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2005年7月28日(35号)
第2部 第261話 臆病者(チキン) (641+4回)

 今回は全編英語で話しているので、セリフはひらがなでお送りいたします。
 こんごも英語で話し続けて欲しいものだ。

 範馬勇次郎という無敵親父や、愚地独歩という最強義父など、『バキ』世界には強いオヤジがゴロゴロしている。
 そして、また一人のオヤジ(強)が誕生した。
 一分間だけなら今でも世界チャンピオンと自負するマホメド・アライである。
 ウルトラマンより短い「一分」とか「自称」とか、ちょっと ペテンっぽい ミステリアスな紹介文だ。

「ノーグラブで決着だ」

 いきなり「決着」ときましたよ、大統領。
 烈海王に勝ちたいという夢を断ち切られたドリアンのような幕引きを与えるつもりなのか?
 Jr.はアライ父の夢だったはず。
 他人に壊されるぐらいなら、自分の手で………と思いつめてしまったのだろうか。

「久し振りに父と子が会ったというのに」
「ファイトって…………」


 いきなり喧嘩を売られたのでJr.が反論する。
 夜の公園で武術家二人ならともかく、ホテルの宴会場で親子二人 は勝負なのかとツッコミたいのだろう。
 自信があるときは人に喧嘩を売りまくっていたのに、負けつづけたせいか最近のJr.はちょっと弱気だ。
 ジャック戦の直前だったら、「俺がオヤジの人生に決着つけさせてやる」と殴りかかっていた可能性すらある。
 いや、それはJr.のキャラクターじゃなくて刃牙だ。

「わたしは5年前 不覚をとった」
「誰あろう我が子の手によって生涯初のテンカウントを聞かされている」
「まだ10代だった未熟なオマエの手によって」


 息子に壊された発言の真相が、ついにあかされた。
 どうもスパーリング中に殴られたのが原因だったようだ。

 リングシューズに短パンをはいているJr.は戦闘モードだ。
 しかし、アライ父は普通のクツに長ズボンという格好である。
 動きにくい服装なので、本気のスパーリングではなく軽く流すつもりだったのだろう。
 油断していたため、まともにJr.のパンチを喰らってしまうのだ。
 まさに、不覚である。アライ父も納得できないアクシデントだったのだろう。

「人が人を叩くという行為に年齢は関係ない」
「それが父と息子ならなおさらだ」
「わたしが怠けていただけのことだ」


 なんか すごいアライ節が炸裂している。
 急に元気になっただけじゃなくて、話の強引さも世界クラスの逸材だ。
 年齢は関係ないというが、子供や老人を叩いたらいかんだろ。
 しかも「父と息子ならなおさら」なんですか?
 ならば、範馬親子の関係は非常に濃くて熱いモノと考えることもできる。
 勇次郎はいつまでも息子のことを叩きつづけるのだ。

 しかし、ネタに応用がききそうなセリフだ。
「読者が漫画を叩くという行為に年齢は関係ない」
「それがガンとソードならなおさらだ」
「メディアミックスで怠けていただけのことだ」

 うむ、簡単に応用できる。種と運命ならなおさらで、脚本家が怠けてた。


 五年前はトレーニングをサボっていたし、油断もしていた。
 しかし、そこからアライ父は這いあがった。
 息子の成長だけが楽しみな楽隠居を引退し、地獄の特訓を行う現役にもどったのだ。

「倉庫の奥でホコリをかぶっていた重さ2キロのワークブーツ」
「ロードワークどころではない
 ロードウォーク………
 歩くことから始めねばならなかった」

「走り出すまでに実に3ヶ月……ワンシーズン掛かっている」


 一度、乳児にもどったような衰弱であった。
 蝶のように舞うといわれた男が歩くところから始めるなんて。
 しかし、不屈の精神を持った拳闘士にあっては、自己(おのれ)に与えられた過酷な運命(さだめ)こそ かえってその老いた闘魂(たましい)を揺さぶり ついには…

「歴戦のパートナー達とスパーを行ったのは
 ウォーキングから18ヶ月目―――――
 1年半もの時が経っていた」


 歴戦のパートナーまで呼んできて復活してしまう、この執念はどうだ。
 そして、今度のスパーリングはちゃんとシューズをはくなど動きやすい格好をしている。
 今のアライ父に油断は無いッ!

 スパーリングまでやるということは、一分しか動けないというのもウソくさい。
 それとも、ラッシュは一分だけなのだろうか。
 どちらにしても、考えていた以上にアライ父は回復していたようだ。
 家を出るさいにジャーナリストを ひねりつぶすぐらいは していそうだ。

 スパーリングを始めてから三年半がすぎ、ついに息子の前に立った。
 ムダにすごした三年半では無いだろう。全盛期に戻ろうとする三年半だったはずだ。
 永き妄念が生んだ、アライ流宗家の拳を受けてみよッ!

「でも……父さん」
「残念なことに…………」
「僕はこんなコンディションなんだ」


 Jr.は口先で逃げだした。
 それも、超全速力でだ。
 両手両足とも壊れているんだし、泣きが入っても仕方なかろう。

 だが、アライ父はムッとしていた。
 Jr.の重傷はアライ父も知っていると思われる。知っている上で呼びだして喧嘩を売ったのだ。
 となると、Jr.に泣かれるのも計算のうちか?
 打ってくるパンチがわかればカウンターを取るのはたやすいこと。
 Jr.の泣き言を返す言葉も用意してあった。

「我が息子がこれほどの臆病者(チキン)だったとはな」

 オヤジふたたび挑発する。
 カマンJr.!!
 手足の四本ぐらいどうってこたないだろ。
 ダメージ(病気)なら俺にもあるッッッ!

 アライ父が説教モードに入った。

「マーシャル・アーツとはなんだ」
「何時でも――――――――
 何処でも――――――――
 誰とでも――――――――」


 武術とは突然襲ってくる暴力に対応するものだ。
 ケガや病気・疲労・空腹などは言い訳にならない。お疲れのところでも容赦なく敵はやってくるのだ。
 しかし、だからこそ勝てないときは逃げてもいいはずだ。武術家は特攻隊ではない。
 生き残ることが肝心なのだ。だから、目玉えぐって過剰防衛に問われてもこまる。
 ケガをしているときは、言い訳不要で逃げてもいいはずだ。

「わたしは臆病者(チキン)とファイトするために」
「この5年間を費やしたワケではない」
「帰るッッ」


 いい負けて逆ギレした人のように力強く、アライ父が帰るッと宣言した。
 孔雀の間まで貸しきって準備したのにすべてムダになってしまうのか。
 そして、執念の五年間もムダになるのか?

「やりますッッ」
「ここであなたとファイトするッッ」


 父さんの挑発 大成功だ!
 アライ父がにんまりと極上スマイルをしている。
 息子に復讐できると大喜びなのか。それとも、息子が一皮むけたことに喜んでいるのか。
 どちらにしても、逆ギレたふりをして正解だった。

 本当なら、よろこびダンスをおどりたいところだろうが、アライ父はJr.に怒った表情を見せる。
 ここで、もう一押ししてJr.をさらに怒らせる。
 渋川&独歩戦で精神的なかけひきに弱さを見せたJr.だが、やっぱり挑発には弱かった。
 杖を投げすて、父親にむかって突っ走る。

(チキンなんて――――)
(絶対に呼ばせない!!!)


 この甘さは、しょせんスポーツマンというところだ。
 頭に血が上ったJr.はジャブも打たず、いきなり右ストレートをくりだす。
 ギブスで固められた右はさりげなく凶器だ。
 痛い一撃をアライ父はよけられるのかッ!?

 ガッ

 オヤジの左掌底がJr.の顔面にカウンターで決まった!
 すげぇ、これがベテランの上手さか。
 Jr.は父という偉大な山を越えることができるのか。
 次号へつづく。


 アライ父は息子よりも武術的だ。
 体が動かないこともあるのだろうけど、自ら動かずに最小の動きと力で最大の効果を出している。
 Jr.はステップをふみつつ タイミングを計り、飛び込んで一気に決める攻撃をしていた。
 この攻撃には、自分のペースで闘える(自分の打ちたいときに打てる)という利点がある。
 逆に全身でつっこむので、カウンターを取られるとダメージがデカいという弱点がある。
 アライ父に思いっきりカウンターを取られたので、かなりのダメージを受けただろう。

 Jr.がカウンターをとるときは、攻撃をよけて反撃するパターンが多かった。
 つまり2アクションのカウンターだ。見切りの才能があるからできるし、やってしまうのだろう。

 アライ父のカウンターは相手の攻撃にあわせたようだ。
 1アクションのカウンターでより高度で強力だ。
 足の動かなくなったアライ父だから、こういう動きになるのだろう。

 掌底で攻撃しているのもポイントが高い。
 拳をにぎる(ボックスを作る)ことに こだわっていてはボクシングと同じになってしまう。
 ボクシングを原型にしたアライ流は、壊れやすい拳という問題を解決しなくてはならないのだ。
 答えの一つが、掌底で殴ることなのだろう。


 アライ父は、最後の力をふりしぼってJr.にアライ流のすべてを伝えるつもりかもしれない。
 残りの寿命をすべてつぎ込むつもりで技を出しているのだろう。
 Jr.にすべてを伝えたとき、偉大なる戦士アライは立ったまま息絶えていた。
 …………と言う可能性は大いにある。

 もしかすると、最後に衝撃の告白をするかもしれない。
「実は、父さんは母さんだったんだ!」
「E 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

 Jr.もビックリだ。

 つまり、体の動かなくなった父にかわって母が体を鍛え影武者となったのだ。
 本物の父はまだアメリカでインタビューを受けている。
 ガウンを脱がないのは、父ではなく母だったという伏線だ!

 そして、Jr.も衝撃の告白をする。
「実はJr.(息子)じゃなくて、娘だったんだ」
「親だから、ダマされんって」
「冗談はさておき、この娘と結婚しようと思っている!」

 親父、ショック死。
by とら


2005年8月4日(36+37号)
第2部 第262話 雄弁(642+4回)

 今回の主役はアライJr.では無い。アライ父だッ!
 刃牙に関しては忘れてください。
 梢江のことは忘れたい。

 父の掌底をくらい、Jr.はみごとに吹っ飛ぶ。
 たった一撃で髪型は乱れ、「花山に殴られたあとの死ぬか克巳!?」顔になっている。
 泣きそうな表情をしても応援してくれる加藤も末堂もいないぞ。
 こんなことなら、除海王と範海王にもっと優しくしておけばよかったと後悔しても遅いのだ。
 どうするJr.!?

