今週の範馬刃牙 SON OF OGRE 111話〜120話

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2008年5月15日(24号)
第3部 第111話 精神力 (767回)

 花山薫 = トリケラトプス!
 ピクルは激突した花山にトリケラトプス並みの力を感じていた。
 アイアン・マイケルにジョン・L・サリバンがいるように、花山にはトリケラトプスがついている。

 ピクルは烈海王には恐竜を感じなかった。
 つまり、花山のパワーは烈以上なのだろう。
 烈もすごい筋肉をしているが、天然の花山に負けている。
 4000年かけても、たどりつけない境地があるらしい。
 範馬の筋肉はさらに宇宙的な差がありそうだけど。

 一般人から見れば巨体の花山だが、恐竜の世界で生きてきたピクルからすると小柄だ。
 ピクルの感覚だとアンキロサウルス(体長9〜11m)あたりと同じ体格らしい。
 象より、デカいぞ!
 たぶん、アンキロサウルスに似ている別の恐竜なのだろう。
 どちらにしろ、花山は体格をはるかに超えた重量感(ちから)をもっているらしい。

「原始だ 恐龍だと ごたいそうな騒ぎだが」
「それっぱかしじゃ あんちゃん」
「新宿(ここ)じゃあ通らねェ」


 花山がけっこうしゃべった!
 つうか、場所は新宿だったのかよ。
 水道橋から新宿まではけっこう距離がある。直線距離で5kmぐらい。
 ピクルの健脚をもってすれば、散歩するようなものなのだろうか。

 新宿は花山のホームグラウンドなのだろう。
 なじみのメイド喫茶もあるにちがいない。
 欲望うずまく新宿では、原始や恐竜が通用しないのだ。
 ……メモしておこう。

 花山はピクルを押しかえす!
 体重では負けている花山だが、力で負けていない。
 こんどは踏んばるピクルのクツが破れた。
 とりあえず、クツの仇はとったぞ。次は木崎の仇をとってくれ。

 自分より小さい相手に押されてピクルは汗をながす
 今まで自分より大きな相手と戦い倒してきたピクルである。
 小さな相手に押しこまれたのは、初体験だろう。

 刃牙世界では大相撲が強いと言うことになっている。
 こういう正面からの押し合いに強いのが相撲だ。
 力比べで強いから、相撲は強いと言う理屈なのだろう。

『この雄(オトコ)を取り巻く様々な社会的事情―――』
『義理? 人情? 責任? 約束?』
『そんな様々な人間模様から発揮される』
『理屈や常識 人知を超えた』
『ある種 神懸りな力』


 体格や筋力を超えた精神力が花山薫をささえているのだ。
 筋肉至上だった刃牙世界にも、精神が入り込む余地があったらしい。
 ピクルが戦ってきた恐竜たちは巨大で強すぎた。
 そして、脳が小さい。
 精神力を発揮できる条件を満たしていないのだ。

 ピクルの同族に強者がいれば、ピクルも同様の経験ができただろう。
 だが、ピクルは孤高の強者ゆえに、同族のライバルがいなかったようだ。
 わざわざピクルが恐竜と戦ったのは、強い相手を求めてのことだろう。

 範馬勇次郎は性格が破綻気味だ。
 それは満たされぬ闘争欲求が常にあるからかもしれない。
 ピクルのように恐竜と戦って、それなりに発散できないから、ストレスで精神が歪むのだろう。
 あ、でも戦場で発散していたのか。
 刃牙がエロ方面で発散していたのは、健全な行為だったのかもしれない。
 性行為でストレス発散する、平和でボノボ的な解決方法である。

 花山がどんなに気合を入れても筋肉の出力には限界がある。
 精神論で、出力が上がったと考えるのはムチャでなかろうか?
 逆に、花山の気迫でピクルがビビッて実力を発揮できなかったのかも。
 ピクルは花山の力が上がったように感じたのかもしれないが、客観的に見るとピクルの力が下がったのだろう。
 流した汗が精神的な動揺をしめす証拠だ。
 ヒト同士に通じ合う闘いの機微である。

『待ち侘びていた……』
『己の全てをぶつけてもいい実力者』


 ピクルが笑ったッ!
 過度の緊張は筋肉の動きを悪くする。
 だが、笑うとリラックスして実力を発揮できるようになるのだ。
 『はじめの一歩』の島袋戦でも笑うことがキーワードの一つになっていた。
 苦しい時ほどニヤリと笑え。はたから見てみな男だぜ。

 そういえば烈海王は戦う前から、かなり緊張していた。
 銃で撃たれた経験のある花山には、常に死の覚悟があるのだろう。
 覚悟があるから、気迫も生まれるのだ。
 だが、笑顔をみせたピクルは平常心に戻っている。
 つまり、これからピクルの全力攻撃がはじまるのだ。


 だが、戦いは始まらなかった。
 花山は、ただ足止めしていただけだと言う。
 誰のために?

「ウォォッ 範馬刃牙…ッッ!?」
「本物!?」
「出た…ッッ!?」


 範馬刃牙の登場だッ!
 克巳はどうした!? 迷子かッ!?
 ピクルと克巳をぶつけると見せかけ、本命を早くも登場させた。
 ついに主役の登場だ。

 プランなしに出撃した克巳を抜き去り、主人公がオイシイところを持っていった。
 久しぶりに主人公の戦いを見ることができるのか!?
 それとも、さらにフェイントをかけて戦わないのか!?
 ピクル争奪戦は、いきなり最終章に突入だ。
 次回へつづく。


 いきなり、刃牙が出てくるとは思わなかった。
 克巳の立場が無いにもほどがある。
 前回追記で、克巳の歴史をふりかえった。
 克巳はロクな化けかたをしていないのだ。
 そして、今回も。

 独歩の予想はある意味正しかった。
 噛まれることすら許されない噛ませ犬に化けやがったよ。
 海王軍団でいえば、試合すらさせてもらえず強制排除された毛海王のポジションだ。(バキ23巻 201話
 今から参加しても、背景の一部になるのが精一杯だろう。

 思い切ってイメチェンをしないと、先週までの刃牙みたいになりかねない。
 加藤に弟子入りしたときのようにヒゲをのばしてみるか?
 ドイルに爆破された後のように頭をアフロにするのもいいだろう(※ アフロにはなっていない)。

 思い切って、本部に弟子入りして日本刀を装備するのも手だ。
 もちろん、勇次郎が背後に立って思いっきりいじられるハメになる。
 こーゆーのこそが オイシイんだよな。
 克巳が本格的に化けます。


 花山に連絡をもらった刃牙は息も乱さず、汗もかいていない。
 歩いてきたのか?
 それとも車できたのだろうか。
 少なくとも、梢江と交尾するために駆けつけたときよりも余裕ある態度だ。(バキ15巻 127話
 こりゃ、うっかりすると刃牙は戦わずに帰っちゃうよ。

 ところで、見えないところで腕を折られた木崎が苦しんでいるはずだ。
 刃牙は木崎を完全スルーしているコトになる。
 ある意味では、強靭な精神力だ。なにごとにも動じない。
 刃牙だって、花山にも負けない精神力をもっている。方向性は違うけど。

 なお、花山にとって木崎は身内だからあえて無視しているのだろう。
 災害現場では、身内を最後に助けると『め組の大吾』で言っていました。
 もしかすると、刃牙も花山の気持ちをさっして空気あつかいしているのかも。
 ついでに地面に落ちている花山の眼鏡も見えないふりして踏んでいたりして。

 とにかく、主人公の復活だ!
 めでたい。
 実にめでたい。

 めでたい ついでに、Amazonさん。
 主人公も復活したことだし、そろそろ最新刊の画像をのせてくれないでしょうか?
 4/8の発売日から、1ヶ月以上放置はありえないだろ。

範馬刃牙 12 (12) (少年チャンピオン・コミックス)
↑本来なら、ここに表紙の画像が入ります (5/29 入りました)
by とら


2008年5月22日(25号)
第3部 第112話 到着 (768回)

 ついに主人公・範馬刃牙が出陣した。
 ピクル vs. 花山がはじまりそうだと言う、ありがたくないタイミングで出てくるのが、刃牙らしい。
 なんというか、邪魔。
 まだ到着していない克巳と合わせて、みつどもえな展開で荒れそうだ。

 刃牙が勝つと、勇次郎が出てきて徹底的にトドメを刺す傾向があるのだが、ピクルは大丈夫だろうか?
 むしろ、その心配は克巳にしてやるべきかもしれない。
 ご利用は計画的に。

 ピクルに興味をもったら、さっそく出会ってしまう引きの強さが範馬の血だ。
 勝負事にはめっぽう強い。
 今だって、無意識のうちに愚地克巳を敗北させている。
 梢江を陥落させたのも、長いスパンで考えると、きっとスゴい役に立っているのだろう。
 それとも、毒を裏返らせることが、梢江の役割だったのだろうか。
 刃牙は元気になったとたん、梢江に冷たくなった気がするし。

「キレイだ…」
「美しい…」


 刃牙はピクルに美を感じていた。昔は梢江にも感じていた。
 ストロング・イズ・ビューティフル!!!
 最大トーナメントで優勝した刃牙は、強さこそ美しさと絶賛されている。(グラップラー刃牙42巻 369話)
 刃牙も「強さは美しい」派なのだろう。

 と、思っていたら、刃牙は機能美に惹かれていたようだ。
 人を斬るために作られた日本刀が美しいように、機能に美が宿る。
 動物の姿も本来は機能美だ。でも、ブサイクな動物もいるんだよな。
 ハイエナは不細工だけど、けっこう優秀な狩人だし。

 『マクロスプラス』(AA)に登場する可変戦闘機YF-19YF-21は、実在する戦闘機X-29YF-23がモデルだ。
 X-29とYF-23は開発競争で他モデルに敗れ正式採用されなかった機体である。(マクロスプラスも採用競争の話)
 競争ではカッコイイ機体ほど採用されない。監督の河森正治は発売当時にラジオで言っていた。
 うん。まあ、カッコイイだけでは駄目なんですね。郭春成とか

 ミリタリーファンの間では、カッコイイ機体ほど採用されないという嘆きが多いようだ。
 ただ、不恰好な機体でも見ているうちに凄みを感じるようになる。
 それは強さゆえの機能美なのだろう。と、世界の兵器みたいな本に書いてあった。
 かわぐちかいじも、シーウルフがだんだんカッコよく見えてきたと書いていたし。
 ストロング・イズ・ビューティフルは、正しいのかもしれない。

 なんにしても、ピクルの狩人として特化した肉体は美しい。
 ヤクザに特化した花山の肉体も美しいとスペックに好評だった。バキ4巻 30話「ビューティフル」)
 刃牙も、梢江になんか言われていたような気もするけど、思い出さなくていいや。


 刃牙がピクルを仕留めるのかッ!?
 神心会の門下生たちは固唾をのんで見守った。
 彼らの中では『範馬刃牙 = 最悪な暴れ者』という認識があるらしい。
 悪いウワサでも流されたのだろうか?

 予想される、悪いウワサ
・ いきなり、独歩の股間を蹴った
・ 加藤に「アンタじゃムリだ オレがかわる」と暴言をはいた
・ スペックを花山に押しつけて、自分はデートを続けた
・ 米国大統領を拉致監禁した

 どれも真実だ。これは、こまった。
 真面目に 刃牙の悪行をひろいあげるとキリが無い。
 まあ、刃牙がキケンな暴れん坊なのは確実だろう。

 だが、周囲の予想に反して、刃牙はピクルに逢いたかっただけだと言う。
 逢いたいというだけで、花山にあそこまで体を張らせるのが刃牙の人間力だ。そりゃ、木崎の腕も折れる。
 それでも、刃牙の気持ちはホンモノだ。
 愛とすら言えるほどの、熱い思いがある。らしい。

 思いは、たぶん ある。
 あるんだけど、なんかモジモジしちゃって刃牙の態度は煮えきらない。
 好きな子を前にした中学生男子といった風情である。
 相手が原人だけに、ちょっとキモい。

 刃牙の言動がおかしいと、後で反動がやってきそうだ。
 ノリツッコミをしながら逆ギレとか、芸人みたいな行動に走りかねない。
 泣きながらグルグルパンチはしないと思うけど。
 範馬刃牙よ、どこへ行く……

 と、ピクルが右拳をさしだした。
 範馬勇次郎がやった、アレだ。(11巻 87話
 刃牙に勇次郎と同じニオイを感じて、同じ技をかけてもらおうと言うのだろうか?
 だが、刃牙はいまだ未熟である。勇次郎と同じようにできない。
 ピクルはがっかりして、帰ってしまうかも。

 事情を知らない刃牙は汗を流しながら、拳をあわせる。
 早くも負けモード入っている気がします。
 背後に小型恐竜の映像がでて、グシャっとされちゃうのか?


 ! ファ……


 刃牙が舞ったッ!

 合気。
 ピクルが合気を使ったのだ。

 ただ一度体験しただけで、学習する。
 恐るべき知能だ。
 ピクルはホモ・サピエンス級の脳がある。
 ほかにやる事が無かったので、ひたすら考えていたのだろう。
 肉体と才能と環境が、ピクルの急激な進歩を生んだ!

 人間をはるかに超えた体力に加え、武術の最高峰である合気まで使える。
 例えるなら、ドーピングしたジャック・ハンマーが合気をマスターしたようなものだ。
 範馬の肉体+合気なみに、ヤバいッ!
 って、アレ?

