今月のバキ外伝 疵面(スカーフェイス)+シグルイ感想

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2005年11月19日(1号)
第11撃 海中勝負

 花山 vs. ホホジロザメ!
 ついにグラップラー刃牙ワールド初の水中戦がはじまった。
 海上では人間とサメの泳ぐスピードの差を心配している。

「オリンピックに出る奴でも人間は時速8kmぐれェでしか泳げねェんだよ……ッッ」
「鮫は普通に時速30km出せるんだぜ?」


 ウサギとカメどころの差ではない。
 でも、花山さんが逃げると思いますか?
 花山が背をむけるときは、侠客立ちを見せるときだけですよ。

 ……………普通におよいで逃げようとしていますね。
 どうしたんだ、花山!?
 やはり酸素のない水中はダメなのか。
 となると、スペックも水中に花山を引きずりこめば勝てたかもしれない。

 逃げきれないと悟って、花山はサメと向かいあう。
 向かいあってこそ花山薫だ。
 しかし、このサメはデカい。
 身長2m弱の花山が背ビレよりも小さくみえる。
 まちがいなくギネス級のデカさだ。

 とうぜんサメの口もデカい。
 まっすぐに立った花山をどんな角度にしても ひとのみできそうなサイズだ。
 花山の握撃なら水中でも有効だ。しかし、つかまないことには攻撃ができない。
 視界にはいるのは巨大な口だけ。まさに つかみどころがない相手だ。

 とっさに花山は回避運動をする。
 フィギュアスケート選手のようなスピンだ。
 プリキュア名物のスピンよけにも酷似している。
 キュアホワイトの衣装をきた花山がスピンしている状態を想像していただきたい。
 私はうっかり想像しちゃったので、みなさんにも是非していただきたいッッ!

 とりあえず水中で有効だったのか、スピンよけで攻撃をかわす。
 しかし、相手は恐竜なみにデカいので体に接触してしまう。
 サメといえば、鮫肌だ。大根おろしですられたように接触した花山の皮膚が傷つく。
 海中に血液が流れだす。サメの嗅覚が血に敏感だというのは有名な話だ。
 この血がサメに新たな活力を注ぎこむのは間違いない。
 花山薫、ますますピンチだ。

 三度せまりくるサメにたいし、花山は完全に迎え撃つかまえをみせる。
 速度だけなら対戦してきた格闘家の攻撃のほうが速いだろう。
 しかし、相手はつかみどころがない。
 口の中をつかんでも、負けっぽい。
 どこをキャッチするかが、勝負と生死のわかれ目だ。

 目前にせまるサメが喰いつく瞬間、花山は飛び上がった!
 いや、泳いだのか? とにかくサメの鼻先をつかんだ。
 ぃよっしゃッ! イケる! つかんでしまえば、こっちのモンよ。
 花山は鼻先に陣取り握力を加えていくのだった。

 しかし、いくら握撃といっても鼻先だ。
 弱点でいけば末端にあたる。サメの弱点はようしらんが。
 いくら痛くても爪をはがすだけでは、敵を倒すことはできないのだ。サメには爪ないんだけど。
 とにかく、痛みに鈍感そうなサメだけに、正中線上の急所を攻めなくてはならない。

 花山はサメの目に手を伸ばす。
 たしかに目は生物共通の弱点だが、サメに通用するのだろうか?

 パンッ

 目玉が爆ぜたところから、花山の追いこみがはじまる。
 そのまま顔の中に手を突っこんでいく。

(こいつが…脳か……?)
(小せェな……ッ)


 さりげなく精密動作性の高い花山は指先の感覚でサメの中をさぐり、脳を探しあてる。
 そして、脳に握撃ッ!
 体の基幹部分に直接攻撃だ。これはサメであってもたまらない。
 サメは完全に沈黙するのであった。

 そして、港で写真撮影をして終わる。
 ヘタすると船と同じサイズのサメをよく引っぱってきたものだ。
 今回は「老人と海」ならぬ、「侠客と海」ということで終わり。




シグルイ「第28景 変身」感想

 伊良子清玄は検校の使いとして、芸をみせるという名目で虎眼屋敷にやってきた。
 とりあえず、深夜の奇襲というわけではないようだ。
 正面からの闘いであれば、虎眼先生に勝てるものはいないだろう。
 伊良子はそれほど己に自信があるのか。または、なにか秘策を用意しているのか?

『岩本虎眼は貴人の如く』
『御簾の向こうに座していた』


 貴人というより、動物園のオリです。
 猛獣を放し飼いにするバカがいますか? 鎖につなぐか、オリに入れます。
 ついでに、下手に目を合わせないようにする配慮だろう。
 目があって反射的に、という理由で客人の首を片っ端から刎ねていたらたまらない。
 畳だって換えなくちゃいけないし、世間体もよくない。

『三間先より漂う虚ろな気配と
 衣類に付着した尿の臭いから』
『虎眼が今』
『曖昧な状態にあることを察知していた』


 さすが、元弟子である。
 目が見えなくとも伊良子には虎眼先生の状態がまるわかりだ。
 というか、曖昧な虎眼先生はデフォルトで漏れているんですか?

 弟子でもレベルが上がると平伏して虎眼先生の口元を見ることができない状態でも、曖昧かどうか判別できるのだろう。
 藤木源之助クラスになると、臭いから虎眼先生の体調や機嫌までわかるかもしれない。
 アルコールやコーヒーで尿や血の臭いは変わる。
 虎眼流の門弟は命がかかっているからイヤでもおぼえるのだろう。
 究極的(虎眼先生クラス)には刀架(刀を置く台)をなめただけで持ち出した人間がわかるようになる。

 27景の描写によれば、三間は虎眼流の射程範囲内にある。
 客人の体は真っ二つだ。


 いくの白肌に彫った絵を見せるのが、伊良子の狙いであった。
 応援にきている濃尾三天狗たちは、虎眼先生といくの事情を知らないのか、見せることを許可してしまう。
 いくを取られたことに憤怒して獣のように身を丸めて寝ちゃう虎眼先生にですよ?
 この三バカはそんなに分離・変形したいのか?
 藤木か牛股師範が居てくれれば………

 いくの背には『瞳なき竜が』『灰色の老虎を絞め殺す姿を』描いた彫り物があった。
 T・ハリスの「レッドドラゴン」みたいな趣味をしている。
 とうぜん、虎眼先生は激怒する。いや、とうぜんなのか?
 いきなり斬りつけた。
 その刃は確実に彫り物の「竜の顔」だけを斬りとっていた。

『"岩本虎眼どの突如乱心召され』
『賤機検校さまのご愛妾 いくさまに無体なふるまいに及ばれしゆえ やむなく"』
『後に清玄は役人に対しこう答えている』


 これが、伊良子の計略だ。
 いままで辻斬りをしていたのに、急に法を守る気になったらしい。
 まあ、門弟とはちがい虎眼先生は大物だからゴマかしが効かないのだろう。


 伊良子が抜刀する。
 すかさず濃尾三天狗の一号と二号が師の前にたつ。
 一瞬にして、両断された!
 虎眼先生にッ!


 見開きで門弟二人を真っ二つだ。
 ぎゃ〜〜〜〜、やっぱり この人狂っている!
 もう、大爆笑するしかない。

 この暴挙に室内の人間はみな唖然とする。そりゃ、するわなぁ。
 だから、もっと師の気配に気を配れというに。
 藤木なら、尿の臭いが変わったとか、なにかしらの予兆を捕らえられたかもしれない。

『この夜の岩本虎眼が』
『正気でも
 曖昧でもなく』
『敵であろうと味方であろうと』
『間合に入ったもの全てを斬る魔人へと変貌をとげたこと』


 いや、それもデフォルトなんじゃ……
 むしろ、虎眼先生が生き生きとしているように感じます。
 伊良子生還は予言されているが、虎眼先生の暴風を誰がどうやって止めるのだろうか?
 急いで帰ってきた藤木が虎眼先生に左腕ぶッた斬られながら、止める可能性もありそうな。

追記 (05/11/22)
 疵面の感想でサメの鼻先うんぬんと書きましたが、実は鼻先がサメの弱点だそうです。
 掲示板では、たけさんから情報をいただきました。
『熟練猟師・ダイバーは、サメに囲まれた場合、警防のようなものでサメの鼻を小突き、脱出するとのこと。
(byゴルゴ13)』
 だそうです。さいとうたかを を持ち出されるとなんか説得力があります。

 メールでは遠藤さんから情報をいただきました。
 サメについての情報があるサイトも併記していただきました。
 情報、ありがとうございます。
 うぬぅ〜、サメの弱点は鼻先であったか。

 よく考えたらサメは嗅覚が命な生物だから鼻を大事にするように、鼻先が敏感になるように進化したのかもしれない。
 人間が金玉打たれて痛いのは、そこが大事な部分だからなんだし。
 そういえば、K-1 GPで武蔵がまた金的打たれていた。
 なんで、武蔵はあんなに金的を受けてばかりなのだろう。
 やはり、人体構造的に問題があるのかもしれない。

 話脱線ついでに、今月のチャンピオンREDにのっていた『電車男』は来月分の話だったらしい。
 掲示板でたけさんが書いている話ですね。
 私は友人に聞いて知りました。詳しい経緯は作者渡辺航さんのHP、日記に書いてあります。

 常識では想像もつかないミスだったので、私は普通に読んでいました。
 てっきり、いきなり時間を飛ばして後日談風に語る倒置叙述風な演出だと思っていた。
 今までの経緯からして、電車がなにもできないのは確定だし。
 エルメス妹とのニアミスは無いというのも、今回の話でわかる。
 なるほど、今回は読者に想像させる展開か。と一人で納得していた。バカか、俺は。


 倒置叙述というと、今回のシグルイもそうだ。
 現在の展開は、第一景につながる事件になるはずだ。

(1)伊良子といくは生存する。
(2)ただし、伊良子は右足を負傷する。
(3)藤木は左腕を失う。
(4)三重は伊良子に対し激しい憎しみを持つ。(少なくとも、憎んでいると周囲が納得する理由を得る)

 上記四点がのこったノルマである。
 現在の虎眼先生がみせる勢いなら、伊良子の右足といわず全身あまなく斬り裂くことが可能だ。
 そうなると、(1)が満たせなくなるので、どこかで誰かが止めなくてはならない。
 可能性的に席を立った三重があやしい。
 命がけで、伊良子をかばうんだけど、伊良子は三重を道具のように盾にして虎眼先生を斬る。
 なぜか まきぞえで藤木が虎眼先生に左腕を落とされる。これで、話は成り立つ。

 原作の『駿河城御前試合』には、虎眼先生が死ぬシーンがある。
 漫画版の虎眼先生は激怒しすぎて脳卒中になるぐらいしか死ぬシーンが浮かばない。
 そもそも御前試合の時点で虎眼先生が死んでいると、漫画版には書いていないのだ。
 生きていても物騒すぎる存在だから、試合には出せない。そう考えればつじつまがあう。
 富士山が爆発して溶岩をあびたりしないかぎり、虎眼先生が死ぬなんて考えられない。
by とら


2005年12月19日(2号)
第12撃 父子

 表紙の花山の頬に追加の疵痕ができている。
 バキ275話に登場した新疵面へ変化したようだ。

 花山は先代である父親の七回忌をむかえるため紋付袴を装備中だ。
 背中には花山組マークが光っている。
 胸の家紋も花山組マークだ。花山組専用の紋付袴だろうか。
 アラミド繊維が織りこんであって通常の三倍ぐらい頑丈にできているかもしれない。

『五代目藤木組内 二代目花山組々長
 花山 薫(19)――――』
『五代目藤木組 若頭
 清水組々長
 清水 治郎(75)―――』
『五代目藤木組 組長
 秋田 太郎(81)――――』


 泣く子も漏らしそうな、その筋のエラい人たちがやってくる。
 清水治郎は第2撃にも登場した、花山をよく知る老人だ。
 ダテに貫禄があるワケではなく、ちゃんとエラい人だったようだ。

 ウィキペディアによれば、ヤクザ組織は上位組織の組員が、組長となって下部組織をつくるらしい。
 花山は花山組組長だけど、藤木組の中ではヒラ組員のようだ。
 まあ、若輩だし。未成年だし。
 清水は藤木組の若頭なので、No.2のようだ。
 で、頂点に立つのが秋田書店の支配者・秋田太郎か? 冗談です。

 田中KENと第2撃で入門した上田輝光が汗を流して挨拶をしている。
 めったに見ることができないおエラいさんに緊張しているようだ。
 あと、秋田組長のうしろに控える人がヤバい。
 花山に負けないぐらい疵だらけだ。どこから輸入したフランケンシュタインの怪物ですか?

