今週のバキ201話〜210話

バックナンバー    今週の餓狼伝(最新版)    今週のグラップラー刃牙(アニメ版)
今週のバキ→

2004年3月11日(15号)
第2部 第201話 中国連合軍 (581+4回)

 生き残った中国産・海王が控え室に勢ぞろい。たった3人だけど。
 さらに武術省の重役三人も雁首そろえて直立不動だ。
 こんな連中を呼びつけることができるのは、中国武術の最高峰・海皇の称号を持つ男だけ。
 国家主席でもムリだろう。

 試合直前の範海王(今日はひときわ克己に似ている)と毛海王を呼び出したり、試合直後の烈を呼んだり、ワガママっぷりも最高峰だ。
 烈は汗をかいていないものの、試合直後で蒸気が出ている。
 あまり長時間立たせていると、また汗で水たまりを作りそうだ。
 誰か対抗して尿で水たまりを作ってみないか。

 呼び出したのは、反省会だった。
 まずは前回のおさらい。烈から「海王まるでダメ」と確認をとる。
 海皇さまが静に怒っています。
 最近の学校はなぜブルマの着用を認めないのですか、キョエェェ〜〜〜ッッってぐらいに怒っています。
 次に現状を確認する。

「一回戦 七試合を終えて勝ち残った中国人はなんと」
「わたしと君のわずか2名」


 郭海皇が動いたッ。
 齢146歳の老人が車椅子からか立ち上がるとき、ムエタイ金色の玉が砕けると古い預言書にも書かれています。
 この場にムエタイやロシア人はいないが、なにか悲劇が起こりそう。

 寂海王も勝ち上がっているのに、それは同胞ではないので無視らしい。
 郭海皇にとって重要なのは、中国人が勝ちあがることで、それが海王であるかどうかは考慮外のようだ。
 おじいちゃん、外人がきらいなんです。
 つまり、サムワンへの残虐非道なしうちは、私怨だったと。
 考えうる最大の侮辱技をあえてしかけたのだろう。郭海皇、おそるべし。

「武術省の御三方」
「利き手を前に」


 郭海皇が獲物の前に立つ。
 ダウンタウンにいじられる若手芸人のように、三人が利き手を出す。
 利き手というところに、危険すぎる響きがする。
 きっと視聴者から抗議が殺到するような、すごい罰ゲームが始まるのだろう。

「キレイな…まるで女子(おなご)の手じゃな」

 拳ダコがあるわけでもなく、傷だらけでもない。
 日常生活の延長で武術を学んでいる手だろうか。

 ズン

 郭海皇が三人の手をまとめてクシでつらぬいた。
 おでんの具のようにクシで縫いつけられ、三人の手は一体となった。
 悲鳴をあげるより早く、郭海皇の手が動く。

 ゾッ

 ボタッ


 手刀が一閃し、三人の利き手がまとめて斬り落とされた。
 自分の重要な部位がそぎ落とされる絶望的な光景に、三人は声にならない悲鳴を上げ、必死に止血しながらうずくまる。

「この不祥事を招いた元凶」
「きさまら武術省にこそある」
「ペナルティーじゃ」


 不十分な教育による海王の弱体化、テキトーに組まれたトーナメント表、勇次郎の参戦を許すなバカ、ついでにオリバに乱入さすな。あと梢江いらん。
 これらの不満が郭海皇にはあったはずだ。
 しかも、手を出させてみれば、デスクワークばかりしている役人のような手だった。
 こんな手は不要だ。そんなことを考えながら手刀を振るったのだろう。

 それでも、首を刎ねられたり、玉を抜かれたりしなかっただけ、良かった。
 中国は、わりとサクっと死刑にしちゃう国なので、郭海皇はあれでも穏便なんだろう。
 もしかすると安易な死より苛烈な生を受けろという、厳しい処罰かもしれない。
 そんな訳でサムワンには第二の人生を歩んで欲しい。
 関係ないが、オカマのキックボクサーで話題になったパリンヤーはタイに戻って生転換をしたそうだ。

 どちらにしても人の手首を三本まとめて切り落とす達人のデコピンだから、レンガも砕けよう。
 砕けたサムワンのレンガに哀悼を。

「海皇の名を」
「外に出してはならぬ」


 そして、ふたりの男が入ってきた。
 一人は野性味あふれるラテン系な容貌の若いロン毛イケメンで、今一人は黒社会にどっぷり漬かってシワの数だけ人を殺していそうな中年だった。

「この両名を加えて中国連合軍とする」
「儂が120歳の時の子 春成(シュンセイ)と……」
「親友の龍君じゃ……」


 いきなり中国連合軍が結成された。
 周囲の都合は一切聞かず、決定事項のみ押しつける。勇次郎に対抗しうるワガママっぷりだ。

 というか、120歳で子を成すというあたりも怪物だ。
 干物かミイラのような容貌であっても、中身は汁気たっぷりのジイさまだったようだ。少なくとも26年前までは現役だったらしい。
 まあ、劉海王だっていまでも現役っぽい。これが中国四千年の房中術だろうか。

 なんだか知らないうちに「軍」が結成されたが、この軍の目的は何だろう。
 控え室で異国人を闇討ちするのだろうか。恐怖の尊皇攘夷が始まりそうだ。
 今ごろ、「倭の鳥インフルエンザめッ」と言われて梢江ちゃんが、「美利堅(アメリカの中国表記)の狂牛がッ」といわれてドリアンが襲われているかもしれない。
 ふたりとも、試合とは関係ないんだけど。

「お待ち下さい」
「私と」
「この範氏の試合はどうなるのです」


 自分たちを置いてきぼりにして、勝手な展開にされているので、毛海王が質問をはさむ。
 緊張しているのか、おねぇ言葉じゃなくなっている。
 たしかに毛海王の疑問は当然だ。
 しかし、投下される爆弾を見学しに、落下地点へ行くバカがあるか。

 コッ

 郭海皇の人差し指一本拳が唇の下にめり込む。
 毛海王、頭から落ちて完全に沈黙する。
 思わずおどろいてしまう烈と範海王だった。
 新加入の郭春成と龍はまったく動じず。やはり、このふたり黒社会の住人だ。

「連合軍……」
「完成と」


 目的もはっきりとせず、過程もうやむやのうちに、人数だけ合わせて連合軍が完成しちゃった。
 次週は休載なので、再来週につづく。

 で、中国連合軍はなにをするのか。
 トーナメントはすでに組まれているので、大会をブチ壊して好きに試合を組み替えそうだ。
 とりあえず、現状を整理すると以下の面子となる。

・中国連合軍5名[郭海皇、烈海王、範海王、郭春成、龍]
・夷狄混成軍(仮)5名[範馬勇次郎、範馬刃牙、オリバ、Jr、寂海王]


 本人のあずかり知らないところで、仲間はずれにされている寂海王がとてもかわいそうだ。
 それと、混成軍はまったく団結していない。
 放っておけば内部崩壊するだろう。

 それでもキレイに5対5なので、ムリヤリ団体戦にするのだろうか。
 この辺で気がつくのだが、こんなことを言い出した時点で大擂台賽は崩壊している。
 試合に勝ち残っても手続きが違うので、海皇の名を継ぐ資格は得られなさそうだ。
 つまり、最悪でも海皇の海外流出だけは避けられるようにしたのだ。

 しかし、これほど外国人を嫌うのなら、海王襲名をさせなければいいのに。
 いや、させちゃったから武術省の役人どもにお仕置きをしたのか。
 これで、寂海王が陳海王をお持ち帰りにしようものなら、日本へ向けて色々な刺客が送り込まれそうだ。

 ただ、サムワンの海王襲名は「コイツはかませ犬になる」という計算のもと行われた気もする。
 コブラ相手に無防備に股間をさらすサムワンを見て武術省が「これはイケる!」と思ったとか。

 しかし、毛海王が本当に人数あわせのためだけに排除されたのだろうか。
 もちろん、あの中で毛海王が一番弱そうだ。
 でも、うっかり烈が「いや〜、外人たちも強いっスね。あのバキって少年を連れてきたの私なんですけどね。ついでに毒の治療もしちゃいました、ハハ」なんて言ったら、サムワンの三倍残虐な方法で葬られていそうだ。
by とら


2004年3月18日(16号)
バキはお休み

 雄鶏だっておどろいてタマゴ産んでしまいそうな展開で前回は終わり、今週はお休みだ。
 まあ週刊連載2本を同時連載中なので、時にはこういうこともあるのだろう。
 そして、公式サイトではアッパーズの餓狼伝スタッフを募集している。
 板垣先生は、週刊連載2本+隔週連載1本という不自然主義をつらぬくつもりかもしれない。
 むしろ、週刊2本が実質 隔週2本という自然な流れにならない事を願います。

 話をもどして、大擂台賽にキケンな二人が投入された。
 郭春成と龍だ。
 この二人には「海王」の資格がないようだ。しかし弱いとは思えない。
 ふたりは郭海皇の腹心なのだろう。
 郭海皇は、平気な顔で人の局部をさらした上に、とどめの一撃を加えるような人だ。利き手三本をまとめてブッた斬る人だ。
 こんな人の腹心が、日の当たる仕事をしているわけない。

 バキ世界におけるムエタイの失墜、いぢられるロシア人、ふるわないブラジリアン柔術など、非外国人の不幸の影に彼らの暗躍があったにちがいない。
 死んで腐っているドブネズミが、試験用に減菌室で生まれ育ったハツカネズミに見えてしまうような、クソ汚い仕事をやって来たに違いない。
「クスクス。海王様ってのはズイブンとおキレイな拳法を使うんだな」
 という感じに毒をまき散らすと予想する。
 そして、背後の勇次郎に打ちのめされる。
 力を誇示するものは、より大きな力の前に、無力となる。
 少年漫画らしい、道徳的な展開か?


 それはともかく、闘うことなく次のステージに向かう範海王には納得がいかない。
 彼の正体がバレる(?)とまずいので、試合はさせられないということだろうか。
 範海王のためになんらかのデモンストレーションがある事を期待する。
 そして、彼の出生の秘密(?)があかされるとき、今までダマしていたと郭海皇に怒られないか心配でもある。
 海王の血に不純物を残さないよう、子供を作れない体にされたりしそうだ。


 また、今後の試合がどう組まれるのか判明していない。
 考えられる形態は、5組の団体戦と、勝ち抜き戦。あと、両陣営一人ずつ選手を出してのサバイバルなどだ。

 範馬勇次郎&刃牙 vs 郭海皇&春成のタッグマッチが組まれたり、しないと思うが、対照的な親子関係が今大会の見所のひとつになる、かも。たぶん、ならない。

 当たり前だが、淘汰のすえに擂台賽には濃い人ばかりが残った。
 うっかりするとJrの存在を忘れてしまうほどに。
 脳内で対戦カードを組んでいると、Jrだけあまってしまう。
by とら


2004年3月25日(17号)
第2部 第202話 心意気やよし (582+4回)

 中国連合軍 vs 夷狄外人軍!
 わかりやすく言うと、外人は全員死ねッ!

