餓狼伝(VOL.111〜120)

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2002年12月17日(1号)
餓狼伝 Vol.111

 プロレスラーは裸を見せてナンボのモンとばかりに長田が道衣を脱ぎ捨てる。
 長田弘というプロレスラーの生き様を見せつけるには道衣は邪魔なのか?

「どーゆーつもりだッ」
「道衣を着ろッッ」


 激昂した審判は長田を問い詰める。
 よく見れば、この審判はチョビヒゲだった。チョビヒゲへっぽこ伝説の新たなる1ページを作りそうな予感が…。

「“どーゆーつもり”はてめェらだろ」
「柔道やキックに声を掛けておきながら」
「空手衣を着ろだァ?」
「言っていることがおかしいンだよ おめェらはッッ」

 長田のこの爆弾発言に観客は肯定と否定のヤジを飛ばす。ここの観客達も熱くてノリがいい。
 空手の大会にプロレスラーが出場すると言う異種格闘技性を歓迎する人もいれば、空手の正統性が損なわれると思う人もいると言う事でしょう。

 ルールを自分たちの有利な物に変えようとするのは武道家の戦術なんです。
 グレイシー一族はよくルールにイチャモンをつけますが、それも戦術なのでしょう。
 でもね、柔道家は喜んで空手衣を着ると思うよ。吉田秀彦は衣が薄いと投げづらいと言っているので、薄い空手衣はちょっと不利かもしれませんが。道着を掴めるのと掴めないのとでは闘いやすさがまるで違う。

「掴みが5秒以内とか 寝技が15秒以内とか―――――――――」
「てめェ達に都合のいい制約つくりやがって」
「てめェらのやってることはよォ‥‥」
「喧嘩売っときながら」
「将棋で勝負しろってことと同じなんだよォッ」


 長田はもっと朴訥とした人だと思っていましたが、さすがプロレスラーだ。マイクパフォーマンスも上手いものだ。
 たとえを将棋にしたのは、夢枕獏先生が将棋の真剣師を主人公にした小説を書いているからでしょうか。

 語りの熱さでごまかされてしまいそうですが、長田の主張って土俵に上がっときながら相撲じゃ勝負できないと言うのと同じなんですよね。
 ここで文句を言い出すのは、ちょっと遅いのでは無いかと思うわけです。  不利なルールや状況の中で苦労して勝利を得るのが主人公的な闘いですが…。いや、長田は主人公じゃないんですけど。
 あと、読者を敵に回して闘う主人公もどうかと思いますが。

「退場しろッッ」
「ルールが不服ならば参加しなければいいッ」


 審判は正論を吐く。と言うか、こう言う事しか言え無いだろう。
 でも、チョビヒゲ坊主頭の審判が必死そうに汗を流しながら言うとやや滑稽だ。
 そう言えば、この審判は栗木くんと園田警視正を足して2で割ったような顔していますね。

「ならばおまえらも地上最強の看板を降ろせ」
「空手界最強とでも書き替えろッッ」
「しおらしく内輪で競ってろッッ」

 長田の返答がこれだった。
 実に痛い所を突いている。北辰館が地上最強の看板を掲げるかぎリ、いかなる挑戦も受けねばならない
 武道家としての策略で闘いを優位に進めたい一方で、武道集団としての矜持があるゆえ地上最強の看板を降ろす事はできない。
 地上最強の名誉を守るか、ルールを理由に長田を反則にして勝ちを取るか、決断のしどころだ。
 と思わせておいて実は選択肢は無いのだが。

「退場」

 当然だろう。
 この審判には大会のルールを変える権限は無いはずだ。
 だから審判にできるのは退場の宣告だけだ。
 長田はそれをちゃんと計算に入れていたのだろうか。どちらにしろ、このままでは試合前に敗北してしまう。

「なんとッッ」
「試合開始前だというのに―――――――――」
「長田 弘 退‥‥ッ」
「松尾館長が上がったァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」

 アナウンサーの絶叫の中で山が動いた。
 この緊急事態を解決できる人間は彼しかいない。
 生きる伝説・松尾象山が舞台に上がった。
 スーツとサングラスに身を隠してもその獰猛さがにじみ出てくる。

「いやァ‥‥‥」
「いっぺェ入ってるじゃねェか」
「おめェのお陰だぜ」


 舞台を荒らした自分へどんな叱責が待つかと身構えていれば、意外にも友好的な態度を見せる。
 言葉での不意討ちを受けたようなものだ。これだけで長田の気はそがれてしまった。

 松尾象山にとっては大会を盛り上げるのが最も重要なのだろう。そのためなら部外者が参加するのも、北辰館の選手が破れるのも大歓迎と言う訳だ。
 この懐の大きさを見せる松尾象山の態度に、長田は思わず「あ‥‥」「イヤ‥」と口篭もってしまう。
 一方の松尾象山は、最後のセリフにあわせてサングラスを取って見せるという演出面にまで気をくばりっている。余裕の差が細かい演出の差にも繋がっているのだろうか。

「ここにきてプロレスのコスチューム」
「いいセンスしているぜェ」


 まるで鞍馬を誉める巽のようなセリフで、長田をたたえる。
 この男、プロレスラーの心理を巽並に知っていやがるッ

 でも、レスラーの証であるパンツがアップになるカットは、なんか股間を見て「いいセンスしているぜェ」と誉めているようにも見えるのでちょっと、なんだな…。

「俺も昔は――――――」
「空手衣を着てプロレスのリングへ上がったものさ」


 松尾象山は過去の闘いを思い出す。
 わずか1カットの回想イラストでありながら、髪を逆立てながら腕を組み凶暴な笑みを浮かべる松尾象山の存在感は圧倒的だ。
 全盛期の松尾象山である。立っているだけでも、この男が危険な事がわかる。
 やはり、餓狼伝最強の男は松尾象山かッ!?

「そのなりでやったらいい」
「ただし」

「極めはバックドロップだ」


 長田の肩を叩き、激励&注文までしてしまう。
 言うまでも無く長田は北辰館の敵だ。その敵に勝てよとエールを送っているのだ。やはり、松尾象山は太い男だ。
 今回の主役は長田であっても、1番のいい部分はこの男が持って行ってしまったような気がする。
 肩を叩いただけで、長田を揺らす。そして怪物は去っていく。

「ああそれと‥‥」
「寝技も掴みも無制限――――――」
「いいハナシじゃねェか」
「俺も今日 変えようと思ってたんだ」


 去りぎわに更に爆弾を投下していく。審判もこれには「き‥‥今日って‥」と困ってしまう。

 服装、ルール全て長田に有利に変更して上に、激励までしている。
 松尾象山、何を考える。
 自分の生み出した北辰館がこの程度でゆらぐ事は無いと確信をしているのか。
 それとも、自分が倒れ無いかぎリ北辰館に敗北はないと思っているのかいるんだろうな、やっぱり。

「前代未聞のルール改正だァッッッ」
「空手界初ッ ノールールトーナメントォッッ」


 ちょっと渋川剛気に似ているアナウンサーの絶叫の中、いきなりノールールマッチとなった闘いが開始される。
 次号、長田は注文通りにバックドロップでフィニュッシュをかざる事ができるのだろうか?
 そして、鞍馬は派手さで長田を上回る事ができるのであろうか?

 次号は12月28日。って、なんでそんなクソ忙しい年の瀬に発売するんですかいッ!?

