餓狼伝 (VOL.181〜VOL.190)
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2006年12月12日(1号)
餓狼伝 Vol.181
ウホッ! 藤巻が男子便所で姫川を襲撃だ。
トイレとか手洗い所とか化粧室なんてキレイな言葉でごまかさず、ここは便所と書きたい。
臭そうなところで勝負をいどむのが藤巻イズムだ。
今日も藤巻は寝汗の芳香(かおり)がする。
「藤巻さん…………でしたね」
姫川、キサマ――――――――――――ッッッ!
『でしたね』じゃねーだろ。
冴子をめぐって激しく争ってきた(藤巻 視点では)仲だろうがッ!
夜の路上でにらみ合った事を忘れたとはいわせないぞ(餓狼伝 13巻 106話)。
もちろん、姫川は全部覚えている上で『でしたね』とか言う男なのだ。
天性のサディストである。
人とブタの区別がつかないふりをするサディストだ。
神山さんとかはヒドい目にあっている(現在進行形)。
さすがに藤巻は耐性がついてきたのか、鼻息を飛ばすだけで怒ったりしない。
いや、怒っているっぽいけど、殴りかかったりしないのだ。
便所で激しい呼吸はいかがなものかと思うが、よく耐えた。
「いかにもって場所で――――」
「やだな……」
姫川はなおも挑発(?)する。
絵が絵なら、女性向け同人三冊はできる状況だ。
しかも、いやだといいながら、まんざらでも無さそうな感じがする。
キャー、姫川さんって誘い受け!? と黄色い声が聞こえてきそうだ。
ちなみに餓狼伝世界の誘い受けは、相手に攻撃させてカウンターをとるタイプです。まさに姫川のスタイルである。
「長田は」
「竹宮流の代表だッッ」
藤巻、キサマ――――――――――――ッッッ!
かってに代表にすンなよ。
おまえ、もうツンデレっていうレベルじゃねーぞ!
むしろラブデレじゃねえか。
本人いないところではラブラブで、本人がいるとデレデレだ。書いている俺もワケワカらん。
なんかもう、かってに婚約発表しちゃったような感じだ。
前回書いた予想通り、いや予想を超えたデレっぷりでした。
藤巻のはなつ新婚級ラブラブ攻撃に、姫川も対抗する。
ファサ…と、しばっていた髪をほどいてお色気モードに入った。
ふむ。美形が好きな筋には好評かもしれん。
これなら、女性向け同人五十冊はイケる。
しかし、藤巻十三は」ガチガチのセメント男だ。
美形ごときでゆれるような心は持ちあわせておらぬ。
「きさまは竹宮流の技で敗れるのさ」
とことん長田を信頼しています。
しかも「〜のさ」と、語尾まで変化しちゃっている。
ちょっと やわらかくなりすぎだ。デレすぎだよ。
それより、もし長田がバックドロップとかのプロレス技で勝っちゃったら、どうするんだろ。
そういえば藤巻も2巻でバックドロップぎみの技を出していたから、竹宮流と言いはるかもしれない。
まあ、竹宮流であろうとなかろうと、今の藤巻なら勝った長田を祝福するだろう。
なんにしても、長田の知らないところで極秘情報を敵に流しまくるのはマズい。
思い起こせば106話の時から、情報漏洩しまくりです。
長田を強くしたのは藤巻だ。しかし、長田を不利にしているのも藤巻だった。
差し引きゼロって感じだな。
長田が強くなった分はプラスだが、鞍馬にコピーされてマイナスだ。
姫川がたわむれに飛ばした輪ゴムを、藤巻は指でつかみとる。
逆にゴムを飛ばし返す、と見せかけて蹴りだッ!
だが、姫川に蹴りはあたらない。
藤巻の足は、飛ばしたゴムに追いつき、蹴り上げていた。
ゴムより速い蹴りである。スゴいのかスゴくないのか わかりにくい。
なんにしても、姫川に当てる気はなかったようだ。
「顔にアザができると」
「冴子さんが悲しむだろうからな」
「そして長田も」
藤巻十三はクールに去るぜ。
つうか、最後のセリフで台無しだ。
手紙ってのは追伸部分に一番言いたいことが書かれるといわれている。
つまり、藤巻のイチバンは長田なのだ。
すでに確認するまでもないことだけど、長田です。
くどいが長田だ。
藤巻の脳内ランキングでは 長田 >> 冴子 である。
藤巻は冴子のことはあきらめたんだろうか。
実は姫川に「オマエは顔だけの男」と言いたかったのかもしれない。
むしろ、藤巻は姫川の腰力を知らなくて しあわせだ(餓狼伝 13巻 105話)。
そっちでも負けてると知ったらショックだろうな……。
いっぽう、警察グループは藤巻を猟犬のようにマークしている。
だが、まだ網を絞らない。
藤巻の手配書を会場内に貼るなど地道な努力をして、プレッシャーを与えている。
「獲るなら」
「全国ネット放送中……」
「スポットライトの会場の中でだ」
残酷なまでの藤巻包囲網が完成しつつある。
まるで、ドラゴンクエスト9がニンテンドーDSで発売されるといわれた後のPSPみたいな、ヤバい状態だ。
もう脱出不能なんじゃないのか?
会場に藤巻の手配書をはりまくるのは、観客にもいまから捕まるのが犯罪者だとわからせるためだろう。
では、どうやって藤巻を会場にひきづりだすのか?
姫川が襲われそうになっても冷徹に見守った警察グループだ。
長田に傷をおわせて藤巻が出てくるようにしむける可能性もある。
こうなると、長田が危ないッ!
そして、準決勝の第一試合は長田弘と鞍馬彦一が闘う。
バツグンの才覚をもつ鞍馬をあいてにして不器用な長田が苦戦するのは必死だ。
長田のピンチに耐えられる藤巻でないのは、すでに証明されている(18巻 162話)。
また、変装だいなしにして大暴れしちゃうのだろうか。
試合場の外でも大変な事態になっている長田であった。
強敵を相手に勝つことができるのか?
次回、よいよ準決勝がはじまる!
そのころ、手配書をみた主人公の丹波文七は会場内に藤巻がいるのかと驚愕していた。
……丹波は、泉先生が藤巻に逢えるような気がすると言っていたのを、信じていなかったのだ(19巻 174話)。
この主人公は地道にダメポイントを稼ぎやがる。
2006年12月26日(2号)
餓狼伝 Vol.182
北辰会館トーナメントも、ついに四強が決定したッ!
空手家を破り、柔道家を投げ、ヒグマに勝つ。
プロレスラーでありながら竹宮流柔術の使い手だ。
長田 弘 (プロレスリング183cm・123kg)
大本命を屈辱ブレンバスター、人気キックボクサーを屈辱ヘッドロック、求道者的な空手家を屈辱バックドロップ!
骨を断たせて屈辱を与える。ある意味プロレスラーらしいのか?
鞍馬彦一(プロレスリング 185cm・105kg)
一回戦と二回戦は、…………どんな試合だっけ?
だが、椎名(椎野)との試合はすごかったぞ。地味な印象が消えないぞ。
畑 幸吉 (古武道・拳心流 175cm・71kg)
いまだ一撃も当てられず。そして一撃で勝負を決める。
コイツはどこまで強いのか!?
姫川 勉 (北辰会館 186cm・87kg)
勢ぞろいした四人は体を冷やさないためか、上着をはおっている。
ただ、鞍馬だけが空手着の下にTシャツだ。
微妙な美意識があるのだろうか?
「俺は筋肉が多いから、冷える心配なんて無いんだよ」というアピールなのかもしれない。
そのころ、藤巻は自分の指名手配を見て動揺していた。
汗を流してショックを受けている。
自分の写真を凝視しながら脂汗をたらしている姿は、どう見ても不審人物です。
もうちょっと肩の力ぬいて、スルーできないものか?
(ここで捕まるワケにはいかないッッ)
振りかえり、周辺をにらみつけつつ、仁王立ち。
思わず通行人も注目しちゃう大迫力を出している。
だから、目立つ行動はやめなさいって。
藤巻が仁王立ちから睨みつけのコンボを発動させて三コマ後……、通行人たちに正体がばれた。
バ、バカかテメェッ!?