 まあ、とにかく範馬に匹敵する相手なワケですよ。
 地球人がこれに並ぼうとするなら、オリバが合気をマスターするしかないって感じだ。
 花山が合気をマスターしてもいいけど。
 とにかく、最強のライバルが誕生したといえる。
 勇次郎と互角以上の強さがあるかもしれない。
 刃牙で相手になるのか?

『そして少年の五体に流れる呪われた闘気が』
『たちどころにリミットを振り切った』


 巨凶なる範馬の血が目覚めたァ!
 刃牙は無言でハイキックを打ちこんだ。
 奇襲だ。外道だ。これこそ、範馬である。
 思わず、ピクルの目がゆれた。
 四足獣のように頑丈な頚骨をもつピクルの目がゆれたのだ。
 ダメージがある!

 だが、今回の刃牙は煮えきらない。
 一撃を決めて、戦うのかと思ったら、謝った
 謝るぐらいなら、蹴るな。もっと、素直になれ。
 ツンデレならぬ、ツン+ヘタレ=ツンヘタだ。
 たまにツンツンするけど、すぐにヘタレるので話が進まない。

 だが、ピクルは器の大きい生物だった。
 そりゃ恐竜と対等にやりあっていたんだから、心も広かろう。
 ピクルは刃牙に誘いの目を向け、移動する。
 どう考えても新宿に土地カンがあるとは思えない原人ピクルは、どこへ行くのだろうか?
 フィギュア店に行って、女体の機能美に酔いしれるのか?


「あの……」
「行っちゃいました……」
「刃牙……さんと 花山さんと…… 3人で…………」

「……ふ……」
「ふ………… ふゥゥゥ……ん」

 おくれてきた愚地克巳が、ガッカリしている。
 八つ当たりで暴走しそうな気配だ。
 どうしようもないぐらい、かわいそうな人と化している。
 なぐさめの言葉が見つからない。

 神心会本部にもどったら、独歩になんて報告すればいいのやら。
 親父が足止めするから遅れちゃったじゃないか、とブチ切れか?
 でも、本部は池袋にあるから、新宿まで時間がかかるよね。
 現地に直接行かなかった、この無策っぷりが克巳の凄味である。

 化けた。
 試合場にあがることすら許されない噛ませ犬に化けやがった。
 一人の天才空手家が、イロイロな意味で終わった日である。
 次回につづくのか?


 持ち上げて落すのが、噛ませ犬の作法です。
 克巳の場合は、持ち上げたあとで放置した。
 落とされるよりも、みじめかもしれない。
 雑巾を飾りたてるような所業だ。

 そんなワケで克巳には再起を目指して欲しい。
 今からでも、追いかければ刃牙たちに追いつけるかもしれないし。

 しかし、門下生たちの前で、刃牙たちが克巳の意志を無視したという事実は消えない。
 格で負けたのだ。
 神心会の新館長・愚地克巳の名前が通用しなかった。
 カリスマを手に入れるはずが、かえって失っただろう。
 明日には神心会100万人が、80万人ぐらいになっているかもしれない。

 こっそり刃牙についていくような機転のきく門下生は居なかったのだろうか?
 隊長格の寺田がダウンしたのが痛い。
 指揮官を失った部隊ほどみじめな物はないと言うが、本当だ。
 副官をつけることのできなかった、克巳のノープランが招いた悲劇かもしれない。
 これを機に、神心会は複数に分裂したりして。


 上でチョコっと書いたマクロスプラスの可変戦闘機はこんな感じです。
リボルテックヤマグチ No.53 マクロスプラス YF-19/イサム機  マクロスプラス 1/60 完全変形版 YF-19     リボルテックヤマグチ No.54 マクロスプラス YF-21/ガルド機  1/60 マクロスプラス 完全変形 YF-21
 前進翼が特徴的なYF-19(↑)は、マクロス史上もっともイカしたメカだと思う。
 でも、カッコイイだけでは採用してもらえないんですね。
 華美な軍服をした軍隊は弱いという俗説もありますし、見た目より中身だ。

 なお、イタリアの軍服はオシャレらしい。
 現在でもイタリアは外見重視の国だとか。(参考
 「イタリア軍 = 最弱」というウワサがあります。誇張やガセネタもありますが、こんなイメージで。
 前進翼の戦闘機だって、イタリア軍なら採用してくれたかも。カッコイイし。
 ストロング・イズ・ビューティフルの刃牙イズムがイタリアに広まったら、最強国家が誕生しそうだ。
 イタリア人も「SEXして強くなれるなんて、最高だよ!」と受けいれてくれるに違いない。

追記 (08/5/25)
 掲示板でTAOさんとホセさんに、メールでやつでさんに指摘を受けました。
 文中、マクロスプラスの主人公機を『VF-19』と書いていましたが、正確には『YF-19』でした。
 また現実世界でトライアルに負けたのは『X-29とYF-17』ではなく、『X-29とYF-23』です。
 YF-17も可変戦闘機のモチーフであるとWikipediaに書いてあったので、最初に引きずられて書いてしまいました。
 ちなみに、YF-17も正式採用されなかったそうです。
 やはり、カッコイイだけでは……

 そういえば、機能美の例として出てきたステルス戦闘機F-117も、昔は不恰好に見られていた。
 軍事機密のカタマリみたいな機体だっただけに、存在は知られていても姿が未公表だった機体である。
 想像図としてUFOのような丸っこいイメージ図を描かれていた。
 現物の写真が公表されたときは、かっこ悪いし なんか飛ばなさそうな機体と思ったものだ。

 それが今では それなりにカッコよく見える。
 これが機能美というものだろうか。
 ……たんなる慣れかもしれない。

1/72 ウォーバードコレクション WB-3 Fー117Aステルス ステルス戦闘機 F-117  カッコイイと思えたら機能美です。
by とら


2008年5月29日(26号)
第3部 第113話 恋慕 (769回)

 島耕作が社長になったらしい。
 愚地克巳は館長になったけど、退任しそうな勢いだ。
 都内の神心会門下生を総動員して、成果なし。
 ちなみに被害は寺田一人だ。

 寺田がのびているので、かわりに崎村という男が報告する。
 眉無しの風貌がどことなく不気味な男であった。
 今までナニをしていたのだろうか。

 ピクル捜索隊は、寺田の次に指揮をとる人間を決めていなかったのだろう。
 隊長が倒れて、烏合の衆となっていた。
 ピクルが去ろうとしていても、どうしていいのかワカらない。
 この場合だと、最低限やるべきことは>『克巳に連絡して指示を受ける』だ。
 そんな最低レベルの行動すらできていない。
 学級崩壊した小学生よりもメチェメチャだ。

 崎村たちは連絡もしないで、ナニをしていたのか?
 きっと誰が克巳に連絡をするのか決めていたのだろう。ジャンケンあたりで。
 大人数のなかから一人のイケニエを決める。
 そうとう時間がかかっただろうな。

 克巳は悪い知らせをもってきた人間に怒りをぶつけるクセがあるのかもしれない。
 こういうクセをもっていると、悪いニュースが伝えられないので、事態がどんどん悪くなる。
 しかし、克巳は怒鳴ったりせずに耐えていた。
 独歩を超えようと努力中なので、ガマン強くなっているのかもしれない。

「父親をハリ倒してまで…………」
「喜び勇んで来てみたら…………」

 さりげなく独歩に勝ったことを宣伝する克巳であった。
 落ちこみつつも、自分の利益を計算する。
 妙に冷静な部分が、かえって修行に専念できない弱点になっているのかもしれない。
 そして、人間としての器がちょっと小さいようだ。
 つねに自分を強そうに見せていないと不安なのだろうか。

 神心会の門下生は独歩が倒されたときいて動揺する。
 しかし、今はピクルの逃亡が主題なので、話はスルーされていく。
 最大トーナメント開催以前に、克巳は独歩よりも強いと言われていた。
 だから克巳が勝ったと聞いても、あまりビックリしないのだろう。

 克巳は拳をふるわせて怒りをこらえる。
 崎村は必死で頭をさげるのだった。
 やはり、普段の克巳は怒りやすくさめにくい性格なのだろうか。

「よかったじゃん」
「なァ」


 笑顔だった。
 背景まで輝くような笑顔である。
 克巳にどんな心境の変化があったのか?

 ピクルを追っていたのは、烈海王の仇討ちだ。
 思いが同じなら、刃牙や花山がピクルを倒してもイイんじゃないの?
 という、克巳の合理的な思考である。
 でも、その理屈はおかしい。

 仇討ちというのは、感情の問題だ。
 理屈で解決するものじゃない。
 忠臣蔵だって、武士の意地を通すという感情も動機のひとつだ。(参考:山本博文武士と世間』)
 仇討ち急進派にとっては、お家再興よりも自分たちの意地を貫くほうが重要である。
 自分以外の誰かがやってもダメだ。自分の手でやらないと気がすまない。

 つまり、克巳の言動はおかしい。
 なにかを誤魔化そうとしている。
 ドクターペッパーを飲んだ後のゲップのように、違和感がのこってしまう。
 違和感は、崎村たちにもあるようだ。

「烈先生の恩義に報いたく」
「神心会は立ち上がった」
「さらには寺田先輩もピクルに不覚を取っている」
「そんなピクルを人任せでいいんですかッ」


 そう、崎村の言うことは正しい。
 理屈ではなく、感情として正論だ。
 ただ、克巳の心中を思うと……

 克巳は、ピクルと戦いたくなさそうだ。
 冷静に考えると勝ち目ないしな。(独歩は親バカなので、化けると思っていたけど)
 しかも、負けたら喰われるというオマケつきである。
 正気の人なら、戦いたくない。

 克巳は計画できない人だから、勢いでここまで来ちゃった。
 でも、運悪くピクルを逃し、戦いの連鎖からおりることができそうだ。
 内心ではホッとしているだろう。
 しかし、門下生は煽られて感情的になっている。理屈じゃおさまらない。
 火をつけたのは克巳自身である。まさに因果応報だ。
 克巳は内心涙目だろうな。

「勝てるのかなァ!?」
「この俺があのピクルにッッッ」

「本気で勝てるとッッ」
おまえらは思ってンのかよッッ」

 克巳、大爆発ッ!
 あ〜〜〜ッ! いや、ちょ……、ちょまっっ。
 そ、それは確かに思っていた。思っている。
 いるけど、オマエがそれ言っちゃダメだろ。
 これはリアクションに困る。
 2ページ強つかって、最後は1ページ丸ごとの大ゴマで言われても、スゴい困るよ。

 ページをめくると神心会の皆さんが、シーンとなっていた……
 文字どおり空気が凍りついている。  葬式でも、ここまで凍りつかないだろう。
 風に舞う紙クズの音がやけに大きく硬質に聞こえた。
 裁判で判決がおりる瞬間よりも緊張感に満ちている。

 この時のストレスが原因で胃に穴が開く人がいても不思議ではない。
 克巳も「やっちまった〜」と思っていそう。
 門下生たちは、トイレで大をしてから、紙が無かったことに気がついた人のように真っ青だ。
 なんとか挽回しないと、今日中に神心会が崩壊しかねない。

「すまん……」
「勝てるからやる 勝てないからやらない」
「そういう戦いじゃないと言ったのは俺じゃねェか」

「どうか俺に協力してくれッッッ」


 克巳は頭をさげて、門下生たちに協力をねがう。
 あの天才・愚地克巳が頭をさげている。
 才能があっただけに、プライドが高く、頭も高い男だった。
 その愚地克巳が頭をさげているのだ。
 門下生たちの はじめて見る光景かもしれない。

 奮いたった。
 今まで手の届かない超人だった男が、弱さを見せてすがってきたのだ。
 これに応えないでどうする。
 俺たちは今、真に必要とされているんだ。
 神心会門下生たちは、雄叫びをあげてピクル捜索を再開する。

 そして、街にひとり克巳が残された。
 ピクルを探すために動くようすがない。
 どっしり構えて連絡をまつわけでもないようだ。
 残って克巳に気をつかう人間がいない。
 腹心である寺田はいつのまにか消えてしまった。末堂と同じところへ行ったのだろうか?
 孤独な背中で、克巳はなにを思っているのだろう。

 組織のトップというものは孤独で非情な決断を強いられる。(参考)
 おまえが、今、決めなくちゃいけない。
 ピクルと闘うことを決断した、克巳の判断は正しいのだろうか?
 いずれ歴史が答えを出してくれる。


 東京ドームの地下闘技場で、刃牙とピクルが対峙していた。
 ピクルが刃牙をここまで案内したようだ。
 立会人は花山と徳川さんである。
 この戦いの聖地において、刃牙は偉大なる王者なのだ。最近、忘れかけていたけど。
 失われた王者の帰還である。

 ピクルは、この場所こそ人間同士が闘うのにふさわしい場所だと記憶したのだろう。
 烈海王との壮絶な試合も、ここで行われた。
 刃牙は、自分のホームグラウンドで喧嘩を売られたのだ。
 どうする、範馬刃牙!?
 ひたすらピクルから目をそらす刃牙であったが、彼にも決断の時が迫っている。
 闘うか、闘わざるか。それが問題だ。
 次回へつづく。


 ピクルは、新宿から水道橋にもどってきた。
 みんな健脚ですね。
 神心会の連中も、水道橋にもどるとは思うまい。
 いや、考えるかも。犯人は現場にもどるという法則が世にあるんだし。
 巣穴に帰るのは野生動物の行動でもある。
 そうなると、神心会に見つかる可能性は高い。

 さて、克巳はどうするのだろうか?
 周囲に人がいないのだし、逃げるなら今だけど。
 ただし、逃げちゃったら、今度こそ館長として終わりだ。
 本当に追いつめられている。

 克巳の発言は、ダチョウ倶楽部のネタみたいだ。
 ただし、逆方向で。
 「やるぞ! やるぞ! 絶対やるぞ!」と、言いながら やらない。
 克巳は「空気読んで、ピクル探したけど見つかりませんでしたと報告しろ」というメッセージを必死に送っているのかもしれない。

 克巳はピクルを倒したいわけじゃない。
 組織をまとめる力が欲しいのだ。
 だから、組織に命令をする習慣を根づかせたい。
 そういう裏の思いがあるから、言動が歪んでしまうのだろう。
 純粋な神心会門下生は言葉にだまされた。
 だが、心は無意識に克巳のウソを見抜いていたのだ。

 それでも、克巳には希望がある。
 心の弱さを打ち明けて、みんなに弱味を見せた点だ。
 今まで克巳は、みんなを支配しようとしていた感じがある。
 だが、今度はみんなが克巳を支えようとしているようだ。
 弱味を見せたことで、かえって まとまった。

 ただ、支えられて向かう先が喰われるのでは報われない。
 まとまって、良かったのか、悪かったのか……
 今週の克巳は、どんな心境だったのだろうか。

 克巳はプライドをすてて、もうすこし本音を出したほうがいいのかもしれない。
 大帝国である漢を建国した劉邦だって、みんなに盛りたててもらって天下を取ったんだし。
 プランが無くてもかまわない。賢者の意見をしっかり聞けばイイのだ。
 トップは、とりあえず場を盛り上げておけばいいんだよ。
 大丈夫だ! まかせろ! 俺に考えが無い! ジェバンニなら何とかしてくれる!