 北辰館第1の刺客・加山明はプロレスラー相手にどう闘うのだろう。
 長田は空手衣を脱いだ事で1つ弱点を抱えた。
 ビキニパンツが小さいのだ。加山はそこを狙うかもしれない。
 パンツを脱がす。パンツを剥ぎ取る。今の長田にとっては切実な弱点かもしれない。
 全国ネットの放送で、長田弘という肉体をさらし上げろッ!
by とら


2002年12月28日(2号)
餓狼伝 Vol.112

 男は裸だッ!
 プロレスラーとしての誇りを胸に長田がパンツ一丁で出陣する。

 対するは加山明 27歳 177センチ78キロ
 空手歴―――――14年
 無道会トーナメント ――――――――優勝


 ちょっぴりドイル似のナイスガイ。
 長田と同じく外部参加者であり防具とグローブを付けて顔面アリで闘う無道会スタイルの猛者である。
 オープンフィンガーグローブや顔面へパンチを認めたルールでは、顔面アリで闘って来た我々の歴史こそがものを言う。
 経験、肩書、どれもトップクラスである。

「文句ナシだぜッッ」
「おまえが身につけた その空手で――――――」
「俺を壊してみろ 加山 明」


 だが、強敵であればあるほど長田の闘争心は燃えるようだ。
 長田は両腕を上げガードを固める。プロレスでありとあらゆる打撃を受けつづけ、鍛えられたこの肉体を壊せるものなら壊してみろ。構えで、そして視線で長田は語る。

 加山は受けて立つ。
 拳では無く、軽く広げた手で構える。
 プロレスラーの長田が拳を固め、空手家の加山が開手で受ける。互いに相手の得意分野を警戒しているのだろうか。

「開始(はじめ)いッ」

 合図と同時に長田が飛び出した。
 スピードは遅いようだが、ガードを固めたまま一直線に突っ込む。
 加山は冷静だった。下段横蹴りで長田の膝を打ち抜き、突進を止める。すかさず、太腿にローキックを叩きこむ。
 腿に巻きつくような、まるで鞭打のような蹴りがまともに入る。しかも、体重が乗っている方の足を狙っている
 ローキックの防御は体重をかけずに足を浮かせスネで受けるのが基本だ。長田の受け方だと、もろにダメージを受ける。
 骨まで痺れるような衝撃が走り、打撃の当たった部分がドス黒く変色している。
 ダメージは大きい。

 加山は無理に攻めず、構えを戻す。
 こちらは一撃離脱の空手スタイルを崩すつもりは無いようだ。
 再び長田が突っ込む。
 加山が迎撃する。今度は反対の足にローキックだ。
 これもまともに入り、長田の動きが止まる。
 長田は加山を捕まえることができずに、足を破壊されていくのだろうか。

「なるほど…」
「どうってことはない!!!」
「ぜんッぜん!!! どうってことない!!!」

 完璧に入ったと思われたローキックも意に介さない。打撃を受けきる事こそプロレスラーの証だ。長田弘はこの程度では止まらないのだ。
 更に加速して長田が突っ込んでいく。
 この迫力を見て、加山はローキックでは止まらないと判断したのだろうか。みぞおちを狙い中足前蹴りを放つ。
 体ごと吹っ飛んだ。蹴った加山の方がだ。

 常識を超える事態に、今まで冷静を保っていた加山の表情がはじめて崩れた
 それでも加山は着地と同時に構えを取る。場外ラインのすぐ手前だ。

 長田がつっかけた。
 距離が近い。間合いに入られた。加山は真上に蹴り上げ長田のアゴを打つ。
 加山の上段回し蹴り。ガードされた。
 長田が歩を進める
 手刀で顔面を狙う。ガードされた。
 ズイッ、と長田が進む
 加山にはもう余裕はない。
 連打だ。一撃離脱のスタイルを崩し、必死の形相でひたすら蹴りを、拳を打ち込み続ける。
 だが、長田は止まらない。倒れない。

「空手が――――」
「通じないッッッ」


 今まで信じて来た空手の打撃が通用しない。
 かつて丹波が梶原相手に感じた恐怖を加山も感じている。どうすれば、この男を倒せるのかッ
 次回、加山は打開策を見つけられるのか?
 そして、長田はバックドロップを成功させることができるのか?

 全ては、松尾象山の計算通りに…。って、あの人はなにも計算していなさそうですけどね。100%天然です。

 加山の前蹴りを腹で受け止めて逆にふっとばす辺りがプロレスラー長田の真骨頂ですね。
 まあ、加山が78キロとやや軽めな体重なので吹き飛ばされたのだと思いますが。
 私も空手(少年部)で似た経験があります。間合いを取ろうと前蹴り気味に相手を押したら、私の方が体重が軽かったので自分が後ろに飛んだのです。
 やっぱり格闘技において体重差はかなり影響します。
 技の威力が違ってきます。
 長田の体重は不明ですが体つきから重量級であると推測できます。打撃の重さは加山よりも上でしょう。

 でも、このまま加山が負けたら盛り上がりに欠けます。
 今回、場外ラインの側に移動しているので、1度場外に出るなどして冷静さを取り戻すイベントが発生し、加山が反撃を試みるのではないでしょうか。
 まあ、結局バックドロップで負けると思いますが。

 長田については心配していませんが、問題は鞍馬です。
 あんまり長田が派手に活躍すると、ヤツが対抗心を燃やして変な事をしそうです。

 それに関して、トーナメントの組み合わせを早く発表して欲しいのですが…。
 誰がどう当たるのかがわからないと予想の立てようがありません。
 個人的には、長田vs鞍馬の試合が組まれていて、長田が勝ちを収めるのを見たいのですが、そう上手く行くのかどうか…。

 あと、解説か驚き役でも良いので、そろそろ丹波にも機会(ジーフィー)をッッ
by とら


2003年1月21日(3号)
餓狼伝 Vol.113

 はじめてのプロレスラー。はじめて経験する未知の耐久力であった。
 攻撃は当たっている。
 だが、人を倒すためだけに鍛え上げたはずの蹴りが拳が、通用しない。

「空手の技が―――――――― 通じない!」

 思考が混乱する。
 敵を前にしているのだ集中しなくてはならない。
 だが、常識を超えた耐久力を前にして正常ではいられなかった。

(冗談だろ)
(効いてないハズがないッ)
(デカい)
(八百長)
(見せかけ)


 試合前にイメージしていたプロレスラー像と、目の前にいる実像には大きな差があった。
 プロレスは八百長である。プロレスラーの体はデカいが見せかけである。
 それらのイメージが崩れていく。

(俺だって14年 空手やってンだよッッ)
(けっこう本気(まじ)でッッ)
(勝ってきたンだぜ 何度も何度も――――――――)
(それがまったく通じないなんて――――)


 自分が空手に費やした14年と言う年月を否定されたような感覚だろう。14年をかけて築き上げた空手への自信が崩れていく。
 未知なのは長田の肉体だけでは無い。今までに感じた事のない恐怖が起きているようだ。
 無一文で異国の路上に放り出されるような物だ。今まで常識だったものは通じないし、ポケットの中には何もない。

(空手って)
(子供だまし? ? ?)


 そんな不安が加山にとんでもない疑惑を浮かばせた。
 自分が信じた格闘技を疑うのは危険な兆候だ。
 武器が信頼できなくては戦えない。
 練習中に疑うのは構わない。だが、戦っている最中に疑うのは自分を不安にさせるだけである。
 かなり錯乱している。現在連載中の「バキ」でパニクっているシコルスキー並の錯乱だ。

 そんな加山の苦悩とは関係なく、長田がガードを固めたまま突っ込んできた。
 顔面はしっかりガードされている。ボディーにはスキがある。
 狙う所は最初から決まっていた。
 左の後ろ廻し蹴りですくい上げるように長田のボディーを蹴り抜く。

 にわのまことの「陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!」では後ろ廻し蹴りのように1度相手に背を向ける技は、相手を恐れる心があるから(超うろ覚え)と言うようなセリフがありましたが、加山も恐れがあるのでしょうか。
 でも、本当に敵を恐れている時は、恐くて相手から目を離せなくなる気もしますが、実際はどうなんでしょう。

 崖っぷちの加山の蹴りがクリーンヒットした。
 長田の目が見開き、顔中に血管が浮き出る。まるで蹴りの圧力で目や血液が押し出されたかのような表情だ。
 そして、その表情を見て加山は確信した。

(よしッッ)
(効いてる!!!)


