今週のバキ271話〜276話(最終話)

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2005年10月20日(47号)
第2部 第271話 命のやりとり(650+4回)

「まだやるかい」

 刃牙が超余裕ぶっこきまくりだ。
 ナマイキな十七歳の部分を残しつつ、十八歳の貫禄も身につけたようだ。
 悪い方向にドンドン成長している気がする。

 なお「まだやるかい」は刃牙の親友である花山がスペック戦で発したセリフだ。
 花山が身をていしてスペックを止めて闘っている間、刃牙は梢江とデートしていました。
 花山が顔面を爆破された時の音を聞いたけど、無視してイチャつきながら家に帰りました。
 刃牙よ、オマエにそのセリフをいう資格はあるのか?

 刃牙は不用意にJr.の足をまたいでいる。
 Jr.がちょっと足を上げるだけで、刃牙の睾丸はメチャメチャになる位置だ
 いくらなんでも油断しすぎだ! むしろ蹴られたいのかと疑ってしまう。
 Jr.に蹴り技はないとタカをくくっているのだろうか。
 それとも金的を喰らっても破れたことが無い「鋼鉄のフクロ」に自信があるのかも。

 意識を取りもどしたJr.は、とっさに後方へ飛びすさる。
 寝た状態から動いたとは思えん速度だ。
 アライ流の戦闘方法には、すばやく起き上がる訓練も入っているのだろう。
 基本は立って闘う。アライ流はいつだって「Stand and Fight」だ。
 そして、勇次郎からは走って逃げる。

「目ガ覚メタ」

 269話で勇次郎に地に足をつけてもらったが、まだ足りなかったようだ。
 ここからのJr.は試合ではなく死合モードだ。
 闘い殺しあう覚悟を決めた。人を殺める覚悟で拳をふるう。
 もう、距離感をまちがったりはしない。
 刃牙戦では距離感以前の問題を抱えているけど、とりあえず、良し。

「殺ラレズニ」
「殺ル……」


 Jr.がべらべらと覚悟のほどを語りだす。
 あー、もう。この人は話が長い。
 258話で独歩に「決シテ許サナイ」をひたすら繰りかえしたころから成長していない。
 噛ませ犬っぽく見えてでカッコ悪いぞ。

 Jr.の脳内イメージでは壮絶な死闘が行われていた。
 袴をはいた柔術家を叩きのめす拳闘士の姿がくっきり浮かんでいる。
 この柔術家は本部だろうか?
 武器を持たない本部をオレが圧倒している。ちょっと出血しちゃったけど、倒している!
 強烈なリアリティーをもつ妄想力(思いこみの力)が全開だ。
 どこかにいる本部が影響を受けて血を吐いてもおかしくない。

 刃牙は話にあきてきたのか、視線がどんどん下がっていく。
 試合中に居眠り開始か?
 アライ父は息子のピンチに汗をながす。
 範馬勇次郎は息子の優位に笑いが絶えない。
 そして、Jr,の語りはまだ止まらない。
 とてつもなくチグハグした親子たちであった。

「必ズ…」


 見開きで金的蹴りを喰らったァ〜〜〜〜〜ッッ!!
 範馬刃牙、容赦せんとばかりにセリフのとちゅうで蹴りこんだ。
 Jr.の両足が完全に浮いている。
 つまり、睾丸ニ個(あるいは一個)に最低でもJr.全体重がかかっているのだ。
 もちろんインパクトの瞬間はもっとすさまじい力がかかっているだろう。

 さわやかな晴天の日に自転車で出かけようとしたら、サドルと体の間に金玉をゴリっとはさむよりも大きなダメージだ。
 遊びに行くどころか、そのまま家に引きかえして引きこもりたいほどの疼痛を受けるものだ。
 それの数倍、いや数十倍のダメージを小さな睾丸に受けている。

 打たれたJr.の表情がこの痛みを物語る。
 この表情が今週の刃牙のクライマックスといっても過言ではない。
 二つの玉が、割れて四つに増えたらこういう表情になるのだろうか。
 とにかく、ショック状態だということはわかる。
 男として、というよりキャラクターとして終わらせてしまったような顔だ。
 今後はなにを言ってもマジメな発言と思ってもらえなくなるだろう。

 Jr.の無残な姿を、アライ父が真剣に見守っているのが、また痛い。
 真剣であれば真剣であるほど笑えてしまう状態だ。

 松本梢江は表情をゆがめて残虐ショーを見ている。
 Jr.の逸物を試し斬りする前に、刃こぼれして なまくら刀になってしまったのだ。
 梢江は梢江なりに悲しんでいるのだろう。

 刃牙は梢江の前でJr.を再起不能にしてみせたのだ。
 恐るべき男である。悪魔である。
 どうすれば人に最大限の苦痛を与えることができるのか、日々研究していそうだ。

 ドシャア

 両手で股間を押さえたまま、Jr.は顔から落ちた。
 二度とたちあがれない倒れかただ。
 もう永遠に寝っぱなし。
 うつぶせに倒れたのに、ページをめくると仰向けになっている。
 ページの間で三十分ぐらいの時が流れたのだろう。

 チャンピオンの暴挙にスゴいもん好きの観客たちが声ひとつ出せない。
 よろこんでいるのは勇次郎ぐらいだ。
 つまり、イチバン人間性に問題があるのは勇次郎だ。
 その勇次郎の血を引く範馬刃牙がクールかつ容赦なく、Jr.にトドメを刺そうとしている。

「さァ…」
「瀕死だぜ」

 ドキャ

 しからば、ダメ押しィイイイッッな感じで寝ているJr.に蹴りを入れる。
 これでJr.は股間を押さえることもできなくなった。
 刃牙はJr.を調べた。返事がない、ただのしかばねのようだ。
 だが、刃牙が瞳孔をチェックすると生体反応があったらしい。

 刃牙は容赦も妥協もなく、無言のままチョークスリーパーに入る。
 完全に殺る気なのか!?
 少年漫画の主人公として、それはちょっとマズくないか?
 というか、むしろ今の刃牙は悪役にしか見えないぞ。
 こんな状況のまま、次回へつづく。

 でも、来週は刃牙がお休みらしい。
 そして、チャンピオン49号では巻頭カラー&二本立てだ!
 ………一週休んで二本立てにする必要はあるのか?
 毎週、ちゃんと刃牙が読みたい。


 今週のJr.は無駄なおしゃべりしか できなかった。
 前回は渋川戦での失敗を繰りかえしていた。今回は独歩戦での失敗を繰りかえしている。
 ちゃんと進化しているのだろうか?
 むしろ退化しているような気がする。

 刃牙は地上最強の生物・範馬勇次郎と闘おうとしているのだ。
 次の対戦を考えるならJr.ごときに苦戦するわけにはいかない。
 理屈ではそうなるんだけど、やっぱり刃牙の圧勝というのには納得しにくい。
 正確には納得というより、応援しにくい。