(一流シェフが作る 極上のスープは―――――)
(ほんの一口啜っただけで
 大釜いっぱいに満載された材料をイメージしてしまうほど雄弁だという)


 それは、食した者にリアルシャドーを発現させる麻薬的な味わいをもつ極上のスープでございました。
 おそらく、出典はミスター味っ子・アニメ版だと思われます。
「ルネッサンス情熱」って主題歌は、大人になってルネッサンスの意味がワカると、かえって意味がワカらなくなるね。

 文明復古の情熱はさておき、一口で大鍋いっぱいという過剰な力がバキ世界を雄弁に物語っている。
 一ページに大ゴマいっぱいというワケではなく、とにかく過剰にダシをブチ込む情熱だ。
 ある意味、松山せいじと似ている。
 一ページに巨乳おっぱいというワケではなく、とにかく過剰にブチ込む。
 アンケートの設問に 絵柄が「えげつない」とあるのは、ダテじゃない。

(それはなんと雄弁な一撃だっただろう)
(老いぼれたハズの父親の)
(この5年余りが どれほど過酷なものだったのか――――)


 ガウンを脱いだアライの肉体は現役時代のように輝いていた!
 パーティー会場・孔雀の間に設置されたシャンデリアの下で、六十歳を超えた老人の肉体がテカる。
 ダシにダシを重ねて澄んだスープを生み出すように、五年間の特訓で研ぎすまされた肉体を取りもどしたのだ。

「まだ完全ではないがな」
「15Rを戦うには程遠い」


 アライ父は腹の肉をつまんでみせた。
 まだ、表層につまめるだけの贅肉が残っている。
 一般人よりもはるかに脂肪率の低そうな体でも、未完成だという。
 技を完成することにこだわるなど、アライ一族は完全主義な努力家なのだろう。
 となると、オリバなどに比べるとほぼ完璧に維持している髪の防衛ラインも、努力の結果だな。

 一分しか闘えなかったアライ父だったはずが、15Rなどといっている。
 インタビューのあと、急激に回復したのか?
 普通に考えれば、全力ラッシュができるのが一分というだけで、休みながらだと数分間闘えるのだろう。
 つまり、今しゃべっているのも体力回復のための時間稼ぎだ。
 恐るべき策士っぷりである。

「おまえを教育するならこれで十分だ」
「ファイッ」


 アライ父が相手のつごうを聞かず容赦なく おそいかかる。
 理不尽なケンカの売り方は教育の成果だったようだ。
 まあ、教育といっているから、自分の復活のためにJr.を踏み台にするという可能性は消えた。
 Jr.よ、オメデトウ。マジ…いや本気でオマエが死可も知れないと思っていたよ。

 一気につめより、アライ父がジャブを数弾打ちこむ。
 思わず汗を流しながらJr.がよける。まだ、神の見切りは生きているらしい。
 アライ父もジャブはオトリのつもりで打ったのだろう。
 次に本命の右ストレートを放つ。

 だが、Jr.は右拳をジャンプでよけつつ、カウンターを狙う。
 なんという防御技術だ。
 そして、間合い・タイミング共に完璧だ。
 このカウンターは決まる。

 ベチィ

 しかし、Jr.のカウンターにあわせて、アライ父が左クロスをかぶせてきた。
 右ストレートですらオトリだったのか?
 この左は掌底で打っていた。
 かなり重い一撃だったのだろう。Jr.の目が一瞬泳ぎ無防備になる。
 うまれたスキをのがさず、アライ父が右の掌底突きを打ちこむ。
 ボクシング王者の一撃だ。ブッ飛んだJr.は三度弾んで壁に叩きつけられた。

 アライ父は当てる攻撃を掌底で打っている。
 拳を痛めないためだろうか。
 逆にフェイントの攻撃が拳だ。
 拳のほうが掌底よりも面積が小さい。飛んでくるときに見えづらい。
 見えづらいから、かえって慌てて防御してフェイントだと気がつかないのだろうか?

 倒れたJr.にむかってアライ父がズンズン歩く。
 軽いステップではない。蝶のように舞っていない。
 しかし、前進を止めないのが、アライ流のファイティング・スピリットなのだろう。
 立つだけじゃ、ダメなんだ。進め!

 アライ父が左ストレートを打つ。拳ってことは、フェイントか?
 Jr.はよけつつKO率の高い左フックで反撃する。
 だが、スウェーバックでアライ父はあっさりかわす。
 Jr.は続けてアッパーを放つが、アライ父の左ストレート掌底で吹っ飛ばされる。
 やはり、拳はフェイントで、本命は掌底か?

 壁に叩きつけられハネ返ってきたJr.に、必殺の右ストレートをメリこませた。
 ッッ! やはり、決着は拳でつけるのか?
 掌底で相手を弱らせて、トドメに拳を使う。
 最後まで必殺技を温存しておくのが元祖アライ流の闘い方かもしれない。
 拳の一撃を喰らって、Jr.は顔面から倒れる。決して起きあがれぬ倒れ方であった。

 ストレート系の攻撃をうまく使って、アライ父は間合いを自在にあやつっていた。
 足は動かないようだが、蜂のように刺す技術はJr.よりも数段上のようだ。
 Jr.だってケガで足が動かない。がむしゃらに腕を振りまわすよりも、もう少し間合いを考えたほうがいい。
 あと、掌底と拳の使い分けも重要だ。

(速いハズ……ッッ)
(強いハズ……ッッ)
(全てにおいて僕が上回るハズッッ)


 倒れるJr.は脳内でオレ設定を確認する。やっぱり、ダメな時の克巳みたいだ。
 負ける要素が見当たらなくても、前を歩けないときもある。
 身体能力で勝っていても、戦術や気構えで逆転が可能だ。
 Jr.は恵まれた資質を持っていたせいか、闘い方にエゲつなさが足りない。
 素直でまっとうすぎる闘いでは、どんなに速くても攻撃パターンがわかりやすい。
 だからと言って松山せいじの絵柄になられても困るけど。

「若すぎる…」
「遅すぎる…」
「そしてなんと弱い…」


 地面に伸びる息子にアライ父がいい放つ。
 まるで、Jr.の脳内会話が聞こえているような見事なカウンターであった。
 アライ流話術も父のほうが数段上のようだ。
 トドメに横を向いてボソッと「カッコわる」といえば、言葉だけでJr.を壊せる。


 で、アライ父は息子の腐った性根を叩きなおすつもりなのだろう。
 一度。ドン底に落として這いあがってくるのを期待する。
 打たれるほどに強くなるのがアライ魂だって感じだ。

 最近の流れをおさらいすると、つぎのような感じだ。
 達人と独歩を相手に、Jr.は驚異的な身体能力で勝利した。
 ジャックの圧倒的パワーに負ける。
 達人と独歩にリベンジされた。
 オヤジにもボコられて、説教される。

 前に書いたことの繰り返しになるが、身体能力で範馬に勝つのは難しい。地球人にはほとんど不可能だ。
 純粋な強さではJr.より下の達人と独歩に負けた。
 それは、範馬よりも弱くても勝てる可能性があることの証明に他ならない。

 ただ、Jr.が渋川流や愚地流を学ぶことは無いだろう。
 強いんだ星人が軍事機密(テクニック)を敵に教えてくれるとは思えない。
 そこで、アライ父の登場だ。
 アライ父が改めて、アライ流の真髄を教えてくれることだろう。
 ついでに、性格と美的感覚も矯正してくれ。

 新Jr.が誕生すれば、もう範馬星人だってこわくない。
 復讐にこだわる小さい人格を改善できれば、達人&独歩とは闘う理由がない。
 自分より上のジャックか、本命のバキを狙うだけだ。
 Jr.が復活すれば、Jr.編は一気に最終章へむけて動き出すだろう。

 しかし、肝心の主人公はナニをやっているんだか。
 まあ、ナニもやっていないんだろうな。
 ツンデレの烈が作る手料理に舌鼓を打っているかもしれんが。
「ウマくはないぞ」
「美味いよ、烈さん…」
 カ〜〜ッ。
 だから、最近の梢江はヒマそうなんだ。

 とりあえず体を回復させて、Jr.には本格復帰を果たしてもらいたい。
 たぶん、三日で治る。
 それとケガが治るまで、バイクに乗って高速に行ってはダメだ。
by とら


2005年8月18日(38号)
第2部 第263話 最強=最高(643+4回)

 父の拳は重かった。
 必殺の一撃でJr.はあっさり倒れてしまう。
 短期決戦を望んでいたアライ父のシナリオどおりに事が進んだようだ。
 Jr.は身体能力で勝っていても、策士という点では父の足元にも及ばない。
 さすが歴戦の勇者である。
 範馬勇次郎とは方向性が違うが、偉大なる父親という点で同じだ。

 そして、アライ父はJr.の顔の上にしゃがみこんでじっくりと観察している。
 ジャックの行動にそっくりだ。
 イヤな思い出があるから、Jr.はピクリとも動けないのだろう。
 知っていてやっているのなら、アライ父は知能犯であり、とても意地悪だ。
 息子のトラウマを狙うなんて、なんと恐ろしい。
 きっとJr.がお漏らししたときの写真や、昔書いて出せなかったラブレターなども切り札にとってあるのだろう。

「終了だ」

 Jr.が再起不能(リタイヤ)になったのを確認したのか、アライ父が戦闘終了を宣言した。
 すると扉からゴツい男が五人も出てきた。
 いずれもまとっている空気がちがう。
 黒スーツを着ているなんてマフィアを気取っているのか? むしろ、マフィアそのものだったりして。

 目つき、刺青(タトゥー)、ピアス、サングラスと 全てがヤバい雰囲気だ。
 たぶんボクサー崩れのボディーガードなのだろう。
 全員黒人でかためているあたりが、人種差別とも戦ったアライ父の壮絶な過去を物語っている気がする。

 無地のガウンを高級スーツのように着こなしながら、アライ父は伸びている息子を部屋に運ぶように指示する。
 やたら体格が良くてハゲとかドレッドヘアーのファンキーな連中であるが、アライ父の命令を訓練された猟犬のように聞いている。
 そこが、かえって怖い。
 っと逆らえない理由があるのだろう。知ってしまったら、消されるような理由が。

 行き先は「0000号室」だった。
 一般客には知られていない隠し部屋だろうか?
 部屋に向かう廊下にも美術品が飾ってある。廊下でこうなのだから、部屋の内装はおして知るべしだ。
 通路の奥に一つだけドアがあるので、プライバシーを厳重に守っているのだろう。
 もしかしたらこの階に一つだけの部屋で、エレベーターが止まるのにも特殊な仕組みがいるのかもしれない。
 庶民には想像もつかないゴージャスな部屋だ。

 そのゴージャスな部屋のゴージャスなベッドでJr.は一人さびしく横たわる。
 そばにいるのは父親ただ一人だ。
 いまだにガウン着ている。
 そろそろ着替えてはどうでしょうか?

「イヤになったか」
「この短期間に4連敗
「そうなっても無理はない」

「知ってたんだやっぱり」


 パパはなんでも知っている。
 裏の格闘技界を牛耳る男がアライ父のファンなので情報を教えてくれたそうだ。
 みっちゃんの事か?
 まあ、みっちゃんの事なんだろう。
 猪狩とアライ父が戦ったのも、背後で徳川が暗躍していたに違いない。

「5年も狙い続けた男が虫の息」
「更には両手両足が壊滅状態ときている」
「見逃すハズ ないじゃないか」


 アライ父が本性をあらわにし、満面の笑顔を見せる。
 Jr.がファイトをOKしたときに見せた、あの笑顔だッ!
 勝ったから、今度は笑顔も見せているのだろう。
 いろいろあって殴ったりしたけど、この笑顔を見せられてはトドメになって親子断絶になりそうだ。

「僕がファイトを受けたときも」
「父さんは後姿のまま そんな顔をしたんだろうな」


 おおっと、アライ父の策略がバレてしまった。
 まあ、復讐は成功したからバレてもいいのだろう。今のJr.なんて残りカスていどの存在だろうし。
 でも、やっぱり息子を罠にはめて倒したというのは印象が悪い。
 感情抜きで判断すれば、めちゃめちゃ悪い。

「泣き言かな?」

 すかさず父は開きなおる。
 ダマされたオマエが悪いと言わんばかりの開きなおりだ。
 確かにダマされたJr.が悪い部分もある。ケガしているときは喧嘩を避けよう。
 しかし、たった一言で全てごまかす話術はさすがだ。範馬流話術にも対抗できるかもしれない。

「もう……」
「やめたらどうだ」


 すかさず父は引退勧告をする。
 この時点でアライ父のキケンな笑顔は記憶の片隅に押しやられている。
 小火をごまかすためにガソリンぶちまけて大火事を起こしたようなものだ。

「わたしが完成を目指した」
全局面的ボクシングを更に進化させた」


 アライ父は息子の功績をたたえている。
 ように見えるが、すこし違う。
 アライ父の目指していた「全局面対応型 闘争術 マホメド・アライ流 拳法」は、必ずしもボクシングではない。
 進化させたと言いながら、Jr.の功績を小さく評価しているニュアンスがある。
 微妙に挑発しているのだろうか。
 そして、また背中を向けたのは笑顔を隠すためか?