追記 (08/6/4)
 かわたさんからメールをいただきました。
 先週は思ったより長くなったので、追記します。今週も長くなるかもしれないし。
なんか、だれも触れないので気になってたんですが、ピクルってだんだんイケメンになってませんか?
登場時の表紙絵はゴリラっぽいのに今はドイルみたいな顔ですが
 この考えは、正直なかったわ。
 あんまりピクルの外見を気にしていなかったよな……

範馬刃牙10.5外伝ピクル (少年チャンピオン・コミックス)

 初登場は、こんな感じだ。
 たしかにホリの深い顔である。
 ゴリラといったら、ちょっとかわいそうだけど、原始人顔といえる。
 いや、本物の原始人なんて見たことないんですけど。

 それに比べると最近のピクルはシャープな顔つきになっている。
 さすがにドイルはいいすぎだと思いますが。
 ドイルは田中麗奈をモデルにしているという噂です。
 そうなると田中麗奈=ドイル=ピクル=ゴリラで、田中麗奈がゴリラになってしまう。
 あ、いや、今はピクル≠ゴリラか。

好き ← この田中麗奈 は、ドイル顔かもしれない


 ただ、ピクルがイケメンになっている傾向はあると思う。
 現代人は原始人に比べると表情も豊かで、言語も豊富だろう。
 そういった刺激を受けてピクルの顔面の筋肉が鍛えられ、表情が引き締まった可能性もある。
 目が覚めてすぐは、周囲の状況についていけずに混乱していたのだろう。
 最近は食事もできて、落ち着いてイケメンになっているのかもしれない。

 ただ、刃牙世界ではイケメンであっても、良い事がすくない。
 美形兄弟として名高い鎬兄弟など、悲惨な道を歩みつづけている。
 紅葉なんて試合で勝ったことが、一度も無いのだ。
 ピクルのイケメン化は、文明にふれて弱体化しつつある証拠なのかもしれない。
 田中麗奈より、ゴリラを目指せ!
by とら


2008年6月5日(27号)
第3部 第114話 羽化 (770回)

 働かない主人公・範馬刃牙がついに戦うのか!?
 最後に戦ったのがオリバ戦(10巻 77話 07/7/5)だから、11ヶ月間サボっていた。
 温存された秘密兵器がついに発動する、かもしれない。
 なにしろ、範馬刃牙である。 期待 油断は禁物だ。

 ピクルに喧嘩を売られた刃牙は汗をかきつつ、上着を脱ぐ。
 本気で戦うつもりだ。
 独歩が克巳にたおされた時は、上着をつかまれて不覚をとった。(109話)
 なにか不吉な行動という気がする。
 そして、刃牙は徹底的に目を合わせない。
 やる気があるのか無いのか、ワカらん。

「いいのか…………?」
「こんな初(うぶ)いのを」
「巻き込ンじまって……」


 ここで花山薫が異議をとなえる。
 突然、ナニを言い出すんだ!?
 人の喧嘩に口も手も出さないのが、花山の流儀だったハズ。
 だが、今回はめずらしく口をはさんでいる。

 シロウト衆には手を出すなということなのだろうか?
 刃牙にかかわると、純朴なピクルも汚れた人間になるのかもしれない。
 ひたすら出番が無くてニート生活をするようになったら困る。
 刃牙SAGAみたいなコトになったら、大変だ。

 ところで、花山がクツをはいている。
 110話で花山のクツはやぶれたのだが……
 木崎が用意したのだろうか?
 腕は折れても、組長のクツなら用意できます!
 まさに忠臣といえる行動だ。
 木崎ならばやってくれる。

 そんな木崎は、どこでナニをしているのだろうか。
 刃牙がこっそり拉致監禁しているのかもしれない。
 だとすれば、花山の不自然な会話にも説明がつく。
 木崎を人質にして、刃牙が言わせているのだ。
 汚れきった刃牙なら、それぐらいやりかねない。

 だが、花山は言ったそばから自分の発言をとりけす。
 なにしろ、やりたがっているのはピクルのほうなのだ。
 花山は意外と人の心を察する男だ。
 幼年編では、傷心の刃牙を見つけなぐさめてくれた(変な意味ではなく)。
 ピクルの闘争心を察することができないとは思えないのだが。

「助けられたよ花山さん」
「5年前に犯したミス」
「再び繰り返すところだった」


 刃牙は、5年前に夜叉猿と戦った。
 結果的に夜叉猿を死に追いやることとなる。
 この時に勇次郎のとった言動が非常に難解で議論を呼ぶところなのだが、その話は後日にでも。

 平和に暮らしていたい生き物にムリヤリ喧嘩を売るのはよくない。
 人間にムリヤリ喧嘩を売ることが多い刃牙ですが、動物は別だ。
 花山が否定したにもかかわらず刃牙は、喧嘩の中止を申し出る。
 つまり、刃牙にとって『人間 ≠ ピクル = 動物』なのだ。
 妙に刃牙が上から目線で語っている気がしていたが、実際に見下していたのかもしれない。

 花山が言っているように、ピクルのほうから喧嘩を売っていることが肝心だ。
 ピクルは戦いに喜びを感じる戦士である。
 昔はわざわざティラノサウルスに喧嘩を売っていたぐらいだし。
 ピクルは戦いたいから、刃牙をここに招待したのだ。

 刃牙は自分に闘争の主導権があるように思い込んでいる。
 確かに刃牙は地下闘技場の王者だ。しかし、今回の刃牙は招待選手だ。
 自分を中心に世界が動いていると思っているから、ゲスト扱いされると対応できないのだろうか。
 戦いを終了させようと刃牙は自己完結していく。
 もちろん、ピクルとは目を合わせない。視線をあちこちに向けて、ひとりで納得している。

 ドッ

 ピクルが蹴ったッ!
 火を吹くような強烈な蹴りだ。

 刃牙は一気に、2階席まで吹っ飛ぶ。
 コイツはギネス級の新記録だ。
 花山でさえ冷や汗を流す一撃だった。

 自分勝手な理屈をゴチャゴチャこねる現代人に、野性の強烈な返答だ。
 言葉ではなく肉で語るのが刃牙世界のオキテですよ。
 刃牙は一撃でノックダウンし、鼻水とヨダレをたらす。
 オリバとゲバルの対峙にわりこんで吹っ飛ばされたときから、なんの進歩もない。(5巻 38話)
 自分の能力を過信しすぎて、油断しまくりなんだよな。

 刃牙を倒したピクルは拳を突きあげステップを刻む。
 勝ち名乗りをして、踊っている。
 ヤる気のない相手だったが、怪物は怪物だ。
 ピクルは強敵への勝利に喜び踊る。

 軍隊における銃を構えて撃ち装填する単純な動作の訓練は、兵士を鍛えると共に強烈な一体感を生み出す。
 近代の軍隊は単純な教練によって生まれた。
 これは原始のヒトがたき火を囲み、踊りながら狩りを再演・稽古した名残ではないかと、ウィリアム・H. マクニールは自身の戦争体験をもとに考察している。(戦争の世界史
 戦士は踊る。そして、戦うのだ。
 ネアンデルタール人は死者を埋葬し声も出せたらしい。(われら以外の人類
 ピクルの種も、同等の文化を持っているのだろう。

「運んでやるか…」
「食われんうちに…」


 徳川さんが、ボソっという。
 烈を倒したときとはちがい、ピクルは泣きもしない。
 満腹だから喰う気がないのだろう。
 それとも、刃牙が好きでもないし喰う価値もないと思っているのだろうか?

 刃牙にとっては屈辱かもしれないが、ラッキーな放置でした。
 三ヶ月ぐらい寝かせておけば、ほどよく醗酵して本気を出すかもしれない。
 こうして刃牙はふたたび役立たずに戻るのであった。
 やる気を出したように見えたのは、一夜の幻だったのだろうか?


 愚地克巳は道場にもどっていた。
 ……ピクル追跡は、あきらめたのだろうか?
 それとも連絡待ちという大義名分で、戻ってきたのかもしれない。
 いずれにしても、夜は明けて昼になっているようだ。

 親指だけで逆立ちして道場一周する。
 この稽古は義父・愚地独歩が行っていたものだ。
 少年だった克巳は、独歩の稽古法にビックリしている。
 もっとも克巳だって、象と綱引きできる少年だった。
 力では負けない。現在だって、親指逆立ち一周を達成できる。

 だが、相手は原人ピクルだ。
 牛を倒せるような攻撃でも、ピクルに通用するのかどうか……
 それでも、空手一筋だった愚地克巳は空手にすがるしかない。
 不安を抱えながら稽古を重ねる克巳の前に、訪問者が現れる。

「烈さんッ」

 右足を義足の烈海王である。
 唯一ピクルとまともに戦った男だ。
 悩める克巳にとって救いとなるのだろうか?
 次回へつづく。


 白帯だった少年時代の克巳は独歩をかなり尊敬していたようだ。
 しかし、克巳は独歩を追い越している部分も多い。
 試し割りに関しては、克巳のほうが上だろう。
 組み手でも、さきほど勝ったばかりだし。
 そういえば、成果なしで帰ってきた克巳を、独歩はどうやってむかえたのだろうか?

 今まで目標だった独歩を追い抜いたことで、克巳は目標を見失っているのかもしれない。
 烈は、克巳に新しい道を見せてくれるのだろうか?
 空手をやめて愚地海王になったりしそうだけど。
 なんにしても、克巳に向上心がある限り、強くなれるだろう。

 それにしても、刃牙の空気読まないっぷりは、なんなんだろう。
 恐るべきマイペースだ。
 人の話をまるで聞いていない。
 結果、ヨダレと鼻水をたれ流す。

 ピクルがイケメンになったのではないかという意見がある。
 でも、刃牙がダメ男(メン)になったから、相対的にピクルがよく見えたのではないかと……
 今の刃牙は内面のみにくさがニジミ出る(たれ流す、か?)ような外見だ。

 刃牙は、なんか上から目線という気がする。
 オリバに勝ったことで、必要以上の自信をつけちゃったのだろうか。
 そのうち立川談志みたいに「家の塀を偉そうな顔して猫が通りやがる。不愉快だ、空気銃で撃て。ただし殺すな。重傷でいい」と命令しそうだ。(立川談春「赤めだか」インタビュー)
 徹底的な自己中心主義は、精神の範馬勇次郎化だったりして。

 刃牙ももっと積極的に動いて欲しいのだが……
 いっそうのコト、『範馬刃牙外伝・範馬刃牙』でも はじめて活躍の場を提供したらどうか?
 学園モテモテ格闘漫画で、きれい系(餓狼伝・冴子系)も、かわいい系(梢江系)も、出てくるぞ!

追記 (08/6/4)

「そうよ!!」
「ただですませちゃァ ダメだ!」
「たとえ相手が父親でもな」
        『グラップラー刃牙 130話 弄ぶ者』


 夜叉猿の遺体をもてあそんだ勇次郎は刃牙に言い放つ。
 この発言の真意はどこにあるのだろうか?

 刃牙にとってのトラウマその1である夜叉猿・惨殺事件だ。
 この事件が今ごろになって問題を起こすとは、お釈迦様でもわかるまい。

 勇次郎は、基本的に親バカだ。
 夜叉猿にした仕打ちも、刃牙の覚醒をうながすための試練なのだろう。
 刃牙を強くしようという意図はワカる。
 だが、刃牙を強くして、その先になにがあるのか?

 勇次郎は刃牙を喰うために育てているのか?
 それとも、暴走する自分を止めて欲しいのだろうか?

