今週のバキ241話〜250話

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2005年2月24日(13号)
第2部 第241話 原点 (621+4回)

 新章突入ッ!
 名付けて『刃牙が勇次郎と闘うことを決意したから最終決戦に向かうと見せかけて今まで未消化だったキャラクター相手に修行するんじゃないかと予想している編』だッ!

 帰国した刃牙は早くも日常に戻っていた。
 学校は普通にサボっているのだろう。日の昇らないうちから、ロードワークだ。
 そして、走って走って富士山に到着する。
 やっぱり、学校行く気、微塵もねェ。
 それでこそ、範馬刃牙だ。

 おそらく、昼は梢江とガチで闘い、夜はトレーニングしているのだろう。
 昼と夜のメニューを入れ替えたほうが健康的だ。
 しかし、不自然を貫くもの範馬刃牙の特徴である。

 富士の樹海には、刃牙が「長老」と呼ぶ大木がある。
 まさか、このタイミングで長期回想に入るつもりか?
 剛体術を身につけ、鎬紅葉を撃破したあともここへ来た。
 刃牙は勇次郎との決戦が近いと思いはじめると、この場所で回想するクセでもあるのだろうか。

「タフだなァ」
「最初から最後まで」
「俺のペースについてきた」
「なんの用だい」


 回想への移動は阻止された。謎の追跡者がいたのだ。
 それも東京〜富士山麓の間を尾行している。すごくタフで、同時にヒマ人だ。
 富士の樹海で武術家2人……………、遭難でしょうか?

 つけられていると知りながら、刃牙は放置していたようだ。
 それなりに神聖な場所である長老の前で喧嘩をするとは思えない。
 闘う場所を選んでいたのではなく、走って逃げ出すつもりだったようだ。

 最大の防御行動は、走って逃げることだ。
 刃牙クラスの運動能力を持っていれば、相手が乗り物を使用しないかぎり、逃げ切れるだろう。
 ただし、体力測定のように刃牙が負荷をイメージしてしまったら、逃げられない。
 梢江をかかえて、柳とシコルの前から逃亡したときに、負荷をイメージすればよかったのに。

 ただ、今回は相手も凄玉だった。
 背後にいたのはモハメド・アライ・Jr.である。
 予想外の人物だったので、刃牙もおどろいている。

 大擂台賽では、チームメイトとして微妙な距離感のまま一緒に闘った。
 ふたりとも偉大な父を持ち、団体戦では相手を瞬殺した。
 いろいろと共通点はあるのだが、不思議とまともに会話もしていない。
 だが、世間話をするために樹海まで追いかけてきたのでは無いだろう。
 格闘士による対話………拳を交えるつもりだ。

 この樹海こそ、刃牙にとっての原点だと、Jrは周囲を見る。
 まるでトレーニングの痕跡に刃牙の戦闘スタイルを読み取ろうとしているかのようだ。
 夜叉猿との闘いで飛躍的に強くなった刃牙の原点は、森の中にあるらしい。

 Jrはジャブで、刃牙のサンドバックを打つ。
 使い込まれてボロボロになったサンドバックだ。
 打たれたようだったが、まったく動いていない。拳は外れたのか?
 だが、Jrが振り向くと同時にサンドバックは裂けて中身をぶちまけた。
 宙に舞う紙すら斬る日本刀のように、すっぱりと切断したのだろう。
 速さ・正確さ・威力を併せ持たないとできない攻撃だ。

「君ト対決シタイ」

 やはり、刃牙に挑戦する気だったようだ。
 相手にとって大切なトレーニング場と理解したうえで、器具を破壊したのだ。ひどい挑発といえる。
 どうも、情け無用の勝負が所望らしい。

 完成したアライ流拳法を試そうにも、大擂台賽では相手に恵まれず、本気を出せずにいた。
 そこで、アライ流の落成記念のイケニエとして範馬刃牙を選んだのだろう。
 勇次郎には勝てないと分かったから、せめてその息子を殴りたい。

「断る」


 こ、断られたァ〜〜〜〜〜〜ッッッ!
 あまりのショックで、神心会が激震しそうだ。
 なにを言っているんだ、この人は?
 160話で、バーリトゥードのチャンピオン・デイブが「ミスターに相手をしてもらえるなんて」「一生に何度あると思ってるんだ」と言っている。
 そんなミスター・モハメド・アライ・Jr.の誘いを断るなんて、どうかしている。

 刃牙は、もう勇次郎以外とは戦わないらしい。
 完全に照準を範馬勇次郎にしぼっている。
 ただ根本的な問題として、狙うところはソコでいいのか大いに疑問です。

 戦ってもらえないと知って「誰カナ ソノ幸運ナ者ハ」とJrがいう。
 なんか、自分に惚れていると思っていた男にふられた美女みたいなセリフになっている。
 なれない目にあって動揺しているのだろう。本当だったら、向こうから戦ってくれとお願いに来るような人だし。

「殺サレル」

 刃牙が勇次郎と闘うと聞いて思わずツッコむ。
 ナイス・ツッコミだッ! 読者の気持ちを見事に代弁してくれた。
 今度こそ、マジに死にますよ? 大丈夫ですか?

「勝つからヤル」
「負けるからヤラない」
「そういう闘いじゃない」
「誰が強いとか弱いとか――――」
「もうそんなことには興味がないんだ」


 刃牙もずいぶん変化した。
 最大トーナメントのころは、「大の男2人並べて」「さァ どっちが強ええんだ?」というのが好きだった。
 色を知って、闘いのことはどうでも良くなったのだろうか。

 最近の刃牙は、勇次郎に対しても対応がやわらかい。
 狂気ともいえた敵愾心が消えている。
 母という最愛の人を失った痛みは、別の女性を得ることで小さくなったのだろうか。

 範馬勇次郎を素手で殺すというのは、復讐であっても自己満足に近い。
 倒しても、母親が生き返らない。殺すだけなら、素手にこだわる必要は無い。
 目的も手段も、悪く言えば自己満足だ。
 そう考えると、人間として良い方向に変化したのかもしれない。

 だが、Jrはおさまらない。
 普段モテモテだっただけに、冷たい態度が新鮮+ムカついて、絶対振り向かせてやる! と言うお嬢さんみたいだ。
 実は、ベタ惚れ状態のラブコメ漫画ですな。

(君ハ僕ト闘ウコトニナル)
(シカモ―――――)
(君ノ方カラ望ンデ)


 ほら、もう略奪愛状態になっていますよ。
 今後、Jrの甘く危険な罠が 刃牙を愛欲地獄へといざなうのだろう。
 範馬勇次郎すら手玉に取った高等戦術の持ち主が本気になったのだ、ただでは済まない。

 Jrの行動は早かった。
 恐るべき攻撃を放ったのだ。
 松本梢江の携帯電話に連絡を入れるッ!
 この電話が地獄(読者にとって)の幕開けとなるか!
 次回はSAGAな予感がする……。


 ところで、Jrは樹海に置き去りにされている。
 160話で迷子になっていた実績があるし、そのまま迷子になっていそうだ。
 梢江への電話は助けを求めるものだったりして。

 それにしても、梢江の電話番号をいつ調べたのだろうか?
 182話で梢江に抱きついたとき、抜き取っていたのかもしれない。
 梢江もJrにもらった人形を大事に取っているようだ。Jrには好感を持っているのだろう。
 互いに憎からず思っているふたりが、樹海で遭難するのだ。これは大変なことが起きるだろう。

 古い話だが、73話で、刃牙は強くなるためにフラれなくてはならないと書いたことがある。
 まさに、今がその時だ。このチャンスしかない。
 刃牙がもう一度暗黒面に落ちるためには、この試練が必要なのだ。
 というわけで、刃牙がフラれることを希望する。
 まあ、すでに取り返しのつかない事態は起きてしまった。もう手遅れだ。
 だから、強く推奨はしない。


 アライ流と範馬の因縁は親の代からはじまる。
 そして、168話「世界中にバラまかれた俺の種」「ガキ供と い〜〜〜〜〜い親友(ダチ)になりそうだぜ」と、勇次郎は発言した。
 つまり、範馬とアライの息子たちは闘う宿命を背負っているのだ。

 本当なら、それがJrと範海王の試合で実現したのかもしれない。
 しかし、範海王はたまたま偶然「範」の字が入っているだけの拳法家で弱かった。
 ここで範馬代表の真打として、刃牙が登場する。

 親の代からの因縁である。
 よく考えれば、こういう所で活躍しないで、なんのための主人公か。
 ただ、まだジャック範馬がいるので、話が消える可能性はある。

 因縁の二世対決は、本当なら刃牙と郭春成の試合で見ることができたのかもしれない。
 しかし、不発に終わった。
 二試合分の不発は、この闘いに向けての序章でしかなかったのだ! たぶん。
 そんなわけで、刃牙 対 アライJr編は楽しみだ。


 刃牙は勇次郎と闘うことを決意した。
 しかし、その前にいくつか片付いていない課題がある。
 復活したジャック範馬とその母・ジェーンの存在が第一だ。
 また、オリバと範馬一族の闘いも行われていない。個人的に「オリバ vs. ジャック」はぜひ実現して欲しい。
 日本へやってきた烈がどうなるのかも気になる。死刑囚たちのその後も不明のままだ。

 これらの諸問題のうち、最低でもジャック関連の話は片付けるのではないだろうか。

 しかし、梢江の身に危険(?)が迫っているというのに、まったく心配にならないのはどういうことだろう?
 SAGA連載直前は、あれほど心配だったというのに……
by とら


2005年3月3日(14号)
第2部 第242話 一番 (622+4回)

「僕ト結婚シテ欲シイ」

 Jr.が松本梢江に、前代未聞の戦線布告だッ!
 刃牙との闘いに、梢江を利用するためだろうか。
 それにしては、リスクが高すぎる。明日を見ていないのか?
 うっかり、本当に結婚しちゃったら、取り返しがつかないぞ。

 刃牙と闘うためのプロポーズなのか。梢江と結婚するために刃牙と闘うのか。
 もしかすると、その両方なのかもしれない。
 Jr.の行動はまだ謎のままだ。相手が梢江というところが、すでに謎だ。
 とりあえず、梢江は置いておく。できれば忘れたい。


 話かわって、Jr.は刃牙との闘いに備えてなのか、実力者との闘いを控えていた。
 強敵を前にして、過酷なトレーニングを積む。まるで物語の主人公のような行動だ。

 アライ流拳法が完成したとはいえ、実戦経験が足りない。
 本人もそうだが、流派としての歴史が浅い
 試合だけではなく、あらゆる場面・状況で戦えないと武術として不備だ。

 前回、Jr.は樹海で刃牙に闘いを挑んだ。
 しかし、起伏にとみ木の根などが出ているあの場では、アライ流のフットワークが使えないだろう。
 狭いところで闘うときはどうするのか? 船上で闘うときはどうするのか?
 アライ流に対処方法はあるのだろうか。

 そういう訳で、Jr.はより多くの経験をしたいのだろう。
 刃牙は17歳の若さではあるが、百戦錬磨の戦士だ。
 野試合での機微も知り尽くしている。油断はできない。

 夜の公園で武術家2人…………、勝負でしょう。

「バキ ハンマ ガ………」
「アナタヲ尊敬シテイルト聞キマシタ」
「ワタシト闘ッテクダサイ」

「いいものですな…」
「若いということは…」


 合気柔術の達人・渋川剛気が登場だ!
 とんでもない人が参戦した。
 武術だけに限れば、刃牙世界で一二を争う現役の達人である。
 技の第一人者と闘い、技術をさらに磨くつもりだろうか。

 オリバや花山と闘っても、とりあえず筋肉つけなさいって話になるだろう。
 その点、達人・渋川であれば、技術的なヒントをつかめるかもしれない。
 同じ達人系でも打撃の独歩ではなく、投げの渋川を選んだのは組技対策だろうか?