 中国連合軍5人の中で、なぜか烈が使いっぱしりになって外人5人に話をつたえる。
 すんません、申し訳ないんですけど、あんたら外人は全員死ね。そんな雰囲気だ。
 めっちゃ空気悪い。
 バキ呆然、オリバ怒、寂は無表情、Jr ムス…。みな言葉も出ない。いきなり、死ねッだもの。

「聞いたかよ」

 勇次郎は大喜びだ!
 のどかで静かな田舎よりも、便利な都会よりも、銃弾飛びかう戦場の方が好きな人だ。
 トラブル大好き、大歓迎だ。
 戦争の予感に大喜びしている。

 こんな物騒な場所に、烈を派遣したのは、烈は彼らと面識があるからだろう。
 まあ、生きて帰してもらえる希望がありそうだし。
 武術家は特攻隊じゃないんで、ちゃんと確率を考えます。
 これが毛海王だとジャガタされます。少なくとも2回は。
 あとは、寂に掘られたり。

 この場の六人のなかで勇次郎だけが大爆笑している。
 死を覚悟して(?)暴言を吐きにきた烈も、この反応は意外だっただろう。
 というか、勇次郎の次の行動を予想することは誰にもできない。勇次郎本人にもわからないんじゃ無いだろうか。

「こうまで魂胆が見え透いてるとよォ」
「気の毒すぎて」
「とてもツッコめねェよ」


 泣いているのか笑っているのか判別できないほど顔をクシャクシャにして勇次郎が大笑い。二ページと三分の一、ずっと笑いっぱなしだ。
 鬼が笑うとは、なにか良くないことが起きる前触れかもしれない。
 いや、すでに良くないことは色々起きているんだけど、おかわりが待ち構えていそうだ。
 幸いこれ以上ムエタイに不幸が降りかかることは、無いと思うが。
 イケニエをささげたので、あと2年ぐらいの間は無事なはず。

「中国連合軍のメンバーには」
「当然 烈さんもいるんだよね」

「そういうことになる」


 まるで戦争によって引き裂かれた恋人のように、刃牙と烈の表情が沈む。
 横ではまだ勇次郎が笑っている。
 格闘メロドラマを演じている愚息とガングロ海王を、ついでに笑っているかのようだ。

「君たちの残りは」
「4人だったハズだが――」
「あと1名の欠員はどうするのかね」


 ひとり落ち着いている寂海王が冷静に質問をする。
 彼だって海王なんだから、他の外人と同じように排除の対象にされてはたまらない。
 四人しかいないのなら、ワシは降りるから、四対四で闘ってねと言うつもりかもしれない。
 中国連合軍に勝っても後味悪いし、負けるのは嫌だ。ここは闘わないのが一番だ。
 闘うだけでは、―――強くなるだけではつまらんぞ。

「実は我がチームの毛海王が」
「アクシデントのため欠場となり残りは3名になっている」
「そこへ新たに2名を加え5名を編成した」


 烈老師はサラっと流す。毛海王のアレは、事故として処理されているようだ。
 なんか、「ヤツは星になったよ」的な流し方だ。「毛海王はみなの心の中に生きています」でもいい。大丈夫、陳海王のお腹には………。
 とりあえず、毛海王のことは忘れないでいてあげましょう。

 どちらにしても、人数あわせのため、寂は出場しなくてはならない。
 寂海王は逃げ出したが、まわりこまれてしまった。
 きっと、国の財産である拳法家を、国外勧誘したのが郭海皇の逆鱗に触れたのだろう。
 寂海王も郭海皇の標的となってしまったらしい。

「大丈夫なのかね」
「海王の名を持たぬ2名で……」


 寂海王は相手陣営の事を心配する。
 この人は人格者だ。よくできた人だ。
 でも、もしかするとヘッポコな助っ人だったら、そんなの相手に戦えないと、辞退する気だったのかもしれない。
 しかし、烈が告げたふたりの助っ人の名は衝撃的だった。

「郭 春成(かく しゅんせい)と」
「龍 書文(ろん しょぶん)


 勇次郎と寂海王が目を見開いた。
 名前だけで、この二人に衝撃を与えるとはタダ者ではない。
 ガーレンを前にしても、勇次郎はこれほどの驚きを見せなかった。
 二人は間違いなくガーレン以上ということだ。ロシア株は下がっているので、あんまり凄くなさそうだけど。

「狂獣 春成と 凶人 書文かッッッ」

 とか、とか、すごい通り名だ。
 この異名や、勇次郎アンテナに引っかかっているところを見ると、やはり黒社会の拳法家のようだ。
 しかし、龍書文はなんで苗字だけ中国読みをするのだろう。
 ちなみにモデルは最強といわれることもある神槍・李書文だろう(参考リンク)。
 すごい人を持ってきた。大リーグから4番バッターを輸入するようなものだ。こいつは、前回の予想以上にキケンな人物だ。

「ワガママヲ通ス以上」
「何カプレゼントヲ用意スルノガ礼儀ダゼ」


 今度はオリバが質問をする。
 何でも知っているはずのオリバだが、この狂凶コンビの名前には反応しない。
 知らないことがあるのを質問で誤魔化しているのだろうか。

 そもそも、オリバなら日本語も中国語もペラペラだ。最近だと、195話とか196話で普通に話している。
 なのにカタカナでしゃべっている。
 これは何かをゴマかしていて、ぎこちなくなっているのか。
 それとも無知な外国人をよそおって烈をダマしているのか。

「我が中国連合軍の」
「全勝を約束しよう」


 烈老師のすばらしいプレゼント宣言だった。
 さすがのオリバも、コレには困る。
 さすが、素手で近代兵器を破壊すると豪語する人たちだ。
 ええ、もう、わが中国武術の圧勝かと……

「5対5マッチ」
「受けようじゃねェか」


 地獄に里帰りした鬼なみにご機嫌状態の 勇次郎が快諾した。
 もちろん、独断だ。オリバの抗議は黙殺する。
 勇次郎の前ではオリバも縛られた人になってしまう。

「最も困難な条件を恥知らずにも示した“心意気やよし”

 なんだかわからんが、とにかくよし!
 さすが現人鬼だ。力技で話をまとめてしまった。
「最も困難な条件」は、外人チームにとってなのか、中国連合軍にとってなのか。
 勇次郎は一人でも勝つ気でいるようなので、中国連合軍は最も困難な道を選んだと言いたいのだろう。

 勇次郎が了解してしまっては、赤信号でも直進しなくてはいけない。
 アンチェインだって従うのだ。残り三人の意見は聞くまでも無い。実際、聞いていない。

 なんでもいいんですが、Jrは今週セリフがありません。
 いいんスか、それで?


「愉快 愉快」
「あのマヌケ共受けおったか」


 悪だくみが成功して郭海皇は大喜びだ。
 一気にボケが進行したのかと心配になるほど はしゃいでいる。
 手段を選ばない悪魔老人の暗黒面が漏れだしている。

「今のあなたは最低ですッッッ」

 烈海王、あえて苦言をていす。
 パンツおろされてデコピンされる危険をかえりみない直言、心意気やよし。

「えーよ(はぁと) それで」

 しかし、性格が歪みきった老人には烈の言葉は届かないのだった。
 富士山を押して動かそうとするようなものだ。相手が悪すぎる。
 師匠の劉といい、烈には爺難の相が出ているに違いない。


 そして、格闘士十名が全員集合だッ!

 龍 書文   ビスケット・オリバ
 郭 春成   範馬刃牙
 烈 海王   寂 海王
 範 海王   モハメド・アライ Jr
 郭 海皇   範馬勇次郎



 なんか、対戦順のように並んでいる。
 これで闘うとは限らないが、狂獣・春成と淫獣・刃牙、魔爺・郭海皇と鬼父・勇次郎の親子二番勝負は面白そうだ。
 範海王とJrの隠れJr対決も意味深い。

「生まれて初めての」
「チームプレイだぜ」


 今週は終始うれしそうな勇次郎だった。
 チームプレイといっているが、この試合はどのように進むのだろう。
 チームワークに関しては、どっちがより悪いかを競っているような感があり、ちゃんと団体戦になるのかも疑問だ。
 特に勇次郎と、郭海皇がヤバイ。

 外人チームでトドメを刺さずに帰っちゃったら、背後から勇次郎に制裁手刀を受けるだろう。
 中国連合軍で折られる前にギブアップしたら、背後から郭海皇に制裁タマピンを受けるだろう。
 どっちのチームも嫌だ。

 そんな状況ではあるが、ここからが大擂台賽の第二章だッ。
 中国連合軍が全勝すると言っているが、全勝したら、仲間同士で潰しあうのだろうか。
 どうも、郭海皇に踊らされている気がしてならない。
 龍書文も郭春成も、郭海皇の身内だし。
 全ては郭海皇が海皇の称号を防衛するために仕組んだ罠だったりして。
 主役に優勝させるために仕組んだ「ドカベン スーパースターズ編」みたいなもんだ。
by とら


2004年4月1日(18号)
第2部 第203話 日米軍結成!! (583+4回)

 せっかくエイプリルフールなので何かウソを書いてみよう。
 今週は、梢江が………。梢江が………。梢江……。
 楽しくないウソはいらない。

 ウソではなく、前回並んでいた通りに闘うことになるようだ。
 五人ずつ順番に闘うのか、勝ち抜きになるのかまでは不明だが、ちゃんと団体戦になるようだ。
 寂海王以外は団体行動には縁のなさそうな九人が黙って整列している。異常な光景でちょっと笑える。

 Jrが一人落ち着きなく拳を突き出している。まるで檻に入れられた猛獣みたいだ。
 黙って整列しているのはストレスがたまるのだろう。
 あと数分たつと、オリバは脱ぎだし、刃牙は尿を漏らし、烈は「ムワァァ〜〜」と汗を流すだろう。

 龍 書文 vs. ビスケット・オリバ
 郭 春成 vs. 範馬刃牙
 烈 海王 vs. 寂 海王
 範 海王 vs. マホメド・アライ Jr.
 郭 海皇 vs. 範馬勇次郎


 どの試合もメインイベントになりうる豪華な顔ぶれだ。
 アナウンサーもこの面子を前にして、毛ほども毛海王の事を思い出さない。

 おそらく毛海王は海王的に抹殺されているのだろう。
 四千年前から続く海王名鑑からも削除されているだろう。
 いざという時のために熱で色が浮かび上がるインクを使用して『尾海王』という別人にしていそうだ。

 この十人のなかで、ひときわ嬉しそうなのが範馬勇次郎だ。
 大将の位置に立っているのが嬉しいのか、強敵と闘えることが嬉しいのか。
 それとも、なにか あくどい事を思いついたのか。

「郭 海皇よ…」
「先ほど裏で―― 」
「俺にほざいたリッパなお言葉」
「そっくりそのままお返しするぜ」

「今のおまえは足りぬものに満ち満ちている」

 まるで車田正美マンガのように黒吹き出しに白文字で、勇次郎が叫ぶ。
 このセリフを言われたのが、よっぽど悔しかったのだろう。
 ずっと言い返したかったのだろう。

 言うだけいったら、勇次郎がふたたび大爆笑だ。
 (わら)う鬼はなにを思うのか。
 中国人にはワカらんようで、アナウンサーも観客もバカ笑いをする勇次郎を見て、ポカーンとしている。
 同じ日本人でもワカらん時がある勇次郎の言動を理解しろというのがムチャな注文なんだろう。

 郭海皇に足りない物とは?
 勇次郎は闘いに餓えていた。渇望している。
 己のコントロールが効いていないと言われていた。
 勇次郎に足りないのは、心の平安だろうか。

 郭海皇には、心の平安はあるのだろうか。
 146歳にもなって己の意を通そうと、暴れている。
 あらかじめ用意していたかのように、助っ人を呼んでくる。
 毛海王を闇にほうむる。
 郭海皇も、心の平安とは縁がなさそうだ。

 なんか、勇次郎がそのまま歳を重ねたようなキケンな爺さんだ。
 種を世界中にバラまいていそうだし。

 ふたりは似たもの同士なのかもしれない。
 だから、互いに互いの足りない部分が見えるのだろう。

 正直チョット嫌だ。この地球の同軸時間上に勇次郎がふたりもいるなんて。
 地球がふたつに割れて、それぞれの半球に帝国を築きそうだ。


「料理――――」
「医療――――」
「房中術――――」(性のこと)

「こと人間の本能に根ざしたジャンルを追求させたなら」
「中国という国は生半可ではない」


 控え室で勇次郎が、外人部隊に説教する。似合わねェ。
 おとなしく聞いている皆も、似合わないことをしている。
 特に寂海王は、こんな説教きく必要あるのか。
 海王なんだし、アンタが説明してやれよ。

 ちなみに、房中術はどちらかというと不老長寿(不死)をめざす健康法だ。
 道教などの宗教とかかわりがあるのも、健康法だから。
 それとは別に、中国の人が性の探求をしているのも事実で、精力剤を飲みすぎて死んだ皇帝も一人や二人ではない。
 あまり歴史書に書かれたくない死因だ。
 四千年ののちまで、恥をさらし続けることになる。

「その4000年とやらを虚仮にしてェ」

 勇次郎はグラップラー刃牙46話で、たんねんに積みあげた技術を蹂躙するのが最高の娯楽だと言い切っている。
 その娯楽の究極が、4000年間積み上げられた技術の踊り喰いらしい。
 さすが最悪の魔人だ。
 今回は、観客の目の前で虚仮にするという屈辱スパイスつきだ。

 結局、勇次郎の説教は「言うこと聞かないやつはまとめて潰す」という恫喝だったようだ。
 すでにオリバ、Jr、寂海王は沈黙している。
 そして、勇次郎はダメ押しに唯一反抗しそうな実子の刃牙に「俺に協力できるかい」と問う。

「俺は――――」
「あなたが大嫌いだ」
「思想も生き方も貌(かお)も」
「全てがだ」


 すごい嫌いっぷりだ。
 顔まで嫌いか。
 たしかに勇次郎の顔は、金属的なてかりをもつ不気味な質感で、初見の人は思わず尿を漏らしかねない。

 でも、勇次郎顔は刃牙本人の顔にも似ているし、兄ジャックの顔にも似ている。
 その辺もまとめて嫌っているのだろうか。
 極端に考えると、勇次郎の領域に近づきつつある松本梢江を嫌う可能性だってある。

