餓狼伝 (VOL.171〜VOL.180)
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2006年6月27日(14号)
餓狼伝 Vol.171
鞍馬がたくらむ卑劣な(断定)フィニッシュホールドとはいったいナニかッ!?
絶滅危惧な純粋の武道家・片岡輝夫は生き残れるのか?
肉体的だけじゃなく、精神的に再起不能になりそうで不安だ。
前回のラストで鞍馬はポカポカ殴っていたのだが、今回は本格的に締めにはいった。
プロレスラー鞍馬彦一の全力ヘッドロックだ。
安原健次は、このヘッドロックだけで倒されている。
地味だが強力な攻撃なのだ。
『板垣恵介の格闘士烈伝』でダイナマイト・キッドのすごさを伝えたのがヘッドロックだった。
刃牙と闘った猪狩が最後に出した技もデビュー戦と同じヘッドロックだ(グラップラー刃牙33巻 289話)。
つまり、プロレスラを象徴する技だと考えることができる。
でも、鞍馬が使うと、なんか……。う〜〜ん。
無限の痛みに耐えることができる片岡も苦痛を感じている。
打撃の苦痛にはなれていても、締めつけられる苦痛ははじめてなのかもしれない。
片岡は、尻をツネられていたときも痛がっていた。
やはり未知の攻撃には不安や恐怖を感じるものらしい。
たとえば、未知の妹が十二人いるといわれたら最初に出てくる感情は、恐怖だよね?(自分基準でものを考える)
鞍馬のヘッドロックがひたすら容赦なくおそいかかる。
ヘッドロックの苦痛に耐えられなくなったら「天地真理」を連呼して耐えるんだ!(by アグネス仮面)
(こいつは効くだろう)
(こいつをやられていると)
(人間ってのは不思議なもので――――――)
(ある共通の心理へと―――― 辿りつく)
やはり、ヘッドロックは危険なワナだった。
鞍馬彦一が片岡に毒をそそぎこんでいるのだ。
まともに闘っても勝てる実力を持ちながら、なぜ鞍馬は策を弄するのだろうか。
実は、自分に自信がないのか?
鞍馬は片岡の半生を想像する。
子供のころに、道場に入門した。帯もちゃんと結べない状態からスタートだ。
無力。不安。恐怖。挫折。
乗り越える。
叩く。飢餓感。解放。
破壊衝動。
人間凶器が誕生していく半生を鞍馬は想像する。
いくつかある武術から、空手を選んだ男だ。
体は空手に特化していく。
殴り、蹴り、破壊するための手足であり、体だ。
(そんなアンタを……………)
(自由にしてやろう)
鞍馬が、片岡を解放した。
罠だッ!
こりゃ、全力で罠だ。
もう1/4年ぐらい言いつづけているけど罠にちがいない。
きっと、バンダナの下がハゲになっていて全校生徒を爆笑させたりするんだ。
それか、ビヨ〜〜ンと意味無くカツラが跳ね上がり、相手があっけに取られているスキに攻撃する。
鞍馬彦一の魔性のバンダナがついに爆発する!?
「このォオオオ」
激昂した片岡が鞍馬につかみかかった。
そして、ヘッドロックだ!
ヘッドロックなのか!?
空手家が打撃をすてて組みついた?
なんだかしらんが、とにかくマズい。
鞍馬のバンダナにふれたらドリアンとドイルを足したぐらいの大爆発をするぞ。
そして、アフロ完成だ。
「やっぱりネ ♥(はぁと)」
バックドロップ!
しまった、鞍馬が狙っていたのはコレだったのか!?
バンダナに気を取られて素で気がつかなかった。
え、じゃあバンダナってなんだったの?
片岡以上に私がダマされていた。
そして、片岡の体は落下の途中である。
もはや回避不能か?
絶望的な状況で次回へつづく。
餓狼伝の原作者・夢枕獏はバックドロップが得意なプロレスラーは布石としてヘッドロックを相手にかけると著書に書いていた。
人間の心理として、敵に攻撃されたら同じ技を返したくなる。
マリオカートでアカこうらを投げつけられたら、アカこうらを投げ返したくなるのと同じだ。
そして、ヘッドロックの体勢は、バックドロップで逆転できる体勢である。
ヘッドロックはバックドロップをかけるための撒き餌なのだ。
今後の人生で、プロレスラーにヘッドロックを多用されたときは、このことを思い出そう!
相手を心理的に追いつめ、罠に誘導して、しとめた。
鞍馬の見事な心理戦ではある。
いまいち納得できないのは、鞍馬が強者でありながらセコいからだろうか。
相手を侮辱しないで闘えば、それなりに応援できるんだけど。
最近のイブニングは「ヤング島耕作」の傲慢社員・亀渕と鞍馬の失脚を待つのが最大の楽しみです(暗い楽しみだ)。
亀渕は次号で蒼ざめるらしいので、のこるは鞍馬だ。期待にこたえろ!
つぎに鞍馬と闘う長田には、鞍馬を蒼ざめさせたあとで赤く染めなおして欲しい。もちろん血で。
ただ、不安材料が多いので、長田が返討ちにあう可能性を否定できない。
・不安材料その1 「竹宮流がバレている」
164話で思いっきり竹宮流を使ってしまった。
古流柔術を使うことが鞍馬にバレたのは痛い。
でも、藤巻はよろこんでいるみたいだし、良いのか。
鞍馬にコピーされたのも不吉だけど、まだチャンスはある。
・不安材料その2 「セコンド」
鞍馬の背後にはグレート巽がいる。
長田の後ろには梶原だ。
説明不要で格がちがう。
でも、長田が負けたら梶原もおしまいだけど、鞍馬が負けてもグレート巽は無傷だ。
むしろツンデレ路線と言い訳して、長田のサポートにまわるかもしれない。鞍馬が負けてもとくに問題ないのだ。
グレート巽は絶対に負けない賭けをしている。
・不安材料その3 「久我重明」
鞍馬を鍛えた人なので、鞍馬を手助けするかもしれない。
ただし久我さんは表には出ないと思われる。FAWと北辰会館の対抗戦には出てほしいけど。
めだった手助けはないという点が救いか。
・不安材料その4 「鞍馬彦一」
なにより、鞍馬自身が不確定要素であり不安材料なのだ。
漫画版オリジナルキャラクターなので、オリジナルの展開になる可能性がある。
勝負が見えない。
チャンピオンの「範馬刃牙」では、刃牙が主人公らしい活躍をしている。
ちょっと前までは「闘わない」「傲慢」「SAGA」の三拍子がそろった少年漫画らしからぬ主人公だった。
最近は好感度アップして、友情パワーも発揮した。
鞍馬も刃牙のように生まれかわってはどうか?
ところで、今週の「もやしもん」のアオリもんくは『2カ月ぶりに主人公が出てきました。某誌なら打ち切りもんです。』だ。
聞いたかい、丹波さんよ。
あんた、イブニングに移籍してから、何コマ登場して何回しゃべった?
(※ とうぜん、今回も登場していない)
2006年7月11日(15号)
餓狼伝 Vol.172
目覚めると そこは医務室だった。
見知らぬ天井だ。
目覚めたのは現代の武士(もののふ)片岡輝夫である。
……やっぱ、負けたんですか。
(敗北(まけ)た)
かたわらにはジャーナリストの引木が座っていた。
なんでアンタがいるの?
敗退した選手とはいえ、試合直後に選手と報道関係者が二人っきりというのはめずらしい。
理由はよくワカらないが、松尾象山の粋なはからいだろうか。
ひょっとしたら、引木が忍びこんだのかもしれない。
だとすれば、恐るべきジャーナリスト魂だ。
なんにしても、敗戦後のショック状態だ。
ちょっとした知り合いという微妙な距離感のある人がいると、かえって落ち着くのかもしれない。
ひとりだと凹みっぱなしだろうし、同じ道場の人がいたりすると申し訳なさも加わってより凹む。
現在絶賛ボコられ中のアイアン・マイケルがいたりしたら、際限なく凹む。
「どこまで憶えてますか」
(憶えているのはどこまででしょう)
けっこう、傷口えぐる引木さんであった。アンタ、すぐに帰れ。
しかし、片岡さんは落ち着いていた。人間はショックすぎることがおきると、かえって無反応になるらしい。
ヘッドロックで受けたのは、痛みと屈辱だった。
解放されたとき、片岡は「餓鬼(こども)のように敵と同じこと(ヘッドロック)を」する。
前回も書いたが、相手にやられたらやり返しちゃうのが格闘家の心理だ。
やり返すのは負けん気でもある。
先日行われたK-1 MAXでも、優勝したブアカーオが準決勝3Rで相手に後ろ回し蹴りをやり返していた。
負けず嫌いな永遠のガキってのが格闘家の本質かもしれない。
(体重が消え―――)
(景色が疾(はし)り)
(足の向こうに天井が見えた)
(一瞬よぎったブルーのキャンバス)
(………………………)
二ページをぜいたくに使った鞍馬のバックドロップで片岡は倒された。
でも、長田なんて一話まるごとバックドロップだった。
長田のバックドロップのほうが一枚上手だと結論づけておこう。
片岡は鞍馬彦一のバックドロップで完全に沈黙した。
だが、様子がおかしい。
もしかして、打ちどころが悪かったのか?
『片岡のこの姿???』
『倒れてると言うよりは?!』
『正座?!!』
意識をなくした武人は自然体になったのか正座スタイルになる。
きびしき鍛錬が生んだ正しき姿だ。
顔面をべっちゃり地面につけているのは苦しそうだが、片岡らしい倒れかただ。
『餓狼伝 Breakblow』の発売前に正座ダウンをしていたら、ゲームでもこの姿が再現されていただろう。
惜しいことをした。
すべて計算通りに試合を運んだ鞍馬もすこしビックリしているようだ。
長田と梶原も口をあけて見ている。
松尾象山は無言だ。おなじ空手家として、片岡の心意気を感じ取っているのだろうか。
グレート巽はやや笑う。他の連中とちがい楽しむ余裕がある。胆がふとい。
あれ? 丹波は?