 解説の達人・本部以蔵は、加藤と花田に対して次のように言ったことがある。
「2人ともあの渋川剛気という男をよーく見ておけ」
「結果がどうなるにしろ見て絶対損はないワ……」
(グラップラー刃牙 25巻 第219話)
 さりげなく、失礼で未来予想ができていないところが、本部以蔵の真骨頂だ。
 一回戦敗退・アクシデントによる負傷欠場・参加資格無しの三人が雁首そろえて、なにを言っているんだか。

 大擂台賽の一回戦で刃牙は柔の技を使った
 Jr.はそこで柔に興味を持って、刃牙に質問をしたのかもしれない。

 そこでうっかり本部の名前を出していれば、Jr.は本部に試合を申し込んでいたところだ。
 路上の本部は怖い。日本刀とか平気で持ち出してくる。
 渋川先生を紹介していて、本当に良かったと思う。

「始めましょうか」

 上着は脱ぎかけ、下駄は履いたままという不利な状況のまま、渋川剛気が言う。
 無防備な状態につけこめるものなら、つけこんで見せい、という自があるのだろう。
 一見スキがありそうだが、たぶん罠だ。
 渋川剛気と言う男は一筋縄ではいかない。

 強敵がいるとき、渋川剛気には荒海が見えたりする。
 今回はそういうことが無かったようだ。Jr.はチョロイ相手なのかもしれない。
 それとも、門の幻想は範馬一族にしか反応しないのだろうか。

 拳で闘う立ち技の芸術ともいえるアライ流と、やはり芸術的な投げ技を持つ渋川柔術の対決だ。
 お互い、蹴り技は無い。連撃必倒のボクシングと、一触即投の渋川柔術だ。
 間合いの探り合いから、接触するまでに緊張がともなう試合になりそうだ。


 さて、じゃあここからは松本さんの話に戻ろうか。
 ここから先は、松本梢江一色なので覚悟の足りない人は帰ってください。

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 OK、リングに上がる曙なみの覚悟を確かに見せてもらったッ!


 Jr.と梢江の密会は、とあるファミリーレストランで行われた。
 大豪邸に住んでいるアライ家の人にしては、安い。
 梢江に合わせたのだろうか?

 なぜか、そっぽ向きながら刃牙と闘うとJr.は宣言する。
 この角度が一番キマっているのだろうか。戦う男の横顔に彼女もメロメロだ。
 呼び出しておいて「アンタの彼氏たおします」と言うのも変な話だ。
 視線をあわせにくい話題だから、横を向いているのかもしれない。

 刃牙とJr.が闘うといわれて、梢江も動揺する。
 それでも、ちゃんと紅茶にレモンを入れている。やはり気丈なのかもしれない。
 ただ、レモンを入れっぱなしなので、動揺しているのは確かなようだ。

 もしかしたら、紅茶をJr.にブッかけて攻撃をするつもりなのかもしれない。
 刃牙の敵は自分の敵だ。
 烈海王にすら容赦の無い拳を打ちこんだ松本梢江なのだ。相手がJr.だろうと恐れはしない。
 目潰し効果を高めるために、酸味のあるレモンを入れたのか。
 レモンティーを注文した時点から戦いは始まっていた!

「僕ニトッテ君ガ大切ナ人ダカラ」

 ここにきて、Jr.が衝撃の告白をする。
 初対面からJr.と梢江の間には、恋の予感があった。
 大切な人形だってプレゼントしている。
 どうも、一目ぼれだったようだ。とても、信じられないのだけど。

 Jr.の告白を聞いて梢江は紅茶を「…………飲まないで置いちゃった…」とボケる。
 ここに来てドジっ娘の要素まで加えやがった。
 飽くなき萌えへの執念だ。
 この執念が毒を裏返すという奇跡を生み出したのだろう。
 まさか、Jr.が狙っているのは裏返しなのか!?

 刃牙が驚愕のパワーアップをしたところをJr.も見ていたはずだ。
 Jr.も裏返って強くなろうと考えているのかもしれない。
 でも、サイヤ人なみの超回復力を持っていないと、裏返っても強くなれない。

「僕ト結婚シテ欲シイ」

「僕ノ知ル一番美シイ女性ガ君ダカラ」


 容赦なくJr.は賛辞を叩き込む。
 このへんは、ボクシングで鍛えたチャンスでの連打を応用したものだろう。
 弱みを見せた敵に容赦するな! ダメージを与えろ!

「いや いや いや いや いや」
「ノー ノー ノー」


 あわてて梢江は否定する。
 この否定っぷりがすごい。
 言葉じゃなくて、顔面で否定しているのだ。
 さすがに、いくらなんでも、この顔はヒロインとして問題あるでしょ。
 そんな感じで、説得力があふれている。あまり、まっすぐ見たくない。
 千の言葉より雄弁に、梢江自身を見せつけてアピールしているのだった。

 女性の目的とは「ナンバーワン ノ男ニ出遭ウコトデス」とJr.は言う。
 つまり、刃牙と自分の梢江ランキングを決めてくれと言うわけだ。
 選択肢が刃牙とJr.の二択で賞品が松本梢江、という鉄壁の布陣だ。
 まあ、我が事じゃなくて良かったな……。ホントに良かった……。

 今週の松本梢江嬢は表情・仕草ともに可憐すぎて、早くも2005年分を使い切った気分だ。
 今後1コマでも梢江が登場したら、ゲロりそうだ。
 もう、ムリ。マックシング。裏返らせて(梢江を)。


 Jr.は本気でプロポーズしたのだろうか。
 したんだろうな、たぶん。
 あの人は、基本的にイイ人っぽい。刃牙と闘うための策略では無いと思われる。

 本気だとすると、Jr.はやはりイイ人だ。
 刃牙は地上最強の生物・勇次郎と戦おうとしている。
 放っておけば、勝手に死ぬ確率が高い。
 ならば、恋人を失って傷心状態の梢江をなぐさめつつゲットする、愛の黄金律作戦が期待できる。

 そういう外道な手段をとらないところが、Jr.の善人ぶりを示している。
 もっとも、闘士としてのプライドが正面からの戦いを選択したのかもしれない。

「祈リトハ」「出来ソウモ ナイコトヲ願ウ ムシノイイ心根デハナイ」「必ズ実現サセルト誓ウ決意」

 と182話で言っていた。
 自分の実力で掴み取ることが、Jr.にとっての幸福なのだろう。


 刃牙も梢江もお互い以外につきあった異性はいないようだ。
 ここで初めて比較の対象となるライバルが出現した。
 刃牙のデート内容は、「飯を食う」しか無かった。
 これに対し、洗練された大人の魅力でJr.が迫れば、男に対して免疫の無い梢江はコロっと行くかもしれない。
 範馬刃牙は、とんだところで最大のピンチをむかえている。


 しかし、松本嬢を世界で一番美しいと断言する美的感覚はどこで受信したのだろうか。
 神のごとき視力を持つ人だから、眼が悪いハズがない。
 もしかすると、眼が良すぎるのがマズイのだろうか。
 顕微鏡や望遠鏡などは、物を拡大して見るが視野は狭くなる。
 つまり、視力はいいのだが、視野が狭いのかもしれない

 それと、眼がいいだけに常人とは違うポイントで欲情しているのかも。
 たとえば、小鼻の汚れ具合に萌えポイントがあるとか。
 なんにしても、神の子の考えは分からない。

 もしかすると、松本嬢は強烈なフェロモンをまき散らす体質なのかもしれない。
 私見だが、あの人 強烈な体臭もっていそうだし。
by とら


2005年3月10日(15号)
第2部 第243話 柔術と拳闘(ボクシング) (623+4回)

 合気柔術・渋川剛気 vs. トータル ボクシング モハメド・アライ・Jr.
 伝説の達人と、伝説的ボクサーの息子が対決するドリームマッチだ。
 野試合で済ますのが惜しい名勝負だ。解説の本部と驚き役の加藤を急いで連れてこい。

 西洋と東洋の格闘技が対決する。動と静の対比が出ている。
 その場でジャンプして、ステップを刻む動のJr.に対し、渋川先生は静かに上着を脱ぐ。
 服装も渋川先生は下駄に着物と純和風だ。となると、下着はふんどしか?

「いかがされた」
「お若いヒト」
「もう…」
「始まってまっせ」


 年長の余裕だろうか、渋川先生が声をかける。
 向かい合った瞬間から始まっているのだから、上着を脱ぐスキを見逃すべきではなかったそう言いたいのだろうか。
 目玉・金玉をえぐりあうような闘いをしてきた達人から見れば、Jr.は甘い。
 相手の弱みを見つけたら、躊躇せずに攻める非情さも必要なのだ。

 そして、そういう闘いをしてきた達人が、敵の目前で上着を脱いだのは誘いだったのか。
 あえてスキを見せて相手があわてて攻撃をしてくれば、返り討ちにするつもりだったのだろう。
 後の先を狙った高度な戦術がすでに始まっている。

 両者の間合いはまだ遠い。二メートルぐらいある。普通の打撃なら届かない距離だ。
 これだけ離れていれば、油断していても不意を突かれないはずだ。
 しかし、渋川剛気にスキは無い。
 この人は長距離射程を有するボクサーとも闘ったことがあるのだろうか?