 Jr.が真の覚醒をするのはいつだろう。
 多少ダメージを受けても「スゴいね」「人体 ♥(はぁと)で復活する可能性は十分にある。
 それとも「カマン、バキ! 私ガ相手ダッ!」とアライ父が参戦して、刃牙を殴りたおすとか?
 刃牙を圧倒するアライ父はかなり見てみたい気がする。


 再来週は二本立てらしいが、本編が二本あるということなのだろうか?
 一回休んでまでそういうことはしないだろう。
 本編と外伝を掲載すると思われる。
 秘密のベールにつつまれたJr.の過去があきらかになるのだろうか。

 とりあえず当面の問題は、チョークスリーパーからの脱出だ。
 がっちりハマっているが、どうやって逃げるのか?
 噛みつこうにも刃牙の腕はアゴの下に入っている。これでは歯が届かない。
 単純な腕力で刃牙はJr.を上まわっていそうだ。力で脱出はできない。
 腕を変な角度に曲げて刃牙を殴るという方法もある。
 でも、ヒザのばねや腰の回転ぬきのパンチで刃牙にダメージを与えられるとは思えない。
 刃牙の目や耳に指を突っこむという最終手段もある。しかし、刃牙が急所攻撃に無警戒とは考えにくい。

 Jr.は、もう脱出不能なのか?
 あとは梢江との肉体関係をほのめかして、精神的な動揺を誘うぐらいしか考えつかない。
 でも、梢江作戦って刃牙よりも読者にダメージがくるよな。
by とら


2005年10月27日(48号)
バキはお休みです

 君がッ 漏らすまで 絞めるのをやめないッ!
 そんな感じでJr.にチョークをかます刃牙であった。
 絞めるまでもなく、Jr.は気絶しているっぽいけど範馬は手加減したりしないのだ。

 著:上野正彦の「死体は語る」で、アメリカ映画ではよく失禁するシーンがあるが、あれは日本人より膀胱が大きいからでは無いだろうかと考察していたおぼえがある。
 監察医は映画みていても、人体構造を考えちゃうんだなと感心した。
 まあ、とにかくアメリカ人であるJr.は、さぞかしハデに失禁するだろう。
 もっとも、刃牙世界の住人は熱い男ばかりなので、みんなハデに失禁する。
 失禁とは、冷却水を出して体温をさげる体機能ですよ(ちがう)。


 刃牙がお休みである今週は、マホメド・アライ Jr.の追悼前夜として、Jr.編以前の彼をふりかえってみる。

 マホメド・アライ Jr.の初登場は2003年3月6日のバキ159話だった。
 ちょうど刃牙が毒手の影響で死にかけていたころだ。
 ところが現在はJr.が刃牙に殺されかけている。
 まるで宇宙が一周したようなみごとな裏返りだ。

 初登場のJr.は梢江に声をかけていた。
 まさに運命の出会いである。
 今後の展開を決める重要な伏線だった。いや、あまり重要じゃないのかも。
 いくら悔やんでも 悔やみきれない痛恨事だ。

 160話161話は、Jr.の強さを見せるエピソードだ。
 今までの刃牙キャラの初登場は、圧倒的な力で相手をツブすことが多かった。
 テクニカルに敵をたおすJr.は、どちらかというと異端児だ。
 新タイプの戦士が登場したので、新しい世界が広がるのを予感した。

 162話168話あたりは、父親であるマホメド・アライと範馬勇次郎の交流を描いている。
 アライ父には病気からの復活がない…………。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
 というか、ふつうに考えて復活はアリエナイだろ。
 いや、刃牙はふつうな漫画じゃないんだけど。

 最近ではアライ父のほうがJr.より強いと思いはじめている。
 アライ父の邪悪な笑顔なら、微笑みの貴公子として主婦のハートをわしづかみできるだろう。

「世界中にバラまかれた俺の種」
「ガキ供と い〜〜〜〜〜い親友(ダチ)になりそうだぜ」


 という勇次郎の言葉も飛び出した。
 このセリフが出たときは世界各地から範馬の息子たちがやってきて、最大範馬トーナメントが始まるのではないかと思ったぐらいだ。
 もちろん、ロシア代表の範馬とブラジル代表の範馬は噛ませ犬である。

 けっきょく、勇次郎のこのセリフは謎のまま宙に浮いている。
 このころの勇次郎って十代のはずだが、世界中に種をばらまくほど精力的に活動していたのだろうか。
 聖闘士星矢の城戸光政みたいに百人ぐらい子供がいたりして。
 このセリフに読者はおどらされ、Jr. vs. 範海王でみごと予想が裏切られるのだった。

 170話171話172話はJr.が範馬勇次郎をコケにする。
 このころのJr.は冒険と無謀の区別がつく理性的な男だった。
 今まででイチバン勇次郎を怒らせた人物は、たぶん このときのJr.だ。
 その後も、勇次郎とJr.はふつうに接している。
 範馬勇次郎は過去のゴタゴタを流せる大人物のようだ。
 でも、ヤツ当たりで近所のムエタイ選手を無差別に襲ったのかもしれない。

 175話176話で、大擂台賽にJr.が参戦する。
 参加試験がわりに、名もなき拳法家とたたかう。
 勇次郎相手では、ホテルのドアを閉めたとたん死ぬ気でダッシュして逃げた(推定)。
 しかし、格下が相手だととても強いし、強気だった。
 どうもJr.の人気がイマイチ(だと思う)なのは、弱者にしか強くない体質が問題だと思う。
 苦戦のすえに奇跡の逆転、とかやってみろ。
 最近は主人公もやらないけどな。

 178話で、大擂台賽がはじまる。
 ホテルにて、寝て待つ勇次郎の誘いを断り、部屋からにげだしたJr.(誤解をまねく表現)だったが、ふつうに勇次郎と対面している。
 でも、見えないところで怒られていたのかもしれない。

 182話183話、ついにはじまった魔法滅土Jr. 対 除海王だ!
 魔法滅土って言いかたは、レッサーパンダの風太くんぐらいの瞬間風速で流行ったと思う。
 サムワン海王の次に安全と思われた「巨人」との試合であり、とてもラッキーだった。
 弱者には強いので、とうぜん一蹴する。
 なお、もう少しあとの話になるが、サムワン海王は死して名を残す真の英雄であることが判明する。
 Jr.はもっとも弱い海王を倒したのだ。

 Jr.はここでも梢江と絡らんでいる。
 エロゲー風にいえば、フラグを立てまくりだ。
 ゲーマーとして、とても間違っている。失格だ。セーブ地点までもどってやりなおせ。
 あれかな、弱者に強いJr.だから、競争相手がいなさそうな相手を選んだのだろうか。

 202話203話大擂台賽をリセットして、やり直しました。
 大擂台賽をなかったことにする件にかんして、Jr.は気持ちがいいぐらい口を開かない。
 というか、これから先は烈vs.寂の終了まで口をきかない。
 刃牙といっしょの空間にいると不機嫌になって無口なのだろうか。
 普段はわりとしゃべる人なのだが、大擂台賽の後半から極端に無口になっている。
 やはり、刃牙を恋のライバルとみなして対抗心を燃やしていたのか。