 勇次郎は生れ落ちた瞬間から強者だった。
 自分を止める人間など誰もいない。
 最凶死刑囚と同じように敗北を知りたがっているのだろうか。
 勇次郎の真意がどこにあるのかワカらない。

 刃牙もなにを考えているのかワカらない部分がある。
 なにも考えていないのかもしれないが。
 ピクルと戦いたいのか、戦いたくないのか。

 刃牙は勇次郎のひいたレールから脱出したいと思っているのかもしれない。
 勇次郎の思いどおりに動くのは嫌だ。
 戦いたいけど、勇次郎の思い通りにはなりたくない。
 そんな矛盾が刃牙の行動をしばって、面倒な人間にしているのだろうか。
by とら


2008年6月12日(28号)
第3部 第115話 501年目 (771回)

 刃牙はヨダレをたらしながら退場した。
 主人公らしくインパクトのある姿だ。
 だが、気絶退場も二回目だから ちょっと弱いかも。
 尿も出すか?

 一方、孤独に修行していた愚地克巳のもとに烈海王があらわれた。
 失った右足のかわりに、棒状の義足をつけている。
 急いで退院したから、ちゃんとした義足を用意できなかったのだろう。
 片足になって日も浅いというのに、ツエも持たずに歩いている。
 烈海王の身体能力+身体操作は、超一流だ。

 傷ついた身でありながら、烈はやってきた。
 ピクルと無謀な戦いを挑もうとする克巳を援護するためだろうか。
 克巳に対する、思いの深さがわかる。
 ……刃牙の応援には来なかったけどな。
 刃牙はこっそりとピクルを探し(人に頼って)、静かに退場した。
 だから、烈は刃牙の情報を知らないのだろう。
 知っているとしたら、範馬勇次郎と本部以蔵ぐらい。本部はなんでも知っている。

「わたしに歯が立たぬ相手に――――」
「わたしに指導される立場の君等が」
「仇討ちとは笑止なッッ」


 応援しにきたんじゃないッ!
 いきなり説教から入った。
 さすが烈老師である。甘い展開は許さない。
 ボクサーがジャブから攻撃を組み立てるように、烈海王はツンからはじまる。

 異邦人の烈にはワカらんだろうが、武士の仇討ちは兄や父など尊属の仇を討つのが基本だ。
 弟の仇を討つのは禁止なので、荒木又右衛門たちの仇討ちはこっそりと行われることになった。
 つまり、師匠筋の仇を討つのは、日本の習慣として正しい。
 もちろん成功率に関しては、烈の言うとおりなのだが。

 克巳たちが恥知らずなら、集団で襲いかかるという方法もある。
 だが、神心会の門下生は、タイマン勝負を望むだろう。
 集団で勝っても烈は喜ばないだろうし。
 一対一で闘うのなら、克巳が生き残れる確率は低い。
 そして、負けたら喰われる。
 烈は克巳が心配だから、不自由な体でここまで来たのだろう。

「拳勇 烈 海王の武がまるで通じなかった事実」
「それでも なおッ」
「否それだからこそ なおッ」
「俺の空手 ぶつけてみたい」


 克巳の意識が変化(かわ)ったッ!
 107話のころは、自分が組織の長であることをアピールするためにピクルと闘うつもりだった。
 だが、今は一人の空手バカとしてピクルと闘いたい。
 わずかな間に、なぜ心境が変わったのだろうか?

 113話で、克巳は神心会のみんなに期待されていることを実感したのだろう。
 虚勢をはらず、克巳は頭もさげる。
 みなが奮いたち、一体感が生まれた。
 組織の長でありたい、人に認められたいという克巳の欲求は、この時点で満足したと思われる。

 そして、のこった思いは空手バカがもつ闘いへの渇望だ。
 独歩の予想とはちがう方向にだが、克巳が化けた。
 前回克巳が少年時代を思い出していたのは、少年特有の純粋な心を取りもどした象徴だろう。
 あいかわらずプランは立てていないようだが、まあ、良しッ!

「仇討ちなど便宜上のスローガン」
「強ぇならヤリてェ…… そういう生き物です 俺たちは」


 それが武道集団・神心会だ。
 もっとも、門下生たちは本気で仇討ちをやりたがっていたみたいですが。
 克巳のいう「俺たち」は、「克巳や烈たち」という意味もあるのかもしれない。
 闘うものとして、克巳と烈は同じ感情を共有できる。
 烈だって命をかけてもピクルと戦いたかったのだ。
 ……刃牙も早く闘争心を取りもどしたほうがいいぞ。世間から取り残される。

 強いからヤリたいというのは、ピクルも同じだ。
 簡単な獲物を狩ることを良しとせず、わざわざティラノサウルスと戦った。
 よみがえった現代でも、ゴチャゴチャ言わず強い相手と戦いたいのだ。
 そうなると、花山を無視して刃牙を攻撃したのは、刃牙のほうが強いと感じていたからだろうか?
 やはり範馬の血族は油断ならない。
 腐っても鯛。油断してても範馬。

「勝算があるからやる ないからやらない」
「そういう闘いではないと決めてあります」

「変わったな」
「克巳さん」


 克巳は前にも同じことを言っている。
 だが、今回は意味がちがう。
 今度こそ純粋にピクルと戦いたい。
 打算無き闘志をもつ克巳を見て、烈は感慨深げだ。
 ちょっと前までの克巳を、どう思っていたのやら。

 克巳の精神テンションは今、グラップラー刃牙時代にもどっている。
 地下トーナメントで花山に勝利した直後にだ。
 謙虚、 闘うって………いいなァ……って 状態の克巳がピクルを倒すぜ。
 しかし、昔の克巳はせっかくの覚醒後に烈海王と闘い敗れる。それも一発で。
 克巳は化けると良くないことが起きる。

「4000年の蓄積を誇る中国武術の4001年目―――」
「君が引き継いでみないか」


 烈がスカウトしたッ!
 この勧誘術は寂海王から学んだものだろうか。
 烈は克巳に勝ったとき、肉体のタフネスを賞賛していた。
 つまり肉体の資質は高いと見ている。
 これに中国武術の技をのせれば、さらに強くなるだろう。

 烈は空手の歴史を解説する。
 嵩山少林寺から琉球(沖縄)へ。富名越義珍により本土(日本)に上陸した。
 沖縄から数えても まだ500年の若い武術だ。
 それよりも、4001年目を目指してはどうか?

 4000年を背負っていたため態度の大きかった烈が、謙虚に克巳を口説いている。
 空手の歴史も、来るまえに勉強しておいたんだろうな。
 今日の烈海王は本気です。

 中国武術も、きっちり歴史が保障できるのは嵩山少林寺あたりからになる。
 インドから宗教(仏教)といっしょに輸入された格闘術だ。
 もっとも、歴史書にのこっていないだけで、独自の格闘技は昔からあったのだろう。
 中国では武の地位が文よりもずっと低いので、文章に残りにくいと思われる。

 野見宿禰当麻蹴速が試合をする神話があるなど、日本では、けっこう武も優遇されている。
 このように相撲の歴史は長い。
 日本の武術の中でも、空手は新しいほうなのかもしれない。

「若いなら若いまま 未熟なら未熟なまま」
「501年目をぶつけたい」
「空手に殉じたいのです」


 だが、克巳は空手家として戦うことを選ぶ。
 父・愚地独歩の背中を追いかけてきた人生が、そうさせるのだろうか?
 無計画なら無計画のまま進んじゃうのが愚地克巳なのかもしれない。

 若く未熟ということは、可能性に満ちているということでもある。
 身軽に進化するなら、若いほうがいい。
 敵は未知の生物、原人ピクル。過去に縛られていては勝てはせぬ。
 無計画な気もするが、勝つためにはあえて過去を捨てたほうがいいのかもしれない。

 克巳が細かいことを考えて、烈の提案を断ったのか、ワカらない。
 だが、センスの良さを感じる。
 なにしろ4000年はピクルに通用しなかった。
 発想を変えて、年月ではなく違う単位で闘ったほうが良さそうだ。
 たとえば500ccで勝負する!
 範馬の血を500cc輸血。

「ときに克巳さん」
「わたしにその501年目を補佐することは?」

(イヤ……… だからそれじゃあ……………………
 アンタがからむと……………
 せっかく501年目が………………………
 4001年目とごっちゃになって………………)


 さすが烈海王ッ!
 自分のペースをまったく崩さない!
 烈は遅刻しても朝ゴハンをきっちり食べるタイプだろうか。
 いつもの烈さんらしく なってきましたよ。

 中国武術の歴史は暗黒に包まれている。
 だが、会話・交渉術の歴史はけっこう有名だ。
 縦横家と言った弁舌の専門家もいるし、いろいろな思想家も活躍している。
 烈にも4000年にわたる交渉の歴史が刻まれているのだろう。
 とにかく押す。押しの一手で、克巳にせまる。
 全然、技術(わざ)を使っていませんね。

 烈は烈なりに克巳の手助けがしたいのだろう。
 空手501年記念を4001年で上書きするとか、そういうことは考えていない。
 そういう黒いことを考えるのは、昔の克巳だ。
 現在の克巳は、打算を深く追求せずに烈の心に打たれる。

(ま……)
(いいかァ……)


 克巳という男は、若さゆえのあやまちを認めちゃう男なのだ。
 一時期は中国武術をパクリまくると言っていたし、オマエの物はオレの物方針でやっていくのかもしれない。
 これもまた、克巳が化けた結果だろうか。

 克巳にOKもらって、烈が嬉しそうだ。
 肩も負傷しているのだが、さっそく克巳と稽古をはじめる。
 克巳が化けたように、烈も化けるかもしれない。
 とりあえず、ツンから デレに化けた。

『4001年目の中国武術との合流
 そう
 これが空手の501年目』

「変わっちまったな あのヤロウ」


 克巳が空手に革命を起こそうとしている。
 そして、独歩はちょっとさびしそう。
 克巳を見守りながら送り出した。
 そのつもりが、いきなり親離れしてしまったのだ。
 想像以上の化けっぷりに、親としてさびしいのだろう。

 進化しようとしている愚地克巳流・空手501は、ピクルに通用するのか?
 そして神心会門下生たちは、いつまでピクルを探しているのだろう。
 次回へつづく。


 克巳が謙虚に化けて、烈まで謙虚になった。
 困った人が急にイイ人になるのは、死亡フラグという伝統があります。
 克巳は無事に生き残れるのだろうか?

 せっかく、あたらしい空手を生み出そうとしているのだ。
 ピクル発見は遅れて欲しい。
 今闘ってもエサにされるだけだ。
 合計4502年の超必殺技を完成させないと、ピクルには勝てないぞ。
by とら


2008年6月19日(29号)
第3部 第116話 克己心 (772回)

 克己心。
 ――――自分の欲望をおさえる心。自制心。(大辞林

 われらが主人公・範馬刃牙には不要な言葉ですね。
 欲望すなわち性欲だ。SAGAで強くなる。
 強くなっちゃうんだよな…………

 そんな範馬刃牙(18)は落書きだらけのバキハウスで寝そべっている。
 働かず、学校にも行かないのが、範馬の美学だ。
 刃牙は、バキハウスのほうに居ついちゃっているようだ。
 松本家から出て行ったのだろうか。
 大家の娘を喰っちゃた。さらに、別れた(?)のだ。
 これは気まずい。

 刃牙の胸にはピクルの足跡が黒アザとしてのこっている。
 アザの周辺を固定等はしていないので、骨折はしていないようだ。
 二階席にまで吹っ飛ぶような攻撃だった。
 つまり、二階から落ちた以上の衝撃を受けたはずだ。
 やっぱり刃牙は頑丈だよ。改造人間や妖怪人間よりも強い。

 そして、セクシーだ。
 パンツ一丁で精一杯のアピールをしている。
 チャンピオンの男セクシーは刃牙が支えていると言っても過言じゃない、かも。
 グラビアアイドルの仕事を刃牙ひとりで打ち消していると言っても過言じゃない。

「闘う覚悟もなく…」
「無目的のまま のこのこ出かけるから」
「無様な不覚を取るのだ」
「我が子ながら虫唾が走るわ」
「あの甘ったるさにはッッ」


 急に刃牙が自分を罵った。
 この口調は、範馬勇次郎のものだ。
 しかも、表情までマネしている。なんと高度なッ!
 隠し芸で使えるレベルだ。

 範馬刃牙は達人的なマゾである。
 相手に与えたダメージを合気で自分の痛みに返せそうなぐらいの達人だ。
 もしかしたら、ピクルの一撃も喜んで受けたのかもしれない。
 そんな刃牙だから、痛みの余韻を楽しみたいのかも。
 肉体的な痛みは、精神的な屈辱をスパイスにすることで、さらに美味となる。

「そこまで言うこともなかろうに……………」
「刃牙なりにガンバった結果じゃろう……………」

 ガンバってねーよ!
 油断して吹っ飛ばされてヨダレをたらすのが、努力なのか?。
 だったら、オレだって油断して居眠りしてヨダレたらす努力を惜しんでいないぞ。

 思わず、全力ツッコミをしたくなる徳川さんの発言だった。
 場面はかわって、勇次郎と徳川さんが会話をしている。
 刃牙は正確に勇次郎のセリフを予想したようだ。
 父親に対する理解の深さと、リアルシャドーのおかげだろう。
 刃牙は、ヒマさえあれば父親のことを考えているのだろか。