「誰が一番強いのかを決める世界」
「そんな世界から我が子を解放したい」
「それもまた偽らざる親心だ」


 五年間も復讐の機会を狙い続けていた人とは思えない発現だ。
 今まで溜めこんでいたストレスが解放されて、ちょっと素直になっているのかもしれない。
 もし、Jr.に返り討ちにあっていたら、とてもこんな話は出てこないんだろうな。
 私が復讐するまでは、死んでも現役でいてくれと頼みこむに違いない。

「でも僕はやめない」
「もうやめられない」


 渋川剛気、愚地独歩、郭海皇など年老いても最強を目指すものたちがいる。
 実子にさえ手段を選ばずに勝つ男がいる。
 それだけ最強の座には魅力があるのだ。
 Jr.は最強を目指す強いんだ星人ゲームからおりるつもりは無い。
 そして、やっぱり親父の行為をすこし恨んでいるっぽい。


「最強とはすなわち最高」
「命にすら値する」

 どこへ行っていたンだッ 御老公ッッ
 俺達は中国に置きざりかと心配していたッッッ
 徳川光成の登場だ――――――ッ


 廊下を見張っていた、屈強なボディーガードが声も出せずに通行を許したのだ。
 すべて瞬殺したのだろう。やはり、徳川の血にも凶気が流れているのか?
 戦国を制した男の遺伝子はダテじゃないのだ。
(※ 普通に考えたら「顔パス」か「最初から部屋にいた」でしょう。入ってきたドアは廊下につづくドアとは別物だし)

 予想通り、アライ父のファンとは徳川さんだった。
 ということは、アライ流を作り上げるのにも協力していたのかもしれない。
 そして、驚異の情報収集能力でJr.のボコられっぷりを確認していたようだ。
 大ケガをする展開になっても喧嘩を止めないのが徳川流か。

 アライ父と御老公が知り合いだった。
 そうなると、最大トーナメントにJr.が呼ばれなかった理由が想像できる。
 アライ父にもうすこし期が熟すのを待ってくれと頼まれたのだろう。
 試合形式の最大トーナメントならJr.も活躍できたと思う。
 しかし、アライ父にとっては息子の活躍より、自分の復讐が大事だったのだ。
 あと、地下闘技場は砂地なのでステップが取りにくくて不利だと判断したのかもしれない。

「地球上最も偉大な」
「ノーベル最強賞………」
「ヤルかッ 範馬刃牙とッッ」


 徳川光成がけしかける!
 Jr.がビクッとビビった!
 そして、全局面対応ボクシング創始者 マホメド・アライの笑みッ!
 全ては父の思惑通りに進んでいるのか!?
 次回へつづく。


 ものすごい回り道をしていたけど、ついにJr.と刃牙が闘うのだろうか。
 でも、負けるよ、きっと。251話以後のJr.を見ていると、負ける姿しか思い浮かばなくなる。
 御老公はなにを狙っているのか?
 残酷ショーが見たい人ではないだろう。つまり、アライ父の陰謀だ。

 弱っているJr.には、偽バキでも戦わせるのだろうか?
 外国人の顔の区別はつきにくい。体格が似ていればJr.はバキと間違えるだろう。もともと、ダマされやすい人だし。
 Jr.が梢江に執着するのは、日本人の中でもズバぬけてインパクトのある顔だからだったりして。

 とりあえず、偽バキを闘わせる。
 偽バキは声が山口勝平(OVA・ゲーム仕様)だ。線が二本入っている。トランクスの色がちがう。
 両手を組むと左の親指が上になる。おでこに小さなネジがついている。鼻も赤い。
 これぐらいの特徴があって、読者には区別がつくようにできているのだろう。
 しかし、Jr.には区別がつかない。
 たとえ偽者だと気がついても、親父に挑発されて戦ってしまう。ファイッ!

 偽者をたおしてイイ気になっているJr.に、本物は別にいると教え、第二ラウンドの開始となる。
 こういう展開がありそうだ。
 そうなると、梢江のニセモノも出てくるのだろう。
 本物よりも美人という可能性は高い。あれほどの逸材のそっくりさんを見つけるのは難しい。


 アライ父がJr.に復讐したかったというのは本当だろう。
 しかし、同時に息子のことを気にかけているようだ。
 今回、引退するかと聞いたのは、わざと安易な逃げ道を見せることで挑発し、逆にヤル気を出させたのだろう。

 自分より弱い人ががんばっている。自分がおりちゃう訳にはいかない。
 それはJr.もわかっているはずだ。だからこそ、止めればといわれて反抗心が出てくるのだろう。
 息子の心のうちをよく知っている父親の作戦勝ちだ。
 だからこそ、あの笑顔なのだッ!

 これで、Jr.が刃牙に勝ったら、アライが範馬に勝ったことになる。
 気分的には、勇次郎をたおしたようなものだ。
 これが、マホメド・アライの描く、最強=最高へのシナリオかッ!?
by とら


2005年8月25日(39号)
第2部 第264話 誠意(644+4回)

 ニィィ〜〜〜〜〜〜‥‥
 アライ父が笑う。すべて計画どおりだ。
 実子ですらチェスのコマのように動かす。おそるべき男であった。
 背を向けながらアライ父はひたすら笑顔になるのだった。
 ああ、もう。その笑いをJr.に教えてやりたい。あと、みっちゃんにも。

「Mr.トクガワ」
「残念ダガ ソノ男ニソンナ勇気ハナイ」


 ボクシングから発展したアライ流は、ジャブから攻撃に入る。
 まずは、牽制し相手の動きを封じるのだ。
 思っている事とは逆の発言をして、相手の退路を断つ。
 Jr.が闘いから逃げたら、臆病者(チキン)とののしる準備が整った。

「戦イヲ避ケル理由ハ無限ニ用意デキル」

 Jr.が逃げ出す無限の逃走路をふさごうと広く網を張る。
 そして、勇次郎と闘う決意をした刃牙の発言とシンクロニシティーだ
 もう一組の親子喧嘩をしているのだから、似た発言がでてきてもおかしくない。
 ただ、範馬親子とちがうのは、復讐を狙っていたのが父だという点だ。
 さらに、アライ父は刃牙とはちがい策略家である。相手をジリジリ追いつめていく。
 でも、二組とも本質的には親バカなんだろうけど。

「ソレハ チョットダケ違ウ」


 黙っていると世界の不具合をすべて押しつけられそうな感じだったのでJr.が反論する。
 そりゃ誰だって、ポストが赤いとか、オマエ(刃牙)が弱いとか、SAGAとかの責任は取りたくないだろう。

 Jr.が戦いを避けようとしたのは、正当な理由があった。
 範馬勇次郎から逃げたのは正しい判断だ。あっという間にホテルの外に出ていった移動力も評価できる。
 父親の勝負をことわったのも悪くない。両手両足が破壊されているのだ。しかたないだろう。

 Jr.が闘いから逃げたのは、この二回だけだ。
 ごくまれな反例をとりあげて、主観で決め付けて、Jr.にレッテル貼りをする。
 とんでもない詭弁(参考:徐々に詭弁なアオリ)だ。
 でも、基本的にいい人であるJr.は普通に反論してしまうのだ。
 相手が反則つかっているから、正論じゃ勝てないというのに。

「無謀ナ戦イヲ避ケルタメトハイエ」
「僕ハ適当ナ理由デ ゴマ化シタクハナイ」
「セメテ………」
「コウシテ足ヲ運ンデクダサッタ徳川サンニ誠意ハ尽クシタイ」

 呼んでもいないのにやって来た徳川さんに誠意をつくす。
 もう、すっかり親父のペースにのせられている。
 Jr.は押しかけ訪問販売にも誠意をつくす人なのだろうか?
 きっと新聞を四誌ぐらい取っていそうだ。
 テキトーな理由でごまかしちゃえよ。

 誠意の姿勢(フォーム)と言えば、これだッ!
 ・下・座(Do-ge-za)ッ!
 シンプルにしてディープ! 敗北のベスト・オブ・ベストッッ!
 ダマされているとも知らずに、ヒザをついて両手もつく四点ポジションで頭を下げる。
 きっと、梢江をもらうときのために練習していたのだろう。

「アナタハコンナ僕ニ」
「期待シテクレマシタ…………」
「ソノ…」
「期待ニ…………………………………」


「全力デ」「応エマスッッ」


 やっぱり、父の計画どおりに動いてしまうJr.であった。
 自分で選択したつもりでも、もとから選択肢なんてなかったのだ。
 ただ、ちょっと親父をびっくりさせることに成功したことだけは、賞賛しよう。
 ここで闘いたくないとダダをこねても、どうせチキン呼ばわり百連発されてファイトすると言う事になる。

「……………………………ソレガ…」
「父ノ教エデス」


 最後にJr.がつけくわえたのは、父による洗脳の証であった。
 物心つく前から、父親に教育されていたのだろう。
「チキン」という言葉は、洗脳時にかけられたキーワードだったのかもしれない。
 どちらにしても、親父の執念から逃げることはできなかったのだ。

 Jr.の誠意にたいし、御老公も誠意でこたえる。
 土下座はしないけど、とりあえず正座だ。
 そして、アライ父だけがヒザを屈しない。
 黒幕だけが一人あざ笑うの図だ。

 最悪のコンディションであっても逃げない勇気と、相手の文化に自分を合わせる誠意だった。
 精神的に一回り大きくなった(?)Jr.を、御老公も認めた。
 あとは刃牙をなんとかたきつけて試合に持ち込むまでだ。
 巨凶なる徳川は拉致も辞さないだろう。
 でも、今の刃牙なら平気で梢江を見捨てそうだ。

「私ノ予想トハ」
「チョットダケ違ッテイタナ」
「チョットダケド」


 黒肌の宰相マホメド・アライが勝利宣言をする。
 こういう発言をアライ父以外の人がすると、底が浅くみえる。
「そう思っていた」「言おうと思っていた」「前から知っていた」「予想どおりだ」「困ったときは錦袋を開けなさい」
 後づけっぽい感じだ。どうも信用できない。
 でも、アライ父さんの場合は予想どおりの結果だったのだろう。

 過程はともかく、結果だ。目的を達成できたかどうかが重要なのだ。
 この作戦立案能力と作戦実行能力は天才的である。世が世なら天下を狙えたかもしれない。
 自分の陰謀とバラしても、さわやかに場が流れちゃうのもスゴイ才能だ。
 CIAに入ったら、きっと大活躍しますよ。


「受諾いたしました」
「全力で迎え撃つと…………」


 刃牙が挑戦を受けた!
 昭和三十年から地下闘技場・王者の見届け人をしている老紳士が久しぶりに登場して刃牙の返答をつたえた。
 運転手の人は「松尾さん」と名前が判明しているのだが、こっちの老紳士は名前が未詳である。
 髪がちょっと伸びているし、その上ヒゲだ。油抜きしたドリアンとカン違いするところだった。

「受けたのか」

「はい」
「チャンピオンであるなら当然のことと…」

「一言の反論もなく?」

「はい」
「至極すんなりと」


 御老公も刃牙が勝負を受けるとは思っていなかったようだ。
 刃牙は241話で戦わない宣言をした。
 徳川家の情報収集能力で、その宣言もキャッチしていたのだろうか。
 どちらにしても、闘わないはずの刃牙が心変わりしたらしい。
 いったい、どういう心境の変化だろう。

 御老公と老紳士のやりとりを聞くかぎり、刃牙がゴネると考えていろいろな策を用意していたようだ。
 最低でも色っぽい姉ちゃんをダースで用意していただろう。ただ、刃牙はマニアック好みなので通用しない。
 ガン×ソードの漫画担当を戸田泰成(漫画版スクライド)に変更するというのも有効だ。ガンソードは、今週で終わっていたけど。

 とにかく、刃牙にチャンピオンとしての自覚が残っていたことが おどろきだ。
 最大トーナメント以後は地下闘技場で闘っていないのに。
 なんか、非常にウソくさい。返事をしたのは本当に刃牙か?
 サンドバックの前例もあるし、中身が加藤なんじゃないのか?