追いつめられて血迷った行動をとっちゃったんでしょうか。
せめて廊下での仁王立ちをやめておけばよかったのに。
なんで、注目を集めるような行動するかな。
正体がバレたので藤巻は全力ダッシュで走り出す。
三人の私服警察官が立ちふさがる。
最初の一人に飛び蹴り。前歯が飛びちった。
二人目が藤巻のエリをとる。
すかさず、かえして投げた。
あの梶原ですら投げられた(と書くとスゴくなさそうだけど)襟取り返しである。
一般的な警察官には対応不能だ。
しかも、倒れた相手をカカトで踏みつけている。
カカトで踏みつけるのは、マウス三兄弟も認める必殺技だ。
変装に関しては徹底できないのだが、闘争に関してはいっさい妥協をしない藤巻十三であった。
三人目は、一見するとどこにでもいそうなオッサンだった。
だがふところかから拳銃を取り出す。
警察官は、コレがあるからこわい。
多少きたえただけじゃ超えることのできない飛び道具を所持しているのだ。
だが、藤巻は撃たれるより早く、相手の手首をヘシ折っていた。
そして、トドメに顔面へ拳をメリコマせる。
総理大臣を襲撃したときの範馬勇次郎なみにすばやい対応だ。
まったく躊躇せずに折る。そうとうな覚悟を持ってないとできない芸当である。
こんな藤巻でも長田と絡むと、ツインテール少女のようなツンデレになるから不思議だ。
警官を一瞬で三人を倒してのけた。
やはり藤巻の強さは圧倒的である。
だが、藤巻包囲網がこんな簡単なワケがない。
少なくとも10人以上の人間が藤巻をかこんでいるはずだ。
相手は猛獣を狩るようなつもりで布陣している。
藤巻は逃げる事ができるのか?
(時効までわずか9日)
(逃げきってみせる!!!)
やはり、猛ダッシュで逃げていく藤巻であった。
変装グッズを投げすてるからこんなことになるんだよな……。
暴走するツンデレ男はどこへ向かって走るのか?
答えの見えぬまま、2006年が終わる。そして、次号は餓狼伝がお休みらしい。
ちょうど良いタイミングなので、次回の1/9はトーナメント三回戦のまとめをやる予定です。
ツンデレは精神の未熟を意味すると以前に書いた事がある。
藤巻の状況がまさにそれだ。
もう少し先のことを考えて行動しよう。
変装グッズを捨てずに持っておくとか、指名手配書の前で不審な態度を取らないとか、やるべきことが多い。
藤巻には、まだまだ成長が必要だ。
竹宮流は長田に託して逃亡すると考えていそうだけど、長田がピンチになると思わず帰ってきそうだ。
それも、目立つ格好か、目立つ態度で。
もう一度、変装を一からやり直したほうがいいかもしれない。
2007年1月9日(3号)
餓狼伝はお休みです
せっかくなので三回戦を振りかえってみよう。
三回戦がはじまるのは2006年1月10日の161話からなので、ほぼ1年間やっていたことになる。
餓狼伝世界は亜光速で進んでいるのか、時間のながれが遅い。
長田 弘(プロレスリング 183cm 123kg) vs. 工藤建介(北辰館 193cm 120kg)→(161、162、163、164)
地味ながら大会屈指のパワーファイターとして注目されていた(私だけか?)工藤が本気をだす。
いきなりのヒグマ宣言(161話)から、オキテやぶりのドロップキック(163話)など、なんかトリッキーな人だった。
あれ、パワーファイターじゃなかったのか?
そして、藤巻十三の電撃的ツンデレ観戦があった(162話)。
思わず変装を投げすてて応援しちゃうという、あまりにもツンデレな姿に業界が騒然となる。
彼のツンデレッぷりは早くも伝説となりつつあるのだ。
『藤巻が夢精してパンツ洗ったときに入ってきたのが、長田なんだ』的な伝説であった。
そして、竹宮流の雛落しが炸裂する。(164話)
PS2ゲームの『餓狼伝 Breakblow』で、すでに登場しているワザなのだが、漫画版として初披露だ。
当たり前かもしれないが、技の入りかたがゲームとは ちょっとちがう。
ゲームの続編が発売決定しているので、次は漫画版に準じた技になると思われる。
竹宮流と言う切り札を出してしまった長田は今後の試合を勝ち抜けるのだろうか。
鞍馬彦一(プロレスリング 185cm・105kg) vs. 片岡輝夫(空手・志誠館 182cm・95kg)→(165、166、167、168、169、170、171、172)
長い試合だった。
そして、ひたすら鞍馬が片岡をいじりまくる。
空手家にプロレスを演じさせると鞍馬は豪語して、結果的にお笑いをやったような試合だった。
鞍馬ってのは、ウケを取るためには負傷も辞さない男だ。
ある意味、長田よりもプロレスラーらしい人間なのかもしれない。
それでいて、負ける事を心配しているあたりが、鞍馬らしいマヌケっぷりだ。
グレート巽にいじられまくって、プロレス体質になってしまったのかもしれない。
片岡もいいキャラだったのだが、今後の出番はないのだろうか。
鞍馬との友情がめばえちゃって、マスクの空手マンとして助っ人にやってくる展開があるかもしれない。
…………無いか。
畑幸吉(古武道・拳心流 175cm・71kg) vs. 椎名一重(日本拳法 195cm・123kg)→(173、174、175、176)
畑自身よりも、畑の先輩にインパクトがあった。(173話)
チョーと奇声をあげる姿は、読者の心に眠るダークサイドをワシ掴みだ。
正直に言って、畑が次の試合に勝てる確率はほとんどゼロである。
並大抵の奇跡では逆転できないほどヤバイと思う。
そこで、チョー先輩の出番かもしれない。
椎名は、体格・技術ともにトップクラスの選手だったのだが、活躍の場が少なかった。
頼れる先輩がいなかったのが敗因だろうか。
むしろ名前が安定しなかったことも大きいと思う。
最終的に椎名に落ちついたみたいですけど。
姫川勉(北辰会館 186cm・87kg) vs. 神山徹(伝統派空手 175cm・74kg)→(177、178、179、180)
神山さんの活躍を期待して、無念に終わる試合だった。
決まり手がリアルシャドーなのが、また悲惨なところだったりする。
おまけに松尾象山に空手を辞めるだろうと言われているし。
久我さんとの因縁は、けっきょくなんだったんだろうか?
藤巻十三、大暴れ(181、182)
準決勝に入る直前で藤巻が またまた暴発する。
ニトログリセリンよりも爆発しやすい男だ。
思い返すと2006年は藤巻のツンデレに始まり、藤巻のツンデレで終わった年だったのかもしれない。
改めて見返すと、なんかイロモノ試合ばかりだったような気がする。
長田 vs. 工藤は真面目な試合だったように思えるが、ヒグマになるとか、ツンデレとかの脇の要素が怪しすぎた。
同じ人間が三回も戦うと、試合展開のネタが尽きるのだろうか?
ただ、今後はメインディッシュの登場だ。
長田と鞍馬の対決は原作にない。そもそも鞍馬が漫画オリジナルのキャラクターである。
鞍馬が勝っても、その後の展開に問題は無いはずだ。
次の試合は、経過も結果もまるで予測できない戦いになるだろう。
次回、二人のプロレスラーが激突する。
そのとき、梶原はッ!?
……たぶん、口を開けたまま観戦しているだけなんだろうな。
2007年1月23日(4号)
餓狼伝 Vol.183
119話でエリート風刑事は、10人より多い応援を要請した。
やってきたのは総勢18人の精鋭たちだ。
人が集まってから手配書はろうよ。
狩だって、落とし穴掘ってから追い込むでしょ? 追い込んでから穴掘ってたら間に合わないって。
ジワジワと完成していくそばで、こっそり破綻していく藤巻包囲網であった。
この刑事って、じつは役に立たない人なのか?
確かに人数は10人より多い。だが藤巻対策にしては少なくないか?
崖っぷち犬の救助体制より人が少ない気すらする。
スペックがぶちのめした「対テロ機動部特別機動隊」(バキ4巻 34話)の装備よりもヘッポコだし、質・量ともに不足気味だ。
「ライオンとか熊が並みじゃないくらい並みじゃないから」
「一人で行動しないでね」
「鉄則はこれね」
「二人一組以上―――」
さすがエリートだ。教科書どおりの指示をしている。
じゃっかん、たとえが妙だけど。
ちなみに選手の中にヒグマがいた事を彼は知っているのだろうか?
ハッキリ言って藤巻はヒグマ以上だぞ。
並みのヒグマじゃないくらい並みじゃないから。
あと、人は集団で戦うことになれていないというのが定説だ。
二人一組以上は、かえってダメなんじゃなかろうか。
でも、機動隊っぽい人たちだから、集団戦闘も訓練しているはずだ。
軍隊の戦闘術はようしゃない。ある意味、現代的な武術だ。
さすがの藤巻も、機動隊には苦戦するかもしれない。
しかし、肝心の藤巻を見失ったところなので、戦力を分散して探索する。
なんか各個撃破されそうな感じだ。
すべて指名手配のポスターを早くはりすぎたのが原因です。
藤巻が本気で逃げる気だったら、すでに逃亡成功していただろう。
そのころ、鞍馬彦一はグレート巽から、試合前の指さし負傷確認を受けていた。
自分はベストだと言い張る鞍馬に対して、巽社長はようしゃしない。
ズビシッ、ズビシィッと骨折した箇所を的確に圧迫して、鞍馬を脂汗だらけにする。
なんだか知らんが、ちょっと胸がスッキリした。
鞍馬は、巽に対してもダメージを隠していた。
言動や携帯履歴を見るだけじゃワカらないが、格闘者の意地をちゃんと持っているのだ。
生意気でムカツク人ですが、根はマジメにトレーニングする男である。
肉体に関しては、久我さんからお墨付きももらった。
実は、根性のあるヤツなのだ。でも、不思議と(個人的に)好感度が上がらないんだよな。
「ヒコイチ」
「貴様の言うとおりまさにベスト」
「野生の原則はそのままリングに重なる」
「手負いこそ危険 手負いこそが最強」
巽真がグレートに語る。
そりゃぁ、もう圧倒的な説得力だ。
グレート巽に言われちゃ、納得するしかない。
でも、長田が勝ったら「野生の原則は(略)。群れる狼より、一匹狼のほうが強く育つ。組織を離れ、一人でよくぞがんばった」と言って抱きしめるぐらいは、ヤる。
巽ならやりかねない。
そして、号泣とともに全米No.1ヒットの感動を呼んで、うやむやにしてしまう。
「始まればワカる」
「遊んでこいッッ」
巽が、平手打ちで闘魂注入だッ!