 勇次郎は刃牙のダメっぷりに怒っている。
 だが、本気で怒っているとは限らない。
 刃牙がオリバに勝ったときも、怒っているようで喜んでいた。(範馬刃牙10巻 79話)
 今回も内心では喜んでいそうだ。
 勇次郎の喜怒哀楽は、暴力の形で表に出る。

 勇次郎と徳川さんがいるのは、ホテルの一室だ。
 おそらく勇次郎の宿だろう。
 勇次郎が徳川さんを呼びつけたと思われる。
 刃牙がピクルと闘ったと聞いて、詳細を知りたくなったのだろう。
 どんだけ親バカなんだか。

「爺ィよ」
「なんという幸運だ」
「仮にもあの野性に触れちまったのだ」
「あの野郎」
「眠れぬ夜が続くだろうぜ」


 そして、勇次郎は刃牙の闘争心が燃え上がることを予言するのだった。
 刃牙のヤる気が最近無くなった件について、父も心を痛めていたのだ。
 オリバに勝ったことで、刃牙は燃え尽きてしまったのだろうか。
 本命は範馬勇次郎だから、本番で燃え尽きればいいのに。
 投球練習で沈むな。

 そして、範馬勇次郎の予測どおり刃牙は眠れない。
 ピクルの力は、喰らった一撃で理解した。
 アライ父が長年かけて復活させたパンチのように雄弁なのだ。(バキ30巻 262話)
 もちろん、野性の凄味を感じとれるのは刃牙が一流の証拠である。
 全身に野性を感じても、剣持武志には理解できまい。(範馬刃牙13巻 104話)

 刃牙としては、1パツ喰らっただけで親友だ。
 ルミナの尻をたたいて親友になった実績があるので、問題ない。(範馬刃牙1巻 3話)
 闘いを通じて生まれる絆についても、忘れていないのだ。
 ちょっと、俺様ルールを適用しすぎかもしれないが、まあ範馬だし。

(このままでは決して行けぬと予感していたあの領域へ―――)
(アイツとならば超えられるッッ)


 見えたぞ。エンディングが!
 勝手に親友になったあとは、勝手に同志にした。
 ピクルと組めば、範馬勇次郎に勝てる!
 まさか二人がかりで闘うワケじゃないだろうけど。

 結果はどうだろうと、刃牙は勇次郎と闘う決意をしていたハズだ。
 しかし、まったく戦う気配を見せない。
 理由がわかった。やっぱり結果が気になるのだ。
 そりゃ死ぬのは嫌だろう。たとえマゾでも。

 範馬勇次郎は常に成長する男だ。
 刃牙がちょっとでもサボったり、油断すると差が開いてしまう。
 そして、刃牙はしょっちゅう油断する漢である。
 最近は、もう範馬勇次郎に追いつけないと諦めかけていたようだ。
 だが、ピクルという逸材を手に入れる。
 今度こそ、範馬勇次郎に届くかもしれない。


 烈海王は、克巳・改造計画の指針を語る。
 愚地克巳の必殺技は『マッハ突き』だ。
 足の親指 → 足首 → ヒザ → 股関節・腰 → 脊髄 → 肩 → ヒジ → 手首
 8関節を加速させることにより、音速を超えると言われる正拳突きだ。

 2000年前に通過しているの言葉どおり、烈も『マッハ突き』を撃つことができる。
 だが、烈ですら実戦で使えたことはない。
 練習で一度も成功したことのない技が本番で成功するのは、ご都合主義だ。
 緊張のない練習ですら成功しない技が、本番で出せるわけもない。
 烈海王にも限界があるのだ。

「あの結果に見るほど わたしと君には実力(ちから)の差はないッッ」

 克巳以外で『マッハ突き』を使いこなせる人間がいたとしたら、郭海皇ぐらいのものだ。
 烈はめずらしく克巳を褒めちぎるのだった。
 戦いの駆け引きで、烈は克巳を上回っている。
 だが、身体操作では克巳のほうが上だ。

 長い時間をかけて真実が明らかになった。
 ちなみに、当サイトがはじめて刃牙感想を書いたのが、ちょうど烈 vs. 克巳の決着後だ。
 けっこう、感慨深いものがある。(グラップラー刃牙34巻 295話)
 克巳に勝利した後で、烈がペラペラしゃべっていたのは、薄氷の勝利を制した興奮があったためだろうか。
 一回戦でセルゲイ・タクタロフに勝ったあとは静かだったもんな。

 空手の鉱脈を掘りつくしたとか、天才とかの異名はダテじゃなかった。
 愚地克巳はやっぱり天才なんだよ。
 独歩の目が曇っていたワケでもなかった。
 ただ、計画が立てられなくて、大雑把な性格で穴が多いだけなのだ。
 武を志す人間として、けっこう大きな欠点ですが。

「研磨(みが)いてみないかこの技術(わざ)を」
「今以上に速(はや)くッ」
「今以上に疾(はや)くッ」


 目指すのは、マッハ突きを超えたマッハ突きだ。
 得意技を伸ばすのは、正しい戦略である。
 烈海王の協力によって、マッハ突きはどんな進化をするのだろうか?
 次回へつづく。


 予想もしていなかった、克巳を持ち上げ祭だ。
 高く持ち上げて、落すつもりじゃないよね?

 持ち上げられている克巳だが、不安も残る。
 マッハ突きが成功したのは、攻撃から逃げない花山が相手だったという点も大きい。
 大きいスタンスから撃つのがマッハ突きだ。
 本人はあまり動かないので、攻撃範囲がけっこう狭い。
 ディフェンスが上手く、フットワークもあるアライJr.などには通用しないかも。

 ただ、ピクルは直線的に動くので、マッハ突きも有効だろう。
 問題はマッハ突きの威力そのものだ。
 郭海皇は範馬勇次郎に敗れた。
 つまり、技だけでは力に勝てないのだ。

 克巳がどんなに技を鍛えても、ピクルの力に通用しない。
 烈だって、自分の体で、技術の無力を体験している。
 だから、烈にはなんらかの秘策があるのだろう。
 克巳とちがって無計画とは思えない。
 武術家は、策があるからこそ戦うのだ。

 烈の技術と克巳の身体能力が合わされば、もっと強くなれるはずだ。
 マッハ突きのバリエーションも増えるだろう。
 たとえば、マッハ蹴りとか。あと、マッハ頭突きに、マッハ転蓮華など。
 ……夢は広がる。

 そして、刃牙も本気で動き出そうとしている。
 刃牙と克巳はライバルだが、ちゃんと戦ったことがない。
 ピクルをめぐって、刃牙と新生・克巳が激突するのだろうか?
 今の愚地克巳なら、立派な噛ませ犬になることができるぞ。

 ようやく、刃牙に見合うだけの相手が出現しそうだ。
 まさに時代が刃牙に追いついてきたといえる。
 今の刃牙は18歳だから、ゆとり世代なワケですよ。10年前なら、微妙に違ったかもしれないが。
 時代(ゆとり世代)が刃牙に追いついたのだ。

追記 (08/6/25)
 カラオケで刃牙の初期エンディング「Reborn」が追加された。
 せっかくだから、歌ってみようと予約を入れる。
 友人たちも病気の人を見るような生暖かい視線で空気を察してくれた。
 だが、つぎつぎと曲の番号が入れ替わり、1時間たっても始まらない。
 そして歌う前に、退室時間がくるのだった。
 カラオケまでも、チャンピオンにキビしい世界なのかッ!?


 話をもどして……
 マッハ突きを進化させる秘策が烈海王氏にはあるのかッ!?

「克巳さん、君ならば、マッハ突きの弱点に気がついているだろう」

「ッッ」
「確かに。マッハ突きには大きな弱点があります」

「8関節の同時加速が生みだす音速の拳。だが――――――」

「――――――だが、8関節を使用するが故に、他の動きが取れない」
「移動するさいも、大きなスタンスを取ったまま。相手が自分の間合に入って来るのを待つしかない」
「そのため間合に入るタイミングを読みちがえると防御や回避すらおぼつかない」

「つまり、課題のひとつが自分のタイミングで攻撃できるようにすることだ」

「ひとつ? どういうことだ、烈さん」

「私の眼はごまかせん。克巳さん、君が花山氏にマッハ突きを決めた時、何発殴ったかね?」

「ッッ」

「そう完成されたマッハ突きであれば、あれほどの連打は必要ない」
「8関節の同時加速をしたあと、関節はすべて伸びきる」
「そうなると、次撃では関節が伸びきったままで加速できない」

「おっしゃるとおりです」
「初弾の右逆突き(左足を前に構えた右パンチ)は確かに8関節同時の打撃でした」
「しかし、次の左順突きで使えた関節は、せいぜい肩・ヒジ・手首の三箇所ッ」

「弓矢は放つ前に、引き絞らねばならない」
「関節を加速させるためには、もう一度マッハ突きの構えに戻る必要がある。そうですね」

「…………はい」
「花山氏に打ち込んだとき、2発目以後で完成したマッハ突きが撃てたのはせいぜい4発に1回」
「現に花山氏は背を向けるという行動を取ることができた」
「あそこで反撃をされていれば、あるいは――――――」

「課題の二つ目は連打ッ」
「克巳さん、止まることなく連続で攻撃する方法をご存知ですか?」

「反動を利用した左右の連打――――――、じゃ無いんだろうな」

「それは、螺旋です」
「直線運動の反復だけでは広がりがない」 「円運動も循環だけ。終わりはないが前進もない」
「その点、螺旋運動は、一度循環すると一歩前に進んでいる。DNAが螺旋でしょ。指紋も、拳を握る手も螺旋じゃないですか」

「おおっ、蘇東成老師が達人列伝で言っていた内容を丸パクリしたような理論ッッ」

「螺旋を応用した人類最古の最終兵器(わざ)が――――――」
「これッ!」
「ウワアァアォォォォ」

 ブンブンブンブンブンブン

「ぐ、グルグルパンチッ!?
「そうか、烈さん足を失ったショックで酸素欠乏性にかかって……」

「すごいぞ、音速で回転させると戦闘力は数倍に跳ね上がる。すぐ真似して試すんだ」
「急げ! お前だって武術家だろうが!」

 天才武術家の変わり果てた姿に涙する、愚地克巳であった。


Reborn グラップラー刃牙エンディングテーマ Reborn
by とら


2008年6月26日(30号)
第3部 第117話 オアシス (773回)

 ついに刃牙が、やる気を出す!
 刃牙はやればできる子だ。今までは、本気を出していなかっただけ。
 昔はけっこうヤンチャだったし。ヤクザとだって付合いがあるよ。
 まあ、それは置いといて。
 ――――――刃牙が動くとトラブルが起きる気がするのはナゼだろう。

 闘技場にもどったピクルはクロロホルム責めにあっていた。
 ペイン博士が投入した量はドラム缶140ダース分だ。
 ドラム缶を200リットルとすると、336,000リットルになる。

 多すぎ。否、多すぎるッッッ!
 カップラーメンを喰うのに、大鍋で湯を煮立てるようなものだよ。
 地球にキビしいッッッ!

 クロロホルムだって有毒なんだから、命に関わる。
 毒性無くても酸欠になるぞ。
 柳龍光の説明によれば、酸素比率6%以下の大気を呼吸すると即座に意識を失うハズだ。(バキ6巻 47話)
 酸欠は脳に障害をのこす。
 地球だけではなく、野生動物にもキビしい。

「我々には責任があるのです」
「出逢ってしまった故の責任が」
「全人類のため」
「未来のためにピクルを生かす責任がッッ」


 ペイン博士は力説する。
 一度脱走されたので、地下闘技場にはピクルを置けないと判断した。
 眠らせて、より強固な監禁施設に移すようだ。
 でも、まだ施設を作っていない。
 ずっとクロロホルムで眠らせる気だろうか。
 ノーベル賞博士でも、けっこう無計画なんですね。

 ペイン博士は科学者らしくピクルを研究対象として見ているようだ。
 ピクルは、世界にただ一種かつ一体しかいない生物である。
 シベリアトラなんかとは比べ物にならない貴重な存在だ。
 きっと、ペイン博士はピクルを生体実験したいんだろうな。

「忘れてはいけないことが もう一つある」
「"ピクル本人は何を望んでいるのか"…………だ」


 ストライダムはピクルの心情を重んじる。
 なにしろ、米国の誇る接待超人だ。
 米国の平和を接待で支える功労者である。
 相手がなにを望んでいるかを考えるのは得意でなのだ。
 接待はストライダムにとって脊髄反射のように起きる現象なのかもしれない。

 徳川さんも似た考えをしている。
 そもそも、ピクルは逃げたりしないと考えているようだ。
 刃牙を倒したあとも、ピクルは逃げ出さなかった。
 ピクルは地下闘技場がオアシスであると気がつく。

「ここにさえ居れば……」
「餌にも遊び相手にも事欠かないッッ」

 アンタ、まだ戦士たちを喰わせる気かッ!?
 烈があんな目にあったので、反省したのかと思ったら、まるで成長していない……
 もっとも、ピクルは刃牙を喰わなかった。
 だから、満腹にしておけば戦っても安全なのかもしれない。
 なので徳川さんも安心して観戦を楽しめるのだろう。

 しかし、烈海王の右足は帰ってこない……
 あまりに大きな犠牲だった。
 徳川さんの甘い予想に任せるのは、危険がのこる。

 ペイン博士は大人なので、烈の右足についてネチネチ語らない。
 そのかわり、ピクルが空港で相沢アナウンサーをレイプした件を持ちだす。(11巻 80話)
 野性度が高すぎるピクルの行動は現代人には予測がつかないのだ。

 「レイプ = 野性」が成り立つのか不明だが、たしかに予測不能である。
 動物園漫画の『ZOO KEEPER』(AA)によれば、動物園で飼っている動物ですら思い通りに動いてくれない。
 それも、象のように知性が高い動物ほどやっかいだったりする。
 知性が高く、野性度も高すぎるピクルはとても扱いにくかろう。

 クロロホルムが作る靄の中から、ピクルが上体を起こした。
 気絶などする気配がない。アクビをしただけだ。
 驚異の肉体が、クロロホルムをすばやく解毒したのだろうか?
 それとも、体組織がちがうので、薬が作用していないのかもしれない。

 いずれにしても、ピクルにクロロホルムは効かないようだ。
 以前、注射は効いていたのに、どういうコトだろうか?(13巻 101話)
 いちど薬物に屈した体が、裏返って耐性をもったのかもしれない。
 だとすると、もう勇次郎にも麻酔薬は効かない可能性がある。

「餌も友達ももう少しじゃあッ」
「まだ休んどってもええぞォッッ」


 周囲をみまわすピクルに、徳川さんが声をかける。
 その声を理解したかのように、ピクルはクロロホルムの靄に沈んでいく。
 なんか、怪獣映画みたいだな。
 とりあえず、健康に悪そうだから、排気しようよ。

 ピクルは戦士だ。
 戦士という精神構造を理解するもの同士として、徳川&ストライダムはピクルの行動を予測できる。
 彼らはそう信じているのだ。
 烈の時は、予想外でしたが。

 グラップラーは夜叉猿とも友情を結べる。
 どう説明したのかワカらんが、飛騨の山奥から出張してもらったぐらいだし。
 アレは、徳川さんが直に交渉したんだろうか?