 ここまで言われても、勇次郎の表情には微笑らしきものが見える。
 どこまでも親バカなのだろう。
 バカな子ほど、かわいいのだろう。

「現在(いま)の中国拳法に対する思い」
「その一点だけはあなたと同じだ」


 どうやら、刃牙も中国拳法をコケにしたいらしい。
 この欲求は、勇次郎への憎しみを超えたッ!
 毒を治してもらった恩義とかは、まったくないらしい。

 もしかすると、格闘家として、大きな山を越えたいという素直な気持ちなのかもしれない。
 ひょっとしたら、房中術を教えてもらって、後でしっぽり試そうと思っているのかもしれない。
 もっとも、刃牙の技術は、そっち方面にかぎって言えば、中国四千年が達していないし 目指してもいない境地にたどり着いてしまった
 今更学ぶ必要はない。正常に戻るならともかく。


「各人各様の」
「思いを胸に秘め」
「今ここに――――」
「チーム結成!!!」


 五人の蛮人が手を重ね、日米軍結成ッ!
 なんか上手くダマされた感じもするが、チーム結成だ。
 勇次郎が音頭取りしているのも、似合わない。

 中国連合軍が郭海皇の思惑で動いているように、日米軍は勇次郎の思惑で動いているように見える。
 その中で一番不幸そうに見えるのが、寂海王だ。
 彼の居場所はちゃんとあるのだろうか。


 とりあえず、日米軍の結束を固めるためにユニフォームを配りだすかもしれない。
 そう、ふんどし着用義務が生じる。
 ふんどし以外の衣服の使用をすべて認めません。
 コレなら、オリバや寂海王は大喜びだろう。

 日米軍では範馬親子やJrを例に取るとに、「親と子」「家族」が裏テーマになっている。
 家族がテーマなのだから、オリバと寂海王は親子関係になれ。そう勇次郎がつめよるかも知れない
 親子が嫌なら、譲歩して夫婦関係だ。
 親子関係より、夫婦関係の方が譲歩しているのか? 驚愕する刃牙だった。

 次回は寂海王とオリバが夫役をめぐり激突する。
 攻めだけではつまらんぞ。寂海王のスカウト術は炸裂するのか!?
by とら


2004年4月8日(19号)
第2部 第204話 生涯無敗 (584+4回)

 当サイトではオリバと寂海王を、バキの男色系TWO突風!として応援していきます。
 盛り上がっているところで、打ち切られてしまえ、という意味ではなく、純粋に。

 だから、オリバと寂海王を同じ空間に置くなッ。
 マチガイが起きてからでは遅いんだぞ。


 とりあえず二人は、オリバの対戦相手である龍書文の話をする。
 オリバの格好が、全裸にTシャツ一枚という巨乳軍イエローキャブもゆらして逃げるセクシー姿に見える。気のせいだろうか。
 パンツをはかんかァ〜〜〜!
(バキ123話、克己「靴を脱がんかァ〜〜〜」の勢いで)

 凶人・龍書文は台湾出身の45歳だ。
 九歳のとき師・文四海に出逢い、15〜19歳まで全台湾擂台賽で連続優勝をはたす。
 台湾黒社会にスカウトされ、ルール無しの賭け試合で25年間無敗を保つ。
 15歳のデビューから数えて、勝ちを重ねること約30年だ。要するに生涯無敗なのだ。
 最凶死刑囚たちも、そんなこと言っていたが、忘れよう。

 龍書文の人生前半がサムワン海王とそっくりだと思った人はアウトだ。
 中国武術界から刺客が送りこまれます。
 龍書文は、サムワンと違って黒社会に進出している。
 コブラとたわむれるようなバカなマネもしていない。

 龍書文が25年前に擂台をおりなければ、どうなったか。
 擂台に挑むサムワンの壁となり、サムワン海王が生まれることは無かったかもしれない。
 当然、公衆の面前で睾丸を撥ねられる事もなかった。

 サムワン海王25歳が生まれた年に、龍書文が擂台をおりたのも運命だ。
 バキ外伝で、勇次郎が生まれた瞬間、各国の指導者たちが核の保有を決意したとある。
 ならば、サムワンが誕生した瞬間、郭海皇はムエタイの玉を打つ事を決意したのだろう。

 サムワンが誕生したとき、生物の強さランキングで、コブラの上に立った。
 彼は最も近しい敵のコブラを狩ることに存在意義を感じる。
 そして、コブラを狩る現場を、なにかに導かれるように中国拳法家が目撃する。
 無敗の龍文書は、すでに擂台からおりている。
 悲劇へ向かう不思議で不可避な力が働いていたのか?


 話をもどす。
 龍書文の人生後半は、花山のようだ。
 プロの起用も辞さない賭け試合も、中国が起源だったのか。
 日本は漢字や毒手以外にも、文化を色々と輸入しているのだ。

 サムワン海王+花山薫という強烈な過去を持つ(前半余計かもしれないが)、龍書文の逸話をオリバは平然と話す。
 寂海王は、オリバを心配して龍書文の話を伝えに来たようだ。
 しかし、オリバは何でも知っていた。

 202話で狂凶コンビの名前に反応しなかったのは、フェイントだったようだ。
 ひょっとしたら、あとで必死になって二人の経歴を調べたのかもしれない。

「ご武運お祈り申します」

 寂海王は合掌してオリバを送りだす。
 中国連合軍に敵とみなされても、相手の心配をした人格者だ。
 今は同盟を組んだオリバの心配をしている。
 さすが団体の長だ。教育者としてもふさわしい。
 この場にいない主人公17歳にも見習わせたいものだ。

 オリバ出陣のシーンは、ローアングルでオリバのシャツの下が丸見えだ。
 く、黒いッッ。

 ああ、なんか黒いモノが見えていますよ。

 それは黒パンツなのですか、それとも影なのですか。
「誰もそのその存在をつなぎとめる事ができない」=「アンチェイン」の通り名はダテじゃない。
 ブランブランで、つなぎとめられていない状態なのか?
 Tシャツの下でアバレまわっているのか?


 会場へ向かう自由人なオリバを、勇次郎が待っていた。
 勇次郎が人を応援するとは、珍しい。
 これが、刃牙と加藤なら「アンタじゃムリだ オレがかわる」になる。
 勇次郎とオリバなら、もっと大人の会話になるだろう。
 たとえば、「遅いぜアンチェイン。イジめられるところだったじゃねェか…」とか。

 ………大人の会話か?


 勇次郎は、オリバに龍書文のニックネームを知っているかとたずねる。
 オリバが狂凶コンビの名前に反応しなかった事を、勇次郎も心配していたようだ。
 しかし、超知力の持ち主でもあるオリバはすでにニックネームを知っていた。きっと、ネットで必死になって調べたのだ。

「Mr.不可拘束(ミスター アンチェイン)

 同じ通り名だった。
 オリバを挑発できて、勇次郎は嬉しそうだ。
 勇次郎は、とことん秩序の破壊者のようだ。
 真のアンチェインを名乗るなら、ここで相手をブチのめせ。
 勝手に中国連合軍とのアンフェアな試合を受け、さらに自軍選手を追い込む。勇次郎イズム大爆発だ。

 それはそれとして、アンチェイン・オリバは試合会場に向かう。
 表情はすでに闘う男のものになっている。
 そして、Tシャツの下がどうなっているのか、いまだにハッキリしない。
 試合前から恐るべき頭脳戦がはじまっている。

 個人的にはジャンプ連載の武装錬金でブレイクしたパピヨン・ブリーフ(黒)だと思うが、いかがか。
 もちろん中身は四次元で、勝利すると踊らなくてはならない。それがブリーフの仕様なのだ。
 すでにポージングは披露しているので、固い予想と自負しております。

 対する不可拘束・龍書文は座禅(両足を共にももにのせる結跏趺坐)を組んで瞑想している。
 中国黒社会で半生をすごした男は、闘いを前にしても心を乱さないのだ。
 龍書文がゆっくりまぶたを上げる。

 バッ

 砂ぼこりを巻き上げ、龍書文が浮いた。
 結跏趺坐は崩さぬままの姿勢で浮いたのだ。
 そのまま、足を伸ばすと、普通に立つ状態になった。

 座禅の状態から、立つ高さにまで飛んだ。
 これは脚力だけで、なんとかなる現象だろうか。
 三合拳のように、「気」と「地」の力を借りているのか?
 それとも、放屁か。それも、人が浮き上がるほどのッッ!

 二人のアンチェインが待ったなし。
 視線をかわした瞬間、試合開始の銅鑼がなる。
 敗れて拘束されるのはどちらか!?
 どちらのチームリーダーも、敗者と弱者に容赦しないぞ。
 背水の覚悟で闘えッ!

 と言いつつ、次週は作者取材でお休みです。
 なんか餓狼伝BOYと交替で休んでいる。そりゃあ、アシスタント募集もするってものだ。
 そんな訳で、来週のこのページは大擂台賽の一回戦をふり返ってみようと思います。あくまで予定ですが。


 一回戦から獣くさい戦いになる。
 刑務所暮らしをしている暗黒街の住人と、台湾黒社会の住人が闘うのだ。
 どちらも童貞を捨てている(注:刃牙世界において「初めて人を殺すこと」)どころではない。
 銃や刃物のケンカが当たり前の男たちだろう。

 そして、勝敗が予想できない最初で最後の試合だ。
 残りの試合は、勝者が予想できる。
 刃牙は負けないだろう。当然、勇次郎も負けない。
 セミファイナルの範海王は、そこで衝撃的な勝利を収めるだろう。

 これで、中国1勝、日米2勝だ。
 烈海王 vs 寂海王は、試合結果を対等にするための調整に使われる。

 つまり、オリバ vs 龍書文のみが、勝敗のわからない試合なのだ。
 ここで盛り上がっておかないと、あとで後悔するかもしれない。
 選手も後がなくて必死だが、読者も必死なのだ。

 もちろん「バキ」において勝敗予想などは、食品の賞味期限よりあてにならないのだが。
by とら


2004年4月15日(20号)
バキはお休みです

 ちょうどキリのいいところなので、大擂台賽の一回戦をふり返ってみる。

 大擂台賽は、海皇の名を継ぐ者を決める大会だ。
 だが、その裏には陰謀が隠されていたことが判明した。
 郭海皇の外国人いじめだ。

 外国人が海王を名乗っているのが気にくわない。
 ついでに周囲にうろちょろしている外国人をブッ倒しちまえ。
 烈を倒しちゃった時点で、刃牙の名が郭海皇の暗殺リストにのったのは間違いないだろう。


大擂台賽開始・海王入場178話

 外国人排除の陰謀を含めつつ、大擂台賽が始まった。
 中国各地と日米タイから拳士たちが集結する。
 日本とアメリカは憎いから呼び寄せたのかもしれない。タイはとばっちり。

 特筆すべきは、「巨人・除海王」と「ムエタイ・サムワン海王」だろう。
 登場した瞬間に敗北を予想され、みごと見せ場もないまま敗北した。
 彼らの種族にかけられた呪いは、ちょっとやそっとでは解けないらしい。


範馬勇次郎 vs 劉海王×(決まり手・皮剥ぎ)(179話180話181話

 初戦から準決勝戦クラスの試合が組まれ、読者に衝撃が走った。
 そして、あっという間の決着で、再び衝撃が走る。
 あまりの展開に、劉海王の中から推定年齢19歳の美形が出てくるとか、錯乱した事をいいだす人まで出る(それ、俺だ)。
 しかし、そのまま決着する。

 あらゆる意味で衝撃的な闘いだった。
 グラップラー刃牙時代から中国拳法最強、烈の師匠と持ち上げていたのは何だったのだ、と。
 作者ですら勇次郎をもてあましている、のだろう。

 中国武術省としては、最強の外国人である勇次郎を安定感のある実力者で叩き潰すつもりだったのだろう。
 だが勇次郎の強さは予想外であり、予定がいきなり破綻するのだった。


マホメド・アライJr. vs 除海王×(決まり手・巨人の宿命)(182話183話

 除海王は、怒李庵海王を除いて唯一セリフのなかった海王だ。
 まさに最弱、至弱だ。海王の恥。海王の暗部。洋王からやり直せ。張に改名しろ。
 弱すぎてJrの引き立て役にもなっていない。

 むしろ、除海王をこきおろす陳海王と毛海王のほうが存在感があった。
 彼ら陳毛コンビの活躍と、怪しげな関係に期待と妄想がふくらむ。

 Jrの相手になんで弱い男をぶつけたのだろう。
 考えるに、初戦で切り札の劉海王がいきなり負けて首脳陣は大混乱を起こしていたのだろう。
「あの〜、次の試合なんですけど」
「いま、取り込み中だ。とりあえず、適当なのをだせ!
 そして、本当にテキトーな人を出しちゃった。

 組み合わせ表をアドリブで決めた場合の最悪の失敗例だ。


範馬刃牙 vs 李海王×(決まり手・裏返り)(184話185話186話187話188話189話

 一回戦でもっとも長かった試合だ。勇次郎いわく「短期決戦」だけど。

 刃牙は、危機的状況から回復し、奇蹟の逆転をする。
 なんか少年漫画の主人公のような活躍だ。

 李海王は毒手ぬきでも強かったと思う。
 彼が大擂台賽にどのような思いを込めていたのか?
 兄・範海王と、なぜ姓が違うのか?
 そういった謎は置き去りにされたままであり、今後の伏線となるのかもしれない。

 烈が望んでいたように都合よく、刃牙と李海王の対戦が決まる。
 これは、烈が裏で頼み込んでいたのかもしれない。
「この烈海王が頭を下げてたのんでおるのだ。よもや断るまいなッ!」
(あ、頭下げてないじゃん。頼んでもいないじゃん。恫喝じゃんッッ)

 というような熱い友情の援護射撃があったのかもしれない。


郭海皇 vs サムワン海王×(決まり手・玉ピン)(190話191話

 みじめなやられ役であったサムワン海王をの位置にまで押し上げた試合だ。
 サムワン海王だけでも、郭海皇だけでも、この名試合は生まれなかっただろう。
 今世紀中に、この衝撃を上回る金的打撃シーンは生み出されるのだろうか?