おどろく群雄図という絶好のタイミングなのに出てこねェッ!
うわっ、また出番なしかよ。
そりゃ、『もやしもん -ウィキペディア-』に『餓狼伝の丹波文七と並ぶ、イブニング誌上最も影の薄い主人公。』と書かれるワケだ。
ちなみに、ウィキペディアの記事は6/28に変更されていますが、前回の餓狼伝感想が影響したのでしょうか。
「道としての武術の厳しさ」
「あなた自身が身に付けた武道性の高さ」
「満天下に知らしめたと言える」
引木は片岡の姿を評価した。
人間の本性があらわれるという極限状態で、片岡は武道家の姿を見せた。
ただし、プロレスを演じるという屈辱を味わうハメになったが。
なんか純朴な田舎の資産家が、詐欺師に喰い物にされたような感じだ。
お気の毒に……。
「プロレス…」
「あれは……」
「あれで…」
「ステキな体験でした……」
思ったより前向きだな。
すごく心配していただけに、ちょっと拍子抜けだ。
いや、まあ、切腹したりするより はるかにいいんですけど。
武道一筋だった片岡には観客とともに熱狂するという体験がなかったのだろう。
自分に厳しく、自分を信じて、結果は自分だけが知ればいい。
周囲にたたえられるなんて、鍛錬と試しわりでは味わえない感動だ。
今度はぜひ、空手家としてプロレスラー鞍馬をボッキボキに試し割ってください。
そして、悪童・鞍馬彦一の死に姿が思い浮かんだ。
鞍馬は、倒れたまま無意識で携帯電話をかける姿をさらすだろう。
自身が身に付けたナンパ性の高さを天下に知らしめることになる。
妄想の相手にたいして ひたすら謝る鞍馬彦一を見ることができるかもしれない。
もっとも、今までの展開が久我さんに倒された鞍馬が見ている夢という可能性をすてたわけではない。
夢にしては、いくらなんでも長すぎるけど。
ならば、実は船村弓彦に倒されていて、ずっと夢を見ている説でどうか。
実は練習中にイスから落ちて夢見てる説もすてがたい。
なにしろ、106話を最後に電話がかかってこないのだ。
携帯電話を使用しない鞍馬なんて、鶏肉の入っていない親子丼である。ニセものだ。
逆に考えると、鞍馬は携帯電話という切り札を残している。
長田、ちょっとピンチだ。
……そもそも この会場内って電波とどいているのか?
まあ、鞍馬だったら自分の体をアンテナにして受信するぐらいの荒業を見せそうだ。
折れた腕で携帯電話を操作してもおどろかない。
そして、次回戦は 畑幸吉(古武道・拳心流 175cm・71kg) vs. 椎野一重(日本拳法 195cm・123kg)だ。
たぶん、準々決勝で もっとも不人気な試合だ。
なにしろ、この二人は準々決勝まで残っているのに、ゲーム『餓狼伝 Breakblow』に登場しない。
井野康生、安原健次、チャック・ルイスなんて二回戦敗退なのにゲームに出てきてるのに……。
お客さんがトイレ行ったり、弁当を広げはじめそうだ。
試合傾向としては、打撃vs.組み技の試合になりそうだ。
伝統の総合格闘技「日本拳法」と、謎の古武道・拳心流が激突する。
ここは一つ車だん吉も真っ青な畑幸吉に話題づくりをお願いしたい。
「日本拳法に武道をさせる」
「もともと武道ですよ」
「日本拳法に組み技をさせる」
「もとから組み技ありますよ」
「日本拳法にプロレスをさせる」
「アンタがプロレスできんでしょ」
畑幸吉のキャラがいまいちつかめていないから、いじるのも難しい。
強そうなオーラ度としては、椎野一重だ。
ムダな巨漢に強者なしという法則があるが、椎野には直突きという必殺技がある。
試合は椎野に有利と見た。
まあ、どちらが生き残るにしても、次の相手が姫川だったら、秒殺されるんだろうな……。
そして忘れられる。
2006年7月25日(16号)
餓狼伝 Vol.173
イブニングの表紙の人って、だれ?
マジに疑問もたれていそうで、怖い。
表紙の人が餓狼伝の主人公の丹波文七です。詳しくは最新刊の『餓狼伝 18巻』でも見てください。
……出たの7コマぐらい?(トビラ除く)
そして、今回は衝撃の展開が待ちうけるのだった。
そのころ鞍馬彦一は便所で吐血していた。
むむっ、死亡フラグか!?
電磁FAW波を浴びつづけていたことで鞍馬の体はプロレス被爆破病にかかっているのかもしれない。
急にバンダナをつけていたのは、薬の副作用でハゲたためだな。
顎と胸骨を片岡輝夫に砕かれている。
人体の試し割りを完成させていたのだ。
強がっているが、鞍馬のダメージは大きいらしい。
闘っている最中は興奮しているので痛みもあまり感じないものだ。
サッカーの本並健治選手は、腎臓破裂でありながら試合終了まで出場したこともある。
鞍馬も、鞍馬なりに試合に熱中していたようだ。
まあ、ブザマな闘いをしたらグレート巽と松尾象山に一度ずつ仕置きされると思えば、必死になって闘うだろう。
人が血を吐く場合、出血箇所はだいたい次の三つだ。
(1) 口の中
(2) 胃など(消化器系・吐血)(参考:吐血、Wikipedia)
(3) 肺など(呼吸器系・喀血)(参考:Wikipedia)
衝撃によって、胃や肺などの内臓から出血した場合は、死亡寸前なので注意が必要だ。
というわけで、漫画で血をはいたときは大体口の中を切ったものによるのだろう。
鞍馬もアゴを殴られたときに口の中を切ったと思われる。
実は肺からの出血だったりして(死亡フラグ)。
ところで、鞍馬の前歯がごっそり無くなっている。
久我さんに折られてから、差し歯を入れなかったのだろうか。
佐竹雅昭も前歯がないのだが、マウスピースをつけるときに呼吸が楽らしい。
佐竹のエピソードを聞いたグレート巽が、親切心から大会前に叩き折ってくれたのだろうか。
(2つのハンデを抱えたまま――――――)
(準決勝はあの怪物――――――)
(長田と……)
いろいろと挑発的なことをしていたが、鞍馬は長田の強さを知っていた。
負傷したままで長田に勝てるのだろうか?
めずらしく鞍馬が不安を感じている。
梶原だったらケガをしていても楽勝なんだろうけどな。
「突いてみろ」
古武道・拳心流の畑幸吉は突然でてきたセンパイの指導を受けていた。
宝くじが当たると、親戚や古い友人が急にやってくるという。
トーナメントも準々決勝まで勝ちあがると、きゅうにセンパイや師匠が増えるのだろうか。
チョビヒゲで長髪を後ろでくくっている、あやしげな風貌のセンパイだ。
時代劇における「先生、お願いします」とヤクザにこわれて貫禄たっぷりに出てきてあっさり負ける用心棒の風格がある。
ハッキリいって、畑はこまっている。
「当たるギリギリまで待つッ―――」
「額に触れるや否や―――」
「袖口に人差し指と中指を掛けるッッ」
「脈拍に小指を掛けるッッ」
「……で」
「脇固めッ」
試合前に畑を破壊せんばかりの勢いで、拳心流の妙技を披露するセンパイであった。
……額に触れてから、相手の腕をつかむ2アクションはムチャだ。
アンタにゃ加速装置でもついているのか?
かなりダメダメなセンパイだ。
名前がないと不便なので、センパイを仮に久米田さんとする。
畑の師匠、じゃなくて先輩だ。
他意はないので、流してください。
日本拳法の歴史は70年だが、拳心流は三百余年だ。久米田は豪語する。
どうも、ダメな烈海王という感じだ。
歴史が長いだけで勝てるなら、曙はもっと活躍している。
久米田さんはダメダメだ。正直、絶望した!
「まさか今の作戦実行する気じゃないよな」
丹波文七が登場だ!
イブニングの表紙を飾っただけに、本編にも出てこないとカッコつかないと判断したのだろうか。
本当にひさしぶりの活躍である。
イブニングの一発目で尿を出して以来だろうか。
畑の体格(175cm・71kg)は、大会の中では小さいほうだ。
そして型稽古中心で実戦経験の少ない拳心流である。体力でも経験でも劣っている。
二度勝ったのは並大抵のことではない。
伝統とか歴史ではなく、畑自身の努力と決意が勝利を呼んだのだ。
「このセンパイはまるでワカってない」
丹波は久米田氏の首をつかむ。
武術家の襟を捕ることは、挑発だ。
藤巻なら容赦なく梶原をひねるところだ。
まあ、藤巻の場合は長田をめぐる嫉妬もあったんでしょうけど。
「チョーッ」
「チョーッ チョーッ」
久米田が動いた。
すかさず丹波の腕をとってなにかしている。
でも、関節も決まっていないし、体制も崩せない。
立っているだけの丹波を相手にして、久米田は汗を流した。
とりあえず打撃で崩そうと思ったのか、久米田が掌底で丹波の顔面を打つ。
そして、流れるように「チョーッ」をしかける。
むしろ攻めている久米田のほうが世間体にダメージを受けている感じだ。
ここまで、ダメな人だとは……。梶原を超える逸材が誕生した瞬間だ。
あまりにも哀れだったのか、丹波は中指一本拳で久米田チョーッのこめかみを打つ。
一撃で、寂海王の護身開眼状態に体を丸めて久米田チョーッがうずくまる。
伝統舞踊をみているような、美しく洗練された噛まれかただ。
淫靡な乱れの中にも清涼なる気品を感じる。
「おい……」
「あの男……」
「ホラッ堤城平と戦った」
「丹波だよッ」
「丹波文七だッ」
「実戦の雄……丹波だッッ」
不覚にもジ〜ンときた。
みんなが丹波のことを知っている。みんな覚えていてくれたんだ。
ボクは主人公でいてもいいんだ! オメデトー オメデトー
主人公・丹波文七の劇的な復活であった。
でも、名前を思い出すのにセリフ三つ分必要なのか。
先に堤の名前が出てきてるし。堤 > 丹波かよ。
試合に勝って、知名度で負けた。
そもそも、説明しないとワカらないというのがマズい。姫川なら説明不要だろう。
そして、いつの間にか実戦の雄だ。
公式での闘いは梶原の試合に乱入したのと、堤戦だけの丹波である。
野試合の数々が世間でも有名になっているのだろうか。
リアルレジェンドが生まれつつあるのかもしれない。
「よければ俺が作戦を立てようか」
「はい……」
「お願いします」
横からでてきたヒゲにコケにされたところで、僕の後輩はその人の手に渡り、今、別の人がセコンドです。
畑を寝取られて、久米田(仮)がっくし。
「もやしもん」以上に主人公の影が薄いといわれる丹波が、ついに裏方にまわるのか?