 長田の表情が苦痛に歪んでいるのだ。ダメージは確実にある。
 それを見破った加山の口の端に笑みが浮かぶ
 この機を逃してはならない。すかさず左右の拳を叩きこむ。
 とにかく蹴る、殴る。ガードの上からであろうと構わない。
 ガードの隙間から見える長田の顔が歪んいる。

(好機(チャンス)!!)
(さんざん脅かしやがって この野郎ォッッ)


 加山の怒涛のラッシュが始まった。
 ここで倒さねば、勝利はない。そんな思いがあるのか、見開き2ページ大アップで乱舞する。
 だが、打たれ続ける長田を見守るセコンドの梶原は冷静だった
 タオルに手をかけもしない。汗も流していない。
 腕を組んだまま、闘いを見ている。

 加山は知らなかった。
 格闘家はダメージを受けた事を隠そうとするが、プロレスラーはダメージを受けた事を隠さない。むしろ観客に対しダメージを受けていることをアピールする

 加山は気が付いていなかった。
 長田はどんなに攻撃を受けても頭部だけはガードし、そこだけは攻撃を受けていない。

「開いてる――――――――」
「左のガード‥‥ッッ」
「ガラ開き‥‥ッッ」


 加山は見た。
 長田のガードが下がっている。今まで閉ざされていた顔面への道が開いている。
 ついに長田のガードをこじ開けたのだ。加山はそう思った。

「ガラ開きじゃん!!」

 下がったガードに誘われるように全身をしならせた廻し蹴りを打ちこむ。
 蹴りは、空を切った。
 長田の体が沈んでいる。両手はすでに広げられ、掴みにかかる姿勢だった。
 勢いのつき過ぎた蹴りは目標を外したため、止まらず体が半回転していた。
 長田に背を向けた状態で、足をついてしまった。
 背後から肉の気配が迫る。

 ぞく

 重力が逆転するような殺気だ。汗が上に流れている。

 胴をホールドされた。
 そう思ったときには体が引っこ抜かれていた。
 魂ごと引き抜くような、予告通りのバックドロップだった。

「がァッ」

 はじめて長田が咆えた
 次回、バックドロップは決まるのか!?

 と言う訳で今週は長田のバックドロップが炸裂するまでを加山視点で描く回でした。
 前回は長田視点で話を進めていて、最後に加山視点に代わっている。今回はそれを受けて、加山視点のままで話が進んだ。
 長田視点のままだと何を狙っているかが丸わかりなので、展開を読まれにくくするために加山視点に変えたのだろう。

 原作では長田が「プロレスラーはダメージを受けた事を隠さない」というような事を考えていたと思うんですけど(餓狼伝6巻がみつからないのでうろ覚え)、漫画版では加山視点で間接的に絵で見せている。

 ストーリーをセリフで説明せずに、絵で説明しようと言う姿勢が板垣版・餓狼伝には多く見られるこれも、その1つだろう。
 とか言っていると、次回はセリフで説明しはじめるかもしれない。

 結局、vs加山戦はプロレスラー長田の戦闘スタイルと打たれ強さ、そして1発で試合を決める投げ技を見せるための闘いだったようだ。
 やはり長田はあくまでプロレスラーとしての闘いにこだわっている

 逆に鞍馬は打撃中心で闘うのではないだろうか。
 プロレスラーが空手で空手家を圧倒する。そんなハデな展開を狙っていそうだ。
 そして、松尾象山が「萩尾流だな。だが、ちぃと危険な、そうそう久我重明の技に似ている」などと言って来るかもしれません。

 次回からは姫川&鞍馬の試合になるのだろうが、もうしばらく短時間での決着が続きそうだ。
 とりあえず、長田・姫川・鞍馬という3人の個性を見せて、それからが真の闘いになりそうだ。

 それでも、次回はバックドロップで勝った長田よりも、バックドロップを指定した松尾象山の方が目立ちそうだ。毎度の事ですが。
 次回から主人公が松尾象山になっていても驚きません

 ところで板垣先生の作者コメントで「世界で一番臭いと言われている食べ物シュル・ストロング、食ったぞ!(板垣)」と書いています。
 先週のチャンピオンでも同じ事を書いているんですけど、よっぽど臭かったんでしょうね、シュル・ストロングってヤツは。
 烈が使用後の道場並か、バキと梢江が(以下略)
by とら


2003年2月4日(4号)
餓狼伝 Vol.114

 まさに一瞬の攻防であった。
 空気の動きが見えるような濃密な時間の中で長田は加山の蹴りをかいくぐり、突っ込んでいく。
 2本の腕で加山を捕まえた。そのまま肋骨も砕かんばかりに、締めあげる。
 密着する。
 加山の背中に長田の頬がめり込む。

(バカ野郎がッッッ)
(この瞬間をッッッ)
(待ってたンだよ!!!)


 この間が4ページだった。
 長田の足がマットを踏みつけるところで、今回の餓狼伝は加山の思考に切り替わる。

 捕まった瞬間、体が宙に浮こうとしている。
 戦慄に汗が噴き出す。

「引っ掛かったッッッ」

(罠ッッ)(ブラフ)(計画的‥)


 約束された地獄へ向けて加山の短く長い旅が始まった。
 1秒にも満たないはずの時間だが、脳内を思考が渦巻いている。

「この技は‥‥ッッ」

(プロレスラー)
(TVで何度も見ている――――
 あれ―――――――――――)

「バックドロップ!!!」

(あれを俺がやられてるンだ‥‥‥‥‥)
(プロレスラーにッッ)
(2階席‥)
(3階席‥‥‥)


 この間は3ページだった。
 満員の観客席が見える。一気に景色が吹っ飛んでいく。
 ブッ飛びながらも加山は結構余裕があるようだ。
 TVで何度も見ているとは結構プロレス好きだったりするようです。
 ついでに言うと「あれを俺がやられてるンだ‥」言う所なんか微妙に感動しているようにも見えます。
 やっぱり、プロレス好きなのかも。

「すっげぇスピード」

(天井‥‥)(真上向いてるンだァ‥)


 ここは見開きで感動しています。
 正八角形の天井を見て驚いているのですが、台詞だけ読むと喜んでいるようにも見えます。
 戦闘機やF-1レースなどの急激な加速は体内の血液を移動させると言いますが、加山もすごい勢いで回転しているので、血液が移動して脳貧血にでもなっているのでしょうか。
 今週の加山は、なんか素で酔っているような状態です。

「3階席‥‥ッ」
「2階席‥‥ッ」


(一回転)(逆さになってんだァ‥‥‥‥)

「1階席(アリーナ)‥‥
 ‥‥って近いぞ!?
 着地!!!」


 ここも見開きで天地大逆転しています。
 そして加山は、やっと自分の身が危ないことを思い出したようだ。
 激突まであとわずか。「逆さになってんだァ‥」と感心している場合では無い。

「地面(マット)‥‥‥‥」

(青い)(受身‥)(無理‥‥)

「ぶつかる‥‥」


 激突寸前の見開き2ページ。
 もっと早く受身を思いついていれば、防御できたのかもしれない。しかし、遅すぎた。
 こういうレベルの闘いでは、受身をしようと思ってから体を動かしたのでは間に合わない。
 第2の本能のように、なにも考えずとも体が受けの体勢を取らないといけない。
 体が先に動いて、後で自分が受身をしたと気がつくレベルの受身だ。
 当然、そこまでのレベルに達するには日々の鍛錬が必要だろうし、空手家である加山にそれを求めるのは酷だろう。
 TVでしか見た事の無かった、バックドロップが炸裂するッ!



 滅茶苦茶に太筆で墨を入れたようなノイズが、視界に走った。
 カメラが写した最後の映像と言う感じで加山の精神に終わりが来るのが分かります。
 いや、死ぬ訳じゃないんでしょうけど。

「‥‥‥‥‥‥‥」

 今週の餓狼伝は以上で終了です。
 真っ黒な背景に白字で「‥‥‥」という斬新過ぎるラストだ。

 見開きを1コマとして数えて、表紙を抜かすと今回は12コマで終わっている
 ちなみに、見開きは6回だった。
 でも、作中時間を考えると、こういうペースなのかもしれない。スポーツ漫画が試合終了まで残り1分を1ヶ月以上かけて描いちゃうのと同じだ。

 今回、思考しているのが長田から加山に切り替わっているが、その部分だけが1ページに2コマ入っていて、他のページとは構造が違う
 だから、ここで読者は無意識の内に意識を入れ換えていて、視点の変化をスムーズに受け入れるのだろう。
 板垣先生はなにも考えていないようで、ちゃんと演出を考えているのだ。

 ところで2月26日に新宿ロフトプラスワンにて餓狼伝イベントがあるようだ。夢枕獏先生と板垣先生がやって来るらしい。
 小説版と漫画版の餓狼伝が共に13巻を発売記念になると言う、めでたいイベントだ。13と言う数字はあまり、めでたく無いが。