 そんな人たちに囲まれながら花山は墓前に手を合わせた。
 普段は巨体と疵だらけの容貌で周囲から浮きがちな花山だが、今は周囲となじんでいる。
 みんな似たものどおしの疵面だ。
 父の墓前で祈りながら花山は六年前を回想する。


『五代目藤木組 舎弟頭 花山組々長
 花山 景三(41)――――――』


 家から出ようとする先代・花山景三を、妻が止めようとしていた。
 平手を受けても怯まず割りこみ、文字通り体を張っている。
 理由はわからんが、この行動は烈女のものだ。
 のちに癌におかされながらも花山薫を育てあげる人である。
 健康時は、さらに強さに磨きが かかっているようだ。

 じゃまをする妻を排除しようと、花山景三が手を振りあげる。
 だが、手は花山薫(13)によって止められた。
 まだ疵はついていないが、花山薫の握力は十歳(一説に五歳。アニメ 7話「握撃」を参照)時点で大人を超えていた。
 十三歳の花山薫であれば、ヤクザ組長の腕を「ミシミシ」いわせることも十分可能だ。

 だが、相手は気負いの稼業であるヤクザ組長・花山景三だ。
 痛がって泣いたり騒いだりはできない。

「半端なマネするな」
「やるンなら本気でやれ」

 パンッ

 握撃が炸裂だァッ〜〜〜!!

 握撃の記念すべき最初の犠牲者は、花山の実父だった。
 だが、気負う組長は痛がって泣いたり騒いだりしない。
 柳龍光よりもずっと肝がすわっている。
 ちなみに範馬一族はサド度もマゾ度も飛びぬけている変態一族だ。地球人と同等に論じるべきではない。

 そのまま実戦に出せる破壊力を左腕に刻みつけられた。
 今すぐ虎眼流で通用しそうなぐらいの握力だ。
 成長した我が子に感動しつつ、花山景三は家をでていく。
 組同士が抗争中なのだ。行く先は戦場といってもいい。
 たくましすぎるほどに成長した我が子・薫に後を託し、花山景三は去っていく。

『母は知っていた この時父が生きて再び帰らぬ事を………………』

 そして花山薫は父の仇を討つため侠客立ちを背負うこととなるのだった。
 防御をしないで痛みに耐える闘いかたは花山のお家芸らしい。
 花山薫も父の気負いを受けついで、痛くても無言で闘っている。
 でも、松本梢江に石を投げつけられたときは、イロイロな意味で痛かったのだろう。




シグルイ「第29景 盲竜」感想

『魔剣により 重傷を負ったいくは』
『自分はすでに死していて
 地獄の光景を見ているのではと疑いはじめた』


 まさに地獄絵図だ。虎眼先生 大爆発である。
 正確にいえば、虎眼先生が自分の弟子を爆発・内臓四散させているのだが。
 思う存分に(弟子の)臓物をぶちまけ、伊良子を嗅覚面からも追いつめていた。
 魔人状態の虎眼先生が作戦を考えることのできるのか不明だ。
 本能で行動したら、結果が勝手に付いてきているのかもしれない。

 さすがに相手がヤバすぎるので伊良子は跳躍していったん外へでる。
 なんかイロイロと作戦を考えてきたようだが、単純な戦力の差で負けているっぽい。
 伊良子清玄 生涯二度目ぐらいの不覚であった。

 逃げる伊良子の着地地点を狙って虎眼先生が小刀を投げつける。
 まず、足をつぶし、のちにジックリ攻める予定だろう。
 三重に精をつけさせるための食材だが、今宵は二足獣の肝か?
 狂人とは思えない合理的な行動だ。
 一流の剣士ともなると、考えずとも体が勝手に動いて近くにいる人を斬殺できるのだ。たぶん。

 だが、伊良子は剣を杖がわりに突きたて、刀を踏まずよける。
 盲目とは思えないみごとな回避だ。
 伊良子清玄もやはり危険な怪物だった。
 その危機回避能力をなぜ いく籠絡時に発揮できなかったのだろうか。

 どうも伊良子は一度痛い目にあわないと開眼できない人のようだ。
 まるでサイヤ人か、カイジだ。一回死にかけると強くなる。
 本当に危険を嗅ぎとれるなら、虎眼道場に入門したりしない。
 ちゃんと城下町で情報収集をすれば、当主から門弟まで まんべんなく死狂っていることがワカったはずだ。

 いくが明かりを消し、月が曇ったことにより、闇が濃くなった。
 だが虎眼先生の瞳は猫科動物のごとく拡大し、闇でもまったく問題ない。
 山崎九郎右衛門も瞳孔を拡大させていた。
 虎眼流には瞳を拡大させる秘術があるのだろうか。
 人体を究極以上に鍛えあげる虎眼流は、闇夜の戦闘ができるように眼も鍛えているのかもしれない。
 となると、藤木源之助も瞳を拡大できるのだろう。やったら三重に嫌われそうだけど。

 大虎のごとき殺気を放つ岩本虎眼にたいし、伊良子清玄は盲竜となって隙をみせない。
 人外の戦いもここまで極まったか。
 そして、絶体絶命のピンチで、伊良子はさらなる覚醒を果たしたようだ。
 いくが涙を流すほどに構えが決まっている。
 これこそ無明逆流れの原型であろう。

 虎眼先生も本気の証で、流れ星の構えに入る。
 同じ相手に二度放ったことのない必殺剣だ。
 一回でいいから柳生宗矩に思いっきり放ちたいんだろうな。

 伝統の必殺剣と、新星の必殺剣が真っ向勝負だ。
 どちらの剣がより速く どちらの剣がより遠くまで届くのか?
 最大奥義が爆発寸前のまま、次回へつづく!

 もしかすると伊良子の覚醒によって、普通に虎眼先生が負けるかもしれない。
 しかし、いくら覚醒しようと魔人には勝てないだろう。勝てる気がしない。
 やはり三重がでてきて油断をするのだろうか。

 虎眼先生といっても人の子だ(それ以前に剣鬼だけど)。
「藤木の方が剣はまともだが、三重はどうやら伊良子に夢中らしいから、やはり、伊良子の方に決めるかな」
 などと、原作では親らしい思いやりをみせている。
 漫画版では、それ以前に「種」なんだけど。

 だめだ、やはり伊良子が虎眼先生に勝てるとは思えない。
 第一景は無かったことにしてください。というオチが待っていたりして。
by とら


2006年1月19日(3号)
第13撃 忠義

 表紙はオムツを使用(つか)っていたころの花山薫と 家族の写真だ。
 花山はバルタン星人のようなハサミをもつ怪獣の人形をもっている。
 足元には右腕と腰の部分で分解されたウルトラマンっぽい人形がころがっていた。

 幼児期の花山は、正義の味方よりも怪獣にあこがれていたのかもしれない。
 もしかすると、ハサミ(チョキ)でグーに勝ちたいという一念が花山の超握力を完成させたのかもしれない。
 花山が虎眼流を学んでいたら、本当に手がつけられない魔人が完成していたところだ。


 写真は五代目藤木組 組長 秋田太郎が撮影したそうだ。
 掲示板でKKさんが、秋田組長を「サメ編にでてた老人」と推察していた。
 実際に そのとおりだったようだ。花山を来週あたりどうかと、また誘っている。

 名探偵ポワロが旅行に行くと殺人事件が発生するように、花山が出かけると怪物が発生しそうだ。
 石を投げつけてスネを蹴ってくる女が出てきますよ。
 次はシャチか 巨大イカに襲われそうな予感がする。


 海の生き物のかわりに出てきたのは「サカク宅急便」の青年だった。
 家に入ろうとしたところでヤクザにボディーチェックをされる。
 ちなみに、私は警察官にボディーチェックをされた経験がある。
 ポケットの中身を全部出すようにいわれるなど、かなり徹底したものだった。
 疵面のヤクザは、ポケットの中身を全部出せと言わない。
 花山父の七回忌で盛り上がっているから、ちょっと気がゆるんでいるのだろうか。

 宅急便の青年は荷物をわたすと、トイレを貸してくれという。
 普通、ヤクザの家からは一刻も早く逃げだしたはずだ。
 あえて とどまろうとするところが怪しい。
 あやしげな青年は家のなかに上がりこんでいくのだった。


 花山ほどの力があれば、もっとワガママに行動できる。
 清水治郎(75)は語る。
 だが、花山は忠義をつらぬく。

「本当の忠義は従うじゃなく慕う気持ちから来るモンだ」

 花山には花山なりに 秋田組長を慕っているらしい。
 秋田組長の最大の武器は、花山をも慕わせてしまう人間力なのだろうか。
 強大な力をもちながら、使わない。
 徹底して素手にこだわるのも花山の美学だ。
 ワイルドターキーへの愛着も、たぶん美学だろう。
 きっとフンドシも美学だ。

 花山の生き方は範馬勇次郎と対照的だ。
 おのれのワガママを通すために、勇次郎は最強の力をつかっている。
 もともと強いけど鍛錬も欠かさず、さらなる高みを目指していて、作者にすら制御不能だ。
 花山はトレーニングを拒否し、あえて組織に身を置いている。
 禁欲的な生き方が花山の美学なのだろう。


 そこへ迷ったといいながら宅急便の青年がやってくる。
 青年の胸ポケットにささるボールペンには隠しカメラがしこんであった。
 送られてくる映像を見るのは、源王会のえらそうな人だ。
 性別不明(たぶん男)で女言葉をつかう、ぽっちゃり型である。
 ピアスやらトゲ(?)をつけた不気味な容貌だ。

 源王会は花山の父を殺した組織だ。
 ふたたびヤクザ間で抗争勃発なのか?
 今までにないタイプの敵が登場して、次回へつづく。

 とりあえず、ボディーチェックではポケットに入っているものを全部出させるべきだ。
 ボールペンに偽装していても、重さなどであやしいとワカるだろう。



シグルイ「第30景 流れ星」感想


 虎眼先生のテンションがどんどん上がっている。
 一閃で伊良子といくの首を同時に刎ねとばせるほどのタメだ。
 濃尾三天狗を一瞬で肉塊にかえた濃尾無双 岩本虎眼である。一撃二殺ぐらいは鯉飯前だ。

 今回は、虎眼先生の生中継と、藤木源之助+伊良子清玄の回想という三次元中継だ。
 まずは藤木の回想がはじまる。
 時間は伊良子仕置きから半月後だ。
 藤木は虎眼先生の部屋で畳をふいていた。
 液体がこぼれている。虎眼先生が粗相をしたのだろうか。

 この場合の粗相は、失禁ではない。
 三重のために 四足獣を捕らえて部屋のなかで解体したのだ。
 そりゃあ、もう、血まみれの血だらけだ。
 親心とはいえ、心をむしばむだろう。
 ついでに、興津三十郎の忠誠度が下がります。従うんじゃない、慕うんだ!