もちろん、骨折しているほうの顔を叩いているッ!
た、巽さんッ、それってギャグか??
後に、このビンタが勝敗を分けた一撃と呼ばれるのであった。たぶん。
手負いの方が強いんだ。山口貴由『サイバー桃太郎』(参考:Amazon)みたいなことを言いやがる。
山口先生の名を出した時点で、一切の事実検証は不用になるのがありがたい。
これこそ、信用でありブランドというものだ。臓物こぼすなら、山口貴由である。
蛇足だが、2215試合連続出場の記録を持つ野球選手の衣笠祥雄もデッドボールを受けた後の打席の方が集中できるというような事をいっていた。
そういえば、「ドカベン プロ野球編」でも、松坂が初登板するときに、すこし寝不足ぐらいの方が調子がいいと言っている人がいた。
本当に蛇足になってしまったかもしれないが、体調が完全でないときの方がイイこともあるらしい。と、まとめておこう。
鞍馬が闘魂注入で、試合前に故障した(願望)同時刻に、梶原は長田にマッサージをしていた。
もう、すっかり そういうポジションです。
縁の下の力持ちとか、リングの外の驚き役だ。
解説役は、最近 引木さんに奪われた。
長田をもみながら、リラックスできるように雑談をする梶原であった。
若さ・スピード・才能のある鞍馬に分があると観客には言われているらしい。
梶原は、どこでリサーチしたんだ?
しばらく姿が見えなかったのは、どこかに潜んで情報をあつめていたのだろうか。
つうか、試合前にする話題か?
もう少し盛りあがる話をしたほうがいいぞ。
梶原は、ああ見えて けっこう精神的に弱いのだ。
試合前日に鞍馬ともめたときは、梶原ばかりがキレていた。
もっと平常心をもつべきだ。
「手が震えていたぜ 梶原」
むむぅ、チキン梶原の誕生ですか。
話をしていたのは、長田を落ち着かせるためじゃなかったようだ。
自分を落ち着かせるためらしい。
選手に気づかわれるセコンドってのは、困り物である。
こんな時に、藤巻がいてくれれば……。
たぶん長田はそう思っているだろう。
「鞍馬彦一は俺より強ええッッ」
長田は素直に鞍馬の戦力を認める。
確かに純粋な戦闘力を比べたら、鞍馬の方が強いだろう。
パワー・スタミナ・スピードで負けている。
ただ、テクニックに関しては、長田のほうが有利かもしれない。
長田が勝つには、試合のペースを支配するしかない。
でも不器用な長田に、できるのか?
梶原はもっとヘタっぽい。
なんか、勝利への道がぜんぜん見えてこないんですけど。
コレばっかりは、藤巻も無理だよなー。なにしろ、不器用のベスト・オブ・ベストだもん。
その藤巻は、会場にあるカーテンの陰に隠れて試合を見ていた。
息を乱して汗だくで。
さすがツンデレ+ツユダクの頂点を極めし漢(おとこ)よ。
漢(おとこ)は「さんずい」があるから、汗がにあいます。
藤巻は、不審者レベルをさらにあげて観戦中だ。
のぞき行為は、ひそかな特技ですから。
自分から表に出ないかぎり、たぶん見つからない。
藤巻の場合は表に出ないよう自重する事がイチバン難しいのだ。
[空手史上]
[初………]
[プロレス VS プロレス]
とても狂った状態の試合がはじまる準決勝であった。
ラーメン屋がカレーをはじめたら、いつのまにかカレー専門店になってしまったような状況です。
主催者でよろこんでいるのは松尾象山ぐらいだろうな。
空手大会でレスラー対決だ。
もしかしたら、打撃が出ないかも。
むしろプロレスになってしまうのか?
波乱の予感がする試合がはじまる。
この試合は、原作にはない戦いであり、どっちが勝っても話はつながるのだ。
究極の原作ブレイクが始まるのか!?
次回へつづく。
2007年2月13日(5号)
餓狼伝 Vol.184
前回、鞍馬彦一に闘魂注入の張り手を喰らわして、勝負を決めた(?)グレート巽が、今度は長田陣営にあらわれた。
料理は下ごしらえを丹念にすることが重要だ。
名シェフ巽が試合前の選手を仕込み、名試合を作り上げるつもりか。
長田はFAWを追放される覚悟で大会に参加している。
その上で、FAWは公式に鞍馬を正式な選手として送りこんだ。
実子がいないから養子にもらわれたら、子供ができちゃって肩身せまいって感じです。
二時間ドラマなら確実に殺人事件が発生するぞ。
そんな、気まずい関係の長田陣営にやってくるのが、グレート巽だ。
肝が太い。我が意を通しまくりだ。
そして、路傍の雑草のように梶原が踏み潰されるのだろう。
「……」
「おつかれッス」
微妙な関係にある巽にたいし、長田は無言だった。
梶原は訓練された犬のようにビシッと挨拶する。
……………………梶原よ。
いや、言うまい。
「ちょっと いいかい……」
「あ……ハイ」
オマエが返事するな、梶原ッ!
このヘタレ! 無精ヒゲ! 片金!
試合前に選手を動揺させるようなことをするな。許可するな!
とことん使えないセコンドであった。
まあ、梶原は巽の言うことに逆らえない体なのだろう。
にらまれたら、睾丸が縮こまるような条件反射ができていそうだ。
「ここじゃ話しにくいな」
グレート巽は直球ド真ん中だ。
周囲に人のいる大部屋控え室で、爆弾発言をする。
これから悪巧みをしますと宣伝しているようなものだ。
巽のことだから、周囲の報道陣にわざと聞かせているのだろう。
FAWが何かを企んだとマスコミに思わせることで、逆に演出を狙っていると思われる。
同じ団体の選手がトーナメントでぶつかったら、どちらかが身を引くということは、ありがちだ。
巽もそれはワカっているはず。
ならば、その予想の上をいく奇策を用意しているのか?
巽の話は、鞍馬に勝ちを譲れというものだった。
「15年プロレスやって今のところ前座か中堅」
「それがプロレスラー長田 弘の商品価値だ」
長田は性格が地味なせいか、実力のわりに人気が無いのだろう。
一方、鞍馬は柔道家 船村弓彦をいじり倒して大ブレイクした。
ついでに梶原もふみつけていたのが、なおヒドい。
誰かを踏み台にすることで、高みに上がるのが鞍馬流だ。
伊良子清玄と同じ家で暮らしたら、互いに喰いあって大変なことになります。
ネットでも鞍馬は大人気らしい。
う〜ん。都合よく情報操作されていませんか?
なんか、鞍馬が中学生のころの記事がネットにUPされている。
http://www.kurama.kurama/news/6/s1/
当然、架空のアドレスです。一発でニセモノとわかる。
が、「kurama.kurama」は無いだろ。
これって鞍馬の個人サイトっぽいのだが?
書きこみ自体が自作自演という気がする。
巽はパソコンやネットに無知だと思われる。
誰か(たとえば鞍馬)に都合のいい部分だけ選んでプリントアウトした資料を見せられて、ネットでの支持も圧倒的と信じちゃった可能性もありそうだ。
もっとも、巽はそんなに単純じゃない。
性格や容貌・身体能力・そして華ッ! を比較して、鞍馬を評価したのだろう。
アンチ鞍馬としては悔しいが、長田よりも鞍馬のほうがハデで目立つのは確かだし。
鞍馬は、立派な悪役(ヒール)になるよ。
だが、断る。
長田は断固拒否した。
これは勇気のいる否定だ。
社長命令を断る。クビ覚悟じゃないとできない。
しかも、FAWの場合 法治国家の企業とは思えないような罰則がまっているので、マジ危険だ。
「次の興行で俺とカードを組まれてもか?」
「社長自らの手で」
「俺を潰すってことですか」
「さあな」
「指示に従わぬ部下をどうするかはまだ決めていない」
怖ぇえッ!