 222話223話224話と、試合中もほとんどしゃべらない。
 そして、相手は範海王だ。
 因縁の対決を期待されたが、最初から因縁なんてなかったんですよ。
 謎にみちた殺人事件の真相が「ただの事故だった」と言われたぐらいにショックだ。
 まさに、ある意味では「事故」だった。
 範海王って、エラそうにしていたけど本当は弱かったんだろうな。

 そして、2005年2月24日 241話からJr.編がはじまる。
 過去を振りかえると、Jr.は刃牙とひじょうに仲が悪そうだ。まったく会話をしていない。
 見えない部分で、火花を散らしていたのかもしれない。
 でも、火花の中心が松本梢江なので、ちと盛りあがりに欠ける。

 241話からも、Jr.は梢江にアプローチして、勝ったり負けたりしてきた。
 そして、東京ドーム地下でJr.は無残な死に様を見せようとしている。
 次回は二本立て合計40ページだ。
 Jr.はこのまま死んでいくのか、それとも奇跡の復活をとげるのか。
 すべては来週あきらかになる。

 しかし、ふつうに二本描くだけなら今週休まなくてもよかったのでは?
 おかげで、来週は感想も二本立になりそうだ。うわー、大変そうっ。
by とら


2005年11月2日(49号)
第2部 第272話 覚悟(652+4回)

 意識を失って瀕死状態の敵に、トドメのチョークをかます!
 これが、週刊少年チャンピオンのストロングスタイルだッ!
 半裸の少女がいれば、全裸にするのと同じ理屈だ(最悪)。
 本気の殺人行為に観客は引きまくる。梢江だって引く。
 それでも容赦しないのが範馬刃牙なのだ。
 まさに、闘争の鬼である。

 Jr.は逆転するどころの騒ぎではない。チョークからの脱出すらムリっぽい。
 目はうつろだし、口は半開きだ。一気に三途の川を渡りきりそうな状態だ。
 地下闘技場は公開殺人の場と化した。
 梢江はけわしい表情でガチガチ震えだす。これは読者的にも、きびしい一手だ。

 だが、絶体絶命の死地からよみがえる者がヒーローである。
 Jr.の体内で化学反応がスパークして、マックシングしたり、武装化した本部みたいなことになったりするハズだ!
 しかし、Jr.の体内事情にくわしくないご老公は、たまりかねて試合終了の合図を送ろうとする。
 その時ッ!

 バカ

 突然の拳打が刃牙をふっとばした!
 殴ったのはもちろん、マホメド・アライ(父親)だァ!
 って、オヤジかよ!?
 この試合はアライ父の策略で、最終的な勝利者はアライになる。
 そういう可能性も考えていたが、本気でやりやがった。

 たおれた刃牙をアライ父は静かにみおろす。
 地球上では三分間しか闘えないウルトラマンよりもひどい、一分間限定の戦士がアライ父だ。
 一発殴っただけで恐縮だが、闘う力はすでに無い。

 しかし、見られい。
 不屈の精神を持った拳士にあっては、自己(おのれ)に与えられた苛酷な運命(さだめ)こそ、かえってその老いた闘魂(たましい)を揺さぶり ついには…
 天才であるわが子Jr.よりも強さに説得力をもつにいたるッッ!
 …………足元に転がっている かわいそうな子をはやく片づけてあげてください。

 知名度・支持率・人気は、アメリカ大統領以上といわれているアライ父だ。
 スゴいもん好きの観客たちは一気に沸騰し、アライ父に歓声を浴びせる。
 少なくとも、チャンピオン(刃牙)よりも、人気がありそうだ。

 一撃で観客をうばわれてしまった。
 よゆうぶって、ゆっくり起きあがった刃牙は、どんな心境だろうか。
 フルマラソンを走りおわった後のように消耗しているアライ父を叩きのめすのはたやすい。
 しかし、相手は尊敬すべきグレートな戦士だ。叩きのめしたら評判が落ちる。
 そこで刃牙は必殺の範馬流話術を駆使するのだった。

「伝説のパンチ…」
「光栄だ」
「それに…」
「アンタが割って入らなきゃ」
「確実に殺していた」


 いきなり爆弾発言をブチかました。これは範馬流話術ではない。
 しかし、まずほめて相手の心にスキをつくり、そこを攻める。範馬流話術の片鱗が見える話しかただ。
 それにしても、刃牙に完全な殺意があったとは。
 リングの上で人を殺しても、殺人罪には問われない。刃牙はそこまで思い切ったのか?
 そういえば、シコルスキーを窓から叩きおとしたときも、ほとんど動揺していなかった。
 刃牙の精神は、とっくの昔に殺人を許容しているようだ。

「ソレガ理解(ワカ)ッタカラ乱入シタ」
「重大ナ ルール違反ダガ後悔ハ シテイナイ」
「タトエ…」
「ココデ君ニ殺サレテモ」


 アライ父はわが子を救うため、命がけで飛びこんできたのだ。
 つまり、刃牙は本当の本気で殺すつもりだった。
 父である勇次郎に、自分は殺人も辞さない男であると見せつけるためだろうか。
 思い人へのあてつけのためだけに、殺される。
 そんなみじめな死にかたを、子供にやらせるワケには行かない。
 いろいろあったけど、アライ父は最後の最後で戦士ではなく父親にもどったのだ。

 Jr.は殺す覚悟はしていても、殺される覚悟はしていなかった。
 刃牙はJr.の甘い考えを打ち砕きたかったらしい。
 ついでに睾丸も砕いて、命も砕こうとした。おろしい男だ。
 人を傷つけるのなら、同じぐらい傷つけられる覚悟をしろ。
 そういう事らしい。

 Jr.は死にそうな目にあったり、人を殺せる打撃を打ちこんだりしたけど、本気で死ぬ覚悟が無かった。
 独歩は渋川さんに敗れたとき、トドメを刺すようにうながした。
 達人二人には本気で死ぬ覚悟があったのだろう。
 ただ、Jr.との闘いは試合のつもりだったので、死闘にはならなかった。
 倒れた相手にトドメも刺さず、ほったらかしにしていたなんて、甘すぎだ。

 刃牙の発言をストレートに考えると「いつ死んでもいい」ことになる。
 以前、刃牙はもう勇次郎以外の人間とは闘わないという発言をした。
 つまり、刃牙は今後「命を賭けた闘い」しかやらないと決めていたのだろう。
 今、刃牙はJr.を倒した。
 そして、つぎのステップはひとつしか無い。

「親父…」
「俺と闘ってくれ」

 ついに、刃牙が範馬勇次郎に挑戦状をたたきつけた。
 さっきの発言があるので、間違いなく死ぬ覚悟をしている。

「その試合を最後の防衛戦とし――――」
「俺という物語の」
「締め括りとしたい」


 死亡宣言が出た〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!
 しめくくっちゃ、ダメ!
 キミには学校を卒業して、就職もしないでご老公にたかってメシ喰いながら生きて、ある日気がつく。
「あれ? オレってニート?」
 そんなステキな未来がまっているんだぞ! ガンバレ。