 ピクルともつきあいが長くなれば、互いにわかってくるのだろう。
 動物園の話を考えると、わかったつもりにすぎない可能性もありますが。
 ゴチャゴチャ考えたり話し合うより、野性にもどってぶつかったほうが互いを理解できるのかも。
 そのほうが、刃牙らしい。
 そして、刃牙は前回で理解していた。


「次はぶつける……」
「この力を思いきり………
 言わずもがなピクルへッッ」


 刃牙は部屋でたぎっていた。
 一枚の新聞紙を片手だけでつかみ丸めて行き、完全に手の中に収める。
 地味だが握力を鍛える練習だ。
 『獅子の門』(群狼編)の芥菊千代も同じようなトレーニングをやっている。

 新聞紙を完全に手の中に入れることが、いままでの刃牙にはできなかった。
 刃牙も成長しているのだ。
 現実に力をふるい、己を試す。これは柔らかい試し割だろうか。
 空想のカマキリよりも、新聞紙のほうが成長の実感があるらしい。

 克巳は烈海王という協力者を得て進化しようとしている。
 刃牙は誰にも頼らず進化したようだ。
 強すぎる範馬の血が、刃牙を孤独にしたのだろうか?

 別世界に流され孤独な異人となったピクルと、範馬刃牙は戦うことで理解(わか)りあえるかもしれない。
 二人の超雄にとって、激突は避けられぬ。
 そして、克巳は進化を急がないと、乗りおくれるぞ。
 戦いの予感をさせつつ、次回へつづく。


 克巳と烈の特訓は報道陣をシャットアウトしたらしい。
 進化した超マッハ突きを開発中なのだろう。
 一気に黄金聖闘士(ゴールドセイント)並みになって、ライトニング突きに進化していたら、どうしよう。

 もうひとつ気になるのは、克巳の思想だ。
 あくまで空手にこだわる克巳だが、押しの強い烈に教わっているうちに考えが変わるかもしれない。
 なにしろ、洗脳を開発したのは中国だし。
 次に登場するころには、克巳海王になっている可能性もある。

 ペイン博士の動向も気になるところだ。
 ノーベル賞戦士なのに、あつかいが悪い。
 溜まったストレスが悪い方向に爆発しなければいいのだが……
 科学者は真理を知るためには、手段を選ばない。

 ピクルが貴重だというのはワカる。
 ならば、子孫を残すという発想はないのだろうか?
 さすがに人間に生ませるのは問題があるが。
 体外受精だろうがなんだろうが、妊娠した場合に母体が受ける危険を考えると、普通は許可できない。
 人権無視の国は別として、民主主義の国でやっちゃダメだ。

 とりあえず精子を冷凍保存したほうがイイだろう。
 刃牙世界の科学技術は、おおむね現実と同じだ。
 なので、ピクルのクローン体が作られることは無い。
 だが、未来への遺産として残すことに意義がある。
 ピクルクローンが登場するぐらいなら、勇次郎クローンがとっくに出て来ているよな。

 今回、相沢アナウンサーの話題が出た。
 てっきり忘れたい過去になっているのかと。
 もしかすると、相沢アナウンサーの再登場フラグかもしれない。

 刃牙世界では「強い男 = モテる」だ。刃牙世界なら島耕作もそうとう強い。
 ムキ出しの野性をぶつけられた相沢アナウンサーが、ピクルに惚れる可能性は十分にある。
 範馬勇次郎と朱沢江珠の出逢いだって、同じようなものだ。

「あの男のワケのわからぬ野性に触れ―――― 君の中の女性(オンナ)は」
「犯されることを願望(のぞ)んだッッッ」
G刃牙15巻 128話)

 なんかピクルにそのまま通じそうな内容だ。
 野性+犯すで刃牙が誕生するなら、ピクル二世が生まれても問題ない。
 もっとも、次世代ファイターの台頭は『範馬刃牙』最終回までに間にあわないのだろうけど。


 前回感想で、「刃牙もマッハ突きを実戦で成功させた」と掲示板とメールで指摘を受けました。
 私の要約がマズかったのですが、烈は「中国武術の歴史」で使えるのはおそらく郭海皇のみと言っています。
 刃牙は中国武術のカテゴリーに入らないので、カウントしていないのでしょう。
 ただ、過去の達人には八関節加速拳を使いこなせる人がいてもおかしくない。
 烈は克巳を持ち上げるために、郭海皇のみと言ったのかもしれません。

 なお、私がなんで「中国武術の歴史」を省略したのかは、自分でも憶えていません。
 護身完成して刃牙にたどり着けなかったのだろうか?

 刃牙がマッハ突きを使ったとき、烈は医務室にいた。
 だから、刃牙もマッハ突きを実戦で使ったと知らなかったのかも。
 (烈さんは、おだててくれるけど、刃牙なんか一目見ただけでコピーしちゃったんだよな)
 と、克巳は内心思って凹んでいたのかも。だから表情が神妙だったのか?
 呪われた範馬の血は、遠くの相手にも嫌がらせ(ダメージ)を与えることができるらしい。
by とら


2008年7月3日(31号)
第3部 第118話 超音速 (774回)

 マッハ突きを進化させる。きっと名前は超マッハ突きだ。
 スーパー・マッハ・パンチでもなく超音速拳でもない。
 中途半端に英語と日本語が混じるのが、愚地克巳の美学だ。
 なお、今日のファッションは、上がジャージで下が空手着である。
 やはり、こいつはハンパねェッ!

 音速を超えた物体が出すものが衝撃波だ。
 弾丸やジェット機などが発生させる波動である。
 克巳は烈海王にスローモーションの衝撃波映像を見せていた。
 ずいぶん用意がいいですね。
 無計画な人生を歩む克巳とは思えない。

 ムチは音速を超える事のできる道具だ。
 音速を超えたことによる衝撃波で、ムチは空中でもビシバシと音を出せる。
 そんなワケで克巳はムチを取り出すのだった。
 用意がよすぎッ!
 オマエは通販の人かよ。さらにプリンターもついてきそうだ。

 つうか、ムチをなんに使うつもりだったのやら。
 烈を相手にムチで新技の開発をするつもりかよ。
 スーパー・マッハ突き計画が、ただのSM計画になってしまう。

 克巳は、ムチの先端が衝撃波を発生させる映像を見せる。
 イロイロな映像を収集していますな。
 これは自分のマッハ突きを宣伝するための材料だろうか?
 館長となった克巳は自分のカリスマ性をアピールする必要が生じている。
 手っ取り早くマッハ突きのすごさをアピールする映像を集めた、と。

 あとは編集してBGMに「地上の星」(AA)を流せばオッサンが面白いほど釣れるぞ。
 沖縄ロケで大胆な水着も披露して若い層の人気もガーレンスペシャルなみにがっちりホールドだ。
 いや、ガーレンスペシャルだと投げちゃうか。

 今のところ素材だけみたいなので、忙しくて宣伝用ビデオを作る余裕が無かったのだろう。
 ムチを鳴らして見せているから、ムチの練習はしていたようだ。
 撮影よりも体を動かすほうが、克巳の性にあっている。
 計画を立ててみるものの、実行できないのが克巳らしい。


「足の親指から始まる都合約10か所の関節」
「これをフル稼働させ音速(マッハ)を超える」
「音速(マッハ)は時速1225キロメートル」
「とするなら各関節のスピードは100キロを超えねばならない」
「不可能だ」


 克巳がこまったコトを言い出した。
 ……今までのマッハ突きは音速出ていなかったのか?
 じゃあ、パンって音はなんだったんだよ。
 全ての前提が崩れた。

 パワーアップする前に克巳が自分で格を下げてしまう。
 しかし、「落す」ときの前フリは「持ち上げる」だ。
 ならば「持ち上げる」前だから、自分で「落とした」のかもしれない。
 最近の克巳は浮き沈みが激しな。ジェットコースター人生だ。
 最後は末堂なみに落ちて消えるのだろうか?

 1関節100キロってのは、やっぱりムチャだろう。
 親指・足首・ヒザ・股関節の同時加速で走ることができたら、時速400kmになる。
 時速400kmって言ったら100mを1秒強で走りぬける速度ですよ。
 仮面ライダーだって、ここまでムチャできないぞ。
 やはり、マッハ突きはハッタリだったらしい。

 烈がニヤリと笑う。
 10関節では少なすぎる。
 そう、中国武術はこの問題をすでに通過していた。

 関節が足りなければ増やせばいいのだ。
 「(穀物がないのならば、)肉粥を食べれば良いではないか」発言をした皇帝かと。いや舞乙-HiME 12話(AA)か。
 これで克巳の腕を折って関節を増やしたらギャグになるのだが、ちゃんとした答えがあった。

「脊髄だ」

 31個の骨からなる脊髄をひとつずつ加速させる。
 正拳突きに使用する脊髄17か所と、他の関節10か所の合計27か所を加速だッ!
 これなら1関節加速の目標値が46キロになる。
 そして、衝撃波が生まれたッ!

 克巳は意識していなかっただけで、8関節以上を使ってマッハ突きを撃っていたのかもしれない。
 無計画人間だからこそ、計算外のこともやってしまうのだ。
 克巳らしさが生んだ必殺技なのかもしれない。

 刃牙の無計画は克巳のはるか上をいく。
 やはり、ムチャっぷりという点で克巳は刃牙に勝てないのだろうか?
 克巳がマジメに拳速を上げていたころ、たぶん刃牙は妄想のカマキリと戦って空中浮遊を達成していた。

 ところで8関節から10関節に増えていますが、どこが増えたのだろう?
 1足親指・2足首・3ヒザ・4股関節・5肩・6ヒジ・7手首 + 脊髄×17
 肩や股関節は、肩甲骨・鎖骨や骨盤などが組み合わさって複雑な構造をしている。(参考「ナンバ走」)
 ここでも、細かく関節を分解して3つ分加速を追加しているのかも。

 だが、これでピクルを倒せるのだろうか?
 体重が数トンある恐竜が、時速数十キロでぶつかる運動エネルギーに勝っているとは思えない。
 克巳の疑問に、烈も同意する。
 なにしろ実際にピクルと戦ったのだ。
 ピクルがゴリラ以上に打たれ強いことを烈は知っている。

「この技にはまだ可能性がある」

 烈がさらに4000年の貯金を放出する構えだ。
 だが、克巳は先に答えを出す。
 指関節だ。
 指にある三つの関節も使用して同時に加速する!