「常識的に不可能事と思われることが実行され、考えられないことが実際に行われる」のが奇襲の一例だ。(岩島久夫「奇襲の研究 情報と戦略のメカニズム」)
 相手の攻撃が届くはずがないと言う先入観が、奇襲を生む。
 しかし、慎重な渋川剛気はこの距離でも油断しないのだ。

 一方、Jr.は動けなかった。
 相手は小柄な老人だが、まるでライオンと向かい合っているような圧力を感じている。
 老いてなお獅子のごとき気迫を出すとは、さすが達人だ。
 松本梢江をあいてに一歩も引かなかったJr.であっても、猛獣の口の中に手を入れる勇気は無いらしい。

 いきなり下駄が飛んできた。
 遠い間合いも物を投げれば問題解決だ。油断もスキも見逃さない渋川先生の容赦ない攻撃である。
 だが、Jr.も天才的な見切りを持つ男だ。目前にせまる下駄も軽くかわす。
 だが、かわした先に今度は眼鏡が飛んでいた。
 飛び道具の見事なワン・ツーだ。さすがの神の子Jr.も、眼鏡をよけられなかった。

 眼鏡が当たったダメージは ほとんど無い。
 しかし、それ以上にマズかったのは、相手への注意をそらしたことだった。
 右手首を渋川剛気につかまれていた。
 つかんだ渋川はとびっきりの凶悪な笑顔を見せている。
 シワの数だけ修羅場を見ているようなジャパニーズ妖怪だ。

 ドシャアァ

 いきなり投げられ、顔から落ちた。
 体勢を崩す動作もないまま、投げられて顔で逆立ちしている。
 Jr.が登場して以来、ここまで無様な姿をさらしたのは初めてだ。

 グリッ

 今度は手首をひねる。
 痛みにJr.が悲鳴を上げた。同時に体も上がっていた。
 立ち上がった勢いで宙に浮くほどだ。
 浮いているから、踏ん張れない。つまり、投げたい放題の状態だ。

 当然、ブン投げる!
 実戦の場であっても型稽古のように美しいフォームだ。
 達人・渋川の動きには一部のムダも無い。

 Jr.は背中から地面に落ちる。
 だが、すばやく立ち上がった。
 立った状態で拳を使うのがアライ流だ。倒されたり、寝技につきあうのは、本来なら厳禁のはずだ。
 すばやく立ち上がったのは、倒された状況を想定した修行の成果だろう。
 総合格闘技としてのアライ流は、ちゃんと完成しているようだ。

(関節ノ構造ト言ウヨリ――――
 人体ノ持ツ反射ニ ツケコムヨウナ…)


 西洋の科学では理解しきれない、東洋の神秘だ。
 レスリングとは違う、初体験の技にJr.もとまどっている。
 相手が本部や花田だったら、「レスリングに似た技術だ」ですんでいたかもしれない。
 しかし、筋肉魔人オリバも調伏した達人が相手なのだ。
 神秘の技をすぐに理解できるワケがない。

(ソレデモナオ)
(コノ勝負ッッ マルデ敗(ま)ケル気ガシナイ!!)

 でも、Jr.は自信マンマンだった
 この確信はどこから湧き出るのだろう。
 さすが、松本梢江にプロポーズした人は脳のできがちがう。
 めくらヘビを恐れずの精神で突撃するつもりでしょうか。梢江に。

 Jr.の態度に何かを感じたのか、達人がはじめて構える。
 自然体でいることが多い渋川先生が、構えたと言うことは、強敵と判断したのだろう。
 やはり、グレートはグレートを知ると言うことか。
 当然、Jr.は本部とかを知らないだろうし、渋川先生は一回戦敗退海王たちを知らない。

「拳闘の歴史」
「たかだか100年………」
「短ェ短ェ」


 相手を強敵と認めても強気なのが、渋川剛気だ。
 歴史を持ち出すあたりは、ちょっと烈海王みたいだ。
 さすがに4000年には勝てないと思うが、日本の柔術だって歴史が長い。

 歴史の差を持ち出されても、Jr.はひるまない。
 ロングレンジから一気に踏み込み、左を一閃するッ!
 全格闘技で最速の打撃といわれるボクシングのジャブに、するどい踏み込みを加えている。
 速度・威力・射程距離の全てがすごい。
 この最速の一撃、当たるのか? 次号へつづく!


 立ち合いの初めから達人っぷりが炸裂だ。
 たまたま履いていた下駄や、ベッコウのいいところを使った眼鏡も武器にするクセモノぶりを発揮している。
 完成して間もないアライ流の甘さを突いている。
 これなら本格的な打撃戦になっても対処できそうだ。

 しかし、自信ありげなJr.の態度が気になる。
 蹴りのほうが長い間合いだからパンチに負けないと豪語していた人みたいに、自信だけあっても勝てない。
 だが、パンチのみ特化した技術は奥深い。芸術にまで高められた突き技の妙技が炸裂しそうだ。
 ただ、捕まらなければ勝てるなんて楽観的に考えていたら、Jr.もダメな人と同類だ。

 一方の達人は、「先の先」でJr.を翻弄した。
 今度は「後の先」でJr.の必殺ジャブを止めるのだろうか。

 Jr.が渋川流を投げだけの流派だと思っていれば甘い。
 対独歩戦で見せたように、達人は当て身も多用する。
 打撃戦だって、望むところなのかもしれない。


 ところで、梢江方面の話はどうなっているんだろう。
 刃牙に「Jr.にプロポーズされた」と、梢江は話したのだろうか。
 とりあえず級友に「いや〜、アタシ外人にプロポーズされちゃったのよ。わしゃしゃしゃっ」と自慢しているかもしれない。

 刃牙の反応は、想像できない。
 梢江をめぐって勝負するのだろうか?
 いまの刃牙は勇次郎以外とは闘う気が無いらしいから、梢江をかけられても動かない気がする。
「あ、そう」で済ませて、神心会の女子部・井上さんを口説きにいくかもしれない。
 このバカップルには良いイメージがわいてこないなぁ。

 日本へ帰ってきた烈と寂も気になる。
 せっかく帰ってきたんだし話に絡むのではないだろうか。
 Jr.の次の標的が烈になる可能性は高い。
 烈をめぐり、独歩・克巳の神心会と寂の空拳道が対立し、そのスキマでJr.が暗躍しそうだ。

 どちらにしても、刃牙の出番が思いつかない。
 せいぜい、梢江といちゃつくぐらいだろう。
 こっそり勇次郎に勝負を仕掛けて、ひっそりと負けていたりして。
by とら


2005年3月17日(16号)
第2部 第244話 ハンドスピード (624+4回)

 突然だが、アライ父の話だ。
 現役時代のアライは、モーションを起こしてからヒットまで0.11秒という超高速パンチを誇っていた。
 この速度を超えるボクサーはおろか、スポーツマンすらいないと言われる速度だ。
 脳から筋肉へ下される指令の伝達速度を超えている

 ボクサー系の人がいう「ジャブより速い!」は現実的なセリフだったのだ。
 人間の理解しうる速度の限界ギリギリにある攻撃がジャブだ。言い換えれば、メーター振り切る寸前だ。
 その先は、どんなに速くても測定できない。人間の目だって、紫外線や赤外線は見えない。だから、見える色を基準にして「紫より外の色」「赤より外の色」と言うしかない。
 だからボクサーは、ギリギリ理解できる速度を基準にして「ジャブより速い」と言うしかないのだ。

 安い体重計なら100Kg超えたら後はいっしょ。
 小錦も曙も朝青龍も高見盛も全部いっしょだ。こいつ、舞の海より重いッ!


 ジャブより速いパンチに、アライ父の偉大さを再確認するジャーナリストだった。
 162話から、ほぼ一年ぶりの登場だ。
 作中時間はどれだけ過ぎているのか分からない。
 そもそも、アライ父とジャーナリストが、刃牙たちと同一時間軸にいるという保障もない。
 彼らだけ数ヶ月前の回想世界にいるのかもしれない。

 ジャーナリストは、特大画面のテレビで往年のアライを見て大喜びしている。
 取材のことは忘れて憧れのボクサーとの交遊を楽しんでいるようだ。
 しかも、ジャーナリストのほうがリモコン持っちゃって完全に主導権を握っている。
 この客、態度デケーな。

「はたして我々は出遭えるのでしょうか」
「あなたを超えるボクサーに」


 ジャーナリストはやや悲しげに言う。
 人は老いて死んでいく。かつて最強だった人も、年をとれば弱くなる。
 自分たちの命があるうちに、ハイレベルなボクサーが出現するのだろうか。
 過去が輝いていただけに、現在がチトさびしい。

 ジャーナリストはアライを崇拝しているようだが、それ以上に純粋なボクシングファンなのだろう。
 だから、アライを尊敬しつつも、客観的に分析できる。
 なにが何でも、アライが一番じゃないと許せないと言い張る信者ではなく、公平に世界を見ているのだ。
 さすが、「優秀なる」と称されるジャーナリストだ。

「光の下には…………いない」

「あの子は…」
「わたしよりも迅(はや)い」


 Jr.の拳速は171話で、勇次郎が「父親よりも迅(はや)い」と認めていた。
 総合格闘であるアライ流の強さは、最速の拳が基本にあるのだろう。

 ここで気になるのは「光の下には…………いない」というセリフだ。
 160話の会話でもわかるように、Jr.はボクシングに限らず公式の試合に出場していない。
 そうなると、非公式の闇試合などに出場しているのだろうか?

 親の財産があるから生活の心配をしないで、格闘一筋の生活なのだろう。
 格闘技に限らずスポーツをやる人にとって、生活費を稼ぎつつ 日々トレーニングして 試合に出るのは難しい。
 働けば、トレーニングの時間をとられるし、試合に出るため時には休まなくてはならない。

 ところが、Jr.は体の素質だけではなく、金銭面でも恵まれている。
 働かなくてもいいし、賞金を目指してムリな試合をしなくてもいい。
 生活全てを武術に費やすことができる。
 その恵まれた環境で育てた技術を公開しないのは、かなりもったいない。

 そして、この辺がアライ流の弱点だ。
 アライ流には普遍性がない。最速の拳や、神眼の見切りなど、天才を条件に成立している部分が多すぎる。
 だれでも学べる武術ではない。

 女子供でも暴力に対抗できると言うものが武術であるなら、アライ流は武術ではない。
 アライ流を光の下に出さないのは、富や名誉に興味がないこともあるのだろう。(すでに持っているのだから)
 しかし、それ以上に誰にも伝授することのできない技術だから、公開する意味が無いのかもしれない。
 個人的なワガママにより誕生した突然変異的な武術なのだ。
 常人にはたどり着けないと言う意味では、勇次郎と同じ存在だ。

 そして、だからこそ、強い子を得るため嫁取りが重要なのだろう。


「この渋川に情をかけるかァッッ」

 日本では達人がいきなりピンチだった。
 Jr.のジャブは渋川先生のアゴにふれた位置で止まっていた。
 渋川先生の手はJr.の腕をつかみかけているところだ。
 止めたから、つかみかけたのか?
 止めたから、最後までつかまなかったのか?

