今週の範馬刃牙 SON OF OGRE 31話〜40話

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2006年7月13日(33号)
第3部 第31話 1+1+1=? (687回)

 前回から引きつづいてアイアン・マイケルがピンチだ。
 ねちねちとジャブだけで倒すようなことはやめて、早く楽にしてあげてください。
 ボクサーと紙資源にやさしくない展開だ。
 せめて、環境には配慮して欲しい。ボクサーに関しては……、あきらめました。

 ガッ

 マウス三兄弟が同時に蹴ったのに音は一つだ。
 完全にタイミングをあわせて蹴っている。
 もう、今のアイアン・マイケルは頭を抱えて防御にてっするのみだ。

(こんなことがあっていいのか………?)
(偉大なチャンピオンだったマイケルの顔を――――――)
(足で蹴るなんてッッ)


 職員もおもわず非難してしまうほど陰惨な暴行現場であった。
 「チャンピオンだった」と過去形だが、職員もマイケルのファンだった時期があるのだろう。
 同じ黒人だし、親近感をもっていたのかもしれない。
 すでに過去の人あつかいだけど。

 マウス三兄弟がマイケルの顔面を蹴っただけで、職員はかなり怒っている。
 ならば最大トーナメントで柴千春がした仕打ちをみたら、その場で発砲していたかもしれない。
 アメリカ人の観客がいなくて良かった。


 マウス三兄弟のリンチからマイケルが逃げだした。
 前回、相手に逃げられたので、負けずに逃げかえしたのだろうか。
 現在のアイアン・マイケルに良く似合った作戦かもしれない。
 がんばれマイケル! 明日に向かって逃げまくれ。

 だが、アイアン・マイケルが逃げこんだのは建物のスミだった。
 まるでコーナーポストのようなカドだ。
 ボクシングなら逃げ場のない死地である。

(それだッッッ)
オォオッッ

 職員も思わず熱のはいった応援をしてしまう。

 くさって服役中の元王者なハゲでも、彼はアイアン・マイケルなのだ。
 ピンチをチャンスにかえる機転がある。
 あえて、コーナーに追いこまれることで、三人すべてを正面に集めた。
 これで背後と左右からの攻撃はない。

 ネットで「壁を背にしろ」と合計100MB分ぐらい言われていそうな作戦であるが、よくぞ気がついた。
 ジャック・ロンドンの小説『野生の呼び声』にも、こんなシーンがあったな。
 ……やっているのは犬だけど。マイケルは、犬なみかよ。
 とにかく、イメージ的には"よみがえれ野生の拳"だ!

(やってやれッッッ チャンプッ)

 もう、すっかり職員も応援団だ。
 本来ならここでアイアン・マイケルのテーマソングが流れて逆襲がはじまる。
 でも、なぜか、マイケルの活躍する姿が想像できない。
 上半身をすばやく動かしていても、期待感がわきません。
 スイマセン……。読者の心はすでに折れているみたいです。


我々も―――


 指を鳴らして、マウス三兄弟がポーズをあわせる。
 はやくもマイケルが汗を流した。
 鼻血も出てるし、もうダメなんだろうな。
 などと、読者は後半ロスタイムに3点差で負けているみたいな気分を味わうのだった。

 アイアン・マイケルが、ボクシングで頂点をとったピーカーブー(いないいないバァ)スタイルをとる。
 両手はアゴをガードする。上半身をリズミカルに動かし、防御する。
 高度で洗練されたファイティングスタイルだ。

 だが、マウス三兄弟は おそれることなくなく近づく。
 ボクシングは三流だがコンビネーションは一流なのだ。
 肉が安くてもソースが美味ければ、ステーキは美味いの法則である(ちがうか?)。

 指を鳴らした合図で三兄弟が殴りかかった。
 ガッ
 同一タイミングのため、やはり打撃音が一つだけだ。
 予想通り、マイケルが打たれた。
 こんなときだけ期待に こたえるなんて、アンタやっぱり噛ませ犬だ。

 ひとりのパンチはよけたのだが、のこりの二つを喰らってしまった。
 動きが止まったところに、追撃のマウスブリッドと殲滅のマウスブリッドを喰らう。(by スクライド
 アイアン・マイケルがダウンした。

同時に3つのパンチを出せば2つは当たる


 かつて東郷平八郎が「百発百中の大砲一門は、百発一中の大砲百門に勝る」と言った。
 たいして、加藤友三郎は「百発百中の大砲一門と、百発一中の大砲百門が撃ちあったら、百発一中の大砲九十九門が残る」と言ったらしい(参考:松村劭「新・戦争学」

 スゴい性能の大砲でも、多数に撃たれると負けるのだ。
 で、もともとスゴくないマイケルはみじめに負ける。
 というか、普通に左右に回りこまれているぞ。
 カドに入った意味まで失ったか。いいところ一つもなしだ。

 ところで、マウス三兄弟は指を鳴らすクセがあるらしい。
 息を合わせるために、ときどき指の合図で体内時計を合わせているのだろうか。
 負けずに指パッチンすればマウス三兄弟のリズムを狂わせることができるかもしれない。
 と言うわけで、マウス三兄弟の天敵は素晴らしきヒィッツカラルドだ。(by ジャイアント・ロボ


「やめろォオォッ」

 マイケルをボクシングで倒して満足したマウス三兄弟は、手段を選ばない破壊にうつる。
 職員の悲痛な叫びもムシして、ひとりがチョークを極めた。
 動けないマイケルに、のこりの二人がひたすら蹴りを入れる。
 無残にマイケルが破壊されていく。
 だれか、たすけに入る者はいないのか!? 次回へつづく!


 今回もひたすらムゴい。
 マイケルと鞍馬を入れ換えるという解決策しか思いつかないぐらい悲惨だ。
 鞍馬だったら、必要にして十分にボコられる資格があるので蹴られても問題ない。
 むしろ、積極的に蹴られてほしい。

 マイケルのやられっぷりは見ていて、ちょっと気がめいる。
 なにより、髪の毛のあったころと比べての没落っぷりが痛い。
 刃牙のリアルシャドーで蹴りたおされたのは、むしろ高待遇だったのだ。


 ところで、今回のタイトルは「太陽戦隊サンバルカン」を思いだす。「1たす2たすサンバルカン」ですな。
 マウス三兄弟は戦隊物だったのか?
 しかし、特撮戦隊物は基本的に五名で構成される。
 マウス三兄弟は、ちょっと時流にのれていない。
 ……もしかするとマウス三兄弟ではなく、マウス五兄弟なのかもしれない。

「どうした唇・歯・舌よ。苦戦しているようだな」
「歯ぐき兄さん、のどちんこ兄さん!」


「四人目と五人目だと!?」

「くっくっく、歯ぐき兄さんは縁の下の力持ちだからめったに姿を見せないの だ」
「そして、のどちんこ兄さんは下ネタ担当だから、呼びたくなかった」

 マウス兄弟が五人そろうと、真の恐怖がはじまる!
 イマイチ攻撃力の低いマウス三兄弟も、五人になれば化学反応を起こして大爆発だ。


 それにしても、職員がすっかりアイアン・マイケル派になっている。
 グラップラー刃牙20巻の朱沢江珠のように、飛びこんできそうな勢いだ。
「マウスゥゥッッ あたしが相手だ!!!」
 かなわぬと知りながら、アイアン・マイケルのためにマウス三兄弟に殴りかかる。

 数分後……。
「やべ……。勝っちゃったよ……」
 立っているのは職員ただ一人だった。

 もちろんマイケルは倒れたままだ。
「こいつらって、死ぬ気で一人を倒せば残りは三流以下なんだな」
「しかし、アイアン・マイケルってこんなに弱かったんだ」
 崩壊(こわ)してしまった、権威を……ッッ。

 二人に殴られるのはムシして、とりあえず一人倒せば十分な勝機があったと思う。
 コンビネーションあってこそのマウス三兄弟なんだし。
 マイケル、頭がいいのか悪いのか判断つきかねます。
 まあ、思うほど簡単ではないんだろうけど。

 マイケルのダメージは肉体よりも精神のほうが心配だ。
 近くに三人以上の人間がいるとパニックを起こす体質になったりして。


 で、刃牙はなにをしている。
 アイアン・マイケルを助ける絶好のタイミングをはかっているのか?
 最近は主人公らしさを身につけているが、やはり巨凶なる範馬の血を引く男だ。
 他人やムエタイを踏みつけにしてのしあがること、伊良子清玄のごとしである。
 アイアン・マイケルを踏み台にして全米No.1ヒットの範馬刃牙になるつもりか。


 絶体絶命のアイアン・マイケルを助ける希望がもう一つある。
 ヘビー級ボクサーの守護神ジョン・L・サリバンだ(by グラップラー刃牙 29巻)。

「ボクシングのヘヴィ級チャンプってのはな ボウヤ……。
 この地球上でイチバ〜〜〜ン強ぇぇ男のことを言うんだぜ」
「でも相手は三人なんスよ(号泣しながら)」
「…………」

「えっ、ウソっ、アドバイスなしで帰っちゃうの?」

 アイアン・マイケルは守護神にも見放されているっぽいよな。
 あと、今の刃牙ならせっかく出てきた幻想のサリバンに喧嘩売る。
 そして、幻想体だろうが なんだろうがハイキックでムリヤリ倒す。
by とら


2006年7月20日(34号)
第3部 第32話 滅多 (688回)

 李猛虎を撃破 → 柴千春に敗れる → 範馬勇次郎に噛まれる → 刃牙の妄想で汚される → マウス三兄弟にボコられている(現在進行形)。
 出るたびに、扱いが悪くなっていくアイアン・マイケルであった。
 転落しつづけるマイケルに救世主はあらわれるのか!?

 女・子供でも大の男を倒せる技術(わざ)がある。
 金的、目突きといった鍛えることができない弱点への攻撃だ。

『しかし もう一つ―――――――――
 技術(わざ)とは言えない必殺の方法(わざ)が存在する』
『踵(かかと)である』


 常に全体重を受けるカカトは、人間の骨の中でもっとも頑丈らしい。
 また、簡単に体重をのせた攻撃ができる。
 体重をのせたパンチというのは、いがいと高等技術であり練習が必要だ。
 しかし、全体重をのせてカカトで踏みつけることは、だれでも簡単にできる。

 吉福康郎「最強格闘技の科学」は、格闘家の打撃力を測定し科学的に分析している。
 とある空手の選手は試し割りのとき、ジャンプして腕をまっすぐ落として成功させたらしい。
 ほとんど筋力を使わなくても、体重をのせて落せば高い破壊力が生まれるのだ。

 餓狼伝において、久我さんも下段の踵蹴りは金的に並ぶ必殺力があると評していた。(餓狼伝 9巻 VOL.65)
 まさに、シンプルにしてディープな攻撃である。
 ジャンプして相手の上に落ちれば、刃牙の剛体術と同じ威力になると世間にツッコまれたこともあった。
 まあ、だまって攻撃を受けてくれる相手はプロレスにしかいないから、剛体術のほうが便利なんですけどね。

 なんにしても、筋力だけではなく重力をも利用した攻撃なのだ。
 「今のオレは大地の力を得て攻撃している」などといえば、ジャンプ方面で大人気マチガイなし!
 負けずにマイケルも「大気がオレの武器だ」とか、そういうノリで逆転だ。


 アイアン・マイケルをわざわざ必殺の下段カカト蹴りでたおしたマウス三兄弟であった。
 ものすごく容赦ない。
 ゴキブリ一匹に殺虫剤を一缶使うようなものだ。
 マウス三兄弟はマイケルを恐れているのかもしれない。
 恐怖があるから、過剰な攻撃をするのだ。

 過剰に蹴られたアイアン・マイケルは虚ろな目をしている。
 つま先で転がされても反応がない。
 目を開いているが、何も見ていないようだ。

拳を握る腱を切断しとこうか

 ―――――― ッッッ!?
 腱を切断ってことは、ベルセルクのグリフィスみたいな状態になるのか!?
 過剰な攻撃はマウス三兄弟のお家芸だし、マイケル大ピンチだ!
 マイケルからボクシングを取ったら、ささげるモノなんてなにもないぞ。
 すでに、髪の毛だって無いんだし。

 でも、独歩は腱どころか手首を切断されても無事に復活した。
 渋川先生もジャックにアキレス腱を噛みきられたけど、今では元通りだ。
 腱が切れても、刃牙世界なら問題なし!
 歯だって生えてくるぐらいだし(※ 未確認情報)。
 ちなみに「ろくでなしBLUES」は歯が生える世界だ。

 いや、ユリーは握撃で腱が切れてボクシングの夢を断たれた。
 マイケルが、独歩・渋川グループに入れてもらえるワケがない。
 いかんッ! アウトだ!
 刃牙、惰眠をむさぼってないで、はやく助けにくるんだ!