 郭海皇は、サムワンの服装を見て狙いを定めていたのかもしれない。
 ヤツはワシがヤる。それも、屈辱的にな。という感じで。

 ちなみに191話の感想は、当サイトの最高アクセス記録をマークした。
 残念ながら、201話「中国連合軍」に記録は抜かれたが、みんなサムワンの金玉に熱い思いを寄せていたらしい。


幕間・逆襲のサムワン192話

 一粒で二度おいしいサムワンは、勇次郎にも噛まれるのだった。
 サムワンの玉は二つある!

 勇次郎は郭海皇のセリフにずっと反感を持っていたらしい。
 直接本人に言えばいいのに、なぜかサムワンに八つ当たり。
 しかも、203話で郭海皇には言い返しているので、サムワンやられ損

「貴様はまちがってはいない」といいながら、「メコっ」とやっちゃうのが範馬勇次郎なのだ。


幕間・烈は「復活」を連呼した193話

 烈がどんどん変な人になっていく。
 大擂台賽で烈がいつまで生き残れるのか。ファンにとって気になる部分だ。
 この狂態を見て、人々の予想が「烈初戦敗退」に傾いたとしてもしょうがない。

 復活して「してェ…」と言いだした刃牙だったが、実際にはちゃんと我慢している。
 ちょっと背伸びをして父にケンカを売ったりしたが。


楊海王 vs 怒李庵海王×(決まり手・戦う前から負けていた)(194話

 ドリアンはちゃんと試合ができるのか?
 海王入場からずっと疑問だったのだが、答えは「ごめん、無理」だった。
 ちゃんとしたドリアンの活躍が見たかったのだが、彼はもう終わった人間だったようだ。

 楊海王はそこそこの実力者という気がする。
 腐っても海王であるドリアンを倒すための人選だろう。
 しかし、大擂台賽に郭海皇の陰謀が仕組まれていたように、ドリアンの参戦にはオリバの陰謀が仕組まれていたのだ。


幕間・オリバ参戦す195話

 怒李庵海王の入場シーンに潜んでいたオリバが本格的に動き出す。
 彼は、ずっとコレを狙っていたに違いない。
 純朴な拳法家には、起訴社会アメリカで育まれた交渉術に対抗する術はなかったようだ。


ビスケット・オリバ vs 楊海王×(決まり手・知識不足)(196話

 ダイヤモンドは衝撃で砕けるんです。TVでやっていました。という話。
 こんなアホな提案をしなければ、そこそこ良い試合をしたと思うのだが。
 でも、楊海王は怒李庵の攻撃をけっこう必死になってよけていたので、金剛拳もたいしたことないのかもしれない。

 たぶん負けた海王は、郭海皇にお仕置きのピンをされるのだろう。
 そこは瀧に打たれることもない部分だし、金剛拳も通用しない。
 今ごろは海王墓場に捨てられて、白目むいている事だろう。


寂海王 vs 陳海王×(決まり手・青田刈り)(197話198話

 紳士的(あるいは男色的)な柔らかい物腰で微笑を浮かべながら、容赦なく折る寂海王だ。
 しかし、その後の言動をみると寂海王は刃牙世界では珍しい人格者らしい。
 個人的に「強くなるだけではつまらんぞ」は、「グラップラー刃牙」「バキ」通してトップクラスの名セリフだと思う。
 ただ、人格者のようでも中身は凄い人が多いので、彼も最終的にどうなるのかわからない。

 陳海王は除海王をけなすだけあって、かなりの実力者だ。
 毒状態のバキとあたっていれば勝てたかもしれない。
 ダメかなぁ…。毒っても範馬だもんな。
 そんな訳で強めの陳海王をぶつけたつもりが、寂はもっと強かったというオチがつく。

 結局、中国人拳法家の拳で外国人を倒そうという計画は、やぶれた。
 終わってみれば郭海皇が勝っただけで後は全滅だ。
 これはゲストが強すぎ、海王の質が低下したためだろう。
 負けた海王の戦いぶりを思い出すと、やはり負けるべくして負けたとしか思えない。


幕間・親子喧嘩199話

 やっぱり勇次郎に勝つのは無理らしいと再確認する話だ。
 グラップラー刃牙から579+4話かけても、差が縮まらない。むしろ開いた気がする。
 それでもバキは闘うつもりらしい。
 あと500話ぐらいたてば勝てるのか?


烈海王 vs 孫海王×(決まり手・格の差)(200話

 悲壮感を漂わせて、負けそうムードだった烈海王だが、あっさり勝利する。
 オマケに、キサマは花山よりも格下だと言わんばかりだ。
 日本人を誉める発言をしたことが、郭海皇にバレたら大変な事になる。
 ワビは一つじゃ済まない。二つでもすまない。まだ棒がある。


転章・中国連合軍と日米軍201話202話203話

 小学生のころ、サッカーや野球などのTVゲームをするとき、序盤に点を入れられると「あ、ゴメン」と言いながらリセットボタンを押す友達がいた。
 郭海皇も、そんな感じ。

 郭海皇は外国人を全員排除するつもりだったのだろう。
 そして、どこかでトラブルを起こして、息子の春成を出場させる気だったのではないか。
 だから、郭春成と龍書文が控えていたのだろう。

 郭海皇は外国人排斥という趣味を行いつつ、海王の資格を持たない我が子に海皇の名を継がせようと企んでいた。
 そして、事態が思うように行かなかったので、ムリヤリ自分の思惑通りに話を話を進めた。
 恐るべきワガママ爺さんだ。
 百年に一度の大擂台賽を完全に私物化している。

 郭海皇にとっては二度目のイベントかもしれないが、たいがいの人にとっては生涯一度のイベントなのだ。
 もう少し大事にしてやってください。

 そして、大擂台賽は日米軍 vs 中国連合軍へと変化する。
 これでどうやって「海皇」を決定するのだろう。
 もう、決定する気はないのか?

 その辺の疑問は全部置き去りにして、すでに戦いは開始(はじ)ってしまった。
 この大会がどうなるかも、試合が進むうちに見えてくるだろう。
 途中でまたリセットするかもしれないけど。

 どんなにリセットしても、サムワンが強くなって帰ってくることはないんだろうな。
 もちろん、除海王も至弱のまま。



・日記にも板垣ネタを書くことがあるので、物足りない人はそっちで補充してください。
by とら


2004年4月22日(21+22号)
第2部 第205話 闇拳法 (585+4回)

 グラップラー刃牙 & バキ & 餓狼伝餓狼伝 BOYなど、
一連の板垣作品の表紙はほとんど主人公である。
 たとえ長期回想中につき主人公はお休みでも、表紙だけは主人公だったりする。

 餓狼伝は出版元のスコラが倒産し、アッパーズに移籍することになる。
 そのころ、ちょうど回想中で若き日のグレート巽の話だった。
 だからアッパーズから読み始めた人は、主役が出てくるまで、丸一年以上「この表紙の人、誰?」と首をかしげていたらしい。

 PS2ゲーム・『グラップラー刃牙 バキ最強烈伝』の攻略本によれば、グラップラー刃牙全371話のうち刃牙以外の男が登場したのは43回だ。
 主役率88.4%である。

 そして、今回は表紙が龍書文だッ!

 新人とは思えない快挙であり、恐るべき先制攻撃である。
 この勝負、龍書文が有利かッ!?


 負けじと、オリバは全裸になる。
 いや、かろうじてビキニパンツが残っていた。
 本当は全裸になりたかったのだろうが、反則負けを警戒して脱がなかったのだろう。決まり手は「もろだし」。

「胸が…」
「まるでケツだ…」


 オリバの、もりあがる筋肉美に観客もざわついている。
 さすが、Mr.男色、胸までケツとはおそれいった。好きなジャガイモは男爵だ。

 対する龍書文はよそ見をしながら、ハンドポケット状態だ。
 構えてもいないし、見てもいない。
 これが闇拳法の戦い方なのか。

 しかし、闘いはすでに開始(はじ)まっている。
 オリバは真っ直ぐ龍書文に近づき、右手を振り上げた。
 上腕二頭筋が爆発しそうに膨れあがっている。そのサイズは頭よりもデカいッ。
 まるで戦車砲身が頭上に迫ってくるような迫力だ。

 ドカッ

 ムエタイ戦士ならトリック抜きに10人まとめて潰せそうな一撃だ。
 金剛石(ダイヤモンド)だってジャガるような圧力だ。
 だが、砲撃後の硝煙のような砂煙がはれると、無傷の龍書文の姿があらわれる。

「龍の足がッッ」
「コンクリートの床にめり込んで」

「そんな衝撃を…………」
「片腕一本で支えたんだ…………」


 筋肉質には見えない龍書文だが、オリバの重爆を左手一本で受けきった。
 花山の全力異形パンチや、ジャックのマックシング・パンチなどは、受けた手足が折れる防御不可攻撃だ。
 オリバの攻撃も同類だと思っていたが、それを正面から受け止めた。

 龍書文、ダテに表紙を飾っていない。
 花山の一撃だって止められるかもしれない。

『この2人ッッ』
『恐ろしく強い!!!』
『龍の片手はまだポケットの中だ……』


 最初の接触だけで、二匹の怪物たちが恐るべき実力を見せた。
 表情が険しくなるオリバに対し、龍書文は不機嫌そうで無関心な表情のままだ。

 オリバが、あいている左腕を横にはらう。
 縦の攻撃は踏みとどまられた。横に殴れば、最低でも吹っ飛ぶはずだ。
 細かいところにも頭脳が光る怪力無双であった。

「フッ」

 バオッ


 腕が届く直前に、龍書文の口から空弾が放たれ、オリバの視界をうばった。
 竜巻のような攻撃は、空振り。
 ホームラン狙いの強振ゆえに、空振るとスキだらけだ。
 頭、首、わき腹、すべてガラ空きの打ち放題だ。

「ポケットから……」
「両手を抜いた…ッッ」


 さすがのオリバも汗を流す大ピンチである。
 草食動物が、肉食獣にわき腹のニオイをかがれているような絶望的状況だ。
 オリバ、どうかわす? かわせないのか?
 ページをめくると………

 ザ…

 アレ? なにも無し?
 両者普通に立っている。
 龍書文はいつのまにか、ハンドポケットに戻っている。

「弾丸デモ…」
「通サネェンダケドナ…」

『出血です!! オリバの鋼鉄の腹筋からッッ』


 ショットガンの四連発もハジき返したオリバの筋肉が斬られている。
 あまりに鋭い切れ味に、オリバはナイフかと うたがう。

「貫き手」

 相変わらず視線をあわせず、ボソリと龍書文が答える。
 中途半端に会話が成立しちゃっているだけに、かえって不気味だ。
 火星人なみに意思の疎通がはかれなければ、そういう物だと納得できる。
 機械でも、たまに動いたり動かなかったりする物ほど使いにくい。
 なにごとも中途半端はよくない。