 いずれにしても、寸止めでなければ、アゴを打ち抜かれていたかもしれない。
 しかし、達人としては「寸止め」を情と感じ怒りを見せている。
 手を抜かれるほど、老いてはいない。

「徒(いたずら)ニ傷付ケル愚ヲ避ケタカッタノデス」

 Jr.は余裕だった。
 前回、投げられて頬にあとが残っているが、自信満々だ。

「タダ…」
「アナタハ偉大ナ武術家(マーシャルアーチスト)
「情ヲカケル無礼ハ」
「許サレナイ……」

 ブン

 拳が触れた状態から、さらに突き込んだ!
 これは寸勁か?

 ヒジは伸びきっていた。つまり、腕の力はほとんど使っていない。
 後ろ足は蹴りこみ、前足は踏み込みを止めている。
 前足を軸にして後ろ足が生んだ力を腕に伝えているのだろう。
 そして、肩を押し込み、ヒットの瞬間に拳を約90度ねじっている。

 寸勁とコークスクリュー・ブローを合わせたアライ流の必殺技か!?
 Jr.がわざわざ中国に行ったのは本場の寸勁を見たかったのだろうか。
 今まで使っていなかっただけで、凄い技を開発していやがった。

(いい歳ぶっこいて―――――
 なんの危機感も持たず)
(立ち合ってしまうワケだ……)
(なんたってこの小僧……)
(こんなに優しく やっつけてくれるんだもの……)


 達人は優しさに包まれながら敗北する。
 脳は揺れている。やっつけられた自覚もある。これは、もう立ち上がれない。
 倒れる達人を受け止めたJr.に「油断大敵じゃ!」と襲いかかったりもしないだろう。

 Jr.の優しさもクセモノだ。
 イヤなことに抵抗するのは簡単だ。痛い目にあいたくない、負けたくないと思えば簡単には倒れない。
 ところが、Jr.は倒されてもいいやと思わせているのだ。
 これが進化すると、倒されたいと思うようになるかもしれない。

 勇次郎は肉食獣がエサを喰うように相手を倒す。エサには絶対的な強者に食われるという恍惚があるらしい。
 そして、Jr.も敵に恍惚を与えて倒しているようだ。
 危機を感じ取る達人センサーすら無効にする。これぞ『アライ流・有情拳』だ。
 アミバにゃ百年たってもマネできまい。


 今回の闘いは、達人にとって相性が悪かった。
 グラップラー刃牙312話で、独歩の菩薩拳を喰らった達人は次のように言う。
『敵意 殺意を持つ技ならいかに速かろうが ものの数ではないが』
 つまり、打撃の半分が優しさでできている有情拳だと反応できないのだ。

 達人は、連打の中から敵が真に倒そうと思っている打撃を見分けるのが上手い。
 つまり、フェイントに強い。
 ところが、Jr.は単発攻撃でフェイントを入れなかった。
 達人の得意分野はいかせなかった。

 そして、触れた状態から打つ、寸勁だ。
 グラップラー刃牙337話で達人は、合気対策でゆっくりと動いたジャックに苦戦している。
 力を入れている時間が一瞬しかなく、それまでは動いてすらいない寸勁は、合気にとって天敵といえるだろう。

 三重に苦手とする技術とぶつかってしまったのだ。
 これではさすがの達人もつらい。
「チャンピオン本誌」と「チャンピオンRED」と「イブニング」で同時にバキSAGAが始まるようなものだ。
 こんなことされたら、感想書くほうもお手上げだ。


 意外な必殺技をJr.は見せた。
 そうなると、今度こそ本場の寸勁と勝負するのだろうか。
 次回は、烈海王と闘いそうな予感がする。

 というわけで、次回をお楽しみに!



 え、ハイ。梢江ね。

 最後の二ページにオマケで馬鹿ップルSAGAがのっていた。
 梢江は、プロポーズされたことを告げる。
 あたしゃ、モテモテなんだから危機意識を持てと言うことらしい。
 ちなみに場所はバキの家のようだ。座布団もしかずに座って、飲み物はコップ一杯だけ。
 ものすごく清貧なデートだ。

 今宵の松本梢江は妖刀のように鋭い「萌え」を見せる。
 膝を抱えてみたり、ヒザにアゴを乗せて上目づかいを繰り出したり。
 しぐさだけなら「かりんと。」に匹敵するであろう。されても困るのが現実だか。
 気を抜くと最後の二ページだけバッサリやりそうな愛らしさだ。

「どんな気持ち……?」
「わたしが結婚て」


 限界量を超えたアルコールを摂取しちゃって、口を押さえながら便所に向かうときの気持ちに似ている。
 え、私には聞いてないって?

 気分は「猟奇的な彼女」って感じで、梢江がせまる。
 対するバキは窓から外を見たりして、一見乗り気ではない。
 前回と同じで申し訳ないが、「あ、そう」で済ませて、神心会の女子部・井上さんを口説きにいきそうな雰囲気だ。
 なんか、厄介ばらいできて良かった、というオーラが出ている気もする。

 でも、刃牙くんはオモチャを買ってもらうと隠れちゃう人だから、ヤル気が無さそうな時ほど危険かもしれない。
 次回、いきなり刃牙vs.アライJr.が始まってもおかしくない!

 それにしても梢江さん、しぐさだけは「萌え」なんですけど、それ以前のところで何かが違う。
 山登りをするのに、イカダを組むみたいに、ものすごく違っている。
by とら


2005年3月24日(17号)
第2部 第245話 結婚 (625+4回)

「どうよ ハンマ バキ」
「わたしの結婚…」


 いや、「どうよ」言われてもナァ。
 冒頭の第一声で読者のアゴ先に打撃を加えないでください。脳震盪のせいか気分が悪い。
 これだけで十分パンチドランカー状態だ。目がまわって雑誌を落としそうになる。

 刃牙と梢江がすさまじい心理戦をしている。
 もはや、どういう戦いなのか理解を超えていてワケわからんが。
 たぶん予想するにおそらく 梢江さんの主張は「刃牙よ、負けずにオメェもプロポーズしねぇか、ボケ!」だと臆測します。
 恋敵なくして、成就の カタストロフィ カタルシスはありえねぇ。

「もしそれが……」
「ホントのハナシなら」
「スゴく動揺するよ」


 は、はぐらかしたッッッ!
 しかも、まッたく動揺していねェ。
 梢江の攻撃に対抗したってことは「結婚したくない」とみて良いか?
 真っ向からぶつかってきた梢江を華麗に投げ返した。この小僧、柔(やわら)をつかいおるか。
 松本梢江には欲情できる。そんなふうに考えていた時期が彼にもありました。

 しかも「もしそれが……」「ホントのハナシなら」と、プロポーズの事実まで疑っている
 それは「松本梢江に求婚する人間など、地球上を探し巡ったとしても見つかるかどうか」と言いたいのだろうか。俺は言いたい。
 しかし、まるで答えになっていない。
 梢江が「ハンマ バキが避妊しないからできちまったよ」と言っても、同じように返しそうだ。
「もしそれ(妊娠)がホントのハナシならスゴく動揺するよ」最悪だ、おまえ。

 刃牙の仕事は動揺するだけだ。
 けっきょく決めるのは松本梢江である。刃牙もJr.とおなじ事をいう。
 ヤル気まるで無しの、投げっぱなしとも言う。

 Jr.は自分を選んでもらうために刃牙を倒すといった。
 刃牙はなにをする気だろう。たぶん、なにもしないんだろうな。
 一応、フォローする。刃牙は梢江に求婚した宇宙人の正体を聞いていない。だから殴る相手がワカらないのだ。
 知っていれば、あの時しばって樹海に置きざりにすればよかったと歯噛みしていることだろう。

 梢江は刃牙とJr.の意外な共通点におもわず笑う。
 思い出したJr.の顔は、目前の刃牙よりもサイズが大きい。
 実は梢江の心はJr.に傾いているのか?


 辻斬りマホメド・アライ・Jr.が今夜も狂い咲く。
 今宵のエモノは帽子をかぶった洋装の紳士だ。
 この太い体型、丸くなるまで鍛えられた拳、そしてメガネッ!
 間違いない、愚地独歩だ!

「M(マホメド)・アライのファイト見る度」
「思ったものさ」
「一度でいいから…」
「こいつと喧嘩してみてェ」
「…ってな」


 この人は、リングで闘うマホメド・アライに欲情していたらしい。
 さすが愚地独歩だ。とにかく喧嘩が好きなんだろう。

 格闘技の世界ではボクシングの地位がとびぬけて高い。アライが現役だったころは特に。
 オリンピックの正式種目で、プロ化していて、競技人口が多くて、社会的な認知度・知名度が高い。
 すべて神心会館長・愚地独歩が欲していたものだろう。
 個人として喧嘩をしたかったのは間違いない。それ以上に、組織の長として闘って勝ちたかったと思われる。
 空手をボクシングの地位まで引き上げたかったのだろう。

 しかし、喧嘩相手にボクシング世界へビー級チャンピオンを欲するところがただの空手家ではない。
 最大トーナメントのときも、現役の世界へビー級チャンピオンであるアイアン・マイケルと闘いたかったのだろう。

 ドリアンに爆破されたため、独歩の顔面は傷だらけだ。花山の上をいく疵面だな。
 おしゃれ成分を補うためか、眼帯はガラ付きにかえている。
 なにをしても、傷跡がブキミすぎてフォローになっていませんけど。

 渋川先生のときとちがい、独歩には連絡しないで喧嘩を売ったようだ。
 うっかりすると、ただのマホメド・アライのそっくりさんと思われてしまうかもしれない。
 それでも、Jr.のステップにただならぬものを感じたのか、独歩は慎重に対応する。
 帽子を地面へ落とし、メガネをポケットにしまう。

(蹴りは――)
(ナシ……か)


 その場でジャンプするだけのJr.を見て、そこまで判断する。
 相手の重心などを見て正統なボクシングスタイルと見たようだ。
 いきなり喧嘩を売られて情報無しなのだが、今までの経験で予想がつくのだろう。

 Jr.が仕掛ける。
 ロングレンジから一気に踏み込み、ジャブを三連放つ。
 それを独歩がかわす。体をひねり、すべてよける。まるでボクサーのようなディフェンス技術だ。
 得意の廻し受けだけではなく、こういう防御もできるとは。
 愚地独歩の底はまだまだ深いようだ。