 藤木が掃除をしている後ろでは虎眼先生が徳利でたわむれていた。
 虎眼先生は、とりあえず徳利を口に入れている。おもいっきり幼児化しています。
 興津三十郎の忠誠度がまた下がりました。

 すると鋭い音が響く。
 藤木がふりかえると、虎眼先生が徳利を渡してくれた。
 子供がいったん口に入れたものを渡してくる行動ににている。
 徳利の腹には穴が開いていた。
 ここで藤木がもつ「剣士の本能」がビビっと反応する。

 廊下で山崎九郎右衛門に声をかけられても藤木は素通りしてしまう。
 山崎の出番はこれだけなのだが、とてもプリティーだった。
 さびしそうな無表情になんとも言えない風情がある。

 ところで伊良子も内弟子だろうから、山崎とも同室だったのだろう。
 山崎と伊良子って、なんとなく相性が最悪っぽい。
 伊良子の股間を焼こうとするとき、ものすごく嬉しそうだったし。

『師 虎眼より授かった徳利の穴』

 そう、「授かった」のだ。
 伊良子仕置きで、藤木は木刀のつかみを見せた。
 虎眼先生は独力でつかみにたどり着いた藤木の才能を認めたのだろう。
 脳が曖昧で尿のキレも曖昧だが、剣鬼・岩本虎眼は正確に実力を見極める。
 徳利をわたしたのは藤木にたいする、卒業試験であろうか。

 徳利を普通に叩いても上部がくだけるだけで、穴はあかない。
 穴を開けるには、さらなる高速が必要だ。
 藤木は悩みに悩みぬいた末、必殺剣「流れ星」の極意を悟るのだった。

『この翌日 稽古場に現れた源之助を一目見るなり』
『師範 牛股は"大目録術許し"(免許皆伝)を与えている』


 「流れ星」を会得したことで、雰囲気まで変わったのだろう。
 でも、伊良子仕置きで藤木も怪物になったという話は、どうなった?
 人間に戻ったのか?

 「シグルイ 四巻」で、藤木は牢人者に流れ星裏拳を使っている。
 虎眼先生にもらった徳利を他に見つからないように埋めた藤木にしては、ちょっと不用意な行動だ。
 だが、もしかするとわざと見せたのかもしれない。
 有望な仲間たちにヒントを与えることで、さらなる成長を期待していた可能性がある。
 虎眼流では、師から技を盗んで自分のものにするという習慣が息づいているのだろうか。


 いっぽう伊良子も同時刻に偶然「流れ星」の理合をつかんだ。
 源之助は虎眼先生からヒントをもらい、考えて答えにたどりついた。
 伊良子は最後に見た光景と、偶然から「流れ星」の理合に気がつく。
 たどりついた場所は同じだが、過程がちがう。
 過程の差が二人の明暗をわけることになるのだろうか。


 そして、現在!
 無敵の虎眼先生だが、今回は技のネタが伊良子に割れている。
 伊良子も、この土壇場でさらなる進化をとげて無明逆流れを完成させるかもしれない。

 次回、ついに決着がつくらしい。
 おそらく「シグルイ」中盤のクライマックスだ。
 第一話につながる伏線が明らかになるだろう。

 果たして、藤木は間に合うのか?
 虎眼先生の「流れ星」は成功するのか?
 REDが月刊誌であることが、とても恨めしい。

 ところで、おそるべき指力の影響か、虎眼先生の左指まで六本なんですが…
 ………忘れましょう。
by とら


2006年2月18日(4号)
第14撃 襲撃

 羽柴トレーニングジムに花山が出現した。
 どうも、街中の小さなジムのようだ。
 小さいから健康目的のスポーツジムという感じはしない。ボクシングジムだろうか。

 花山はトレーニングをしない。だから、部下が利用している関係で知っていると思われる。
 それとも、スパーリング限定で胸を貸したりするのだろうか?
 花山がボクシングをこころざしていれば、日本人初のヘビー級王者になれたかもしれない。
 なんて感じで、伝説がまたひとつ生まれるのだろう。

 花山はジムの親父さんと知り合いのようだ。
 地域密着型ヤクザである。
 花山は便所をかりにきたという。
 もしかすると普通のトイレでは花山に太刀打ちできないのかもしれない。

 ヤクザが客商売の店に立ちよると、営業妨害になりかねない。
 便所をかりるにしても、主婦とかが入ってこない場所を選んだ 花山の粋な はからいだろう。
 でも、花山が八百屋の前をとおると店の人に声をかけられ、お土産までもらっちゃう。
 実は、かなり地域の人に愛されているようだ。
 そのうちケンタッキーのカーネルサンダース人形のように、カオルハナヤマ人形が店頭に並ぶかもしれない。


 地域に愛される花山にしのびよる影があった。
 服役を前提にして会話をしている若集三人だ。
 こいつらは銃を所持している。
 標的は間違いなく花山だろう。実は松本梢江狙いだったら、読者的にこまってしまう。

 目立つ人は狙われやすい。
 電柱の影にこっそり潜むことのできるサイズじゃないし。
 というワケで、車にのって潜む三人の刺客が、あっさり花山を発見した。
 三人は「来たぞ」と言っている。
 つまり、花山の行動ルートを調べていて、待ち伏せしていたのだろう。
 かなり計画的に花山暗殺をたくらんでいるようだ。

「花山ァァッ!!!」

 向けられたのはトカレフらしき銃だった。しかも二丁ある。
 1mもない至近距離だ。素人が撃っても当たるだろう。
 躊躇なく全弾撃ちこむ。十発以上の銃声が商店街に響きわたった。

 貫通力の高いトカレフを人の多いところで発砲する。
 跳弾や貫通などで関係のない人が巻きこまれるかもしれない。
 手段を選ばない、仁義なき兇徒だ。
 花山に撃ちこむだけ撃ちこむと、三人は車を急発進して逃げだした。

 撃たれた花山は、ほとんど出血していなかった。……なぜ?
 血を吐きすてているので、ダメージはあるらしい。しかし、何事もなく立っている。
 これぞ現代版・侠客立ちの姿だ。

 不意打ちに加え街中での発砲と 無道のふるまいをするチンピラに花山の怒りが爆発か。
 メガネを投げすて、戦闘モードにはいった。
 そして、花山は猛然と車を追いかける! 走って!
 いや、組長ッ、撃たれて平気なのもメチャクチャだが、走って車を追いかけるのも異常だ。
 ムリだろ、そりゃ。電車にのっている梢江に走って先回りした範馬刃牙でもムリだ。

 花山は刃牙以上の走力を持っているのだろうか。
 手の握力が怪物なみだから、足指の握力もすごいのかもしれない。
 で、足指の力を利用したダッシュ力で車に追いつくのか?
 それに、握力=瞬発力がたしかなら、短距離走が得意という可能性もある。

 走るのは置いといて、銃弾を受けても平気すぎだ。
 ぼ、防弾チョッキとか着ていたのかなー?
 花山の非武装にたいするこだわりは有名だ。
 防弾チョッキは武器じゃなくて防具だから、装備しても問題ないのだろうか。

 それとも、花山自身の耐久力がトカレフを上まわったのだろうか。
 範馬一族の打撃なら、銃弾よりも威力が高そうだ。
 刃牙とガチンコファイトをした花山であれば、あるいは……。
 いや、やっぱりムリだろう。

 いかにも下っ端っぽいチンピラが襲撃者だった。
 コイツらは前回でてきたエラそうな人が花山の実力をはかるために送り込んだ捨て石だろう。
 利用されているだけのチンピラたちも、癒しの鉄拳でもある花山パンチで改心するかもしれない。
 その場合、逆に源王会に殺される可能性も出てくる。
 どっちに転んでも、良いこと無さそうだ。

シグルイ「第31景 死閃」感想


 いよいよ運命の時がやってきた。
 すでに完結している原作がある以上、避けられないのが登場人物たちの死だ。
 板垣版・餓狼伝のように、ちがう意味でキャラ(主に梶原)を殺すこともあるが、それは例外とする。
 逃れられぬ死が、剣鬼・岩本虎眼に迫ろうとしているッ!

 虎眼先生の秘剣「流れ星」と、伊良子清玄の魔剣「無明逆流れ(初期型)」が激突する。
 伊良子は以前「流れ星」を体感している。しかし、虎眼先生は「無明逆流れ」を知らない。
 一流同士の戦いでは手の内を知っているかどうかが、勝敗に大きく影響する。

 前に「第二十七景 月光」感想で書いたが、「流れ星(星流れ)」の弱点は単調な軌道にあると思う。
 横薙ぎ一閃の攻撃しかないので、自分の右側に剣を立てる構えをとれば、剣で防ぐのはたやすい。
 もちろん、その構えに対する対応策もあるだろう。
 だが、攻撃の軌道が単純なのは大きな弱点だ。

 たいして虎眼先生は伊良子の剣を知らない。
 もしかすると、牛股師範から死体の斬られかたを聞いているかもしれない。
 いや、あいにく普段の虎眼先生はあいまいだ。
 むずかしい話を理解できるとは思えない。

 ならば、覚醒した虎眼先生なら、どうか?
 いや、覚醒した虎眼先生は話を聞くまえにツボを頭に落とす。
 とても話を聞いてくれる状況ではない。
 どっちに転んでも手詰まりだ。やはり、虎眼流に未来はないのか?

 そういえば 牛股師範に落としたツボって、なんのため物だったのだろう。
 液体しか入っていないので、花瓶ではない。
 なんの意味もなく、相当量の液体を入れたツボを部屋に置くのだろうか。
 あまり考えると、「虎眼先生のおまる」という結論が出そうなので、ここで止めよう。
 なんかオチの すべてが尿になる。


 「流れ星」を知っている伊良子は、体を倒しながら斬りあげた。
 横の軌道をうまくかわしつつ、攻撃したのだ。
 涼之介、宗像、山崎、丸子。虎眼流 高弟たちの顔を割った魔剣が虎眼先生を襲う!

 勝利を確信した伊良子だったが、虎眼先生が倒れる音が聞こえない。
 曖昧 → 覚醒 → 魔人ときて、虎眼第四形態が発動したのか!? と伊良子は恐怖する。
 門下時代から、伊良子には虎眼先生にたいし失礼な言動があった。
 それでも、虎眼先生への恐怖が染みついていたのであろうか。

 ちょっとしたきっかけで人は恐慌状態におちいるのだ。
 心のどこかで、虎眼先生は地球外生物だと疑っているのかもしれない。


 這って逃げようとする伊良子の背には涼之介の亡霊がのっかる。
 なぜ涼之介なのか?
 四人いっぺんにのっかるには、伊良子の背が小さすぎるからかもしれない。
 それならイチバン重そうな丸子さんが乗っかればいいと思うのだが。
 それとも、子供を手にかけた罪悪感が伊良子の体を重くしているのだろうか。

 かつて藤木源之助に「お前は這え」「俺は翔ぶ」と言っていた伊良子が必死になって這おうとする。
 非常に因果な図だ。
 たぶん、同時刻の藤木は翔ぶように走っているのだろう。


 そして、混乱した場にトドメを刺すように三重が白無垢で登場する。
 心が壊れていると言われていた三重だった。
 血の海でも恐れずに入ってくる彼女は、やっぱり壊れているようだ。

 伊良子がきたと知ってのおめしかえだ。
 伊良子に嫁入りする気まんまんらしい。
 三重は血の海ということを どれだけ認識しているのだろうか。
 四足獣の肝をあれほど嫌がっていたのに、人間の腸はまったく問題ないらしい。
 やっぱり、心が壊れたままのようだ。


 三重の愛という名の援護射撃だ。
 これが効いたのか伊良子が息を吹きかえす。
 仕置きのときに結婚式の夢を見ていただけに、白無垢で闘志が萌えあがったのか。
 いや、見えていないんだけど、ニオイとかそんなんで。

 虎眼先生がきゅうに落ちついちゃったのは、脳が欠けたからだろうか。
 「前頭葉は、脳の中でももっとも人間らしい知的活動をつかさどっているといわれている部分」だそうだ。
 今回の場合、野獣みたいな状態になった人が、人間に戻るというのも不思議な気もする。
 虎眼先生は、さまざまな感情が爆発して脳が暴走していたのかもしれない。
 負荷を減らして、ちょっと落ちつきましたか。

 で、うどん玉の如く大脳がこぼれる。
 血の海で平然と三つ指ついた三重が、いまさら大脳でビビるのか。
 やっぱり、肉親の臓物(というか脳)はショッキングだったようだ。
 これでマイナスにマイナスをかけた状態になって、三重は第三形態「魔人」モードになるのか?
 心という器は、ひとたび ひびが入れば二度と戻りませぬ。

 個人的には剣士の命である指が切断されたシーンもショッキングだった。
 絵や楽器を趣味にする人が手をケガすると精神的にすごいダメージを受けるだろう。
 剣士も指を失うのは(すでに死に体であっても)、つらいハズだ。

 それにしても、念入りに虎眼先生を破壊している。
 虎眼先生は原作者の南条先生がモデルらしい。しかし、この仕打ちだ。
 無残すぎる。

 逆に考えると、虎眼先生を殺すことに苦労している感じがする。
 これだけダメ押ししないと殺せないのだ。
 顔を半分斬りました。
 ナニ言ってんですか、脳なんて飾りですよ。
 虎眼先生は 死にません。

 心臓付近を刺しました。
 武士は刺されたぐらいでは死にません。
 臓物がこぼれてからが、本当の勝負だ。
 切腹ってのは一世一代の晴れ舞台ですよ!