 そこへ未確認飛行物体(UFO)が快音響かせやってきた。
 UFOはシュコンッとコンクリート(?)の壁に突きささる。
 それは、風車であった。
 刺さるのか、コンクリートに?
 いったい、どんな技量があれば刺さるんだ?

 さらに、闇の向こうから未確認生命体が前転でやってくる。
 この技は、ドラゴンボールのキャラクターであるミスター・サタンが得意とするローリングアタックか!?
 相手の意表をついた奇襲技だ。
 だけど、おそい。アニメ版ドラゴンボールの展開なみにおそい。
 出現から壁にぶつかって止まるまで3ページ以上を使っている。
 しかも、壁に当たって不発じゃねぇか。

「オエ…ップ」
「オ〜〜〜〜 キモチわる」


 登場したのはJ・ゲバルであった。
 回転しすぎて気持ち悪くなったらしい。
 登場したと同時に大ピンチだ。
 ドリフかよ、アンタはッ!?

 どうやら、J・ゲバルはカッコよく登場したかったらしい。
 だが、肝心の風車がまわらず失敗した。
 素手で闘うと決めた男が武器にたよったから、弱くなったんだ。
 今のゲバジュンは本部に負ける。

「滅多に見られねェマウスの揃い踏み」
「寝ちゃいられねェ」


 横になって寝ない男、J・ゲバルが緊急参戦だ!
 アイアン・マイケルの救い主となるのか!?
 次回へつづく。

 ふつうに間違って(あるいは ワザと)マイケルの右腕をカカトで踏んづけて折りそうな気がする。
 J・ゲバルってアメリカ人は嫌いだったはずだけど、マイケルをちゃんと助けてくれるのだろうか。


 それよりも、気になるのは風車だ。
 アンタは「水戸黄門」に登場する「風車の弥七」か?
 日本の武術を学んでいたのは知っている。
 だが、日本の時代劇まで学んでいたのか?
 45話あたりで印籠を出したりしないよな。

 日本の武術を学ぶ人の中にはついでに、日本の娯楽まで学んでしまう人もいる。
 プロレスラー & 総合格闘技のジョシュ・バーネットが日本アニメ好きであることは有名だ。
 グレイシー柔術のホドリゴ・グレイシーは入場BGMに電撃戦隊チェンジマンを使用している。
 決めポーズはなぜか「かめはめ波」だけど。

 ならば、水戸黄門好きな武術家がいてもおかしくない。
 むしろ武術の黄金時代(?)である江戸時代の話なのだから、積極的に見るべきだ。
 ドラゴンボールに学んで、かめはめ波を出そうとするより実戦的だぞ。


 ピューと吹く!ジャガーのハマーはアレクサンダー流忍術を使う。
 ならば、ゲバル一族は「風車の弥七流忍術」を使ってもイイのではなかろうか?

 そもそも、武術や忍術はハクをつけるために有名人を勝手に創設者にする場合がおおい。
 たとえば、源平合戦の英雄である源義経に武術を教えたとされる鬼一法眼を祖とする鞍馬流がある。
 南北朝で見事なゲリラ戦を展開した楠木正成が作ったといわれるのは楠木流忍術や楠木流軍学だ。

 中国には傑作小説「水滸伝」の人気キャラクター魯智深流の杖術だってあるぐらいだ。(参考:藤原稜三「格闘技の歴史」)
 架空の人間を始祖とする武術があっても、なんら不都合はない。
 まあ、ちょっと成立年数が足りない気はしますが……。


 ゲバジュンの登場によりマイケルの生存率が上がった。
 そして、はやくもマウス三兄弟に噛まれる予兆が見える。
 一人なんて、もう汗流しているし。
 次回はすこし生意気いったあとで、マイケルがかわいそうに思えるほどあっさりゲバジュンにやられると見た。

 それより、主人公はどうした?
 ちょっとほめると、すぐにいなくなりやがる。
 ゲバジュンと決着をつけると息巻いているハズじゃないのか?
 久しぶりに横になって眠れるしあわせを味わっているのかもしれない。
 せめて、ゲバジュンが出て行く気配で目を覚まして欲しかった。

 主人公としても、戦士としてもゲバジュンにずいぶん遅れてしまった刃牙であった。
 思い切って、風車の弥七流忍術に入門して活躍のしかたを学んだほうがいいのかもしれない。

 小国とはいえ大統領のイスを蹴ってまで、ゲバジュンが手に入れようとしたものはなんだろう。
 ゲバジュンはオリバは範馬勇次郎と親交があることを知っていたはずだ。
 範馬勇次郎といえば、地下闘技場の管理人である徳川光成と知り合いである。
 そう、リアル御老公なのだ!

 御老公を手にいれ、助さんと角さんを仲間にすれば完璧だ。
 アイアン・マイケルはカクい名前なので角さんになる。
 刃牙はSAGAでスケベだったので、スケさんだ。
 完璧すぎる布陣である。
 これが、ゲバジュンによる真の狙いだったのか!
 あとは、諸国を漫遊するだけだ。

 ささいな問題が、一つある。
 計画がうまくいくと、やっぱりアイアン・マイケルはボクシング王者になれないのだ。
 どっちに転んでも地獄である。
by とら


2006年7月27日(35号)
第3部 第33話 戦士(ウォーリアー) (689回)

 肝心なところで役に立たない主人公を出しぬき、純・ゲバルがやってきた。
 仲間がピンチのときにあらわれるなんて、風車の弥七みたいだ!
 で、うっかりバキ兵衛はナニをしている?
 A:うっかりしていました。


「一卵性の三つ子ならではのコンビネーション…」

 マウス三兄弟は三つ子だと確定した。
 世界に三人いるといわれる そっくりさんを集めたワケではなかったのだ。
 敵を混乱させるために顔を整形して そっくりになったワケでもない。
 超天然三つ子体質だ!

 『みつどもえ』もはだしで逃げ出す三つ子っぷりで、マウス三兄弟は歴戦の悪党どもをたおしてきた。
 だが、そのマウス三兄弟がゲバジュン一人を恐れている。
 マウス三兄弟のコンビネーションは「化学反応」といわれるほど劇的な効果を生む。
 だが、ゲバジュンの風車の弥七流忍術は魔法なみに ふしぎな力を発揮する。
 ゲバジュン・マジックは化学反応よりも数段上手だ。

「バカ明るい月夜…………」

 ゲバジュンのたくみな話術で、マウス三兄弟はつい背後の月を見てしまった。
 いきなり話題を変えて、J・ゲバルが視線をそらしたので、視線を追ってしまったらしい。
 マウス三兄弟がそろって背後の月を見た瞬間に、J・ゲバルが指を鳴らした。

「素人(アマチュア)だな…」
「今 君らがお月見をしている間に」
「確実に一人は仕留められていた」


 範馬勇次郎も言っている。
 『一流同士の闘争(たたか)いは その0コンマの奪い合いとなる』グラップラー刃牙 19巻 170話)
 けだし名言である。

 マウス三兄弟の個人個人は格闘技のシロウトだ。
 不意打ちを受けたら、「山本"KID"徳郁 vs. 宮田和幸」なみの早さで倒されてしまうだろう。その間、実に四秒
 ただし、本当に一瞬で倒されていたかどうかは疑問だ。
 口ではなんとでも言える。
 ゲバルの話術にゃ、気をつけろ。
 長話もうっかり前転酔いをさますための時間かせぎかもしれない。

「連携こそが頼みである君らの一人が欠ける……」
「戦力は10分の1だ」


 唇・歯・舌の三人がそろって はじめて口(マウス)なのだ。
 一人が欠けたら戦力は10分の1に激減する。
 いや、そりゃ減りすぎだろ。
 ゲバジュンは、ダマしのテクニックを使っているっぽい。

 マウス三兄弟が仮に一般の成人男性と同じ戦闘能力を持っているとしよう。
 二人で闘えば、戦闘力は2.0以上だ。
 三人のほうが二人よりもコンビネーションの難易度が高い。
 ならば、二人で闘ってもそれなりの反応が起きるだろう。

 ゲバジュンの話を信じるなら、三人で闘うと戦闘力は20以上になる。
 アイアン・マイケルが3.2だから、戦闘力の差は6.25倍だ。
 6倍も戦闘力に差があると、まったく勝負にならない。

 軍事的には戦闘力の差が3倍になると優勢側はほとんど損害を受けなくなるらしい。(参考:福永雅文『ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』)
 実際にマウス三兄弟はマイケルの攻撃を一つももらわず勝っている。
 戦力的には三倍以上の差があるはずだ。
 しかし、本人たちも言っているように、すこし手こずっている。
 以上の点から、だいたい4〜5倍の戦力差ぐらいではなかろうか。

 つまり、ゲバジュンのいう「10分の1」はニセ情報だろう。
 戦力が激減するのは本当だが、過剰に持ち上げている。
 この情報を与えることで、マウス三兄弟に「一人欠けたら負け」という意識をすりこんだ。

 低目の球が得意なピッチャーを攻略するとき、「低目は捨てろ」と指示を出すと、気になってかえって失敗するらしい。
 この場合は「高目を狙え」と逆のことを言うほうがイイそうだ。
 マウス三兄弟は「やっちゃダメ」の呪縛にとらわれている。
 ダメといわれると、やりたくなるのが人情だ。
 特にエロ方面とか。


 だが、ゲバルを囲んだマウス三兄弟は自信を取りもどす。
 顔つきも男前度が3.2ぐらいまで上昇した。
 アイアン・マイケルすら屠ったトライアングル・フォーメーションの完成だ!
 対象が対象だけに、すごいのかどうかワカりにくい。
 しかし、恋愛物でも定番となっている鉄壁の布陣である。たぶん強い。

 ゲバルの背後で指を鳴らす。
 反射的にゲバルがふりむいてしまう。
 すかさず、ゲバル正面にいた唇が突っかける!
 アイアン・マイケルもやられた必殺の攻撃パターンだ。
 刃牙のハイ・キックかそれ以下の破壊力があるぞ!