才能をかもしだす能力が丹波に備わっているのか、気になるところだ。
次回へつづく。
と言うわけで、丹波が復活した!
18巻の三倍は登場している。
反動で、秋あたりから姿を消すんじゃないかと心配だ。
丹波の授ける秘策とはなにか?
ちょっと、予想してみる。
(1) 頬に触れるや否や――― 虎王でカウンター
久米田以上のバカな作戦だ。
いきなりぶっつけ本番でできるわけないだろ。
つうか、竹宮流を勝手に教えるな。
(2) クマのきぐるみ
普通にありそうで怖い。
松尾象山なら笑って許しそうなのも怖い。
ただし、この大会でどんな効果を発揮するのかは不明だ。
(3) アンタじゃムリだ、オレがかわる
丹波文七が緊急参戦だ。
準決勝が、姫川 vs. 丹波なら面白い試合になりそうだし、わりといい案かも。
(4) 生意気いって、ごめんなさい
実はなにも考えていませんでした。
つうか、思いつきません。どんな作戦で行くのやら。
丹波もボーイだったころは、策士だった。
孔明もビックリする、スゴい作戦があるのかもしれない。
鞍馬も気になる。
正確には鞍馬の背後にいるグレート巽の存在が危ない。
巽が、なにもしないで試合を見守るとは思えない。
なにかやらかすはずだ。
たとえば、鞍馬に最新の携帯電話をプレゼントしてやる気にさせるとか。
「鞍馬よ、このケータイはまだ開発中の燃料電池を利用している」
「え、マジっすか!? じゃあ、今までよりもクリアな音質で話せるんですね(※ 鞍馬は機械に弱そうだ)」
「フフフ、鞍馬よ」
ズボッ!
「いまパンツの中に突っ込んでやった、燃料電池はオレの指示で爆発する」
「ッッッ!」
「鞍馬よ、勝てばいいんだ。勝てばすべて無事に済む」
鞍馬の命ともいえる携帯電話と、命の次に大事なイチモツを人質にとられた鞍馬は大活躍するしかないのであった。
梶原はお払い箱になる。
そして、藤巻がとうとう最前列で長田の応援をしはじめのだった。
・ 追記 (06/07/26)
掲示板で仙人掌さんに指摘されたのですが、鞍馬の前歯を折ったのは安原でした。(参考:vol.147)
すっかり、忘れていました。申し訳ありません。
仙人掌さん、情報ありがとうございます。
なんで、忘れていたのだろう?
鞍馬 vs. 安原は屈指のモテ男対決だったから、忘れたかったのだろうか?
餓狼伝のゲームでも、安原はあまり使わなかった記憶がある。
まあ、ゲームの場合だと最大の理由は声なんですけど。
畑の駄目なセンパイなんだが、ちょっとガンダムのテム・レイを思い出した。
主人公アムロの父親なんだけど、酸素欠乏症の影響で脳がダメダメになってしまい、アムロにダメダメなガンダムのパーツを自慢げに渡す人だ。
センパイも締め技の蘇生に失敗して、酸素欠乏症になったのだろうか?
格闘技をやっていると、自分の流派がイチバンという思いにとらわれる事がある。
『格闘技をやる者の弊害―――。他を認めない症候群に、俺も汚染されていたんだろう。』(板垣恵介の格闘士烈伝)
板垣先生も危うい時期があったらしい。
このセンパイは「保護されている達人」と同じく、格闘技の弊害を 自戒もこめて具現化した姿なのかもしれない。
格闘技にかぎらず、なにかの熱心なファンになっちゃうと冷静な比較や考察ができなくなることが多い。
できるなら、ダメな部分もふくめて愛するような気持ちでいたいものだ。
というか、むしろ俺ってダメな部分が好きなのかもしれない。
2006年8月8日(17号)
餓狼伝 Vol.174
名参謀・丹波文七の誕生か!?
参謀というポジションの長くけわしい道の先には、梶原年男が待ってるぞ!
ダメッ! その道進んじゃ、ダメだ!
金玉とか強さとかイメージとか、なくしちゃいけない大事なものをイロイロなくしてしまう。
餓狼伝の主人公が梶原的存在になっちゃダメだろう。
まあ、似合いそうだけど。
それはさておき、実は知性派である丹波文七の秘策とはいったい!?
「不意打ちだ」
「試合じゃ逆立ちしても勝てねェ」
丹波文七が伏せていたトラップカード「くまさんアタック」が発動した!
つまり、クマのきぐるみで偽装して奇襲せよとおっしゃるか。
勝利のためなら、手段を選ばない。驚異のペテン師が今よみがえる。
ひさしぶりにボーイだったころのタンバくんに戻った感じだ。
とりあえず丹波には、逆立ちで勝った試合があるのかと問いたい。
どんな試合だよ、オイ。
そういや、『まじかる☆タルるートくん』のサッカー編で、逆立ちして勝ったよなー。
しかし、畑幸吉はぼうぜんとしている。
実に五コマぐらいは呆けた表情だ。
よっぽど、ガッカリしたんだろうな。
読者としても、ガッカリすべきか、笑いべきか判断つきかねる。
でも、笑いは考えてするものではない。とりあえず笑えたから、いいか。
魂が2/3ぐらい抜けている感じになっている畑のスキを見逃すほど丹波は甘くない。なにしろ実戦の雄である。
トイレ、控え室、人混みなどで椎名を襲うと提案する。
なにやら、最近の『軍鶏』みたいな感じだ。
手段はともかく最後まで立っていたほうが勝ちとか、毒針で攻撃するとか、過激なことをいっている。
しかも、周囲にはまだ人がいるんですけど。
最近の餓狼伝は試合ばっかりやっている。
しかし、もともと不意打ちや武器の使用も辞さない武術性の高い戦いが餓狼伝の本質だ。
原作での丹波も梶原を不意打ちして、針金で束ねた数本のフォークで攻撃をしている。
梶原がリング外で襲われるのは、原作・漫画ともに大得意なのだ。
「フェアにやりあって敗(ま)けたきゃ敗けるがいいさ」
「ただし……」
「それは武じゃない」
敗北を認めることは武の本質ではない。
反則で試合に負けても、勝負にさえ勝てばいいのだ。
武の強さを知らしめるためには、不意打ちも辞さない。
実戦の雄らしい、試合と言うワクを超えた作戦だ。
ただ、社会的な信用とかを失う危険性を考えたら、止めたほうがよさそうだ。
武ってのは、その場で勝つだけでは、まだ浅い。
その場で勝って、その後の人生も勝たないといかん。。
武士が売られた喧嘩で刹那的に死を選ぶのも、実は武士社会が名誉を重んじる者を求めているという背景がある。
相手を殺し、過剰防衛で罰せられるほうが武士の面目が立つのだ。(参考:山本博文『『葉隠』の武士道』)
あまりに卑怯すぎる勝ちかただと、武としても負けではなかろうか。
痴漢のうたがいを持たれて、自分は二次元にしか興味がないと暴露したら、それが世間に広まってかえって酷い目にあう的な展開だ。
目前の勝利が、全体の勝利につながるのか、もう少し考えようや。
応援のために変装を投げすてた藤巻もな。
気分で苗字が変わる日本拳法の椎名(椎野)一重であった。今日は椎名の気分だ。次回はどうだ?
椎名のスペックは身長195cm、体重123kgである。
畑とは身長差20cm、体重差52キロであった。
14歳男子の平均体重が52.7キロである。(厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課「国民栄養の現状」平成10年調査結果より)
男子中学生一人分の体重差だ。相当な戦力差だといえる。
この差をくつがえすには不意打ちしかないと丹波は力説するのだった。
試合場に上がる直前に背後から襲えッ!
綿密にシミュレーションして選んだ絶好のポジションであった。
丹波的には百点満点のベスト・オブ・ベストなんだろう。
試合前に襲ったら普通は失格か厳重注意だ。
だが、松尾象山なら『「始め」の合図がなかったなどという言い訳は私には通用しないッッ』と一喝して、奇襲を認めるかもしれない。
普通に闘うよりも、勝利の確率は上だ。
敵の背後を狙うのか、畑よ!?
試合場には椎名と畑の二人がそろっていた。
不意打ちはない。
正々堂々と、真っ向勝負だ。
「あのバカ……」
丹波はタメ息をつく。
なんで畑に策をさずけたのかワカらないが、丹波なりに真剣だったらしい。
自分の作戦を採用してもらえず、丹波がっかりモードだ。
このショックが元で、あちこち放浪するようなマネだけはしないで欲しい。
かなり落ちこんでいたのか、丹波は背後に立った気配に気がつかなかった。
椎名のスキを指摘する前に、自分の油断を修正したほうがいいぞ。
しかし、丹波の背後をとったのはタダ者ではなかった。
竹宮流柔術の宗家・泉宗一郎の登場だッ!