 型(スタイル)がマホメド・アライそっくりだったので、独歩は汗を流しておどろく。
 Jr.は自分がアライの息子だと告げた。そして、アライ流は完全なものに進化したという。
 いまごろいうのは、ちょっと卑怯だ。スポーツマンらしくない。完全に武術家になったのだろうか。

「マジでイカせてもらうぜ」

 武神・愚地独歩が本気の本気になった。
 いろいろあるけど、マホメド・アライと喧嘩しているようなものだ。全力で闘う姿勢になった。
 右手を上に、左手は下に。天地上下の構えだ。

 独歩が足元に落としていた帽子を蹴る。
 Jr.はまばたき一つせず、よけもしないで受ける。顔に当たっても表情すらかえない。
 続けてメガネが飛んでくる。これも受ける。スキは皆無だ。
 攻めこんできた独歩にカウンターの右拳を叩きこむ。

「へェ…」
「勉強してやがンなァ………」


 鼻血を出して後退するも、独歩の口調にはまだ余裕があった。
 ちょっとスポーツマンだとなめていたのかもしれない。
 だが、武神としての真骨頂はこれからだ。と信じたい。


 飛び道具にたいするJr.の反応が良くなっている。
 243話で達人と闘ったときは、ゲタとメガネに気をとられてスキを作ってしまった。
 今回は同じように二段構えの飛び道具を出されても動揺していない。
 ダメージを受けないものと判断して回避行動をとらなかった。
 ムダな行動をしないのも大切だ。渋川戦で、きっちりと勉強している。
 Jr.がこうやって成長しているのに、刃牙はナニをやっているんだか。

 Jr.ばっかり成長していると、刃牙が置いていかれる一方だ。
 まあ、求婚相手をつげない梢江がモチベーション低下の元凶なんですけど。
 とりあえず、ハートに火をつけてもらいたい。


 先手は取られたが、駆け引きの上手さでは独歩に分があるだろう。まだ、勝負はわからない。
 おなじ打撃系の戦士だが、空手には手首と足首から先の変化がある。
 ボクシングにはない極意が期待できる。
 あ、でも今の独歩は靴をはいているな。足首から先は死んだも同然だ。空手、けっこうピンチだ。

 Jr.は渋川戦で駆け引き以外も学んだかもしれない。
 渋川戦では、腕をつかまれて苦戦していた。だから捕まれたときの対策は追加していると思う。
 逆に相手の腕をつかんで、殴りながら投げたりするかもしれない。
 アライ流の基本から考えると、つかむ可能性は低い。

 ただ、Jr.自信は完全なものに進化させたと言っている。
 完全ということは、いまさら技を追加しないはずだ。
 やっぱり、範海王を倒したころのように、大地を蹴る格闘技であり続けそうだ。


 ところで、Jr.がこれだけ強いと、範海王もそこそこ強かったと思えてくる。
 相手がJr.だったから、あっさり負けたけど巨人・除海王には勝てたかもしれない。
 もちろん、サムワン海王とか楊海王とか毛海王には勝てないだろう。こいつらに比べると、範海王は負けっぷりが良くない。

 よく考えると、Jr.は敗者に優しくない男なのかもしれない。
 勇次郎とかオリバは、敗者にも芸の花を持たせてやることがある。サムワン海王 人気九位って珍事すらおきた。
 それに対して、Jr.は地味に倒す。もう少し相手をいじるよゆうが欲しい。
 そんなわけで、辻斬りボクサーJr.編はちょっと先行きに不安がある。


 今週のチャンピオンでちょっと笑っちゃったのが、板垣先生の巻末コメントだった。
『うかつだった。おおひなたごうという才能を見逃してました。』

 って、あなた何年おなじ雑誌で連載してきたんですか?

「おやつ」よ「虜」を合わせたら相当な年月ですよ。今までずっと見逃してきたんですかい。
 うかつすぎ。薬師寺天膳なみにうかつだ。

 うかつはともかく、同時にすごみがある。
 なんというか、俺が見ていないかぎり月は存在しない的な俺イズムだ。
 いいかえれば、俺が最強の勇次郎主義か。和田アキ子なみに力まかせで無理を通している。
 やっぱ、このお方は不自然主義者だ。
by とら


2005年3月31日(18号)
第2部 第246話 空手と拳闘(ボクシング) (626+4回)

 今週はスゴイぞ!
 梢江も刃牙も出てこねェ!
 いや、別々に出てくればそれほど臭くないんだが、ヤツらはまぜるとキケンだ。
 否、キケンすぎるッッッ!!
 少年誌から消力(シャオリー)されちまいますぜ。


 公園では独歩とJr.が闘っている。
 後世、伝説になってもおかしくない超ビックカードなのだが、会場は夜の公園で観客はゼロだ。
 俗世間に関心のないJr.は気にしていないようだが、独歩はもったいなく思っている。
 組織の長でもある男だけに、興行のことも考えてしまうようだ。
 部下にいい暮らしをさせるために、地味なところでガンバっているのかもしれない。

 猪狩vs.斗羽はバイトの青年によってプロレスファンに連絡が入り、光が当たった。
 さすがに夜の公園にバイトの青年はいないらしい。
 実にもったいない。
 解説の本部と驚愕の加藤をそえれば、倍は面白くなるのに。


 前回と同じく天地上下の構えで独歩は腰を落とす。
 顔面のガードが甘い構えだ。顔面への攻撃が多いボクサー相手にはつらいのではないだろうか。
 空手家も、K-1などの顔面アリの試合に出るときはキック系に近い構えで闘う。
 顔の前に手を置くの構えのほうが、顔面攻撃に対処しやすいのだ。

 もちろん百戦錬磨の愚地独歩なら知っている知識だ。
 前回はボクシングのようなディフェンスも見せた。やろうと思えば、ボクシングスタイルもできるはずだ。
 あえて空手の構えをとっているとしか思えない。
 なにか考えがあるのだろう。

 いきなりJr.が飛び込んでジャブを放った。
 閃光が走ったようにしか見えない攻撃だ。動きの少ない肩すら、透けている。
 防御もできずに、まともに独歩の顔面へ入った。

 伝統派空手の初弾をめぐる攻防は全格闘技でトップクラスらしい。
 独歩だって、伝統派空手の攻防は経験しているはずだ。
 それが、Jr.の神速にまるで対応できない。

(マイッたなこりゃ)
(受け技使おうにも)
(反応が間に合わねェ……)


 天地上下の構えで独歩は反撃をねらっていたようだ。
 しかし、常識を超えたJr.の拳速に独歩が反応できない。
 口や鼻から出血しながら、独歩の上体がかたむいていく。
 だが、下半身はしっかりと反撃の体勢をとっていた。
 かたむく上半身にあわせるように、独歩が左の廻し蹴りを放つ。

 見切った。
 超高速の世界に住むJr.は動体視力も入神の域に達している。
 クツ裏の汚れすらチェックできるような見切りで、独歩の蹴りを鼻先数センチでよけた。

 独歩もただスカったワケではない。
 相手の攻撃が速すぎるので機先を制して、自分のペースに持っていこうとしているのだろう。
 回し蹴りの回転をそのままいかし、体をひねって後ろ蹴りにつなげる。
 見事な連続技だ。

 だが、カウンターを喰らう。
 しかも、十分にねじりこんだコークスクリューパンチだ。
 最小の動きで廻し蹴りをよけたからこそ、次の後ろ蹴りにカウンターを合わせることができたのだろう。
 待ち構えていたようなタイミングでのカウンターだった。

「やめやめ」
「やっぱり」
「スポーツじゃ勝てねェやな」


 倒れたところから逆立ちをして、独歩が起き上がった。
 ちょっぴり、刃牙戦の鎬紅葉みたいだ。
 この人、めちゃめちゃ元気じゃねェか。
 ハデに出血しているが、ダメージはないらしい。無いのか、本当に?
 タフすぎる。さすが、爆破されても死なない男だ。

 速度や、連打の攻防はボクシングの領域だ。
 まっとうなぶつかり合いでは勝てないということだろう。
 とりあえず、ボウシやメガネを投げつけたのは、無かったことにしよう。
 それとも独歩ルールのスポーツでは身に着けていたものを投げるのはアリなのか?
 テニスなら、DOPPOドライブとか言ってメガネをぶつけたりしそうだ。

 ここからはスポーツではなく、武術の勝負ということか。
 より、なんでもありになりそうだ。
 本部なら確実に日本刀を持ち出しているところだろう。
 と、独歩が両手をポケットに入れる。

(ハンドポケット…)

 Jr.の表情がかたくなる。
 大擂台賽で見たことがある。龍書文もやっていた、ハンドポケット殺法だ。
 オリバのように、自分もパンツの中に手を入れないとダメか?
 たぶん、そんな苦悩がJr.の脳裏をかすめたことだろう。

 マジメな格闘家なら、他人の試合を見ているときに、自分が闘うとしたらどうするのかを常に考える。
 龍書文の戦術をみて、Jr.も攻略法を考えたはずだ。
 闘う前から攻略法は考えているのだ。こんなこともあろうかと、ってヤツだな。

 Jr.の解答は普段と変わらず最速の拳を放つことだった。
 相手の反撃を警戒し、射程距離ギリギリから相手より速い攻撃をする。
 いくら素早く抜拳したとしても、パンチのスピードで勝っているから、先に当たるのは自分の拳だ。
 以上が、Jr.の考えだったのだろう。

 しかし、Jr.の右拳は空を切った。
 独歩のヘソから下は動いていないのに、ヘソから上が消えてしまったような感じだ。
 異常事態にあせったのか、Jr.は拳を引くのも忘れている。
 攻撃に使用した拳はすぐに引く。そしてガードを固めるか、次の攻撃に備えるのが定石だ。
 Jr.は、かなり動揺している。その証拠に汗を流している。
 常に涼しい表情をしていたJr.がついに発汗だ!

「当たらねェなァ………」

 今度は左拳を突き出す。
 今度も当たらない。独歩の鼻先で止まっている。

「惜しい………」

 チュ…

 目の前で止まった拳に独歩はキスをした。
 Jr.は、また拳を引いていない。
 肉体は無傷だが、精神的にかなりダメージを受けているようだ。

「どうでェ…」
「少しは見直してくれたかい」


 そういいながら、独歩は視線を下げる。
 動揺しながらも、Jr.が殴りに行こうとする。
 その瞬間、いつのまにか抜拳していた独歩が、左拳の一撃をJr.の脇腹にきめた!
 Jr.もついに初打撃を喰らったのだ。

 Jr.は精神的に追いつめられていた。
 そして、独歩がうつむいているため、視線を読めなかった。
 だから、あっさりと攻撃を喰らってしまったのだろう。

 闘いは意外な方向に流れるのか?
 独歩の秘技炸裂で、次号へ続く。


 人間は劣勢になったときに、つらかった練習や師の教えを思い出し、自信を取り戻そうとする。
 Jr.にはそういった精神的な支えがあるのだろうか?
 偉大な父の姿がJr.に闘う力を与えるのだろうか?