 それとも、梢江ちゃんと一戦やらかす直前でパンツも脱いでいる状態だったのだろうか。
 とにかく続きがしたいので、追い返すために話もちゃんと聞かずに承諾したのかも。
 なんの話だったのか、もう忘れていたりして。
 いまごろ富士山にむかって逃亡中かもしれない。
 もちろん梢江を抱えたままで。


 160話に登場したバーリトゥードのチャンピオン・デイヴのジムで、Jr.はサンドバックを叩いていた。
 指が折れているから、まともに叩けるものではない。
 それでも、デイヴが止めるのも聞かずサンドバックを叩き続ける。
 この状態で闘えるのか?
 次号へつづく。

 さて、デイヴのモデルと思われるPRIDEミドル級王者シウバは、グランプリで闘っている。
 ちなみに板垣先生の優勝予想はシウバの同門であるショーグンだ。
 つまり、シウバが負けると見ているのだ。
 なんか、デイヴの身にも予期せぬ災厄がふりかかったりしそうだ。


 ヤル気になったのはいいが、Jr.の体はついてこない。
 どうしようもなく大ピンチだ。
 こういう状況だからこそ、アライ父がほこる魔性の頭脳をいかす時だろう。
 それとも、ショー☆バンの監督のようにジラす作戦でいるのだろうか。
 短期間で治るケガとも思えないので、とっておきの秘策が必要だと思う。

 そして、249話から姿を消したままだった刃牙が、ついに動く。
 決戦に向けて鍛えているはずだが、どういう感じに仕上がっているのだろう。
 梢江は頻繁にJr.とデートしていた。だから、梢江といちゃつき三昧という可能性はうすい。
 ひたすら富士の樹海まで走っていたのだろうか。

 意表をつく展開で、自宅に引きこもってニートに転職したのかもしれない(刃牙は学生だからニートではないけど)
 激ヤセから回復するのに喰いまくった反動で、太りまくっているのもありえる。
 ニートというより、ミートだ。
 引きこもるぞ、ニート! 転がるほどに、ミート!
 次回から第三部『太ったらー バキ!(床を踏みぬく音)』が始まる。

 冗談はさておき。
 試合を受けるという話の雰囲気が、なんとなく偉そうな感じがする。
 オレ、チャンピオンだし〜。蹴りのないボクサーなんて楽勝っスよ(※ 中国のことは忘れている)。
 なんか、刃牙はそういう受け答えをしていそうだ。
 Jr.よ、ガンバレ! 刃牙なんてブチのめせ!
 でも、梢江はやめておけ。
by とら


2005年9月1日(40号)
第2部 第265話 人体(645+4回)

 まるで水芸のように、Jr.が全身から水をふき出している。
 大量に汗をかいているのに、長ソデ・長ズボンを着ているからだ。
 服とギブスの間から噴水のように液体が出ている。
 すさまじき芸人魂だ。いや、芸人ではないが、客を呼べるパフォーマンスであることに違いない。
 これでは、さすがのデイヴも近づけまい。

 デイヴが離れた場所から見守るなか、Jr.は何時間もサンドバックを叩きつづけていた。
 叩きつづけるJr.もすごいが、見つづけるデイヴもタダ者ではない。
 アンタも格闘家なら触発されてトレーニングを始めるべきだ。
 でも、床が汁まみれになっているので、トレーニングできないのかもしれない。

 Jr.は一日三十時間の密度で練習を重ねているようだ。
 しかし、どんなに立派な豪邸をたてても地盤がしっかりしていなくては崩れてしまう。
 両手両足を故障しているJr.は地盤が最悪の状態だ。
 まず、体を治すところから始めたほうがいいと思う。
 鎬紅葉に依頼すれば、ありえないぐらいに超回復させてくれそうだ。
 なぜか日本語も上達するかもしれない。

 デイヴが熱心にJr.を見ていたら、となりに見知らぬおっさんが出現していた。
 サングラスに帽子といういかにもあやしげな格好をしている。
 もちろん、アライ父だ。独歩もそうだけど、なぜこの世界のおっさんは怪しげな格好をするのか。
 実は注目を集めたいのだろうか?

 気がついたら室内に入られていた。相手に悪意があればキケンな状態であった。
 ザル状態の警備と、自分の甘い警戒心に恥じたのか、デイヴはアライ父へちょっとキツめに注意する。
 デイヴの猛抗議に、アライ父はさっそうとサングラスと帽子を外してみせる。
 まるで8時45分ごろの水戸黄門だ。印籠をみせて、まさにクライマックスである。
 中には無学な人がいて葵の紋を見てもポカーンとする人もいると思うのだが、どうなんだろう。
 とりあえず、格闘家デイヴはそういう粗相はしない。慌てて平伏して脱帽する(気分的に)。

「俺がマチガっていた」
「アンタには必要だよなサングラス」
「アメリカ大統領より有名人と言われるアンタが…」
「素顔で出歩けるハズがねェ」


 デイヴ……なんて表情(かお)をしているんだ。
 ものすごい負け犬顔だぞ。
 素顔を見せるだけで相手を屈服させる。武道的には、これも完成形の一つなのだろう。

「アンタは全てのファイターにとって神だ」
「むしろ俺がこの空間にいていいのか尋(き)きたいくらいだよ」

「くつろいでくれたまえ絶対王者よ」


 かわいそうになるぐらい腰が低い絶対王者デイヴであった。
 逆にアライ父は丁重に扱われるのになれた態度だ。
 貫禄はアライ父のほうが数段上である。
 この原稿が描かれていたとき、デイヴのモデルであるシウバはミドル級無敗の絶対王者だったはずだ。
 だが、雑誌が発売された今は敗北を知ってしまった元王者になってしまった。
 板垣先生がこんな表情を描いたから不幸のシンクロニシティーが発生したのかもしれない。

「一切の戦略が立たずとも……」
「まずは叩け」


 Jr.は父に教えられた行動を実行していたのだ。
 無意味に叩いているようでも意味があった。無意味ゆえの意味である。
 なんかドーナツは穴があるからスバラシイ的理論みたいに、哲学方面へ逃げられた気もするけど。

「科学的ではない」
「だがそれでいい」
「近代医学がどうあろうとも」
「負傷した部分に負担を与え肉体に対応させてしまう
 古流武術にはいくつもの実証例がある」
「人体にはそれほどの力がある」


 現実主義者であるオリバとは正反対のアメリカ人だ。
 実際に起きている現象を受け入れるという点では現実主義なのかもしれない。
 でも、どちらかというと瀕死の重傷からよみがえると強くなるサイヤ人主義だ。
 範馬星人に勝つためには、こちらも異星人にならなくてはいけないのか。
 まあ、強いんだ星人という点で、すでに一般地球人ではない。

「バキ・ハンマがお前の挑戦を受諾した」
「ただし」
「条件はベストコンディション」
「最高の状態で試合場に立て」
「ならば相手をしてやろう」


 なんという人をなめきった態度かッ!?
 主人公の風上にも置けない。置くとニオイがただよってきそうだし。
 しかし、このセリフは本当にバキが言ったものだろうか。
 もちろん、ありうる。ヤツならいいかねない。(信用度ゼロ)
 われらが主人公は、いざという時の暴言っぷりには定評がある。パンツぐらいはかせてやれ

 だが、アライ父の策略という可能性が非常に高い。
 Jr.の闘争心をかきたてるためのウソという気がする。
 一流の演技ができるアライ父ならやりかねない。
 アライ父が刃牙の言葉を伝えるとき、Jr.のほうを向いていない。
 この人は偽情報を流すときは相手の目を見ない傾向があるので、今回も策略であると見る。

 ついでにバキを弁護する。最近の彼はこういう事をいう人ではない。
 今のバキは、闘いの喜びよりも、手っ取り早い勝利を求める。
 試合開始直後でエンジンのかかっていない郭春成を容赦なく撃沈したのは記憶に新しい。
 それこそ、勝利のためなら試合の前日に刺客を派遣するぐらいはやりかねない。まさに、ド外道だ。
 たとえば、梢江を送りこみJr.の体力を奪わせるとか。
 今のバキなら、そこまでヤる。やると信頼している。

 刃牙の暴言がJr.の心に活を入れた。
 折れた刃(やいば)は、新たに研がれたのだ。
 Jr.のふるう拳はより速く、より重く、より強くサンドバックに叩きこまれる。
 たよりなかった打撃音も、メジャーリーグ・ホームラン王がフルスウィングでバットを叩きつけているかのような音に変わっている。

 頑丈なギブスが打撃によって砕ける。しかし、叩くのを止めない。
 踏んばりすぎてクツヒモが切れた。しかし、叩くのを止めない。
 足を保護していたプロテクターは壊れ、包帯はほどけ、傷ついた両手両足がムキ出しになる。
 そして、負傷した部分に負担をうけた両手両足は、奇跡の回復をしていた。
 闘う精神を取りもどし、闘う肉体を取りもどした。
 モハメド・アライ Jr. 第二の誕生である。

「スゴいね」
「人体 ♥(はぁと)


 アライ父さんが笑顔を見せたァ〜〜〜〜〜〜!
 やっぱり、すべて計算通りだったのか。
 大統領よりも有名なこの男がセコンドについていると、さすがの刃牙でも危ないかもしれない。
 Jr.大復活で次回・巻頭カラーにつづく。

 実に「バキ BAKI」らしいハッタリイズム全開の復活だ。
 裏返りつつ復元して砂糖水だ。
 刃牙は果糖(カトウ)だったが、Jr.は末糖(スエドウ)を使用したのかもしれない。
 なんにしても、Jr.があれだけ汗をながしているのだから、同じかそれ以上の液体を補充したのは間違いない。
 液体にはアライ父が各方面からかき集めた薬とか入っていそうだな。

 Jr.がますます主人公っぽくなっている。もう刃牙を倒して主役交代か?
 まあ、Jr.が刃牙に勝って真っ白に燃えつきて、梢江と田舎に引っこむという展開もアリだと思う。
 実現すれば梢江がいなくなるし。

 ところで、刃牙はなにをやっているのだろうか?
 対勇次郎戦に向けて特訓しているはずだ。弱くなっていることは無いだろう。

 親父と戦うと宣言してからずいぶんたつ。
 そのわりには一向に戦う気配が無い。
 闘わない理由が無限に出てきて、前進できないのだろうか。
 さしせまった理由として、学校の補習を受けなくちゃいけないとか。
 どう考えても、学校を長期間サボっていたもんな。補習をうけないと卒業できないよ。
by とら


2005年9月8日(41号)
第2部 第266話 挑戦者(646+4回)

 今週のチャンピオンはバキが巻頭カラーだッ!
 モデルはもちろん今回もバキさ!
 たまには本編にも出てこいよ、主人公ッ!
 ちなみに、背景に描かれたポスターにあわせて「グラップラー刃牙&バキの待受画像」のCMが貼りつけられている。芸が細かい。

 ホテル最上階へとのぼるエレベーターの扉が開くと、そこはVIPルームだった。
 このエレベータは各階のボタンがついている。最上階直通ではなく、各駅停車(?)だったようだ。
 エレベーター内の鏡は豪華だが、ちょっとVIPルームの評価が落ちた気がする。
 それとも、このエレベータは普通の客は気がつかないような特殊な場所に設置してあるのだろうか?
 このエレベーターをトリックに使って、密室殺人が起きるのかもしれない。

「Noッ」
「ここからは立入り禁止だ」


 VIPルームへの廊下には二名の屈強なボディーガードたちがいた。
 銃器の所持が違法とされる日本において、格闘能力は重要になる。
 アライ直属の護衛団。四人のしもべは、射撃よりも腕力基準で選ばれたのだろう。
 だが、エレベーターから出てきた男は臆することなく、ある行動をとった。