なんでも、藤巻に逢えるような気がしたのでやってきたそうだ。
すごい嗅覚だ。会場の中で丹波を見つける眼力もすごい。
でも、会場でみょうに目立っていた藤巻に気がつかないのはどういうことか?
奇行がひどかったので、見えないフリをしたのかもしれない。
泉先生の見立てでは、まだ畑にもチャンスがあるらしい。
ただし、畑が自分の有利に気がつくかどうかが問題だ。
……丹波よりも はるかに頼りになります。
やはり、丹波に名参謀はムリなのか。
梶原のようにならないのであれば、良い事かもしれないけど。
「正直なハナシ」
「試合前 君の不意打ちを視野に入れていた」
「モチロンそのつもりです」
根っ子の部分は武道家であるという椎名は、不意打ちも警戒していた。
畑も警戒されていることを感じていたようだ。(という意味だろうか?)
丹波ひとりが、自分にとって都合のいい妄想で作戦を考えている。
チョーッ先輩をバカにする資格なんて、なさそうだ。
そして、試合開始と同時に椎名が直突きを打ちこむ!
泉先生のいう畑の有利な点とは、なにか!?
丹波はこの試合でどれだけの醜態をさらすのか?
意外な盛り上がりを見せつつ、次回へつづく。
なんか、ラストで畑がとっている行動ってチョーッ先輩が授けた作戦みたいな気がする。
額に触れるやいなや―――(略)―――、脇固めで決着だ。
泉先生まで「よくぞ気がついた!」と太鼓判を押したりして。
で、自信満々のチョーッ先輩が出てきて言うのだ。
「どこに相手の目が光っているかワカらない団体用の控え室だ。手の内をさらすようなバカはしない」
丹波ひとりが赤っ恥だ。涼二を放置して、放浪の旅に出る。
せっかく主人公に出番を与えたのに、評価を落すとはどういうことか?
これからの丹波は「闘争」「解説」をあきらめ、「驚愕」一本にしぼって生きていくしかない。
今のところ「驚愕」役は少ないので、重宝されるぞ。
リアクション王を目指すんだ!
丹波の作戦も冷静に考えると不備がある。
対戦相手の選手が背後に立っていたら、いくらなんでもあやしい。警戒される。
クマのきぐるみでも着ないと誤魔化せない。
どうも机上の空論を述べていたのは、丹波も同じだったようだ。
ところで、チョーッ先輩はなにをしているんでしょうか。
畑にみすてられたので、少年マガジンを読みながら腐っていそうだ。
むしろ、丹波の背後に潜んでいて、今度こそ本気のチョーッをかける気かもしれない。
とりあえず、丹波の作戦が「審判さえ味方にしちゃえば、ダウンしても判定で勝てる」では無かったので、ひと安心だ。
その作戦だと、試合に勝ってもイロイロなものを失うぞ。
2006年8月22日(18号)
作者急病のため休載です
板垣恵介先生が急病(ウイルス性腸炎)のためお休みでした。
夢枕獏先生が急病でお休みになったりしたら、ものすごくシュールですが。
えっ、板垣先生が看病に行っているの? みたいな。
女性向け同人誌の視点なら、板垣攻めの夢枕受けですか。枕だけに寝っぱなし。
こちらの説明を見たところ、『ウイルス性腸炎期間は長く、だいたい1週間ぐらい続くことが多い』そうです。
そうなると、範馬刃牙もお休みになる可能性が高い。
今週のチャンピオンは大丈夫だろうか。
ウイルス性腸炎ってのは、感染症らしい。
板垣先生はどこで病気をもらってきたのだろうか?
不特定多数の人間があつまる空間 ―――たとえばボクシングの会場とか――― などがあやしい。
もしかして、亀田の世界戦で感染したのか!?
それとも、腸炎だけに病気はチョーッ先輩の呪いだろうか?
というワケで、チョーッ先輩の名前は久米田腸と仮に決めておく。
役所で受けつけてもらえなさそうな名前ですが。
で、畑はどんな秘策を持っているのだろうか?
普通に考えると関節技での攻撃が思いつく。
もっとも、関節技は椎野も警戒しているだろう。警戒している相手にかけても、成功の確率は低い。
ならば、意表をついて打撃で勝負するのはどうか?
もちろん普通に打ちあったら、リーチと破壊力に差があるのだから、勝ち目はない。
しかし、古流独特の技法を駆使して、うまくカウンターを取れれば、逆転できるかもしれない。
そして、最後は久米田腸センパイ直伝の脇固めで倒す!
予想は当たろうが、外れようが構わないので、一刻も早い回復を祈っております。
なにも、こんな次回が気になる時に病気にならなくても……。
2006年9月12日(19号)
餓狼伝 Vol.175
椎名一重の直突きが炸裂する!
今宵の椎名は一味ちがう、なにしろ名前が椎野から椎名になっているのだ。
どっちかと言うと、一文字違う。
変幻自在の椎名もそろそろ名をかためる時期か?
で、畑幸吉は直突きを喰らってフッ飛ぶ。
審判も思わず一本を宣言しかけたほどの勢いだ。
しかし、畑は片ヒザをついただけで倒れない。
『左掌(ひだりて)でかろうじてカバー』
『畑 幸吉は生き残っているッッ』
忘れがちだが、今やっているのは空手の大会だ。
十分な打撃が入ってダウンすると一本負けである。ダウンでカウントを数えたりしない。
畑は背中から落ちたけど、すぐにハネ起きた。
ダメージが少ないので一本にはならなかったようだ。
技有りという声も無かったので、ポイントもないのだろうか。
いろいろなワガママに振り回されている審判にも、そうとうな疲労がたまっているのかもしれない。
決勝戦まで来たころには、選手よりも先に審判が倒れそうだ。
いきなり審判が吐血して、勝負アリになる。勝者はなぜか松尾象山だったりして。
畑は椎名の打撃を左手で受けていた。
強力な打撃を片手でガードしたことになる。しかも利き腕ではないと思われる左手でだ。
受けた畑の技術をほめるべきか、防御ごとフッ飛ばした椎名のパワーをほめるべきか。
直突きは最短距離で敵を打ち抜くと椎野は言う(餓狼伝 17巻・151話)。
しかし、その最短最速の攻撃をガードされたのだ。
いきなり切り札を破られた状態に等しい。
椎名も多少は動揺しているだろう。
なお、最短最速発言をしたときは、椎名ではなく椎野と名乗っている。
椎名と椎野では能力に微妙な差があるのかもしれない。
そのうち「やはり椎名では勝てないか」などと言い出しそうだ。
「気付いたかね丹波くん」
畑が勝利する方法をちゃんと知っている泉先生が丹波に確認をする。
天然ボケ気味の弟子モドキである丹波文七は油断ならない。
ダメダメな作戦なのに自信を持って人に教えるようなヤツだ。
泉先生も確認しながらでないと、話ができない。
なんでコイツに『虎王』なんて教えちゃったんだろう。と後悔しているかもしれない。
「一瞬でしたが畑が右手の指を」
「椎名の帯にひっかけたのが見えました」
しかし、幸運なことに丹波は気がついていた。
畑は椎名の帯をほどいていたのだ。
これって、船村あいてに見せた鞍馬流か?(餓狼伝 12巻 90話)
相手の帯をほどくことで、屈辱を与えるという鞍馬の必殺技だ。
鞍馬の必殺技は、たいてい屈辱を同時に与える。
むしろ、肉体のダメージのほうがオマケかもしれない。
まじめそうな坊主頭の畑にはにあわない技である。
いつのまにか、悪魔に魂を売りわたしたのだろうか。
なにしろ、丹波にすがっちゃうほど追いつめられていたしな。
審判の指示で、椎名は乱れた道衣をなおす。
その横に畑も正座をした。
前代未聞! 試合中に正座対談だッ!
「立ちませんが闘ってます」
畑は立ちあがる事を断固として拒否した。
古流の技で座りながら闘う術があるのだろう。
立った状態で勝負すれば椎名に勝てる部分は少ないが、座った状態ならば勝機がある。
畑はそう考えたようだ。
「ただ問題はルールだが」
「意外とイケるかもしれませんよ」
「なにしろ大会最高審判長があの松尾象山ですから」
あくまで立ち技がメインの空手大会だ。
座ったままと言うのはルール違反になりかねない。
丹波の奇襲策もルール違反だが、自分の領域に引きこむ作戦もルール違反だ。
どちらに進んでもアウトと言う状況がすこし悲しい。
まあ、体格の差が大きいので現行ルールだと勝ち目がないのだ。
そして、話の焦点が松尾象山にうつる。
大会のルールを第一試合が始まった直後に変更しちゃった松尾象山だ。
自分の陣営がものすごく不利になるルール変更と言うところがタダ者じゃない。
大会ルールを超越した松尾象山ルールで神山徹 vs. チャック・ルイスの決着をつけたりと大活躍だ。
確かにムチャ行動かもしれない。
それでも松尾象山なら……、松尾象山ならきっと何とかしてくれる。
『困ったときの松尾象山』
出た――――――ッッッ!
『困ったときの松尾象山』が発動したッ!!
原作者の夢枕獏曰く『やっぱりね、困ったときの松尾象山って言ってね(笑)。話の展開がここまでだなと思ったときは松尾象山でしのぐんですよ。』(出典:餓狼伝ブレイクブロウ完全格闘指南)
作者もたよる松尾象山がついに動いた。
無言のまま指をクルクル動かすだけでGOサインだった。
好きにやらせろ。
おそらく椎名が抗議しなかったので続行をかけたのだろう。
闘っている二人さえ納得しているのなら、他人はヤボなことをいうな状態だ。
そして、見ている松尾象山はとても楽しめる。
両者、正座のままで試合は続行された。
椎名と畑が正座のまま気迫をぶつけている。
「畑よ」
「俺は怒っている」
「この状態でなら俺に勝てると思うキサマにだ」
畑の用意した戦場に引きずりこまれた形の椎名だが、負けるつもりはまったく無いようだ。
正座程度で、俺の勝ちは揺るぎもしない。嘗めるな。と言いたいらしい。
できれば、先週の刃牙のようにノリツッコミして欲しかった。
「あなたのような、サイコーの好敵手(ライバル)と、ここに出逢ったことを心から祝福…………って」
「テメエ、俺を嘗めてンのかよッッッ」
椎名もわりとマジメな人なので、怒っているのかウケを狙っているのかワカりにくい態度はとらない。
会話を畑とかわしつつ、いきなり蹴りこんだ!