 前回の話でクレ太郎さんから次のような指摘を受けました。
今回の餓狼伝の中で加山が使った技は、後ろ回し蹴りではなく、回転後ろ蹴りではないのでしょうか?
僕は原作を読んでないので分からないのですが、絵から見ると回転後ろ蹴りに見えるのです。
僕自身空手をやっているのでそう思います。
まあ些細なことですが、気になったのでメールしました。
ちなみに空手の技で回転後ろげりが一番威力があります。
 そう言われると、蹴りの軌道が下から突き上げるものになっているので、これは「後ろ廻し蹴り」と言うより「回転後ろ蹴り」のようです。
 私も一応空手はやっていたのですが、こういう蹴りは修得する前にやめてしまいました。だから、ちょっと知識が欠けていました。
 情報ありがとうございます。
 今後も姫川などが華麗な足技を見せると思いますが、なるべく間違えないように精進いたします。

 ところで、長田の極め技ですがバックドロップではなく、ジャーマン・スープレックスであると言う声をちらほら聞きますが…
 ひとつ、言えることは、餓狼伝世界では松尾象山が黒と言ったら、黒です。
by とら


2003年2月18日(5号)
餓狼伝 Vol.115

 1話を丸々使って落としたバックドロップの余韻が残っている
 観客たちが歓声を上げている。
 長田の足がつま先立ちになりマットに食いこんでいる。
 大歓声も、記者団の持つカメラがたてるシャッター音も、観客が踏み鳴らす足音も、全てが遠い。

「バックドロップ一閃ッッッ」

 アナウンサーの絶叫で音が戻ってくる。
 最初の2ページでは、長田の足だけのカットや口元だけのカット、白目をむいてる加山の目のアップなど、全体を見せず1部分だけを抜き出したコマが続く。そのコマの間に観客や記者を描写して、驚愕と熱狂に包まれている背景を見せている。この間に擬音は入っていない
 そして、ページをめくるとバックドロップを決めている全身が見開きで出てくる
 紙面に擬音とアナウンサーの台詞が戻っている。

 音の無い喧騒をフラッシュバック的に見せてから、カメラを一気に引いて全景を大音量で見せる。
 映画的な演出方法だ。
 コミックスになって、前回のタメの展開から続けて見れば、より興奮する話になるのではないだろうか。

 そんなエンターテイメントなフィニッシュを見せて、長田は決まり手「バックドロップ」で一本を奪い取る
 松尾象山も大喜びだ。

「プロレスラー 長田 弘ッッ」
「たった一パツでカタをつけてしまったッッ」
「よもやッッ」
「空手の試合でこの技を見られようとはッ」
「恐るべし新ルールッッ」
「恐るべし 長田 弘ッッッ」
「恐るべし」「プロレスリングッッ


 アナウンサーも北辰館の関係者なのだろうが、長田を誉め上げている。
 長田が活躍しても、最後に勝つのは北辰館と信じているのだろうか。

 さり気なく、このルールで試合を認めたんだから北辰館って度量が広いだろと宣伝している気がする。
 いずれにしても衝撃のバックドロップで激勝した長田は梶原と勝利を静かに祝う。
 梶原もすっかり裏方のポジションが馴染んでいる。

 この勝利に衝撃を受けたのは他にもいた。
 今まで姿を隠していた餓狼がついに姿を見せる。

「強ぇぇじゃんプロレス‥」
「メチャメチャ強ぇえよ おっさんッッ」
「ヘタすりゃ優勝しちまうぜッッ」


 ………え〜、え〜〜、そう丹波である。
 久しぶりの登場だからと言って忘れてはいない。
 ここしばらく丹波の事を書いていなかったが、忘れていた訳では無いと主張したい。
 今回はなんと2コマも登場している。出血大サービスだ。
 これで、もう来年まで出番が無くとも後悔はあるまい。
 長田の活躍に不敵な笑みを見せて、なんとなく大物っぽさを出している感じと言えば良い感じだろう。

 しかし、涼二はいまさらプロレスの強さに驚いているが、この2人にとって梶原の存在はなんだったのだろうか……


 今回、新たなる餓狼が登場する。
 その男は長田以上に注目を集め、大勢の記者に囲まれていた。

「講道館柔道 井野康生」
「今更説明するまでもなく――――――――――
 正真証明のオリンピック金メダリストである」
「シドニーオリンピック――――― 全試合オール一本勝ち」


 柔道と言うとシドニー五輪柔道 無差別級の船村弓彦を思い出す。
 Vol.92で鞍馬を相手にあっさりと負けた。
 そういう過去があるので、柔道家に過大な期待をしては良くないのかもしれない。だが、この井野は少し違うようだ。

 試合前のインタビューに対し空手の練習はしておらず、ビデオで何回か見ただけと、のんびりした事を言い出す。
 あまりにもトボケすぎたコメントを残し、井野は試合場へ向う。

「ダイジョウブですかあんなので‥‥」
「空手甘く見てません‥‥‥‥‥?」

「イヤ‥‥」
「久しぶりに‥‥‥‥‥」
「背スジが凍った‥‥」


 マイクを持って1番近くでインタビューをしていた記者だけが、トボケた表情の裏に潜む獣性に気がついていた。
 柔道はオリンピックなどで全世界を相手に闘っている。勝って当たり前である日本のお家芸に、甘えは許されない。
 最近の総合格闘技でも柔道出身の選手が注目されているが、餓狼伝にもその影響が表われているのかもしれない。
 井野の静かな闘気に記者は大量の汗を流した。汗がしたたり、マイクまでもが濡れる。
 大丈夫だろうか。電化製品だけに濡れたら壊れそうだ。

 そして、世界の頂点に立った男が闘いの場に出る。
 対するは、北辰会館 加納武志である。
 剃り上げた頭に武骨そうな顔つきをした猛者と言うにふさわしい男だ。
 加納は空手スタイルで構え、対する井野は掴む気満々の構えを取る。

(オイシイ‥‥‥)
(打撃のシロウトだが知名度は絶大!)


 こーゆーのこそがオイシイんだよ。そんな感じで加納は余裕を見せているが、油断すると5年以上は勝てなくなりそうで危険だ。

 だが、加納は強気だった。
 相手は打撃の素人だ。
 加減した攻撃で打撃になれさせる必要はない。
 最初に一撃を入れ、一気に主導権を握るつもりなのだろう。

(シロウトには絶対に見えぬ技‥)
(後廻し蹴り!!!)


 だが、井野はタダのシロウトではない。
 普通はなれない舞台に上がれば落ち付かないはずだ。デビュー戦で舞い上がらないボクサーもいないらしい。
 しかし、井野は世界を相手に戦ったことがあるのだ。この程度の試合で舞いあがるほどヤワな心は持っていない。

(うん‥)
(ビデオで見たアレ‥)
(後廻し蹴りネ‥‥)

「チェイやッ」


 顔面を狙った攻撃は井野にかわされた。
 そして、ズボンの裾を掴まれていた。
 空手家が敵に打撃を与える一瞬を逃さないのなら、柔道家は敵を投げ飛ばせる一瞬を逃さない。
 ズボンの裾を引き絞り、足を巻き込んで投げ飛ばす
 井野は足を払って投げているが、片足を掴み取った時点で、加納は投げに対抗できなかっただろう。
 この感じだと、次回は加納が受身を取りそこねて一撃KOになりそうだ。

 井野は、ビデオで見ただけでも十分な対策ができている。
 この辺の柔軟な対応能力が、各国の強豪を打ち倒し頂点に輝いた井野の潜在能力なのかもしれない。
 だとすると試合を重ねるごとに、対打撃の技術は上がって行くのだろう。
 闘うごとに進化する格闘家だ。

 せっかく長田がインパクトある勝ち方をしたのだが、豪快な投げでは井野も負けていない。
 知名度では井野の方が上だろうから、観客の注目は長田から井野へ移りそうだ。
 やはり、長田は月見草なのか…

 こうなれば派手好きな鞍馬も頑張らなくてはならない。
 もう、投げは2回も出てきたので、鞍馬には卍固めでフィニッシュしてもらうしかないでしょう
 この北辰館トーナメントも、それぞれの試合をじっくりと描いてくれそうなので次回以降も楽しみだ。
 まあ、話は主要人物を中心に進むのでしょうが。