 死ぬ気で勇次郎と闘い、勝とうが負けようが死ぬつもりっぽい刃牙であった。
 さいきん梢江に冷たかったのは、人生への執着をすてはじめたからだろうか。
 そういえば、刃牙はときどき死を覚悟した殉教僧のように妙に達観をしていた。
 ずいぶん前から、刃牙は死を覚悟していたのかもしれない。

 今週はもう一話あるので、刃牙の決意については次回感想で書く。
 ゴミのように地面に落ちているJr.について、すこし考えよう。
 猪狩の言うことはアテにならないとして……。
 Jr.の実力を見誤るとは、独歩と渋川さんも老いたのか?
 Jr.の力量は正しく評価していたのだが、刃牙の実力を過小評価したのかもしれない。

 しかし、アライ流が試合中に完成するという予言は当たっている。
 アライ父の拳がアライ流の完成形ということだ。
 死地に飛びこんで、生をひろうのがアライ流ということで、納得しておこう。

 しかし、Jr.は最期までむくわれない人だった。
 Jr.のなしとげたことって、梢江から面白い表情を引き出したぐらいだろうか。
 どうよ、範馬バキ?
by とら


2005年11月2日(49号)
第2部 第273話 完成(653+4回)

 この日のために、生きてきた――――――――
 次週、重大発表!!


 表紙の横に、衝撃的な予告が入っている。
 現在の流れからすると、「バキ」最終章へ突入なのだろうか?
「バキ」がアニメ化する可能性もあるが、重大発表というにはすこしパンチが足りないと思う。
 餓狼伝のゲームは、今週のチャンピオンにレビューが載っているしなー。
 なお餓狼伝のゲームには、勇次郎がゲスト出演する(←重大発表)

 勇次郎が試合場へおりたつ。
 観客席最上段から飛びこんでくるのが勇次郎のシュミだったのだが、今回は静かに入ってくる。
 まるで、ノーモーションジャンプだ。ほとんど無音で着地した。
 そして、まるまる一ページ使って笑う。

 ディオが馬車からおりるのに二ページ使ったと騒ぐどころではない。
 主人公の描写に二ページ使っているのだろうかと疑問に思うほどである。
 ちなみに、主人公しかうつっていないコマを集めると1.8ページぐらいだった。

 例によって、勇次郎の大演説がはじまる。
 要約すると、「猫だった刃牙が成長して獅子になった」ということだ。
「女体を喰らい」も成長に欠かせない栄養素だったらしい。
 なぜか、そのコマにはアライ父の顔がある。
「アライを喰らい」を言い間違えたのか?

(勇次郎(オーガ)が刃牙を敵として認めている)

 刃牙が高評価されたので、ご老公もうれしそうだ。
 地下闘技場のチャンピオンとして刃牙を支援してきただろうから、感慨もひとしおだろう。
 血を血で洗う闘争も見ることができるのも、うれしいに違いない。

「やがて俺の餌として完成を見る」

 見開きページで範馬勇次郎が宣言する。
 おなじ構図に入っているけど、主人公よりサイズがデカい。
 そして、おなじみの「餌」宣言で観客を不安におとしいれる。
 でも、範馬勇次郎は息子にたいしてツンデレなので言葉を額面どおりに受け取ると痛い目にあう。

「もう歳なのかな……」
「俺は闘いたいっつってんだぜ」
「耳遠いのかい‥‥」


 命知らずになっている刃牙が挑発をする。
 梢江も観客もヒヤヒヤものだ。
 もちろん、刃牙以外の人間がこういうセリフを口にすると裏拳が飛んでくる。
 具体的には柳龍光の事例がそれだ。

「ハネッ返りは」
「すなわち鮮度」
「よくぞそこまで芳醇になりおおせた」
「喰うに値する」


 範馬勇次郎、デレ入ってます。トロでいえば「中トロ」ぐらいか。
 ギャルゲーなら、このセリフは「キサマがそこまで成長したのなら、デートしてやろう」という意味です。
 もちろん、デート用の勝負服は半年以上前から決定しています。そして、冬なのに夏服というオチが待っている。

「言いつけを守り」
「いい仕事をしているようだなお譲ちゃん」
「引き続き――――――――
 飽き果てさせるな」


 刃牙を成長させた重要人物の一人・松本梢江に感謝の言葉をかける。
 勇次郎にほめられるなんて、めったに無いことだ。
 実に貴重な体験をしている。そして、かすかな死亡フラグの予感がする。
 勇次郎は、ほめた相手をたおすことが多いのだ。

 勇次郎と闘って死ぬ気まんまんの刃牙だが、勇次郎の対応は大人だ。
「引き続き」という、梢江へのセリフには、刃牙を長生きさせたいという思いを感じる。
 死に急いでいる刃牙を、やんわりとたしなめているのかもしれない。
 やはり、とことん親バカだ。

 でも、刃牙のようすを見ているかぎり、すでに梢江にあきているようだ。
 今の刃牙が考えることは範馬勇次郎のことばかりだ。
 梢江のことを考える余地などない。
 刃牙の暴走を止めるには、ちょっとばかり梢江の力が足りなかったらしい。

「光成ッッ」
「知らせを待つッッ」


 そして、勇次郎はクールに去るぜ。つづく。
 って、この場で闘わないのか!?
 ものすごい勢いで暴走していたから、てっきり決着を今この場でつけるのかと思った。
 最後の成長をとげるために必要な時間を与えるところが、親バカの真骨頂である。


 さて、刃牙はなぜ死を覚悟してしまったのだろうか?
 毒で死を覚悟した部分が大きいと私は考える。
 今年のカレンダーに予定を書きこめそうなほど具体的に迫ってくる死を経験したのだ。
 死を目前にして、刃牙がもっともやり残したと思ったことは勇次郎との決着だろう。
 初Hは済ませちゃったし、気がかりは決戦以外に考えられない。

 闘わず無念に死ぬより、闘って死にたい。
 血を吐きながら、刃牙の思考は勇次郎との決戦一筋に絞られていったことだろう。
 梢江も177話で「恋じゃ止められない」と発言している。
 毒手から裏返りまでの過程で、刃牙は命を惜しまず闘うことを誓ったのだろう。
 毒手をうける直前まではバカップルぶりを存分に発揮していた刃牙と梢江の関係が、急に冷えたのはそんな事情があったのかもしれない。


 さて、重大発表とはなにか?
 前回休んで二回分にまとめた特大の カタストロフィ カタルシスが来た後だけに、次回最終回というオチも十分ありうる。
 もちろん、最後のページには刃牙の墓が出てきて、完!
 最終決戦で、これほど死にそうな主人公もめずらしい。