この蹴りは当たるのか!? 畑の秘策は体格差を超えることができるのか!?
次回へつづく!
板垣先生、快復一発目の餓狼伝でした。
とくに疲労も無いようで、一安心だ。
畑の作戦はどんなものだろうか。
チョー先輩の訓練で、先輩は座った状態(正確には立て膝)で技をかけていた。
まさか、こうなる展開を読んでいたのだろうか?
畑と椎名の身長差を再現するために座っていたのだと思ったが、実は深い作戦があったのかもしれない。
いまごろ、鞍馬が赤ちゃんの純真な笑顔に見えるぐらいドス黒い笑いで作戦成功を祝っていたりして。
2006年9月26日(20号)
餓狼伝 Vol.176
組み技対決や寝技対決だって可能な空手大会だったが、ついに座り技対決が発生した。
この状態に持ちこんだのは畑である。
つまり畑には勝つための秘策があるはずだ。
その秘策とは?
だが、先手をとったのは椎名(椎野?)だった。
座った状態からの蹴りが畑の顔面にむかう!
というのが、前回までのあらすじだ。
[きた〜〜〜〜〜〜〜〜!!!]
(蹴りできたかぁ……)
(突きが得意なのに蹴り)
(当たり前か日本拳法は………)
[潰れる―――――顔ッッ]
[潰れる―――――脳ッッ]
(足でっけェ〜〜〜〜ッッ
30センチ?!)
[速いッッ]
(死!)
10の思考がせつなに畑の脳内でスパークする。
椎名は片ヒザをついたまま蹴っているので、ちょっと威力は落ちている。
しかし、スパーヘビー級の蹴りはハンパじゃない。
喰らえば一撃で倒されるような蹴りだ。
しかし、かわす時間はない。
もともと逃げるつもりも無かったが、完全に逃げ道を断った状態だ。
まさに背水の陣である。
逃げない。防御(うけ)るッッ!
椎名の足が目前にせまったとき、畑が修行してきた日々が走馬灯のように浮かび上がった。
ガケから飛び降りてえるような、極限の集中力だ。
シグルイ風にいえば『生命存続の危機に際した時 人間は本能的にそれを回避する方法を記憶の中から探し出そうとする』だ。
そして、まさにピッタリな記憶を畑は引っ張り出してきたのだ。
「当たってからでよい」
「当ててから躱(かわ)すのです」
丸めた新聞紙がひたいに当たる。
師に教わった修行だった。
顔に飛んでくる新聞紙をよく見る。そして、文字を読む。
防御の基本は「殴られても眼を閉じるな」だ。
眼を閉じたら防御ができない。もっと殴られる。
だから、眼を閉じてはいけない。
だが、拳心流はさらに発展させて「相手の攻撃をしっかり見ろ」という教えをしているらしい。
新聞紙ならケガをしないという点もあるのだろうが、字が書いてあるというもの重要だ。
字を読むという明確な目的ができるので、修行しやすい。
さらに新聞なら大きい字も小さい字もあるから、修行のレベルを調節することもできる。
「生まれて初めて敬語を使用(つか)ってくれた大人(ひと)……」
畑の師匠は白髪の老人だった。
威圧することなく、丁寧に敬語を使って小学生らしき畑に武術を教えている。
かなりの人格者のようだ。
拳心流はおそらく小さな流派だろう。普通なら子供が入門したいと思うことは無いはずだ。
それでも畑が入門したのは、師がご近所で評判の人格者で、子供のしつけにも最適と言われているのかもしれない。
しかし、ぶつかる新聞を安全な紙と思ってはいけない。
拳や蹴り、または刃物だと思いながら修行する。
どうも、イメージトレーニングも取り入れているようだ。
実際に殴られそうになったり、刃物を出されても対応できるようにする修行らしい。
しかし、子供に刃物をイメージさせますか。
物腰はやわらかいが、教えることはかなり厳しい先生のようだ。
しかし、こんな立派な先生が教えるのになんでチョー先輩みたいな人が育つんだ?
イメージトレーニングをやりすぎて、リアルシャドーを完成させちゃったんだろうか。
ボクシングチャンピオンや巨大カマキリに勝てると思い込んだあたりから、心の均衡が崩れたのかもしれない。
とにかく、畑は熱心に毎日修行をした。
そして、新聞の文字がよゆうで読めるようになる。
極限の集中力が完成したのだ。
あとは、実戦で使えるかどうかだが……
そして、今が実戦の時だ。
椎名の足が額に当たるギリギリまで待つ。
額に触れるや否や―――、袖口に人差し指と中指を掛けるッッ!
足に小指を掛けるッッ!
(やるのか?!!)
(あれを?!!)
ここにきて、チョー先輩が電撃復活だ!
そして、畑が行っている動きはチョー先輩が授けた作戦そのものである。
竹宮流でいえば『虎王』のような、打撃をギリギリまで引きつけて放つ、必殺のカウンター攻撃だ。
だからこそ見切りの修行が欠かせない。
(やれるものなのか?!!)
チョ――――――、ちょっとアンタ。待たンか、コルァ!?
キサマ、できそうにない技と作戦を畑に教えていたのか。
なにを考えてんだ、ボンクラめ。ムダにのばしている長髪を畑みたいに剃ってしまえ。
チョー先輩は丹波にかけて失敗したので、技への自信をなくしたのかもしれない。
俺にできないんだから、畑はもっとできない理論が働いて、推定成功率がほぼ0%だ。
畑が優勝したら、俺が勝ったも同然と考えるんだろうな。
ベキッ
勝負あり!
椎名のヒザ関節を破壊したッッッ!
畑幸吉の逆転技が炸裂だ!
ゲーム版餓狼伝の続編が出たら、奥義3のパンチ・キック キャッチ技として確立しそうな破壊力がある。
畑の眼には涙がにじんでいる。
涙を流すほどギリギリの極限状態に自分を追いこんでいたのだ。
もっとも鼻血を出しているので、椎名の蹴りを鼻に喰らって涙が出ただけかもしれないが。
なんにしても、自分の顔面をオトリにしてつかんだ逆転劇だった。
畑幸吉、北辰会館トーナメント準決勝に進出する。
「見てくれたろうなッッ」
「我々の真髄をッッ」
チョ――――――、チョー先輩がいつの間に!?
丹波の背後を取って声をかけてきた。
流れ落ちる汗と乱れた息は、全力疾走で丹波のところへやって来た証拠だ。
けっこうスゴい速度で移動したんじゃないのか?
あと、さりげなく「我々」と言うあたりが さすがである。
畑の勝利は自分の勝利で、畑の敗北は畑の敗北だ。
「探してたのかよ俺を……ッッ」
思わず丹波もツッコンでしまう。
しかし、不意打ちをしろとアドバイスした丹波があっさり背後を取られては、お話にならない。
やはりチョー先輩はさりげなく実力者なのだろうか。
俺が本気ならアンタ死んでたぜ的な雰囲気がする。
畑へのアドバイス合戦はチョー先輩の勝ちだ。
丹波は自分の負けを素直に認める。
自分の負けや欠点をすなおに認めた。丹波の器が、ちょっと大きくなったようだ。
でも、ちょっと悔しいのか少しだけ反撃する。
「今度ぜひ教えてくれ」
「俺が蹴るからさ」
「イヤ…」
「それは〜〜〜……」
最後にダサダサな姿を見せて場をなごませるチョー先輩であった。
しかし、それが真の姿なのだろうか?
墨汁で墨をすって正露丸を溶かしこんだようにドス黒い顔を隠している気がする。
敵に教えるわけないだろ、このバカチンがッ!と思っていそうだ。
そして、次の試合は「姫川勉 vs. 神山徹」だ。
屈指の技使い同士が激突する。
はたして神山さんの暗黒面が発動するのか!?
次回も大注目だ。
なんで畑が座り勝負を選択したのか説明がない。
無いので少し想像してみる。
まず、拳心流に座った状態からの技があるという仮説だ。
チョー先輩は立てひざの状態で技をかけていた。
つまり、立てひざや座った状態から出す基本の技があるのだろう。
第二に椎名の攻撃力を弱める作戦だ。
座った状態ではヒザのバネや腰のひねりが十分に使えず、打撃力は半減する。
ただ、予想外の蹴りを出してきたので威力は十分になってしまった。
なんで椎名が蹴りを使ったのかと言うと、前回直突きが不発だったためだろう。
椎名は多少動揺していたのだ。心の乱れが、技の乱れにもつながったと思われる。
第三に椎名の攻撃速度を遅くする。
座った状態で攻撃するには、腰を上げるというよけいな動きをする必要がある。
少しでも攻撃速度が落ちれば、捕まえることのできる可能性が増えるのだ。
第四に闘いの条件をかえる作戦だ。
立って戦う場合は、力や速さリーチなどを競うことになる。
だが、この状況では素早さを競う闘いになってい。
体の小さい人間は加速時間に優れている。
より早く最大速度に達することができるのだ。(参考:吉福康郎「最強格闘技の科学」)
総合的な戦いからスピード勝負に切りかえることで得意分野での闘いになった。
なんにしても、今回は畑の作戦勝ちだった。
準決勝では更なる秘奥義を期待している。
そして、チョー先輩のさらなるアドバイスにも期待だ!