「!?」

 ビチャ ビチャ ビチャ ビチャ

 にょ、尿だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

 尿だにょろッ!
 ゲバジュンが誇らしげにひっかけた。
 なにを!? 尿をだッ!
 あわわ、あわわ……

 『花の慶次』には、尿鉄砲を駆使して石垣を登る敵兵を落すシーンがある(原作にはない話ですが)。
 尿を武器にする機転がいくさ人には必要なのだ。
 戦士(ウォーリアー)であるゲバルも、自在に尿をあやつる特訓をしたのだろう。

 ゲバルの尿は止まらない。
 恍惚の表情をうかべて回転する。
 ものすごい尿量だ。常人の20倍あるかもしれない。よほど大量の水分を摂取したのだろう。
 尿でキレイに円を描いてみせた。
 って、土俵じゃねェか!?(ちがう)

 4ページ(9コマ)におよぶ長い放出が終わると、ゲバルは一気にチャックを上げる。
 スタイリッシュでありながら野性的なチャックの閉めかただ。
 こういうチャックの閉めかたしたら、さぞ女性にもてるだろう。
 そう思わせるカッコよさがある。

 そして、寝る。
 尿で描いた円の中央で大の字になって寝転がった。
 ッッ!? 行動が読めない。
 前転酔いの影響で、立っていられないのか?

「二人はキレイなままなのに…」
「一人は汚物にまみれてる」
「かけがえのない三人の関係(なか)を引き裂く悪魔ッッ」


 悪魔であるオレを倒してみやがれッ!
 ゲバルが尿だまりの中心で挑発を叫んだ。
 マウス三兄弟の前に尿の大河が立ちふさがる。
 カルタゴの名将ハンニバルのアルプス越えにも匹敵する難関を突破できるのか!?
 次回へつづく!


 なんというか、想像をはるかに超越された展開だった。
 風車の弥七から尿に飛ぶとは黄門さまも思うまい。
 水戸黄門 → 入浴シーン → 温かい液体 → 尿
 この連想なのか?

 とりあえず、唇が尿まみれだ。
 特殊な趣味をもっている人が、誤解して検索してきそうな予感がする単語である。
 「デスノート」「ミサ」「おしっこ」などのキーワードも並べておくと、危険度がさらに上がるだろう。

 ぬれた衣服がまとわりついてスピードが落ち、唇は他の二人との連携が取れなくなりそうだ。
 これを、狙っていたのかなぁ〜〜??
 嫌がらせがメインで、あとはオマケという気もする。

 そして、あおむけに寝るゲバジュンである。
 この体勢は『北斗の拳』にでてきたフォックスの『跳刀地背拳』を思い出す。
 あおむけに寝た状態からジャンプして、攻撃する。
 ちなみに、フォックスには人を殺した後はションベンをしたくなるクセがある。
 ゲバジュンは逆で、先に尿を出すタイプなのだろうか?


 すいません、尿の話がもうもうちっとだけ続くんじゃ。
 そもそも、あの尿になにか仕込んでいた可能性がある。
 2004年アテネ五輪で金メダルを取りながらドーピング疑惑によりメダル剥奪となったアドリアン・アヌシュ選手を憶えているだろうか?
 彼が取った手段は、他人の尿を注入して膀胱にためたとも言われている。

 ゲバルが同じ方法で油を注入したのなら、次回"唇"は火ダルマになる。
 尿の円も燃えてマウス三兄弟は完全敗北だ。
 ただ、ゲバルの一物にも火がつきそうだけど。

 または、尿に蛾を引きよせるフェロモンが入っているかもしれない。
 毒蛾の鱗粉で"唇"は窒息する。
 白土三平の忍者漫画にでてきそうな術だ。
 風車の弥七流忍術なら、尿で毒蛾を呼ぶぐらい造作も無いことかもしれない。

 あれだけ大量の尿を出すからには、同量以上の水分を補給したはずだ。
 マウス三兄弟がそろいぶみだと聞いて、あわてて水を飲んだのだろうか?
 がんばれマイケル! あと2リットル飲んだら助けに行くから、それまで時間を稼いでくれ!
 きっと、そんな感じに大急ぎで飲んでいたのだろう。

 連続前転での登場も尿がらみだろうか?
 まっすぐ立つと、漏れそうなぐらいヤバかったのかもしれない。
 むしろ、走れない。
 または、回転から生じる遠心力を利用して、尿を膀胱に集めていたのか?


 さて、刃牙はナニをしているのだろうか?
 実は今回、アイアン・マイケルの姿がない。はやくも空気になった。
 だが、好意的に考えると刃牙がこっそりマイケルを回収したのかもしれない。

「マイケルがアブない!」
「待つんだ、バキ。作戦もたてず、突っこんで、マイケルを人質にとられたらどうするんだ?」
「…………。イキオイかな……。それで、なんとかする。最悪マイケルには運が無かったという方向で」
「私が敵の気を引きつけよう。キミはそのスキにマイケルを助けるんだ」
「ゲバルッ、まさかアンタ死ぬ気じゃ!?」
「フッ、私は死にはしない。まだキミと闘っていないし、オリバとの決着もまだだ」

 友の危機を前にしてライバル同士が手を組んだのだ。
 作戦の成功を祈り、友情を深める水杯が交わされたにちがいない。
 もちろん、14kgの砂糖水だ。
 そうか、だから大量の尿なのか。
 恥を喜びにかえることができる刃牙は、マイケルをお姫様だっこで抱えて、漏らしながら逃げているはずだ。
by とら


2006年8月3日(36+37号)
第3部 第34話 海の賊(おとこ) (690回)

 寝ている相手をどう処理するか!?
 俗にいう 猪狩アライ状態だ。
 マウス三兄弟はどやって、ゲバルに立ちむかうのか!

 下段の踵蹴りは金的に並ぶ必殺だ!

 蹴ってるよ、オイ。
 三人がかりで普通に踏みつけている。
 尿の川をどうやって越えるのかとか、寝ている相手をどう攻略するとか、細かい障害ごと踏みつぶす。
 猪狩アライ状態から発展させたギャグで引っぱろうと思っていた某管理人の目論見も踏みつぶされるのだった。
 アライ親子の味わった苦労ってなんだったんだろう……。

 5ページ(8コマ)にわたってカカト蹴りをつづけるマウス三兄弟である。
 前回ゲバジュンに4ページ放尿を喰らったので対抗しているのだろうか?
 1ページでも、1コマでもおおく攻撃してやるという気迫を感じる。
 尿と張りあうのも、どうかと思いますが。

 顔面に集中砲火を浴びてゲバルは完全に沈黙した。
 ピクリとも動かない。
 なんのために寝たのか、意味不明だ。調子コキすぎじゃなかろうか。
 尿の円を描いたのも、キレが悪くて止まらなかったから、周囲にバラまいただけかもしれない。

 そして、マウス三兄弟はすっかり息があがっている。
 ちょっとハリキリすぎたようだ。
 やっぱり、ゲバルに恐怖していたから過剰に攻撃しのだろう。さらに、緊張していたのでより消耗したはずだ。

 刃牙のモデルである平直行さんも、自分のペースで闘えないと疲れると言っている。(参考:格闘技のおもちゃ箱
 マウス三兄弟は、ここで倒さねばという先入観を植えつけられて、なかば強制的にはげしい攻撃を仕掛けたのかもしれない。
 すべてJ・ゲバルの予定通りだ。
 いや、ゲバルはのびちゃっているのが、想定外っぽい。策士、策におぼれた。

口ほどでもないじゃないか……………

 唇が大物ぶったことをいう。
 本人は尿まみれですが、カッコつけています。
 ただようアンモニア臭すら高級コロンにかえてしまうようなデカい態度だ。
 息さえ乱していなければ、もうちょっと男前に見えたのに。

 だが、J・ゲバルがノーモーションで上体を起こした。
 ページをめくったら起きている、0コマ復活だ。
 ジャブより速い。
 というか、踏まれたダメージは無いのか?

「い〜〜〜〜〜い風だ……………………」

 風の歌を聴けとばかりに、J・ゲバルが耳に手をあてる。
 周囲の人間はつられて耳をすませてしまう。
 マウス三兄弟が攻撃していたのに、ゲバルペースだ。
 何かが起きるのを見ている人は、何かを起こす人には勝てない。

 かつてのバキなら「誰がパンツはいていいッつッた」といいながらバケツをかぶせて問答無用で攻撃している。
 マウス三兄弟には絶妙なコンビネーションがある。
 しかし、理不尽なまでのマイペースっぷりがない。超一流の怪物たちの域には達していないのだ。
 闘いは主導権をとったほうが、有利に闘える。
 アイアン・マイケルを倒したときの、マイペースぶりを取りもどさないとゲバルには勝てない。

 マウス三兄弟は、うっかりゲバルのペースにのせられ、風を探してしまう。
 雪の積もった夜のような沈黙の中で風車がなった。
 ゲバルが投げつけても回らなかった風車が、動いたのだ。

(風を…)
(呼んだ…??)


 職員もすっかりJ・ゲバル マジックに魅せられている。
 たしかに、風車は動いた。
 だが、風を呼んだというのは言いすぎだろう。
 三国志演義の諸葛亮じゃないんだから、ただの人間に風を呼ぶなんて不可能ですよ。
 ゲバジュンは超能力者か妖術使いですか。

 風はさらに激しく吹き荒れる。
 マウス三兄弟の髪型をみだすほどの突風だ。
 J・ゲバルが上着を脱ぐ。手をはなすと上着はすぐに飛んで行った。
 まるでゲバルが風を呼び、操っているようだ。
 周囲のものを武器に変える能力は、ガイア以上かもしれない。

 J・ゲバルが己の血を顔にのばす。
 血化粧だ。
 京劇歌舞伎隈取のようなメイクができあがった。
 J・ゲバル、闘争(たたか)いのメイクアップだ!

 闘いの前に化粧をするのは一部の民族に存在する行為だ。
 敵をビビらせる効果がある。
 マウス三兄弟は思いきりビックリしているので、効果はバッチリだ。
 ハトが豆鉄砲を食らってもここまで驚かない。
 『幽☆遊☆白書』にも化粧使いが出てくるなど、わりと伝統的な存在だ。

 フランス映画『ジェヴォーダンの獣』でもモホーク族のマニは闘いの前にメイクをしている。
 また、盾に怪物の顔を描いたり、武具を宝石でかざる(※)などと、人類は古来から敵をビビらせることに心血を注いできたのだ。
 (※ 宝石は経済力のすごさを見せつけ敵をビビらせるらしい。物欲を刺激するだけのような気もするが)

 カラーでお見せできないのが残念だが、鮮血のメイクである。
 まさに歌舞伎の隈取だ。やはり、ゲバジュンは日本文化が大好きなのか?
 ただ、レクター博士は『レッド・ドラゴン』で、月の光で見る血は黒く見えるといっている。
 カラーで見ても、色は黒に見えるのだろうか。

「満ち潮だ」
「出航(ふなで)の刻(とき)

 バンダナをはぎとり、なんか筋肉まで増量しちゃった!
 ヤバい。これは強そうだ。
 主人公はゲバルでもいい と思っちゃったほどの迫力がある。
 ヒゲが本部みたいで弱そうと少しだけ思っていたけど、今のゲバルは武装した本部だ!(注:ほめています)

 海賊モードにはいったメイク・アップ・ゲバルがマウス三兄弟に襲いかかる!
 夏休みを一回はさんで、次回へつづく!


 尿で円を描いていた人とはまるで別人だ。
 すごい演技だ。
 いや、演出がスゴいのか?

 風を呼びこんだことやメイクアップまで、すべてJ・ゲバルの演出という気がする。
 海の男は風や天気に敏感だ。
 J・ゲバルは風を演出につかうため、わざと時間を調整していたのかもしれない。
 ゆっくり転がってきたのも、尿で円を描いたのもすべて計算のうちだ。

 ゲバル自身は一回も攻撃していないのに、マウス三兄弟は完全に飲まれている。
 汗だってダラダラだ。メイクでギョッとしたのが、ダメ押しになった。
 あとは指先一つでダウンさ。Youはショック!