 父のアライは幾度も劣勢の中から這いあがってきた。
 不屈の闘志という点では、お手本になるだろう。
 Jr.も父のように最後まで闘う男になるのか?
 技術的な強さだけではなく、Jr.の精神的な強さも見せてもらいたい。


 独歩の当たらない防御は、心道流心道会の宇城憲治先生の技が元ネタだろう。
 詳しくは板垣先生の「激闘 達人烈伝」に載っています。

 掲示板で竜さんから情報をいただいたのですが、技の原理については游心流武術健身法研究会のエッセイ「武術トリックのタネあかし」(2003年11月21日)で解説されています。
 ちなみに、2003年7月4日のエッセイでは刃牙の感想を書かれておられます。

 でも、技の原理はこのさいどうでもいい。
 本気で当てるなら、もっと近づいて打てばいいのだ。フックやアッパーの距離なら、技も通用しないだろう。
 問題なのは、アライ流が近距離での打撃に対応しているのかどうかだ。
 空手にはヒジやヒザなど強力な近距離攻撃がある。
 アライ流には、それ以上の攻撃があるのだろうか?

 普通に考えたら相手の懐に入るのは、アライ流の持ち味をイカさない行為だ。
 スウェーバックも近すぎると通用しないだろうし。
 簡単に考える限り、Jr.はちょっと手詰まりだ。
 この状況を打開してこそのアライ流なのだが、どう攻略するのだろう。
 もちろん、このまま独歩に負けてもまったく問題ない。
 で、賞品の梢江は独歩の愛人になる! いや、いらない。
by とら


2005年4月7日(19号)
第2部 第247話 ルール (627+4回)

 蝶のように踊り、ハチに刺されたよう暴れる。
 ディフェンス能力が高いせいか、Jr.は打たれ弱いのかもしれない。みっともない格好でもだえている。
 アライ流の命であるステップも乱れ、反撃どころか、防御の体勢もととのっていない。

 ドリアンも独歩に攻撃された時に、もだえていた。すこし演技が入っていたけど。
 独歩の一撃は、単純な打撃ではなく、なにか痛くてもだえるような秘密があるのだろうか?
 にぶく体内にひびく攻撃なのかもしれない。

 Jr.は打たれた痛みとオドロキでスキだらけだ。
 追撃するチャンスだが、独歩は動かなかった。
 技は使用(つか)っても、相手の弱みにはつけこまない。それが武神としての誇りなのだろうか。
 Jr.を投げ飛ばした渋川先生も、追撃のふみつけをしなかった。
 達人たちには、年下に指導する習慣がしみついているのだろうか?
 あの時トドメを刺しておけばと後悔してもおそいというのに。

「外したのは俺(おい)らじゃない」
「坊や自らだ」


 打たれた腹を押さえながら困惑しているJr.に、独歩が声をかける。
 ここでも、独歩が回復の時間を与えている。オマケに技の解説までしてしまう。
 もっと性格の悪い人なら、Jr.が悩んでいるスキにタコ殴りなのだろうけど、独歩ちゃんはサービス満点だ。
 というか、刃牙世界の住人は説明好きだ。解説中毒者、説明依存症といってもいい。
 柳も低酸素の毒を解説しなければ、二度目の刃牙にだって勝てただろうに。ワカっちゃいるけど、やめられないのだろう。
 そして、独歩の説明が続く。

「ルール変えさせてもらったぜ」

 独歩いわく、最初は竹刀で闘っているようなものだった。
 それが真剣勝負に変化した。

「竹刀と真剣(ほんみ)で 自(おの)ずと生じる間合いの変化―――――――」
「それを おめェさんが見誤った」

「ナラバ コレハ…」

「オウよ」
「殺し合いだ」


 丸い月が妖しくかがやく。
 まさに絶好の辻斬り日和だ。
 Jr.の顔に深く影がさしこむ。これから踏みこむ道は、修羅界へつづく魔道なのだ。
 日本刀の殺気を帯びて独歩がたたずむ。
 レイピアの殺気を持ったJr.がかまえる。腹部のダメージは回復している。

 説明アリガトウ。しかし、説明になっていない。
 スポーツと実戦の差が、距離感を変えたらしい。
 軟式野球しかしたことのない少年が硬式野球をはじめたような感覚のちがいだろうか。
 当たるとこわいから、無意識のうちに腰が引けてしまう。
 Jr.は研ぎすまされたセンスを持っている。だから、独歩の殺気を感じて、無意識のうちに遠くから打ってしまったのだろう。
 もともと、射程ギリギリで攻撃するタイプだったのも大きい。

(頭一ツ分ホド小サク見エタ コノ男ガ……)
(今ハ――――――)
(ナント巨大ナ!)


 獅子の殺気をまとって独歩が巨大に見える。
 猛虎の殺気だったら、確実に独歩が倒した虎の霊魂だろう。
 でも、独歩のことだからライオンだって倒しているかもしれない。人類初、ライオンに六波返しだ!

 相手がデカく見える。独歩の気迫に押されている証拠だ。
 Jr.が渋川先生に勝てたのは、殺気をおさえて勝負を竹刀試合にしてしまったためだろう。
 独歩は試合を真剣勝負にもどした。
 自分の得意分野に相手を引きこんだのだ。この状況なら、独歩が有利だ。

(初メテ人ヲ殺ソウトシテイル)

 対するJr.は初体験の殺し合いに緊張している。
 試合では本気で殺す気で相手を殴ったこともあるはずだ。
 しかし、ここまでの極限状態は経験したことが無いのだろう。
 普通の日本人なら(花山とガイアはとうぜん違う)、そんな経験は無い。Jr.はアメリカ人だけどたぶん無い。
 独歩や渋川のような古いタイプの武術家だけが有する修羅場の経験なのだろう。

 そういえば、本部もそういう経験がありそうだ。
 だから、あの人は死刑囚との闘いにだけ強いのか?
 スポーツでなければ強い人のかもしれない。

 今度のJr.は殺る気で打つ。右拳を一気に独歩の顔面に放った。
 独歩は両手をさげたまま、構えをとっていない。
 万事休すか?

 

 独歩の両手が円をえがき、Jr.の拳をはらった。
 矢だろうが、鉄砲だろうが、怒李庵ファイヤーだろうがはらいのける、鉄壁の防御ッ!
 マ・ワ・シ・ウ・ケ!

(掌自ら球を成し)
(防御(うけ)完全とす!)


 中段を中心に、上段・下段もカバーする広範囲防御だ。
 防御終了と同時に、双掌を突きだす。Jr.の顔面と金的へ掌底が命中した。
 スーパー独歩ちゃんコンボ炸裂だ!

 スポーツのときは反応できなかったJr.の攻撃も防御できた。さすが武神だ。
 反応できないのに、なぜ防御できたのか?
 たぶん、Jr.の殺気を読みとり、タイミングをはかったのだろう。
 どこへ飛んで来るかわからないけど、とにかく攻撃が来る。
 タイミングさえ合えば、広範囲をカバーする回し受けでなんとか防御できる。
 そういう作戦だったと思う。
 目をつぶっていても、ストライクゾーンいっぱいに広がるラケットを使えば、ボールに当てることができる作戦だ。

 基本的にボクシングでは両手攻撃をしない。
 両手攻撃は、腰や肩を回転させることができない。だから、片手の攻撃に比べて威力がおちる。
 しかも、防御に残す腕がない。
 リスクに対して、得るものが少ないのだ。
 だからこそ、予想もしない攻撃としてJr.はまともに喰らったのだろう。

 ついでに金的攻撃も有効だ。
 ボクシングでは腰より下の打撃は反則だから。では、無い。

 Jr.は梢江と結婚するために闘っている。
 だが、股間が破壊されてしまったら、結婚してもあまり意味が無い。結婚生活はソレばかりではないだろうが、SAGAはソレばっかりだ。
 つまり、独歩はJr.の闘う理由を破壊したのだ。まだ確定ではないけど。
 ここがJr.の生命線だ。ここが潰れたらJr.に明日はない。
 というわけで、独歩はイチバン効果的な攻撃をしたのだった。
 肉体のダメージよりも、心を折るダメージだ。

 なんか独歩が勝ちそうな予感がしてきた。いや、勝つんだ、独歩!
 漫画版・餓狼伝で久我重明に空手の恐ろしさを教えられた鞍馬のように、Jr.も負けて学習すればいい。
 真剣勝負の気迫は学んだ。そして、敗北のくやしさを知れば完璧だ。


 一方、梢江争奪戦の現王者である刃牙は、いつになったら動くのだろう。
 オリバと闘ってみるのもいいと思う。
 まあ、オリバと闘って得られるものは、胸にテンプレートを埋め込む防御なのかもしれないけど。
 どうよ? ハンマ バキ。

 それとも、帰国後に重度の花粉症になって、外出したくないのだろうか?
by とら


2005年4月14日(20号)
第2部 第248話 ベストショット (628+4回)

 前回ラストは独歩の双掌がJr.にヒットしたところで終わった。
 だが、この絵にはトリックがあったのだ!

 よく見ると、攻撃が当たっている部分にヘコみやシワがない。
 打撃が当たった瞬間の波うっている皮膚を描くのが板垣作品の特徴だ。
 一瞬しか生じない現象を、あえて通常に出しちゃうところが板垣演出といえる。
 殴られた後でも、ダメージが残っているとシワも残っていたりする。常人には無い発想だ。
 つまり―――――――――

(この距離――――――)
(このタイミングで――――――)
(躱しやがった!)


 ――――独歩の攻撃は当たっていなかったのだ!
 これは気がつかなかった。
 というより、術中の読者はこうあって欲しい安易な展開を造り出し、こうあって欲しい決着をイメージしてしまう。
 手の上でおどっていたのか、俺は!?

 Jr.よりリーチが短いとはいえ、じゅうぶんに独歩の間合いだった。
 しかもカウンターのタイミングだ。
 攻撃をするとき、人の体は前に動く。このタイミングで攻撃をされると、相手の攻撃を下がってよける事ができない。
 それどころか、自分から拳にぶつかりに行くようなものだ。
 しかも、直前まで攻撃していたので、防御に集中していない。
 普通に攻撃されるよりも、何倍もよけにくいし、ダメージも大きいのだ。

 Jr.はロングレンジから飛びこんで攻撃する。
 全身で突っ込むので、カウンターには弱いはずだ。
 ところが、紙一重でJr.は独歩の攻撃をかわしていた。

 前足は伸びきって ふんばっている。
 突進した勢いを止めて、さらに後退する力を生んでいるのだろう。
 後ろ足はヒザが曲がっている。
 体重を後ろにかけることで、倒れるようにスウェーしたようだ。
 K-1で活躍中のムエタイ戦士ガオグライ・ゲーンノラシンの得意とする「マトリックスよけ」にちょっと似ている。
 いや、ゲーンノラシンはすばらしい選手ですよ。
 疑ぐるなッ! ムエタイ最高!!