 今回のポイントは、作者に忘れられていた訳ではなかった丹波文七だろう。
 まあ、しばらくは驚き役なのだろうが、丹波には頑張って驚いていただきたい
by とら


2003年3月4日(6号)
餓狼伝 Vol.116

 前の試合でバックドロップ(?)を見せた長田に対抗するように、井野康生は加納武志をブン投げた
 まるで竜巻に巻きこまれたように吹っ飛びマットに叩きつけられる。
 マット全体をゆらし、頭部が激しくバウンドした。

 すかさず井野は加納の背後を取り、寝技に持ちこもうとする。
 さすが、世界を相手に負けられない闘いを続けてきた男である。勝てるチャンスがあれば逃さない。
 井野の口元には不敵な笑みが浮かんだままだ。
 圧倒的な実力差からくる余裕だろうか。単にしまりの無い口元なのだろうか。

「あれ‥」
「アララ‥」
「終わってたンすね」


 追撃の寝技に入ろうとしたのだが、最初の投げで全てが終わっていた
 虚ろな目を開いたまま加納の意識は飛んでいる。
 撃たせるだけ撃たせて逆転した長田とは対称的に、一撃も許さず叩き潰した。

『蹴り足を捕っての 一本背負いッッ』
『鋭すぎるぞ 一本背負いッッ』


 この超大技にアナウンサーも大興奮している。
 足に一本背負いを敢行し圧勝した井野であるが相変わらずその表情には気負ったところが無い。
 天然、もしくは癒し系格闘家なのだろうか。

『触れたら 即 投げッッ』
『そこに打撃のチャンスなど存在しません』
『日本のお家芸 柔道ッッ』
『やはり空手にとって最大の敵でしたァッッ』


 少し昔のTVなんかだと、正義の柔道家の敵は悪の空手家(長髪で道着は黒)と相場が決まっていたらしい。
 当時の因縁が現代にも続いていると言うことなのだろう。

 ついでに言うと極真の大山総裁は「打撃は1拍子だが、投げは2拍子なので、打撃の方が有利」という理論を唱えていました。
 ところが、井野は接触と同時に投げ、打撃神話を崩した
 こんなヤツを相手に打撃陣たちはどう対応するつもりなのだろう。

 だが、次の対戦者は空手家ではなかった。
 餓狼2匹が井野をにらんでいた。
 予想通りの潜在能力を確認し、予想以上の実力を見せられ、背に冷たい汗が流れている。
 プロレスラー、長田と梶原であった。

「素質は俺の10倍だな‥‥」
「だからって‥‥‥‥‥」
「逃げられねェ」


 素直に長田は相手の素質が上だと認める。
 ちなみに、原作では長田より梶原の方が素質があると描写がされていた。あくまで原作での話だが。

 2回戦の相手も恐るべき強敵であった。
 しかも、ルール変更によるメリットも両者同じである。
 掴み、投げ、極めるのを得意としている。

 だが、2人のポジションは微妙に違う。
 井野はまたもや記者団に囲まれフラッシュの嵐を浴びせられている。
 長田の周囲には誰もいない。梶原がいるだけだ。
 日本を代表するアスリートと、組織の代表をさせてもらえなかったプロレスラーだ。
 ひまわりと月見草のように対照的な2人であった。
 次の闘いは雑種のしたたかさを長田が見せるのか!?


 試合は続く。
 次の闘いは、テコンドー vs 空手であった。
 変幻自在の足技でテコンドー川田が攻める。
 だが、その蹴りは全て防御されていた。
 テコンドーの蹴りの嵐をかいくぐり、オノを振り下ろすような空手の下段回し蹴りが決まる。
 一撃であった。
 その一撃で川田は膝をつき、立ち上がれない。

『マシンガン VS. バズーカ』
『空手 君川京一が放ったバズーカが――――――』
『テコンドー川田治の全てを奪い去ってしまったッッ』

『全て』は言いすぎだろう、アナウンサー。
 しかし、前評判があったのに無名の選手(読者的にとって)に一撃で倒されては、全てを失ったと言えるかもしれない。
 とりあえず、これ以後の出番は絶望的だろう

 川田の全て(あまり量が無さそうだが)を奪った男は、堤をあっさりしたような顔つきと坊主頭で、古風な雰囲気を漂わせながら静かに正座をしている。
 隠れた強豪 君川京一、今後の活躍が楽しみである。
 君川の見せた一撃必殺という空手の神髄に松尾象山も眉毛を八の字にして大喜びしている。
 ついでに主役も1カットだけ登場している。知らない人が見ればだたのお客さんにしか見えないのが悲しい。


 次に登場するは、
『地上最強の立技の称号を欲しいままにするムエタイッッ』
『タイ国内にあっては最重量級王者ラクチャート・ソーアジソン』


 最重量級ではあるが、割りとスリムな体型だ。ムエタイ選手の弱点は体格にあるのだろうか。
 一応、旧ルール通りに上着も着ている。
 袖なしズボン無しという、かなりラフな格好であるが、長田に比べればずっとマシな格好だ。
 キッチリ相手の土俵に立った上で、敵を倒すという気迫と自負が感じられる。

 そして、対戦相手はッ、
『北辰館最重量にして優勝候補の一角ッ』
『工藤健介その人だッッ』


 熊をイメージさせるヒゲ面の巨漢であった。
 格闘漫画では大会最大選手は活躍できない傾向があるが、工藤はその悪しきジンクスを破る事ができるのか!?
 やっぱり、デカい人を圧倒するのはインパクトあるし。

 そして、姫川と鞍馬の出番はいつだろう?
 いまだに大会参加者人数が不明なのではっきりとは分からないが、大会参加人数を32人と仮定すると、今回登場した君川・ラクチャート・工藤、の誰かが長田の3回戦の相手になり、4回戦が鞍馬、5回戦が決勝で姫川になりそうだ。
 まだ試合をしていない者は、姫川、鞍馬、立脇、片岡、安原、神山、椎野の7人なのだが、1人ずつ試合をしていくにはちょうど良い人数かもしれません。
 このうちの何人が脱ぎ出すんだろう?
by とら


2003年3月18日(7号)
餓狼伝 Vol.117

 ムエタイ、我々板垣漫画の読者はこの言葉に感情をゆさぶられます。
 曰く、噛ませ犬。
 曰く、無勝の王者。
 曰く、デコピン以下。
 曰く、なんでムエタイの扱いが悪いんですか? 個人的に恨みがあるとか……?

 私たちは、ムエタイが実戦で遅れをとらなかった所を見たことがありません。
 はっきり言って、虐待されていますッッ

 そのムエタイが、もう一方の噛まれの雄である巨漢を相手に悲願の初勝利を得られるのかッッ!?
 今、呪われた格闘技ムエタイと巨漢が、雌雄を決する。
 メスはどっちだッ!?

 ラクチャート・ソーアジソン 173センチ・75キロ。
 工藤健介 193センチ・120キロ。

 身長差20センチ、体重差45キロ
 通常の競技ではこの身長差は大きい。大きすぎる。

『弱き者 小さき者の為に存在するハズの空手――――――』
『何故(なにゆえ)に神はかくも強大な男に与えてしまったのかッッ』
『体重無差別という大差別ッッ』


 妙に足の長いソーアジソンが上下にリズムをとりながら相手を待ち、身長は20センチ差なのに足の長さはあまり変わらない工藤が前屈姿勢でジリジリ進む。
 120キロの肉体が進むのだ。重戦車が迫ってくるような迫力がある。
 その圧力にひるむことなくソーアジソンは正対する。
 セオリーでは軽量の選手はスピードを生かし動き回るところだが、あえて足を止めている。
 打ち合いを挑む覚悟なのだろうか。恐るべし、ムエタイ戦士ッ。

 バシッ

 音だけが響いた。
 それを見ることができた人間はいたのだろうか。

『音が先だッッッ』
『音の後のラクチャートの動きによって――――――』
『辛うじてローキックだったことがわかるのですッ』


 克巳のマッハ突きに匹敵するスピードだ。
 テコンドーのような多彩さはないが、一直線に打ちこまれる強烈な蹴りが工藤の腿にたたきこまれていた。
 ふたたび肉が肉を打つ音が響く。
 だが、打たれた工藤の表情に変化がない。
 打ったソーアジソンの表情にも変化がない。
 これだけの蹴りを見せながら、まだ互いに探りあっているのだろうか。

