今週のバキ171話〜180話

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2003年6月5日(27号)
第2部 第171話 幕開け (551+4回)

 目覚めるとそこは中国だった。
 バキは寝台(ベッド)の上に素っ裸で放置されていた。股間に小さな布がかけられているのが、ささやかな思いやりだ。
 布団ではなく小さい布なのは、隠すにはそれで充分と判断されたのだろうか。

 バキが安置されていた部屋は石造りの床で、壁には掛け軸がかかっている。うっすらと煙がただよっているように見えるのは、香を焚いているのだろうか。
 生活感が感じられず、なんか寒そうだ。
 病人には優しくなさそうだが、豪華な部屋らしい。

「中華料理屋!?」

 説明も無しに殴られ、密入国してここにいるのだ。状況が理解できなくて当然だ。
 バキはまだ日本にいるつもりなのだろう。

 床の模様が丸いから、中華料理屋のテーブルに乗せられているように見える。
 ぐるぐる回されて色々なことをされそうだ。
 バキ、変な意味で大ピンチ。

 そこへ美形の男が薬膳料理をもってくる。
 外に迎えに出てきた男たちが筋骨隆々の禿げ頭だったのに対し、彼は髪を普通に伸ばし、体つきもゴツゴツしていない。
 劉海王の秘書官か何かだろうか?
 それとも、寵童か?(いいかげんホモネタから離れましょう)
 ぴちぴちのチャイナドレスを着た美女ではなく、イケメン青年をもってくるあたり、やっぱり女人禁制なのだろうか。
 梢江の姿が見えないのも、汚らわしい存在として隔離しているのだろう。

 料理を出されバキは寝台の上に起きあがり、青年にここはどこかとたずねる。ちなみにパンツはちゃんと残っていた。少し安心。
 カタカナとはいえ青年は日本語を話せるようだ。
 やはり、インテリの秘書だろうか。で、夜は愛人(しつこいって)。

 一方、烈は久しぶりに師・劉海王に会っていた。
 劉海王は、丈夫そうなイスの手すりを握りつぶすほど激昂している。
 齢百歳だというのにこんなに血圧上げて大丈夫だろうか。
 劉の前では借りてきた猫状態かと思いきや、烈老師は世界どこでも不遜な態度と蛮勇は忘れない人だったようだ。

「なんと申した」
「あの少年が擂台(らいたい)に上がると………」


 擂台は武術の試合であり、田中芳樹が編訳をした『隋唐演義』の第十二回は「ソウ角林(そうかくりん)に財物露れて殃(わざわい)に遭い、順義村の擂台(らいだい)にて敵手に逢う」となっているように古い歴史があるようだ。
『隋唐演義』では武器の使用が前提だが、ここでは素手で闘うのだろう。

 しかし、病人を試合に出すな。
 アンタはなんのためにバキを密輸してきたんだ?
 治療をしろッ!



 でも、烈はバキの治療には感心がないらしく、ひたすら擂台へ上げようとする。
 からかうつもりもなく、欺くつもりでもない正真証明100%を超える本気だ。よけい、タチが悪い。

「年端もゆかぬ しかも毒に蝕まれ――――――」
「それでもなお彼にはその資格があるのです」


 人生蛮勇主義の烈はさらに、バキの実力を確かめるために「少林寺(ここ)の僧」と立ち合わせることを提案する。
 烈の友人とはいえ、バキにとってここは敵地といってもいい。
 変な勝ち方をしたら、集団でボコられる覚悟が必要だ。
 もちろん、バキがそうなっても烈は痛くもかゆくもないのだろうが、それにしてもこの自信である。
 劉は、バキの正体に思い当たるところがあったのだろう。