今回の巽はマジ怖い。つうか、ほとんどのコマで巽の眉間に縦ジワが入っている。
静かな怒りを溜めていそうだ。
なにより、恐喝のお手本みたいに言質のとられないおどし方をしている。
殺すとか言っちゃうと恐喝罪になるので、誠意をみせろと言うようなパターンだ。
試合を組むとしか、言っていませんよ、と言い逃れることもできる。
そして、リングの上で殺しても罪には問われないコンボが炸裂しそう。
巽の静かな脅しで、長田よりも梶原がビビっている。
汗量も多いぞ。
なにしろ巽に片金潰された男だ。
巽と長田の間合が、蹴り上げれば潰れる危険度200%ゾーンという点も不安なのだろう。
「見くびらんでくださいッッ」
だが、それでも長田は拒否した。
しかもノリツッコミだ。
ひょっとして、長田が覚醒したのか?
ノリツッコミを武器にマイクパフォーマンスを行えば、独特の人気が出るかもしれない。
どっちかと言うと天然ボケが多いFAWだから、ツッコミ役は貴重だぞ。たぶん。
「よく言った長田」
「期待しているぜ――――――」
巽は、鞍馬がアゴと胸を骨折していると伝え去っていく。
ツンデレなのか、企業家としての計算なのか、巽の本心はわからぬまま試合が始まろうとしている。
一方、鞍馬は複数の彼女が応援にやってきて、あわや鉢合わせという状況であった。
本当にリアル彼女がいたんだ。
てっきり携帯電話に棲んでいる妖精さんと会話しているのかと……。
リアルに彼女がいたことで、鞍馬の評判は一段下がることだろう。
ネットでの不支持も圧倒的だ。
そして、第一試合がはじまる。
FAW同士の戦いだ。
より強いプロレスラーはどっちだ!?
次回へつづく。
けっきょく、巽の本心はわからなかった。
しかし、ワカった事もある。
巽は長田を部下だと思っているのだ。
FAWから長田を追放するという話は、消えているらしい。
大会での長田の活躍が、巽のプロデュース魂に火をつけたのかもしれない。
プロレスマスター(略してプロマス)として、長田を成長させるのだ。
アイドルマスターの乗りではなく、ポケモンの乗りで。
今度の試合は観客も出来レースだと思っているだろう。
そこで、いきなりガチンコ対決をはじめる。
「コイツら、ガチで勝負してやがるッ!」
お客さんも大喜び。
たぶん、こんな予定なのだろう。
勝負に徹するなら、鞍馬の負傷箇所を攻撃するのは正しい。
しかし、長田は教えられた通りに わざわざ攻撃するだろうか。
ケガをあえて避ける攻撃を長田がする場合、決着が長引き試合が盛りあがる可能性があがる。
巽としては、りあえず北辰会館トーナメントを乗っとるつもりなのだろう。
同門対決は、意外な展開の連続になりそうだ。
2007年2月27日(6号)
餓狼伝 Vol.185
北辰館・空手トーナメントの準決勝はプロレスラー同士が激突だッ!
なんか、ネタみたいな状況です。
格闘漫画を読んでいたはずが、気がついたらエロ漫画になっていた、みたいな感じで。
ツッコンだら負けなのか? いろいろな意味で。
ひとりはベテランの中堅プロレスラー長田弘(183cm・123kg)だ。
プロレス一筋に生きてきた。
地味に鍛えてきたパワーと耐久力に定評がある。
四年ぐらい前から、漫画の主人公的なポジションにいる男だ。
そうか、真の主人公はそんなに放置されていたのか……
もうひとりは、鞍馬彦一(185cm・105kg)である。
FAW社長であるグレート巽の秘密兵器として鍛えられた。
天性の身体能力に陰の努力を加えることで抜群の体力を持っている。
ハデなパフォーマンスでデビューと同時に人気者だ。そして女性関係もハデ。
一応、長田のライバルだと思うのだが、長田を倒しちゃう可能性も高いので油断ならない。
「エラかったッスね長田先パイ」
「正直……」
「先パイ 準決勝(ここ)までくるとは」
「思ってもみませんでしたよ」
ズイっと近づきながら、鞍馬が言葉で先制攻撃だッ!
相変わらずナメた口をきく。
173話で、長田のことを怪物とよんで恐れていたのに、強がっている。
鞍馬は萌えないツンデレなのか?
はやく気絶して舌をデレっとたらしながら白目むいてください。
鞍馬を分類するとハッタリ系だ。
常にフェイントと奇策から入る。
この挑発も長田を怒らせるためのものだろう。
鞍馬の狙いは、なにか?
「鞍馬」
「よくここまで上がってきた」
「褒めてやる」
ズイ、ズイっと鞍馬がさらに近づく。
残念だが、皮肉や悪口では鞍馬のほうが上だ。
長田の返しにはイヤミったらしさがたりない。
性格のよさが裏目に出ている。
長田のかわりに姫川だったら、慇懃無礼に返して鞍馬をやり込めそうだ。
性格の悪さは鞍馬より上だと思う。
涼二だったら、いきなりキャオラッ!です。
梶原ならジャイアントスイングで一発だ。…… 一発でやられそう。
鞍馬は挑発しながら近づいている。
やはりプレッシャーやストレスを与えて、長田を攻撃的にさせたいようだ。
骨折を二箇所持っているので、長期戦は避けたいだろう。
攻撃的な雰囲気にして、短期決戦を狙っているのかもしれない。
さらに鞍馬は自分が骨折していることを伝えた。
しかも、場所まで教える。
長田の性格なら負傷箇所を攻撃しないと読んだのだろう。
そして、鞍馬は自分が信用されていないと知っているはずだ。
試合直前にこんな情報を聞いたら「本当か嘘か」と疑心暗鬼に陥り、相手は混乱する。
相手の心理をかきみだす効果まで狙った、鞍馬の作戦と見た。
でも、長田はすでに骨折情報を知っている。
鞍馬にとって残念だろうが、作戦は全部不発だ。
攻撃するか、攻撃しないかの決意だって長田はしているだろう。
鞍馬に罠をしかけたという慢心が生まれた分、不利になっている。
まさに墓穴を掘った状態だ。
そして、試合がはじまるッ!
両者、ともに前屈した構えだ。
スタンスは広くとり、安定感を重視している。
二人ともプロレスラーだけに組み技を中心に考えたスタイルのようだ。
(組むと見せかけて…………)
(ローキック……………)
(こうまでガードを上げりゃ)
(それ以外やりようがない)
(踏み込んだところをカウンター…………)
鞍馬の脳内には試合のプランができあがっている。
両手はアゴと胸をカバーするかのように、ピーカーブースタイルのような構えだ。
拳をくっつけていないところが、少しちがう。
一見、鞍馬は骨折箇所をカバーしているような構えに見える。ただ今演技中だろうか。
手を前に伸ばしていないので防御的な構えといえよう。
対する長田は手をのばし気味でキャッチを狙っているようすだ。
側頭部のガードは甘い。しかし、長田は蹴りが得意な選手ではない。廻し蹴りは無いとみてもよかろう。
すべてを守ろうとすると防御が薄くなる。だから、敵が攻めにくいところは思い切って防御しない。
「敵の攻めにくいところを不備にせよ」だ(松村劭「名将たちの戦争学」)。
上半身のガードに比べて、足の守りが薄い。蹴ってくださいと言わんばかりだ。
当然、長田も足への攻撃が罠だと思っている可能性が高い。
だからフェイントを入れてから、蹴る。
以上が鞍馬の計算だろうか。
鞍馬としては、まいたエサに魚がかかるのを待つだけだ。
はたして、長田が動いた。
まずは、ローキックだ。
(なんだよ?!)
(フェイントなしで いきなりローキックかよッッ)
長田らしい真っ直ぐな攻撃だ。
想定外だが鞍馬が予定通り左拳のカウンターを放つ!
ゴッ
長田が、パンチを打ってきた。
軽くあたる。しかし、場所がアゴだ。
たちまち、放電するような大激痛が鞍馬に走る。
さらに長田の軽い蹴りが胸骨に当たった。
(マ……ッッ
マジですかァ〜〜〜〜〜ッッ)
鞍馬彦一の人生で、最大級の大誤算であった。
久我さんに暴言吐いたときと、どっちが誤算かッ!?
リアクション芸人と化した鞍馬の活躍は次回につづく。
予想をくつがえして、長田が鞍馬の弱点を攻めた。
まあ、自業自得なんですけど。
鞍馬はプロレスを嘗めたッ!
私も長田のことをあなどっていた。
長田だってグレート巽の弟子なのだ。エゲツ無い攻撃は得意であっても おかしくない。
巽真(本名)ともあろうお方が相手の負傷を見逃すようなヌルい展開を許すだろうか?
盲目の戦士・サクラと戦ったときは、まず相手の聴覚をつぶそうとした男ですよ。
負傷を知れば、喜んで叩くのが巽です。
もっとも、長田は警告として殴っている可能性が高い。
攻撃が軽そうだし。
真剣勝負を嘗めんじゃないぞ、と先輩からのアドバイスだろうか。
攻撃が軽いのにはまだ理由がありそうだ。
的確な場所に当たるのなら、強く殴らなくても十分なダメージになる。
全力ローと見せかけて、パンチという切り替えをしたため、手打ちの拳になったと思われる。
軽い打撃ってのはスキも少ないので、反撃を受けにくい。
ちゃんとダメージを与えられるのなら、ジャブで十分ですよという心境だろう。
今回は完全に鞍馬の読みちがいだ。
原因は巽にあるというのが、皮肉な話ですけど。
梶原は役に立たないけど(今は。昔は活躍した)、マイナスにならないだけマシかもしれない。
巽ぐらいスケールが大きい人になると、ムダに被害が出ちゃうのかも。
鞍馬は今回の一軒を反省して、リングネームを鹿一に変更したらどうか?