『デコピン』
『それは――――――
 まるで予(あらかじ)め始めから決めてあったかのような正確さで
 男の(ジョー)射抜き
『僅かそれだけのことで』
『男の意識は脳の外へハジき出された』


 鏡に映った巨凶な影で予想はしていたが、こんなデコピンを撃つ人間は一人しかいない。
 いや、厳密にいうと彼は地球人では無いのかもしれないけど。
 ムエタイの神と呼ばれるチャモアンすら屠(ほふ)った神殺しのデコピンだ。
 そういえば、ムエタイってデコピン耐性が低いな。

 一人目がデコピンで撃沈した直後、二人目が襲われる。
 猫科の猛獣が獲物にツメを立てるように、二人目の頭に指がくいこむ。
 そして、高速で揺らす。

『たったそれだけである』
『しかしその無造作な行為が男へもたらした事態は
 甚大であった』
『彼の頭蓋骨内部では内壁へ繰り返し叩きつけられ――――』
『まるでボクサーが強烈なショットを喰らうのと同じ様相を呈(てい)し』
『またしても意識は脳の外へと……………』


 意識が……、というより魂が抜け出たようなダメージだ。
 ヘヴィウェイトのパンチをくらうと百万匹のアリが足元から這いあがるような感覚になる。
 つまり、アリが這いあがってくるのを感じ取れる時間があるのだ。
 しかし、この勇次郎の攻撃は、いきなり落とし穴に落ちたように意識が飛んでいる。
 なにが起きたのか意識する時間が無いのだ。ヘヴィウェイトのパンチよりも強力かもしれない。

 勇次郎ならサイボーグと闘っても、脳みそに直接振動を与えて倒せそうだ。
『銃夢(ガンム)』に出てくる周破衝拳(ヘルツエアハオエン)みたいな技で。
 勇次郎・最強幻想の地平がまた広がった。


 散歩をするような気楽さでボディーガード二人を眠らせ、奥に進む。
 さらに二人の護衛が立ちふさがっていた。
 トラブルが発生した場合、本来なら入り口の二人が侵入者を止めるのだろう。
 真に危険なら、奥の二人がアライ父と共に脱出する二段構えの陣形だ。
 入り口の二人から連絡が無いのに侵入者がいるという時点で、状況はきわめて危険である。
 この時点で二人は異常事態発生に気がつく必要があった。

「通るぜ」

 危険を具現化して人形(ひとがた)にかためたような存在がそこにいた。
 闘気で背後の景色をゆがませながら、範馬勇次郎がハンドポケットで登場だ。
 読者的にはずいぶん前からバレバレだったが、ボディーガードにとっては突然のテロ(恐怖)だ。
 見開きページで戦慄している。

『男の放つ尋常ならざる戦力を示すオーラ』
『それが我を遥かに上回る』


 なんか、オーラまで出ちゃったらしい。そして、オーラ力で負けている。
 ボディーガードたちには勇次郎が身長二十メートルぐらいに見えているようだ。
 というか、デカすぎて足しか見えない。ネズミがゾウを見上げたら、きっとこんな感じだろう。
 闘う前から飲まれている。

『想像もつかぬ戦力差!』

 刃物や銃はもちろん、戦車を持ってきても踏みつぶされそうだ。
 思い描いた戦力は戦闘機を載せた空母一隻であった。
 空母は現代海軍の主力だ。海軍は主力である空母を中心に攻撃と防御の編成がなされる。
 戦術レベルでは最大の戦力といえるだろう。

 ちなみに、空母は自力で補給ができず占領行動もできないだろうから戦略単位の戦力ではない。
 勇次郎は補給(謎の収入+食事+治療)や占領(倒した相手の精神的な屈服)も個人でできている。
 戦力は完全武装の空母一隻相当かもしれないが、行動はより柔軟な対応が可能だ。
 同じ部屋に空母がいたのでは、大統領も困るわけだ。

 かつて、烈が勇次郎の戦力を大国が仕掛けてくる近代兵器による武力と評していた。
 かなり的を得たたとえだったようだ。
 空母を運営できる国は限られているし、まさに一国の軍事力に匹敵する男だ。

「助けにきたよ」

 アライ父が助けに入った。
 笑顔と共ににこやかに登場する。我が策成ったりの笑顔ではない。
 あの表情は、人に見せちゃダメだ。

「あなたを置き去りにして」
「駆け出すところでした」

「到底逃げきれまいがね」


 範馬勇次郎の圧倒的実力をおだてつつ、負け犬になりかけたボディーガードに釘を刺す。
 さすがアライ父だ。一言で二度おいしい話術を使いこなす。
 話術だけなら範馬勇次郎にも勝てるかもしれない。

 でも、へタレ宣言したボディーガードもなかなか立派だ。
 人間は自分のダメな部分を認めたがらない。それが自分の専門分野だったりするとなおさらだ。
 真の一流こそが、自分の失敗や欠点を認めて改善しようとする。
 ボディーガードが素直に自分の敗北を認めたのは、プロ意識が高いからだろう。
 アライ父が雇うだけあって、超一流だ。
 あとは、廊下入り口で伸びている二人を解放してあげよう。ほうっておくと風邪ひくぞ。

 Jr.の負けん気の強さは大事かもしれない。
 でも、現状の自分にしがみついているだけでは、今以上の成長はできない。
 より上を目指すために、父の拳で徹底的な敗北を知る必要があったのだろうか。
 と、好意的に考えさせてしまうあたりが、アライ父の魔力だと思う。
 罠だとワカっているのに、ダマされてしまう。

「驚異的な若々しさだ」
「30年前プロレスラー猪狩との試合(ファイト)に」
「東京へ乗り込んだ」
「あのときの印象のままだ」


 範馬星人は成長が早く、老化が遅いようだ。さすが戦闘民族である。
 アライ父は30年前といっているが、それでは時間の計算があわない。

 勇次郎がアライ父とはじめて遭遇したとき、アライは徴兵拒否で三年のブランクを経験していた
 つまり、ベトナム戦争(1960〜1975)末期か戦後と考えていいだろう。
 なおモデルであるモハメド・アリは1966年に兵役拒否をしたようだ。
 作中が2005年なら30年であっているだろう。
 しかし、作中は時間が微妙に止まっている世界なのだ。

 勇次郎の年齢を基準にもう一度考える。
 ベトナムにのりこんでジャックの母・ジェーン(仮)とであったのが16歳と300日だった
 刃牙の母・江珠とであったのは19歳だ。
 ジャックの年齢は不明だが、現在の刃牙はもうすぐ18歳だ。(212話より
 江珠と勇次郎が出会ってから、すぐに刃牙が生まれたとすると勇次郎は38歳前後になる。

 勇次郎の年齢が四十歳前なので、アライ父とあったのは20年前のマチガイだろう。
 いくらなんでも10歳やそれ以下には見えない。
 アライ父は体はよくなっても、脳が回復していないようだ。
 それとも、アライ父は一日三十時間のトレーニングをしているから、時間の流れをはやく感じるのだろうか。
 30年は人間時間でいう24年だったりして。それなら、可能性がわずかに残っている。

「息子(ジュニア)のコンディションは………?」

「チャンピオン バキ・ハンマ」
「彼はいったいどのような戦士なんだい」

 しッ、質問を質問で返したァ〜〜〜〜〜!?
 範馬勇次郎や、吉良吉影にこういう行為をするのはマズい。
 ライオンのオリに入って、たてがみをバリカンで剃るよりも危険だ。
 そんなキケンな行為を平然とやってのけるッ。そこにシビれる! あこがれるゥ!

 ちょっとでも自分が不利になるセリフは1ccも吐きたくない。
 それでいて、少しでも有利になる情報は1mgでも集めたい。
 恐るべき執念の男モハメド・アライであった。

 そして、アライは確信していたのだろう。
 親バカの勇次郎は、バキのことを話したくてしょうがないだろう、と。
 予想通り、質問を質問で返されたことも忘れて、勇次郎は息子自慢をはじめるのだった。
 地上最強の生物であっても、親は親なのだ。

「地上最強の1人には数えられる」

 ものすごい、ベタボメだ!
 もちろん自分をのぞいてという条件つきなんだろうけど、刃牙の最強を認めている。
 勝負は時の運である。絶対と言い切ることはできない。
 それでも、勝つ可能性の高い低いをいうことはできる。
 最後まで勝ち続けることのできる可能性の高い者たちのなかに、範馬刃牙の名があるのだろう。
 それなら、残りのメンバーも教えて欲しいものだ。
 オリバは入っていると思うのだが。

「だから希望(のぞ)んだのだ」

 やはり、アライ父はJr.を刃牙と闘わせようとしていた。
 アライ父も親バカなのだ。
 最強の一人である刃牙と闘わせることで、Jr.をさらなる高見へ押し上げようとするのか。
 親バカで策士な二人の男がかたい握手をかわす。
 全ては数日後、この二人の狙い通りに世界は動くのか?
 次回へつづく。


 予想よりも早い範馬勇次郎の登場だ。
 刃牙は勇次郎との対戦を望んでいるのだから、Jr.と闘った後でないと出てこないと思っていた。
 強化されたJr.に対抗するため、勇次郎が刃牙を強くするのだろうか?

 Jr.の試合前に刃牙と勇次郎が遭遇したら、その場で決着をつけるのだろうか?
 刃牙にとってJr.との試合は義務だ。
 しかし、勇次郎との戦いは、現在の刃牙が唯一望むものだ。
 であった瞬間におそいかかって、いつものように返り討ちにあいそうな予感がする。

 ずっと前から予想の絶えない梢江暗殺説も再燃しそうだ。
 最愛の人をふたたび殺すことで、刃牙の殺意と闘志を燃焼させようという作戦だ。
 単純に、梢江がウザいという気持ちもあるのだろうけど。
 勇次郎が梢江を退場させることに成功したら、世界中の読者がブラボーと叫ぶだろう。
 少なくとも、バキSAGAの時よりも大声でね。
by とら


2005年9月15日(42号)
第2部 第267話 テキトー(647+4回)

 範馬刃牙 vs. マホメド・アライJr.にむけて準備がととのいつつある。
 刃牙サイドはともかく、Jr.サイドだけは確実に仕上がっている。
 しかし、親子二代にわたる因縁がこんなに軽くていいのか?
 Jr.サイドはともかく、刃牙の態度が軽すぎる。せめて誌面に出てくれ。
 準備万端となりつつあるJr.は、(何度目か数えるのもイヤになったけど)梢江を訪問するのだった。

 とうとう梢江がファミレスに来てくれなくなったのか、路上で待ち伏せだ。
 梢江は制服を着ているので、学校の帰りだろうか。
 刃牙のせいで飛騨や中国へ行ったりしていたので、学校は確実にサボっていたはずだ。
 出席日数はちゃんと足りているのだろうか。
 まあ、出席日数だけではなく成績もヤバい刃牙よりははるかにマシだろうけど。

 そばに刃牙の姿はない。
 刃牙はもう学校には行っていないのかもしれない。
 または、補習で居残りだ。
 もしかすると梢江とうまく行ってないのだろうか。
 今回、梢江の態度がキツいのは、刃牙との不仲が原因かも。

「治ったの……?」
「………………ケガ……」

「ベストデハ ナイケド………」
「治ッタモ同ジ………」
「君ノオ陰ダ……」
「ソシテ君ノ彼ノ…」


 ドッキリカメラのネタじゃないかと疑いたくなるほど、Jr.は回復している。
 しかし、格闘者の怪奇現象をしょっちゅう見ている梢江はあまり動揺しないのだった。
 なにしろ、刃牙が急にやせたり元に戻ったりしているのを見たのだ。
 せいぜい「まあ、こういう事もあるかな」ぐらいの感想しか出てこないだろう。

「わたしのお陰なハズないじゃん」

 〜〜〜〜〜〜〜ッッ!
「じゃん」
が出やがったッ!
 マズイ、早急にスネをガードだ。蹴りが来るぞ!
 このままでは、人体のスゴい映像を見せつけられてしまう。
 テキトーな事をいってんじゃねェッ、このヘタレがッ! と梢江はご立腹です。

 目線も合わせず、虚空をにらみながら暴言をはくようすは、雑誌を廃刊に追い込みかねない傾誌の美少女といっても過言ではございません。
 バキ28巻で梢江の顔は一部修正されていたが、今回もコミックス版では加筆される可能性が高そうだ。
 しかし、Jr.は暴言をはく梢江こそがテキトーだという。

「ボクノ言葉ヲ 受ケ止メヨウト シテイナイ」
「イイ加減ナコト バカリ言ウ プレイボーイト 決メテル」

「だってそうじゃん」

「じゃん」
の二発目だッ!
 ヤベぇ、Jr.よそれ以上刺激するな。
 目前の女は、怖いくらい女なんだぞ。花山も烈も、その女がヤったのだッ!