 烈海王ですらが驚き息をのむ解答だった。
 教えるはずの答えを克巳は自ら考えていたのだ。
 無計画な克巳とは思えない理論的な考えである。
 実はこっそり独歩に教わっていたりして。

 指先は人体構造の限界まで加速された。
 この速度に、重さまで加えるとしたら?
 カミソリの鋭さと鉈の重さを兼ねそなえた、日本刀のような打撃が生まれる。

「人体 最重量部位 頭部ッ」
「こいつをフル可動させ――――」
「鋭利な貫手に頭部の重さを備える」

[ 空手史上 最完全なる武器 完成と相成る ]


 烈海王を汗だくにさせる究極空手技が完成したッ!
 刃牙世界とは思えない、理論の積み重ねによる技だ。
 理合の結晶である攻めの消力(シャオリー)ですら、あまり説明になっていなかったのに。(バキ26巻 232話

 理屈より迫力ッ!
 『迫力があるから説得力もあるって寸法だ』(格闘士烈伝
 そんな刃牙世界で、理屈は通用するのかッ!?
 相手は理屈の通じないピクルと範馬だぞ。
 期待と不安をかかえつつ、次回へつづく。


 新・マッハ突きが完成した。
 むしろ、マッハ貫手だろうか?
 ウォーズマンも裸足で逃げ出す論理的な解説であった。

 ちなみにウォーズマン理論(2本のベアークロー、2倍のジャンプ、3倍の回転で12倍)だが、単純な運動エネルギーで考えると、さほど間違えていない。
 2倍高いところから落ちれば2倍の位置エネルギーだし、3倍回転すれば3倍の運動エネルギーだ。
 しかし。2本のベアークローは意味がワカらん。
 接地面積が2倍になったらエネルギーが2倍分散すると思うのだが……
 あと、超人パワー自体は変わらないし、相手も2倍の回転したら負けるよね。

 まあ、とにかく克巳が計算に強いということが証明された。
 8関節同時加速から、とくに説明もなく10関節同時加速になる。
 10関節のひとつだった背骨を分けて考え(残りは9関節)、背骨を17関節に分解した。
 残しておいた9関節と、新しく作った17関節を足すと、27関節だッ!
 ……克巳、たのむからちゃんと答え合わせをしてくれ。

 なお、餓狼伝に登場した久我重明は「20ヵ所余りの関節を駆動させる正拳突き」と言っている。(餓狼伝9巻 65話)
 関節をより細かく分解する思想は昔からあったのだ。
 また、久我さんの発言から、マッハ突きの改良版を予想する声も昔からあった。

 改良版・マッハ突きは予想されていた。
 だが、そこに指先の速度と、頭部の重さを加えるのが克巳の天才だ。
 頭を激しく振りすぎて めまいを起こさないか心配ですけど。
 あと、指先に負担がかかりすぎていて、打撃の瞬間に砕けてしまわないか心配だ。
 克巳は指先を鍛えているのだろうか?

 足指や足首を動かすということは、体全体が動いているということだ。
 脊髄が動けば、胴と腕と頭も動く。つまり体重の乗った攻撃になる。
 マッハ突きはもともと全身を動かすことで、速度だけではなく重さも兼ねそなえている打撃なのだ。
 だから、頭部を動かしても意味が少ない気がする。

 それでも頭部は体重の4.4%をしめている。(参考「最強格闘技の科学」)
 ダメ押しとしてエネルギーをおくり込むのかもしれない。
 これを超えるには、左手で右手を押し出して加速するぐらいしか無さそうだ。
 まさに、究極の打撃技が完成した、かもしれない。


 ただ、相手はピクルであり範馬一族だ。
 刃牙なら新聞紙をニギニギしているだけで、マッハ突きを超えるかもしれない。
 むしろ、すぐにパクリまくる。
 克巳の新技は刃牙にヒントを与えただけだったと、後世の歴史家に書かれそうだ。

 不遇の存在は克巳以外にもいる。
 ジャック兄さんの骨延長なんて、ヒントにもならない。意味すら見出せない。
 むしろ、巨漢は活躍できないという見本になっただけだ。
 大きいだけじゃ、ダメなんです。

 ジャック母のジェーンなんて、『バキ』全体に渡って放置だったし。
 『範馬刃牙』には出てくるのでしょうか?
 刃牙にかかわると、みんな不幸になる気がする。
 まるで、バキハラ(バキ・ハラスメント=バキのいやがらせ)だ。


 おまけ  ジェット機が出す衝撃波


 掲示板で指摘をされたのですが、この映像から推測される速度は音速ではないようです。
 飛行機雲の一種みたいな感じで、衝撃波っぽい映像がとれたようで。
 まあ、冷静になって、飛行機のサイズとカメラの動きを考えれば、音速はないですよね。
 刃牙感想を書いているときの私は、どんだけ冷静さを失っているのやら。
 情報、ありがとうございました。
by とら


2008年7月10日(32号)
第3部 第119話 完全技 (775回)

 マッハ突きを超えた。超マッハ貫手が完成だッ!
 これで、ピクルに勝てる。
 勝てるのかなぁ……

 とりあえず烈海王も技の完成を喜んでいる。
 ただ、烈自身が言っていたことだが、練習で成功しても実戦で使えるとは限らない。(116話
 次は生き試しだな。
 とりあえずアフリカ象あたりを狩るのだろうか。
 ……そういえば、サムワン海王いらいムエタイ戦士の姿を見ていない。
 そろそろ、ムエタイ狩りの時期だろうか。


 だが、今回は愚地独歩伝説から話がはじまった。
 中国にわたった独歩は試合で全勝する。
 郭海皇や劉海王といった真の実力者とは闘わなかったのだろうか。
 独歩 vs. 劉海王の頂上オヤジ対決が実現すれば面白かっただろうな。
 外伝作品・独歩漫遊記とかが、あればイイなぁ。

 日本に帰国した独歩は、サーカスから少年を買い取る。
 自分を超える才能に怯え、味方に引き入れたのだ。
 そんな伝説が中国には伝わっているらしい。

 ノリが蟷螂拳の誕生秘話と同じだ。(2巻 9話
 つまり、かなり怪しい話である。
 独歩に勝てなかったから、せめて悪い噂を流してみたのだろうか?

 むしろ、克巳の才能まで知れわたっているのが驚きである。
 さすが『世界大会用のキリ札』愚地克巳だ。(グラップラー刃牙21巻 182話)
 克巳の天才はワールドワイドである。世界のKATSUMIだ。
 そういえば世界大会は、どうなったのだろう。

 烈が初対面の克巳にケンカを売ったのも、天才であると知れわたっていたからだろう。
 ついでに、中国武術が独歩に全敗したという汚名を返上する。
 最大トーナメントに参加した烈海王は、けっこう重圧を受けていたようだ。
 負けたら郭海皇様からオシオキされそうだし。
 だから、大会が終わっても日本にとどまったのだろうか?

「父 愚地独歩がそんな甘ちゃんなら…………」
「俺もずいぶん楽できただろうに…………」


 愚地独歩は、そんな甘い人間ではない。
 だから克巳は独歩越えに苦労しているのだ。
 マッハ突きを改良しても、独歩に勝てるのかワカらない。
 どんなに速く重い攻撃も当たらなければ意味がないのだ。
 新必殺技を完成させても、克巳は慢心しない。

 いつになく謙虚な克巳を見て烈海王は9回の裏・逆転サヨナラ満塁ホームランを打たれたような微妙にキモい笑顔をするのだった。
 烈さん、あんまり笑わないから、顔の筋肉が固まっているんだよ。
 スティーヴン・セガールなみに、笑わない烈海王であった。
 謙虚かつ親思いな克巳を見てほほえましく思ったのだろうか。
 妙な空気がかもしだされている。

「あえて表現するなら―――― マサカリの重さを持つサーベル
 つまりは―――――― 存在し得ない武器を手にしたのだ」


 日本刀フェチなら「カミソリの鋭さと鉈の重さを兼ねそなえた」と言うところだが、烈は中国人であった。
 マサカリとサーベルと言うことで、中国古来の武器と西洋の武器が合わさっている。
 伝統と科学が結合した比喩ともとれる。

 中国古代だと、鉞(まさかり・エツ)は王権の象徴だ。(参考
 部下に与える場合は「専行権を示す」らしい。(三国志・関羽伝)
 子会社の社長になったぐらいの権限はある。社員を生かすも殺すも自由自在だ。
 なんか出世して社長・愚地克巳って感じになる。

 新必殺技は大いなる力を克巳に与えた。
 まさに『完全技(かんぜんぎ)』である。
 ちょっと語感が悪いけど、烈海王も大絶賛だ。
 克巳はカンペンキじゃなくて完璧となった己の手を見つめる。
 そういえば、3話の誤植「カンペンキ」完全版では直っていた。さすが完全版、カンペキだ。

 密室で二人っきりという親密な空間にひたる烈海王と愚地克巳だった。
 だが、そこに、いつのまにか異物が存在している。

「おわッッ」

 妖怪ッ!?
 じゃなかった、郭海皇だ。
 中国武術の最高峰、武の結晶、科学では説明しにくい存在の郭海皇である!
 超現役の146歳です。
 やっぱ、妖怪だァッ!!

「いつ日本へッ」
「連絡いただければ 空港まで迎えにうかがいましたものをッ」


 烈が恐縮して汗まみれだ。
 どうやら究極の技術アドバイザーとして郭海皇に声をかけていたようだ。

 本来なら、自分たちから逢いに行くのが礼儀だろう。
 なにが起きるかワカらないので、ピクルから離れたくないという事情があるのだけど。
 それでも、迎えに人を派遣するぐらいしても良い。
 烈海王ともあろう男が、礼を失したのだろうか?
 まあ、使いで人を出したんだけど、郭海皇にかわいがられて足腰立たなくなったのだろう。

 郭海皇はエラぶらず、腰の低い人のようだ。
 無礼ぎみな対応でも怒らず、自分から日本へ着ている。
 おそらく武術的な興味があったので来日したのだろう。
 いまだに武の探求をつづける姿勢が見える。
 こういう性格だから、4000年に一人の達人となったのだ。

 そんな郭海皇からすると、克巳の新マッハ突きは未完成らしい。
 烈が克巳を大絶賛する睦言まで、しっかり聞いていた。
 赤面する烈と克巳。
 うわっ。コイツら、本当にラブラブだ。
 郭海皇が乱入したのは、ほうっておくと一線を越えかねないと心配になったためかもしれない。

 体勢をたてなおし、克巳が郭海皇に質問する。
 じゃあ、老師にとっての完全技ってなんですか。

「あるもんかね」
「この世に"完全"などというものが」
「あるんだなこれが」


 完全と言ってしまうと、それ以上の進化はない。
 だから、より良くするために努力するものだ。
 しかし、郭海皇は完全があると言う。
 完全なる打撃とは?
 さっそく、試し割りで実演するのだった。

 ヒモ一本で吊り下げられた生卵が的だ。
 割ることはむずかしくない。
 だが、不安定で玄人好みの扱いにくい的である。
 難易度としては、宙を舞う紙を斬るのと同じぐらいだろうか。

 郭海皇は、無造作に近づき、右手を振った。
 パンと空気の裂ける音だけがする。
 郭海皇の体に動きは見えず、右手だけが高速で動いたのか消えた。
 そして、卵は微動だにしない。

 やがて、刃物で斬ったようなヒビが卵のカラに走り、重力に引かれて中身が落ちた。
 郭海皇は卵の中身をキャッチし、食す。
『試し割りに使用した卵は、必ず食べるように。』(板垣恵介 作者コメントより)
 食べ物は大切にッ! これも長寿の秘訣だろうか。
 紙の消費が激しい刃牙にも教えてあげたい心がけだ。

「加速のための関節など」
「いくらでも増やせる」
「百でも千でも」
「なんぼでも……」


 これが四千年の英知なのかッ!?
 烈海王ですら千年前っぽい、すごい技術だ。
 さすが海王を超えた海皇である。
 皇の力を得て、新マッハ突きは真新マッハ突きに進化できるのか!?
 次回へつづく。


 烈海王、容赦せん。
 貯金(自分の力)だけではなく、借金(他人の力)までして克巳に投資する気だ。
 ここまで克巳にいれこんでいたとは……
 烈が嫁になったら、つくすタイプですね。
 奥さまは海王だ。

 克巳のマッハ突きは、さらに進化するのだろうか。
 郭海皇の動きを見ていると右肩から先だけを動かしているように見える。
 腕の動かしかたにコツがありそうだ。
 背骨を細かく分解して加速した克巳の努力がむなしいな……

 関節を増やせるというのは、どういうことだろう。
 肩・ヒジ・手首の関節をはずして回転させるのだろうか?
 直線速度は音速以下だろうが、拳の速度だけを考えると超音速になりそうだ。
 でも、回転なんてしたら腕がネジリきれるよ。
 海皇の技は難しすぎるッッ!

 それにしても、郭海皇はなぜこの技を範馬勇次郎に使わなかったのだろう?
 単純に当てる自信が無かったのかもしれない。
 攻撃力を高めることと、当てる技術を高めることは、ちがう。
 現代の剣道は竹刀(剣)を当てる技術を高める。
 だが、刀で斬る技術は学ばない。
 この技も、攻撃力を高めるための原理を学ぶための技で、実戦には不向きなのかも。

 克巳はマッハ突きを当てる才能に恵まれているらしい。
 烈が見出した希望も、その才能だ。
 ならば、真新マッハ突きを実戦で成功させるかもしれない。

 それとも、威力は攻めの消力(シャオリー)が上なのだろうか。
 生卵のカラを斬るのはスゴいが、地面にクレーターを作れる威力とは思えない。
 勇次郎を倒すためには、最大の攻撃力が必要なのだ。
 繊細な技は通じない。
 そう考えると、ピクルにもマッハ突きは通じなさそう。

 もうひとつ、不安な点もある。
 郭海皇の理合を学ぶのに、百年かかったらどうしよう。

 しかし、郭海皇が飛行機に乗るというのが信じられない。
 人間みたいな行動もできるんだ。
 ここにいるのは本当に実体だろうか?
 いきなり道場に出現するぐらいだし、正真正銘の妖怪かも。
 もっとも、勇次郎もいきなり部屋からいなくなったりしますが。
 …………妖怪になると関節の数が増えるのだろうか?

追記 (08/7/16)
 クドイですがマッハ突きの原理をふりかえる。
 足の親指、足首、ヒザ、股関節、背骨(いっぱい)、肩、ヒジ、手首、指と加速していく技だ。

 動く歩道の上を走れば通常よりも速い速度が出る。
 つまり、土台となる足腰が加速すれば拳の速度も速くなるのだ。
 足に車輪つけてダッシュしながらパンチ撃てば、さらに加速できるぞ!