椎名(椎野?)は今回しゃべることなく敗れた。
よく考えてみたら、重要人物なら名前が安定しないなんてありえない。
名前がコロコロ変っている時点で、椎名(椎野?)の敗北を読み解くべきだった。
2006年10月10日(21号)
餓狼伝 Vol.177
女好きであっても実際はモテていなさそうな鞍馬彦一にたいし、確実にモテ王(キング)な姫川勉であった。
油断すると、ごくまれにサーガです。
鞍馬とちがってあまりムカつかないのは、一応礼儀正しいからだろうか。
どっちかと言うと、慇懃無礼という感じだけど。
ケータイカメラやデジカメがいっせいに姫川に向けられる。
カメラを持つ手はみなほっそりとした女性のものだ。
鍛えられたゴツいてなんて一つもない。
ハッ、モテモテですなッ。Peッ!
ムカつかないとか言ってたの、ありゃウソだ。
「姫さま〜〜〜ッッ♥(はぁと)」
「ツトムさ〜〜〜ん♥(はぁと)」
黄色い声援が飛びまくる。
きっと神山×姫川(略して、神姫)とか、松尾象山×姫川(略して、象姫)のカップリングが脳内で展開されているのだろう。
オヤジ攻めの姫受けが旬なのだ。
姫さま、ツトムさまと呼ばれるなら、最近流行の「○○王子」って呼びかたはどうか。
コイツの場合だと空手王子だ。ちょっとゴロが悪い。
ちなみに、怪獣王子だと佐竹雅昭の愛称になってしまう。
チャンピオンで連載していた『となりの格闘王』でも、サブタイトルに使われている。じつは時代を先取りしていたのだ。
姫川の愛称問題はともかく、試合がはじまろうとしている。
当てずに倒す寸止めの神山徹と、敵の攻撃に当たらずに勝つ華麗なる姫川勉が激突する。
互いに当たらず無音の戦いになるのか?
それとも、神山徹がついに当てるのか!?
注目の一戦だ。
試合をみまもるジャーナリスト引木は、少し前に神山とした会話を回想していた。
神山は会場の外で、緑のある風景を見ている。
精神集中をするため、人の多い会場内から逃げ出してきたのだろうか。
一人立っている神山に引木が声をかけた。
姫川を相手にしても、寸止めで戦うのかと。
「姫川くんは我々伝統派と呼ばれる流儀では」
「わたしの後輩に当たる男です」
松尾象山と闘って腕を折られるまでは、伝統派だった。
話に出てないが、姫川は正式に北辰会館へ入門していないのだ。松尾象山個人についている。
席だけはまだ伝統派かもしれない。
でも、松尾象山に挑むくらいだから、伝統派の中でもかなり異端な男だったのだろう。
勝ち続けていれば、伝統派は実戦でも強いという実績を作った男として有名になったかもしれない。
だが、松尾象山にであって姫川の人生は激変したのだ。
それでも、神山は姫川に対して、好感というか親近感を持っているらしい。
「才能に溢(あふ)れた男です」
「わたし以上に」
かつて身近にいたからこそ姫川勉という天才を知っている。
神山さんは体も硬いし、必ずしも才能に恵まれているとはいえない。
努力と経験で強くなってきたのだろう。
だが、姫川は努力できる天才だ。
松尾象山によって敗北(当人同士は否定しているけど)も味わった。
若く、体力も充実している。
普通に考えたら、神山さんに勝ち目はない。
「だから試したい」
「存分にわたしを使いきり」
「空手の―――― 否(いな) 武道の嘘を暴きたい」
とうとつに、武道には嘘がある宣言をした。
神山さんは、空手で人間形成ができるのかと問う。
厳しい稽古は人間を成長させるといわれる。
しかし、厳しさはどんなものにもあるのだ。
書道や、釣り、ジョギング、車の免許取得、英会話、ナンパにも。
厳しいだけなら、空手だけが特別ではない。
べつに空手でなくてもいいじゃないか。
というのが、神山さんの主張らしい。
でも、いくら厳しくてもネットでエロ画像蒐集とかじゃ人間形成できないと思いますが。
たしかに規制とか、年々厳しくなっていくようだけど(厳しいの意味がちがう)。
とりあえず努力する習慣を身につけると、多少は人生に役立つ。
努力をサボって大人になった私が後悔しているんだから、わりと確かな情報だ。
エロ画像蒐集も、もしかしたら人間形成に役立つかもしれない。
ダメ人間の形成になッ!(E〜〜
「空手は人を殺傷する術です」
「人格形成に必要な厳しさや苦痛 それをなぜわざわざ殺人術に求めるのです」
ここが最重要点だったようだ。
極端なことを言っちゃうと、空手で人間形成ができるならテロリスト養成所でも人間形成できるだろって事だろうか。
たしかに、りっぱな狂信者はできるかもしれませんが。
アサシン(暗殺者)の語源は、麻薬を飲む者という言葉からという説がある。
暗殺者を育てる宗教から見れば、立派な人間形成なのかもしれない。
武道がなんで人格形成のための手段になったのかは、武道成立時の問題が関わっている。
もちろん人格形成になると反論もできる。今までの武道はちゃんと反論していた。
しかし、神山さんがあえて異を唱えたのは、やや個人的な理由なのかもしれない。
「わたしたちは告白すべきなのです」
「喧嘩(けんか)に負けたくないからやってんだ」
「やっつけたいから やってんだ」
「わたしたち」と言っているが、これは神山さん個人の本音だろう。
周囲から人格者と言われ、人を殴らずにいた神山徹がもつ、もう一つの顔である。
空手が闘争の術である以上、闘争心がどこかにないと一流になれない。
誰かと競って上に立つには、闘争心が必要だ。とうぜん、神山さんも持っている。
才能の足りない分は努力と闘争心でおぎなっているはずだ。
神山さんは内なる餓狼をつねに隠して、飼い殺してきた。
だが、本当は解放したいのだ。
だが、基本的に人格者である神山さんは簡単に獣を解放できない。
試合だからとか、強敵だからとか、理由が必要だ。
それでも足りないから、真の武道を見せるという理由までつけた。
獣になるのに、これだけ手順が必要なのは、神山さんの人間形成がよくできている証拠だろう。
「あの姫川を血の海に沈めます
空手が人格形成とは無縁の道だと誰が見てもわかるように」
ついつい、空手を理由にしちゃうのは、良くできた人間である自分を捨てきれていないからだろう。
松尾象山だと逆に「この松尾象山がだよ」って感じに、空手の前に出てきちゃう。
空手家である前に松尾象山だ。喧嘩大好き。
長い間イイ人をやっていると、ハメを外しにくいのだ。
だが、今回の神山さんは本気だ。
指二本を立てて、姫川の眼をえぐる発言をする。
安原健次 vs. ドルゴスでは、目潰しは反則となっていた。
しかし、松尾象山ルールなら、それもアリかもしれない。
だからといって本当にえぐって良いものか。
神山さんは、極端な行動に出すぎだ。
しかし、姫川の回避能力は達人級だ。
当てる気になったとしても、神山さんの攻撃は当たるのだろうか?
けっきょく疑問点は最初のところに戻ってきてしまう。
もう戦ってもらうしかない。
姫川が敗れ眼帯王子になるのか? 神山さんが逆に空手の残酷さを見せつけられるのか?
次回、決戦ッ!
というワケで、今まで当て惜しみしていた神山さんの態度が激変した。
さわることすら嫌がっていたのに、血肉にめり込ませる気だ。
いったい、どういう心境の変化だろうか。
なんにしても人格者・神山は暗黒空手の鬼山に変身した。
『金色のガッシュ!!』でいえば、ロデュウに対し1秒間に10回のザケル発言をした清麿状態である。
ストレイツォよりも、容赦しない。
ちょっと雑談で、武術がなぜ武道になったのかを簡単に説明する。
明治の文明開化で海外の技術を取りいれた日本人は、日本古来のものを不要として捨てようとした。
武術もその中の一つだ。
とくに、西洋式の軍隊を作るうえで、武術はあまり重視されなかった。
武術家にとっては死活問題である。
武術家たちが取った方法は大きく二つある。
一つは撃剣興行として試合形式の見世物を行うことだ。
これは一時期 大人気となるものの、団体が乱立し質の低下などにより消滅してしまった。
ちょっとプロレスの状況にも似ている。
もう一つが、人格形成の手段としての武道に変ることだった。
武術には、もともと極限状態の戦いにおいても平常心を保つという精神修練という面がある。
そこで、精神修練をメインにした教育手段として武術を武道に変化させたのだ。
(参考:日本武術 - Wikipedia、田中守、藤堂良明、東憲一、村田直樹『武道を知る』、藤原稜三『格闘技の歴史』)
だから、武道と人格形成は切り離せない関係にある。
神山さんはそれを知りながらも、自分が暴力をふるうことを正当化するため、あえて逆のことを言ったのだろう。
喧嘩に強くなることだって意味がある。
強くなれば、余裕ができるからだ。
貯金だって多ければ、他人を気づかう余裕が生まれる。「衣食足りて礼節を知る」ってヤツですね。
また、「力なき正義は無力だが、正義なき力は横暴である」ってのは、パスカルとか少林寺拳法の開祖宗道臣先生とかアバン先生(by ダイ大)とかも言っております。
使い方を間違えなければ強くなるのはいいことだし、選択肢も増える。
ただ、神山さんは相当額にたまった貯金(強さ)を使ってみたくなったのだろう。
強さをぶつけ合ってみたいというのは、餓狼伝の登場人物 ほぼ全員に共通した渇望だ。
だからこそ、彼らは餓えた狼のようにあらそう。
そして、丹波は今週も出番なし。前回の続きは無いのか?
丹波の中にいる餓狼は冬眠しているのかもしれない。
2006年10月24日(22号)
餓狼伝 Vol.178
打撃を当てぬ男と、打撃の当たらない男の闘いがついに開始するッ!