 梢江との間に刃牙二世が誕生している可能性も高い。
 刃牙の息子を主人公にして、新シリーズをはじめるのかもしれない。
 なんて思っていたら「ドカベン vs. 野球狂の詩」に対抗して、「バキ vs. 餓狼伝」をはじめちゃったりして。
by とら


2005年11月10日(50号)
第2部 第274話 戦士(654+4回)

 今回は、ラストに衝撃の重大発表がまっている。
 冒頭では刃牙と梢江が廊下を歩く。
 最近、梢江の顔を見ると条件反射でちょっと笑ってしまう。
 ウメボシ→唾液なみの強力な条件反射が完成したようだ。

 梢江は神妙な表情をしている。横にいる恋人は、さっき人を殺すところだった。
 刃牙の口元は、ちょっと笑っている。
 対戦相手を破壊することに喜びを感じる範馬勇次郎のような性癖を手に入れたのだろうか。
 怪物と戦うため、刃牙も怪物へと変貌しつつある。

「強いね」
「バキくん」
「イッパツで終わらせちゃった」


 無表情のまま梢江がしゃべる。
 なんかジャパニーズ・ホラーという感じの不気味なしゃべりかただ。
 鏡に変な映像がうつっていたり、水滴が天井からたれてきたりしそうな予感がする。
 ここから先は、夜中に、部屋を暗くして、一人で読んでください。

「彼は立派な戦士だったよ」
「逆に俺がイッパツで倒されかねないほどにね」
「そんな言い方をしちゃダメだ」


「戦士だったよ」→過去形だ。
 つまり、戦士としてのJr.はもう終わったと。むしろ、男としてのJr.も終わったと。
 刃牙はJr.のことをほめているようだが、自分を正当化しているだけのようにも見える。
 そして、梢江は正当化していると受け取ったのかもしれない。
 ………空気が重い。

 梢江は殺人を犯しそうになった刃牙を気づかって話しかけているのだろう。
 でも、空気を読まない刃牙は格闘者理論できりかえす。
 闘っていた当事者に怒られたら、外野は謝るしかない。しかたなく、梢江はあやまる。
 気をつかって話しかけたのに、Jr.に対して無神経と言われた。とても理不尽な謝罪だ。
 金玉蹴りあげて絞め殺そうとしたアンタより、アタシのほうがJr.を気づかってンだよ、と言い返してやればいいのに。

「次が…」
「最後になるのね」

 めげずに刃牙に話しかける梢江でした。
 なんと、けなげな。なんと、一途な。
 絵が絵なら、すごい萌えキャラですよ?
 ダメですか? 私はダメです。
 そして、我らが主人公もダメみたいで、ムシして水を飲んでいる。態度、最悪だ。

「嬉しい…」
「ホッとしてるわ」

「どこの家(うち)でもある親子喧嘩にすぎない」
「人に自慢できることじゃない」


 とことん梢江との会話を拒否するような態度の刃牙であった。
 闘いが終われば刃牙が自分のもとに帰ってくると、梢江はおもっている。
 しかし、刃牙の態度を見ていると二度と帰ってこないような気さえする。
 刃牙は梢江のことを捨てるつもりだろうか。

 刃牙の「家(うち)」という言いかたも冷たい。
 家庭内の問題だから、よそ者は踏みこんでくるなという感じがする。
 なんともいえない冷めた空気が二人のあいだにただよう。

「なんか…」
「リッパになっちゃったなぁ…」
「ひとりで帰るね」


 とことん二人の気持ちがすれ違う。
 梢江は刃牙を置き去りにして部屋を出る。
 視線も合わせずひじょうに険悪なムードだ。
 部屋にのこる刃牙は梢江を引き止めない。
 二人の間のミゾはどうにもできない状態になってしまったようだ。
 深刻な話だが、まあ、わりと どうでもいい。

 刃牙は勇次郎との闘いで死ぬつもりなのだろうか。
 だから、残される梢江のことを考えて、わざと冷たくしているのかもしれない。
 いや、それは考えすぎかな。
 刃牙がなにを考えているのかワカらんときは、たいていナニも考えていない。


 いっぽうアライJr.は控え室に戻ることもできず廊下で号泣していた。
 もしかすると、股間が再起不能になったのだろうか。
 四つんばいになって、目から涙を、鼻から洟(はなじる)を、口から涎(よだれ)を流しまくっている。
 これで耳から液体を流せば完璧だ。

 いつ止むともしれぬJr.の慟哭を聞きながら、アライ父は背を向けさっていく。
 とことんまで泣かせてやろうという親心だろうか。
 会話がなくても、刃牙と梢江よりも濃密な関係を感じる。
 つうか、本格的に不能になっていたらかける言葉が見つからないよな。
 梢江とやるぐらいなら、勃起(たた)ないほうがよくない? と言っても、なぐさめにならない。


 そこへ「バキ」屈指の美少女(他に少女がないから)・松本梢江が登場する。
 たまたま帰り道で出会ったのだろうか。それとも、わざわざ寄ってきたのか?
 そして、梢江は号泣するJr.を目撃する。
 号泣して崩れるJr.の顔が大擂台賽でみせた号泣する梢江にそっくりだということを誰が知ろう。

 思えば、ふたりの出会いは号泣だった。
 もっともつらい時になぜか二人は出会っている。
 号泣こそ、梢江とJr.を結ぶ運命の絆なのだ! たぶん。

「あなたは………」
「戦士でしょ」


 梢江の言葉にJr.はただ首を振るばかりだ。
 首を振ったいきおいで、汁が飛び散る。
 とうぜん梢江の顔面にかかってしまう。
 これが舞乙HiMEなら擬似顔射のサービスシーンなんだろうけど、あいにく相手は梢江である。
 いろいろな意味で、うわ〜〜って感じだ。

 自分を置いてどこかへ行こうとする刃牙とはちがい、はだかの心をさらけ出している。
 思えば、Jr.の言動は梢江にたいしてつねに真っ直ぐだ。
 はぐらかしてばかりの刃牙とはちがう。
 梢江もつられて泣き出し、おもわずJr.を抱きしめるのだった。
 Jr.は試合には負けたかもしれないが、勝負には勝ったか?