 だが、不死身の虎眼先生も剣士の生命線である右指を五本斬られて倒れた。
 岩本虎眼を倒すには、ここまでしないとダメなのだ。
 脳と心臓と指のすべてを封じて、岩本虎眼は生物として死ねる。
 いっそうのこと、脳を失いながらも生きつづけて欲しかったのだが、それはムチャか。


 ところで、藤木源之助の到着はまだか?
 まだ伏線に「伊良子の跛足」「藤木の隻腕」が残っている。
 藤木が駆けつけて、さらなる無残が展開されるのだろうか。
 まさに濃尾無双・虎眼流の壊滅だ。

 ところで、虎眼先生の瞳は、ひとたび大きくなれば二度と戻りませぬか。
 不気味な容貌のままとは、不憫な。
by とら


2006年3月18日(5号)
第15撃 追撃

 人間が生みだした鋼鉄の獣・自動車を花山が追う。
 つうか、ムリだろう。追いつけない。
 100mを10秒で走っても、時速36kmだ。車はよゆうで時速100kmくらい出せるぞ。
 魚と泳ぎを比べるようなものだ。

「おッ 追いつかれるぞ」
「冗談だろ クソッ」


 すごい歩幅で走って、追いつこうとしている。
 花山さん、あなたはいつから「BF団 十傑衆」メンバーになったんですか(参考:解説サイトDVD)。
 握撃の花山薫。たしかに通り名がピッタリだ。欠員補充にどうですか? > BF団

 で、花山が疾走(はし)ります。
 花山の弱点はスピードが遅いことだ。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
 めちゃめちゃ速いじゃないですか。
 さすがに、車には追いつけないだろうけど迫力がちがう。
 板垣恵介の格闘士烈伝いわく『迫力があるから説得力もあるっていう寸法だった。』
 つまり、迫力があると速く見えるのだ!
(力説)

 花山の迫力に負けたのか、ヒットマンたちは道を曲がって逃げだす。
 曲がろうとするとスピードが落ちる。おろかな行動だ。
 花山にビビって冷静さを失ったのだろう。
 戦場では、ビビった者が死ぬんだ、覚えておけ!

 道路を曲がった車にたいし、花山は建物内のスーパーを突っきってショートカットする。
 お客さんを飛びこえて疾走する。
 160キロを超える体重で飛び技はあり得ぬとたかをくくった自分に腹が立つとばかりに、軽やかだ。
 リアル超人な花山の姿に、お子さまも惚れてしまう勢いだ。

 残念ながら、都合よく出口があるわけではない。
 なければ作る。花山は容赦なく壁に体当たりする。
 壁をぶちやぶって車の前に出た! ハネられた!

 道路に飛び出しちゃアブナいって教わらなかったのか?
 しかし、花山の場合、車にハネられても大丈夫らしい。
 まったく問題ない。むしろ、車のほうがへこむ。
 かつて烈海王は走ってきたバイクを片手で止めて破壊したことがある。
 死刑囚と闘えるレベルの格闘者は、交通事故じゃ死なないらしい。せめて飛行機をもってこい。

 宙を舞いながら、花山はドアをつかんだ。
 これはサメと闘ったときの戦法を応用したものだろうか。
 だが、残念ながらドアのほうが持たなかった。
 ドアが取れてしまい、花山は路上にとりのこされる。
 銃弾もちゃんと効いていたようで、いまごろ出血しはじめていた。


 一部始終を13話ラストに登場した源王会のヤクザが見ていた。
 ちなみに、この人は直立するレッサーパンダを飼っている。
 やはり この男の陰謀だったようだ。
 今後も花山に刺客がつぎつぎと襲いかかってきそうだ。

 とりあえずは、レッサーパンダの中に入っている人が刺客だろうか。
 きぐるみ刺客といえば丹波文七だ。
 親戚の丹波文八がやってくるのか?


シグルイ「第32景 地獄極楽」感想


 魔界と化した岩本家に、藤木源之助が到着する。
 だが、すべては遅いのだ。遅すぎたのだ。
 そして、藤木が左腕を斬られる予定に………

 ………伊良子清玄は帰ったようです。
 って、まだ じらされるのかよッッッ!
 ああ、もう、はやく介錯してくれ。


 帰ってみたら、肉塊と血の海の中に三重さんが血染めの白無垢を着て座っているんです。
 ドッキリだとしても、この状況を作るのはむずかしい。
 ナニがどうなるとコレになるんだ? という感じの不可解・不可能 殺人現場という感じだ。
 しかし、難易度の高い地獄絵図をみても藤木の鼓動は乱れないのだった。
 ならば いつ乱れるのだ?

 藤木は縁側に伏した師を発見した。
 鼓動が乱れまくっているようだ。
 うむぅ、藤木にとって 虎眼先生はだれよりも(三重より)何よりも大切な人だったのだろう。

「倉田英之のDVドローム」で『前回はなんと虎眼先生のフェイス/オフ場面のお隣という絶好なる配置をいただき、オソレオオキこと山のごとし、です。なんか転校生がクラス一の美少女の隣の席に、みたいな気分。』とある。

 今の藤木は、放課後のだれもいない教室で学校一の美少女(レベルアップ)が倒れているのを見つけて、介抱している気分だ。
 しかし、脳がうどん玉のように こぼれたあとだから、中身が空っぽです。
 濃尾一の美少女であっても、これは助からない。

 だが、藤木の熱き忠誠心は虎眼先生の死を受けいれない。
 マウス・トゥ・マウスで気道に詰まった血泡を吸い出す。
 前回、虎眼先生は血をノドにつまらせていた。
 藤木はそれを知るはずもない。しかし、とっさにマウス・トゥ・マウスをするのは剣士としての本能であろうか。
 または、愛だろうか?
 だが、日本一の美少女に匹敵する岩本虎眼はかえってこないのだ。
 日本にとって重大な損失である。株価にも影響が出るだろう。


 今回の三重さんですが、心という器は ひとたび ひびが入れば二度目で割れる、ようだ。
 治るとか治らないとか以前に、砕けました。ちょっと再起不能っぽい。
 でも、第一景でふつうに会話していた。驚異の回復をするのだろうか。
 虎眼先生の娘だから、同じような経験があって耐性があるのかもしれない。

 そして、地獄の亡者もショック死しそうな現場にやってきた役人・大沼官兵衛もかなりの精神ダメージを受けただろう。
 大沼は、まぶたを閉じると惨劇がうかび眠ることができなくなったかもしれない。
 あるいは いっさいの肉を受けつけなくなっただろうか。
 三重以上に再起不能になりそうな予感がする。

 いっぽう、屋根の上にいる虎眼先生の顔半分は、夜にもかかわらずカラスに喰われるのだった。
 虎眼先生を喰ったカラスがまともでいられるワケがない。
 夜に活動している時点で、すでに異常だ。
 突然変異をおこして足が増える。三本足の八咫烏になったりして。(八咫烏 参考:ウィキペディア
 

 虎眼先生をほふった伊良子清玄は駿府城にて駿河大納言 徳川忠長に目通りする。
 『駿河城御前試合』の主催者であり、作品の陰の主役ともいわれる駿河大納言忠長が ついに伊良子と接触した。
 野心高き男・伊良子と無残を愛する男・忠長がまじわる。
 これは酸性洗剤と塩素系洗剤がまじわるより――――、漫$画太郎とピエール瀧がまじわるよりキケンだ!
 なかったことにしてください。

 伊良子の剣技で血の花が咲き、忠長の鼻腔が開いて、契約完了といったところか。
 これより先は、さらなる無残が待ちかまえていそうだ。
 なにしろ、藤木と伊良子の負傷は決定事項である。必ずおきる事象だ。
 今後もまだまだ無残に血の雨がふる。

 虎眼先生は死んでしまったのだが、今後も出てくる可能性がある。
 今回見せた藤木の忠義は、どこからくるのか?
 農家出身だった藤木はどうやって武士になったのか?
 そのあたりの謎が残っているのだ。
 回想中に回想するという回想スパイラルを起こす可能性はあるが、元気に剣を振りまわす虎眼先生を見ることができるのなら、それで良い。

 それと、牛股師範のこともだれか心配してあげてください。
by とら


2006年4月19日(6号)
第16撃 暗殺者

 今回は花山が出てこない。
 『範馬刃牙』に刃牙が出てこなくても「そんな事もあるか」ですむ。バキ時代でなれたし。
 しかし、疵面に花山薫が出てこないのは、カレーのかかっていないカレーライスのようなものだ。
 福神漬けだけでご飯を喰えと申されるか。

 話は六年前にさかのぼる。
 時間的には12話回想の後だ。
 花山薫の父・花山景三(41)が源王会と戦っている。
 銃弾が飛びかい、ポン刀がきらめくようすは、戦いというより戦争だ。

 七代目源王会50423名 vs. 五代目藤木組 8106名

 戦闘動員数が戦国時代の合戦なみだ。
 源王会と藤木組の人数差が6.2倍である。
 人数の差は、そのまま戦力の差だ。藤木組は圧倒的な劣勢らしい。

 松村劭『戦争学』で、戦史605例の勝敗を調べている。
 理論的戦闘力の優勢側の勝利は56%で、劣勢側の勝利は36%らしい(のこりは引き分け)。
 当たり前だけど 戦力が少ないほうが負ける確率が高い。

 だが、藤木組には花山景三がいる!
 組長でありながら、自ら先陣をきる剛の者だ。
 ちなみに左腕は息子の薫に破壊されています。

 花山の活躍により七代目源王会会長は討ちとられる。
 だが、花山も左胸に一発喰らっていた。
 12話で、花山は生きて再び帰らぬと書かれていた。
 やはり、この直後に亡くなったのだろうか。


 時間は現在にもどる。
 藤木組組長である秋田は源王会関係者らしき人物と会談していた。
 八代目源王会会長となった男についての警告だ。
 例の背の低いオカマ言葉の男が八代目だったらしい。
 見かけのヘッポコさとは逆に、実はキケンな男だったのだ。

 まず、指を鳴らすだけで人を気絶させる能力をもっている。
 催眠術だろうか?
 ドリアンよりもずっと強力な術のようだ。
 そして片手で人間の顔を握りつぶして破壊する。

「地上最強の暗殺者(テロリスト)なのだよ……ッッ」

 そう言われるほどの破壊力だ。
 握力だけでも花山と互角か!?
 不気味な八代目が藤木組にせまって来るのであった。


シグルイ「第33景 悪童」感想


 今回のREDオマケはシグルイクリアファイルだ!
 山口先生も『クリアファイル、学校や職場で使って頂きたい。』と書くほどの自信作らしい。
 もう少し こう何というか、手心というか…。
 カラーで臓物出しすぎ。


 牛股師範は生きていた!
 七日ぶりに奇跡の生還だ。
 やはり、牛股師範は毒などで倒れる漢(おとこ)じゃないのだ!
 とはいえ、毒で倒れたまま放置だったので、ものすごく心配でした。
 だが、すべては遅すぎたのだ。

『師 岩本虎眼は もう この世にはいないのだ』

 無情なナレーションがはいる。
 もともと 精神がこの世からハミ出し気味の人でした。しかし、こんどこそ帰らぬ人になったのだ。
 もう虎眼先生にツボを叩きつけられたり、脇差で口をえぐられたりすることも無い……。
 牛股師範は慟哭する。
 悲しみのあまり牛になって慟哭する。

 すいません、悲しいはずのシーンなのに笑えてしまう。
 なにも、本当に牛になることは無いだろうに。本格的に牛ですよ。
 「焼肉をシグルイ風に語るスレ」も、きっと大喜びだ。