「おぬしが日本で僅か17歳の少年に不覚を取ったこと聞き及んではいるが」
「たしか………」

「そう」
「彼が 範馬刃牙 です」


 周囲がざわめく。バキの名はともかく「範馬」の名は彼らも知っているのだ。
 毒によって惨めにやせた姿を見て、彼が巨凶の血族だとは思うまい。
 劉海王は不吉な名前を聞き、疲れたように背もたれに身をあずける。
 百歳を超えてなお、範馬の名を耳にするとは思っていなかったのだろうか。

「張を呼びなさい」

 劉海王の御指名・張とはいかなる男か?
 バキに料理を運んできたヤサ男ではないと思うが、可能性は否定できない。
 餓狼伝・松尾象山における姫川勉のようにゴツくて強い組織の長にロン毛(少林寺では毛があれば長髪)の美形が従う可能性はある。

 それはそれとして、烈はバキをどうするつもりだろう。
 弱いうちにたっぷり殴っておくつもりか?

 全身に毒がまわっていても飛騨まで行けてしまう体力があるんだから、まだまだバキは強い。
 汗を流させて、毒を体外に出そうと考えているのか。
 烈の口ぶりはバキの強さを完全に信じているようだ。
 自分を倒した男が簡単に負けるわけがないと思っているのだろうか。
 きっとバキがピンチになったら、見えない目潰しで援護してくれるはずだ。


 そのころ日本では勇次郎がアライ流拳法を味見していた。
 Jrのジャブを余裕でかわし、グローブの先を握り、ちぎり破る。
 ちぎっておきながら、勇次郎はJrのジャブをフライ級からストロー級のスピードとみなし、父親よりも迅(はや)いと賞賛する

 グローブを使用しないと闘えないのなら、まだアライ流は未完成かもしれない。
 勇次郎はそれを確認したくてJrのグローブを破ったのかもしれない。好意的に考えれば。
 なんも考えてないと言う可能性はすごく高いのだが。

「ヂャッ」

 今度は防御技能の検査とばかりに、ノーモーションでまわし蹴りを放つ。
 予備動作を感じさせない攻撃でありながら、下半身が後ろを向くほどひねられている。
 下半身のバネのみの攻撃だが、生まれた蹴りは必殺だ。
 唸る、キックが唸る!
 かわす、かわすキックをかわす。

「か……ッ かわした………ッ」
「かろうじて…………ッ」
(なんてスピード)
(ジャブより迅(はや)いッッ)


 かつて石丸コーチも使用した(刃牙19巻 170話)ように、ボクサーの常套句「ジャブより―――――」で驚くJrであった。
 初めて飛行機に乗ったときも「ジャブより速いッ」と驚いたに違いない。

 Jrがスウェイバックをものにしていると確認し勇次郎は次なる課題にうつる。
 Jrの父、偉大なる格闘家・モハメド・アライにとって因縁のポジション。
 相手に足を向けて、寝るッ!

「アライ猪狩状態」
「1974年から格闘技界最大の壁となっている型だ」

 最近では、PRIDE17での高田延彦ミルコ・クロコップ状態だ。
 立ち技系の格闘家と、寝技系の格闘家が闘うとこうなるという見本だ。
 この状態への解答を父は出すことができなかった。
 アライ流を完成させたという息子はどのような解答を出すのか。


 答えは次回だが、少し予想してみる。
 まず、「蹴り」はないだろう。
 アライ流はボクシングを基本においている。ここで蹴りを出したらアライ流の否定につながる。
 つまり、ボクシング技術の延長の技で対処するはずだ。

 デイヴのタックルを破った低空アッパーは使用が難しい。
 勇次郎の頭が手前にあれば問題ないのだが、向いているのは足だ。
 下手に顔を下げると蹴りが飛んでくる。

 ならば、まわりこめばいい。
 蝶のように舞って、勇次郎の頭がわにまわりこんで、低空アッパーを撃ちこむ。

 もちろん勇次郎も体をまわして対抗するので、2人はまわり続ける
 まわり過ぎてどっちかが気持ち悪くなると自然に決着だ。
 決着がつかなければ、まわり続けてバターになる相打ちだ。