 そして、重大発表だ。
『11月24日木曜日発売 週刊少年チャンピオン52号
 来るクライマックス!!!
 バキ 最終回
 そしてッッッ――!!!!!!?』


 さらに、作者のコメントだ。
『刃牙誕生14年、最終章近し。』


 やはり、刃牙は最終章へ突入するらしい。
 次回で「バキ」はいったん終わり、「グラップラー刃牙」が「バキ」になったように再スタートするのだろう。
 その前に、サブキャラの外伝が入るのかもしれない。
 とりあえず、次回は勇次郎との試合日程が決定して、刃牙と梢江が決別するところまでだな。


 未来の話はあまりに不確定なので、すこし過去の話をする。
 Jr.編に入って刃牙がほとんど出てこなかった。その理由が今回わかった。
 たぶん、梢江と別れさせるためだ。
 ストーリーをJr.と梢江の視点で描くことで、刃牙への感情移入を殺し、気持ちを離れさせた。
 じっさい刃牙とJr.の試合では、私はJr.を応援気味だったし、本気で殺す気だった刃牙には正直引いた。
 刃牙からJr.へ気持ちがうつる梢江の視点を、読者にも体感させていたのだろう。

 刃牙は遠いところへ行ってしまった。
 そして、さらに遠いところへ行くのだろう。
 愛で強くなった少年は、愛を捨てることで鬼にかわる。
 勝っても負けても、一度怪物になった刃牙は、普段の生活に戻ってこないのかもしれない。


 刃牙の最終章は、勇次郎との闘いがメインになるだろう。
 メインイベントを範馬親子対決として、前座に数試合組み込むのだろうか?
 個人的には花山vs.烈とか、オリバvs.ジャックとか、やってほしいな。
by とら


2005年11月17日(51号)
第2部 第275話 挑戦資格(655+4回)

 次回、最終回ッ! ラストスパートだッ!
 マホメド・アライJr.をメメタァっとたおし、梢江とは縁をきり、勇次郎への挑戦権を獲得する。
 まさに人生の転換期だ。もう、終着駅に向かって動きだしている。次は終点です。
 結婚は人生の墓場だというジョークがある。とりあえず墓場行きだけはさけることができたようだ。

「我々2人は大外れでしたな」

 神心会の館長室(?)で独歩と渋川先生が反省会を開いている。
 見えないところで猪狩も反省しているのだろうか?
 でも、猪狩に反省はにあわない。笑ってゴマかしていそうだ。
 とりあえず、独歩+渋川予想にはダマされた。激しくダマされました。
 金額にすると税込み\6,489分ぐらいだ。本日発売「餓狼伝 Breakblow」某ショップ割引価格と同額である。

 独歩は道着をきている。
 稽古をしたあと、着替えずに渋川さんをむかえたのだろうか。
 ヘビを漬け込んだ酒を、さしで飲んでいる。
 酒がコンマ一秒反応を鈍らせることもある。あまり油断せずに飲んでいるのだろう。
 楽しそうに見えるが、腹のうちでは真剣勝負なのかもしれない。

 達人二人の計算を二桁ぐらい狂わせたのは急激な刃牙の成長が原因だった。
 二人が知らないところで刃牙は強くなっていたのだ。
 そりゃ、ティッシュの花園で起きた秘めごとや、大擂台賽を直接見たわけではない。
 SAGAとか砂糖水の異常事態は想定の範囲外なので、達人二人にも予想できなかったのだろう。
 というか、地球人の想像力を超えている。

「渋川さん」
「勝てますか範馬刃牙に」


 中のヘビが出てきそうな勢いで、独歩はビンをかたむける。かなり豪快だ。
 渋川さんは独歩の問いに答えず、匂いはキツいがこの酒はウマいという。
 ジャックに負けた苦い記憶もある。刃牙に勝つ自信がないのだろう。
 しかし、仮定の話でも負けを認めるのは面白くない。
 渋川さんらしい稚気と負けん気を感じさせる行動だ。

「飯匙倩(ハブ)酒」
「沖縄の友人から頂きました」


 さすが独歩だ。唐手(空手)の本場・沖縄にも顔がきく。
 漢字は3文字なのに、読みは2文字なのかと「ほぼ日刊イトイ新聞」でも舌をまいている。
 まさに漢字界のコッカケだ。
「ほぼ日刊イトイ新聞」には、板垣先生へのインタビューものっている。まさにシンクロニシティーだ。
 ちなみに、糸井重里は「中国四千年」というキャッチコピーを考えた人らしい。
 すごいシンクロニシティーだ。

「勝てぬとは言えんわな」

 酒を飲みほし、渋川さんは言った。
 やっぱり、素直に刃牙に勝てないとは言いたくないらしい。
 流派の長としても、気軽に負けを認めるワケにもいかないのだろう。
 柳に「用心深い男」と評されたとおり、同時に冷静な戦力分析で刃牙の実力を評価している。

「刃牙の父 オーガは受けました」
「息子 刃牙に挑戦の資格ありと」
「わたしの心は決まっています」


 慎重な渋川さんにたいし、独歩にはなんらかの思いがあるようだ。
 なにしろ、範馬勇次郎への復讐をちかい鍛錬をつづけてきた男である。
 刃牙と闘うまえに勇次郎に挑戦するのだろうか。
 いや、その負け犬ポジションは本部がすでに完成させている。


 いっぽう道場では愚地克巳・烈海王・加藤清澄の若手三人があつまっていた。
 一時は危篤(デンジャラス)状態だった神心会の獅子(ライオン)加藤も無事に復帰したようだ。
 だが、顔面にはドリアンに刻まれた傷痕がのこっている。
 ………………あれ、末堂は?
 え〜〜〜、あれだ。ジェットコースターの上で三戦立ちした感覚が忘れられなくて、毎日遊園地に通っているんだ、たぶん。

「擂台賽で見せた秒殺………
 そしてアライJr.戦で見せた圧倒的な実力」
「彼はもう以前のステージにはいない」


 おそらく刃牙をイチバン身近で見てきた烈海王は断言する。
 べ、べつに刃牙が心配で観察していたわけじゃないからな。フン。って感じだ。(ちがう)
 薔薇ガラの拳法着というあいかわらずハイセンスな服装をしていらっしゃる。
 そんなツンデレツ海王は、刃牙が人類というステージをこえて宇宙人になったと断言する。

「………で どーするよ克巳さん」

 加藤が問う。
 刃牙を応援するのか。先に勇次郎へ喧嘩を売るのか。むしろ刃牙に喧嘩を売るのか。
 どちらにしても、宇宙人を相手にするのだ。
 若手三人の心はなかなか決まらない。
 素直に、応援に行こうぜ! と言われないところが、刃牙の真骨頂である。
 どうしようもなく人望ねェよ、この主人公……


 どこかの酒場では花山薫が柴千春から報告を受けていた。
「かおる&ちはる」で萌えユニットとか組むつもりでしょうか。
 スペックに爆破された花山の顔はみごとに修復している。
 疵は残っているが、マスクなしでもやっていける状態だ。
 幼年編のときにできた刺し傷が消えているので、尻あたりから皮膚を移植したのだろう。

「花山さん」
「俺らバキさんに………」

「放っとけ」
「それが礼儀だ」


 刃牙も、花山と千春には心配してもらえているようだ。
 うむ、刃牙もまだすてたもんじゃないな。梢江にはすてられたが。
 花山は男の喧嘩には口を出すなという主義なのだろうか。
 それとも、幼年編で刃牙の応援に行ったら、まきぞえで勇次郎にボコられた過去を思い出したのかもしれない。
 ついでに、梢江に蹴られたスネがうずいていそうだ。
 まあ、なんにしても行かないほうが安全です。