 以前、日記で虎眼先生の経済状況を考察した。
 繰り返しになるが、磯田道史「武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新」によると、三百石は現在価値で1500万円だ。
 当時は人件費が安いので、現在感覚に直すと8100万円ぐらいだ。
 今回、七十石に減俸されたので現在価値で年収350万円、現在感覚で1890万円になる。
 三重と藤木をやしない、奉公人をやとうギリギリの値段だろう。

 藤木は乱心による士道不覚悟により蟄居となっている。
 大辞泉によれば蟄居は「江戸時代、武士に科した刑罰の一。自宅や一定の場所に閉じ込めて謹慎させたもの。」となっている。
 伊良子もはいった座敷牢に閉じこめられるとは、なんという運命のいたずらか。
 士道不覚悟にしてはけっこう罪が軽い。

 山本博文『図解 武士道のことが面白いほどわかる本』『『葉隠』の武士道 誤解された「死狂ひ」の思想』などを見ると、武士は自分で命の始末ができる者のことをいうらしい。
 つまり、腹を切ってわびることができるのが武士なのだ。
 農民や町人は切腹ができないから、始末をつけてやる必要がある。
 士道不覚悟は、武士失格のことだ。つまり切腹できなかった人をさす。
 だから、斬首で始末をつけてやる事になる。

 つまり士道不覚悟で蟄居というのは、ちょっとあやしい判断だ。乱心と士道不覚悟も直接つながらない。
 一連の動きには伊良子が絡んで、不可解な判決がおりたのだろう。
 本物の武士を目指していた藤木に「士道不覚悟」をつきつけ、生き恥を晒させる。
 精神的に責めたてるつもりか。


 藤木源之助は十数年前を思いだす。
 当時、村の悪童・藤木源之介が暴れまわっていた。
 農民の子だった源之助は悪童の標的である。
 だが、農民の子が士の子に逆らえるはずもない。頭を下げて許しをこうばかりであった。

 源之助は山中で虎に出会った。
 正確には虎の幻影だ。
 幻影の虎は源之助のはらわたを引き出し、はらわたで源之助を引っぱる。

 虎の幻影とは虎眼先生のことであろう。
 源之助の内面からなにかを引き出し導いたという暗喩だと思われる。
 暗喩すぎて巨大カマキリと戦うなみに、ファンタスティックな描写になっているけど。

 そして、源之助は悪童・藤木源之介を殺害する。
 足首をつかんでぶん回し、石垣に打ちつけたのだ。
 それも片手で。
 子供が自分と同じぐらいの体重の子を片手でぶん回している。
 なんという筋力であろう。ドイルをかたてで振り回したオリバなみだ。
 虎眼先生は、これが見たかったのか!?

 源之助は士(さむらい)の復讐を恐れた父によって つるされる。
 我が子を殺され黙っているのは士道不覚悟だ。すくたれ者だ。
 正式な仇討ちでもないかぎり 人を惨殺すると切腹になるのだが、士道不覚悟よりマシだ。
 『『葉隠』の武士道』でも、そういった例をいくつかあげている。
 これが武士同士なら、返り討ちの準備をはじめるところだろう。
 やはり、農民は命の始末を自分でつけられないらしい。

 そこに一人のお武家さんがやってくる。編み笠で顔が見えない。
 特徴としては、右手の指が六本あった。
 武士が刀を抜き放つ。
 源之助をつるしているヒモを斬り、しばっているヒモを斬る。
 空中にあった源之助が落下する間に三回も斬ったのだ。恐るべき早業であった。

「この童」
「いらぬなら貰うぞ」


 とうぜん武士は岩本虎眼 本人であった。
 なんか自作自演っぽいけど、圧倒的な迫力とカッコよさにはシビれるしかない。
 もはや憧れる以外の逃げ道は閉ざされている感じだ。
 そして、虎眼先生はクールに去る。ちなみに源之助は素っ裸ままだった。クールだ。

 悪童・藤木源之介のかわりに源之助は藤木家の養子となった。
 そして、岩本家に内弟子としてはいる。
 士(さむらい)藤木源之助の誕生であった。
 それを見守る虎眼先生は満面の笑顔を見せる。

 …………って、虎眼先生がこんなやさしい笑顔を見せるなんて!!!?
 え、あれ? 俺の視力どうかしたか?
 それとも、この人は彪眼先生とか猫眼先生とかのニセモノか?
 なんですか、その優しい笑顔は。
 「一億用意してくれんか」とか言われたら、アイフルで借金してでも役立とうとしちゃいそうな笑顔じゃないですか。
 虎眼先生にこんな笑顔ができたなんて……。


 虎眼先生は「種」集めに執心していた。
 あの笑顔は会心の種を見つけた純粋な親心なのだろうか。
 なんにしても、虎眼先生への評価を根底から覆すような笑顔であった。

 なんか、他にも書こうとしていた事があったけど、ショックでぜんぶ忘れた。
by とら


2006年5月19日(7号)
第33景 竹槍

 なぜ今回はシグルイ感想を先に書くのかッ!?
 この間のオフ会遊星さん「なんか、疵面感想よりシグルイ感想のほうが量多くなって来てませんか?」と言われたので、開き直って順番を変えた ワケではありません。
 答えはで。


 今回の表紙は幼年編の藤木源之助だ。
 幼少のころから腸をハミ出すのがシグルイのたしなみである。
 年齢制限いっさいなし。


 用心棒であり一羽流の使い手・(くちなわ)平四郎が語るおさない藤木源之助の恐怖だ。
 かつて蛇平四郎は虎眼道場をたずねたことがあった。
 季節は桜の舞い散る四月である。
 風流な風景だった。死ぬにはいい日だ。

「一手 指南つかまつりたく候(そうろう)

 いきなり死亡フラグ立てちゃったよ、この人。
 まあ、死ぬことはありません。伊達になるだけです。
 というか、情報はちゃんと集めておきましょう。
 虎眼道場をたずねる途中、みょうに顔にケガをしているサムライが多いと、思わなかったのか?
 危機意識がまるで足りない。

 対応する牛股師範はしきりに頭をかいている。
 初心者は、この低姿勢にダマされるのだ。私も一巻でダマされた。
 虎眼先生に口をえぐられてから、牛股師範の低姿勢は姿を消す。
 以後は、人を威圧することがメインの仕事になる。

 牛股師範は口がさけて牛でいるほうが、危険人物だとワカるので安心だ。
 見た目で判断つかない人ってのは、危険だったとき取り返しがつかない。
 たとえば虎眼先生をふつうに暴れさせるのと、ミッキーマウスの中に入れるのとでは、被害とインパクトが三倍ちがう。

 虎眼流の門下生は百姓や町人といった連中ばかりのようだ。
 若き日の丸子、宗像、山崎も座っている。
 あいかわらず山崎九郎右衛門の目が怖っ!

 山崎は「赤ずきん」に出てくるオオカミみたいだ。
「山崎さんの目は、どうしてそんなに大きいの?」
「それはね、涼の鍛錬を見守るためだよ」
「山崎さんの口は、どうしてそんなに大きいの?」
「それはね、シュパチュパするためだよ」

 幼年編・藤木の姿もおおきな目で見守っていたのだろうか。

 蛇の相手になるのは、興津につれられた藤木であった。
 まだ入門して三年に満たない。
 しかし、入門前から同年代の子供を片手で振りまわした藤木である。
 三年でじゅうぶん怪物に育っていることだろう。

『相手が前髪であろうと』
『加減する蛇(くちなわ)ではない』


 凶悪な男であった。
 前髪とは元服前の髪型である。
 司馬遼太郎『新撰組血風録』に収録されている「前髪の惣三郎」の影響で、かなりエロっぽい印象がある。
 ちなみに、涼も前髪であった。
 前髪と聞いただけで、山崎は前かがみで ちゅぱちゅぱだ。

 他流がいどんできたときは門下生二人ぐらいと立ち合ってから師範と戦うことが多いらしい。
 門下生との試合で相手の体力をうばい実力をはかる。時には間合いを計算する。
 板垣先生も、そうやってボコボコにされたらしい。板垣恵介の格闘士烈伝

「いざ参ら……」

 蛇が最後まで言うより速く、藤木の木刀が走ったッ!
 木刀は宙に舞い、左中指と薬指もちぎれて舞った。
 さらに藤木は木刀をノド元に突きつける。
 なんという実力か!
 そして、なんという容赦ない攻撃だッ!

 虎眼流は一撃目から殺す気で打ってくる。
 虎眼先生の教えが浸透しすぎだ。
 藤木や宗像、山崎は顔をはらしている。でも、コレぐらいですんでいるのが奇跡だ。
 山崎が傷を負っていないのは、目が良いから よけているからだろうか?

「耳か鼻か」

 すごみを見せる藤木に虎眼流門下生が大喜びだ。
 とくに山崎がうれしさのあまり、こぼれ落ちそうなほど目を見開いている。
 虎眼流において相手を伊達にする瞬間は最高の愉悦なのだろうか。
 そして、わざわざ相手に希望の場所を聞く親切な藤木であった。

 ビッ

 藤木の一撃は蛇の右まぶたを破った。
 だが、浅い。

「ぬるいぞ源之助」
「しかと えぐれ!」


 あ、熱すぎッ!
 ぬるくない。ぬるくないよッ!
 牛股師範の檄がとぶ。しかと えぐれとトドロき叫ぶ。
 やっぱ、虎眼流にチョッカイかけるんじゃなかった……。
 蛇は心底後悔しているだろう。

 牛股師範のきびしい指示を受けて、源之助は狙いを定める。
 打った。
 右の眼球がこぼれた。
 しかと えぐったのだ。
 虎眼流門下生たちも、思わず立ち上がり笑顔を浮かべている。

『これが藤木源之助の初陣であった』

 優勝を決めた野球チームのように藤木を胴上げしそうな雰囲気すらある。
 牛股師範の目にも涙がうかぶ。
 たぶん感動するシーンなんだろうけど、怖すぎる。
 なに、この危険人物育成集団は?

 武士脳の恐怖だ。

 小さな おとうと弟子の勝利を祝う虎眼流門下生であった。
 こうやってみんな虎になっていくんだな……
 画面には入っていないけど、えぐられて苦しんでいる蛇のことも心配してあげてください。
「源之助が大人になった記念日だ。おぬしも飲んでいけ」と目の治療もしないで、ムリヤリ飲みに連れて行かれそうだ。

 で、蛇は復讐をちかった。
 虎眼流によってほほをえぐられたり、鼻をそがれた同好の士はすぐに見つかったようだ。
 さすが虎眼流と言うべきだろう。
 お互いに目立つから「もしや、貴公は……」と声をかければすぐに仲間が見つかる。

 でも、復讐しようという根性のあるヤツは全部で三人だったのだろう。
 たぶん虎眼流はえぐりとった肉を記念に喰うような連中なのだ。
 いくも 牛股師範に喰われていたし。
 自分の肉体が喰われるという恐怖をうけると再起不能になりそうだ。
 普通の人なら、二度と虎眼流に関わりたくないと思うだろう。

『決行されたのは九月である』

 いっしょに闘ってくれる仲間を探すのに五ヶ月かかりました。
 狙いは藤木源之助だ。
 もちろん、イチバン弱そうだから。
 やっぱり蛇も牛股師範あたりにケンカを売る気にはならないのだろう。

 蛇たちは雷雨を狙い竹槍を装備した。
 金属の刀を抜けば雷にうたれるという地の利を利用した作戦だった。
 だが、藤木は躊躇なく抜刀する。しかも、刀を高く構える。
 蛇たちのほうが動揺した。すでに気迫で負けている。

 落雷が直撃した。
 蛇の仲間二人が一瞬で焼けただれた肉塊となる。
 まるで魔人モードになった虎眼先生が門下生をブった斬った時のような、ムチャな決着だ。
 のこった蛇は腰をぬかして震えるしかない。

 蛇は藤木の頭上に龍の姿をみた。
 そして、素っ裸の藤木に斬られると心底怯える。
 全裸だと股間に修正のはいるシグルイだが、子供チン●は問題ないので無修正ノーカット全裸でお送りいたします。
 「グラップラー刃牙26巻」に出てきたチン●も皮をかぶっているので無修正で問題ないと判断されたのだろう。


 そして、話は虎眼流崩壊直後にもどる。
 藤木に最大級の恐怖を受けた蛇は、畏怖が裏返って藤木を尊敬するようになっていた。
 龍が藤木を守っている。藤木ならば仇も討てるはず。
 蛇は確信をもって藤木を信じるのだった。
 ただ、伊良子清玄も龍を守護神に持つ男だ。藤木と伊良子は互角なのか?
 そして、牛股師範は本人が牛だ。

 一方、藤木と三重は書をしたためていた。
 内容は「仇討願」である。
 子が親の仇討ちを願うのは幕府に認められている。
 弟子が師の仇を討つのも、世間的に認められている。

 届出を出すことで、正式な仇討ちとするのだろう。
 沈んでしまった虎眼流を復活させるには仇討ちしかない。
 ただ、虎眼流には次期党首がいない。
 娘の三重が首領となって、藤木と牛股師範が女人の三重に助太刀するのだろうか。

 いずれにしても無残の第二幕が開けようとしている。
 ついに腕が落ち、足が裂ける時が近い。
 でも、その前に伊良子清玄の過去話を二回ぐらいやって話を引っぱりそうだなー。

 虎眼先生が出てこないのが、こんなに寂しいなんて。
 今回の回想で、虎眼先生は道場にいなかった。
 藤木が初陣をするころの虎眼先生は、すでに曖昧だったのだろうか?