 鉄壁の防御を保障する肉体と、攻防で見せた高い技術、そして刃物に匹敵する攻撃力を持っている。
 オマケに会話がしにくいから、ペテンもかけにくい。
 龍書文は、心技体の全方面にわたって優秀だ。
 オリバはふたたび汗を流す。

 それでもオリバはつっかける。
 必殺の抱きしめ技(博愛固め)を狙うかのように両手を広げ、肉の重戦車が突進する。

「!」

 出足を止められた。
 龍書文の足刀・ツマ先がオリバの足の甲を刺している。
 足の甲というより、足指の付け根だ。
 骨の継ぎ目で弱い。オマケに、そこには筋肉の鎧はない。

 キャタピラを破壊された戦車は機動できない。
 一瞬、動きの止まったオリバのアゴを、龍書文が垂直に蹴り上げた。
 重量級のオリバが浮き上がる。火花が飛び散るような蹴りだった。

 目が横ゆれを起こしている。
 ブっとい筋肉で補強しているオリバの首だが、この衝撃は吸収できなかったらしい。
 戦車だって地雷による下からの攻撃には弱い。
 下から突きあげられては、オリバの首も持たないのか。

 蹴りを決めると、またもや龍書文はハンドポケットする。
 なんで、そんなにポケットが好きなんだ?
 この男もそうとうな変人だ。

「ほう…」
「居合か…」


 なんでも知っている勇次郎が感心したようにいう。
 そうか、居合だったのか!
 まったく全然カケラもわからないのだが、なんとなく説得されたような気分で次回へ続く。


 想像以上に龍書文は ヘンタイ 強かった。
 しかも、かなりまともな人ではない。
 修行しすぎて常識がどこかに行っちゃった仙人タイプの達人だ。
 もしくは、ストレートに黒い世界の人か。

 視線をあわせずにタコ殴るという話は『板垣恵介の格闘士烈伝』に出てくる。
 板垣先生は中国拳法の取材に行って、太氣拳のS先生にボコボコにされたのだ。
 そうなると、これはオリバに託した復讐戦か?
 でも、下手に勝っちゃうと、S先生に呼び出されそうだしなぁ。

 刀をすばやく抜く居合術は日本独特の技術だ。
 日本では刀を腰にさす習慣があるので、身近にある武器を有効活用するための技術だ。どちらかというと護身の技だと「無双直伝英信流 居合道(著・加茂治作)」には書かれていた。

 日本刀は戦場ではあまり活躍していないと、「日本剣道の歴史(著・大塚忠義)」「刀と首取り 戦国合戦異説(著・鈴木眞哉)」などに書かれている。
 つまり、居合は日常の延長で突発的に起きる事件に対処する技術なのだ。
 緊急事態に対し、いかに速く剣を抜くか。そこが重要なのだ。

 龍書文の日常はキケンが多いのだろう。
 だから居合に似た戦術を持っていると推測できる。
 いきなり襲われても、瞬時に撃退できる技だ。

 ハンドポケットや視線をあわせない行動は、動きの予測を困難にして、相手の回避も困難にしている。
 一見不利な状態を保ち攻撃を誘い、神速にて相手の先を取り、防御困難な反撃をする。
 まさに攻防一体の戦術だ。


 バトル系漫画などに登場する居合には共通点がある。
 居合は初太刀を外せば、弱いと言われて、実際に初太刀を外されて負ける。
「るろうに剣心」では外しても勝ちますが、あれは 変態的 例外です。

 でも、「居合は初太刀さえ外せば、ただの剣術だ!」とカッコつけても、ただの剣術だけで十分怖いと思うのは私だけでしょうか。
 漫画に登場する居合遣いはあきらめが早すぎる。

 居合系闘士で特筆すべきは、聖闘士(セイント)星矢のアルデバランだ。
 彼は、腕を組んだ状態から、居合的攻撃をする。

 神速の男だけに、常にやられるのが早い。
 そもそも、腕組む意味あんま無いし。
 ヤムチャに脚光が集まる今、アルデバランにも再評価をッ!


 失礼、すこし興奮しちゃいました。
 話をもどします。

 もしかすると、龍書文のハンドポケットには意味があるかもしれない。
 ナイフなどの暗器を隠している可能性がある。
 闇拳法であれば、それぐらいはやりかねない。

 それか、ポケットの中にペットのハムスターがいる。
 彼、ハムちゃんをなでていると落ち着くんですよ。
by とら


2004年5月6日(23号)
第2部 第206話 居合 (586+4回)

 人気投票・第一位 範馬刃牙ッ!
 第九位 サムワン海王ッッ!
 第十位 松本梢江ッッッ!!


 二段オチッ!? いや三段オチなのかッッ!?
 さ、サムワン海王がベスト10に入っている。

 海王では烈についでの順位だッ。克己、加藤、鎬兄弟や、郭海皇にも勝っている。
 サムワン海王は、試合に負けたが、勝負には勝ったんだッッ!
 でも、人生には負けたよね。もう、出てこないんだろうな、たぶん。


 前回ラストでアゴを蹴り上げられガクガクしていたオリバだが、ザウッと踏みとどまる。
 オリバ・マッスルは筋肉だ。
 いろいろな攻撃も、たぶん吸収できるのかもしれない。

「余裕ヲ演ジテイルノカト思ッタラ」
「ソウデハナイ」
「ポケットカラ手ヲ出サナイノデハナク」
「出セナイノダ」


 龍書文の戦術を見抜き、早くもオリバは自信満々だ。
 とりあえず口で相手をやり込めるのが、オリバ流らしい。
 完全に優位に立ったと判断すれば、ひらがなでしゃべるだろう。


 試合を見ている勇次郎の横へ、刃牙が並んで立った。
 ちょっと前に勇次郎に吹っ飛ばされたばかりだというのに、平然としている。
 なんの自信があって、横に並ぶのだ。
 アンタは人気第4位で、オレは第1位とでも言いたいのか?
 ちなみに言ったら確実に吹っ飛ばされます。回転とひねりを加え芸術点も高い。

「こうして俺とおまえが同じ方向を見て―――――」
「並んで立つなど」
「何年振りのことだ……」


 父・勇次郎、ちょっと嬉しそう。
 本人は完璧に隠しているつもりだろうが、親バカですから。
 本当は親子の語らいをしたいのだろう。


 龍書文のハンドポケットが策略であると見抜いたオリバが突進する。無策だ。
 この人、なにも考えて無ぇッッ!
 エラそうなさっきのセリフは何だったのだ。
 そんなんだから、頭髪が後退するんだ。肉ばっかりじゃなくて野菜も喰え。

 当然、龍書文は居合で迎撃だ。
 腕が透けて見える神速の一撃が、オリバのアゴを弾きあげる。
 足払い。オリバを崩す。

 パンッ

 耳打ちッ!
 かつて勇次郎が多用した技だ。
 ミドル級チャンピオン辰巳や、独歩に仕掛けた危険な一撃だ。
 オリバの鼓膜は破壊された。

「あの一見無造作な立ち方に」
「抜刀の瞬間にこそ最速が完成する居合同様の――――
 静止した姿に勢いが秘められている」


 無策のオリバに代わり、勇次郎が解説する。
 せっかく解説してもらったのだが、ちと理解(わか)りにくい。
 静と動の対比が、技の威力になっているのだろうか。
 静の時が充電で、動が開放というイメージで。
 すぐに燃料切れちゃうから連続攻撃はできないのかもしれない。

 そう、龍書文は攻撃を2・3回で止めてしまう。
 せっかくオリバにダメージを与えても、トドメを刺していない。
 弱みを見せた相手には徹底的な打撃を与えるのが鉄則だ。

 忘れかけているが、オリバには超回復力がある。
 次の攻撃までに、それなりに回復しちゃっているようだ。
 このままでは、いつまでたってもオリバを倒すことができない。
 今のところ龍書文が優勢だが、その頭上にかすかな雷雲が見える。

「学べ……バキ」

 範馬勇次郎の親バカ大爆発・大噴火・大サービスだ。
 一日遅れのこどもの日かよッ。
 いろいろあったが、今は日米軍の同じ仲間だ。
 この場にいない寂とかJrとかよりも、なかよしだ。

「それが……」
「自分に向けられる技であっても…」
「かい…?」

「上手に調理するんだ」
「美味(ウマ)けりゃ喰ってやる」


 からかうとちゃんと反応が返ってくる。
 そのためか、なんか嬉しそうに見える勇次郎であった。
 彼としては「いや〜〜、ひさびさに親子らしい会話しちゃったな〜」とか思っていそうだ。
 世間一般から見れば、そうとう破綻した親子関係なんですが。

 鼓膜がやぶれたオリバを、龍書文が見下ろす。
 視線を向けたのは、勝利を確信したためか。
 しかし、オリバにはまだ余裕があった。

 ズボッ

 オリバもハンドポケットで対抗だァッ!
 なぜか誇らしげ。すごく誇らしげ。
 だいたい、そこはポケットじゃない。
 パンツの脇の部分だ。
 ハンド ブリーフだッ!

 効果音といい、突っ込む場所といい肉具合といい、これは褐色のひとりエイケン地獄か。
 油断すると、肉の間に刃牙がはさまるぞ。

「ナ〜〜ンカ………」
「コッチノホウガ調子ガイイゼ」


 オリバ全開かッ!
 策があるのか無いのか不明だが、とにかく調子ブッこいている。
 次回、オリバが見せるのかッ!?

 オリバの調子が悪かった、今までパンツがきつくて、窮屈だったからだろうか。
 パンツを持ち上げることで、自由な空間を味わっている。好きなだけ持ち上げることができる。
 やはり、アンチェインは縛られていてはダメなのか。
 でも、パンツから頭がハミ出た瞬間に負けを宣告されそうだ。

 それはともかく、刃牙において相手の技をパクるのは有効な手段だ。
 あえて横綱相手に相撲を挑んだり、プロレスラー相手にプロレスを挑んだり。
 なんか、どっちも猪狩関係ですが。

 もちろん、ご老公の親衛隊長・加納秀明のような例外もいる。
 加納が居合の型をパクったらタコ殴りだろう。
 バキ48話で加納はドリアンに倒されている。
 このときは、ドリアンの構えをパクったものの、口から武器を出すのはパクれずに敗北したと思われる。

 そういう例外はあるが、あえて相手の土俵に立ったオリバに、勝機がある。
 だが、龍書文に秘密兵器があれば、再び逆転するかもしれない。
 なにしろ凶人・龍書文なのだ。
 きっと、なにか不吉な技を持っているに違いない。

 目が合うと泣き出して、そうなると始末におえないとか。
 手相がすごい不吉とか。
 大昔、アイドルと握手して「もう一生手を洗わない」と言って、それを実行しちゃっているとか。
by とら


2004年5月13日(24号)
第2部 第207話 神秘 (587+4回)

 オリバが、手をパンツの中につっこんだッ!
 ええっ、試合中にナニはじめるですかッ。ここはヤングチャンピオンではないぞ。
 しかし、お客さんは大喜びだ。
 さすが百年に一度のストレス開放だ。下ネタ上等、下品大好きか。
 これなら、スキマからパンツの中身が見えても許されるだろう。

「気ニイッタヨ」
「最初カラ コウスルンダッタゼ」


 パンツの中に手を入れ、オリバさんにもご満足いただけている。
 それはともかく、オリバは居合の動きができるわけではないので、実は不利なのではないだろうか。
 それに、あわてて手を動かそうとすると、破れそうだ。
 怪力無双ですよ。針金を編んで作ったパンツでも破れます。

 これに対し、龍書文は無言のまま手をポケットから出す。
 無言のまま、いきなり張り手。
 説明抜きでいきなり殴るのは暗黒街の攻撃か。

「なぜ抜かぬ」
「反撃できぬまでもポケットから手を抜くことぐらいはできるだろう」


 龍書文はオリバのパンツを、ポケットと認めている。
 そこは妥協して認めちゃって、ポケットから手を抜かせることを優先したのか。
 オリバを挑発して、なにがなんでも手を外に出させようとしている。
 超頭脳の持ち主でなくても、龍書文がオリバのハンドポケットを嫌っているのがわかる。

 現場に残ったわずかな手がかりから犯人を見つけ出すのが名探偵だ。
 名探偵エルキュール・ポアロと同じく灰色の脳細胞をもつ(と編集部は言っている)オリバは、龍書文のハンドポケット・トリックを見破れるのか?
 ちなみに、ポワロさんも毛がうすめです。