(しかもよォ――――――)
(この距離――――――)
(このタイミングで)
(カウンターまで…………………)


 カウンターにカウンターを取りやがった。
 さすがに、武神も驚愕した。加藤さえいてくれれば替わりにオドロいてくれたのに。

 カウンターをよけるだけなら、まだ何とかなるかもしれない。普通はならないけど。
 そういう場合、よけるので精一杯で反撃なんてできない。
 だが、Jr.は反撃した。おそるべきセンスと、身体能力だ。
 全速力で突っ込んだトラックが瞬時にブレーキ&バックして、また再加速して突っ込むようなものだ。
 よほど下半身を鍛えているのだろう。

 アライ流には蹴りがない。(地面を蹴るというのは、とりあえず置いとく)
 蹴りをすてることで、華麗なフットワークと距離を一気につめる突進力を手に入れたのだろう。
 そして、その突進すら止めるブレーキと、再加速まで持っている。
 これが、完成したアライ流なのだろうか。

 オマケに狭い間合いでありながら、きっちりとストレートを打っている。
 関節技の間合い以外なら、どんな距離でも対応できそうだ。
 狙いすましたロングレンジ攻撃だけではなく、乱打戦の中できっちりカウンターをとることもできる。
 やはり、全局面対応の格闘技なのか。


 場面はかわる。アライ父はまだジャーナリストと話していた。
 ヘビィウェイトの「ベストショット」を打ちこまれたら、どうなるのか? ジャーナリストはアライ父に質問してしまう。
 つまり「アンタだって殴られたことあるんでしょ?」というわけだ。

 アライ父が無言でかたまった。
 ジャーナリストは即座に失言を悟った。ホントに、ホントに、おバカさん。
 何年もインタビューするのを待っていたんだから、質問する内容ぐらい考えておけ。
 ちょっと、浮かれすぎだ。

 沈黙を守っていたアライ父が、いきなり無言のまま動いた。
 イスから立ち上がり、棚(?)からナニかを持ちだした。
 鉄パイプだった!
 超豪邸に鉄パイプかよ!?


 さすが天才だけあって、普通ではないセンスをしている。
 棚の中には、古今東西の武器でも入れてあるのだろうか。
 この鉄パイプもただの鉄パイプじゃなくて、柴千春が所属する暴走族・厳駄無(ガンダム)で使用われた伝説の鉄パイプ(属性:打撃)なのかも知れない。

 鉄パイプで撲殺されるとあわてるジャーナリストに、アライ父は鉄パイプをわたす。
 そして、鉄パイプで思いっきり地面を叩けという。

「力いっぱい叩く………………さもなければ私のパンチをお見舞いする」

 やっぱり、怒ってるゥ!
 もう、殴ってもらえ。憧れの人なんだから、殴られたほうが記念になるぞ!
 しかし、殴られる本人はたまらない。ジャーナリストは必死になって鉄パイプを地面に叩きつけた。

 とうぜん、ジ〜〜ンと手がしびれる。
 ものすごい衝撃だから仕方あるまい。

「ホンモノのヘヴィウェイトをお見舞いされると―――………」
「その感覚が全身に広がるんだ」


 確かに衝撃を受けるという点では同質なのだろう。
 試合でもっとも死者が多く出る格闘技は、ボクシングなのだ。
 その最重量級ともなれば、鉄パイプで殴られるのと同等の衝撃を受けるのだろう。

「例えて言うなら…」
「百万匹の蟻が」
「足元から這いあがる――――」


 なるほど、アリだけに蟻で説明ですか! それもまた有りだ。
 いや、アリじゃなくてアライだって。

 それにしても、アライ父は急に元気になった。
 今だったら、じゅうぶんジャーナリストを撲殺できそうな感じがする。
 ジャーナリストが地面を叩かなければ、体に直接アリがはいあがる感触を味わせたに違いない。


 Jr.は独歩のアゴ先を打ちぬいた!
 アゴが吹っ飛ぶような衝撃を感じながら、独歩はかつての闘いを思い出していた。
 範馬勇次郎との闘い。渋川剛気との闘い。

(脳へダメージもらったときは いつもそうだ…………)
(こいつらが――――――――)
(這い上がってきて―――――――――)
(地面が消える)


 エイリアンの集団に襲われるかのように、独歩はアリに襲われる。
 脳への打撃は平衡感覚が狂うらしい。地面が傾いたり揺れたりするようにも感じる。
 武神も蟻に這いあがられて、ついにダウンする。

 だが、これで終わりだろうか?
 確かに独歩は勇次郎や渋川先生の攻撃で脳をゆらされたが、一発では沈まなかった。
 勇次郎は鬼哭拳を出して心臓に叩き込んだ。渋川先生は何度も投げて地面に叩きつけた。
 武神・愚地独歩の恐ろしいところは、後退のネジを外した戦闘スタイルにある。

 たとえ地面が消えても、独歩なら立ち上がって向かっていく。
 というわけで、次回で独歩の敗北が確定するまで応援する。
 術中の読者はこうあって欲しい安易な展開を造り出し、こうあって欲しい決着をイメージしてしまうのだ。


 最近の展開は、少年漫画によくある「新敵が登場して主人公の仲間を襲う」パターンだ。
 そうなると今の独歩は、新しい勢力が出てくるたびにボコられるテリーマンみたいなものか。
 最後のほうでチーム戦をやると、序盤でボコられていたテリーマンが妙に強くて違和感ありまくりだ。
 べつに、ドリアンのことを言っているわけではない。

 ネットでは、Jr.の人気は低い。むしろ不人気といっていい。
 つまり、これで刃牙が憎まれ役のJr.を倒せば、ヒーローの座に返り咲きだ。
 独歩も達人も刃牙に感謝しまくるだろう(都合のいい妄想)。

 そうなると、もうしばらく人気キャラが狩られる展開が続くかもしれない。
 たとえば、美少女・松本梢江の純潔がけがされるとか。むしろ誌面がけがれる。
 なんにせよ、早めにわれらが主人公・範馬刃牙がヤル気を出すことを祈ります。
by とら


2005年4月21日(21号)
第2部 第249話 アプローチ (629+4回)

 独歩、奇跡の復活は無かった。まったく無かった。無念じゃがッッ!
 そのかわり、バカップルが奇跡の復活だッ!
 む、無念じゃッッ!

 いかなるときも金のかからないデートコースを選択する刃牙と梢江だった。
 まあ、高校生だし金がないのだろう。
 しかし、この二人の場合は体が目的ということも考えられる。少年誌の主人公とは思えない、ただれた恋人だ。
 今日のデートコースは公園だろうか。歩道に面した芝生の上にバカップルが座っている。

 天気もよさそうだし、なかなか雰囲気のよさそうな公園だ。
 なのに刃牙と梢江以外に人影はない。
 まるで異常運転を起こした原子炉が置かれているかのように、無人の荒野となっている。
 さては、すでに一戦やらかしたか?
 この二人が獣のごとく まぐあえば、普通の人は走って逃げる。普通より落ちる人はその場で失禁だ。
 この公園には今後十年 草木が生えないといわれる瘴気がこもっているのだ! たぶん。

「バキくん…」
「なんか…」
「わたしのこと見なくなったね」


 いきなり強烈な質問がきた。そりゃ、刃牙も汗をながす。
 最初に燃えさかった恋の情熱が冷めると、梢江の真の姿が見えてきたということなのか?
 あッ、そっかァ〜〜…… 梢江って花山を蹴る女なんだ、と今頃になって気がついたのかもしれない。

「見てるというより」
「梢江を感じてる ――――」
「それじゃダメ…?」


 範馬流話術が炸裂だ。
 見ていないという事実をごまかし、話をスリかえたッ!
 一番重要なのは「なんで梢江を見なくなったのか?」という原因だ。
 つまり、「あきた」とか「愛情が冷めた」とか、そういう原因をうたがっているのだ。
 それを「見る」という方法論にスリかえている。

 247話に出てきた「竹刀と真剣」の話も、議論しているうちに「殺傷力の有無」から「竹刀と真剣の違い」に話がズレたりする。
 刃牙が意図的に話をすりかえたのかは不明だ。
 しかし、どちらにしても範馬流話術はあなどれない。
 一度、日常で使える範馬流話術をまとめてみるか。

 あたしをちゃんと見なきゃダメ、と悶絶しそうなほどかわいらしい注文を梢江がつける。
 しかたなく刃牙は顔をよせ、焦点がぼやけそうなほど近づいてじっくりと梢江を見るのだった。
 でもって、くちびるをよせて情熱的に………。ぶちゅっ。

「アノ…」
「チョットイイデスカ」


 とうとつにJr.が参戦だ。
 この状況、このタイミングで乱入してくるとはッッ!
 よくぞ、ムードをブチ壊してくれた。今だけは、正直アリガトウ!
 さすが神の子。見事なカウンターだ。この距離、このタイミングで躱しやがった!