 キケンな梢江はそっとしておく。
 とりあえず、言っていることは正しいように思える。
 負けたのに負けていないと主張したり、Jr.の言動はあやしい部分が多かった。
 あげくに帰り道を待ち伏せするストーカーにまでレベルアップしている。
 これで信用してくれと言われても、困る。

「目的ガ 定マッタトキニ 出ル人ノ力」
「ソレガ イッタイ ドレ程ノモノカ」
「ヒトハ時ニ トイレニ行クコトサエ 面倒ダト思ウ」
「シカシ 同ジ人間ガ バケーションノ為ナラ
 何万キロモ離レタ 海外ヘ旅行スル」


 Jr.の説明で、猛り狂っていた梢江も思わず納得する。
 しかし、納得しちゃっていいのだろうか?
 これでは、目的が定まったときと言うより、目的が好きなものの場合だと思う。
 トイレに行くときはこれ以上ないぐらいに明確に目標が定まっている気がする。
 なにしろ、目的地に行かなくては死あるのみなのだ。

 本当は、目的に行きたいという意志が大事ということなのだろう。
 意志があれば、何万Kmも離れた土地にだって行くことができる。
 まだまだJr.は日本語が下手なのかもしれない。

「君ヲ想イ バキ・ハンマヲ 想ウナラ」
「体ハ勝手ニ 回復ヘ辿リ着ク」


 またまたビックマウスだ。
 Jr.のスゴい回復はアライ父の仕込みだとの疑惑がある。
 知らないうちに「オクレ兄さんアンリミテッド・マックシング」という薬物を摂取していたのかもしれない。
 ジャックと戦ったときに薬の話をしたのも、その伏線だ。
 裏テーマは「薬は絶対ダメ」かな。

 でも、Jr.は体が勝手に回復したと主張する。
 ホテルでの出来事を見ていないとおもって、テキトーな事をいう。
 Jr.はいつもその場その場でテキトーなことをいっている。
 いくらごまかしても、勇次郎が寝ているスキに逃げた過去は消せないぞ。

「バキ・ハンマハ 君ヲ手ニ入レ」
「地上最強 ノ称号ヲ 手ニ入レテイル」


 その二つを手に入れるために、Jr.は刃牙を倒すつもりなのだ。
 範馬勇次郎はよけて歩いたJr.であるが、刃牙はよけないつもりらしい。
 やっぱり、なんかテキトーに調子のいい事を言っている気がする。
 ことわざの「二兎を追う者は一兎をも得ず」を知らないのか?

 刃牙が地上最強と言う情報は、勇次郎→アライ父→Jr.と伝わったのだろう。
 けっきょく、父に操られている気がする。
 Jr.がここまで梢江にアプローチしているのも、アライ父が催眠術をかけたせいかもしれない。
 ライバルの彼女を好きになるというのは、偶然にしてはできすぎている。
 梢江を好みのタイプだとおもい込んでいるけど、術がとけたら一気に熱が冷めたりして。


「アライJr. vs バキ」
「賭けるならどっちじゃ」


 そのころ御老公は、自宅に呼びつけた(?)猪狩に質問をぶつけていた。
 ひさしぶりに登場した猪狩だが、傷痕はのこったままだ。
 これでは世間に顔を出しにくいだろうな。
 鎬紅葉に依頼してキズの整形手術をしたほうがいいとおもう。

 猪狩は1976年にアライ父と闘っている。
 当時すでにアライ流は完成しつつあったらしい。

「間合に入るや否や
 どんなタックルを試みようが――――――
 たちどころに撃ち落される!!」


 そのイメージが脳裏に浮かび、ふみこめなかった。
 なにしろ、アライ父は試合の直前に範馬勇次郎と出会っているのだ。
 地上最強の生物から強烈な刺激を受けて、アライ流は劇的な成長を遂げたであろう。
 アライ父の体に残るオーガの残り香が猪狩の足を止めたのだろう。
 真剣勝負だからこそ、カッコ悪く世紀の凡戦となった。

 それが、30年前のことらしい。
 って、やっぱり30年前なのか?
 となると、作中は2006年なのかッ!
 いつの間にか、時間を追い抜かれているッッ!?
 すでに作品は一歩先んじていたようだ。

「アライJr.が勝利します」
「必ずッ」


 猪狩は太鼓判を押すのだった。
 そうは言っても、範馬は宇宙人みたいなものだから、勝てるとは思えない。
 範馬の恐ろしさは、単純に肉体が強いと言う点にある。
 肉食動物と草食動物の闘いだ。地球人が闘うにはちとキツい。

 猪狩もハッタリ系の人だし、イマイチ言葉に信憑性がない。
 それに、シコルスキーの実力を見誤ったと言う前例がある。
 Jr.本人も見てもいないのだし、猪狩が間違っている可能性はとても高い。


 一方、なぞの料亭(?)では空になった皿が大量に重ねられていた。
 普通は食事が進むにつれて皿を出したり引っこめたりするものだ。
 皿がたまっていると言うことは、内密の話をするため人の出入りを禁じたのだろう。
 そして、密談するのは日本武道界の二台巨頭である愚地独歩と渋川剛気であった。

 二人ほど影響力のある人物になると、普通に会って食事するワケにも行かないのだろう。
 変なウワサがたっても困る。
 弟子やつき人もつけずに、秘密会議をしたらしい。

「アライJr.の勝ちは」
「動かぬかと………」


 独歩もJr.の勝利を予想した。
 猪狩とはちがい、独歩の言葉には重みを感じる。
 なにしろJr.と戦い、勇次郎とも戦った男なのだから。
 渋川先生は、独歩にその根拠はなにかと問う。

「我々のせいです」
「おそらくは試合の当日………」
「まさに試合のさ中にッッ」
「アライJr.が完成するッ」


 最初の独歩戦で、Jr.は闘いの中で進化した。
 独歩はその姿を思い出したのだろう。
 試合中のJr.に何かがおきる。
 アライの背中にもなにか宿っているのだろうか?

 進化する前につぶされる事もあるかもしれない。
 でも、スゴいね人体で、試合中でも大復活しちゃうのかも。
 そうなると、刃牙も手出しできない強さを発揮しそうだ。

 今のJr.がまだ完全体ではないという意見が重要だ。
 現時点のJr.では、刃牙に勝てそうもない。
 だが、完全体になったJr.ならどうか?
 もしかすると、今度こそ範馬越えをやってのけるかもしれない。

 達人渋川もJr.の勝利を予想していた。
 Jr.を知るものの意見はやはり、重い。
 自分たちが一度は倒した相手なのだが、ちゃんと評価している。
 それは、つまり「刃牙 < Jr. < 独歩・剛気」という図式を狙っているのだろうか?

 どちらにしても、範馬の負ける姿は見たいだろうな。
 だって、刃牙が負けたら勇次郎がすごく悔しがりそうだし。
by とら


2005年9月22日(43号)
バキはお休みです

 最近、バキが休載だと話のまとめをしてきた。
 でも、Jr.編はまとめる事ができるほど話が進んでいない。
 すでに半年以上たっているのだが、いまだに外堀を埋めているような感じだ。
 ということで、まとめは あきらめて今後の展開を予想してみる。


 刃牙 対 Jr.の予想を困難なのは、バキが最近出てこないからだ。
 理不尽なまでの主人公力をもつバキのことだから勝利はゆるがないだろう。
 だが、決着にいたるまでの過程が想像しにくい。
 そして不安要素がけっこうある。

 いままでも刃牙が長期間姿を消したことがあった。
 ドリアン編に突入したころと、柳の毒手を喰らったあとだ。
 神心会オールスターズと烈海王が大活躍のドリアン編に出番がなかったのは仕方がない。
 毒手後の失踪は、刃牙が激ヤセしているという衝撃の展開に必要な「間」だった。
 つまり、Jr.との対決前に姿を隠しているのは、なんかの前フリだ。

 刃牙はどういう変化をしているのだろうか?
 勇次郎との決戦をひかえているので、小オリバといった感じにマッチョになっている可能性もある。
 激ヤセでも表紙では健康そうに見せていた過去の実績があるので、体重が百キロを超えていても不思議ではない。


 そんなワケで刃牙の外見がかなり変わっているのではないかと予想する。
 地下闘技場チャンピオンとして闘いを受けたので、闘う場所は地下闘技場だろう。
 いまだにシコルスキーがガイアに土下座をしているかもしれない。
 ある意味、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム状態だ。無限に土下座しつづける。
 安易に土下寝をしたバチが当たったんだな。

 男として、梢江をかけてJr.と勝負だ。などと言わないところが刃牙らしい。
 梢江にたいする執着が無いのか?
 それとも、試合に負けても梢江はキープしておきたいから、地下闘技場チャンピオンの肩書きを持ち出したのだろうか。
 なんにしても、舌戦の段階から刃牙有利という感じだ。


 刃牙だけではなく前座の試合も用意して欲しい。
 初参戦でいきなりタイトルマッチをおこなうJr.に古参の闘士たちが黙っているはずが無い。
 夜叉猿を見て「人間じゃねェ」と見破った伝統派の栗木くん、バランスのいい山本選手、会話のできるムエタイ戦士・サムワン海王、勇次郎討伐に呼ばれなかったのは護身完成かもしれない顔をペイントしただけのピエロ(マイク・クイン)など人材は豊富だ。いや、サムワン海王はちがうか。

 敗者すら魅力的な(むしろ負けて輝く場合もある)バキ世界の住人たちにもう一度チャンスを与えて欲しい。
 そう、もう一度敗北するためのチャンスをッ!

 今度の戦いは、チャンピオンの座を失って、彼女も寝取られ失うものは何も無い状態になる絶好のチャンスだ。
 刃牙にはこの辺で苦い敗北を味わってもらいたい。
 というか、ここで勝っちゃうと残りの選択肢が「範馬勇次郎と戦って死ぬ」しか残らない状況になるんですけど。


 Jr.に勝っても幸せな未来が見えてこないのも不安要素のひとつだ。
 また、Jr.は今まで数回戦ってきたので、手の内を見せすぎているという問題もある。
 読者に新鮮な驚きを与える技は、まだあるのだろうか?