 観客席で見えない蹴りに驚愕する涼二であったが、丹波文七は表情を崩さない。
 丹波はこんな所にいても主人公である。彼にはあの蹴りも見えているのかもしれない。

 ローを打たれても表情を変えずジリジリ近づく工藤に、ソーアジソンもあせりを感じているのだろう。
 次の狙いはハイ―――― 頭であった。
 どんな人間だろうと頭部に打撃を喰らい脳がゆれれば立っていられない。
 遊びも小細工も一切無しでソーアジソンの見えない蹴りが工藤を襲う。

『!!!』

 モロに入った。
 工藤のヒゲ面がひしゃげる。

 
ドンッ

 だが、工藤は打たれながらもを突き出していた。
 両足を踏ん張り、腰をため、ガードの事など考えない全力の右正拳が、ソーアジソンをふっ飛ばした。

『○×△ッッッとッッ』
『飛んだ〜〜〜』『〜〜〜〜〜』『〜〜〜〜〜〜〜』『〜〜〜‥‥ッッ』


 長々と4コマの間ふっ飛び続け、観客席にソーアジソンは落下した。
 その破壊力に梶原は冷や汗を流す。
 松尾象山は満足そうにうなずく。
 丹波文七は目を見開く。
 長田は表情を崩さない。
 なんか、もう涼二= 梶原= 驚き役という図式が成り立ってしまっている。

『45キロの体格差を――――――』
『縮めるには至らなかったァッッッ』
『恐るべきは工藤健介ッッ』
『優勝候補の名に恥じぬ』
『堂々たる勝ちっぷりだ』


 ムエタイ復活の夢を粉々に打ち砕き、ハイキックで折られた奥歯2本を代償に工藤が勝利した。
 一言も声を発さない、無言の勝利だった。
 テコンドーを破った君川も無言のまま勝利したのだが、北辰館の選手は無口が多いのだろうか
 両者台詞の無いまま北辰館の工藤と君川が次に闘う。
 ローキック一撃の男と、右正拳一撃の男の同門対決だ。
 ある意味では、テコンドーとムエタイの代理戦争と言えるかもしれない。

 折れた歯を無言のまま握り締める工藤の不気味な迫力と、その恵まれた体格に分がある気がする。
 テコンドーとムエタイで比較すればなおさら…、あ、イヤ、なんでもないっす。


「鍛錬の厳しさで北辰館を凌ぐとすれば」
「この流派以外にはない」
人間凶器集団 志誠館の登場である」


 次の出場者は他流の空手家・片岡輝夫だった。
 1トンの土管を粉砕するパワーファイターだ。
 彼の対戦相手は次号明らかになるのだろう。

 私の推測では、この時点で出場選手の1/4が試合をしている。
 バランスを考えると、そろそろ姫川と鞍馬の姿を見たいところだ。
 予想される残りの選手は23名だ。
 その中で名前が判明しているのが椎野一重、神山徹、安原健次、姫川勉、立脇如水、鞍馬彦一ら6名である。
 彼らのすみやかなる登場をせつに願う。

 今までの4試合では、名前がすでに出ている選手が活躍できる訳ではないとわかった。
 その点、片岡は「荒行」という見せ場があるので勝ちあがると思う。
 逆に椎野一重、神山徹、安原健次の3人はちゃんとセールスポイントを見せないと、1回戦敗退しそうです。

 そして、1回戦敗退となった川田とラクチャートの闘いを振り返ると、板垣世界ではテコンドーとムエタイは大人しく負けていろってことだろうか…
by とら


2003年4月1日(8号)
餓狼伝 Vol.118

 最近の展開は、毎回主人公が替わっている感がある。
 数々の猛者が入れ替わり立ち替わり舞台に上がり、主役になっている。
 ちなみに真の主役である丹波は、あと2年ぐらい舞台に上がることは無いだろう。

 数ある空手の流派の中でもココは別格だった。
 人間凶器集団・志誠館出てきただけで会場全体がピリッとする。
 さっそく驚き役でもある梶原が解説を加えてくれる。
 解説してくれるのはいいのだが、なんでこの人はこんなに詳しいんだ?

「志誠館の猛ゲイコの特徴」
「それはズバリ痛みだ」
「コンクリートに形容される砂袋を叩いて拳足(けんそく)を鍛える」
「空手界で最初にこれを取り入れたのは志誠館だ」


 空手界で「最初」に、ってことは後で取り入れた所があるらしい。
 こんな物騒な練習方法を取り入れなくてもいいと思うのだが、取り入れるという事は効果があるのだろう。
 そのうちに全国の空手道場に砂袋が導入されて少年部の子供も拳を血まみれにしながら稽古をする姿が見られるようになると思います。
 しかし、本当に梶原は空手に詳しいですね。

「拳――――――」
「足――――――」
「肘――――――」
「膝――――――」
「そして頭――――――」
「あらゆる角度で岩のような砂袋へ叩きつける」


「無論一回一回を全力で―――――」
「数千回―――――」
「数万回―――――」
「数十万回――――」
「そこに伴なう激痛は」
「ときには発狂者が出るとさえ言われている」
「"痛み"という地獄をくぐり抜けたその拳足の威力たるや―――――」


「耐久力一t(トン)に及ぶ土管を粉砕し―――――――」
「バスケットボールを破裂させ―――――」
「圧縮バットを断ち切る!!」


 己の肉体全てを武器化する狂気の荒行だ。
 手足だけではなく、頭も打ちつけるあたりが危険過ぎる。
「痛み」と言う点ではバキに出てきた「毒手」の練習方法にも負けていない。
 それだけに、この修行で生み出された破壊力は常識を超えている。

 ここに出ている試し割りの例は、実際に拳道会でやっていそうなのが恐い。少なくとも砂袋の鍛錬は現実に行っているらしいが。

 これらの鍛錬を集約させるのが、かつて片岡が言った次の言葉だと梶原は語る。

"少しだけ耐えられるということ―――――――"
"それは永遠に耐えられるということ"


 少しだけ痛みに耐える。それを繰り返していけば永遠に痛みに耐えられると言うことなのだろう。
 この凄まじい言葉に、長田も汗を流す。
 長田もプロレスラーとして痛みに耐えつづけてきた苦しみを耐えるということが、実感できるのだろう。
 真剣な表情で、長田はこの試合を見るのだった。

 志誠館・片岡輝夫(182センチ・95キロ)
 対するは、北辰館・会田勝(173センチ・92キロ)

 片岡は広いスタンスをとり動かない。
 会田はフットワークを使い、細かく動く。

 片岡は一撃狙いだろうか。
 会田はコンビネーションで攻めるつもりだろうか。

 同じ空手の道を行く二人であるが、そのスタイルは対照的だ。
 そう言えば、片岡は坊主頭でファッションもクソも無いが、会田は髪を染めていてファッションにも気を使っているようだ。
 まさに、対照的な2人といえる。

 今まで登場した北辰館選手の加納武志、君川京一、工藤健介の3人はいずれも一撃で試合を決めようとする、どっしりしたスタイルだった。
 フットワークを意識するなど、会田は今までの北辰館選手とは外見も戦法も違っている。
 門下生全員を1つの型にはめるのではなく、個人ごとに合うスタイルを提供して能力を伸ばしていくのだとしたら北辰館の選手育成能力は高いと言える

 志誠館の荒行スタイルは残った人間は確実に猛者になるかもしれないが、残るのはごくわずかだろうし、完成するのは全員同じ志誠館スタイルになる

 それを考えると、松尾象山はただのオレ様最高な人間ではなく、教育面での功績も大きいのかもしれない。
 松尾象山と言う山の頂きは登っても登っても見えてこない。

 などと考えているうちに会田が「マゾ集団‥‥」と志誠館に対し暴言を吐いていた。
 ………技術面だけじゃなくて、精神面の教育もお願いします、押忍。

「空手ってのはさァ‥‥」
「物ォ壊して見せる術じゃない」
「いかにして―――――――― 効率よく―――」
「人体をブッ壊せるかの――――――」
「"理"そのものなんだよォッッッ」