 しかし、マウス三兄弟の必殺技であるカカト蹴り三重奏が効いていないのはどういうわけだ?
 アイアン・マイケルなんて画面の外にブッ飛ぶほどのダメージを受けたというのに。
 ボクサーってのは耐久度が極端に低いんでしょうか。

 カカト蹴りが不発だった原因と思われるものが、ひとつある。
 尿だ。
 べつに尿でなくてもいいのだが、足場が濡れていた。
 足場を気にしていたので、攻撃に集中できなかったのかもしれない。
 『激闘達人烈伝』における中村先生の言葉を借りるなら『日頃から水をまいて稽古しておかんからだッ!』

 幕末の剣術道場(北辰一刀流か、天然理心流)では床に豆をまいて足場を悪くした状態で稽古をすることもあったらしい。
 常に最悪の状況をかんがえ、あらかじめ対応策を考えておくと、実戦では落ちついて対応できる。
 マウス三兄弟は格闘のシロウトだから、常識にはない攻撃をだす。
 しかし、シロウトだからつけこむスキも多いのだ。
 強みと弱みは表裏一体だ。
 マイケルは強みに当たって負けて、ゲバルは弱みにつけこんだのだろう。


 メイク・アップ・ゲバルの攻撃はマウス三兄弟の弱点を攻めると思われる。
 一人が倒れたら戦力は10分の1と、前回で暗示をかけたところだ。。
 暗示を逆手にとって、最初の一人が倒れないようにとムリな状態を取らせて、コンビネーションを崩すのかもしれない。
 ハデに、三人同時に倒す可能性も高いと思う。
 三兄弟の評判も地に落ちたものだ。

 ゲバジュンがフィニッシュ・ホールドにえらぶ必殺技は、三人同時にジャイアントスイングをかます大風車 弥七風 投げだ。
 投げられたマウス三兄弟の形を作ると三つ葉の葵になっていて、印籠カタルシスも存分に味わえる。
 となると、やっぱり決着は45話なんだろうか。
 そして、61話からは、当たり前のようにいつもと同じパターンの新展開がはじまる。
 以後、60話単位で話が無限ループするのだ。

 主人公だったはずの刃牙は、いつコースアウトしたんだろう。
 早くレースに戻ってきてください。
 戻ってきてくれと思われているうちが華ですよ。
by とら


2006年8月17日(38号)
第3部 第35話 風 (691回)

『風があれば… そこは大海(うみ)!!』
 ただし黄色くてくさい。いうまでもなく尿の海だ。
 刑務所内部であっても俺のフィールドにかえてしまうJ・ゲバルであった。
 朝食のメニューだってオレ色に染めます。

 そして、顔を隈取する。
 掲示板で『メイキャッパー』や『ゴージャス☆アイリン』との比較をされるメイキャップぶりだ。
 特に、ヤングサンデーで三回の読みきり掲載した『メイカー』(メイキャッパー3巻に2話分を収録)に思い至らなかったのは、個人的にかなり不覚だった。
 主人公・浮刀眉 濁(うわばみ だく)は、おのれの血で隈取をして闘争(メイク)にいどむ。
 まさに、ゲバジュンの原型がそこにあった。

「さァ…」
「続きだ」

 って、メイクの線が増えてないか!?
 指で描いたとは思えない繊細なラインが誕生している。
 こっそり筆とかを仕込んでいた可能性があるな。
 ゲバジュンは超一流のエンターテイナーだ。

意表をついた登場ッ
風車のオモチャ
放尿ッ
風……ッ
泥のメイクッ
この中に一つでも
実力と呼べるものがあるかッッ
全て演出にすぎないッッ


 さすがマウス三兄弟の長男は一味ちがう。
 ゲバジュンの行動を冷静に分析する。
 結論として「ゲバジュンの行動は意味なし」だ。

 なんてヤロウだ。
 323334話でゲバジュンのとってきた行動を全部無意味に変えてしまった。
 読者がいいたくてもいえないツッコミをしやがった。
 じゃあ、休みをふくめて4週間、ゲバジュンの行動に合理的理由があると考えて、妄想してきた私の立場はッッ!?

 演出と考えるのはいいのだが、なんのための演出なのかがよくワカらない。
 ゲバジュンの本心はなんだったのだろう。
 アイアン・マイケルが見えなくなったのは、光学迷彩の技術(参考)で、尿をかけることで浮かび上がらせようとしたのかもしれない。
 あるいは、尿の千年王国をつくる気だ。

 尿による気化熱で頭が冷えたのか、唇が冷静な判断をくだす。
 というか、自分に尿をかけた相手が憎くてしかたがないのだろう。
 尿の意味を無くすことで、尿をかけられたという事実も闇にほうむりたい心理がゲバジュン演出説を生みだしたか。
 ゲバジュンに勝ったら、口封じのために職員を血祭りに上げそうだ。

 COOLになったマウス三兄弟は汗も引っ込んだ。
 でも尿は乾かない。


 尿、じゃなくて唇を踏み台にして次男・歯(トゥース)が飛んだ。
 そして、二階窓ふきんにへばりつく。
 妙な液体を手のひらから分泌して貼りついているかのような姿勢だ。
 えっ、なにこの人? 妖怪・壁へばりつきか?
 水木しげる先生が、このシーンを見ていたら「三つ子べったり」なんて感じの妖怪を発想しそうな感じだ。
 ゲバジュンだけでなく、マウス三兄弟も演出過剰である。

膀胱が空になった今…………
この四面体(テトラ)をどう乗りきる?


 やっぱり、尿が怖いマウス三兄弟である。
 平面で敵を包囲する陣形から、相手の上を取った立体的な包囲陣に進化した。

 でも、四面体(テトラ)フォーメーションって本当に強いのか?
 壁にはりついた状態から落下できる範囲は限られている。なんか、命中しにくくそうだ。
 地面には二人しかいない。歯が落ちてこないうちは、J・ゲバルいうところの「戦力は10分の1だ」。
 一時的に戦力はそうとう低下している気がする。

 テニス漫画とかで「人間は縦の動きに弱い」という話が出てくる。
 分身するテニスではなく、石渡治『"LOVe" ラブ』でいっていた話ですが、実際どーなんでしょうか。
 まあ、とりあえず上から降ってくる敵には反応しにくいのだ(仮定)。
 攻撃された場合、もっともダメージを受ける相手だ。
 野球でいえば四番バッターである。イチバン気をつけるべき存在だ。

 気になるモノが近くにいると集中できない。
 たとえば部屋にSATSUGAIしそこねたゴキブリが部屋に潜伏していたとしよう。
 この状況だと集中力が落ちる。サイト更新もままならない。集中力が切れているのだ。

 上に気を取られていると、正面の攻撃をかわせない。
 横山光輝『闇の土鬼』や、ゆでたまご『闘将!!拉麺男』に登場する、由緒正しく物理法則も完璧な作戦だ。
 そして、上からの攻撃を避けるための逃げ道には、のこりの二人が待機している。
 上にいる歯はエモノを追いたてる猟犬で、下の二人が網だ。
 牙をもたぬ人間が猛獣を倒すハンティング殺法といえる。
 空中から、尿を散布すれば、完璧すぎて怖いぐらいだ。

「一人で降りられるかァ…………?」

 ゲバジュンは正面の二人をムシして、上空にいる歯に話しかける。
 背中がスキだらけだ。
 ッッッ! J・ゲバルおなじみの作戦だ!
 あえて弱点を見せることで、相手の攻撃予想をしぼる。想定される敵の行動ルート上に罠をしかけて、倒す。
 相手の自由をうばう、逆アンチェイン作戦だ!
 このばあい、ただの「チェイン作戦」でいいのか?

 J・ゲバルの見せたスキに吸いこまれるように、唇と舌がダッシュする!
 超ダメダメです。
 尿以外に恐れるものはないと思っているのか?
 というか、尿は相手の思考を硬直させるためのワナだったのかもしれない。
 思考を尿に向けることで、重要な部分を隠すのだ。
 おかげで3334話には「尿」という文字が35回も出てしまった。
 ちなみに今回は、23回だ。いくらなんでも書きすぎだな。

ブォンッ

 ゲバルが、まるで竜巻のような回転をする。
 回転パワーをそのまま叩きこむようなアッパーカットで、マウス三男"舌"のアゴを打ちぬいた!
 手首まで埋まるほどの、圧倒的な破壊力だった。
 歯が飛びちり、血涙がふきだす。
 そして縦回転しながら、マウス三男は二階の高さまで打ち上げられ、地面に落下した。

 ジャック・ハンマーやビスケット・オリバなみの打撃力だ。
 さほど体格のよくないJ・ゲバルが筋肉魔人に匹敵する力を出すなんて、どんな原理なのだろう。
 もしかしてJ・ゲバルも範馬一族なのか?
 どちらにしても、人間(ヒト)を二階まで吹っ飛ばせるようなパワーを持っていないとバキ世界の超一流にはなれないようだ。
 本部だって、人間を天井に叩きつけるぐらいはできるグラップラー刃牙 2巻 9話)。


 でも、なんで最初から殴らなかったのだろう?
 イタズラ好きなのか?
 尿をかけたり、相手の必殺技を破ったりするのが大好きなのだろうか?

 闘いに勝つという点では、ほとんど意味のない行為だ。
 むしろダメージを多少受けているので、マイナスだ。
 しかし、闘いを楽しむという点ではポイントが高い。
 ゲストをいじりたおす司会者のように、好き勝手に遊んでいる感がある。
 尻をつきあげる形でダウンしていたら、征服の記念として肛門に風車を突きたてそうなぐらいだ。


[リーダー格 唇(リップ)の細胞を逃走(はし)らせた
 他人(ヒト)と我の尿―――――――
 混ぜもの(ブレンド)をまきちらしながら]

 唇が失禁しながら疾走する。
 ゲバジュンへの復讐を狙っていた膀胱はむなしく暴発し、周囲にまきちらす。
 負傷した弟や、壁にくっついたままの弟を置きざりにして、全力で逃げだした。
 マウス三兄弟の長男は、ちっとも弟思いではなかったのだ。

 そして、残された"舌"は、もはや決着をつけるまでもなく敗北を認めるのだった。
 J・ゲバルの完全勝利だ。
 普通に殴っていれば2話前に決着ついていたと思うが、まあイイか。
 これで、とうぶん尿の話題から離れることができる。
 いや、バキ感想を書くかぎり、尿からは逃れられない。


 戦術とか、武術とかいう前に、J・ゲバルは単純な身体能力で常人を超えていると判明した。
 ただ、マウス三兄弟が実力を見誤っているので、体があたたまるのに時間がかかるのかもしれない。
 刃牙も同じような体質なので、序盤はひたすら尿をかけあうような展開になるのだろうか。
 ああ、もう。さっそく尿の話題を出しちまった。

 夜が明ければ、刃牙の入獄五日目がはじまる。
 来週オリバにナンバー2が勝負を挑む。
 そろそろ、バキさんには本気になってもらいたい。
 オリバへの挑戦権をめぐって、最後の戦いが始まろうとしている。と、期待していいのでしょうか。


 今週の作者コメントは、話題沸騰のWBA世界ライトフライ級チャンピオン亀田興毅選手についてだ。
『興毅よ。退(さが)るな! へらず口のチャンスだ!
 稀代のヒールとして客を呼べ!』