 たびたび引用していますが『最強格闘技の科学』で、突きのフォームを撮影し動きを解析している。
 いろいろな格闘技の突きは全身の関節を利用しているものらしい。
 少林寺拳法6段の人がはなつ突きは最大で8.48m/sに達する。時速にすると30.528km/hだ
 音速は約340m/sなので、ぜんぜん足りませんけど。

 この時、肩は2.93m/sで動いている。
 肩関節の動きはヒジにあらわれるので、2.93m/sが足の親指+足首+ヒザ+股関節+背骨のうみだした速度だ。
 まあ、現実の速度はこんなものなのだろう。

 マッハ突きは8関節の同時加速をおこなっている。
 でも、説明だと、足の親指から順番にやっているようにもみえるのだが?
 どっちが正しいのだろう。

 答えは、どっちも正しい。
 これまた、フォームの解析がされている。
 足指はほぼ全体重を動かす。次に動く足首は「全体重−足首から先」を動かすのだ。
 つまり、下の関節ほど動かす部分が重い。
 重いものはすぐには動かないので、早めに動かす必要がある。

 下から順番に動かしても、最終的には同時加速だ。
 各駅停車に快速が追いつくように、あとから動いてもヒジの動きはじゅうぶんに追いつく。

 う〜む、ここまで、まったくギャグが入らなかった。
 下ネタをはさむ余地もない。
 頭部の重さを拳にのせるなら、睾丸の重さも加えて見たらどうか?
 股間の振り子打法で微妙にタイミングをはずして相手の意表をつけるとか……
 郭海皇の音速拳はイチモツを高速回転させることで、速度を出しているのかもしれない。

 関節を増やせると言うことは、原理が完成しているけど、修行すれば無限に加速できるということなのだろう。
 やっぱり、永遠の未完成こそが素晴らしいのだ。

 前にマッハグルグル拳のネタを書いた。
 マッハグルグル拳は、ギャグだけど螺旋の加速はアリかもしれない。
 関節をうまく螺旋に動かすことができれば、100回だろうが1000回だろうが加速できる!
 刃牙に見られたら、速攻でパクられるのだろうな。
by とら


2008年7月17日(33号)
第3部 第120話 生への渇望 (776回)

 愚地克巳は道場でひたすら試し割をしていた。
 糸につるした生卵をマッハの貫き手で斬る。
 それが、今回の修行内容だ。

 失敗の連続で生卵が床に散乱している。
 食べ物をそまつに扱うとは……
 まだまだ郭海皇のエコ意識に負けている。
 「MOTTAINAI」の心がけは世界でみなおされていると言うのに。

 今週の作者コメント
『床に散らばった卵の全てを克巳君は、スクランブルエッグにして食べたそうな。』

 なんだ、食べたんだ。
 ロッキーなみに卵好きである。

 ところで、道場はみんな裸足で歩いている。
 そんな床に卵は落ちたのだ。
 …………門下生に水虫の人がいなければいいのだが。
 火を入れれば大丈夫なのだろうか?
 ピクルと戦う以前に、食中毒に敗北してしまいそうだ。
 まさか、これが敗北の伏線!?


 克巳は、郭海皇の見せたマッハ突きを思い出していた。
 足腰をまったく動かさずに、肩から先の関節しか使用(つか)っていない。
 だが、克巳以上の速度を出している。
 どんな魔法を使ったというのだろうか?

 郭海皇は自分の骨が細かい関節になっているイメージをもっている。
 まるで背骨のような構造だ。
 ブキミだ……
 まさに中国妖怪である。

 関節数が多くなるから、その分加速回数も増える。
 肩から先だけ動かしても十分な速度だ。
 音 速 完 成!
 そんな、むちゃな……

 しかし、常識にとらわれていたら、常識的な結果しかでない。
 常識をすてて、イメージを拡大する。
 イメージは無限なのだ。
 さっそく、克巳も自分の関節が増えるイメージをする。
 だが、簡単にできるものではない。

「イメージが現実に勝てるハズがない」

 愚地克巳、痛恨の一撃だ。
 そりゃ、『現実』には勝てない。
 この調子だと「現実的に考えたら音速なんて出るわけ無いよ」と全否定をしそうだ。
 現実は、克巳自身の首を絞めかねないぞ。

 ただ、克巳が戦おうとしている相手も、現実を超えた存在だ。
 現実には、人間が塩漬けから蘇生しないだろ。
 ミステリー作家が全員泣くぞ。
 そもそも、現実には恐竜時代に人間いないって。
 現実を持ちだしたら、外伝・ピクルからの、つまり約一年間の展開をすべて否定することになる。
 それとも、今の展開はオリバとゲバルに吹っ飛ばされて気絶した刃牙が見ている夢なのだろうか?5巻 38話


「卵は何故………………………
 殻に身を包んだのだ………………………?」


 とりあえず克巳は現実から目をそらして、卵のことを考える。
 急に哲学に目覚めたのだろうか?
 卵をみて悟りをひらいてしまいそうだ。
 とりあえず現実からは距離をとったらしい。

 卵の殻も、生物の体も生きのびるための進化だ。
 生物の進化に比べたら、武のための肉体改造などささいなモノである。
 克巳は「○○に比べたらマシ」論法で、関節を増やすことができると思いこむ。
 マッハ突きと同じく、理論を積み重ねていくことでムチャを可能とする理論だ。

 でも、生物の進化と、武の鍛錬では かかっている時間に差がある。
 四千年でも足りないですよ。
 百万年後には空手家から進化した人類とか誕生するかもしれない。
 人類同士の遺伝子差は他の動物に比べると、ずっと少ないそうだ。(参考
 空手に特化して進化すれば、かなり見た目もちがってくるだろう。

 克巳は自分の骨が細かい関節に分かれていると思いこむ。
 深く思いこむ。
 細かく。より細かくッ!
 背骨のように。蛇腹のようにッ!
 腕の骨が鳥のバケモノみたいにイメージできたとき、克巳がハジケた。

 パンッ


 ―――――…… 卵が、斬れた。


 真の新マッハ突きが完成かッ!?
 克巳がまたまた覚醒したぞ。
 独歩がちょっと目を離しているスキに、どんどん得体のしれない怪物になっていく。
 もはや、空手でも中国拳法でもないっぽい。
 郭海皇の世界に入門 ―――――妖怪化したのだろうか。
 はやく人間にもどりたい。

 理屈はともかく、無限の可能性を信じてイメージすれば、現実になると言うことなのだろう。
 背骨をひとつの関節とみなさず、17か所の関節とする。(118話
 直前に この発想をしていたから、細かい関節のイメージでさらなる加速を達成できたのだ。
 烈とやっていた修行もムダではなかった。

 大きな塊を、小さな塊の集合にかえてみる。
 技術開発の思考法TRIZにも使われる方法論だ。(参考:図解TRIZ
 ……現実に骨はわかれませんけど。
 細分化による加速数の増加は、発想の筋としてあまり間違っていないのかもしれない。
 もっと根本的な部分での問題があるので、発想の筋などささいなコトという気もするが。

 柳龍光や刃牙が使用した鞭打も、腕が液体となるイメージで打つ技だった。(バキ15巻 133話
 技術的なものと言うより「肉体の力(筋力)+イメージの力(精神力) = 破壊力」なのかもしれない。
 ピクルに体格でおとる花山がトリケラトプスなみの力を出したのも、精神力だ。(111話
 刃牙世界における精神力は、質量を感じるほどに強いらしい。

 なお、鞭打は日本オリジナルの技だ。なぜか?
 中国における『鞭(ベン)』は打撃武器だ。
 重装騎兵が盛んであった時期には、鞭のように金属製で重量のある打撃武器が有効だった。(武器と防具 中国編
 だから、ムチ(whip)のイメージを持つのは日本なのだ。
 柳も、もしかしたら音速に目覚めたかもしれない。おしいことです。

 イメージ勝負、妄想力となると、範馬刃牙がヤバい。
 なにしろ刃牙はリアルシャドーで飛びますからね。
 克巳は、卵とはッッッと思い込んで現実から離脱した。
 だが、刃牙ならもっとカンタンに、むこうの世界にいくだろう。
 せっかく新しい力を手に入れた克巳だけど、これは刃牙にパクられる。
 私には関節が100増えるより明確にイメージできるのだ。

 むしろ刃牙なら、もっと高度な妄想をやるだろう。
 骨がバネになったイメージを持つかもしれない。
 そうなると、ただ加速するだけではなく、伸びる。
 現実を超えたリアル・ズームパンチだ。
 名づけてシュールリアリズームパンチ。
 超現実的で悪夢のような攻撃である。

 生への渇望が生命の進化を生むなら、性への渇望で刃牙は進化した。
 克巳よりも数段上の使い手になるだろう。
 やはり、克巳は引き立て役にしかならないのだろうか。
 『鉄鍋のジャンR』の尾藤リュウジなみに。
 料理漫画の必勝法である料理は後出しが有利法則をブチ破る、最低の評価なんて……
 まあ、ジャンは先手必勝のパターンが多いんですが。

 と言うわけで、克巳はイメージ勝負をさけたほうがいい。
 妄想力や超常の筋力で範馬に勝つのは難しい、というかムチャだ。
 刃牙には理解できないような難しい理論で責めたてるほうがいいだろう。
 世界記録を生みだす水着のSPEEDO社に依頼して、高速グローブを開発してもらったらどうか?

 SPEEDO社は、水着以外も作っている。どれも水泳関係ですが。
 思いきって、飛躍して高速で動ける空手着でもいいや。
 締めつけがキビシいので三人がかりじゃないと着れないような感じで。
 刃牙はきっと、こういう攻撃にはついてこれないぞ。

 関節を増やせるのであれば、パンチ以外もマッハ化できる。
 マッハ蹴りだって可能だ。
 打撃以外でも、マッハ転蓮華だってできるだろう。
 マッハ散眼なら、どんな攻撃も見切る。
 最後に マッハコッカケで超音速の睾丸移動だッ! パンッ!

追記 (08/7/23)
 イメージで関節増えるなら、とっくに人間は時速100キロで走っているよ!(挨拶
 正直、頭部の重さを乗せるで止めとけば良かったんじゃないかと思いました。
 いや、ムリだって。ムリ。

 イメージ最強の理論でいったら、頭蓋骨に関節を加えてマッハ噛みつきとかできますよ。
 むしろジャック兄さんに挑戦してもらいたい。
 でも、あの人は意外と常識的だし現実を超えられないかな。
 なにしろジャック兄さんは、寝るときはパジャマ派ですからね。
 クマのヌイグルミを抱いて眠る性癖があっても、私は驚かない自信がある。ツッコムけど。

 克巳は全身関節だらけをイメージして超アルティメット至高のマッハ突きでも完成させるのだろうか?
 でも、全身を関節にしちゃったら支えが無くてタコみたいになるかもしれない。

 そもそも、マッハ突きは剛体術と逆の発想で生まれている技だ。
 つまり、関節を解放しちゃっているから、打撃の威力を自分の体で吸収している。
 あれだけバネみたいに関節を増やしたら、すごいクッションになりそうだ。
 卵を割ることには成功したものの、新マッハ突きは卵を割るだけの威力しかなかったりして。

 それでも、あらゆる技をマッハに変えるというのは面白い。
 まあ、マッハコッカケは自爆技なので控えめにするとして。

・マッハ卍固め
 猪狩が人間力を爆発させて開発する。通称・音速オクトパスホールド。
 マッハで卍固めにはいる。
 もちろん、超多関節イメージなので、本当にタコのように絡みつく。
 美形キャラにはオススメできない。

・マッハ紐切り
 残念だが、マッハになったらヒモを切る意味が無さそうだ。
 普通に攻撃したほうが強そうだもん。

・マッハ打震
 説明不要で、普通に強力な気がしてしまう。
 マッハの震動で『覚悟のススメ』に出てくる必殺技『螺旋』みたいに内臓がはじけて飛び出しそうだ。
 さすがに電子レンジというか、輻射波動みたいにはいかないと思いますが。
 ただ、医者に多関節イメージはできないよな。
 ジョジョ、俺は医者を辞めるぞ! みたいな覚悟が必要だ。

・マッハ・リチャード・フィルス
 勇次郎に股間を蹴られて、地球一のタフガイ、マッハで舞う。

・マッハ・握撃
「パンッ!」
 今のって、爆ぜた音なの?
 音速を超えた音なの?
 実はすでに音速で握っていたりして。

・マッハ・本部以蔵
 頭蓋骨を間接化することで、音速を超えた解説術ッ!
「パンッ」(花田よ、よく見ておけ。あの独歩が見出し、烈海王が鍛え、郭海皇が仕上げた、武の最終進化生物を。今の愚地克巳なら、ワシを一分以内に殺せる。)
「ぜんッぜん、聞き取れねぇッッッ!?」

 もっとも、格闘漫画やスポーツ漫画での解説は超圧縮で一気にしゃべられている気がしますけど。
 野球漫画だとバットにボールが当たってから解説はじめて、ボールを打ち返す前に解説終わる時があるもんな。
 マッハ解説は、すでに通過済みなのか?


 おまけ  生卵といえば、ロッキー マネすると、けっこうツライ目にあう
by とら


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