「ワタシ梢江サント結婚シマス」

 いきなり、結婚シマスときたもんだ。
 日本語が不自由なのか、とんでもなく自信があるのか。
 この発言で梢江は大爆笑する。
 あまりにストレートな発言にちょっと感動しちゃったらしい。

 アメリカ人らしい直接的な愛の言葉だ。
 フェイントをあまり使わないJr.らしい攻撃といえる。
 そして、相手の都合を無視するところも、Jr.らしい。

 しかし、なんだ? 梢江の「ワタシってもてる女だしィ」的なオーラは?
 アリを十万匹はわせたい気持ちになる。

 いきなり出現したライバルに、腑抜けだった刃牙がよみがえった。
 あんまり大事じゃないものでも、他人にとられそうになると惜しくなるのか。
 それと、245話で梢江に結婚を申しこんだ男がいると聞かされていたが、やっぱり信じていなかったのだろう。
 彼女喪失の危機が現実となって、刃牙も気合が入ったようだ。
 久しぶりに闘う男の表情になっている。

「まさか別の目的で言ってんじゃないだろうな」
「例えば俺を怒らせるため――――」


 梢江にホレる地球人なんてありえねェ。そんな刃牙の本音がポロリと出てきた。
 横にいる梢江も、将を射る前の馬だと言われては心中おだやかではないだろう。
 だが、Jr.はただ梢江にアプローチするとだけ言う。
 刃牙狙いをハッキリ否定しないのが、ちょっとあやしい。

 刃牙は、どちらを選ぶかは梢江が決めることだと言う。
 格闘の申し子だけに、恋愛も闘争の中にあるのだ。
 変にお互いをしばるのではなく、相手を放さないために己を高める心意気だろう。
 勇次郎も「自己を高めろ」「雌として飽き果てるまで喰らわせつつも、足りぬ雌であれ!」と言っていた。
 メイカー風にいえば、恋人というポジションへの安住を拒否し、緊張感の伴う関係を全うしようとしているッ!
 さすが恋愛紛争地域バカカップルまかり通ると呼ばれる二人だけあって、超・攻撃的恋愛だ。

 余談だが「誰だって梢江を好きになれる」という刃牙のセリフを、最初読み間違えた。
「誰だって梢江を好きになる」と読んでしまったのだ。
 なるか、バカッ! とかなり本気でツッコんだ。
 カンちがいで申し訳ない。

 この場はとりあえず、刃牙とJr.そして梢江がルールを確認して終わった。
 本部以蔵方式で夜の公園で出会ったら、勝負です。
 刃牙と梢江の場合は昼でもようしゃなくヤルけどな!

 これで刃牙がどこからとも無く乱入してきてJr.をブチのめすという展開がありになった。
 過去の偉大なグラップラーたちも、今後はJr.の犠牲にならずにすむかもしれない。
 刃牙が乱入するときのセリフは誰がパンツはいていいッつッたで、お願いします。

 それにしても刃牙の態度が冷たい。
 これを期に梢江とわかれるつもりなのだろうか。
 最近、梢江のことを見なくなっているらしいし。

 梢江が相手を選ぶというからには、梢江の前で刃牙とJr.が闘うのだろうか?
「あなたたちは大馬鹿よ」と言われて、二人ともふられるのだってアリだ。


 場面はかわり、ジャック・ハンマーの前にJr.があらわれる。
 食事中で十八枚(?)目のステーキに挑戦中だった。
 達人・武神をしとめたJr.が次に目指すのは宇宙人・範馬一族なのか!?

 刃牙はユリーや柳などに敗北しているが、基本的に範馬を倒すことができるのは範馬だけだ。
 なにしろ、刃牙以外の範馬一族は地球人に負けていない。
 範馬とそれ以外の間にはかなり深い溝があるのだ。

 Jr.が刃牙と闘う前に達成したいのが「範馬越え」なのだろう。
 地球人としての限界越えに挑戦だ。
 ジャックに勝てば、もう刃牙もこわくない。
 だが、ジャック兄さんはかなりこわいぞ!
 顔を殴ったら、拳に噛みつく。Jr.にとっては相性が悪そうだ。

 ところで、ジャックは日本で何をやっているんだ?
 勇次郎を追いかけたりしなくて、いいのか?
 とりあえず、ステーキ代は鎬紅葉が出しているのだろうか?

「約束ドオリ、死刑囚ヲ倒シタゼ」
「さすがミスター・ジャックだ。時間はかかったが、確実な仕事………
 …………って、コイツはドイルじゃねェよ! 誰だよ!?(※ シコルスキーです)」


 って感じに仕事は失敗しているので、ステーキは自腹だろう。
 まあ、ジャックのことだから賭け試合とかに出場して稼いでいるのかもしれない。
 シコルスキー陵辱ショーも出演料を取っていそうだ。
 お客さんは大喜びだったし。


 ジャックと戦うときは噛みつきに気をつけないとマズイ。
 Jr.の戦法は一撃離脱なので、噛みつかれる危険は少ない。
 組み技系よりは、ずっと安全に戦える。
 ただ、ジャックは打撃も強い。
 離れているから安心とは限らない。

 そして、やっと背が伸びたジャックの実力を見ることができそうだ。
 ジャック・ハンマーの復活から1163日を経て、やっと骨延長の成果を見ることができる。
 巨人・除海王と同じ運命をたどらないことを祈ります。
by とら


2005年4月28日(22+23号)
第2部 第250話 もう一人のハンマ (630+4回)

 メイン料理ではないけど蕎麦屋のカツ丼が美味いように、刃牙での食事シーンも美味そうだと思う。
 今回はジャックがステーキを喰いまくる。
 K-1とPRIDEの選手であるミルコ・クロコップは体調管理のため、脂身をとってパサパサになるまで火を通した肉しか食べないらしい。
 しかし、そこは一日三十時間の男であるジャック・ハンマーだ。食事も不自然主義なのだ。

 肉汁がしたたり湯気にかすんでいる上等なステーキだ。
 カロリーもたっぷり補充できそうだ。
 その肉の表面といったら、郭海皇の顔のようにシワシワ………
 ……………えーっと、今の無し。

 とにかく、ジャックは肉を強引にねじ込み、一口で喰っちゃう。
 すさまじく豪快な食べかただ。
 噛みつき攻撃を得意とするジャックならではの食法といえる。
 ただ、この食べかたは"素"ではなく、急いでいたためらしい。
 ジャックは食事よりも、Jr.との闘いがスバラシイものになるだろうと期待しているのだ。

 でも、115話で、子豚の丸焼きをものの10秒で食べちゃっているのだ。
 やっぱり"素"で早食いなのではないかと思う。
 あと三皿ぐらい食うつもりだったのを早めに止めた。それがジャック流の急ぎかたではなかろうか。

 Jr.は、自分にとってはスバラシイ経験になるだろうけど、あんたはどうかな?(意訳) と返す。
 やっつける気満々だ。
 謙虚でサワヤカだったJr.は、独歩を倒したときに消えてしまったのだろうか。
 人を殺す気で殴ったことで、暗黒への道に一歩踏み出したのかもしれない。
 それとも範馬の血族を前にして興奮しているだろうか。

 やっぱり梢江は当て馬で、本命は刃牙という気がしてきた。
 ジャックに対する態度が、みょうだ。かなりジャックのことを意識している。
 まるで、ウブな少年のようだ。いや、それは言いすぎた。

 尊敬すべき達人たちへの仕打ちや、なめきった発言は悪役の証だ。
 餓狼伝で言えば鞍馬彦一と互角の憎まれ役になっている。
 一刻も早くジャックに噛みつかれて半泣き状態になってもらいたい。


 Jr.がよそ見をしながら生意気な発言をした。そこにわずかなスキが生まれた。
 目の前にジャックが立っていた。もちろん射程距離内だ。打てば当たる。
 巨体でありながら、なんという敏捷性だ。
 まるで猫科の獣のような動きだ。
 これが範馬勇次郎ともなると、刃牙の部屋で説教した直後に消えたりするから怖い。

 相手から眼を離すことは、闘争の世界ではやってはいけないことだ。
 飛び道具があるかもしれないし、間合いが離れていても油断をしてはいけない。
 Jr.はいい気になっているようだが、まだまだ甘い。
 ジャックが本気であればすでに敗北していたであろう。
 むしろ、本気になってほしかった。
 理由はわからないが、相手の「容赦なく攻撃する」という意志を失わせるなにかが、Jr.にはあるようだ。


 ジャックは奇襲することなく店を出ようと提案する。
 Jr.が選んだ場所はどこかの廃ビルだろうか。天井は低く、柱はジャマで、地面には水溜りもある。
 足場が悪いのでステップを多用するJr.には不利な場所かもしれない。
 だが、背の高いジャックも窮屈そうだし、足場が悪いと蹴りも出しにくいだろう。
 両者に不利な場所と言える。条件は互角か?

 骨延長までした驚異のドーピング男、ジャック・ハンマーがシャツを脱ぐ。
 一度はやせてしまった体だが、また筋肉が復活したらしい。
 再登場いらい、ジャックはしょっちゅう何かを喰っている。
 高密度に引き絞られたダイヤモンドの筋肉という質はそのままに、筋肉量を増やすためには喰い続けなくてはいけないのだろうか。
 だとすると、今のジャックは以前よりも数倍強いのかもしれない。

 新生ジャックの本格バトル、第一撃は竜巻のように渦巻く左パンチだった。
 だが、Jr.は軽々とそれをかわしている。
 そして、かわしざまの体勢は、カウンターだ。
 振り下ろしたJr.の拳が、ジャックのこめかみを打つ。
 たまらず、ジャックがヒザをついた。

 花山クラスの耐久力を持つジャックがダウンするとは!
 Jr.の打撃力はなめてはいけない。
 しかし、口元を狙わなかったのは運がよかった。
 口元だったら、ジャックは殴られても噛みついたはず。
 Jr.の初弾はラッキーだったのだ。

「ビューティフル……………」

 ダウンはしたが、ジャックの表情には余裕がある。
 高度で美しい技術だと思っているのだろうか。
 ジャックは、美しい洋菓子は食べる前に見て楽しむ人なのだろう。
 せっかくの美しいボクシングを味見中と見た。

 というわけで、立ち上がってJr.を倒すんだ、ジャック!
 あと、遊びすぎるな!


 ところで、ジャックがいまだに日本滞在している理由がよくわからん。
 勇次郎が親バカである限り、日本に帰ってくると確信しているのだろうか。
 せっかく背が伸びても、ジャックのやったことってシコルスキーをいじくっただけという気がする。
 勇次郎はおろか、刃牙にすら近づいていない。

 そのシコルスキーだが、はぐれ範馬チームのメンバーとしての復活を希望する。
 とうぜん骨延長とドーピングを(本人の許可無しに)敢行し、ロシアの英雄ガーレンのような肉体に改造されている。
 ガーレンの肉体にシコルの指力をもった究極のロシア人が誕生する。
 これでムエタイを習っていれば、完璧なんだが。

 シコルスキーが仲間になるなら、ガイアだって仲間になる。
 もちろん骨延長だ。
 ガイアは背が低い。だから骨延長は望むところだろう。
 むしろ、ジャックに協力したのは、骨延長のために違いない。
 実際に治療をおこなったのは鎬紅葉だということを知らないあたりが、ガイアの限界だ。
 背が伸びたシコルスキーとガイアをJr.が倒したところで、ジャックが飽きてバトル終了というのが理想の形か?


 一応、Jr.は今までの闘いで何かをつかんできた。
 ジャックとの闘いでも何かをつかむのだろうか?
 手に入れるものは、骨延長だったりして。
 半年ぐらい骨延長をやっているうちに、刃牙と梢江が結婚しちゃって闘わずに敗北する。
 そう、つかんだのではなく、つかまなかった事がJr.の勝利だったのだ! 護身完成!
by とら


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