 さすが、「敵は多いほうがいい」「車田先生、俺と対立をッ!」「本部が強くてなにが悪い」の板垣先生だ。
 謙虚に生きるより不自然主義をつらぬいて、ヒールとして生きろということらしい。
 それこそ、リングの上で放尿して円(リング)を描いちゃうぐらいの暴挙を行うとか。
 実際にやったら、ふつうにTBSから追放されるし、観客も逃げます。

 刃牙も稀代のヒールとして、アイアン・マイケルを踏み台にして大活躍とかするのだろうか。
 というか、マイケルのピンチになにをやっている?
 独房で受けたプレイが忘れられず、一人拘束プレイでもやっているのだろうか?
by とら


2006年8月24日(39号)
第3部 第36話 オリバとゲバル (692回)

 戦いを終えたJ・ゲバルはバンダナで顔をぬぐい、戦いのメイクをおとす。
 たしか、戦闘中はバンダナを持っていなかった。
 つまり地面に置いたか、ズボン(またはパンツ)の中にしまったと思われる。
 衛生的にヤバくないか?
 地面は尿だらけだし、ズボンの中はムレているはずだ。
 顔をふくのには ふさわしくない布だと思う。

 なおゲバルのズボンにポケットはないようだ。
 囚人の服だし、なにかを隠しておけるスペースは作らないのだろう。
 映画『大脱走』や『ショーシャンクの空』では脱走用のトンネルを掘るときに出た土をズボンに隠して捨てていた。
 脚本家である三谷幸喜は、少年時代に大脱走の土をすてる技をマネして、つねに砂煙をあげる男と恐れられたらしい。
 浦沢直樹『20世紀少年』でも、主人公がマネをしている。そうとうインパクトのあるシーンなのだ。
 これだけ有名なんだから、刑務所側も あえて土をすてやすくするポケットをつける必要も無かろう。

 とりあえず、どこからか取り出したバンダナで顔をふいたJ・ゲバルは、汚れているはずのバンダナを頭にまく。
 たぶんゲバジュンは風呂が嫌いで、汚れていても同じ服を何週間も着る人だ。
 力士がタオルを使うときの順番よりも気が利いていない。
 最近の力士はワキをふいた後で、顔をふいたりしません。昔はしていたけど。


 J・ゲバルはサミュエル副所長に、あとの始末をまかせる。
 いまごろになって黒人職員の名前が判明した。顔は似てないけどサミュエル・L・ジャクソンがモデルだろうか。
 いまだに「J・ゲバル > マウス三兄弟 > あの鉄人(マイケル)という構図を持ちだしているあたり、あまり見る眼のない人らしい。
 今のアイアン・マイケルだったら、亀田三兄弟にもKO負けすると思う。


 帰って寝ようとするJ・ゲバルに声をかけるものがいた。
 誰か?
 アイアン・マイケルだ。
 …………アレ? いたの?

 まるで分子分解して空気にとけこんだかのように姿を消していたアイアン・マイケルが再構築したらしい。
 再生の副作用なのか、顔がますますダメな人っぽい感じになっている。
 狼を数千年飼いならしたら、犬になったという感じだ。
 なにが、ダメなんでしょうか。微妙な頭のとがり具合がよくないのだろうか。
 とにかく、ひょっとしたら俺でも勝てるかもという幻想を抱かせてくれるオーラが出まくっている。
 まあ、実際に私が闘ったらジャブと同じ早さで倒されるんでしょうが、武器なしの本部でも勝てるレベルだと思う。

 ゲバジュンもアイアン・マイケルのことを忘れていたようだ。
 名前すら出てこない。
 姿が消えていたんだから、仕方がないといえば仕方がなかろう。
 むしろ、復活した事を祝おうじゃないですか。

 俺たちルームメイトでヒゲ友達じゃないか!
 ゲバジュンは不自然なまでにフレンドリーなふるまいだ。兄弟(ブラザー)あつかいしている
 べ、べつに忘れていたのをごまかしているンじゃないんだからねっ。
 ボーイズ・ラブっぽい視点で考えれば、ワザと大げさに振舞うことで、テレ隠ししているのかもしれない。

 主人公ですら嫌がるような深夜出動をしてマイケルを助けたのだ。
 感謝されてもとうぜんなのだが、ツンデレだからテレ隠しをしているにちがいない。
 うん。やっぱ 刃牙でボーイズ・ラブってのは無理だ。

 部屋にもどってからも、マイケルはあらためて礼をいう。
 アイアン・マイケルにとっての重要人物ランキングが変動しているようだ。
 たぶん、刃牙のランキングはそうとう下がりました。
 地道な人助けが、J・ゲバルの人心掌握術だ。
 サミュエル副所長だって、マイケルを助けたJ・ゲバルに感謝していそうだし。
 力にものを言わせて自分のワガママを通すオリバとはちがい、人望が生まれるわけだ。


 部屋ではパンツ一丁の刃牙が正座をして待ちかまえていた。
 朝帰りする夫を玄関先で待ちかまえる新妻のような気迫が出ている。
 しかし、ゲバジュンが部屋を出て行くときとか、なにをしていたんだと問いたい。
 本日のゲバルは部屋にまったく寄らなかったのだろうか?

「あなたがオリバに勝とうが敗(ま)けようが」
「どちらでもいい」
「明後日の試合のあと」


 刃牙が両手を地面につける。
 土・下・座 ―― DOGEZA ――!
 敗北のベスト・オブ・ベストにして、誠意の証だ!

 徳川さんに直談判しにいった『グラップラー刃牙3巻 24話』『グラップラー刃牙20巻 180話』や、ディクソンに直談判しにいった『グラップラー刃牙20巻 177話』でも、刃牙は土下座をみせている。
 また夜叉猿に感謝する『グラップラー刃牙12巻 104話』でも土下座だった。
 基本的に頭の高い男なので、土下座をするときは真剣なんだろう。
 その真剣さで、もっと早く行動して欲しかった。

「「恋人になってくれ」ってのはナシだぜ」

 刃牙の言葉をさえぎって、ゲバジュンが先手を打った。
 いきなりボーイズ・ラブな展開だ!
 全国百人ぐらいの女性刃牙ファンはお祭り状態だろう。

 とりあえず、相手の注意をそらすのがゲバル流だ。
 膀胱に残弾があれば、放射していたかもしれない。
 その場合、マイケルもとばっちりで浴びる。

 なんか一方的に、つごうのいい事をバキが言いだしている。
 意訳すると『あんたとオリバが闘って潰しあったところを、叩かせていただきます』だ。
 勝敗に関係ないってことは、J・ゲバルが負けた場合、さらなる追い討ちをかける気か。
 普通なら、オリバへの挑戦権をかけて闘ってくださいというところなのに。
 すさまじいワガママっぷりが、範馬刃牙らしい。

 たいするJ・ゲバルはこの場で闘っても構わんという。
 うむ、ここでファイトしちまえ。
 むしろ、初対面のときに闘うべきだったのだ。ハッキリいって、遅すぎる。


 だが、闘いははじまらなかった。
 この場にさらなる闖入者が入ってくる。
 鍵はあるという制止を振りきって鉄の扉を力まかせにこじ開ける怪物が登場だッ!
 登場するは、もちろんこの人"アンチェイン"オリバである。

 『グラップラー刃牙6巻 52話』で、範馬勇次郎と鎬紅葉が演じたドアごしの力くらべなど比較にならないほどの破壊だ。
 もっとも、現在の勇次郎はさらに進化しているので、もっとすごい事をする可能性が高い。
 前回のゲバルアッパーでオリバに匹敵するんじゃないかと思ったが、やはり元祖アンチェインの筋力はすごすぎる。

 扉の破壊音で寝ていたジィさんとデカい人もハネ起きる。
 そして、なぜかアイアン・マイケルが消えた。
 得意技である異空間への退避技能を発動させたのだろうか?
 なんにしても、危険人物ばかりを集めたような個室では、ヤラれ顔から倒されそうだ。
 現時点ではアイアン・マイケルから倒される。逃げたのは賢い選択だったと思う。
 もしかすると、オリバが開けたドアにぶつかって、既にKOしているのかもしれないけど。

 ついにブラックペンタゴンのビック3がそろった。
 小さな部屋は空気の粘度が変化しそうなほどの肉がつまっている。
 一般人なら、酸欠と肉臭でダウンしそうな空間だ。
 この状況で、ナニが起きるのか!?
 次回へつづくッ!


 オリバの目的はなんだ?
 どうもJ・ゲバルの顔を知らないようなので、ようすを見に来たのかもしれない。
 または、いつまでたっても刃牙がゲバルと闘わないので、尻をたたきに来たのだろうか。
 オリバの予想に反して、刃牙は漁夫の利をねらうしたたかな作戦を考えていたのだ。
 ドアの鍵を開けるヒマも惜しみつつ、乱入するしかなかろう。

 刃牙はオリバと闘うために刑務所にやってきたのに、今ではJ・ゲバルと闘いたいと思っている。
 しかし、J・ゲバルは基本的にオリバ狙いだ。
 たぶんオリバは刃牙に興味があるのだろう。
 ……いきなり愛憎の三角関係になってしまった。
 次回は圧倒されるようなすさまじい萌えが繰り広げられる ボーイズ メンズ・ラブな展開になるかもしれない。
by とら


2006年8月31日(40号)
範馬刃牙はお休みです

 今週号の『範馬刃牙』は都合により休載とさせていただきます。
 このあいだの餓狼伝は作者急病(ウイルス性腸炎)のため休載だった。
 やっぱり、まだ体調が回復していなかったようだ。

 前号チャンピオンの予告では範馬刃牙がセンターカラーと書いていた。
 カラーってのはスケジュールが前倒しになるらしい。だから、変更しにくいのだ。
 だから、気合で今週まではのりきって、次号を休むのかと思っていた。
 やっぱり、人間って無理がきかないんですね。
 たとえ、不自然主義を実践している板垣先生であっても。

 いまごろ板垣先生は失った水分を14キロの砂糖水で補い、裏返っているはずです。
 次回からの刃牙はとんでもないことになりますよ。
 板垣先生のコメントにも注目だ!


 さて、現在の範馬刃牙を整理してみよう。
 刃牙は範馬勇次郎と闘う事をちかう。
 結果はどうなろうと構わない。死ぬことになろうと範馬勇次郎と闘う!
 ……と言っていた時期が刃牙にもありました。

 勇次郎は刃牙が闘ってくれると知って大喜びだ。
 ぬかよろこびだけどな。
 ハリキリすぎて、恐竜なみのサイズをした巨象をたおす勇次郎であった。
「こいつを、バキに捧げるかァ」
アンドレアス・リーガンを前にした刃牙のようなことを考えていたにちがいない。(グラップラー刃牙 21巻185話)

 一方、刃牙も勇次郎にこたえるため闘う。
 相手は妄想だった。
 妄想のアイアン・マイケルを蹴りとばし、巨大カマキリを倒す。
 妄想バトルのせいで数話後にアイアン・マイケルが登場して、読者が気まずい思いをした。
 刃牙は全然平気だったけど。王者はこれぐらいズ太くないとダメらしい。

 刃牙が妄想のカマキリと闘ったと聞いて、勇次郎は「妄想じゃダメだろう」と泣くほどの大喜び(?)だ。
 相手がカマキリだろうとアイアン・マイケルだろうと、勇次郎に触発されて闘ったという部分が重要である。
 かまってもらって本当はうれしい範馬勇次郎であった。

 勇次郎にバカにされてトサカにきたのか、刃牙はムチャをする。
 ウイルス性腸炎を超越するようなムチャっぷりでアメリカ大統領を襲撃して、逮捕→有罪判決だ。
 刃牙が知りうる最強の男(の一人)オリバに会いに行くためだった。
 郭海皇をよけたのは、当たったら死にそうだからです。

 で、刃牙はオリバに宣戦布告をする。
「あなたの最大のミスは俺をこの部屋に入れたことだ」
 思い出すと耳から逸物の先まで真っ赤になるような恥ずかしいセリフだった。
 刃牙の最大のミスは、オリバに勝てると思い込んでいたことだ。
 やはり、百の妄想は一つの実戦にかなわないらしい。

 オリバへの挑戦権を得るため、ゲバル(ミスター2)と闘うのだ。
「あなたがオリバに勝とうが敗けようがどちらでもいい」「明後日の試合のあと」
 あれ、オリバと闘うんじゃなかったの?