「どうした」
「抜いたら反撃だろう」


 さらに殴られ、思わずパンツから手を離してしまった。
 パンツに手を入れたところまではよかったが、その後が続かない、
 オリバは、ぼけらっとした表情でなにを考えているのかわからない。
 もしかすると、なにも考えていないのかもしれない。

 龍書文はふたたびポケットに手をつっこむ。
 さらに歩を進める。
 オリバの体温が届きそうな近さ。つま先がぶつかりそうな位置だ。

「打ってみろ」
「この距離なら」
「腹を打つもよし」
「金的を蹴りあげるもよし」
「一瞬でカタがつくだろう」


 攻撃の推薦場所に「金的」が入っているのがバキ的だ。
 なんにしても、龍書文は絶対に先に手を出したくないらしい。
 後の先を取るのが彼の戦術のようだ。
 後の先は、「名将たちの戦争学(著:松村劭)」によれば、「敵に利を示して誘い、敵がそれに乗って態勢を崩したところを打撃する」行動だ。
 つまり、ハンドポケットも近い間合いも、オリバの攻撃を誘う罠だ。

「Mr.アンチェインが縛られてやがる」

 勇次郎が不機嫌だ。
 型破りな闘いが信条であるはずのオリバが、きゅうくつに闘っている。
 相手の戦術を打開できず、マネをしたもののすぐに止めてしまう。
 ちょっと不甲斐ない。

 勇次郎的には、オリバが全裸になって、相手も全裸にするような国辱モノの試合を期待していたんだろう。
 龍書文は、負けたら郭海皇にお仕置きされると思われる。
 オリバも、負けたら勇次郎に怒られそうだ。
 両者、知らないうちに背水の陣である。

「ヤラセテモラウゼ遠慮ナク」

 やっぱり何も考えていなさそうなオリバだが、肉は超一流だ。
 筋肉を盛り上げ、両手を拳にして天に突き上げる。
 上半身はみごとな逆三角形だ。
 頭よりもブッ太い上腕に血管が浮き上がる。

 205話で放ったオリバの一撃は、龍書文に片手で止められている。
 だったら2倍ッ!
 両腕で攻撃だ。
 シンプル・イズ・ザ・ベスト!
 単純さの中にこそ真理はあるのだ。
 そこ、単純バカとか言うな。

「俺ハ体験主義者ナンダ」
「アメリカ人ダカラナ」
「ポケットニ手ヲ入レタママデモ」
「先ニ当テチマウ」
「ソンナ神秘ハ」
「信ジネェ」


 今までさんざん居合攻撃を喰らっていたのだが、それは体験ではなかったのか。
 ここまでバカ丸出しだと、オリバの演技ではないかと疑いたくなる。

 そういえば、ポケットから手を出せといわれたときも素直に応じすぎだ。
 オリバはあえて龍書文の術中にはまることで、手の内を暴こうと言うのか。
 居合と言う神秘の正体を見破るつもりなのか。

 ブン

 パァン


 オリバの双拳鉄槌はあっさりかわされ、逆に平手で顔面を強打された。
 鼻を中心に攻撃された激痛で涙がこぼれ、オリバの動きが止まってしまう。
 居合にとって十分すぎる必殺のスキが生じた。

 ポケットに収められたままだった左手が抜かれた。
 オリバの筋肉も切り裂く貫き手がノドに突き刺さる。

「アホウが」

 オリバ、轟沈ッ!
 勇次郎はご立腹だ。
 中国拳法をコケにするはずが、コケにされている。こりゃ、怒ります。

 しかし、オリバだって無策のままでいるわけではない。
 きっと色々考えているんだろう。
 たとえば、「まるでケツだ」と言われた大胸筋で龍書文の貫き手をはさみとる、とか。
 これぞ、真剣シリ刃取り。

 または、オリバを拘束しているパンツを武器にする。
 パンツを脱いで、龍書文にかぶせるのだ。
 そして、耳目を封じられた龍書文をタコ殴り。
 しかし、龍書文も居合の速さでパンツをはぎとって、かぶせ返すかもしれない。
 パンツをめぐる攻防もオリバには不利か?

 ここで、寂海王から応援メッセージが。
「パンツをはくだけでは つまらんぞ」
 そう、勝利のカギはフンドシだった。


 龍書文の居合攻撃は、勇次郎が独歩戦で見せた御殿手(うどんで)のように、相手が攻撃をする際のスキをとらえて反撃する技だろうか。
 これは渋川流との攻防にも通じる。
 先に手を出した方が不利だ。

 ジャックが渋川先生にしたように、ゆっくり動いて相手を捕まえるのが有効かもしれない。
 現実の合気道では腕をつかまれた状態からかける型がいくつもあるし、あまり有効ではないらしい。
 ただ、オリバの怪力なら捕まえてしまえば、ずっと有利だろう。
 なにしろ柔道の黒帯(ブラックベルト)保有者だし

 オリバがパンツの中に隠し持っていた黒帯を取り出したとき、サナギが蝶へと変わるときなのだ!
 きっと、喜びのダンスをおどります。
by とら


2004年5月20日(25号)
第2部 第208話 ハンドポケット (588+4回)

 今週の扉は、刃牙をモデルにしたらしい石膏像(?)だ。
 股の間のイチバン大事な部分がタイトルの「バキ」で隠されているッ!

 文字の下の真実は、コミックス版でハッキリするのか?
 こいつは、コミックス化が楽しみだ。


 一方、黒いパンツにつつまれたオリバのトップシークレットは守られた。本体は沈んでいるが。
 そこさえポロリと出さなければ、国内法的に問題なし。とりあえず、良しッ!
 肝心のオリバはベタっと倒れて、まったく動かない。こっちは、ピンチのままだ。

「武術を嘗めるからだッッッ」

 ふがいないオリバに勇次郎が激怒する。
 中国拳法をコケにしたいと言っていた人が、なんか実力を認めるような発言をしている。
 本心では、脅威を感じているようだ。

 相手が手ごわいなら、戦う前にちゃんと助言してください。
 204話で勇次郎がしたのはオリバをたきつけるだけ。
 オリバの事を信用していたのかもしれないが、勇次郎の計算違いという感じもする。
 競馬で自分が選んだ馬がふがいないときに怒るおっさん、そんな感じだ。

「ハンドポケットという不利がありながら」
「まったく出遅れない」


 バキの疑問に勇次郎が答える。
 なんか、仲のいい親子みたいで、奇怪だ。
 野良犬と野良猫とカラスがなかよくゴミをあさっているような不自然な光景だ。
 キミら本当は、牙と爪とクチバシで攻撃しあう仲でしょ?

 でも、親バカ勇次郎は息子に質問を受けたのが嬉しいのか、答えを教えてくれるのだ。
 今なら、機嫌がよさそうだから、分数同士の計算方法とかも教えてくれるかもしれない。

 龍書文の居合攻撃は、拳を抜いてから攻撃するのではない。
「手の位置はそのままに腰をきることで抜拳を完成させる」
 つまり動いていたのは手ではなく、腰のほうだった。

 そういえば、龍書文は手で攻撃するとき片手ずつ抜いていた。
 腰をひねるため、両手を同時に抜くことができないのか。
 そして、手は余計な動きをすることなく、まっすぐ攻撃にうつる。

「例え敵が構えた状態からスタートしても決して出遅れではない
 少なくとも五分」
「ならば拳法家の龍に」
「迅(はや)さで敵(かな)うワケがない」


 やっぱり中国拳法をほめつつ、勇次郎の解説が終了する。
 そこまで知っていたなら試合前に教えてください。
 実は今思いついたのかもしれないけど。

 頼もしいパパをみて、バキもちょっと尊敬しなおす(?)。
 そして、梢江ちゃんはすっかり放置中だ。
 油断していると、範海王あたりに寝取られるぞ。

 バッ
 ブンッ
 フワ…


 オリバがハネ起き(バッ)、空中で丸まり回転し(ブンッ)、華麗に舞い降りる(フワ…)
 すごいぞ、オリバはまだまだ元気だ。

 そして、肉がすごい
 丸まって回転すると甲賀忍者・鵜殿丈助もビックリのまんまるっぷりだ。
 ボーリング場に持っていけば、誰か間違って使用してしまいそうな丸さだ。
 しかも、そのすべてが筋肉だ。
 オリバの肉をステーキにしたら、ナイフの方がまいるだろう。

「ナ」 「ル」 「ホ」 「ド」 「ネ」

「ポケットカラ 手ヲ 抜イテイル ノデハナイ」
「手カラ ポケットヲ 抜イテイル」


 筋肉玉の怪人がぶきみに笑う。
 体験主義者のオリバは、自分の体に体験させて龍書文の術を理解した。
 さすが、筋肉コンピューターの異名があるかもしれない男だ。
 推理にも筋力を使う。
 ここまで理解したということは、対策も考えているのだろう。

「競うな」
「持ち味をイカせッッ」


 勇次郎が、打開策を激励と共におくる。でも、なんか怒っている。
 しかし、オリバの鼓膜は206話で破壊されている。だから、声は届いていないかもしれない。

 それはともかく、勇次郎の言葉は正しい。
 相手の得意技を殺し、自分の得意分野で戦うのが戦闘の極意だ。
 種目をステーキ大喰いに変更すれば、勝利は確実だぞ。

「サァ」
「オッ始メヨウカ」


 オリバが再度 ハンド ブリーフ ポケットを敢行するッ!
 誇らしげにパンツに手を突っ込む。
 ここが、オレ様の憩いの場だといわんばかりだ。

 龍書文が血管浮かせて怒る。
 勇次郎は声もなく、白目になって髪が逆立つ。あの……、やっぱり怒ってますか?
 バキ、ただ驚く。
 つまらん。オマエのリアクションはつまらんッッ!
 そんなことで驚き役がつとまると思うか。もっと加藤・末堂に学べッ!

 イチバンわかりやすく怒っていた龍書文は自分から攻撃をしかける。
 ドラゴン怒りの鉄拳とばかりに、猛ラッシュだ。
 自ら両手を封じてしまったオリバは防御もできずにひたすら打たれる。打たれまくる。

 一見ピンチだが、これはチャンスだ。
 怒りで我を忘れた龍書文は、待って打つという己のスタイルをすててしまった。
 いままで見せなかった怒濤の連打も危険な予兆だ。
 龍書文は知らずオリバの土俵にのっている。

「慌タダシイ……………」
「コトダゼ………」
「ポケットカラ抜ク手モ見セヌナンテ…」


 打たれる覚悟をしていてもオリバは筋肉の要塞だ。
 龍書文の攻撃を防御せずに耐えながら、機をはかる。

 じわりとオリバの両手が抜かれた。
 だが、攻撃は速かった。
 一瞬で、褐色の豪腕が振りおろされる。

 ドカ

 足場をへこます重爆鉄槌×2だ!
 声も出さず、龍書文が棒のように倒れる。
 そして、オリバは「ザクッ」と手をふたたびパンツに突っ込む。

「ユックリ………」
「優雅ニ抜クノガ……」
「スマート ッテモノサ」


 ポケットより、ココに入れるほうが優雅だといわんばかりに大威張り。
 髪に見離された筋肉神が、自慢のポージングだ。
 驚異の逆転で、次回へ続くッ!