 これでは、ちょっとダメっぽい。
 縦の攻撃アッパーがダメなら、横の攻撃フックがある。
 勇次郎の足をフックで横殴りにする。すると、勇次郎は反動で背中を軸に回転する。
 半回転してこっちにやってくる頭を、カウンターのアッパーですくい上げる。
 絵的には美しいコンビネーションになりそうだ。

 まあ、いろいろやっても相手が勇次郎では何をやっても通用しないかもしれないが。

 素手にこだわらないのであれば、イスとかを投げ付けるのが有効だろう。
 ただ、それではアライ流拳法の名が泣く。
 素手にこだわりつつ飛び道具なら、尿をかけるとか…。
 ただ、それでは人としての尊厳が終わる。


 やはり、人前だろうと平常心で失禁できる恥知らずな範馬の血筋に、普通の人間が勝つのは難しい。
by とら


2003年6月12日(28号)
第2部 第172話 幕開け(2) (552+4回)

 勇次郎まさかのダウンッ!?
 したわけではなく、自分の意志で寝ている。むしろ寝ながら攻めている。
 股間の側を相手に向けて、攻めてみろと挑発している。
 勇次郎マグロ状態(フォーム)だ。

「通称 アライ・猪狩状態」
「驚いたことに」
「1974年にこの状態が登場して以来」
「一人として完璧に打破した者はいない」

 立ち技系格闘者を前に寝る。まったく噛み合わない状態だ。バキキャラにエイケン乳を使用する程度には噛み合わない。
 勇次郎がJrの父マホメド・アライも「起きて来いッ」と叫ぶだけだったと評するとおり、この状態は非常にやっかいだ。

 この場での選択肢は主に3つだ。
 寝技で攻める。なんとか打撃で攻撃する。相手を起き上がらせる。

 寝技で攻められるぐらいなら、悩まないだろう。
 寝ている相手に打撃を加えるのは、けっこう難しい。特に拳で攻撃しようとすると大変だ。
 相手を起き上がらせるのはドカベンの岩鬼が悪球を呼びこむぐらいの総意工夫が必要だ。ドカベンの作者 水島新司なら、3話分は引っ張れるネタである。

「ふふ……」
「センスの見せ所だぜ」


 これから一夜をともにする純情(うぶ)な少年を前に、ベッドでふんぞり返る熟れ熟れマダムのような熱帯雨林の視線でJrをねめつける。

 そういっている勇次郎だが、彼はこの状態の解決方法を持っているのだろうか。
 勇次郎の場合だと技術ではなく力でなんとかしてしまいそうだ。
 だが勇次郎は無敵のパワーを持ちながらも貪欲にあらゆる技術を喰らい取り込む。
 こうやって挑発しているのも、なにか新しい技術を見せてくれると期待しているのだろう。

「あなたが寝てくれるなら」
「ボクは部屋を出るまでです」
「よかった何事もなくて………………」


 弱者が強者から身を守る技術が格闘技であり、相手の強者が寝てくれたら悩むことはない。
 Jrはグローブを捨て、さっさと部屋から出ていく。

 何もしてこない相手には何もする必要はなく、争そいが生まれようもない。理想の世界だ
 だが、このまま去ってしまうのか、マホメドJrッ。老成しすぎだッ!
 肉体的には渋川のじっちゃんより50歳以上は若いはずだが、精神的にはずっと老けていそうだ。

「じゃ(はぁと)」

 そう言ってJrはドアを閉めた。
 勇次郎の髪が逆立った。首から額までの皮膚に血管が浮き上がりまくる。

 ……怖っ。

 勇次郎はしょっちゅう怒っている人だ。そこいらを散歩するだけで怒る理由を見つけそうだ。
 しかし、ここまで怒っているのを見たことがない。
 闘いを前にした怒りではなく、闘いを取り上げられた怒りなのだ、コイツは連載初の珍事である。