「正直オーガの首を狙うには」
「ワシじゃ無力すぎる」

「はい…… と言っていいのでしょうか」

「否定しろバカ」


 本部以蔵と花田がひさしぶりに登場だ。
 ひさしぶりすぎて、花田のUP顔とアライJr.の見分けがつかない。
 やっと出てきたと思ったら、いきなり師弟漫才をはじめている。
 勇次郎の首を狙いにいって、みごと返り討ちにあった本部だけに、発言の重みがちがう。
 日本刀を装備しても無力だと、すでに証明までしている。
 実に負け犬発言がにあう。

 びみょうに花田の口調が丁寧に変化した。
 花田流柔術を開こうとして失敗し、本部のところに出もどった(と推測する)経験が花田の性格を変えたのだろうか。
 それとも、加藤との一戦で失った金玉の影響なのか。
 刃牙にかかわって、ずいぶんダイナミックに人生が変化したものだ。


「共に刃牙にブッ倒された者同士……」
「どーするよ兄貴……」


 イケメンの鎬兄弟も登場だ!
 ドイルのブレストファイヤーを喰らって鎬昂昇の顔面はキズだらけになっている。
 刃牙、屈指のイケメンなのにもったいない。
 そういえばもうひとりの美形である天内の生存情報はどうなっているのだろう。
 鎬昂昇の仕打ちを見るかぎり、とても悲惨な状況だと思いますが。

 とりあえず、鎬兄弟はすなおに刃牙を応援する気分ではないようだ。
 それとも、この発言は好意の裏返しだろうか。
 本当は応援する気まんまんだったりして。


 そして、刃牙の異母兄ジャックは猪狩から話を聞く。
 ベンチプレスのバーベルを宙にほうりなげるほどのショックをうけたらしい。
 痛みに耐えて身長を伸ばしたのに、本気で闘う機会がなかった。
 のんびりしているうちに、弟に先をこされてしまったようだ。

 思わずジャックは闘気をたぎらせ、空間をゆがませた。
 だが、すぐに落ちつきを取りもどす。
 猪狩に背を向け去ろうとするジャックだったが、やはり割り切れないものがあるようだ。

「認メロ……… ッテ言ウノカヨ」

 猪狩にすごんでも しかたがないと思うけど、なにやら怒っているようだ。
 勇次郎に対する憎しみは刃牙にもおとらない。
 先回りして勇次郎に喧嘩をうりそうないきおいだ。
 ところで、グラップラー刃牙の最終話にでてきたジェーン(ダイアン)はナニをしているんだ?


 宇宙が一回りしたような感じで、舞台は刃牙の落書きハウスにうつる。
 秘密基地で、刃牙と独歩が会談中だ。
 梢江にふられた直後だけに、松本別館では居心地が悪いのだろう。
 なにもない家だけど、梢江もいないのは得がたい長所である。

「なァ バキ…」
「俺らァ…」
「知り合ってどんぐらい経つ……」


 密度の濃いつきあいだが、実は一年未満だ。
 ただ、格闘者は一日三十時間の矛盾をこえることができるので、体感知り合い時間は十年相当かもしれない。

「なのに不思議なことが一つある」
「俺と君は」
「一度も戦っていない」


 グラップラー刃牙の第一話から、刃牙と独歩は接触していた。
 武神とよばれ、いつか刃牙と戦うのだろうと思われていた人だ。
 愚地克巳が登場する前までは、刃牙より独歩のほうが強いと思っていた。それぐらい強さに説得力がある。

 独歩が勇次郎に敗北してからは、刃牙とは闘わないような雰囲気になった。
 だが、改めてかんがえると、刃牙と独歩はちゃんと決着をつけるべきなのかもしれない。

 夢の対決が、次回最終回だというのに はじまろうとしている。
 というか、家の外には克巳・烈・加藤の若手三人衆と鎬兄弟が待ちかまえているかもしれない。
 勇次郎の前にはジャックとムリヤリ連れてこられた猪狩が出現している可能性がある。
 次回予告の雰囲気だと、やはり勇次郎戦の直前で終了になりそうだ。

 闘うと見せかけて、応援して終わる可能性もある。
 Jr.とひとつのベッドを共有している梢江が心のなかで刃牙を応援して終わるのかもしれない。
 いずれにしても、次回でおわる。
 次回がひとつの終わりなのだ。

 次回、バキ最終回ッ!!!
by とら


2005年11月24日(52号)
第2部 最終話(276話) 地球規模(656+4回)

 ついに最終回ッ! 次回からは新連載だッ!
 って、アレ?(カシャッ)
 チャンピオンの一ページ目、「バキ」本編よりはやく次回作「範馬刃牙 SON OF OGRE」の広告が入っているんですけど。


 敵地といえる刃牙の家で、独歩が宣戦布告だ。
 刃牙がティッシュをまきちらした家である。
 空気すら刃牙に汚染されていると考えてもいい。
 柳龍光の低酸素には負けるかもしれないが、立派な生物兵器になりうる。
 なるべくマスクをしたい環境だ。

 しかし、愚地独歩は後退のネジをはずした男だった。腐海の園でも逃げたりしない。
 刃牙が死ぬまえに勝負をしたいのだろう。
 勇次郎と闘ったら、刃牙が死ぬのは確定だ。
 独歩もアセるというものだ。

「「そうですね」と―――――」
「言うと同時に蹴りが跳ねてきそうだ」


 胡坐をかいていた独歩が片ヒザを立てている。はやくも臨戦態勢だった。
 刃牙は冷静だった。
 相手の目を見るだけではない。独歩の足元も確認している。
 勇次郎戦を前にして、神経が研ぎ澄まされているようだ。
 そんな刃牙だからこそ、梢江にあの態度なのか?

 刃牙にいわれて、独歩は足をあぐらにもどす。
 自然に体が反応していたのか。それとも、本気で狙っていたのか。
 独歩のことだから、スキあらば蹴りこむつもりだったのだろう。

 過去に独歩は 刃牙から不意打ちの金的を喰らわされた。
 無礼な少年の攻撃を武神はおぼえているハズだ。
「おや? 刃牙君はコッカケできなかったっけ?」
 とか、いいながら、ものすごい金的蹴りを打ちこむ予定があったと思われる。

「俺が武や強さを志す目的―――――」
「それはあなた達とは違う」
「俺は地上最強を目指しちゃいない」


 刃牙よ、オマエも昔はそんな子じゃなかったのに。
 まあ、またヤングチャンピオンでのSAGAを目指すとか言いださないだけマシか。
 大擂台賽で勇次郎に語ったように勇次郎にさえ勝てればイイそうだ。
 独歩経由で克巳に伝わったようで、烈海王と加藤があきれつつ感心しているようだ。


 19:50 ここは東京ドーム地下闘技場だ。
 19:51 独歩は渋川先生と観客席に座っている。他に観客の姿はない。今日は試合はないようだ。
 19:52 克巳・烈・加藤は出入り口ふきんに立っている。オレたちゃ若いから座ったりしないよグループだ。
 19:53 闘技場に一人たたずむ刃牙を克巳たちがみている。

 誰もいない空間をまえにして 刃牙は身構えている。
 刃牙の背中から真剣な気配がにじみでているようだ。
 本部と花田の師弟にくわえ、鎬兄弟も真剣に見守っている。

「イメージの具体化を待っている」


 ふむ、リアルシャドーですか。
 イメージがかたまるまでに4〜5分かかるらしい。
 なんでまた時間がかかるのだろう。見たことのないモノでも具現化するつもりか。
 出てくるのは宇宙人か、それとも雪男か!?