でも、今回の神山さんは当てる発言をしているのだ。
神山打撃が当たると、どれだけの威力があるのか!?
かつて姫川も強さの検証がないと言われた。
今度は、達人・神山徹の強さが試される。
姫川への声援はウザいぐらい多い(主に女性)。
しかし、神山さんへの声援は無いようだ。
せめて武道関係者は野太い声で声援を送って欲しい。
姫川の目玉えぐったら、お客さんも大歓声だ。
「塚田」
「見逃すなッ」
ジャーナリスト引木はこれから公開目潰しが行われるのを知っている。
ヤる瞬間を見逃すなと念を押している。
見せていいのだろうか。
グロシーンは人によっちゃトラウマになりますよ。
二度と目玉焼きが食べられない体になるかもしれない。
ドラクエやってて、モンスターの大目玉が出てきたら失禁する可能性もある。
それでも、ジャーナリストの使命として、見なくてはならないのだろうか。
そして、引木の相棒に名前がついた。
この大サービスも神山効果だろうか。
なんかのまきぞえ喰らって退場しても、これなら塚田の名は残ります。
ついに試合がはじまったッ!
足の指でマットをつかむようにして、神山さんが構える。
すかさず、泉宗一郎、丹波文七、松尾象山の表情が変わった。
さすが見る眼がある。
梶原はどうしているのか? この瞬間の梶原をうつして欲しかった。
試合を横で見ているぶんには反応のイイやつなので、良性のリアクションをすると思うのだが。
本人が戦っているときも、ダメージに対するリアクションは優れていたっけ。
「重心を変えたな」
「ですよね」
丹波と泉先生がチェックする。
今までよりも前に重心をかけているようだ。
『はじめの一歩』でいえば、重心を前にかけたジョルトタイプの打撃体勢だ。
倒されるリスクを背負いながらも、最大の攻撃をぶつける姿勢である。
それにしても、見守る松尾象山がうれしそうだな〜。
当然、姫川も神山さんの覚悟を理解している。
特別扱いしてもらったので、姫川もちょっとだけご機嫌だ。
でも、姫川のことだから特別扱いにはなれているんだろう。
表情や動きに変化が無い。
今の神山さんは鬼山さんだ。
アイアン・マイケルを囲んでいるときのマウス三兄弟並みの超危険人物である(微妙な危うさ)。
しかし、姫川は恐れず、微笑さえ浮かべながら歩を進めた。
姫川には恐怖心がないのか!?
『跳んだ――――』
移動の瞬間は攻撃や防御を行うのがむずかしい。
相手がスキをのがさず、神山さんが跳躍した。
ルイス戦で見せた跳躍してからの攻撃だ。(餓狼伝18巻 156話)
逆襲を恐れず顔面から突っこみ、右拳を突きだすッ!
『寸止めだ――ッッ』
神山さんの打撃が当たらない?
もしかして、寸止めをやりすぎてクセがついちゃったのか?
そういえば、シグルイ原作の『駿河城御前試合』にも、そんな人がいたな。
否ッ!
わざとではない。
神山さんの顔を流れる汗は、動揺の汗だ。
ヤバい。この汗は敗北の味がする。
ブチャラティのように舐めれば確実にわかるが、舐めなくてもたぶん間違いない。
(わたしは確かにッッ)
(踏み込んでいるッッ)
神山さんは当てる気十分なのに、当・た・ら・な・い!
上段左廻し蹴り、不発!
ノドを狙った、左貫き手、不発!
中段右足刀横蹴り、不発!
上段右中足前蹴り、不発!
右二本貫き手による目潰し、不発!
すべて当たらない。
神山さんは、さりげなくノドや目を狙っている。
超エゲツナい。本当に姫川を破壊する気だったのだ。
前回、今の神山さんは『金色のガッシュ!!』でいえば、ザケル連発した清麿状態と書いたが、まさにその通りだった。
ザケル連発の中にも上位の呪文であるザケルガやテオザケルを混ぜるような鬼清麿に匹敵するエゲツなさだ。
でも、攻撃が姫川に当たりません。
『姫川 勉が―――』
『あの神山 徹の攻撃を外しているのですッッッ』
華麗なる姫川勉が、神山さんの攻撃を強制寸止めだ。
今まで、寸止めで敵に汗をかかせてきた神山さんが、寸止めで汗をかくハメになる。
負けパターンのまま神山さんは沈んでしまうのか!?
だが、神山さんは久我重明の知り合いである。
心の奥底には危険な獣がひそんでいるにちがいない。
姫川の天才が、神山さんの獣性を引き出すのか!?
次回へつづく。
予想以上に姫川が強い。
神山さんが、いきなり汗を流す展開になるなんて思いもよらなかった。
逆転の秘策は、獣性をむきだしにして型どおりの打撃フォームを崩し、姫川に技を読ませないことだと思う。
まあ、話の都合上、姫川が勝つのだろう。
だからこそ、神山さんには一矢報いて欲しい。
姫川があれだけよけちゃうと、畑の特訓がむなしくなる。
畑が長い年月をかけて身につけた見切りとほぼ同等だ。
姫川ならエレガントに見切って、脇固めを極めそうだ。
それとも、畑も姫川クラスの見切りができるのだろうか?
どちらにしても、準決勝で姫川と戦うのは畑幸吉には役者不足という気がする。
もうちょっと強い人間がリザーバーで登場しないものか。
グラップラー刃牙でいえば、ガーレンのポジションにある人が欲しい。
けっきょく噛ませ犬じゃん、とか言うな。
とりあえず思いつくのは梶原だ。
そういえば、梶原の姿を最近みていない。
次は長田の試合だから、マッサージでもしているのだろうか。
驚き+解説役は主人公の丹波に奪われているが、長田の試合が始まればおおいに驚愕してくれるはずだ。
で、梶原がリザーバーとして登場するのはどうか?
普通にダメな姿しか思い浮かばない。
もしかしたら、畑にも負ける。もしかしなくても、負けそうな気がしてきた。
梶原では畑以上に役者不足だ。
行方不明つながりで、丹波の弟子である久保涼二はどうか?
ちょっと前まで丹波のとなりに座っていたのに、いきなり置きざりだ。
涼二をすてて泉先生のもとに走った丹波はちょっとヒドいと思います。
丹波にしょっちゅう捨てられるのが、涼二の運命なのだろうか。
丹波との関係はともかく、リザーバー涼二についてだ。
姫川と涼二では戦力差がありすぎる。
あまりイイ試合を期待できない。
けっきょく畑にがんばってもらうしか無いのだろうか。
いや、まて。
隠れた実力者で、畑の勝利を正確に予言した、チョー先輩がいるッ!
同門の畑に代わって出場し、奇声で姫川の注意をそらして、脇固め。
勝てる。勝てるぞォ、チョー先輩なら!
同門の畑を眠らせ、丹波の体に技を教えて破壊する。(176話参照)
ロン毛対決として、チョー先輩の出陣があるかもしれない。
いや、梶原の大活躍なみにありえない。
2006年11月14日(23号)
餓狼伝 Vol.179
姫川に打撃が当たらない。
態度と同じく、ディフェンスもすかした男だ。
姫川は日本刀をよける練習をしていたぐらいだ。(餓狼伝4巻 19話)
素手の攻撃など問題にもならないのだろう。
ただ、松尾象山の攻撃はよけきれていない。
つまり、松尾象山の攻撃は真剣以上ということになる。
餓狼社会の格差がますます広がっているなー。
神山さんが瀧のような汗をかいている。
全ての攻撃が不発に終わり、精神的に追いつめられているのだ。
どうも、姫川にかかわると不幸になる気がする。
幸福量が常人の20倍ぐらいある松尾象山ぐらいじゃないと、姫川とつきあいきれない。
泉冴子もいずれ不幸になりそうだな。
難攻不落で、輝く容貌をもつ姫川勉はまさにダイアモンドだッ!
ジャーナリスト引木や神山には、姫川の背後にダイアモンドが見えている。
でも、ダイアモンドってハンマーで叩けば砕けるらしいんですけど。
空手の大ベテランである神山は素直に実力差を認めた。
認めたうえで、打開策を考える。
(当たらぬなら―――)
(届かぬなら――――――)
(こうするまでッッ)
届かないから、近づいたッ!
なに、その小学生みたいな発想は……。
そう思った瞬間が俺にもありました。
近い。否、近すぎるッッッ!
『まるで手に手を取って……?』
『フォークダンスをするかのような…………?』
すさまじい至近距離だ。そのまま握手ができる。
これで逃げる距離を封じたつもりだろうか。
でも、姫川は軽く逃げえるだろう。読みが甘い。
神山さんは、試合経験のすくなさがアダになったか?