 怒った勇次郎は0コマで跳ね起きてドアを殴り壊した。
 寝ていた場所からドアまで距離があいていたはずだが、それも感じさせない瞬発力だ。
 紅葉とドアごしに力比べをしたときは正面からドアを蹴って破壊したが、今回は横から殴っている。
 殴る方向を考慮する間もないほど猛り狂っていたのだろう。
 横に殴られた金属製のドアはアコーディオンカーテンのようにぐにゃぐにゃにまがって廊下に落ちた。

「ひイイッ」

 辛口の範馬が暴れると、不幸な市民が欲しくなる。
 不幸にもたまたま通りかかったホテルボーイは悲鳴を上げた。
 勇次郎は左を見る。お盆をひっくり返して立ちすくんでいるボーイしかない。出せる尿があれば失禁しているだろう。
 右を見る。誰もいない。

 ズンッ
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 地盤ごと揺るがすような大 地団太だ。
 当然、ホテルの中の人は大騒ぎ。

「テロだ テロッ」という声が聞こえるが「地震」という人がいないのは、地震とは違う現象が起きているからだろう。
 あの勢いで踏ん張ったのだ、床を3階分ぐらい踏みぬいたに違いない。
 浦安鉄筋家族によくでてくるネタだ。
 そりゃ、いきなり床板抜けてなにかが落ちてきたらテロと思っても仕方あるまい。
 勇次郎と遭遇してしまったボーイは、今ごろショウ君状態のはずだ。

 そんなホテルから涼しい顔でJrは去っていく。
 どうもこの人は護身を完成させているっぽい。
 この人には、神様人形は不要のようだ。むしろあれ持っていた方が不幸になったりして。
 道に迷ったりとか、デコピン喰らったりとか。

 ところで父マホメド・アライの「ユージロー・ハンマという男を知っているか」発言はなんだったんだろう。
 ………親子そろって、放置プレイかよッ。


 一方、中国では烈がバキに「張と戦ってくれ」とたのんでいた。
 非常識な依頼を聞き、横にいる梢江は驚きを隠せない。
 姿を見せないので黄河に投げこまれていたのではないかと心配だったが、無事だったようだ。ちっ…

「ありがてェなァ……」
「烈さんはこんな俺が闘えると思ってくれてる」
「逃げちゃいけない」


 どうも、思い違いをしていたようだ。
 これはバキの闘いなのだ。
 毒に犯されているからといって闘いから逃げていい人生をバキはおくっていない。
 体調が悪いからとか、相手が強いからとか、そう言う理由で闘いから逃げてはいけないのだ。

 毒に犯されて死にそうと言うのは、条件に過ぎない。
 いつであろうと、どこであろうと、相手が誰だろうと、体調が悪かろうと、バキは闘って勝利する生きかたを選んでいるのだ。
 一時期、色に迷って逃げたこともあったが………

 勇次郎を相手に絶対的不利な状態をしいられ、Jrは逃げた。
 だが、バキは逃げない。もう、闘いから逃げないと決めたのだ。
 偉大な父を持ちった二人だが、目指す最強は違っているようだ。

「逃げちゃいけない」

 バキのこの台詞には、柳+シコル相手に逃げた自分への言葉だろうか。
 心のどこかで、生きる闘いから逃げだしはじめた自分への言葉だろうか。
 とにかくバキは、闘うことを選択(えら)んだ。

 そして、それは梢江との別離を意味するのかもしれない。
 バキは自分と愛する人を守っただけでは許されない世界に再び帰ろうとしている。
 そこに梢江の居場所はあるのだろうか?