 口のきき方はともかく、会田の考え方は実に合理的だ。
 スポーツとしてはそれで間違いない。
 自分のリスクを減らし、効率よく攻撃し、確実に勝ちを取る。スポーツマンであればその考えは正しい。
 だが、相手は今の時代では希少な、真の武士(もののふ)だったのだ。

 会田はフェイントをおり交ぜ、ロングレンジから前蹴りでアゴを狙う。
 いきなり大振りな攻撃をしているが、トーナメントを勝ち上がるため、余計な体力を使わないように考えているのかもしれない。
 伝統派には無いコンビネーションとフェイントを使い、確実に当てる
 そして一撃で倒せるアゴを狙う
 効率を考えた必勝の蹴りだった。
 だが、片岡の心には微塵の動揺も無かった。

(壊れ易(やす)い―――――――)
(あんなにも壊れ易いものが―――――――)
(わたしの顎(あご)に向かって―――――――)

 激突ッ!
 片岡が額で迎撃した
 会田のつま先がぐしゃぐしゃにつぶれ足の指が折れてめちゃめちゃな方向に曲がっている。
 砂袋で鍛えぬいた頭は、スポーツマンの常識で砕ける物ではなかった

 会田が倒れると同時に、片岡は残心の構えをとる。
 だが、なぜかその構えは倒れた会田とは反対側、自分の背後に向けてとられた。
 今まで口をへの字に結んでいた片岡がはじめて口元を緩めた。

(そうか――――)
(相手は一人だった)


 背後へ構えをとったのは、多人数との闘いを想定してのものだった。
 片岡輝夫は、冗談抜きで乱世を生き抜く武士の心を持っていたようだ。
 試合であっても、実戦の心を忘れない。
 効率よく勝利を狙おうとするスポーツマンの甘い考えでは歯が立たない。
 この凄みは、Bブロック(仮)勝ち上がりの有力候補といえる。

 餓狼伝は片岡という魅力的なキャラクターの登場でますますヒートアップしています。
 この片岡の次の対戦相手は誰になるのか楽しみだ。
 やっぱり、お気楽トンボの鞍馬が似合いそうな気がするのだ。
 姫川だとスカすだけで終わりそうだし。

 しかし、他流の空手家がこれだけ活躍しちゃうということは、最後の他流空手家・伝統派の神山は負けそうな予感があります。
 伝統派空手もなかなか勝てない流派だ。

 ところで、大会が始まってから姫川と鞍馬の姿がほとんど出てこないんですけど、なにをやっているんでしょう。
 鞍馬はひたすら携帯電話で喋っているという可能性が高いのですが、姫川は冴子といちゃついていたらイヤだなぁ…。かなり、相当。物凄く。
by とら


2003年4月15日(9号)
餓狼伝 Vol.119

 会場にドリアン発見ッッ!
 バキで最近見ないと思っていたら、こんな所にいたなんて。
 と、思っていたら変装していた藤巻十三であった。

「髪の色ツヤがカツラであることを示している」
「口髭‥‥‥‥ 生え際からツケ髭であることは明白」


 肩にかかる程度の白髪である。ドリアンだ。
 鼻の下から、アゴにかけてモジャっとはやした白いヒゲだった。ドリアンだろう。
 サングラスをかけているのも、ドリアンっぽい(こじつけ)

「トレンチコートを選んだのは‥‥」
「発達した筋肉を隠すためでしょう」


 マッチョ親父といえばドリアンしかあるまい。
 だが、このドリアン的容貌の人間の中身が藤巻十三だという。
 まあ、白い髪とヒゲの間から見える肌が黒いので藤巻なのだろう。こんがり焼けたドリアンと言う可能性も捨てがたいが。

「本部へ連絡してください」
「緊急配備です」
「時効まで後9日‥‥」
「彼の"死に物狂い"はあの変装ぶりからも十分伝わります」
「10人以下ではハナシになりませんよ」


 さすが、あらゆる組織に浸透している暴力集団・北辰会館である(団体を間違えてます)。
 会場にも警察関係者がいるのだ。
 いかにもキャリア組っぽい刑事が冷徹な指示をだした。
 フレーム無し眼鏡の奥で細い目が歪む。群れでの狩りを好む犬の目だ。

 藤巻はたしかに人を殺めている。だが、それは藤巻が悪いわけではない。
 おとなしく出頭していれば無罪になったかもしれないのだ。
 だが、藤巻は逃げ出した。彼の抱えている闇は深く重い。
 漫画版に出てきた回想シーンは闇の入り口にすぎない。
 日暮れて道遠しと言うが、藤巻の心情はまさにそれなのだろう。
 時効まで待てない。倒すべき相手が墓に入ってからでは遅いのだ。
 藤巻がただ1人弟子と呼べる男・長田がしくじったその時は……。

 最後の執念が、狂気となって藤巻の足をここに運んだのだろう。
 刑事の言葉ではないが「彼の"死に物狂い"はあの変装ぶりからも十分伝わ」っている。

 だって、目立つもん。
 追われている人間が目立ってどうする。狂ってる。

 白髪、ヒゲ、トレンチコート。100点満点の変質者スタイルだ。
 自分を客観視できていない。

 そんな格好してるから警察に見つかるんだってばッ!

 となりに座っている人は平気な顔をしているけど、俺だったらイヤだよ、こんな人。
 なんか黒くてゴツイし、ズラっぽいし、つけヒゲだし、汗かいていそうだし、「冴子、冴子」ってつぶやいていそうだし、パンツ洗っているに違いない

 なんにしても、哀しき逃亡者・藤巻十三を包囲の輪が包もうとしていた。
 藤巻に明日はあるのか?
 時効まであと9日間……


『決まった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ』
『開始わずか!!! 10秒!!? 20秒!!? 瞬く間の速攻だァッッ』
『古豪 門田賢次ッッ』
『堂々の勝ち名乗りだッッ』


 藤巻の変装にダメ出しをしているうちに試合が1つ終わったらしい。
『古豪(こごう)』とは、『長年の経験を積んだ、力量のある人。ふるつわもの。ベテラン。(大辞林 第二版)』なのだが、門田は特に老けているわけでもない。
 見た目は若いのだが、高校生の頃から空手をやっていたのだろうか。

 門田の次の相手は、志誠館・片岡輝夫である。
 ちょっと門田では勝てそうにない気がするが、この世界には先に底を見せた方が負ける法則があるので、今回何も見せなかった門田にもチャンスがある。
 見せなかったのではなく、見せる物が無かった可能性もあるが。

 次に登場するは、キックの安原健次だった。
 試合前だと言うのに毛抜きで細い眉を作っています。
 そう言うのは、前日にやれ。と言うか剃ってから描くのが普通なのでは?
 と言うのは冗談で、おそらくこれが安原の精神集中方法なのだろう。
 彼は試合前に眉を抜いて、その痛覚を味わう事で精神を統一するのだ。
 ジョジョ第2部のワムウのように目玉をつぶすよりも健康的だ。

 安原はイレズミを入れていたりして、一見チャラチャラしているように見える。
 さらに試合前に彼女にキスをさせて頬に真っ赤なキスマークをつけたまま試合に臨む。
 この辺の不遜な態度は魔裟斗(マサト)をイメージしているのだろうか。(K-1オフィシャルサイトでの経歴

 なんか、鞍馬とキャラクターがかぶっている気がするが、うまく差別化を謀ることができるのだろうか。
 鞍馬と安原が闘ったら、まず彼女とのイチャつき合戦から始まりそうだ。

 なお、原作の夢枕先生は、魔裟斗のことを影ですごい努力をしているので期待していると言っていた。
 影では物凄いトレーニングをしているというオチは、鞍馬がすでにやっている。同じネタが続くだろうか。
 その辺が、安原の不安要素だろう。


 安原の対戦相手は、コイツもタダ者ではなかった。

『北辰会館ウランバートル支部 ドルゴスッッ』
『小山のように盛り上がった』
『肩ッ』
『背中ッッ』
『モンゴル相撲横綱の経歴を十分に物語りますッッ』


 コイツはどうみても、横綱・朝青龍(本名ドルゴルスレン・ダグワドル)関がモデルでしょう(相撲協会での経歴)。
 キスマークつきで登場する安原の不遜な態度に、ドルゴスの額に血管が浮き上がっていく。
 モデルより、数倍恐い貌(かお)になっている。
 これはただごとでは無い。