 戦いに梢江が関わっているというのも、よくない。焦点がボヤけてしまっている。
 一読者としては、梢江が誰とくっついてもあまり気にならない。
 ヤングチャンピオンに出張したりしないかぎり、なにが来ようと大丈夫だ。
 戦いの動機が梢江だから、勝敗の行方に興味がわきにくい。

 花田のときのように試合直前でJr.が襲われてポキポキになり、代打が登場する展開はあるのだろうか?
 代打はオリバがいいな。もしかすると、アライ父が出てくるかも知れないが。
by とら


2005年9月29日(44号)
第2部 第268話 大変な勇気(648+4回)

 気がつくと、決戦当日だ。
 Jr.がバックひとつで出陣する。
 戦士をむかえる車はリムジンだった。刃牙を送迎していた運転手の松尾さんが運転している。
 松尾さんは刃牙専属の運転手というわけではないらしい。
 それとも、刃牙に愛想をつかしてしまったのだろうか。

 Jr.にはセコンドがいない。
 真の意味で父離れをして、ひとり立ちしたようだ。
 しかし、アライ父のことだ。なにか企んでいるかもしれない。
 刃牙を闇討ちするため出かけている可能性もある。
 試合場にはポキポキになっている刃牙を放り投げつつ、アライ父が登場するとイイな。

「あのチャンピオンと禁じ手一切なしの試合をするなんて」
「大変な勇気です」


 車中で松尾さんがJr.に話しかける。
 範馬勇次郎という例外(宇宙人だから)を除けば、刃牙は世界最強だと松尾さんは言いだす。
 世界最強にノールールで闘いをいどむJr.は立派だとほめている。
 非常に後ろ向きなほめかただ。
 負けることを前提にほめられても、微妙にうれしくないぞ。

 松尾さんのひそかな刃牙援護を受けて、Jr.はちょっと動揺した。
 やっぱり、松尾さんは刃牙派だったようだ。
 会場に着く前から闘いは始まっているのだ。
 動揺したまま東京ドームに到着し、案内人によって地下六階へみちびかれる。

(武器ヲ手ニスルコト以外ハ―――――― 全テガ許サレル)
(反則ガナイ)
(レフェリーガイナイ)
(K.O.(ナックアウト)スラモナイ)
(究極ノ完全決着ッッッ)


 地下闘技場で闘うのは、あまりにひさしぶりなのでJr.は思わず解説してしまうのだった。
 かなり自然にビビっているので解説していることを自覚していないっぽい。
 路上で闘ったり、擂台賽に出場しても、地下闘技場の空気は一味ちがうようだ。
 同じ球場でも甲子園はちがうんだ、という感じだろうか。

 武器の使用以外は全て認める地下闘技場ルールの再確認だ。
 レフリーがいなくても「勝負あり」でドクターストップがかかることはある。
 K.O.すら無いというのは、今まで気がついていなかった。
 言われてみると、斗羽戦の刃牙や 勇次郎戦の独歩など、ほとんど戦闘不能の状態でも勝負ありではなかった。
 独歩なんか心停止で死亡していた。
 まったく動いていなくても、すぐに試合終了にはならないのだ。

 サムワン海王だって地下格闘技ルールなら、股間を押さえて悶絶しても試合を止めてもらえなかったかもしれない。
 ここでは金的を打たれても「キンタマの一個ぐらいどうってこたないだろう」といわれ更なる残虐ショーが始まる。
 選手の体に優しくない、戦いの聖地だ。


 思わずジャック・ハンマーとの闘いを思い出したのか、Jr.の体が震えはじめる。
 今度は弟にしつこく殴られるのか?
 郭春成戦でみせたように、刃牙はダメ押しにつぐダメ押しで脳を完全にゆらしきる恐ろしい完璧主義者だ。
 ジャックよりも陰湿に攻めてくるかもしれない。
 尿を会場中にバラまくとか、ヤングチャンピオンに出張するとか、平気でやる。
 むしろ、喜びをもってやる。最悪だ。

 ほとんど宇宙人な範馬刃牙への恐怖がJr.の体をきしませる。
 しかし、Jr.は逃げ出さない。
 なにしろ梢江との結婚がかかっているのだ! たぶん。
 俺なら梢江との結婚から逃げたいが、Jr.はちがう。
 Jr.は人外の恐怖からも逃げない、真の戦士なのだ! たぶん。

「今夜も大勢集まってます」
「あなた様の勇気を見るためです」


 案内人まで精神的プレッシャーを与えてきやがる。
 地下格闘技場は刃牙のホームなのだ。
 圧倒的不利な状況で闘うことになってしまった。
 いきなり地の利で負けているけど、Jr.は大丈夫なのか?

 Jr.は勝利を期待されていない。
 観客は猛獣に人間が闘いをいどむ勇気を見たいだけなのだ。
 控え室に通されるころには、Jr.の気持ちはすっかりしぼんでいる。
 メッチャかわいそうだ。

「一時間後」
「お迎えにあがります」


 一時間の放置プレイを宣言されて、Jr.は一人ぼっちになった。
 冷たいようだが、試合前は神経質になりやすい。
 一人にしてもらうほうが、この場合はいいのだ。
 ただ、Jr.の場合は死刑執行の前に一服する時間をやろう、的な意味があるかもしれない。

 挑戦者を待たせて、刃牙はゆっくりと会場入りするのだろう。
 それが王者の貫禄であり、特権だ。
 さりげなく遅刻して、四時間ぐらい待たせたりしそうだな。

 Jr.は不安をまぎらわすかのように、はげしく体を動かす。
 しかし、範海王戦の前に見せたような余裕のある動きではない。
 タダでさえ強敵と闘うというのに、いろいろとプレッシャーをかけられて沈む寸前だ。

(俺ハ――――――――――――――――――)
(勝テルノカ!?)


 すっかり悲観的な気持ちになっている。
 ジャックと闘う直前は、いつでも刃牙をたおして梢江をうばったるという勢いだったのに。
 短期間で、ずいぶん腑抜けてしまった。
 というか、すごいね人体♥(はぁと)で自信を取りもどしたはずでは?
 刃牙がやらかした「砂糖水で超回復=もっとすごいよ人体」を思い出したら勝てる気なくしたのか?

 一時間(?)はあっというまに過ぎた。
 不安をかかえたままJr.は闘技場へと案内される。
 そこは、地下に作られたおとぎの国だ。
 熱狂する観客がJr.を出迎える。
 悪くいってしまえば、猛獣に倒される人間の登場をよろこんでいる姿だ。
 最近ではシコルスキーの死にざまをおおよろこびで観戦していた。
 世界一 容赦の無い観客たちだ。

「コノ廊下ヲ………」
「戻ルトキ………」
「俺ハ……」
「歩イテ………」
「歩イテ帰レルノカ!!?」


 走って帰れッ!
 弱気でうつの悪循環にハマりきっている。
 次回あたり「冷静に考えたら、梢江と結婚するのって間違っていないか?」とか言い出しそうだ。
 考えるんじゃない。感じるんだ。ブルース・リー先生もいっている。
 梢江を見るんじゃない。感じるんだ。刃牙もいっていた。

 めちゃめちゃ、弱気のJr.が舞台にあがり、次回よいよ範馬刃牙が登場するッ! らしい。
 いままで秘密のベールにつつまれていた主人公が登場するのだ!
 はたして、主人公・刃牙はどのようになっているのだろうか?
 太ったのか? やせたのか?
 体毛が生えたのか? ハゲたのか?
 梢江をかかえたまま登場するのか? 梢江にかかえられて登場するのか?
 予測不可能で、油断できない。

 みんなが白虎の入り口を見ているところ、背後の青龍の入り口から出てきて、Jr.を背後から襲ったりするかもしれない。
 とにかく、現実は甘くないと教えるエゲつない一撃がまっているのだろう。
 やっぱ、恋のライバルなんだから執拗に股間を狙ってくるんだろうな。
by とら


2005年10月6日(45号)
第2部 第269話 場(649+4回)

 Jr.は闘う前からビビっている。
 独歩、ジャック、渋川にボコボコにされた記憶がJr.を弱気にさせているのだろう。
 現在の刃牙はこの三人よりも強い。Jr.はそう思ってビビっているのだ。
 本当に刃牙のほうが強いのか、ちょっと謎だけど。

 最大トーナメント後の刃牙は浮き沈みが激しかった。
 腑抜け(柳に敗北)→梢江と合体(柳を圧倒)→毒(柳の毒手)→復活(柳の毒から裏返る)
 なんか柳がからむたびに刃牙の運命が変化している。
 そういえば、勇次郎が柳を倒したのは、刃牙の仇討ちだったのだろうか。


 刃牙の幻影を恐れるあまり、Jr.は前しか見えなくなっていた。
 だが、敵は横から来た。
 正確には観客席の上方から飛び込んできたのだ。

 ちゅど

 すさまじい着弾音をたてて、そいつがJr.の足元に着地した。
 もうもうと砂煙があがり、一時的に視界がゼロになる。
 とつぜんの襲撃にJr.は汗を流すばかりでファイティングポーズをとることも忘れていた。

 煙が晴れていき、襲撃者の正体が判明する。
 飛び込んできたのは範馬勇次郎だった。
 刃牙はどうした?
 まさか、控え室で勇次郎に倒されたのか。

 勇次郎が立っている位置と、上空から飛来したものの着地点が微妙に違う。
 最初に飛んできたのは刃牙の死体だったとか?
 だが、完全に砂煙が消えると闘技場には勇次郎とJr.の二人しかいない。
 とりあえず、刃牙は無事らしい。ちょっと残念だったりして。

「やっと…」
「地に足が着いたようだな」


 範馬勇次郎と至近距離で接触したショックで、Jr.は刃牙への恐怖を忘れたようだ。
 息子の試合を実りあるものにするため、勇次郎が対戦相手に活を入れたことになる。
 刃牙 vs. アライJr.を盛り上げるためのナイスアシストだ。
 さすが地上最強の親バカである。
 息子のために料理の下ごしらえまで してくれるのだ。

「極(ごく)………」「近い将来…」
「あいつは俺に牙をむく」
「そして」
「18歳の小僧ながら」
「そうするに相応しい力を持ち始めている」
「オマエが今から闘う相手は」
「そんな漢(おとこ)だッッ」


 ある意味、ツッコミどころ満載のセリフである。
 近い将来牙をむくって、刃牙は十三歳のころから殺意のある牙をむきっぱなしですよ。
 むしろ、最近のほうが円満な感じがする。
 今までの刃牙は弱かったので、牙ではないとでもいうのだろうか?

 ただ、勇次郎の愛情表現は常人とは違っているっぽい。
 刃牙がみせた憎しみを、勇次郎は愛情表現だと受け止めていたのだろうか。
 最近はちょっと仲良くなったので、牙をむいていると感じているのかもしれない。

 いつの間にか誕生日をむかえて、刃牙は十八歳になったそうだ。
 大擂台賽編から一ヶ月ぐらい経過しているのだろうか?
 誕生日にどんなランチキ騒ぎがあったのか、想像したくもないので流します。
 ラブコメ漫画なら誕生日は重要なイベントなのに、みごとにスルーしやがるとは、恐れいった。

 そして、刃牙は自分に匹敵するであろう戦力だとベタボメする。
 あいかわらず、ものすごいレベルの親バカだ。

 勇次郎が闘技場の中心で親子愛を語っているとき、観客席にて松本梢江が不吉な美顔を披露していた。
 とりあえず、刃牙が梢江同伴で入場するという最悪のシナリオは消えた。
 あいかわらず松本梢江は ただならぬ面相で読者のド肝を抜いてくれる。


「どけよ」
「ここは俺の場だぜ」


 いつのまにか刃牙が登場する。
 勇次郎が登場シーンに三ページ半も使ったのに、刃牙は二ページだ。
 あつかいで負けている。あやうく刃牙の存在自体を忘れそうだった。

 登場したとたん、刃牙は生意気な口をきく。
 姿を見せないうちにますます黒くなったようだ。
 トランクスも真っ黒だ。なかのチンポも使いこんで真っ黒か?

 刃牙は入場時にはバンダナを巻いていることが多かったけど、今回は巻いていない。
 なんか心境の変化でもあったのだろうか。
 もう、俺を拘束するものは無いって感じで。

 そして、この場の王者(チャンピオン)として精一杯の虚勢を張るのだった。
 もし、この場にサムワン海王がいたら勇次郎以上の破壊をして見せつけたりしそうだ。
 地上最強の生物を相手でも一歩も引かんという気構えに勇次郎も満足しているっぽい。

 長く姿を見せなかった刃牙だが、外見にめだった変化は無い。
 両手をさげているので、背中に鬼がいるかどうかもワカらない。
 精神的にはよりキケン度が上がっている感じがする。
 最初のイケニエは神の子マホメド・アライJr.かッ!