 という状況が前回までの流れだ。
 百歩譲って、オリバの事を忘れたのは良いとしよう。でないと話が進まない。
 勇次郎と闘うことまで忘れてはいないよね?
 最近はすっかり勇次郎のことを忘れていそうでこまる。
 勇次郎はストライダムの報告を聞きつつ、GPSを狂わすような速度で移動しながら大喜びしているんだろうな。

 今後の展開はまったく予想がつかない。
 刃牙が何の目的で誰と闘いたいのかすらワカらない状態だ。
 まさに迷走状態である。


 話は変わりますが、少年誌といえば乳首表現の問題がある。
 ジャンプだと突起が描かれただけで大騒ぎだ。(参考:12
 見えない乳首にはもう一つの問題がある。
 男はほとんど乳首を描かれていないという問題だ。

 バトル漫画は上半身裸で闘うことが多い。まれに下半身も裸の場合(聖マッスルとか)もあるが、それは置く。
 上半身裸でも乳首が見えないのがバトル漫画の不思議だ。人によってはヘソもない。
 なお、鳥山明徳弘正也山口貴由のように乳首を描く人もいます。

 なんで男の乳首を描かないのかというと、よけいなモノだからだろう。
 描いてもカッコよくない。
 牛股師範の乳首って、乳輪がデカくて強そうですね! とはならないのだ。


 なんで、こんな話になったかと言うと、最近の刃牙はたまに乳首が浮きでるのだ。
 当サイトの記録ではバキ147話(02/11/21)が最も古い。
 外伝では、それよりも早くに存在が確認されている。
 刃牙シリーズにおけるファースト男乳首はバキSAGA (02/5/28)なのだ!

 おそらく主人公のセクシーさを強調するために乳首を描いたのだろう。
 一般漫画に比べると、ホモ用漫画は男の乳首出現率が高いという傾向がある。
 理屈はよくワカらんが、色気に関係するらしい。

 SAGAでは梢江がカウンター乳首という荒業まで出している。
 乳首へのこだわりがハンパではない。
 そして、SAGAの勢いが残ってしまったのか、板垣先生は乳首がクセになっちゃったのだ。

 かなりどーでもイイ話なんで今まで触れていませんでしたが、童貞を捨てたあたりから刃牙はセクシー全開のフェロモン人間になっているのだ。
 彼女に刃牙を読ませれば、煮すぎた大根のようにトロトロになること間違いなしだ。(注:責任は取れません)

 そんなわけで「ここ三年ぐらいの刃牙はお色気たっぷりなんですよ」という話でした。
 なお、当サイトでは範馬刃牙の話数にあわせてグラップラー刃牙時代からの通しでの回数を併記している。
 ちょっと前までSAGAの4話を「+4」としてカウントしていたが、範馬刃牙31話から外した。
 微妙に無かったことにしたいような気分なのだ。
by とら


2006年9月7日(41号)
第3部 第37話 共通点と相違点 (693回)

 作者急病から復活した『範馬刃牙』(注:タイトル)である。
 そして、範馬刃牙(注:主人公)の復活はあるのか!?
 28話あたりを最後に、刃牙は話にからめていない。
 って、28話は六月の話じゃねェか。主人公を三ヶ月放置かよ。

 ところで、先週お休みした板垣先生ですが、なにか面白いコメントを期待していました。
『ゴメンナ、休んじまって。描くよ。また描く。』
 マジだ、この人。淡々と書いているだけに、「描く」という決意があふれている。
 今後の刃牙+餓狼伝はアツい展開が待っていそうだ。
 そして、二作の主人公はエアポケットからの脱出ができるのか?


 刃牙は早くも背景の人たちと同化している。
 …………ダメだ。いきなりダメだ。
 J・ゲバルの頭で顔が半分かくれているアイアン・マイケルよりマシって状態だ。

 だが、最悪でない。顔はちゃんと出ている。
 ということは、もう勝ったも同然である! と思っておこう。
 「いつまでもお友達でいましょうね」と言われたら友達のように仲のいい夫婦生活が確定、と発想転換するようなものだ。

「虚勢を張らず――――」
「威嚇をしない…」
「かと言って思い上がってもいない」


 オリバによるJ・ゲバル評だ。
 ありのままの自分を自然体で見せているのがゲバル流らしい。
 ポークが苦手というのも、さらっと言ってしまう男だ。
 普段クールでナイスガイなあの人が「苦手なんだよなァポーク」と、子供っぽい発言をする。
 さりげないアピールがモテ男の第一歩かもしれない。

 虚勢を張らないのは、自分に自信があるからだろう。
 自分を本来の姿よりも大きく見せなくても大丈夫だと思っているのだ。
 威嚇をしないのも同じ理由だろう。小さい犬ほどよくほえるの逆バージョンである。
 そして、思い上がっていない。
 ゲバルは自分自身をよく把握している。己を冷静に観察できるのだ。

 さすが、国を立ち上げた男だ。オリバも大絶賛する。
 ところで、群集にむかって手を広げるJ・ゲバルの図がでているんですが、なぜに上半身裸なのだ?
 裸で大統領演説するのが、ゲバル流だろうか。
 このパフォーマンスは米国大統領にもまねてもらいたい。
 いちおう確認だが、ゲバルの背中に鬼は棲んでいない、よね?

「ゲバル…」
「君には大きな欠点がある」
「そして俺にもな…」


 抜け毛か!?
 オリバの生え際後退は唯一自由にならない現象だ。
 そして、つねにバンダナで頭をかくすゲバルにも薄毛疑惑が残っている。
 二人とも、髪の毛まで繋ぎとめられない(アンチェイン)。

 だが、共通点は髪の毛ではなかった。
 J・ゲバルには、それがワカっている。ニィ……と笑う。
 一方、刃牙は ものすごいマヌケ面で口をあけたまま会話を聞いていた。
 むずかしくて理解できない内容なのだろうか。
 主人公よ、話にからめ。

「俺たちはいい歳をして」
「喧嘩に敗(ま)けたくない」


 オリバ・ゲバルが漢(おとこ)の世界をつくる。「俺たち」の中には、オリバとゲバル以外は入っていません。
 範馬刃牙がアイアン・マイケルか名無しの脇役クラスにまで落ちた。
 せめてセリフが「俺たちはいい歳をして」「職につきたくない」だったら、入んなくてもイイやと思えたのに。

 キャンディ、ヨーヨー、鬼ごっこ、ベーゴマ、メンコを卒業しても喧嘩だけはやめられない。
 ……アンタら、本当は日本人だろ。
 ただ、ゲバジュンは日系人だし、水戸黄門ファンであることは間違いない。
 ベーゴマ、メンコもやっていたのだろう。とうぜん、水戸黄門ごっこもやっていた。


 初対面で、互いの情報を探りあう二人だった。
 今までの刃牙キャラとはちがい、知による攻防だ。
 相手の表情や言動から人生を予測し、弱点を探しているのだろう。
 そして、オリバがある点を指摘した。自分とJ・ゲバルには決定的な差が一つある、と。
 俺たちは何のために闘うのか?

「戦うために何かが…… 誰かが必要――――」
「それは むしろ弱みだというのが持論だ」

「そりゃあモチロン」 「カワイイ彼女のためさ ♥(はぁと)


 J・ゲバルは自分のために戦い、オリバは彼女のために戦う。
 えっ?
 オリバに、彼女いたのか!?

 たしかにオリバは過去「愛以外に人を強くするものなどあるものか」発言をしている(バキ 12巻 98話)。
 オリバが愛で強くなったのは、本当かもしれない。
 でも、刑務所暮らしで彼女ってのはどういうことだ?
 日本と中国に行っている間も、彼女らしい存在は出てこなかった。
 彼女は、本当に実在するのだろうか?

 彼女の正体は、ペットなのかもしれない。
 筋肉巨体ににあわず小動物が好きというオチはありうる。
 ハムスターに死ぬほど筋肉増強剤を喰わせて、超マッチョハムスターにしているかもしれない。
 もう、小動物じゃない。十匹集めたら曙にも勝てます。

 とにかく、セリフで言うだけの死亡確認とか彼女はうたがってかかれと、おばあちゃんも言っていたし、コレにも書いてある。
 とりあえず、オリバを上回る肉を持った彼女が登場するとか、女装した範馬勇次郎が登場するとかは、絵的に見たくない。
 連載再開した『みつどもえ』の桜井のりお作画みたいな彼女が出てきちゃったら、どうしよう。
 バキ読んでいるときは萌えスイッチが切れているんで、システムエラーを起こすかもしれない。


 女と聞いて、J・ゲバルの表情がうつろになった。神聖な戦いを汚されたと思っているのだろうか。
 友達のつきあいが急に悪くなると女ができたにちがいないと、ばっちゃも言ってた。
 喧嘩大好きな少年心を持ちつづけるゲバジュンにとって、彼女持ちは許せないのかもしれない。
 先に大人の階段のぼるなんてヒドいやッ、って感じだろうか。
 ちょっと汗かいているので、ゲバジュンはかなり動揺しているみたいだ。

 音もなくJ・ゲバルが前進する。
 踏みこんでのダッシュではない。力みの少ない古流武術のような動きだ。
 ゲバルは本気だ。本気でしかけている!

 だが、オリバとJ・ゲバルの間に刃牙が割りこんで、二人を止めた。
 ゲバルの右手はすでに殴る体勢になっている。
 絶妙のタイミングで割り込んだ。恐るべきセンスだ。
 一歩間違えると、二人に攻撃にはさまれて大ダメージを受けるギャグ漫画展開になるところだった。

「お二人がともに…」
「サイコーの好敵手(ライバル)として」
「強敵として」
「ここに出逢ったことを」
「心から祝福…………って」

「テメエら俺を嘗めてンのかよッッッ」

 刃牙が、ノリツッコミで激怒した!
 柳龍光が梢江を襲うといった直後に見せた激怒する刃牙(バキ 15巻 132話)を超えている。
 眉間のシワとかが超絶本気っぽい。
 刃牙の基準は「俺を嘗める > 梢江を襲う > クリリンのことか」だろうか。

 三ヶ月ぐらいの間、刃牙を放置していたのは激怒のための伏線だったのか。
 俺をムシすんな。アイアン・マイケルごときと同列に扱うな。
 前回はオリバのことをムシして話を進めていたのに、自分がムシされると大激怒だ。
 ワガママ鬼太子SAGAこと範馬刃牙が全開している。

 今の刃牙をオリバが分析したら「虚勢を張る」「威嚇する」「思い上がっている」の三拍子がそろう。
 ゲバジュンとは反対に、とにかく人間ができていない範馬刃牙であった。

 かなり意表をついたツッコミで個人的に大喜びしてしまう。
 期待していた活躍じゃないけど、なぜか満足度はバツグンだ。
 今の刃牙なら「二人同時にかかって来い」とかいいかねない。