(しかも勝つと………)

 今の状態のバキを見ても烈は戦えといい、「しかし乗り越えねばならない」といった。
 本人ですらあきらめかけていたのに、烈はバキがこの試練を克服することを信じているのだ。

「謝謝(アリガトウ)………………」

 戦いを承諾したバキに烈は感謝を述べた。
 殴って、拉致して、勝手に試合組んでごめんなさいとは言えない、ちょっぴりシャイな烈海王だった。
 もちろん断ったらもう1回腹を殴っただろう。

 そして、対戦相手とは次期海王候補生・張 洋王であった。
 黒曜石のかたまりを素手で球状に削り取る。
 烈の打岩には及ばないが、劉海王の打岩は凌駕しているかもしれない。
 細い目に角刈りの金髪というカマキリ系の異相だ。

 噛ませ犬臭がただよっていると評判の彼だが、意外と活躍するのではないかと思う。
 相手が弱っているだけに。

 なにしろ髪があるのはポイント高い。特別待遇されているのだろう。
 金髪(白髪?)に「洋」と言う名は、もしかすると西洋人だろうか。体格は細いので違っているかもしれないが。


 バキの肉体が劇的な復活をとげるには、まず心が劇的に回復しなくてはならない。烈はそう思っているのだろうか。
 そのためには、強敵が必要になる。そんなわけで、張はかなりの実力を持っていると思う。

 それでも、最終的には噛まれるのだろうが。
 最強の噛ませ犬ガーレンを超えられるかどうかが見所だ。
by とら


2003年6月19日(29号)
第2部 第173話 当たらない (553+4回)

 前回、張洋王は顔を見せただけで「コイツは弱いッ」と読者を唸らせた。
 マホメドJrもあまり強そうに見えないと言われていたが、ここまで評判は悪くなかった。

 ある意味、ショウ君よりも期待されていない。
 そんな次期海王候補の実力やいかに?
 まあ、候補でいいのなら、ドクター中松だって都知事候補だったし。

 バキと張が向かいあっている。
 場所は闘技場だ。普通の地面より1段低い。
 なんか、劉海王が合図すると底が割れて落とし穴になりそうだ。

 床は石畳のようだ。
 投げつけられたら即死に近いダメージを受ける。ダウンして体を落としただけでもダメージを受けるだろう。
 ボクシングのキャンバスはダウン時のダメージが少ないようにショックを吸収するようにできているが、ここはそれとは対称的に倒れたらかなり危険だ。
 もはや試合ではない。命のやり取りになっている。

 この危険な闘いを少林寺の僧達が見守る。
 その中でもひときわデカくて偉そうなのが劉海王だった。
 1人だけイスに座っている。
 そして、デカい。他の人間の倍近くある。
 なにを喰って育ってきたのだろう。
 やっぱ、ですか?
 女人禁制の少林寺でですか?


 老いてますます巨体の劉海王とは対称的に、バキは弱冠17歳にして激ヤセ&毒によるマダラもようの皮膚で不健康さをみせている。
 こんな病んだ男が伝説の擂台(らいたい)へ上がろうというのだ。それは擂台への、中国拳法への侮辱である。張の表情がますます険しくなる。

 擂台とは、そこまで神聖な場なのだろうか。
 次期海王候補の張がここまで怒る。ということは、擂台は海王襲名に必要な試練なのかもしれない。
 そうであれば、烈がわりと軽く擂台の名を出したのもうなずける。烈は海王なのだから、その試練がなにか知っているはずだ。

 どちらにしても、バキには擂台というビックイベントが待っているのだ。
 中堅や大将が控えているようなものだ。そう考えると、先鋒の張はますます噛ませ犬の予感が強い。
 最大トーナメントならリーガンだ。
 あの大会でもっとも速く、日に2度の敗北を知った男と同じだ。

 猫背でやせていて、昨日のパンツはもうはけない(ヤセたんで)って感じのバキだが、試合は容赦なくはじまる。
 だが試合前だというのにバキは観客席(といっても立ち見)の梢江に微笑みかける。
 恋人を安心させるための思いやりなのか、ただの思い上がりなのか
 どちらにしろ闘いを前に携帯電話で彼女とデートの約束をするような暴挙に、張の血管が浮き上がりまくる。

「斗ッッ」

 烈の合図と同時に張は「反(タン)ッ」と踏みこむ。
 蹴りだした足の後から、噴き出す砂塵の凄まじさ。一撃で決めるつもりか?