 ちなみに、次回はお休みらしいので、未着手だった「バキ人気投票考察」の予定です。


 この勝負は、オリバの挑発勝ちだ。
 よくぞ、この状況まで耐えた。
 そして、パンツからゆっくり手を抜いたのは正解だ。
 急ぐと、破れる。


 打撃を受けた龍書文は立てるのだろうか。
 今まで攻撃を喰らっていなかったので、こいつが打たれ強いのか弱いのかわからない。
 とりあえず頭ではなく、肩に喰らったのは不幸中の幸いだ。
 もう一波乱ぐらい起こしそうな感じもするが、どうだろう。

 前回までの龍書文は、パンツもポケットのうちと認める余裕を見せていた。
 しかし、二度おちょくられるのは効いたらしい。
 それだけではなく、何度攻撃しても倒すことができず、いらだっていたのだろう。
 こうなるとオリバのボケっぷりも演技だったのかもしれない。


 勇次郎の助言だが、破れた鼓膜にも届いていたらしい。
 持ち味をイカす。まさにその通り。
 オリバという男は、技や術を競い、速さを目指すのべきではない。
 ただ筋肉の強さを比べるべきだ。
 より強く打ち、より強く耐える戦いに持ち込むべきなのだ。

 そういう意味では、196話のvs楊海王戦はオリバにとって理想の展開だった。
 ムエタイが無残・無情・無駄に砕け散るときにこそ、無常の美を見せるように、オリバは単純な筋力比べでかがやく。

 でも印象は、なんとなくパンツだ。
 逆転のきっかけを考えると、オリバの持ち味は「黒パンツ」と結論づいてしまうような。

 勇次郎も最初から見抜いていたような顔して「ほら見ろ、パンツだろ?」と言い出しそうだ。
by とら


2004年5月27日(26号)
バキはお休みです

 23号で発表されたバキ人気投票をふり返ってみる。
 狙うは人気の理由と、シンクロニシティーだ。
 なお、グラップラー刃牙42巻に収録されている、人気投票の結果もあわせて表記する。

1 範馬刃牙(2491票)(前1)
 相変わらずダントツ人気の主人公だ。主役の意地で首位を守った。
 正直にいえば、コイツの人気はバキ七不思議のひとつだろう。

 人気投票の直前に裏返ったりして、見せ場があったという運にも助けられた。
 さすがはチャンピオンッッッ、実力だけではないッ、運も超一流!!!
 これが、SAGA[性]の真っ只中なら、どうなっていたことやら。
 22巻を読んでいたら、なんかバキのことが「イイ奴」に思えてきちゃったし。

 ネット上の人気と、読者の人気は必ずしも一致しないので、全読者で見ればバキ人気は高いのかもしれない。
 ついでに言えばアニメの影響もあるかも。
 アニメで刃牙役の菊池さんが、好演していたため男前度が上がってみえる。
 とても、キャンチョメと中身が一緒だとは思えない。


2 花山薫(2256票)(前3)
 根強く堅実な人気を誇るまことの武士(もののふ)だ。
 勝因はふんどし、間違いない。

 バキになってから出番は減っているのだが、前回よりも順位を上げている。
 110話で梢江の投石に「痛ってエ…」と言うなど、意外な人間性を見せたのも理由かもしれない。
 そっか、やっぱり、痛かったんだ。


3 愚地独歩(1748票)(前5)
 この人も順位が上がっている。
 花山と独歩は爆破つながりのシンクロニシティーだ。
 爆破で顔を吹っ飛ばされると人気が上がるらしい。
 男は度胸だ、本部あたり思い切って吹っ飛ばしてみようか?


4 範馬勇次郎(1615票)(前2)
 人気が落ちた。
 父権の凋落がささやかれる昨今、バキ世界でもシンクロニシティーか。

 正直なところ、バキになってから勇次郎はまともな活躍が少ない。
 せっかく劉海王との闘いが組まれたのだが、それも瞬殺決着だ。
 強すぎるのにも、困ったものだ。
 郭海皇との戦いで、ひさしぶりに凄いところをみせるのか。


5 渋川剛気(788票)(前7)
 渋川先生も上位に出てきた。
 この人は、あまり活躍していなかった。
 しかし、醜態をさらしたりもしなかったので無難に人気が出たのだろう。
 ヤカンをもたせたい、おじいちゃん第一位だ。


6 烈海王(683票)(前4)
 ずいぶん人気が落ちました。
 頬を赤らめてみたり、バキ復活を連呼したり、料理を作ったりと萌えキャラ炸裂だったのだが。
 やりすぎたため、「キモい」と思われたのだろうか。

 最近もきっちり出番があるのに、人気が下がるとは不憫だ。
 寂海王に勝てば、人気は上がるのだろうか。


7 ジャック・ハンマー(460票)(前8)
 前回は、バキの兄とまだ判明していなかったので、人気が伸びなかったらしい。
 バレバレだったとは思うのですが……。

 出番の少なさでは、上位陣の中でも屈指だ。
 なんのために背を伸ばしたのか不明のままだ。
 擂台賽への乱入を期待されている人物だ。
 ただ、日米同盟には毛海王に相当する人物がいないので望みは薄め。


8 オリバ(455票)
 やっと、新キャラの登場だ。
 筋肉美と陽気な性格で読者の人気をわしづかみだ。
 現在の試合も、かなり盛り上がっている感があり、決着まで目を離すことができない。

 脱ぐべきか、脱がざるべきか、それが問題だ。
 炸裂パンツ拳は、格闘界の新しい世界を開くのか。
 たぶん、開いちゃいけないトビラなんだろうけど。


9 サムワン海王(372票)
 なんで、アンタがここにいるの!?
 完璧な一発屋。と思っていたら、サムワンは二度潰れるのだった。
 読者が「バキ」になにを望んでいるか、この順位を見ればなんとなくわかる。
 愚地克己なんかより上なのだ。
 もちろん悪い意味で。

10 松本梢江(357票)(前 --)
 なんで、アンタがここにいるの!?(その2)
 シンクロニシティーだッ!
 ちなみに、前回の順位は不明だ。

 中まで見せたプロ根性に人気が急上昇か?
 もうわかった、根性見届けたッ!
 たのむから、もう繰り返さないでくれ。


11 ドイル(255票)
12 愚地克己(246票)(前6)
 仲良きことはよきことかな。シンクロニシティーな順位だ。
 ドイルは最凶死刑囚の中ではダントツ人気だ。やっぱ、顔なのか? クソぅ。

 克己は爆破が足りなかったのか、人気が落ちた。
 個人的には、ヒゲをはやした黒克己をもう一度みたい。
 でも、加藤を師と呼ぶのは、いかがなものか?
「とりあえず、驚き台詞100回ッ」
「あんな技(もん)…写真でしか見たことがねェ」
「驚きがたりないッ!」


13 柴千春(215票)(前10)
14 加藤清澄(210票)(前20)
 ガラ悪い二人で、シンクロニシティー。
 命をかけて男を見せた加藤と、1回しか出てこなかった柴千春。
 上がった人と、落ちた人で、対照的だ。

15 マホメド・アライ Jr.(207票)
16 徳川光成(202票)(前16)
17 ガイア(199票)(前12)
18 スペック(150票)
19 猪狩完至(139票)(前9)
 新キャラたちと、人気の落ちた人たち。
 その中で、同じ順位に踏みとどまったご老公はタダ者ではない。
 スペックは最初に敗北した死刑囚だが、相手が花山だったおかげかけっこう人気がある。
 倒される相手として、範馬一族だと最悪です。

20 鎬昂昇(134票)(前11)
21 鎬紅葉(115票)(前15)
 兄弟なかよく並んで、シンクロニシティー。
 新・昂昇には期待していたんですが、活躍できなかった。
 烈海王への道はまだまだ遠い。

22 郭海皇(108票)
23 夜叉猿Jr.(66票)(前18:参考)
24 寂海王(63票)
25 ドリアン(57票)
 サムワンは別腹として、やっぱり海王の頂点だけあって、郭海皇には人気があるようだ。
 投票時点では戦っていなかった寂海王も期待票を集めたようだ。
 前回は、夜叉猿が18位だった。Jr.の表記は無かったので、参考です。
 そして、169話にしか出番のない猿にも負けた、あわれなドリアン。

26 範海王(54票)
27 李海王(53票)
 兄弟なかよく並んで、シンクロニシティー(その2)。
 克己の票が少なかったのは、間違って範に入れた人が多数いるためか?
 李海王とかもうちょっと人気でてもいいと思うのだが。

 この兄弟の姓は、なんでが違うのか。
 その辺の謎を3年ぐらいは引っ張るとみた。
 そして、うっかり回想して9週間か。

28 アレクサンダー・ガーレン(48票)(前17)
29 安藤玲一(44票)
 でかい人+噛み切られた人で、シンクロニシティー。
 ガーレンの落ちっぷりは、無残の一言しかない。
 範馬一族にかかわると、後の人生不幸になる。

30 シコルスキー(43票)
30 マホメド・アライ(43票)
32 柳龍光(40票)
33 除海王(35票)
34 陳海王(32票)
35 本部以蔵(27票)(前--)
36 楊海王(22票)
37 ストライダム(18票)(前--)
38 孫海王(16票)
38 毛海王(16票)

 ダメなシコルスキーに、もっとダメな柳。
 その他は、まとめて一山いくらの中年海王状態だ。
 そのなかで除海王に人気があるのは、デカいだけのやられ役が愛されているからか。
 アリガトウ、デカい人。

 戦わないアライ父と、ストライダムは人気がない。
 そして、解説神・本部以蔵も人気がない。
「バキ」になってから解説をしていないもんな、この人は。
 本部は、戦っちゃダメなんです。
 すみっこで、汗流しながら解説していないと。
 持ち味をイカせッ!


40 劉海王(12票)(前25)
41 末堂厚(7票)(前--)

 みじめな人たち。
 ジェットコースターの末堂はカッコイイと思うんだけど。
 劉海王も期待していたんですけど。

 あ、この二人もデカい人シンクロニシティーだ。
 さらば、デカい人たちよ。



・日記にも板垣ネタを書くことがあるので、物足りない人はそっちで補充してください。
by とら


2004年6月3日(27号)
第2部 第209話 スマート (589+4回)

 オリバがパンツでイカしまくりだッ!
 技より力、速さより力。
 とにかく筋肉ッ!

 それこそオリバの持ち味だ。
 あと黒パンツも。ブルマではないのでご注意を。


「持ち味……」
「イカしやがったなァ〜〜〜……」


 アレ、勇次郎がおどろいている? いや、感心しているのか?
 珍しく気が抜け気味の表情をしている。
 アンタ、自分で「持ち味をイカせッッ」とか言ってたじゃん(注:怖いのでスネを蹴ったりはしません)
 助言どおりに行動しているのに、なんで意外そうな顔をするですか。

 そもそも、「持ち味をイカせッッ」では具体的に何をすべきかわからない
 乱打戦に持ち込めとか、力でつかまえろとか、そういう指示が欲しかった。
「はじめの一歩」の鴨川会長のような的確な指示が欲しい。「小橋健太のことを思い出せ!」と。
 でも、会長、素直に「クロスアームブロックで防げ」と言ってくださいよ。

 オリバは逆転したが、勇次郎はこの展開を予想していたのだろうか。
「持ち味をイカせッッ」とか言いながら、全然違うことを考えていた気がする。

 それが証拠に、いままで勇次郎がこんな表情をしたことがあったか。
 縛られない男・オリバの意外性がバクハツして、鬼も驚いたのだろう。
 これが、持ち味をイカすということか。

 あ、ついでに言っておくが、バキなんかしゃべれ。
 置物じゃないんだから、少しは動いてくれ。

 バ バ バ バ バ
 ヂャキ


 居合いの速さで龍書文が立ち上がった。
 予備動作がまったく見えない。立ち上がりるときに生じるスキもない。
 やはり、龍書文は超一流の拳法家だ。
 それだけではない。オリバの攻撃を喰らったのに、龍の体には外傷が見えない。
 打たれ強さも超一流らしい。
 楊海王(ダイヤモンド)よりも、丈夫だぞッ!

 龍書文の眉間にシワがよっていく。
 シワがすごいことになって、シワシワ梅干形態だ。
 龍書文の怒りが頂点に達したようだ。

 ハンド・ポケット!
 やはり、龍書文はポケットに手を突っ込む。
 龍書文は、龍書文の持ち味をイカす気だ。

『出たぞハンドポケット対決ッッ』
『目には目ッッ』
『歯には歯ッッ』
『ポケットにはポケットだ〜〜〜〜ッッッ』


 見開きページで、肉男と凶人がふんぞり返って対峙する。
 オリバは誇らしげに胸を張り、筋肉を見せつける。
 猫背な龍書文は白の衣装に身を包み、見せる肌はほとんどない。
 対照的な二人に共通するのが、ハンドポケットだ。
 ウソです。ひとりはハンド・パンツだ。持ち味イカしやがったなァ〜〜〜……。

「ソロソロ」
「決着…」


 パンツが破れないようにか、細心の注意を払ってオリバが手を抜く。
 きっと、王侯貴族がパンツから手を抜くときは、このように優雅にエレガントに抜くのだろう。
 ズルズル抜かれていく手が、指が、完全にパンツから抜けた瞬間、


 ザク

 龍書文の右抜き手がノドに刺さっていた。まさに瞬速の抜拳術だ。
 しかも、狙いは筋肉の無いノド元だ。
 容赦のない急所攻撃が始まる。

 ガキッ

 龍書文の左拳がオリバのアゴをかち上げる。
 星を飛ばして、オリバの頭が跳ね上がった。
 龍書文の手はポケットへ。ハンドポケットの定位置だ。

 パシッ
「金的ィッ」


 ハンドポケットのまま、龍書文が蹴りこんだ。
 鍛えられない箇所、急所中の急所、板垣漫画では必須の技だ。
 軽い一撃だが、必殺性は高い。
 これにはオリバも顔中シワにして痛がっている。
 そして、お客さんは大喜びだ。
 くそぅ、この調子でサムワンも愚弄していたんだなコイツら。
 …とか言うと、サムワンを世界でイチバン愚弄しているのは私だと言われるかもしれませんが……

 ガッ ガッ

 ハンドポケットのまま龍書文が飛んだ。さらに空中にてニ連蹴りッ!
 こんなSFチックな技の使い手を私は知らないぞ。

 着地と同時に龍書文の両手が解き放たれる。
 親指一本拳でこめかみを、さらに手刀で追撃のこめかみ打ちだ。
 さらに、中指一本拳・人差し指一本拳・足刀を、眉間・人中・ノドへと決めていく。

 鋭い攻撃で急所をピンポイント攻撃だ。
 針の穴を通すような正確な打撃と、手首と足首から先の形状を使い分ける技術が融合した攻撃だ。
 中国拳法四千年の歴史がこの多彩な攻撃を作り上げたのだろうか。
 ひょっとすると、金的を打ち抜くことに特化したデコピンもあるかもしれない。
 い〜〜や、きっとある。

「オリバが………」
「さっきから…」
「防御していないッッッ」


 龍書文の繰り出す攻撃は、どれも必殺の威力だが、あえてノーガードだ。
 なんの偶然か、勇次郎・鬼の構えと同じポーズでオリバが両手を広げている。
 技を競っては、勝ち目がない。
 オリバの持ち味は、筋肉だ。

 見よ! 胴より太いオリバの上腕をッ!
 エイケンもやせて見える肉付きをッッ!
 オマエ本当に人間かッ!?