 一度、『ショー☆バン』の主人公である小沢"マウンドの一人舞台/お山の大将"番太郎と刃牙を対談させてもらいたい。
 間違いなく、お互いに自分のことしか話さずあいづちも打たず、最終的に豪雨の中で殴り合いの喧嘩になる。
 中学生と同レベルのバキって、ちょっとステキですね(棒読み)。
by とら


2006年9月14日(42号)
第3部 第38話 カヤの外 (694回)

 現時点における少年チャンピオンのブチ切れ主役No.1である範馬刃牙が切れまくる。
 ちなみに、No.2がショー☆バンで、No.3がキレルくんだ。
 刃牙の髪は重力にさからい、文字通り怒髪天をついております。

「イチャイチャと……」
「ノロけてンじゃねェェッッ」


 怒るポイント、そこかよ!
 さすがブチ切れ主人公・範馬刃牙である。予想通りの逆上でありながら、予想を超えた行動に発展した。
 ライブ中のクラウザーさんや、勤務中のサラリーマン金太郎並みのキレっぷりである。
 かつて、聖闘士星矢のドラゴン紫龍は、敵のデスマスクにたいし、ブチ切れつつ「逆鱗」の解説をする荒業をみせた。
 怒っているのか冷静なのかよくワカらん状態である。現在の刃牙も同様の奇怪な状態だ。

 刃牙もイチャイチャに参加したかったらしい。
 そして、オレ語りが炸裂だ。
 親父より強ければいいとか、喧嘩をしたい相手は親父だけとか、勇次郎のことばかりを話すにちがいない。
 刃牙が参加した場合を想像すると、参加して欲しくない人だと再確認できる。

 仲間はずれにされた、刃牙はオリバとJ・ゲバルにつかみかかって、すごむ。
 そして、オリバとJ・ゲバルの二人に攻撃されてふっ飛んだ。
 イチャついていたかどうかはともかく、オリバとJ・ゲバルの戦いをジャマしたのだ。
 殴られても仕方あるまい。

 とびっきりの怪物が殴ったのだ。
 殴られた刃牙のダメージはとても大きい。
 部屋の外にある柵までふっ飛び、激突して完全に失神した。
 目はうつろで、ヨダレまで流している。
 まるでオリバに攻撃されたシコルスキーのような状態だ(バキ 12巻 98話)。

 数ページ前まで調子コキまくっていた増長王子が、汚れプリンスになっている。
 ものすごい転落人生だ。
 主人公の威厳なんて蚊の目玉ほどの量も残っていない。

 刃牙の行動がmシコルスキーにインスパイヤされていると考えると、今後の行動も予想できる。
 次回からまた姿を消して、忘れたころに無精ヒゲをはやした刃牙が「ふしゅる〜」とあらわれるのだ。
 ゲバルとコンビを組んでオリバに挑むが負ける。その上、逃げられた。
 どこかの闘技場に拉致されて、心をバキボキに折られて本気土下座をする。
 ものすごく悲惨な未来が確定した。

 ところで、J・ゲバルは、刃牙が巨凶範馬の一族であると知っているようだ。
 まあ、闘争をするものにとって範馬勇次郎は超ビックネームだから、知っていてとうぜんだろう。
 知っている上で、刃牙と戦っていない。刃牙に実力がないと判断したと思われる。
 刃牙が嘗められていたのは、ずいぶん前からなんだ……。


 ヨダレ王子はさておき、J・ゲバルはオリバの彼女について話題をふってみる。
 するとオリバは水玉がらの布をポケットから取り出すのだった。
 そして、ニオイをかぐ!

ハァ〜… なんて刺激的なんだ

 ちょ…っ、オリバさん、さすがにパンツをかぐのはマズイっすよ。読者も引きます。
 って、そのガラに見覚えがあるぞ。
 え〜〜〜〜っと。
 ああ、あれだジャンプで中高生のチンポわしづかみ(by 編集王)にしている『To LOVEる』だ。(参考:ジャンプの勝負パンツ

 いや いや いや いや いや、ノー ノー ノー。パンツなワケねーよ。
 ハンカチだよね。ハンカチだってば。
 刃牙が汚れてヘタるのはいつものことだけど、オリバさんパンツに顔を埋めたりしちゃいけない人なんだ。
 後に判明するが、ちゃんとハンカチでした。

 ところが、この パンツじゃなくてハンカチは彼女の物ではないらしい。
 彼女が昔住んでいた街で買ったというだけのハンカチなのだ。
 本人の使用済みハンカチでは刺激が強すぎるとか。
 ……彼女ってのは酸性の汗をかくミュータントですか?

 オリバは彼女と相思相愛だといっている。
 なんか、ウソくさい。
 巨体でストーキングして、巨体で身軽にベランダに侵入して、巨体で干してある下着を入手しているようなイメージがある。
 そして、巨体でムリヤリ彼女の下着を着用するのだ。

 掲示板でオリバの彼女はアメリカ大陸や自由の女神像といった意見があった。
 しかし、「彼女が昔住んでいた街」というセリフがあるので、少なくとも固定された物体では無さそうだ。
 自由の女神像がフランスから贈られたというのは『ゲームセンターあらし』で学べる基本知識ですが、女神像はフランスパリで仮組みしたそうです。
 つまり、パリに昔住んでいたと言い張れないこともない。
 自由の女神像説に関しては可能性が残っている。


 で、オリバは親切心からかゲバルに「嗅いでみるかい」とすすめる。
ペッ
 ツバを吐きかけた!

 予想外の侮辱行為に、刃牙の同室三人組は驚愕し、オリバが絶叫する。
 監獄内を震わせるような大絶叫をあげたまま、オリバは本気の涙を流し、どこかへ駆け去っていった。
 そして、刃牙はまだヨダレをたらしていた。
 収拾のつかないまま、次回へつづく。


 想像をはるかに超える展開だった。
 刃牙が渾身のノリツッコミをしたので、オリバとゲバルがどう切り返すのかと思っていたら、打撃ツッコミだ。
 ものすごいお笑いトリオが完成した瞬間かもしれない。

「気楽なものだぜ格闘家なんてものはよォ」
「ボケに突っこまなくていいんだからなァ」
「相手のボケは全てツッコむッ」

「蹴りツッコミ足ハサミ殺しッッッ、あのダメージで!?」
 ドリュッ!
「ボケが通用しない!」

 なんて感じに命がけのギャグをやるのだろう。
 とりあえず、ボケが一方的に不利、というかノビてヨダレをたらすことになりそうだ。


 オリバの彼女も正体がますますワカらなくなった。
 ハンカチで彼女を感じると言われても…。
 汚されたとしても、彼女と直接関係ないんだしまた街で買えばいいんじゃないのか?
 あと、ゲバルじゃなくて刃牙だったなら、もっと汚い液体をハンカチにかけていたと思う。

 ゲバジュン的にはオリバがウソをついている可能性があるので、ツバをかけて反応を試したのかもしれない。
 予想外なことに、本気泣きをされたので、ちょっと気まずそうだ。

 オリバはゲバジュンに、ハンカチを嗅いでみないかという。
 なにをどう考えてもハンカチからはオリバのニオイしかしないと思う。
 好きこのんでオリバ臭を味わいたくない。
 気絶している刃牙のヨダレをハンカチでぬぐってあげたほうがはるかに役に立ちそうだ。
by とら


2006年9月21日(43号)
第3部 第39話 譲れぬ想い (695回)

 オリバの彼女はいったい何者か?
 ファンの間では人間以外のあらゆる可能性が検討された。
 ペットから建築物まで、さまざまな推測が飛びかったものだ。
 そんなワケで、大穴予想が普通の美女になっている。

 ハンカチにツバを吐いたりしたけど、J・ゲバルもオリバの恋人に興味があるようだ。
 ただゲバルは最近入ってきた新人さんである。
 刑務所内のウワサ話は事情通の長老にきくのがイチバンだ。

「Mr.オリバはこの刑務所内で恋人と暮らしています」

 同棲生活かよ! やっぱ、非人間か!?
  ここってペットの持ちこみOKだったか?
 彼女の正体は犬猫といったペット関係の可能性が高まった。

 自由の女神説は、これで脱落だ。
 さすがにオリバの部屋から地下通路で自由の女神までつながっているとかの大トリックは出てこないだろう。
 秘密の通路は密室トリックでは反則だと、森博嗣『すべてがFになる』でも言っていたし、抜け穴説は却下だ。

 オリバは、繋ぎ止められない男(アンチェイン)を自負している。
 彼女同伴とは、刑務所の中でもやりたい放題である。
 しかし、オリバの彼女を誰も見たことがないのだ。
 もしかするとバカには見えない彼女なのか?
 じゃあ、俺にも見えないや。

「ガセだな……」

 何年も前からオリバが言いつづけている彼女の存在は、ウソっぱちだとゲバルが断定する。
 言い切りやがった!
 あらゆる可能性を考えながら、ネタをはさんで、ムリヤリ整合性を作り上げるのがレビューの醍醐味だろうが。
 いや、ゲバジュンはレビュー書く人じゃないし。
 少年ジャンプの『』感想をまじめに書いている人って、すごいと思う。


 一方、オリバさんはタキシードを着ておめかし中だ。
 貧乏人には想像できない、高収入の人間がおこなう100%本気の勝負服だ。
 きっとパンツは金箔とダイヤモンドで飾られているにちがいない。

 そして、胸ポケットに入れるハンカチはゲバル唾液をくらったハンカチだった。
 ……まだ濡れています。
 ちゃんとかわかせよ。ハンカチだったらすぐに乾くだろ。
 つうか、そのハンカチにこだわる必要もないと思うのだが。

 ちなみハンカチを胸に入れるのには理由があるらしい。
 スリムなズボンをはいているときに、ポケットにハンカチを入れると膨らみができてしまう。
 パーティーで御一緒するご婦人にエレクチオンしていると誤解されては困るので、胸ポケットに入れるのだ。(参考小説:「売国奴の持参金」だったと思う)
 さすがオリバさん、股間の紳士もアンチェインだ。

 『マリア』という名の彼女に会いに行くため、オリバは花束を抱えて秘密の部屋に入る。
 『Dämons(Damons ダイモンズ)』では、ジェストの彼女がマリアだったけど、ただの偶然だろう。
 とにかく、愛という言葉では表現しきれない感情を胸筋の奥で燃えあがらせながら、オリバは秘密の花園へ。
 はたして、本当に生身の実在する『彼女』が部屋にいるのか!?


 一方、J・ゲバルたちの作戦会議はつづいていた。
 とりあえず『オリバの彼女は捏造』という状況で話を進めている。
 ジィさんたちも、彼女の存在をうたがっていたようだ。
 しかし、オリバかこわいから存在を否定できなかった。

 J・ゲバルが勝利すれば、オリバによる恐怖政治を終わらせる。
 この公約でJ・ゲバルは囚人たちの心をガッチリつかむのだった。
 でも、J・ゲバルは大統領になったあと最強をもとめて刑務所に入っちゃった男である。
 オリバに勝ったら、更なる強者をもとめてまた旅に出そうだ。

 J・ゲバルは同室の巨人=ケントに謎のツボをわたす。
 試合場で自分に渡せという指示も与える。
 どういう作戦だろうか。なぜ、自分で持って行かないのだ?

