれぐらいだろうか。
 20ぐらいあるかもしれない。
 範馬勇次郎なら100を超えているんだろうな。純粋な力比べで鍛えた百人に勝っているんだから。


 掲示板でヒヨケムシさんにいただいた情報ですが、マイク・タイソンの刺青にはチェ・ゲバラが入っているらしい。
 J・ゲバルがマイケルを助けたらどうなるだろう。
 恩義を感じたマイケルは、感謝をこめてゲバルの顔を刺青にする。
 そんな展開もありうるなー。

 でも、主人公指数の高い現在の範馬刃牙なら、マイケルを助けた上で勝手に自画像を刺青しちゃいそうだ。
by とら


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