バキ外伝 疵面 〜スカーフェイス〜


『山内雪奈生先生のスケジュール調整のため、今月の「バキ外伝 疵面 〜スカーフェイス〜」は、お休みさせていただきます。』

 落ちたッ! 勝負ありッッッ!
 と言うワケで疵面はお休みです。
 前から山内先生の作者コメントが危ない感じだったが、ついに限界に達してしまったようだ。

RED 5号『今月表紙なのに(原稿)落ちそうでしたー!』
RED 6号『前回の(入稿)遅れを取り戻せない。ナンか凄くやばい事になってるっぽいです。』
RED 7号『山内雪奈生先生のスケジュール調整のため……


 順調に落しています。
 REDの入稿スケジュールはよくワカらんですが、どうも先月の時点でダメ確定だったっぽい雰囲気です。
 今月はちょっと残念だったけど、来月に期待して待ちましょう。

 次回も落ちていたら、シグルイ感想を先に書くスタイルに固定しちゃう。
by とら


2006年6月19日(8号)
第17撃 来た

 デパートの屋上では「ドラアイダー ショー」が開催中だ。
 ドラえもんと仮面ライダーが合体したようなヒーローである。
 残念ながらポケットはないらしい。

 そして主役のドラアイダーが拉致される。
 犯人は戸倉竜士(レックス)だった。
 第9撃で花山に癒されてから行方不明だったが、いまごろ再登場だ。
 巨大な戸倉がにぎっているとドラアイダーも人形のように見える。むしろ人形のつもりでGETしたようだ。
 腕がプラプラしていますが、ドラちゃん再起不能でしょうか。

 デパートで少年少女と母親さんをオドろかせて、戸倉はさびしそうに去っていく。
 天然なだけで悪気はない。
 でも、悪気がなくてもクマとか生体改造されたマンドリル(by バオー来訪者にじゃれつかれたら顔面がメチャメチャになるってものだ。
 強力エンジンなんだから、ハンドルとブレーキの使いかたも学びましょう。


 一方、花山は前回に続いて刺客に狙われていた。
 花山に追いかけられて怖い思いをしても花山を狙いつづける根性だけは賞賛に値しよう。
 通用しなかった銃を握りしめているところをみると、単に学習能力が無いだけかもしれないが。

 ところが、刺客たちは偶然さまよう戸倉と遭遇する。
 当然のように三人はブチのめされるのだった。
 しかも、一人はズボンを半分脱がされるというマニアックな倒されかたをする。
 戸倉のセンスが爆発して、全裸より半脱ぎのほうがエロティシズムを感じると結論が出たのだろうか?
 本能ゆえに的確(ただし)かった。


 花山薫と戸倉竜士、規格外の恐竜がふたたび対峙する。
 今日の花山はちょっと酒が入っていた。
 撃たれて間もないのに、酒飲んでいいんでしょうか。
 実は戸倉は酒を飲んだことがない。

「飲むか?」

「うんッ」

 え〜〜〜〜〜ッ!?
 殴り合いから、飲み合いに変更しちゃうの?
 というか、通風の人は酒飲んじゃダメなのでは?
 いろいろな疑問はぜんぶ置いて、二人はワイルドターキーを飲むのだった。

 で、戸倉は一杯目でブッ倒れる。
 肉体派だけど持病もちだから、内臓は弱いらしい。
 花山、闘わずして完全勝利だッ!?

 戸倉も復活(?)して、源王会 対策もバッチリだ。
 悪い言いかたをすると、噛ませ犬要員ができた。
 源王会会長の癒せない拳が戸倉を襲いそうな予感がする。

2006年6月19日(8号)
シグルイ感想  第35景 討人(うちびと)

 虎眼先生の血を吸った三重の打ち掛けに、人面が浮きあがっているッ!
 怪奇現象とか、怨霊なんて生易しいものじゃなくて、虎眼先生が物理的に復活しそうな迫力だ。

 この服を着ちゃった日にゃ、虎眼先生が抱きついてくるような強さで体に巻きついて、全身ポッキポキになるだろう。
 で、腹がさけて臓物(なか)から若返った虎眼先生がでてくる。
 これぞ忍法・虎眼転生なり。

 前回ラストの「仇討願」は三重が書いたものだった。
 女人の身でありながら親の仇を討とうとする。天晴れな心意気だ。さすが武人の娘である。
 見かたを変えれば、親子そろって いかれちまってる。 パキィ(※ 虎拳)


『仇討願書を受け取った掛川藩目付 柳沢頼母(よりも)は』
『ただちに藤木源之助を召喚した』


 願書を出すとは、入試に似てそうろう。
 仇討ち確率のランキングをみて、願書を出すかどうか決めるのであろうか。
 否、利で行動を決めるは武士にあらず。正気にて大業はならん! パキィ(※ 虎拳)


 失礼いたしました。

 目付は藩士を監察する役割である。
 虎眼道場はしょっちゅう道場破りを伊達にして道に放りだしていたはずだ。
 目付とは事後処理で話をする機会も多かろう。
「のう、最近の虎眼道場は、ちと張り切りすぎではござらぬか」
「手加減するは、相手の剣士にとって失礼でござる。剣の面目がたちませぬ!」
 きっと、こんな感じだ。あんまり文句を言うと 抜き打ちがきます。
 掛川藩では胃の薬がよく売れるにちがいない。

 藤木は大刀を渡して登城する。
 安袴がとっても寂しい住みこみの貧乏侍であった。
 岩本家の推定 元年収は8100万円以上なんだから、もうちょっとイイ服を用意してあげようよ。

「しかるに岩本家は藤木源之助…
 其方(そち)を跡目にする旨 すでに虎眼より届け入れられておる!」


 後継者がちゃんといるんだから、仇討ちなんかするな。という事らしい。
 裏の事情を考えると、相手の伊良子が徳川忠長に召抱えられているのもマズいのだろう。
 将軍家のお抱え者に手を出すのはためらわれる。

 藤木は自分が跡目になっていたことを、はじめて知った。
 普段はツボを頭に叩きつけるような先生だが、好意をかくしているだけだったのだ。
 なんか、虎眼先生がメチャメチャいい人になっている!

 まるでクラス一の暴れん坊が毎日牛乳を持って帰るので、後をつけたら箱の中でぎっしりとノラネコを飼っていたの図みたいだ。
 これぞ、インターネット殺人事件さんが指摘していた「「そして何より恐るべき点は、これまたものすごい勢いで虎眼先生が美化されはじめたことであります。」事件である。

 虎眼先生が藤木を認めたのは、伊良子仕置きで例のつかみを見せたときだろう。
 「シグルイ 3巻」十二景で、藤木のつかみに対し虎眼先生が反応している。
 虎眼先生がとっても いい人だと知らなかった当時は藤木の心配をしたものだ。
「ぬしは、それで儂に並んだつもりか!」
 と虎眼先生が叫んで、藤木の左腕がふっとぶ悪夢を見てなんど目覚めたことか。
 だって、つじつま合うし。


 藩のえらい人はよってたかって藤木をせめる。
 その中に次期武芸師範役 候補の生野陣内がいた。
 虎眼存命中は怖くて口も手も出さなかったのだろう。
 しかし、今はちがう。

「当道者に討たれた岩本様が」
「果たして家中一の使い手であったかどうか…」


 藤木が抜き打った。生野陣内、即死!
 セリフの最後が「…」だから、しゃべりきる前だろう。
 師を侮辱 → 斬る
 脳髄で考えて斬っていない、脊髄の反射で斬っている速度だ。
 反射で抜き打ちできるようにならないと一流の虎眼流ではない。

『この報告を受けた掛川藩家老 孕石備前守は』
「虎眼流錆びてはおらぬようだな……」
『一言洩らすのみであった』


 孕石の右目に斬られたあとがある。
 虎眼流とは因縁が深いのであろう。
 なれていると言うか、あきらめすら入っているような感じだ。

 常識的に言って城内で抜刀してはいけない。したら、切腹だ。
 しかし、自分や師を不当に罵倒されたら、言い返すことが必要だ。
 反論できないと、根性なしって事で士道不覚悟になる。
 山本博文『『葉隠』の武士道 誤解された「死狂ひ」の思想』によれば、「城内でなければ斬って捨てるものを」と言い返したのが好例と葉隠にあるらしい。
 ちょっと、セコい。

 しかし、藤木はごまかしが効かぬ男である。
 考えるより先に斬っちゃう。城内であっても斬りすてちゃう。
 口先だけの男ではない。本物の曲者(くせもの)なのだ。
 そして、戦国の気風がのこる江戸初期では、武士に曲者を期待していた。
 戦場で活躍するのは命知らずの曲者である。
 藤木の行動は法を超えたところで合格なのかもしれない。

 また、武士の場合、大刀は渡しても脇差を持つことが許される場面がおおい。
 「花の慶次」も秀吉暗殺計画は脇差だった。
 今回の藤木もそうだ。
 「範馬刃牙」で素手によるテロを完成させたJ・ゲバルのように、虎眼流は脇差による斬撃を完成させた恐怖のテロ集団になりうるのだ。
 おまけに素手でも強い。

 変に処罰して、虎眼流が集団テロリストになったら、ものすごくこまる。
 命がけでこまってしまう。
 だから軽めの処分で妥協したと思われる。


 一方、伊良子清玄は滞在先の駿府藩剣術師範 岡倉三巌の妻・蜜に風呂の世話をうけていた。
 せっかくのサービスシーンである。
 失明する前の伊良子ならば、タダでは済まさない。
 しかし、現在の伊良子は藤木のことばかりを考えていた。
 なんか急に夢枕獏作品になってしまったような感じだ。

 伊良子の脳内設定では藤木に負けていない。
 仕置きのときは だまし討ちで負傷して、周囲を門弟に囲まれた不利な状況で戦ったのだ。
 負けのうちに入らないと計算しているらしい。

 だが、ふんどし姿で貝殻をもつ藤木という記憶が伊良子に屈辱感をもたらせる。
 背後にいる山崎九郎右衛門と丸子彦兵衛もなんか意味あるのだろうか?
 とにかく、伊良子と藤木のあいだにはナニかあったらしい。
 虎眼流が抱える因縁の闘いが、ふたたび始まろうとしている。

 それにしても、使わないんだったら、チンポを山崎九郎右衛門に焼いてもらえばよかったのに。
by とら


2006年7月19日(9号)
第18撃 ワナ

 戸倉"レックス"竜士が参加したので、さっそく戦いがはじまると思わせる罠(ワナ)だ。
 花山はぶらりと三駅分歩いて、四撃に登場した定食屋に行く。
 注文は今回もこだわりのオムライスだった。

 そして、なぜか山手線一周を敢行する。
 徒歩に電車をつかう、地球環境に優しいヤクザであった。

 ……花山も吊革につかまるんだ。
 って、ことは三戦立ちをマスターした末堂と電車内で闘うと、負けないまでも苦戦するのだろうか。
 末堂……。今、どこでナニをしているのだろう。

 例のごとく、源王会会長は花山の様子をモニターごしに見ている。
 家政婦やマリア様なみに見ています。
 最強のヒットマンというより、最強のストーカーだよな。

 ちなみに源王会会長の食事は「レッサーパンダ・ストロノガノフ」だ。
 ビーフじゃないのかよ!?
 どうも15撃に出てきたレッサーパンダを調理してしまったようだ。
 源王会会長はペットや部下を大事にしない人らしい。

 源王会会長が解説する。
 花山は監視されていることを知っている。
 ぶらぶら歩いているのは陽動作戦(ワナ)だ。
 ならば、本命は…………

 機関銃を持ったヤクザ集団がなだれこんできた。
 一気に源王会会長をとりかこむ。
 さらに、料理にはテトロドキシンが仕込まれているという念の入れようだ。
 なお、テトロドキシンはフグ毒の主成分らしい(参考)。

 しかし、源王会会長はあわてない。
 この程度で倒されるなら、伊良子清玄は近藤涼之介に返討ちにあっていますよ。
 と言うわけで、サイボーグ化して復活したフリーザ(+コルド大王)をむかえるような安心感で次回につづくのだった。


 一方、花山は座って寝てしまった。
 この人、本当に花山ですか?
 中身がアイアン・マイケルじゃねーか?