フルネームで鞍馬鹿一だ。
じつに鞍馬らしい名前と言う気がする。
骨折に対して、非常な長田弘であった。
漫画版では未収録のエピソードだが、長田は過去 梶原に折られた事がある。
梶原は、その時の感触がトラウマになり、丹波と最初に戦ったとき折れなかったのだ。
骨折経験者である長田としては、この程度でガタガタいうな!という気持ちも多少あるのかもしれない。
ちなみに夢枕獏作品には関節技は一度折られないとおぼえない理論がたまに出てくる。(「仕事師たちの哀歌(エレジー)」「新・餓狼伝〈巻ノ1〉秘伝菊式編」など)
「一度体験すれば、次には取られないように気をつけるもんだ」ってな感じで、ばりっとヤる。
折られた事のある長田だからこそ、より厳しい攻撃を仕掛けるのかもしれない。
しかし、漫画版を見ていると梶原が長田を折ったという過去が、信じられないんだよな……
2007年3月13日(7号)
餓狼伝 Vol.186
長田が鞍馬の負傷箇所にダメ押しの攻撃をする。
軽い一撃だが、すでに骨折している部分だけに効果はバツグンだ。
背景に電撃が走るほどの痛みらしい。
鞍馬よ、呪うなら 己のアホさ加減を呪えッ! (Peッ
人のイイ長田は負傷していると聞くと本気で攻められない。
というのが、鞍馬の予定だったのだろう。
でも、思いっきり攻撃されてしまった。
鞍馬はどこで計算を間違ったのか?
長田はイイ人だ。間違いない。
負傷人を本気で攻めることができるのか?
出来る。出来るのだ!
俺がケガをしているからと、手を抜いたりしたら許さん! そんな熱いノリが好きそうだし。
夢精した直後の藤巻相手でも本気を出した長田である(餓狼伝13巻 104話)。
手負いの鞍馬が何ほどのものか。
あと、鞍馬は長田と梶原にどれぐらい恨まれているかを思い返したほうが良い。
胸に手を当ててしっかりと。できれば うっかり骨折部分をさわって激痛を味わいながら。
無礼に次ぐ無礼を重ねておいて、手加減してもらえるのか、と。
焼き土下座して 梶原に謝っても ぜんぜん足りない。
けっきょく鞍馬の計算ちがいというか、鞍馬は計算して無いよね。
「センパイが見抜いた通り――――」
「実はどこも故障なんてしていません」
鞍馬が作戦を変えたッ!
虚勢だ、虚勢を張っている。
大量に流れていた冷や汗が一瞬で引っこんだのはすごい。
手でぬぐって、バンダナに吸わせたのだろうか?
やはり役者と言う点で、鞍馬は高い能力を持っている。
ちなみに、ゆでたまご『蹴撃手マモル』(AA)では、太陽が雲にかくれると出た汗が引っこむ世界だ。
ゆでたまご理論は、やはり最強かもしれない。
鞍馬が作戦変更を変更した。「いろいろダマそうぜ」から「いのちをだいじに」に変更だ。
敵は弱点を攻撃してくる。ならば、弱点というのはウソでした、と言う。
うまく行けば、長田は攻撃してこない。
心理の裏をかいたスゴい作戦だ。俺って天才!
……この誤魔化しかたはダメダメだろう。
いかにも苦しまぎれだ。
宿題はやってきたんだけど、持ってくるのを忘れました的な苦しさがある。
これで乗り切れるなら『DEATH NOTE』(AA)のラストでキラがみんなを言いくるめる事ができるぞ。
鞍馬、お前じゃ ムリッ! 絶対ムリ!
鞍馬は、VS.長田戦がはじまってから、ハッタリに精彩が無い。
ケガのせいもあるだろうが、おなじプロレスラー同士やりにくいのかもしれない。
鞍馬が戦ったレスラーって梶原+名もなきレスラー二人だけだもんな。
本格派の長田を前にして、すこし萎縮しているのだろうか。
セコい手段で生きのびてきた男だけに、実力を問われる状況に弱そうだ。
「その通りだ」
「プロレスラーにとっちゃ」
「骨折 ネンザなど故障のうちにゃ入らねぇ」
ページをめくると、ドロップキックゥ〜〜〜〜〜ッ!
長田の奇襲だ。
会話で相手の気をそらし、スキを突く。
まるで鞍馬のような作戦だ。
そして、セリフは くしくもグレート巽と同じものだ。
プロレスラーにとってケガは日常茶飯事である。
むしろ、ケガをしていると油断が無くなるからちょうどいい(183話)。
常人には思いつかないような覚悟レベルで戦っている。
やはり、鞍馬はキャリアが短すぎるのがマズいのだろう。
覚悟が甘すぎる。
そして、ケガをしているのに油断しまくりなのは、どういう事か?
鞍馬はグレート巽の想像力を超えた存在なのかもしれない。
油断の代償は大出血だった。
血を吐き出し、周囲に血の雨をふらせる。
今度は必死な表情や冷や汗を隠す余裕もない。
誰の目にもダメージを受けているとワカるだろう。
「スンマセン舌嚙[噛](か)んじゃって」
ゴマかした!?
ゴマかせるのか!? ゴマかしたつもりなのか、あれで。
とにかく、審判には舌からの出血だと言い切った。
骨折だとバレるとドクターストップの可能性もある。
とりあえず、試合続行だ。ゴマかせたらしい。
ゆるい審判だな……
骨がグシャグシャになっているのは確かだ。
それでも、戦いを続けようとする。
鞍馬の勝利に対する執念はすさまじい。
…………ちょっと、発動が遅すぎる気もしますが。
鞍馬は舌を自ら噛んで、ゴマしたのだろうか?
審判はあんまり納得していないっぽいので、たんに血まみれの舌を見せただけかもしれない。
舌を出す前に「ごく‥‥」とノドを鳴らしているので、出血を飲んだようだ。
『ろくでなしBLUES』の鬼塚みたいなことをやってやがる。
やっぱり鞍馬は根性ある。でも、なんでゴマかす方向にばかり力を使う?
「フム……」
「オイシイ」
一方、巽社長は悠然と構えている。
誰にとってオイシイ展開だと言うのか?
試合そのものの盛り上がりを楽しんでいるのか?
グレートの心情は凡人には計り知れないのだった。
巽としては、どっちが勝っても良しと言うことなのだろうか。
もし、両者共倒れになったときはどうするんだろう。
その時は―――――ッ、代打 ワシ!
討って出そうだよな。そういうサプライズが好きそうだし。
きっとスーツの下にリングコスチュームを着ている。
「折れてたり 捻ってたり 潰れてたり」
「それでも」
「銭取れる仕事するんだよオッ」
プロレスラーの覚悟を叫びながら、長田がローキックだ。
や、優しいッ!?
骨折箇所を狙っていない。
やはり長田の優しさが出てしまったのか?
つうか、「銭取れる」というフレーズはモロ巽の影響だろうな。
でも、取った銭の八割は巽のフトコロに流れそうだ。
PUFFYはプロぢゅーサーの奥田民生に「お前らは鵜飼の鵜だ」と言われたと言っていた(たぶんギャグで)。
同様に、しょせん長田も鞍馬も巽の子飼いなのだ。
闘犬がどう戦って、どちらが勝とうが、儲かるのは胴元と言うことなのだろうか。
そう思えば、鞍馬もまた哀れだ。
ちょっとだけ。ごく少量……。
(できれば使用(つか)いたくなかった――――)
鞍馬の指先があやしく光る。
いや、光っているのは指先ではない。
指からわずかに離れた空間が光っていた。
なぜ、そんなところが光るのか!?
ピッ
プシュ……
鞍馬の右手が一閃し、長田の額が裂ける。
今度は長田が流血だ。
鞍馬がなにか武器を使用したのか!?
卑劣なり、鞍馬彦一ッ!
「ほう……」
「あちゃぁぁ……」
餓狼伝の二大巨頭はなにかに気がついているようだ。
巽は感心しているようだし、松尾象山はすこしガッカリしているらしい。
この試合、どうなる?
武器の使用による没収試合なのか?
次回へつづく。
鞍馬がとうとう手段を選ばなくなってきた。
頭に巻いたバンダナに仕込んでいたのだろうか?