神山さんは顔の位置が低い。
タックルを狙っているような位置だ。
つうか、姫川の股間が目の前なんですけど。
特定嗜好の同人女性に向けてアピールしているんでしょうか。
姫川の腰力はとんでもない。女性一人を飛ばすことができる。(餓狼伝13巻 105話)
ヘタに腰に密着したら、ふっ飛ばされますよ。
神山さん、それはやっちゃいけない。
冗談はともかく、神山さんの構えが異常だ。
足を前後におおきく広げ、右腕は前腕でアゴの守るようにガードし、左手は右腕の下でガードだ。
上半身は思いっきり前にかたむけている。
「竜変の構え」を変形させたような構えだ。(参考:「極真・史上最強の空手を始める人に」)
これだけ上半身を前に出していると、腹を攻撃しにくい。
だが、顔面は打ちやすそうだ。
とくにガードが顔に近い位置にあるので、間合に入りやすい。
殴られたくないのなら、鞍馬が久我重明との稽古で見せたように片腕を伸ばすべきだ。(餓狼伝9巻 154ページ)
どうも、打たれることを覚悟した構えらしい。
右手はストレート・フック系に対応できるようにアゴをガードしている。
左手はアッパー系に対応するためか、アゴの下だ。
攻撃は喰らっても致命傷にならないようなガードを狙っている。
打たれる覚悟と、倒れない決意があわさった構えだ。
ただ、ローキックには弱そうだ。
足を開きすぎているので すばやく動けず、ガードも無理っぽい。
だが、神山さんもどこに弱点があるのか知っているはずだ。
弱点を弱点のままさらすとも思えない。
たぶん、ローキック対策もしているのだろう。
(打ってこい姫川ッッ)
攻撃のために近づいたのではない。
相手に打たせることを前提とした構えで、カウンターを狙っているのだ。
神山徹が捨て身の作戦である。
おそらく顔面を狙ってくれば、ガードした上で反撃をとるのだろう。
ローキックの場合は相討ちをねらうかもしれない。
無傷の勝利は考えていないようだ。
だが、姫川は打たない。
わざとスキを作っている相手を攻撃するのはキケンだと知っているのだろう。
天才でありながら冷静だ。
一般的に、天才はムラっ気があるタイプが多い。だが、姫川はちがう。
安定した天才ってのは始末に終えない。
高収入でありながらマイホームのために貯蓄しているようなものだ。都心の一等地を買い占められる。
たとえば、目の前で姫川の恋人に添い寝してみせても、動揺しないんだろうな。
私は、動揺しまくるオリバのほうに好感もちます。
姫川は攻撃しないで、逃げる。
神山さんが追う。
ただ 追うだけではない。姫川をコーナーに追いつめた。
いや、誘われたのか?
神山さんは己の顔面をさらして姫川の攻撃を誘った。
同様に姫川はコーナーに追いつめられることで、神山さんの攻撃を誘っている可能性がある。
攻撃と防御は同時にできない。攻撃すると、どうしてもガードに隙間ができるのだ。
二人とも、先に手を出したくない。
(姫川よ………)
(この距離でも なお当たらぬことは知っているッッ)
やはり、誘いか!?
神山さんはワカっている。
ワカっているのだが、追い込まれているのは神山さんのほうだ。
追いこまれてしまうと、じっとしているよりも動きたくなってしまうらしい。
ダイエットしている人にとって、夜中のケーキみたいなものだ。
ヤバいのはわかる。わかるけど、食べたい。結果、泣く。
人間はどうしておろかな行為を繰り返してしまうんでしょうね。
と、いい話っぽく まとめてもダメなものはダメなのだ。
『つッ 摑んだァ〜〜〜〜〜〜ッッ』
やはり、神山さんが動いてしまった。
単純な打撃技では当たらないと、つかんでからの打撃技に切りかえた。
そでをつかんだ状態から、頭突きだッ!
白目になって必殺の頭突きを叩きこむ。
スカ……
スカったッッッ!?
上着だけ残して姫川の姿が消えた。
なに、それ。そんなのアリなの?
引田天功か、あんた。
でも、ズボンを脱げなかったので、オリバの勝ちだ。
でも、オリバの脱衣は背中から出たと説明できる。
姫川の脱出は説明不能だ。
そうなると、姫川の脱衣のほうが一段上なのだろうか?
いや、たかが脱衣に上とか下とかを述べるのは貸衣装にハチミツをかけるがごとき思想だ。
あんまり考えなくてもいいか。
[振り返った刹那―――――― 神山は見た]
[己が正中線に――――――]
[深々と致命打を打ち抜く姫川の姿を]
それは実際に放たれていない、殺気のみの打撃だった。
だが、一流の武道家である神山はリアルに反応してしまう。
脳はゆれ、胃がひしゃげ、睾丸が上がった。
上中下段をすべて喰らったイメージで、神山徹はダウンする。
決まり手「リアルシャドー」だ。
アオリ文句に決着と書かれているのだが、本当に終わってしまうのだろうか。
姫川 vs. 神山戦は互いに一発も当たらないまま試合終了なのか!?
登場人物紹介に久我重明がのっていて、神山さんとの因縁を書いているのに出番なしかよッ!?
これでは久我さんがなんのために出てきたのかワカりゃしない。
もしかして、盟友・神山の仇をとるべく、久我さんが畑にかわって姫川と戦うのか!?
2006年11月28日(24号)
餓狼伝 Vol.180
我々餓狼伝読者(の神山さんファン)は、二週間待った。
きっと神山さんが「ヤイサホー!」と雄たけびをあげて立ち上がると期待していたのだッ!
ガッツポーズの練習までした。
今のガッツポーズは角度が浅い、などと特訓していたのだ。
スリップをしているだけに決まっている。転んだだけさ…。
ほら…しゃべり出すぞ…。今にきっと「ヤイサホー」と雄たけびをあける……。
…………………。
バ…バカな。か…簡単すぎる。あっけなさすぎる……。
背中を刺されたからのけぞったなどの言い訳が通用しないほど確実に、神山さんが敗北した。
眉間に一本拳を喰らう(イメージ)。水月に貫き手をさされる(イメージ)。
そして、一ページ丸ごと使ってじっくりと仕上げられた金的蹴り(イメージ)だ。
どれが一番ショッキングだったのかは説明するまでもない。
睾丸あがりっぱなし。
神山さんは床にヨダレの海を作ってダウンした。
なにも そこまで落さなくても……。
サボテンに激突してリタイアするアヴドゥルなみに悲惨だ。
姫川と神山さんの試合をスロー再生で確認する。
どうやって服を脱いだのかが気になるのだが、その辺はよくワカらない。
姫川は日本一のスベスベ肌なのだろうか。
まるで、スベスベの実の能力者か、「カオシックルーン」のアレみたいな現象だ。
とりあえず脱出した姫川は殺気だけで神山さんをダウンさせる。
やはり、妄想は録画できないらしい。
念写するにはもうちょっと高度な妄想が必要だ。
刃牙なら、可能かもしれない。そう思わせる変態感は姫川の数段上である。
「どう思う丹波くん」
「君なら見えただろう」
泉先生、ナニを言い出すのッ!?
いきなりボケましたか?
なんかヘンな物喰った可能性もある。イブニングだけに、菌が見えるとか言い出しませんよね。
畑の試合で古流の奇跡を見ちゃったもんだから、気で人を倒せるとか信じこんだのか?
丹波も見えているらしい。
ただ、オカルト的なものではないようだ。
「はじめの一歩」で言えば殺気のこもったフェイントみたいなモノなのだろう。
ヤバい、スキだらけ! というタイミングに殺気を放たれたので、実際に喰らうイメージが出たと思われる。
神山さんが一流だからこそ理解できた殺気だったのだろう。
そして、一流の戦士だけがなにが起きたのかを理解している。
たぶん長田も理解しているはずだ。
なぜか、梶原は理解しすぎて股間を押さえていると思う。
梶原は無駄なところの能力が高いタイプだ。リアルシャドーが伝染する。
「ありゃ辞めるな…………」
「空手」
松尾象山がつぶやく。
あまりにみじめな敗北をした神山さんは、空手を辞めると予想した。
松尾象山の予想なんだから、当たるんだろうな。
神山さんがかわいそうだ。
鞍馬にもてあそばれて敗北した片岡でさえ、辞めると言い出さなかった。
やっている事は優雅かもしれないが、姫川のほうがヒドい。人の心を最大限に傷つけている。
範馬一族も四千人を不幸にできるサディストだが、姫川もスゴい。
下痢の人に下剤をすすめるような事を日常的にやっていそうだ。
せめてバファリン一錠分ぐらいの優しさが欲しい。
試合後、姫川はトイレに行く。
本日のワンポイント・レッスンだ。
『美形でも排泄する』
過剰な幻想はもたないように。女性の姫川ファンにぜひ直視していただきたい部分である。
そんなトイレに藤巻十三が乱入してきたッ!
アンモニア臭ただよう密室でファイトする気か!?
そして、警察もしっかり藤巻をマークしている。
袋のネズミ状態で藤巻はどうするのか。
藤巻は、姫川に勝負を挑むのだろう。
勝算はあるのか?
次回へつづく。
待ちきれなくなったのか、藤巻が先走った。
姫川が強すぎるので、負傷ぐらいしてくれないと今後の試合も一方的だろう。
畑戦のために姫川負傷が欠かせないのかもしれない。
というか、藤巻が勝って、姫川になりすまして出場するってのはどうか?
審判は、姫川じゃないとジャッジするのだが、松尾象山のGOサインで姫川と認定されて試合続行だ。
決勝戦は長田vs.姫川(藤巻)になることを期待する。
でも、ツンデレな藤巻のことだから「ウチの長田がオマエを倒す」宣言して、どこかに飛んでいきそうだ。
ただサディスト能力では姫川のほうがはるかに上だ。
冴子とのエロシーンを写真で見せたり、藤巻の隠し撮りを持ちだして藤巻を苦しめるにちがいない。
後者だと、藤巻の精神は破壊されそうだ。
ところで、なんで姫川は神山さんに攻撃しなかったのか?
実際に攻撃すると、反撃の恐れがある。
ただ、あの状況だと好きに打つ事ができたはずだ。
安全のためと言う理由は考えにくい。
実際に攻撃すると、三発すべてを当てる事ができたかどうかあやしい。
打撃は打って引くという動作が必要だ。
さらに、全打撃に力をこめようとすると、筋肉に力を溜める時間も必要になる。
スキはあっても、完全な打撃を打つチャンスは一発分だったのかもしれない。
姫川は三回打ちたかったのだろう。
だから、殺気だけ放った。
物理現象ではないから、現実的な打撃より速いと思われる。
現実には一回しか攻撃できないから、妄想で三回殴った説でどうか?
底なしのサディストであった。
うん、やっぱり藤巻は間違えましたといってトイレから出たほうがいい。
きっとヒドい目にあう。
大の男が泣くような目にあう。
次回ラストは泣き崩れて頭を抱える藤巻になりそうな気がする。
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