 花山を監視していたと思われる男(くたびれた おっさん風)は好機ととらえて動きだす。
 いきなり拳銃を取りだし花山にむける。
 つかまれた。

 花山は寝たフリをしていただけなのか、反応よく男の手をつかみ発砲を防いだ。
 そして、そのまま電車のドアを強引に開いて、走行中の電車から男をポイすてする。
 とりあえず、花山への心配も無用のようだ。

 しかし、狙われている自覚があるなら人の多い交通機関をつかうのは、どうかと。
 だが、花山のことだし周囲を巻きこまないという自信があったのだろう。
 それにしても、前回のレックスはいったい何をしに出てきたんだか。

2006年7月19日(9号)
シグルイ感想  第35景 同胞(はらから)

 若き虎眼流の剣士たちは袋井宿遠州灘にきている。水練だった。(参考
 船上には牛股権左衛門を先頭に、藤木源之助・伊良子清玄・丸子彦兵衛・山崎九郎右衛門がつづく。
 なんで牛股師範は"かじき"をかついでいるのだ。
 本物のカジキかサメでも倒すつもりだろうか?
 無双許し虎参りのついでかもしれない。

 藤木はなぜか鎧姿で、伊良子はかっこつけて船べりに手をかけている。
 そして、丸子は舟をこいで肉体労働だ。
 九郎右衛門だけが泳いでいる。
 これって、なんの罰ゲームですか?

 むしろ、九郎右衛門だけ水練の修行だろうか。
 なにしろ、「見つかれば一発退場の変態性癖」という名の獣を心に飼っている男だ。
 精神修練がだれよりも必要だ。
 虎眼流の麒麟児・近藤涼之介が入門し、九郎右衛門の内なる獣がさらに育つのはしばし後のことであろう。

 ちなみに、時期は『虎眼に裂かれた牛股の口の傷が』『まだ新しい頃である』
 舟木道場のぬふぅ兄弟を倒し、生皮はぎとった後ぐらいだ。
 人を斬った後では、夜うなされたり 剣の気迫がかわる可能性が高い。
 作家・隆慶一郎も人を一人斬れば初段相当といっていた。
 下手人である藤木と伊良子は、犯行をごまかすため水練を理由に掛川から離れたのかもしれない。

 残った宗像進八郎は、元侠客のつてを使いニセ情報を流し、学のありそうな興津三十郎が事務手続きをする。
 完璧な布陣だ。
 虎眼先生が指示を出したのだろうか。
 弟子の動揺まで計算にいれた細やかな心づかいである。
 さすが、御仏のような慈悲をもつ虎眼先生だ(最近、ダマされています)。
 もっとも、仏は顔の皮はぎとって来いなどと言わないだろうけど。


『虎眼流"水鎧"は』
『水圧と息苦しさの中 手探りで鎧を脱ぐ』
『訓練の目的はいかなる状況でも平常心を保つことにあり
 虎子たちの稽古の中では安全な部類に入る』


 つまり鎧を着けている藤木が水鎧の稽古をする。
 なんとなく、「スマキにして東京湾にしずめる」という連想をしてしまう鍛錬だ。
 …………これが安全な部類なのか?

 二十二景(シグルイ 6巻)に登場した二輪は、もっともキケンな稽古の一つだと言われている。
 互いに死ぬ覚悟と準備をして、無事に終了すると涙した。
 雰囲気的に、死亡率 80%ぐらいだろうか。
 10回やると、16人ぐらいが輪切りになる(2人プレイなので)。

 "水鎧"は、たぶん死亡例が少ないのだろう。
 虎眼流が慶長六年ごろから道場を開き毎年一回"水鎧"を行ったとする。
 寛永元年までの二十三年で死者二名だとしても、死亡率は10%以下だ。
 内弟子五人が死んでも普通に月見をやる虎眼流なので、二名の死者など数に入らないんだろうな。(参考:シグルイ年表


 今回は事故がおきた。
『南蛮胴の緒の結び目が』
『鬼の如き指の力で絞めつけられていて解けない』


 消去法で犯人は牛股師範になっちゃうんですけど。
 藤木より指の力が強いと断言できるのは、牛股師範しかいない。
 技ならともかく、指の力は伊良子より藤木のほうが強いだろう。

 ただ、ヒモは水を吸うとほどきにくくなる。
 ほどけない海パンのヒモと、たまらぬ尿意にはさまれて地獄をみた経験を持つ方も多かろう。
 そんな時は、逆に考えるんだ「海パンだから濡れても平気」と考えるんだ。

 話をもどす。
 意外にも藤木を助けたのは伊良子であった。
 ただ、準備よく小柄らしき小刀を用意している。
 伊良子だけが、藤木の身にナニが起きたのか、知っている感じだ。
 すべて伊良子の計画だろうか?
 技だけではなく、人格においても優れているとアピールしたかったのかもしれない。


 その後、虎眼流剣士たちは海亀の産卵を見学する。
 感動的なシーンだけに、にあわん。
 皆さん、けっこうロマンチストだとは思う。なにかに命をかけたりする行動は、現実主義者の行動ではなく、ロマンチストのものだ。
 けど、本当に情緒的なことをやられると似合わない。
 なにしろ、ネコに牛乳をあげるよりも、輪切りにするほうがにあう男たちである。
 伊良子まで感動しているっぽい。むむぅ。

 でも、山崎九郎右衛門だけは、海亀の卵に食欲を感じていそうだ。
 九郎右衛門の眼球を好んで食す嗜好は、このとき生まれたのか?
 球形のものを見ると口に入れたくなるのかもしれない。


 伊良子清玄は牛股師範のいった「同胞(はらから)という言葉をかみしめていた。
 生まれついての侍というだけで威張っているクズどもと、虎眼流剣士はちがう。
 おのれの肉体を鍛えて、武士になろうとしている。伊良子清玄と同じなのだ。
 伊良子は藤木に友情を感じていたのかもしれない。

「藤木源之助は生まれついての士(さむらい)にござる」

 身分ではなく、心は士(さむらい)というつもりだったのだろう。
 しかし、伊良子は誤解したようだ。
 好意を持ちはじめていただけに、憎さ百倍である。ツンデレが逆転して、デレツンだ。
 伊良子が藤木にいだく、本気の殺意はこの時に生まれたのだろう。

 これで、和解への道は断たれた。あとは命をかけて闘うしかない。
 決着の場は、掛川に設けられた仇討場へうつるッ!
 よいよ、鍛え抜かれた二人の剣士に更なる痛みがふりかかろうとしている。

 って、牛股師範はどうするの?
 毒はちゃんとぬけたのだろうか?
by とら


2006年8月19日(10号)
疵面感想  第19撃 顛末

 源王会会長を襲撃したのは源王会内部の人間たちだった。
 力で部下を押さえつける会長に反発したクーデターだ。
 やっぱり、慕わせる心をそだてないとダメらしい。

 コックを使って料理に毒を入れたりと、藤木組にしては陰湿な手段を使うと思っていた。
 少なくとも、花山には似合わない作戦だ。
 花山本人がオトリになるっては、ありうる。
 しかし、相手のコックを買収(?)して一服盛るのは、セコい。
 内部抗争だったので、花山サイドは直接関係ないと思っておこう。

 クーデターを起こしたのは源王会でもダメな部類の人たちらしい。
 最強の暗殺者と言われている会長なんだから、能力ぐらい調べればいいのにナニもしらないようだ。
 催涙弾を撃ちこんで戦闘力を奪ったあとで、ガスマスクをつけて乗り込めばいいのに。

 また、銃を構えて円形で会長を囲んでいる。
 撃てばかなりの確率で、同士討ちを起こす陣形だ。
 見事なまでのシロウト軍団である。

 もしかすると、会長がダメ部分を切りすてるためにワザと起きるように仕込んだ反乱だったのかもしれない。
 組織改革のために、内部の膿を文句のでない形でひねり出したのだろうか。
 でも、人件費削除は最後の手段だ。
 人が少ないと、いざという時の戦闘力が低下するし、あまりよろしくない。
 会長職のわりには、大局をみる目に欠けている。

 襲撃者たちは、なんの準備も気構えもないまま、会長の幻覚に飲みこまれるのだった。
 音で相手を幻覚にかけているみたいだし、耳栓ぐらいの装備はしても良かったよね。
 または、音の聞こえないような遠くから狙撃するとか。
 腕っこきのハンターは範馬勇次郎にも有効な職業ですよ。

 当然のように幻覚+怪力の攻撃で反乱部隊は壊滅するのだった。
 ドリアンの幻覚攻撃を超えた、ほとんど鳳凰幻魔拳なみの威力だ。
 どこか別の場所に飛ばされて、巨大会長が襲ってくる。
 いくら花山でもこういう幻覚には勝てそうにない。
 解決策はあるのだろうか?