そこまで落ちたか、と言う感じだ。
ダメージよりも、流血による目潰し効果を狙っていそうな攻撃だ。
早くも両目に血が入っているので、視界が悪くなることは避けられない。
出血によるドクターストップもありうる。
鞍馬にとっては、二重三重に効果が期待できる攻撃だ。
餓狼伝ゲームの発売が、もう少し後なら、この技も必殺技に入っているんだろうな。
超卑劣技として。
ただ、長田はプロレスラーだ。
流血とのつきあいは長い。
額の出血ぐらい、簡単に対応できそうだ。
次回、おごれる鞍馬に逆転の一撃を喰らわせてやれ!
2007年3月27日(8号)
餓狼伝 Vol.187
鞍馬彦一の秘策が炸裂した。
長田は額の古傷から出血している。
この出血は刃物によるものかッ!?
どこに凶器を隠しもっていたのか?
鞍馬のバンダナあたりがあやしい。
今までの大会で武器を使用した選手なんていないのだろうし、審判はボディーチェックをサボったのだろう。
世の中には、吐き気のする「悪」が存在するのだ。
試合を止めて審判が長田の傷をあらためる。
松尾象山に脅される役どころとはいえ、大会の主審をまかされている男だ。
ああ見えて、有能なのだろう。
警察官になれば、園田警視正にそっくりと呼ばれる逸材になっていたハズ。……アレ?
とにかく、すぐに素手でできる傷では無いと見破る。
「鞍馬……」
「何か使用(つか)ったなキサマ」
審判の額に血管が浮きまくる。
めずらしく本気で怒っているようだ。
やはり空手家としてのプライドがあるのだろう。
武器の使用は許せない。
審判もまた武人なのだ。
今まで、ヒゲとかヘタレとか言って、すいませんでした。
反逆の鞍馬は反省するようすがまるで無い。
審判に怒られたら、逆に隠しもったカッターの刃で斬りかえす。
トドメにラリアット気味に審判を殴り倒した。
ア――――ッ! ヒゲがァ――――ッ!
たった2ページでヘタレに逆戻りだ。
『なにをする鞍馬彦一イイイッッ』
『血迷ったかヒコイチィィッ』
『もはや反則を越えて犯罪の域ッッ』
アナウンサー、上手いことを言っている場合じゃない。
主審を殴り倒すなんて前代未聞だ。
2ストライクに追いこまれたバッターが審判に打ちかかるようなモノである。
出場停止級の問題行動だ。
鞍馬はさらに加速する。
もう、なんか、盗んだバイクで走り出しているような暴走だ。
今度は長田にタックルをかます。
そのまま二人はもつれ合って場外へ落ちた。
無茶苦茶な展開になってきた。このままでは没収試合になりそうだ。
鞍馬がパイプ椅子を装備した。武器は、もっているだけでは効果が無いぞ。
そして、長田を打つ。打ちすえる。
プロレスの基本技パイプ椅子攻撃の妙技が炸裂だ。
長田よ、プロレスならお前が上のハズ。反撃しろ!
身近に落ちているはずの梶原とかを投げつけるんだ。
(なぜそんなに……)
(見た目ばかりの―――)
(効かぬ攻撃をッッ)
なんだって――――――!?
いきなり鞍馬がプロレスをはじめたらしい。
確かにパイプイスのシート部分で長田を殴っていた。
一般的にシート部分での打撃はダメージが少ないといわれている。(参考)
本当に、ダメージを狙っているわけではないのか?
でも、その後パイプ部分でアゴを殴りなおしていたけど。
だが、そうやって油断していると、いきなりガブリと噛みつくのが鞍馬彦一だ。
気をぬいてはいかん。
いきなり脱出不可能なチョークをかませてくる可能性だってある。
そう、こんな感じでガキッっと……
―――――って、入ったァ!
鞍馬の首にッ!
極めたのはグレート巽だ。
一瞬で鞍馬は白目をむく。
死んだタコのようにぐんにゃりと倒れこんだ。
さすが、グレート巽の攻撃である。
会場を照らすライトが、まるで満天の星空のようだ。
ライトの星星を背景にして、巽が両腕を広げた。
華ッ!
自分のカッコイイ見せかたを知り尽くしていやがる。
「みなさん……」
「ご迷惑をおかけした」
巽が美味しいところをさらう気か!?
最悪、没収試合で両者失格となる状態をどうやって切り抜ける。
次回はグレート巽の人間力が爆発しそうだ。
前回はイロイロと予想した。数撃ちゃ当たるの法則である。
結果は次のとおりだ。
○ 代打 ワシ!
○ 鞍馬が武器を使用した
? 武器の使用による没収試合
? 武器はバンダナに仕込んでいた
× 流血による目潰し効果を狙っていそう
△ 額の出血ぐらい、簡単に対応(※ とりあえず、あわてていないので)
ギャグのつもりで書いた「代打 ワシ!」が当たった。
本当に巽社長が出てくるとは。
でも、決勝でしめるべきだったと思う。登場がちょっと早すぎないか?
それとも、本当に代打になって決勝に出るつもりだったりして。
けっきょく鞍馬の狙いはなんだったのか?
用意していたカッターの刃は最小単位で折った物のようだ。
もしくは細かい作業に使うデザイン用のカッターにも見える。
参考画像 デザイン用のカッター →
どちらにしても事前に準備したものだ。
デザイン用のカッターだとしたら、文房具屋に行かないと置いていない。
前日、つまり骨折する前から計画していたことになる。
凶器を使うことによる無効試合が鞍馬の狙いだったのだろうか。
負けるぐらいなら、リセットしてやる!
子供ですか、アナタは。
ただ、巽社長がフォローしてくれるなら話は別だ。
どんな状況だろうと、話の流れをつかんで自分のものにしてしまう。
『鞍馬は試合に負けたが強かった。鞍馬を止められるのは巽だけ。鞍馬が実質的なチャンピオンだ。』
という話にするのかもしれない。
けっきょく、最強は巽となっているのがポイントです。
試合をはなれて武術的な考えでいくと鞍馬の行動は良くない。
故意かどうかは別として体にローションを塗って勝った秋山成勲選手のように、不正に勝っても失うもののほうが大きい。
試合に勝って、勝負に負けたようなものだ。もしくは生き死にで負けた。
たとえ喧嘩で勝っても過剰防衛で罪に問われたら、勝ちとはいいにくい。
試合で、すぐにバレる凶器はダメだ。
また、相手に遺恨を残すこともよくない。
渋川剛気のモデルである塩田剛三先生が、最強とは「それは自分を殺しに来た相手と友達になること」であると語っていた。
また空手の宇城憲治先生も「敵がいる、ということは武道家としてはまだ未熟である」と語っている(激闘達人烈伝)
遺恨を残しまくりの鞍馬は、未熟の極みなのだ。
もっとも、鞍馬は巽の傀儡でしかない。
すべてを握っているのはグレート巽なのだ。
鞍馬は罵声を浴びている。だが、鞍馬を止めた巽には賞賛の嵐が起きるだろう。
そう、考えれば鞍馬も犠牲者なのだ。すこしは同情心も、わきそうな気がする。
少なくとも、最近の刃牙よりは好感度高いかな。
2007年4月10日(9号)
餓狼伝 Vol.188
鞍馬彦一は犯罪者である。
反則を超え、法的に裁かれる立場になった。立派な傷害罪だよな。
警察流は最小の法で逮捕(たお)す。二寸の刃物所持で人は捕まるのだ。(参考)
対戦相手だけではなく、審判も切りつけて殴り倒した。
悪の秘密結社BF団だってここまではしない。
シグルイでいえば、夕雲なみのイカレ野郎である。
少年ジャンプだと『テニスは相手選手にボールをぶつけて倒すスポーツ』らしい。(参考:1、2、3)
だが、鞍馬は審判にボールをぶつける男なのだ。
そんな暴走する鞍馬彦一を止めた男がグレート巽だった。
いきなりチョークをかまして、失神KOだ。
「みなさん」
「ウチの馬鹿野郎が……」
「ご迷惑をかけました」
社員の不祥事は、社長の責任とばかりに巽が謝罪をする。
責任はオレがもつから、思いっきりやれと言うタイプの人らしい。立派な上司だ。
でも、巽は頭は下げない。なぜならグレート巽だからだ。
あやまるときもエラそうなのが、グレート巽である。
そして、謝罪を受ける側も、なぜか恐縮してしまいそうだ。
巽は長田を引きよせる。
額をぶつけ、衆人注目の中で密談だ。
ちなみに、ラブコメだと、ここで赤面するシーンです。
しゃ、社長の顔がこんな近くに……。やばっ、ドキドキしたら出血がますますヒドくなった。
この展開でボーイズラブ大好き層を確保して、さらなる大躍進が期待できる。
「ヒコイチを汲(く)んでやれ」
ダメージを狙った攻撃はなに一つない。
長田を勝たせるためのプロレスだった。
巽は長田にそう告げる。
184話では、鞍馬に勝ちを譲ってやれと言っていたのにエライ違いだ。
183話を見るかぎり、試合前の巽は鞍馬に期待していたようだ。
しかし、思ったより鞍馬は使えない。
手負いこそ危険だったハズが、危険だったのは鞍馬の骨折箇所だったし。
やっぱり、闘魂注入で鞍馬の(骨折している方の)ホホを叩いたのが原因だったのだろうか。
そうなると、巽は罪悪感から長田をフォローしているのかもしれない。
鞍馬へのフォローはないんでしょうか?