「死ぬまでやれ」
「そして上がって来い!!!」


 勇次郎は両手をあげて二人をたたえる。
 気分はもう見届け人だ。
 親バカ モード超全開のフルスロットルだ。
「上がって来い」とは、まちがいなく刃牙に対しての発言だ。親バカが止まらないッ!
 Jr.がちょっとかわいそうだなぁ。

 そして、もう一人の親バカであるアライ父は観客席の最後列から静かに息子たちの戦いを見守る。
 動的な攻めの親バカをみせる範馬勇次郎に対し、静かに見守る守りの親バカだ。
 アライ父なら息子の情事に乱入して説教したりはしない。
 別の方向に黒い策略をめぐらしたりするかもしれないけど。

 この闘いは、範馬家とアライ家の戦争なのだ。
 三十年以上にわたる因縁の戦いがついにはじまる。
 Jr.はガウンを脱ぎ、刃牙はやや前屈してかまえる。
 刃牙は組んで闘う狙いだろうか?

 勇次郎は試合場から出ると、開始の合図を告げる太鼓係にせまる。
 息子のために勇次郎が太鼓を平手で叩くのだ。
 もう、どこまで親バカなんだろう。

「はじめいっ」

 衝撃で叩いた面の反対側が破れた。
 すさまじい衝撃が空気を震わせ対面を襲ったのだろう。
 地上最強の開始合図だ。

 合図と同時にJr.は一気に前進するようすを見せる。
 対する刃牙は静かにかまえた。
 因縁の闘いがついにはじまるのだ。
 次回へつづく!


 勇次郎までのりだして、なにがなんでも盛り上げようという気迫を感じる。
 次回からが本格勝負だ。
 刃牙がいきなり寝っ転がって、猪狩アライ状態になったりして。

 独歩&渋川の予想では、試合中にアライ流が完成するらしい。
 最初は刃牙が優勢で、ピンチになったJr.が覚醒するのだろう。
 今度は刃牙がピンチになることで範馬が目覚めて逆転する。
 試合の流れは、たぶんそんな感じだろう。

 とりあえず、刃牙は組みに行くのだろうか。
 組みついてしまえば、どうってことはない。蹴りのほうがリーチもパワーもある。
 などの対ボクシング名言を連発して欲しい。

 でも、刃牙世界のボクサーって、組みつかれて負けたり、蹴りで負けたりしないんだよね。
 ユリーは握撃を受けて敗北のきっかけになったけど。
 刃牙が柴千春戦法をしたら、ちょっと尊敬する。
by とら


2005年10月13日(46号)
第2部 第270話 チャンピオン(650+4回)

 バキになって270回目、グラップラー刃牙から数えれば650回目だ!(斗羽vs.猪狩の外伝はふくむ。SAGAはのぞく)
 そんなわけで長期連載の節目(650回ではイマイチだが)のタイトルは「チャンピオン」だ。
 掲載紙がチャンピオンだけに、チャンピオンなのかッ!

 今回は細かいところにも突っ込んでいかないと、その間 実に2秒!!!で終了してしまう。
 今のうちに、しっかり触れておかなければ こっちがヤラれるッッ。
 立っていられなくなる……ッッ。まるで闘いッッ。
 立ち読みですまさず、買って家で座って読もうという話だ。
 まさに真剣勝負である。
 なお、一部に期待されていますが、チャンピオンは裂きませんのであしからず。

 バキとJr.を横から見た図と、Jr.視点の図が並んでのっているのが今回のコマ割りだ。
 ドカベンと野球狂の詩が、木曜日発売のチャンピオンとモーニングで別視点の同時連載をやっていることに対抗したのだろうか。
 どうせなら、刃牙と梢江がファイトする「SAGA」と柳がのぞく「バキ」で二元中継して欲しかったものだ。
 ウソです。

 人間、苦しいと、もっと苦しかったころを思い出す。
 あのころに比べたらマシだ。
 アレを乗りこえられたんだから、今だって克服できる。
 そんなわけで、一人一冊はSAGAを買うと良いかもしれない。

(来タ――――――――――――
 射程距離………)


(マッスグ)
(最短距離)
(勇気…)


 身長差があるので、Jr.はかがみ気味で背中を丸めている。
 対するバキは背を伸ばしてマッスグに歩く。
 構えすらとらず、ノーガードのまま近づいてくる。
 たしかに、勇気あるノーガードかもしれないが、Jr.をなめているだけかもしれない。
 もしかすると、勇次郎が独歩戦でみせた御殿手(うどぅんでい・うどんで)の歩行をマネしているのだろうか。

 この攻防はJr.と渋川さんの二戦目と同じ構図だ。
 相手が無防備に間合いへ入ってくる。
 こっちは間合いをあけるか、攻撃するかを選ぶ。

 ノーガードの敵にビビって間合いをあけるのは、みっともない。
 なにしろ、顔面がガラあきなのだ。つい攻撃したくなる。
 相手はすでに間合いに入っているので考える時間はあまりない。
 どうしても、単純な攻撃してしまう。
 そして、それは敵の思うツボなのだ。

(右!!!
 外レタッッ)


(入ラレタッ)
(迅(はや)ッ)
(来ル)


 接近するバキに、Jr.はあわてて右ストレートを叩きこむ。
 ちなみに人は物を投げつけられたとき、とっさに利き腕でガードすることが多い。
 Jr.が右を打ってくるのは、刃牙に予想されていた可能性がある。
 右ストレートのはるか下を刃牙がくぐった。
 高速タックルのような型で、刃牙は理想的にJr.のフトコロに入った。

 入神の域にたっしたJr.の動体視力ですら、刃牙の足しか見えていない。
 攻撃の瞬間はJr.であっても視界が狭まるのだろう。
 カウンターのタイミングをみごとに読みきった刃牙のカンがすごいのだ。

 このまま足にタックルすれば、Jr.をたおす事ができる。
 マウントをとられたボクサーは絶体絶命だ。
 猪狩アライ状態を克服しているJr.であっても、マウントをとられるのは避けたいだろう。
 この状態から脱出する秘策はあるのだろうか?

(喰ッタ!)

(右)
(強打)
(重イ)


 Jr.をグランドに引きこむ絶好のチャンスだった。
 しかし、刃牙が選んだのは右フックだった。
 あえて敵の得意分野で攻めている。おそろしく意地悪な作戦だ。
 漫画界の流行(三国志とかホストとか甲虫とか)に敏感に反応する王者(チャンピオン)の戦略である。

 ホスト漫画であっても
『獅子堂 豪馬 「GO!」のNo.1ベテランホスト。巨体をフルに活かして繰り出される技は、圧倒的な破壊力をもつ!!』
なんてキャラクターが闘うあたりチャンピオンらしい。

 刃牙のフックは、体をひねってネジ込むような一撃だった。
 しかし、喰らいながらも「右」と判断できている。
 下を見ないで歩いていたら、いきなりマンホールの穴に落ちる。そんなドリフっぽい状況だ。
 自分の身になにが起きているか、理解できているだけでもすごい。
 もちろん、あんまりフォローになっていないんだけど。

(………ッッッ)

(チャンピオン)
(強イナァ……………)
(ダウン?)


 刃牙に打たれて、首がヘンな方向を向いちゃっているJr.だった。
 この状況でも倒れる自分を自覚しているのは、ほめるところなんだろうか?
 倒れることを自覚できなかった郭春生範海王よりは数段マシだ。

(………ッッッ)

(…………)


 なんとか刃牙に視線をもどすが、Jr.はそのまま崩れていく。
 しかも、ダウン時に後頭部を地面に打ちつけるという最悪の倒れかただ。
 後頭部を打つと脳震盪レベルが上がる。
 もしかして、…………………終わった?
 バ…バカな…。か…簡単すぎる…。あっけなさすぎる……。

 衝撃の展開にゲストのレイザーラモンHGも大興奮だ(ちがう)。
「オ―――――ッ、チャンピオン、フ――――ッ!!
 バキ、フ―――ッ!! 浦安、フ―――――ッ!!」


 まったくもって意味不明だが、非常によくわかる。
 HGはバキと浦安がお好きなようで。
 特に刃牙は素で使用(つか)っていそうで、ちょっとイヤだ。
 間違っても舞乙HiME、フ―――ッ!! なんて言わないだろう。

 プロレスの「ハッスル!」参戦ということでレイザーラモンHGはチャンピオンのインタビューを受けている。
 なお「ハッスル!」には狂言師の和泉元彌も参戦するので、こちらもインタビューを受ける日が来るかもしれない。
 むしろ、元・陸上自衛隊 空挺団で漫画家の板垣恵介が電撃参戦という可能性もあるかもしれない。
 でも、板垣先生はプロレスができなさそう。たぶん、真剣(シュート)しかできない。
 軍事格闘技を使って金的狙いそうだし。

 話をもどして、バキ、フ―――ッ!!
 大歓声が闘士二人をつつむ。
 Jr.が倒れるまでの展開は、スロー再生をしたような静寂の中での出来事だった。
 ここではじめて通常再生となり、音が戻ってきた。

 Jr.はみごとに一撃死だ。
 眼が死んでいる。
 見おろす刃牙の眼も冷たい。勝利の喜びや興奮はコイツにはないらしい。

 あっけない決着に範馬勇次郎氏も表情がかたい。
 アライ父は渋い顔だ。
 みんなの注目の的になっているJr.の眼に光が戻ってきた。
 天井の照明が、場内の歓声がJr.に届きはじめる。
 そして、完全に覚醒したJr.はすぐさま起きようとするのだが………

「どうだい」
「まだヤレるか」


 Jr.を徹底的に殴った時のジャックそっくりなセリフだ。
 おそらく刃牙はジャックから情報を得たのだろう。
 でないと、こんな的確な嫌がらせはできない。
 本能でやっているとしたら、宇宙人レベルの天才だ。
 やはり、地球人では範馬星人に勝てないのだろうか?
 圧倒的な刃牙ペースで、次回へつづく。


 序盤でJr.が劣勢になるというのは、予想通りだ。
 でも、ここまでダメな子だったとは思いませんでした。
 機動戦士ガンダムSEED DESTINYの最終的な主人公・キラのように、迷いがあったと言い訳をしそうだ。
 親友のアスランをバランバランにぶった斬る時、キラは迷わなかったのか?

 話をもどす。
 Jr.が集中力を切らしていた可能性はある。
 会場で改めて梢江を見たら、結婚すべきかどうか迷いが生じたのかもしれない。
 それとも、梢江の色香に迷ったのかもしれない。
 思い切って、僕ァ君に酔っちゃったよという口説きモードか。
 修学旅行のバスで いろは坂って感じに酔っていそうだ。


 Jr.が油断していようが、実力だろうが、ここまでは独歩と渋川さんの予想通りだ。
 ただ、Jr.が純粋な打撃戦で負けたのが不安要素になっている。
 肝心の打撃で負けたのでは、アライ流が完成してもダメっぽい。
 達人のお二方はそこまで計算に入れているのだろうか?

 偶然なのか、刃牙がとった戦法は渋川さんのものに似ている。
 精神的に追いつめる方法はジャックそのものだ。
 Jr.はつらい経験を超えたので、こういった手段に免疫がついているはずだ。
 対応策はすでにJr.の中にある。たぶん。
 次回はバキが冷や汗をかく番、かもしれない。


 前回、バキ世界のボクサーは組み技・蹴り技で負けたことがないと書きました。
 掲示板で弐兎那さんに指摘されたのですが、「グラップラー刃牙 126話」でボクサーが組まれて負けています。
 負けたボクサーはジョージ・ハーマンで、倒したのがロリオン・グラッシーだ。
 すっかり忘れていました。情報ありがとうございます。

 ジョージ・ハーマンはジョージ・ホアマンがモデルだろう。
 そして、ホアマンはモハメド・アリと因縁の深い選手だ。
 この偶然ッ、なにか不吉なものを感じる。
by とら

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