「決して開けるな」
「豪雨(あめ)と――――――
 突風(かぜ)と――――――
 高波(なみ)と――――――
 雷(いかずち)が飛び出してくる………ッッ」


 パンドラの箱かよ!?
 たとえが船乗りっぽい。J・ゲバルは、いまだに海賊魂を持ちつづけているようだ。
 たぶんフタの開いたツボがキケンなのではない。
 フタを開けた後のゲバルの行動がキケンなのだ。
 たぶん、鶴の恩返しで正体がバレてマジギレしたような状態だろう。
 お前の髪の毛で機織ってやるって状態だ。

 マウス三兄弟を沈めたときの行動を考えると、ツボはゲバジュンの作戦なのだろう。
 試合会場ですばやくメイクできるように化粧道具が入っているのかもしれない。
 または尿をリロードするための飲料が入っているのかも。
 なんにしても、油断できないツボだ。


「どーしたンだい ハニー」
「いつも通り君の指定する時刻(とき)に現れたし……」


 オリバは困っていた。
 彼女(?)に火のついたタバコを投げつけられている。
 理由は不明だが彼女が怒っているらしい。
 物を投げることができている。つまり、彼女の正体は動物以上のようだ。
 火を恐れていないので人間の可能性もある。

 時刻を指定しているというオリバの発言は、妄想による独り言の可能性がある。
 彼女(?)が人間であるという断定はまだはやい。
 その彼女だが、口から煙をはいている。
 そして、オリバに枕を投げつけた。

「この…………… 能なしがッ

 しゃべったッ!
 オリバの彼女って、発声機能がついているんだ。
 というか、本当に人間ですか?
 で、能なしって、どういうことよ。
 謎が新たな謎をよんで次回へ続く。


 オリバの彼女は実在する人間だったようだ。
 しかし、発声機能のついたダッチワイフという可能性もすてきれない。
 実はオリバさんはすごいマゾでののしられると、たまらないのかもしれない。
 刃牙と同じで、オリバも自分を不利で傷つきやすい状況に追いこむところがある。
 彼女の正体はともかく、マゾ説は正しいかもしれない。

 彼女はずっとオリバの部屋にいるらしい。
 ならば、食事はどうしているのだろうか?
 オリバはけっこう外出する人のようだ。その間、食事を運んでもらっているのだろうか?
 だとすると、職員はなんらかの生物が部屋にいるということがワカるはずだ。
 なのに、ジィさんが彼女の存在を疑っている。
 つまり、オリバの彼女は外部からの食事を受け取っていないのだ。

 もしかすると大型冷蔵庫があって、中の食材で自炊しているのかもしれない。
 だが、とにかく謎は深まるばかりだ。
 とりあえず、髪の毛は金髪もしくは白髪なので、彼女=ドリアン説はまだ生きている。
 死刑囚編がはじまる直前まで、ドリアンはオリバの部屋にいたんですよ。たぶん。


 一方、前回ヨダレをたらしてダウンした刃牙は今回出番ナシだ。
 きっと今は溜めの時期なので、もう少しすると「ふしゅる〜」と覚醒して元気な姿を見せてくれるだろう。
 同室の人間が誰も刃牙のことを心配していないのが、すこしかわいそうだ。
 ネタ的には面白いんだけど。


 今回の板垣先生コメントは『伊藤理佐という才能を楽しみ、嫉妬している。』だ。
 勉強不足で、漫画家の伊藤理佐先生はよく知りません。
 でも、機会があれば作品を読んでみようと思う。
 ところで、板垣先生は倉島圭先生が『24のひとみ』を読みきりで描いたとき、その才能を発見していた。
 ヤングチャンピオンでSAGAを描いていたとき、倉島圭先生もヤングチャンピオンで連載作品描いていたのだが、その時はナニを見ていたんでしょうか。
 さすが、つい数年前にMr.Childrenという才能を発見した板垣先生だ。
 そこに憧れないけど、シビれる。
by とら


by とら


2006年9月28日(44号)
第3部 第40話 前夜 (696回)

 ついにオリバの彼女が登場した。
 今回も口だけの出演だ。髪と手も出ているが、いまだに全体像がつかめない。
 本当にカワイイ彼女なんでしょうか。
 どこまでがオリバの妄想なのかワカらない。

 アメリカではハリケーンに女性名をつける慣習がある(1979年から男性名も使用するようになった。参考)。
 そして、マリアはまさにハリケーンのごとく荒れ狂う。
 物を投げつけ、罵詈雑言をあびせる。

「役立たず」「ごくつぶし」「大飯喰らい」「人でなし」「親不孝」「ロクデナシ」「女たらし」「カス」「バカ」

 すごい勢いで文句を言いまくる。
 ただ、能力や人格にたいする悪口ばかりで、外見についてはふれていない。
 しょっちゅうオリバのことを薄毛といっている私のほうが、ヒドイ人間のような気がする。

 オリバは「役立たず」な人間ではなく「ごくつぶし」でもない。「カス」でも「バカ」でもない。
 対象とかけ離れた悪口は意味を成さないのだ。全盛期のホリエモンに「貧乏人」といってもギャグになる。
 たしかに「大飯喰らい」かもしれないが、喰うに見合った働きをするので帳消しだろう。
 あと「人でなし」「親不孝」「ロクデナシ」は情報不足なので判断がつかない。

 そうなると、マリアのいった悪口はあまり意味が無いような気がしてくる。
 なんか怒鳴りたいんだけど、傷つける言葉は使わないようにしているのだろうか。
 そして、「女たらし」という言葉にかすかな嫉妬を感じる。


 オリバは飛んでくる物をひとつもよけず、顔面で受け止める。
 ウィスキーのビンや、バラをいけてある花瓶など、重くて硬い物なのに まったく動じない。
 それどころか当たって砕けた花瓶から飛びちるバラを空中でキャッチして、花束を作ってしまう。
 花瓶やビンを よけたりつかむことも可能なのにあえて当てていたのだ。

 痛みに耐えるのも愛ゆえにだろうか。
 ……この花瓶も妄想の産物だったりして。
 投げつけるほうも、オリバなら喰らっても平気だという信頼感があるのかもしれない。
 普通の人にはオススメできないプレイだ。

 餓狼伝感想を書くときに吉福康郎「最強格闘技の科学」の記述を参考にした。忘れていたのだが、以下のようなことも書いてあった。
『体重が同じ場合、背が高く細い選手より背が低く太い選手のほうが動きがすばやくなる。なぜなら、後者の方が筋肉が太く(そのかわり短いので総量は前者と同じ)、大きな力で加速できるからである。』
 オリバは体重のわりに身長が低い。
 大振りな攻撃ばかりが目につくが、オリバは素早い連打も得意という可能性がある。
 そして、オリバは隠れた能力であるスピードでバラをつかんで花束をつくった。


「どうか…」
「機嫌なおしておくれよォ… ハニィ…」


 オリバは濡れたまま花束を差しだす。
 くちびるを噛み、さらに悪態を突こうかというマリアだったが、出てきたのは涙だった。
 液体のたれる位置から考えると、鼻水も出しているかもしれないけど。

「ダーリン…」

 急にやさしい口調になっただとォ!?
 とたんにオリバが猛りはじめた。
 刺激が強すぎたらしい。
 彼女の住んでいた町のハンカチで興奮しちゃう男だ。「ダーリン」と声をかけられたら電撃一万ボルトぐらいの刺激があるのだろう。
 あんまりそわそわしないで。

「スキよ…」

 バオー・ブレイク・ダーク・サンダーなみ(六万ボルト)の刺激が来たッ!(参考:バオー来訪者
 たまらず、ベッドにダイブするオリバさんであった。
 いや、さすがにそれは成人男性でも破壊されるような勢いですよ。
 マリアさんはどれだけ硬い材質でできているんですか。
 それとも、すごいマッチョな女性なのか?

 オリバは試合場で見せつけると宣言しつつ、ベッドをギチギチゆらすのだった
 いやはや、お盛んなことで。
 少年誌の限界があるのでナニをしているかの描写はありません。
 まあ、まちがいなくSAGA以上のファイトだろう。


 そのころJ・ゲバルは謎のツボに耳を当てていた。
 たしか同室の巨人・ケントに預けていたはずなんですが。
 おしくなって返してもらったんでしょうか。

 中身を気にするジィさんがゲバルに質問をぶつける。
 答えは「勇気」だ。
 記録的なハリケーンが島をおそったとき、一人の少年が一晩中 崖でツボをかかげて、風雨を集めたという。
 ゲバルが米国に旅立つ日にプレゼントされたのだ。

「君が仲間にイジメられてる姿を何度か見ている」
「アリガトウ島一番の勇者よ」


 やせた少年だし体力もないのだろう。
 それでもゲバルを送り出すために、ハリケーンのなか一晩中立っていたのだ。
 自分の限界に挑戦する心意気をもっている。

 ゲバルも米国という巨大な敵に戦いを挑み独立を勝ちとった。
 そして、更なる敵アンチェイン・オリバと戦うことになる。
 強きものに立ち向かう勇気が、ゲバルには誰よりも必要なのだ。

 小さい島とはいえ、こんな少年のこともゲバルはおぼえている。
 ゲバル大統領は暴力だけで大統領になったわけではない。
 島民の生活をちゃんと見ているのだ。
 そして、小さな勇者は自分にできる最大のプレゼントを旅立つ大統領にわたしたのだろう。
 もしかしたら、少年へのイジメもゲバルが目立たないように解消してくれたのかもしれない。
 だからこそ、恩義にこたえたのだろう。


 自由を勝ちとり、勝利するのは「彼女への愛」か!?
 それとも、「少年からもらった勇気」か!?
 決戦のときが迫る!
 そして、主人公はッ!?

 寝転んでいた。


 今回の刃牙は一コマ出てきただけだ。
 取りこみ忘れた洗濯物みたいに、まだ廊下の柵にぶらさがっているンじゃないかと心配だった。
 オリバに壊されたドアをハメるついでにバキを回収したのかもしれない。
 規則上、部屋に入れろと看守にいわれて仕方なくって感じで。
 思いっきりカヤの外なんですが、刃牙はなにを思っているのだろう。
 試合に乱入すれことを期待する。


 さて、オリバさんの彼女だ。
 いまだに正体不明である。
 そして、いまだにオリバの妄想説を否定できない気分だ。

 ハリケーンを思わせる ものスゴい荒れっぷりから一転して、「ダーリン」「スキよ」アタックだ。
 ちょっと『うる星やつら』を思いだした。
 ダーリンのバカ〜〜〜!と言って電撃を放ちそうだ。

 そして、この行動は『ツンデレ』だ。
 オリバが病的なまでにメロメロになっているのはツンデレの魔力かもしれない。
 ツンデレによって身を滅ぼした男や、滅んだ国もある
 あなどると非情に危険な存在なのだ。

ツンとデレの振り幅が萌えの要

 そう、ツンとデレの振り幅が萌えの要です。
 急転直下ジェットコースターのような落差でマリアに攻められちまったら、さすがのオリバであってもノックアウトだ。
 原作協力に松山せいじが関わっているンじゃないかというような、ツンデレでした。

 ゲバルの勇気も、オリバの愛(愛以上)には勝てないかもしれない。
 もしかすると、オリバが龍書文に苦戦したのは、マリアとしばらく逢ってなかったから愛不足だったのかもしれない。

 さて、我らが主人公・範馬刃牙はどうすればよいのか?
 愛をもとめて梢江を呼びつけるという方法がある。
 しかし、すでに冷えて固まってしまったセメントのように、どうにも手がつけられない状態かもしれない。
 梢江は、普通にアライJr.と しあわせな家庭を築いていそうだ。

 だが、刃牙にはまだ逆転の秘策がある。
 蟷螂編で登場した少年・ルミナだ!
「今すぐ台風の地域に行って一晩中 風雨を集めて来い。今すぐにだッ」
 と、呼びつけて勇気をゲットする。
 さらにルミナを恋人ということにすれば、愛もゲットだ。
 一石二鳥の秘策で、愛と勇気を得た刃牙が勝つかもしれない。

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