地面に置きっぱなしだし。うっかり踏んでいそうな感じだ。
「ヒデェなァ……」
「頭から尻尾まで」
「いいとこ取りじゃねェか巽さん」
「松尾象山だ」
「牛殺しィィッ」
「やるのかここでッ」
「やってくれェッッ」
出たァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!
松尾象山の登場だッ!
お客さんも大喜びしている。
好き勝手しすぎのFAW陣にストップをかけにきたのか?
たぶん「FAW」の"F"は"Freedom"の"F"だ。
ガンダムでいえば「フリーダムガンダム」ですよ。
作中の軍事バランスを一機でだいなしにできる自由っぷりを発揮しそうだ。
AとWについては、そのうち考えます。
「頃合見計らって」
「この手でぶッ絞(ち)める算段だったが」
松尾象山は、やる気だ!
空手家がプロレスラー・鞍馬彦一を絞める。
恥辱の海に沈めるつもりだ。
難易度は高いが、効果的な作戦である。
さすがにレスラーを絞めるのは難しい。
じっくりとタイミングを計っていたのだろう。
だが、巽がぜんぶ持って行ってしまった。
観客の空気を読んで、注目を集めるパフォーマンスをする。
巽は何百回とこなしてきた試合で己の才能に磨きをかけた。
さすがの松尾象山も、演出力では巽にかなわない。
さらに巽は、長田を無傷に近い状態で決勝戦に送りこんだ。
結果的に、巽の狙い通りの展開になっている(ように見せている)。
さすがグレート巽だ。
実際のところ、どこまで計算通りだったのだろうか。
鞍馬が役立たずってのは、計算ちがいだったと思うのだが。
試合後、お仕置き部屋行きは決定だな。
準決勝・第一試合が終了した。
そして、次は第二試合「姫川勉 vs. 畑幸吉」である。
あまりに姫川が強いので、興味がもちにくい。
どーせ秒殺で姫川が勝つんだろう。
会場内にいた老紳士・茂木に泉宗一郎が声をかける。
茂木は畑の師匠だったのだ。
竹宮流と古武術拳心流は六百年のあいだ競いあっていたらしい。
六百年とは長い。
兵法三大源流とほぼ同じ歴史を持っている。
もしくは、三つのどれかから派生したのだろう。
近年におけるブラジリアン柔術の活躍などを見ればワカるとおり、歴史と強さは一致しない。
竹宮流と拳心流のすごさは歴史の長さではなく、実戦での強さと実績なのだ。
なお、泉さんと茂木は過去に二度戦っているらしい。
戦績は五分だ。
今でも十分強い泉さんと互角とはスゴい。
畑株が急激に上がった気がするけど、姫川の壁は高く厚いのだった。
「あなたの弟子が出場するからには てっきり天才男 増尾くんかと思ってましたが」
ここに来て、謎の天才がいると判明した。
誰だよ、マスオって?
しかし、畑はマスオくんに勝っているらしい。
武術に限れば、何度戦っても畑が勝つ。
マスオくんってのは世間に強さが伝わる人物なのだろう。
おそらく奇矯な行動が多く、自慢話をよくする人間だ。良くも悪くも、目立つ
もしかして、チョー先輩がマスオくんかッ!? (餓狼伝19巻 173話)
彼なら、なんかハデな武勇伝をもっていそうだし。
畑の意外な強さが判明した。
身体能力はけっして優れていない。
体格も良くないし、坊主頭だ。オマケにゲームにも登場しないのだ。
しかし、強いらしい。
特殊な格闘センスをもっているのだろう。
姫川は、負ける姿が想像できない男だ。
対する畑は、なぜか勝つ男らしい。
神秘のベールにつつまれたマスオ喰いの実力が 今あきらかに!
二人ともカウンター系の戦いをするので、先に動いたほうが負ける率が高い。
姫川には必殺の「微笑でごまかす」がある。
ひたすら微笑しつづけてページを稼ぐのだ。
やはり、畑のほうが不利かもしれない。
ところで、審判はどうしているんでしょうか?
次回も登場しなかったら、鞍馬のせいだ。
2007年4月24日(10号)
餓狼伝 Vol.189
8人にしぼられた選手の中で、もっとも地味だと思われていた男がいた。
名を畑幸吉という。
一回戦、二回戦は北辰会館の選手と戦った。じつに話題になりにくい選手である。
当然、ゲームの使用キャラではない。
他のベスト8のメンバーは全員出ているのに、畑だけがいないのだ。
気がつかなかったけど、梶原を超える不遇キャラか?
↑こういう部分が特にヒドい
そんな地味なポジションの畑に"天才"という属性がついた。
いままでずっと9番ライトだった選手が、いきなりピッチャーになったようなものだ。
『ショー☆バン』なみに黒く増長しそうな予感がする。
拳心流の天才・増尾小鉄は他流派にも噂が聞こえる逸材だ。
畑がマスオと試合をしたのは四年前のことである。
マスオさんは優れた体格を持つ男だ。
体格の差と言うものは、多少の技術では超えられない。
巨体は努力で手に入らない才能なのだ。
『SLAM DUNK』で、陵南高校の田岡監督が言っていた。
当然、畑がマスオさんに勝てるわけがない。
そう思っていた時期が師範にもありました。
だが、勝ったのは畑である。
[ 秘技「根止め」 ]
[ 一六〇二年(慶長七年)古武道拳心流八代目師範 三戸部弥吉(みとべやきち)が熊との対決の際 偶然発見したとされる伝説の技術………… ]
[ 握拳(あっけん)を以(も)って気管を塞(ふさ)ぐ ]
マスオさんの口に拳を突っこんで倒した。
体格差があるため、拳がすっぽり口の中に入ったのだろう。
畑がこの場であみだしたのなら、『アナゴ拳』なんて名前になったかもしれない。
しかし、『熊との対決』って、三戸部さんはなにを考えていたんでしょうか。
1602年だから「関ヶ原の戦い」の二年後だ。
まだ世が乱れそうな予感のある不安な時代だ。熊と対決している場合じゃないぞ。
浮世離れした、仙人みたいな暮らしをしていそうだ。
動物の気管を腕でふさぐのは、夜叉猿戦で刃牙が使用した(グラップラー刃牙12巻 103話)。
また、浦沢直樹『MASTERキートン』でも、訓練された犬の口に手を突っこんで舌をつかんで動きを封じていた。
エゲツないけど有効な技なのかもしれない。動物には。
マスオという、名前が良くなかったのかも。なんか魚っぽいし。
波平ぐらいだったら、無機質な上に丈夫そうで良かったのに。
畑は勝利したものの師範に呼びだしをうける。
勝ったのはいいが、なぜ危険な技を使うのか?
「根止め」は相手を殺したり、後遺症の残るダメージを与えるような技だ。
人に使ってイイ技ではない。
よほどの非常時でなければ使うべきではない。非常時とはたとえば……
「愛する者の―――」
「重大な危機」
「あとは戦争ぐらいのものでしょう」
ッ!?
この師範、さりげなく狂気をはらんでいる。
もしかすると戦争経験者だろうか?
戦場のような極限状態で、危険な技を使ったことがあるのかもしれない。
また、自分の身を守るためという条件が入っていない。
傭兵経験のある毛利元貞の著書『護身の科学』で、実際に人を殺したとき経験を書いている。
平然と人を殺傷できるのは「上官の命令に従う」「仲間を守る」時らしい。
戦略関係の本を読んでいると「大義名分は重要」という記述がけっこう出てくる。
あまり納得がいかなかったのだが、兵士からすると人を殺すには「命令」「仲間を守る」という大義名分が必要なのかもしれない。
つまり、師範の言う条件は本当に殺傷しかねない条件なのだ。
リアルな条件を提示するあたり、この師範は並みじゃない。
だが、同時に畑を強くたしなめているところが、人格者である。
いろいろな経験をしたからこそ、重みのある言葉が出るのだろう。
畑は常に本気で戦いたい。
試合だろうと、稽古だろうと関係なく。
人の痛みや人生の重さを理解しない、危険な思想だ。
下手をすると、快楽のために暴力をふるいかねない。
師範は破門も辞さない態度で、強く畑をたしなめる。
以後、危険な自説は言わなくなった。しかし、畑の本質は変っていない。
なんつうか、暴力の技術を教える人ってのは大変ですね。
ふつう、道徳面は親とか学校で学ぶものだ。
道徳面まで鍛えなくてはならないってのは、気苦労が多い。
そのせいか、師範の表情は沈みがちだ。
畑なら、藤巻とも戦えるだろうと師範は言う。
藤巻もかなりヤバい人ですが、彼は過去のトラウマとかがイロイロあって狂気を宿している。
何事もなく育っていたら、ごく普通の多汗症なツンデレになっていたかもしれない。
たぶん、畑のほうが本質的にヤバい人だ。
試合前でウォームアップをする畑に丹波が声をかける。
前にブザマな忠告をしたのに、よく声かけられたな。(餓狼伝19巻 174話)
たぶん丹波は反省して気持ちを入れかえたのだろう。
チョー先輩の姿が見えないのは、丹波がうろついていたから逃げたのか?