 反乱分子を倒した後、会長は食事のつづきを命じる。
 材料は床をあるいているペンギンだ。
 やはり、部下にもペットにも優しくない。
 虎眼先生だって、いきなり門下生を殺したりはしませんよ。
 ときどき、やっちゃいますが。
 ペット(?)の鯉も喰っちゃうけど。


 そして、藤木組は源王会の内部抗争によって生じるスキをのがさず攻勢に出る。
 毒ほど陰湿ではないが、非情な作戦だ。
 仁義なき戦いがはじまろうとしている。

 そして、こんなときに頼りになる花山はどこでナニをやっている!?
 山手線ぐるり一周の旅をまだつづけているのだろうか。
 花山抜きで勝てるほど甘い相手ではないよなー。

 思い切って、リアルシャドーの達人・範馬刃牙を呼んでみたらどうか。
 巨大・源王会会長 vs. 巨大カマキリという、お客さんの反応が微妙になってしまうドリームマッチが完成しそうだ。


2006年8月19日(10号)
シグルイ感想  第三十七景 封じ手

 三重の悪夢による藤木源之助 vs. 伊良子清玄のシミュレートがはじまる。
 虎眼流の"流れ"をとる藤木に対して、伊良子は無明逆流れの構えだ。
 流れ vs. 無明逆流れは、山崎九郎右衛門と伊良子ですでに実現している。(シグルイ 4巻 十八景)
 無明逆流れは、『速度 間合 共に「流れ」を凌駕する斬撃』なのだ。

 結果はフェイス・オープンだ!
 藤木の顔が真っ二つ。まさに虎眼先生の惨劇を再現している。
 大脳がうどん玉のように こぼれ落ちないのが、最期の良心だろうか。
 三重の悪夢だけに、思い出したくもない無残な記憶が浮かびあがったと思われる。

 なお、藤木が「流れ星」ではなく「流れ」を使っていたのは、三重に「流れ星」の知識が無いからだろう。
 さすがに虎眼流の究極奥義は娘にも教えていないらしい。

 構図的に虎眼先生=藤木だ。
 これは藤木に対する信頼感をあらわしているのだろうか?
 三重は、ファザコンからはかなり遠い存在だ。
 むしろ、自分を拘束する存在としての虎眼先生=藤木なのかもしれない。
 けっきょく結婚相手すら自分の思い通りにならないのだし。
 岩本虎眼の呪縛から解放されたいと、ひそかに思っているのだろうか。

 そして、三重は両方の乳房を伊良子に引き裂かれる死に様を夢で見る。
 これもある意味エロ妄想なんでしょうか?
 いくが虎眼先生にされた仕打ちを三重も知っているのなら、同じ(か、それ以上)の事をされると恐れていそうだ。
 伊良子が復讐の闇討ちを続けていれば、牛股師範は乳首をそがれた状態のさらし首(さらし乳首)になっていたのだろう。
 よくワカらんが、なんか武士的に屈辱の極みって感じだ。


 三重さんが純潔を保っていたのは、当然のように虎眼先生のおかげだった。
 夜這いに行ったら、真っ二つだ。あるいは、三つかそれ以上に斬り別けられる。
 成功しても、失敗しても、肉塊に変身だ。
 なにしろ超一流の剣客だから、あやしげな気配があれば確かめる前に斬る。
 事後に、斬ったものがなんなのか、検分するのが虎眼流だ。
 確認は門弟が行います。

『虎眼邸流内で死体が発見された場合』『その犯人として最初に疑うべきは外部の者ではない』シグルイ 4巻 十七景)
 牛股師範の行動がマニュアル化した背景には、多数の経験があるのだろう。
 虎眼邸ちかくにある桜の木の下には多数の死体が埋まっているにちがいない。
 牛股師範が検死を得意としているには、それなりの理由があるのだ。
 習うより、慣れろ。

 唯一生きたまま三重の部屋にやってきたのは藤木だけだった。
 しかし、藤木は36景で入手した貝殻を置くだけで帰っていく。
 殺気(性欲)がないから無敵の虎眼センサーに引っかからなかったのだろうか。
 藤木がヘタレというワケではなく、忠義の心ですな。
 フンドシ一丁で入ってきた理由は定かじゃないが。


 三重は藤木を「様」づけで呼び、家老の孕石から夫婦の確約をもらえていると伝える。
 冷静な藤木も目が輝く。
 しかし、笑わない。
 伊良子との勝負では笑ったのに、三重と結婚では笑いません。
 ひょっとして優先順位が、伊良子 > 三重 なのか?
 剣に生きる人間は、武骨じゃのう。


 で、伊良子との決戦に向けて藤木と牛股師範が特訓中だ。
 方法は、牛股師範を逆さ吊りにする!
 逆流れの特徴である下段からの斬り上げをシミュレートしているのだ。
 考えは理解できるが、シュールな絵だ。

 牛股師範の口から血が出ているんですけど、大丈夫なんですか?
 逆さ吊りは、重力で頭に集まった血が脳の毛細血管を圧迫して死にいたるとカムイ伝で書いていた。
 ことの真偽はともかく、毒で死にかけていた人を逆さ吊りにしたら健康に悪いことぐらいワカる。
 決戦前に牛股師範が倒れないか、心配だ。

[脇差にて下段斬りを封じると同時に]
[清玄の首があるべき位置に大刀が伸びている]


 股間を守りつつ、伊良子の首を狙う。
 攻防一体の二刀流が勝利の鍵だ!
 虎眼流の技は片手で行うものが多い。28景で虎眼先生も二刀流を使っていた。
 もともと虎眼流には、二刀をつかう型があるのかもしれない。

 今までの虎眼流は、作戦を考えるときに「相手より速く」「相手より遠くへ」としか考えていなかった。
 つまり、力技で相手をねじふせる。
 作戦は常に「ガンガンいこうぜ」で正面突破だ。
 だが、ついに正面突破以外の作戦をあみだしたのだ。

 敵より先に攻撃すれば防御はいらぬ的な虎眼流も、ついにガードをおぼえた。
 でも、ちょっと虎眼流らしさが消えた感じだ。
 防御ってのは、相手の攻撃を前提にしているのだ。つまり受身の戦法である。
 やや積極性を失っているかもしれない。
 この作戦は吉と出るのか、凶と出るのか?

 そして、牛股師範の毛細血管が心配だ。
 でも、口から出血しているので、よけいな圧力は外に逃げているのかもしれない。
by とら

2006年9月19日(11号)
疵面感想  第20撃 接触

 花山薫 in メイド喫茶ッ!
 なんだって〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!???????????????

 どこの冥王星人の陰謀ですか?
 いや、もう冥王星の知的生命体を想像するのはムリなんだっけ。
 しかし、なぜにメイド喫茶だ。常識で考えていては犯人の目星すらつかない。

 たんにウェイトレスがメイドの格好をしている喫茶店かもしれない。
 いや、そういう事にしておこう。
 そうでないと、イロイロこまる。
 というわけで、たまたま偶然メイドの格好をしたウェイトレスがいる喫茶店『maid』に入っただけなんだ。
 店の名前……、狙って入ったとしか思えん。

 で、花山さんはフロート系の飲み物をたのんでいる。(注:こんなの)
 色が薄そうだから、メロンソーダだろうか。
 酒飲みなのに甘い物もイケる口なんですね。
 カロリーの高い生き方をしている感じだ。

 花山は普段のイメージを気にしているのか、組員を連れずお忍びで来ている。
 店の選択も組員と絶対に会わない場所を選んだのかもしれない。
 でも、デート中の刃牙とか、砂糖をドボドボ入れる甘党な愚地克巳(バキ 12巻 183ページ)に遭遇する可能性は高いので、やめたほうがいいと思う。

 知り合いに遭遇しなくても、メイド喫茶もどきで違和感を出しすぎている。
 間違いなく要チェックお客さまになって、バイト連中の語り草になるので、あまり来ないほうがいいぞ。
 ちなみに私がバイトしたレンタルビデオ店では、年齢が18歳以下という理由でアダルトの貸し出しを拒否したら逆ギレして店員に「殺すぞ」といったお客さんが語り草になっている。
 かなり恥ずかしい部類に入る動機だ。


 で、甘味をじゅうぶんに味わっている花山の横へ、源王会会長がやってくる。
 無関係の人間に迷惑をかけたくない花山は全力で闘えない。
 自分の欲望のためなら、アメリカ大統領を拉致する刃牙とは大違いだ。
 圧倒的に不利な状況で、花山はどうするのか?
 そして、源王会会長の目的は?
 いろいろ抱えたまま次回につづくのだった。

 なんでも源王会会長の最終的な野望は日本のヤクザを全滅させることらしい。
 ヤクザ全滅させて、どうするのだろうか?
 総合格闘技PRIDEの地上波放送を復活させるつもりだったりして。

 最終目標のことを考えると、花山を倒せるチャンスを逃すとは思えない。
 花山、本格的に大ピンチだ。
 そしてメイドが伏線になっているのだろうか。たぶん無いと思うけど。


2006年9月19日(11号)
シグルイ感想  第三十八景 敵討(あだうち)

 ついに血戦の当日だ!
 予定では死者一名、負傷者二名になる。あとは、どういう流れで無残が発生するかが問題だ。
 のこった虎眼流の門弟たちに見守られながら、若先生(藤木源之助)は出陣する。
 うしろに従うのは牛股師範と三重の両名であった。

 牛股師範が最後尾と、すごく地味なポジションにいる。たぶん、三人の中でイチバン強いのに。
 まだ毒が抜けきっていないんでしょうか。
 やっぱり、虎眼流の正式な跡目である藤木に見せ場を与えているのだろう。
 虎眼先生に口を斬られても文句一つ言わなかった牛股師範らしい細やかな配慮だ。
 文句を言わなかったのは、斬られたから発音できない状態だったのかもしれないけど。

 駕籠にも馬にものらずに藤木たち三人は仇討場へ向かう。
 身分ある侍は正式な外出時には(家に仕えている)供を荷物もちとして連れて行くらしい。(参考:山本博文『図解 武士道のことが面白いほどわかる本』)  お供がいないのは、虎眼流としての理由なのだろう。
 牛股師範が荷物持ちだというオチは却下する。

 見物客の中に藤木の実兄がいて、声をかけるのだが、藤木は無視する。
 貧農の三男・源之助はすでに死んでいるのだ。
 一度死んだ男・藤木は本日二度目の死をむかえるのか、否か!?
 ところで、牛股師範の関係者はどうした?
 原作だと牛股師範に奥さんがいる。漫画版にもいるのだろう。
 顔を出して声をかけてもイイと思うのだが。

 そして、血戦の場にッ!?
 伊良子はすでに到着しており、藤木たち一行の様子を観察している。
 ボクシングでは後から入場するのがチャンピオンだ。
 とりあえず戦闘前の格付けは藤木のほうが上らしい。


 藤木は鎖帷子などの防具をつけていない。伊良子は用心深く いくに確認させる。
 鎖帷子ごと刀で斬るというのは非情に難しい。
 舟木のぬふぅ兄弟は空中兜割りを完成させていたが、あれは実戦ではない。
 やはり、実戦で成功させるのは難しいと思われる。
 ちなみに鎖帷子の下には衝撃吸収などを兼ねた厚手の服を着ることが多いので、鉄棒で殴ってもダメージは少ない。

 伊良子は冷静に藤木攻略を考えている。
 もっとも無残な死をあたえようと考えているっぽい。


 一般の見物人は気楽なもので、侍同士の死闘を楽しみにしている。
 実際、決闘・仇討だけじゃなくて、切腹も一大イベントとして盛り上がるらしい。(参考:山本博文『殉死の構造』)
 江戸時代は、娯楽のセンスが現代と ちょっと(かなり?)違うらしい。

 見学人には家老・孕石備前守の三男・雪千代もいた。
 座っていても周囲の人間より頭一つデカい。まさに偉丈夫だ。
 そして、すさまじいまでの斬られ顔をしている。
 まさに四つか八つにコマ斬れされそうな感じの相をした美形だ。
 おそくとも2007年中に臓物をまきちらして死ぬと思われる。

『孕石家の下女三名を妊娠させたのが十三の時という逸話を持つ』

 このムダに豪快なエピソードがダメ押しだ。
 虎眼先生が存命であれば、次のページで惨殺されている。
 もちろん、見開きでバランバランだ。
 雪千代の内臓鑑賞は仇討ち編が終了した後のお楽しみですね。

 ところで、雪千代という名前はあきらかに幼名だ。
 月代(さかやき。頭のてっぺんを剃る武士の髪型。参考)も剃っていないので、働いていないと思われる。
 虎眼流の内弟子たちは藤木と涼以外は月代を剃っている。実は働いているのだろう。
 興津三十郎あたりは普通にお城でソロバンはじいていそうなイメージがあるんだけど、実際どうだったのだろうか。
 逆に山崎"ちゅぱ"九郎右衛門は、城勤めができていたのかどうかアヤシイなぁ。

 藤木が月代を剃っていないのは、今のところ剣の道に集中しているためだろう。
 城勤めになったら剃ることになると思われる。
 また、貧農の子供で、武士の養子という立場が就職口を減らしているのかもしれない。


 それはともかく、試合がはじまった。
 藤木は練習どおりに左手で小刀をいつでも抜けるようにかまえている。
 たぶん、下段の防御は完璧だ。

 だが、伊良子の刀は下段にむかう途中でハネ上がり、上段の構えで止まった。
 体に防具をつけていないことが、逆に下半身の守備強化を物語っていると考えたのだろうか?
 いきなり想定外の構えをとられてややピンチ気味の藤木であった。
 次回へつづく。

 逆転の秘策としては、逆立ちをすれば下段の攻撃と同じになる。
 特訓時に牛股師範がやっていた姿が伏線だった。
 逆立ちで対応するのだッ!
 って、逆立ちすると手が使えないので、たぶん負けます。


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