 それにしてもモンゴルにも北辰会館の支部があったとは驚きだ。
 マクドナルドにも負けていない世界規模の事業展開をしている。

『波乱は必至だ』
『キック VS. モンゴル相撲ッッ』


 空手はどこへ行った? なんの大会じゃッ!?
 油断すると、コスプレの指名手配犯は紛れ込んでいるし、試合上ではキック vs. モンゴル相撲。
 大会がどこに転がっていくのか判別不能だ。

 そんな中で、安原vsドルゴスが始まる。
 これは予想するのが難しい。
 ルールはドルゴスに有利にそうだ。モンゴル相撲出身であれば組み技もできるだろう。
 ただ、安原にはナニかありそうだ。
 コイツがどんな牙を隠しているかで、今後の展開が変わってくるだろう。

 安原には不安要素その2がある。
 今までの傾向で、おしゃべりは勝てない。
 喋りすぎの安原はちょっと危険だ。
 でも、相手をなめているような発言が無いのでギリギリOKかもしれない。
 と言う訳で、6:4で安原の勝利と予想する。
 だって、ここで勝てないと、みじめだし。

 今週の作者コメントだが『ボブ・サップは強いがファイターではない。痛みで倒れるものにその資格はない。(板垣)』
 板垣先生は、ボクシングをやっていた時期に、1度は痛みで倒れて敗れ、痛みで倒れた自分が許せなくてもう1度同じ相手に挑んで文句無しの壮絶なKO負けを喫したことがあるそうだ。
 そんな経験を持つ板垣先生らしい、厳しいコメントだ。

 夢枕先生はあれだけの肉体を持った人間がどれだけ強くなれるか見たいと言っていましたが、精神面での強さも鍛えないとやっていけないと思う。
 その辺の事情もあるので、今大会でも嫌ダウンをする選手が出てくるかもしれない。

 しかし、藤巻はあの変装で本当にごまかせていると思っているのか?
 女装しているのと同じぐらい不自然だ。
 あそこまで怪しげだと、本当にドリアンだったと言うオチかもしれない。
by とら


2003年5月2日(10号)
餓狼伝 Vol.120

 やっていることは鞍馬と大差ないが、安原健次を嫌う声はあまり聞かない。
 ふたりの差はなんだろう。
 アレかなぁ、鞍馬って基本的ににやけ顔だから、印象悪いのかも。
 それより、久我さんに暴言吐いたのがマズイのかったのかもしれない。

 そんな事を考えているヒマはない。
 はじめ、の合図もまたずにドルゴスが突っかける。
 完全な奇襲+反則の頭突が安原の鼻にめり込む。
 あわてて審判が間にはいるが、ドルゴスは無言のまま安原にらみつける。浮き出た青筋も消える様子が無い。
 神聖な闘いの場を女のキスマークで汚した罪は重いッ、と言わんばかりだ。
 同じキスマークでも、これが男のキスマークだったりしたら………、最悪だな。

 安原の鼻が曲がって大量の鼻血が出ている。涙だって出ている。
 だが、安原は一言の抗議もしなかった。

「ボサっとしてたオレがワリィんだ」

 やはりこの男はチャラチャラした外見とは裏腹に、恐るべき闘いへの執念を持っているようだ。
 会場で受けた借りは、試合で返すつもりなのだろうか。
 なんか、控え室で喧嘩を売られてもちゃんと試合場で決着をつけそうだ。

 折れた鼻をつまんで元の位置に戻すさまが手馴れている。
 鼻が折れても、試合を放棄したりしない男なのだろう。
 痛みでは倒れない男であり、武道家の心も持っている。この男も「止め」の合図では止まらないタイプだろう。

 もう1つのポイントは安原が、タイでランキング入りしている選手だと言う点だ。
 審判が存在する競技では、地元有利という傾向がある。
 タイで片寄った判定に泣いた事もあったのかもしれない。
 抗議しても聞いてもらえるとは限らない。ここは敵地なのだ。
 だから、誰の目にも明らかな形で勝利をものにする。
 それが安原の歩んできた過酷な過去なのかもしれない。

 本来なら無効試合になってもおかしくないこの展開に、松尾象山が100点満点の笑顔でサムズ・アップし、まったく問題なく試合続行となる。
 やはりこの世界は松尾象山が白といったら、白らしい。

 キック・安原健次 176センチ・71キロ
 北辰会館・ドルゴス 183センチ・131キロ


 体格差は圧倒的だ。
 117話でのラクチャート・ソーアジソン(173センチ・75キロ)は工藤健介(193センチ・120キロ)との体格差に涙したが、安原はこの差をくつがえす事ができるのだろうか。

 はじめの合図がかかる寸前、安原は前足を少しもどした。
 そして、合図と同時に散歩をするかのように普通に歩きだす。
 反則の奇襲で内心煮えていそうなだけに、合図と同時に突っ込んでいくかと思いきや、意外にも静かな歩みだ。
 これにはドルゴスも虚をつかれ、反応が遅れる。

 ジャブが鼻に当たった。
 あくまでクールに、歩みすらフェイントに使用し安原は相手の鼻に左拳を当てた。頭突きに対するお返しだろうか。
 そして、ここからが安原の真骨頂であった。
 軽量級が重量級に、真っ向から打ち合いを挑む。

 鼻へのジャブは軽かった。これはダメージを狙ったものと言うより、安原の茶目っ気だろう。
 そして、次からの攻撃が本場タイで鍛えられたキックボクシングの攻撃だった。
 全力で殴り・蹴る。
 ローで崩し、ハイを決めていく。

 対するドルゴスも全力の打撃で答える。
 足技が苦手なのかパンチのみの攻撃だが、一発一発がバズーカーだ。
 安原はカメ状態となり必死のガードをする。
 そして、一瞬のスキをみつけて反撃の拳を入れる。

 ノーガードで攻撃に専念するドルゴス。
 テクニックで受ける攻撃を最少にし、蹴りと突きのコンビネーションで対抗する安原。
 試合開始からクライマックスだ。

 テクニックや手数だけならテコンドーの川田やムエタイのラクチャートの方が上かもしれない。
 だが、安原の気迫はこの2人を凌駕している。
 真正面から打ち合って、体重差60キロの人間を後退させている。
 本来ならあり得ない闘いだ。

 必勝を確信したのか安原の口元に笑みが浮かぶ。
 裏拳気味の拳がドルゴスの眉間に当たる。
 ドルゴスは思わず目を手で押さえ、スキだらけになる。
 そのスキを安原は狙っていた、「71キロのテロリズム」跳びヒザ蹴りがドルゴスのアゴに命中し、歯を折りまきちらした。


 今回は予想を超える熱い展開だ。
 安原が実は闘志あふれる男であるという展開は予想の範囲内だったが、ここまで熱いとは思わなかった。
 安原が抗議をしなかったあたりからドルゴスの青筋が消えている。ドルゴスも安原を認めたということだろうか。

 だが、安原がこのまま勝つのかはまだ微妙な気がする。

 なにしろ、ドルゴスはまだ喋っていない。せっかく旬な闘士なんだしなにか喋らせて欲しい。
 それに、ドルゴスは組み技も出していない。
 このままではモンゴル相撲横綱の経歴が泣く。

 そして、気になるのが安原の出した眉間への攻撃だ。
 審判がこれを目への攻撃と判断し、反則を宣言するかもしれない。
 北辰会館有利な判定になる可能性は非常に高い。
 アナウンサーはかなり他流派に対して好意的なことを言っているが、審判までそうとは限らない。
 長田も危うく退場になりかけた。

 まあ、あれは長田がいきなり脱いだのがマズイのだが。
 はずみでパンツまで脱げていたら、言い訳もできずに退場だっただろう
 もちろん放送もできない。


 しかし、審判がイチャモンをつけてもドルゴスが「ボサっとしてたオレがワリィんだ」と言って試合再開、モンゴル相撲の舞を舞い始める…と言う展開を希望する。
by とら


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