 19:57 ジャックと猪狩も参加していた。さりげなく仲良しな二人だ。
 ジャックは体がデカいから、猪狩がスカウトしているのかもしれない。
 大晦日に放送する格闘番組の隠し玉として2mを超える超巨人はインパクト十分だ。
 対戦相手はロシアから脱走した人間ヤモリ・シコルスキーだ!
 実力はともかく、一般への知名度が皆無なのがキビしい。

 19:58 ッ!
 19:59 他者ノ眼ニマデ イメージガ見エル


 刃牙よ、そこまでのレベルに達しやがったか!?
 自分の妄想に、他人をまきこみやがった!
 刃牙の前にある虚空に髪をたなびかせる姿が浮かび上がる。
 ここまできて夜叉猿だったらどうしよう。

 ちなみに、精神病は伝染するらしい。二人の間に伝染するのは「フォリアドゥ」というそうだ。
 今回はまきこまれた人がいっぱいだ。とにかく大変な事になっている。

(親父………)

 20:00 「イクぜ…」


 範馬勇次郎をイメージするのになんで十分もかかったのだろうか。
 でも、ちゃんと呼び出せてよかった。
 これで出てきたのが知念さんだったりしたら、みんながっかりする。
 むしろ、知っている人が誰もいないから、純粋にこまるだろう。
 もっとも、刃牙が知念さんを思い出すのに十分以上の時間が必要だろう。
 話の整合性だけは 取れるかもしれない。

「で、出たァ! って、あれ誰だよ、刃牙?」
「誰だろ?」
「出したお前が言うなッ」
「見えるよボウヤ」
「本当は妄想でしかない人のはずなのに『見える』とかしゃべっている!」
 ガビーン! 加藤と花田、緊急事態によりコンビ再結成、驚愕する。(ナレーター:古谷徹)
「あれはグラップラー刃牙156話にでてきた小林流の知念くんだな」
 ここで本部、驚異の引きで解説する。
 もちろん知念さんクラスなら、その間一秒で倒す。


『東アフリカ タンザニア連合共和国』
『セレンゲティ国立公園』


 場面はかわり、動物公園でライオンと対峙する男がいた。
 いわずと知れた範馬勇次郎である。
 両手をあげて、鬼の構えだ。
 国立公園のライオンなんだから、保護されているはずだ。しかし、範馬勇次郎はようしゃしない。
 もしかすると、国の指導者に要求する勇次郎・安全保障税が猛獣の献上なのかもしれない。

『日本との時差』
『実に』
『六時間!』

 14:00 「バキ」完


 地球の裏側にいる勇次郎が気配を感じてふりかえった。
 刃牙の妄想力は地球を半周して勇次郎に届いたのだ  刃牙の妄想力は地球規模だ!
 そして、完!
 なんじゃ、そりゃ〜〜〜ッ!?


 予想通りだけど、予想をこえた最終回だった。
 今の刃牙は手のほどこしようがないというか、手がつけられない。
 範馬ゾーン発動で、刃牙が止まらないって感じだ。
 その気になったら、空から美少女おとして刃牙ハウスで同居生活を営めるかもしれない。

 とりあえず、偉大な宗教家にも匹敵するといわれる範馬勇次郎の精神力に追いついたようだ。
 あとは肉体がついてくるかどうかが問題だ。
「バキ」は今週で終わりだけど、来週からは期待の新連載「範馬刃牙 SON OF OGRE」がはじまる。
 タイトルが変わるたびに、主人公の自己主張が激しくなる。
 苗字がついたということは、範馬一族を意識した展開になるのだろうか。
 ちなみにチャンピオンのアンケートには刃牙への質問がある。
[E]次号よりの新連載「範馬刃牙」に何を期待しますか?
(1)バキと勇次郎の最終決戦 (2)新たな敵とのバキの闘い
(3)今までの敵とのバキの闘い (4)勇次郎の鬼神のような強さ
 とりあえず、3/4の確率で刃牙は活躍できそうだ。
 勇次郎と闘う場合、活躍できない可能性もありますが。
 とりあえず、目の前にいる勇次郎・妄想体を倒さないことにははじまらない。というか、死ぬ。

 宇宙的な広がりをもつ範馬勇次郎の強さをイメージするのには時間がかかるようだ。
 それだけに妄想体であっても本気で強いだろう。
 きっと刃牙を倒したあとの勇次郎・妄想体は、独歩たちにおそいかかる。
 参加しなかった花山と千春の選択は正しかったのかもしれない。

 とにかく、刃牙が親父のライオン狩りに対抗意識を燃やさないか心配だ。
「親父がライオンを殺るなら、オレはこのデンジャラス・ライオンを殺る」
 そういって、加藤に襲いかかりかねない。


 花山以外にも、来ていない人たちがいる。
 たとえば、徳川のご老公が来ていない。
 重要な場面なのになにをしているのだろう。
 そもそも、地下闘技場の責任者なんだから、いないほうがおかしい。
 もしかすると、刃牙たちは不法侵入したのか?

 そして、当たり前のようにJr.と梢江がいない。
 なんでいないのかを想像するのはたやすい。
 だが、想像するのは不愉快だ。
 わたしはJr.と梢江のファイトを見るため、刃牙シリーズに14年間を費やしたワケではない。
 帰るッッ!

 死刑囚が一人も出てきていないし、ガイアもいない。
 彼らはいまなにをやっているのだろう。
 克巳も烈も、ドイルのことは忘れてしまったのか。
 オリバにつかまったことを知らない可能性はある。
 無事、海外に逃げ出して手品師として人生をやり直していると思っているのかもしれない。

 わきに置いたままの荷物は多いが、最終決戦へむけて「バキ」は終了する。
 次回作「範馬刃牙」に大注目だ!


 なお、「グラップラー刃牙」から「バキ」そして「範馬刃牙」と名前の表記が微妙に変わっている。
 最初「刃牙」って命名したけど、名前に使えない漢字だと知ったので表記を「バキ」に変更する。
 でも、2004年に「牙」も名前に使えるようになった(参考:日記(04/6/13))。
 そこで、改めて「範馬刃牙」と漢字表記にした。
 という事情があるのかもしれない。

 現実のほうが漫画にあわせようとする不自然主義な妄想力で、新連載も超絶バトルだろう。
 第一話で、勇次郎・妄想体に全員ブチのめされていたら、ちょっと笑ってしまうかもしれない。
by とら


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