 ガッ

 オリバは無防備に殴られながら、龍書文の頭を両手でつかんだ。
 そう、つかめばオリバの怪力がイキてくる。
 オリバの持ち味が最大に発揮されるのが、この状況だッ!

 オリバが余裕の笑いを浮かべる。
 警視庁の猛者を振り回し、ドイルを抱き殺し、楊海王をジャガった怪力を、存分にふるうことのできる体勢だ。
 一気にひねるか、ジャガるのか。
 なんなら黒パンツの中に龍書文の顔をネジ込んでもいい。

(首が……)

 つかまれた龍書文が汗を流した。
 汗はピンチのあかし、敗北のきざしだ。
 つかまったことより、汗を流したほうが、キケン度が高い。

 あ、で、首がどうした?
 折れそうなのか。
 コキャッとやられそうなのか。
 反撃不能なのか。

 ゴッ
「グッチャ」


 オリバの頭突きッ!
 ブッ太い両手で引きよせ、鼻面にブチかました。
 鼻が潰れる湿った音と、鼻血が噴水状に吹き出す音が、会場に響きわたる。

「ダカラ言ッタロォ……」
「オマエサンハ少シ……」
「スマートサガ足リネェッテ」


 そうは言うが、オリバの攻撃は無骨でスマートとは程遠い。
 愚直に突撃をくりかえす重装歩兵の闘いだ。
 戦場の華となる華麗な騎馬隊とは正反対である。

 それに、ゆっくり手を抜くんだったら、パンツに入れる意味ないじゃん。
 ニオイの追加ダメージがあるのか?

 まあ、パンツに手を入れるのは龍書文を挑発するための手段だったのだろう。
 おかげで、龍書文は先に手を出して、反撃された。
 よっぽど、パンツに突っ込んだ後の手で殴られたく無かったのだろう。


追記(2004/6/4)

 上で書いた(首が……)について。
 アレはオリバが頭を後ろにそらしているので首から上が見えなくなって、龍書文が思ったセリフではないかと指摘がありました。
 見直してみると、確かにその通りです。

 さっきまで自分の頭をつかんでしゃべっていたオリバの頭が消失していれば、龍書文でもビビります。
 これは首の関節がやわらかくないとできない技(?)だ。
 そして、ケツのような胸を持っているオリバだから、頭が隠れたのだろう。
 そのうち、エイケンでも胸に隠れて、(首が……)と言い出すことでしょう。
 おぼえていないだけで、もうやっているかも知れませんが。

 これは純粋に私の読み込みが浅かったからですね。
 この失敗を教訓に精進していく所存であります。
「GUN BLAZE WEST」での敗北をバネに「武装錬金」へと蝶・進化した週刊ジャンプの和月先生のようにッ!
 なんでもいいんですが、Amazon 売れている順サーチをしたら、「GUN BLAZE WEST」がえらい後ろにあります。
 そうか、やっぱり、売れてないんだ。

 掲示板では、showさんと空師さんに。メールでは、かへるさん、ayuさんに情報をいただきました(着順)。ありがとうございます。
 今後ともミスがありましたら、ビシバシつっこんでください。
by とら


2004年6月10日(28号)
第2部 第210話 心涼しきは… (590+4回)

「オマエサンハ……」
「少シ……」
「スマートサガ足リネェ」


 豊満な胸と細く引き締まったウエストをもつ、全米No.1ヒット級のスマートさん。
 そんなオリバに「エイケン」のヒロインたちも危機感をいだいていると情報通は語る。
 スマートかつエレガントに、オリバが頭突きをブチかます。
 冬眠直前のクマでさえ欲情するといわれるフェロモンたっぷりのオリバのどアップだ。
 控えめな龍書文も、豪奢な鼻血の噴水を吹き上げるしかなかった。

 ところで、龍書文は冒頭から鼻血を出していた
 前回ラストの頭突きがはじめて喰らった顔面への攻撃だったので、出血はしていなかった。
 今回の頭突きは、実は二発目の頭突きかもしれない。
 どうりで龍書文の表情が弱気に見えるわけだ。

 吹き出す鼻血を頭からあびてオリバはちょっと満足そうだ。
 鼻血だけに色々な異物が混じっていそうだが、スマートなオリバは動じない。

「ケッ」
「オリバの顔面突きかよ」
「想像したくもねェ」


 怪力無双を存分にイカした頭突きだ。オマケに鼻面を狙っている。
 余裕の表情をしているが、勇次郎ですら想像したくないと言う。
 ……勇次郎でも想像したくないのか?

 なんか、この試合の勇次郎はおかしい
 妙にはしゃいでいると言うか、とにかく変だ。
 横にバキがいてくれるから、うれしいんだろうか。
 でも、さっきからバキはまったく返事をしていない。
 ふたりの間には冷たい空気が流れているようだ。勇次郎は場の空気読んでないようだけど。

 横にいるのがストライダムだったら、「わたしなら あの龍書文を10秒で絶命できる!」と暴言をはいているだろう。
 本部さんだって「今の龍書文なら1分以内に殺せる」と言うだろう。
 もちろん、言うのと実行できるかどうかは、別の話だ。
 あ、でも日本刀を装備すればあるいは………

「はは…」

 龍書文は勇次郎もイヤがる(?)頭突きを喰らった。
 足元には血だまり、目には涙、呼吸は苦しげだ。
 しかし、笑った。
 ずっと、しかめっ面をしてきた男がやっと笑ったのだ。

「心…………」
「涼…しき………は……」
「無敵……」
「なり」


 ボロボロ血まみれ笑顔を引き締めて、龍書文が貫き手をオリバの腹に決めた。
 危機でありながら頭を冷やし、勝機に転換する。
 勝利を確信したオリバの心に生じたスキを突いたのだ。

 ペキ…

 砕けたのは龍書文の指だった。
 オリバにスキは無かった。
 やっとつかんだ勝機なのだ。簡単には手放せない。

「ドレホド指ヲ 鍛えコンダノカ 知ランガ」
「俺ガ本気(リアル)デ 腹筋ヲ固メタ トキニハ」
「アキラメタ 方ガイイ…」


 本気でガチガチに固めた腹筋は、まさに銃弾も通さぬ鉄の壁だ。
 この防御力と、豪腕が生み出す攻撃力が、オリバの持ち味だッ!
 ノーガードでド突きあう状態がオリバにとって理想の展開だろう。
 一度、花山と戦わせてみたい。

 ちなみに「鍛え」の「え」だけひらがななのは誤字と思われる。
 そこだけ発音が正確だったのかもしれないが。
 オリバがもっとも得意とする中国語の発音は「鍛える」なのか。
 好きそうだよな、「鍛える」って言葉。


 この腹筋は狂気の特訓によって造られた。
 内容は、大型ヘリコプターをロープで引っ張るッ!
 オリバは浮かないように腰に鎖をつけて、空飛ぶヘリと綱引きだ。
 ヘリだって輸送目的のタンデムローター型(参考)の、ゴッツイやつだ。
 すごいんだけど、なんかムチャクチャだ。
 普通の器具で、特訓できないんですか?

 オリバがロープを引っ張る。汗が飛び散って、青春だッ!
 ロープを引っ張る。ヘリの操縦者の心中はいかに? オレこんなおっさんと力比べをするために操縦を学んだはずじゃなかったのに……。
 それでも引っ張る。ヘリのバランスが崩れたら大惨事だぞ。

 この特訓でオリバはウエストの引き締めを完成させたらしい。
 最近、腹が出てきているとお悩みの方はヘリコプター・ダイエットを試してはいかがか。
 失敗すると、胴がちぎれそうだけど。

 この特訓方法は、なんとなく楊海王の台風来襲時、落差30mの滝に打たれる修行を思い出させる。
 なんか、缶詰を開けるために、チェーンソーとか大砲を持ってくるような、ムダに過剰な手段っぽいところが。
 オリバと楊海王。出会い方が違っていれば、ふたりは親友になれたかもしれない。
 なかよく修行をする、ふたり。
 ヘリに引っ張られて、楊海王がちぎれたり、オリバが瀧に鉄球を流して、楊海王が砕けたり。
 そんな切ない夏の思い出が生まれそうだ。

 グッチャッ

 さらにオリバの頭突きが炸裂する。
 元警官のジェフ・マークソンも、シコルスキーも、ドイルも、オリバに一撃で倒されている。
 その必殺の重爆を、二発(あるいは三発)喰らってしまった。
 しかし、龍書文の心はまだ折れていなかった。

「華(カ)ァッ」

 腹は破るのは困難とみて、オリバの顔面に打ち込む。
 骨折(おれ)た右手で殴りつける。
 ここまでの勝負根性は柴千春以来だろうか。
 無事な左手を使わず、右で殴り続ける気迫は異様ともいえる。
 オリバが命がけで肉体を鍛えたように、龍書文も鍛えた貫き手に命をかけているのだ。

 オリバは、神妙な表情であえて打撃を受けていた。
 龍書文の勝負根性を見届けたのだろう。
 そして、龍書文の全身全霊の攻撃にこたえ、オリバも全身全霊の攻撃をブチかます。
 またも、頭突きッ!

「フン…」
「マダヤッテ イヤガル…」


 一度も悲鳴をあげることなく、龍書文は意識を失っていた。
 そして、最後はハンド・ポケットッ!
 最後の最後まで意地を貫いた。

『決』『着』

 日米軍 vs 中国連合軍、最初の戦いは怪力無双・オリバが持ち味をイカし、激勝した。
 けっして楽な戦いではなかった。
 危うい場面も何度かあった。パンツも破れていたかもしれない。
 しかし、最後はオリバの筋肉がモノをいった。

「ハンドポケット」
「最後ノ最後マデ」
「スマートナ野郎ダゼ…」


 オリバもちょっと好きになったハンドポケットだった。
 クセになったオリバは、結婚式などのめでたい場でもハンドポケットをするかもしれない。
 もちろんオリバの正装は黒のパンツ一丁であろう。

 己のスタイルを貫いた龍書文にオリバも敬意を払っている。
 ちなみにその龍書文だが、支えている人が激しく手を振っていてかなり危険な状態っぽい。
「マズイ、意識無いよ」とか、「マズイ、息して無いよ」って感じだ。
 凶人・龍書文の再起を願いたい。


 次の試合は、狂獣・郭春成 vs 範馬刃牙だ。
 今大会、屈指のイケメン対決かもしれない?
 さすがに主人公が負けるとは思えない。
 ここで負けたら、14キロの砂糖水や烈の連呼はなんだったのか という話になる。

 もっとも、郭海皇の切り札である龍書文と郭春成が負けても、コイツらは負けにきただけか という話になりそうだが。
 やっぱり、控え室で龍書文は罰ゲームを受けるのだろうか。
 たとえば、ポケットの入り口を縫いつけて、ハンドポケットできないようにするとか。
by とら


メニューに戻る

バックナンバー(仮)    今週の餓狼伝(最新版)    今週のグラップラー刃牙(アニメ版)