今度の畑はいい貌(かお)になっている。
なんか、笑顔がまぶしい。
敵があまりに強敵なので、吹っ切れたのだろうか?
「相手は姫川勉ですよ……」
「何をしたっていいンですッッッ」
畑が笑ったッ!
おだやかそうに見えていた容貌の下に潜む悪魔が顔をみせたようだ。
きわめて危険な本性が出てしまった。
だが、姫川はもっと危険だ。
なにをどう考えても返討ちにあいそう。
それこそ、秘技「根止め」で畑を仕留めたりしそうだ。
まあ、畑はこれを機会に他人の痛みをもう少し理解したほうが良いのかもしれない。
もっとも、姫川だって畑以上に性癖が歪んでいる気がしますけど。
痛みを誰より知っているのは梶原ぐらいだもんな。
畑が梶原の高みに達するには、骨折と睾丸破裂と、多目の敗北が必要だ。
2007年5月8日(11号)
餓狼伝 Vol.190
ミスター地味・畑幸吉が、危険な技も使うと宣言した。
今まで目立たなかった反動か、いきなり過激になっている。
餓狼伝ゲームの第三弾が出たなら、俺を主役にしろと言い出しかねない。
イブニングに移籍する前から出番のなかった丹波にも、いつか反動が来るのだろうか。
逆に活躍した反動で出番が減っている可能性もある。
竹宮流の秘伝である虎王は、使うとコミックス13巻分ぐらい活躍できなくなる副作用があるのかもしれない。
虎王を使ったのが11巻で、今日20巻が出たから、あと3巻ぐらいの辛抱だぞ。たぶん。
「何をしたっていい…… っておまえ」
「一応ルールもあれば審判だっているんだぜ ウルセェのが」
なんか脳内麻薬だしすぎて精神状態ヤバ目な畑に、丹波がツッコんでみる。
ルールも審判も"一応"ですか。
たしかに真のルールと審判は、松尾象山だ。
主審は意識の半分を選手に、残り半分を松尾象山に向けているだろう。
それでも、基本的に審判が良識とルールに基づいて試合をしきっている。
あまりにハッキリした反則では怒られてしまう。たとえば鞍馬のように。
畑は鞍馬のように、試合を止められたら、秘技「根止め」を審判に喰らわすつもりだろうか。
丹波は畑に不意打ちを提案していた。(餓狼伝 19巻 174話)
反則レベルとしては、急所攻撃と同じぐらいだ。
だから丹波が畑をせめるのは、すこしおかしい。
なにか、裏の意味があるのかも。
畑は神山さんの試合を例にだす。
当たらなかったが、神山さんも急所攻撃をしていた。
見る者が見れば、殺人技だったとワカっていたらしい。
鬼神と化した神山さんの必ず殺す技を姫川は微笑みながらよけまくる。
まさに天才だ。
そんな姫川に思いっきり技をかけたい。負ける姿を見てみたい。
畑は暗い情念を燃やすのだった。
やっぱり、この人はヤバい人だ。
藤巻よりもキケン度が高い。
まさか、こんなボウズ頭が地雷だったとは想像していなかった。
「おい 畑」
「おめェにそれをする資格があンのかよ」
畑の身勝手な発言に、丹波が物言いをつける。
言わんとするところは前回 畑の師匠が言ったのと同じことだ。
相手の生命やその後の生活に影響の出る技をつかう。
オマエに、相手の人生を狂わせる権利があるのか?
丹波だってお嬢様のお遊びをやっているわけではない。
相手も自分も死ぬかもしれないような戦いをしている。
畑への問いかけは、自分の内なる餓狼への問いかけだ。
そして、畑の答えは――――――
「あるさッッ」
「俺の使用(つか)う技は」
「どれも俺に使用(つか)っていい技で」
畑は殺される覚悟も持っていた。
甘い考えではない。自分の人生をかけている。
アライJr.とは違うッ!(バキ31巻 272話)
一方的に倒す、ではなく倒される覚悟もしている。
戦士として対等に戦うつもりだ。
畑の覚悟に、丹波は納得してしまう。
まあ、基本的に丹波も餓狼な人ですから。
今は長期で終わりの見えない休暇中だけど、餓狼なんです。
闘いには寛容なのだろう。
しかし、畑の言い分は一方的だ。
姫川の気持ちを考えていない。
子供に「なんで人を殺しちゃいけないの?」と聞かれたとする。
常識的な答えで「君だって殺されたら嫌だろ。人の嫌がる事はやっちゃいけない」と言う。
すると、畑に「僕は殺されてもかまわないし、嫌じゃない。だったら殺してもいいでしょ」と返されるみたいだ。
だったら自分で自分を殺して自己解決してくれって、投げ出したくなる。
丹波の場合は、戦って全力を出しているうちに、どんな技でも良しとする気持ちが両者の間に生まれている。
一方的な気持ちではない。
また、最初から破壊する気で戦ってもいないのだ。
それに丹波は最後まで虎王を使わないようにしていた。(餓狼伝11巻)
戦いながらも、相手に対する思いやりがある。
畑に、姫川への思いやりがあるのだろうか?
畑幸吉(古武道・拳心流 175cm・71kg) vs. 姫川勉(北辰会館 186cm・87kg)
そして、試合がはじまった。
主審は鞍馬の奇襲から無事(?)に復活した園田(仮名)氏がひきつづき勤める。
松尾象山門下生はタフで無いと生き残れないのだろう。
虎眼流門下生も刀で切断されないかぎり、死なないのだ。たぶん。
カッターで切られた…ぐらいは、ケガのうちに入りませんよ。
開始と同時に畑が突っこむ。
両肩をすぼめ、左手で頭部と胸部をガードだ。
右手は腹部と股間を守っている。
完全防備で敵に特攻をかける気か?
右手は下をガードしている。畑にとって股間のほうが大事なのだろう。
畑は、右足で踏み出して、次に左足を前に出している。
普通に走るときの足はこびだ。
ボクシングなどは、基本的に右構え・左構えを変えない。
左足が前なら、移動するときも常に前だ。
足を交差させるのはスキがうまれたりするので、試合には不向きなのだろう。
鎧を着る事を前提とした古流の剣術では重心を落とし、足を交互に踏みだす歩行がある。
守りはしっかりしているので、安定した移動のほうが重要なのだろう。
古流の拳心流にも同じような動きがあるのかもしれない。
畑は上方の左手で姫川の目を狙う。
防御とみせた構えが、そのまま攻撃になる。
開始と同時の奇襲攻撃だ。
姫川の気持ちなど、お構いなし。
しかし、相手は天才・姫川だ。
畑の動きに反応して畑の左手を切り裂く。
指がちぎれるほどに深く鋭く斬れている。
だが、畑の右手は姫川の手首をつかんでいた。
左手による奇襲とみせかけ、左をオトリに使った右手の不意打ちだ。
二段構えの作戦である。
だから、右手は下を守っていたのか。
目で物を見ている以上、目に近づくものに注意が集中してしまう。
だから、目から遠い位置にあるものへの注意が落ちるのだ。
自分の体を犠牲にする技……、これも試合で使うことが許されない技だろう。
畑の捨て身の攻撃は、姫川勉を破壊する事ができるのだろうか。
次回へつづく。
畑の目がイっちゃっている。
思いもよらぬ危険人物に成長したものだ。
こんなことなら、髪型をモヒカンにするとかで、危険人物だと教えておいてくれれば良かったのに。
地味で目立たないけど、実はキケンという人物ほど恐ろしい。
畑も植物のような穏やかな生活がしたいと周囲には言いつつ、自宅では熊のハクセイに秘技「根止め」の練習をしているのだ。
あー本物でヤりたいなーと言いながら。
今思えば、椎野(椎名?)の足を破壊したのだって、普通じゃない。(餓狼伝20巻 176話)
容赦なく関節を砕いている。
もしかすると、人体破壊の快楽に酔っていたのかもしれない。
恐ろしい男だ。
今回、丹波が「資格があンのかよ」と言ったとき、妄想が走った。
畑が丹波を「根止め」で仕留めるという妄想だ。
竹宮流の虎王も、舌を捕まえると、不発なんですよね〜、とか言いながら。
ちょっとページをめくるのが怖かった。
今の畑は、そんな妄想を呼び起こすほどの危険人物なのだ。
無敵の絶対防御をほこっていた姫川がつかまった。
まあ、姫川のことだから想定内のことかもしれない。
つかんで来た相手の関節を取るのは、武術によくある基本技だ。
攻めてきた畑を逆に極めて倒すという可能性がある。
畑の奇襲が成功だった場合、何をするのだろうか?
関節を極めて姫川の動きを封じたあと、じっくりと股間を攻撃などという非道なこともやりかねない。
どちらにしても、次回は悲惨な事件が発生することだろう。
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