 だが、バキはそんな張の攻撃を両手を広げ、微笑でむかえた。
 ノーガードであり、正面を向いているためマトにもなりやすい。
 格闘技の常識からすると、あり得ない体勢だ。

 2ページ見開き使ってノーガードという奇襲に虚をつかれた張だが、すぐに血管を浮かせて打ち抜こうとする。
 人差し指一本拳で狙うは眉間か、人中か!?
 だが、張の攻撃はバキをすりぬける。

 まるでガイアの防御法のような動きでバキは攻撃をかわし、張に胴タックルをかましていた。
 相手の胸あたりに頭を密着させて組み付くのが胴タックルだ。
 克巳が対花山戦でみせたように、この状態では打撃技は出しにくい。
 さらに相手の足を刈れば、倒すこともできる。この場合だと床が石なので、かなりのダメージを与える事ができる。

 張の攻撃をかわして、鮮やかなタックルを決めたバキに観客がどよめく。
 烈はちょっとうれしそうだ。
 信頼通りバキが強さをみせてくれたためだろう。

 もしかしたら、生意気な後輩にお仕置きができて嬉しいのかもしれない。
 自分で殴りたくても、同門対決は禁止だし。

「撞(シュ)ッ」

 この間合いで有効な攻撃はヒジだ。
 だがバキはそれも見破っていた。抱えていた胴を持ち上げる。張の足が床から浮き上がった。
 足場がない状態で殴っても効果は薄い。
 文字通り、地に足がついていない。

 張は必死になって殴るが、バキの表情は余裕のままだ。
 その気になれば、このままオシッコポーズへと技を変化させることもできる。
 毒状態でも、範馬の血筋は勝ててしまう。
 そんな範馬がちょっぴり憎い。

 あくまで余裕のバキは張を地面におろす。
 冷や汗だらだら負け犬モードの張だが、気力をふるい起こして廻し蹴りを放つ。
 せまい間合いでも放てる外廻し蹴りに似た動きで、足の土踏まずで相手を攻撃する蹴りだ。
 だが、これも不発。
 またもやバキに抱きかかえられる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」

 あまりの実力差に張は声にならない悲鳴を上げるしかなかった。
 内心では「救命阿(ジュウミンヤ)ッッ」を16連発ぐらいはしているだろう。

 しょせんこの闘いは擂台というメインイベントの前座試合にすぎない。次回で決着だろうか。
 実は今闘っているのは弟の張陽王でした、なんてオチは無いと思う。

 今は次期海王候補として尊敬を集めているであろう張だが、ここまでみじめに敗北しては立つ瀬が無かろう。
 とりあえず、髪は剃られるとみた。
 張を倒したあとは、ついに謎の擂台に挑戦となるのだろう。
 そして、毒の治療はどうした?


 今回、劉海王がずっと沈黙しているのが不気味だ。
 眼が影になっていて表情が読めない。
 怒っているのか、喜んでいるのか、わからない。
 いや、たぶん怒ってんだろう。それも、ものすごく
 張の髪を素手で全部引っこ抜きそうな勢いで怒っているに違いない。

 劉海王は、中国拳法最強と言われている男だ。
 烈よりも実力が上なのだろう。
 打岩作りは烈に負けているが、打岩=強さではないことは、今回張が証明している。

 静かなる巨魁・劉海王がついに動きそうな予感がする。
「キサマは中国拳法を嘗めたッ!」
 ドキャッッ!

「わ、私ですかー?」
 殴られ、は吹っ飛ぶ。
「今突いた秘孔は、寿命を100年縮めるかわりに潜在能力を全て引き出す、強制復元の秘孔ッ」
「ッッ……(寿命100年って、あんた以外に耐えられる人間いねぇよ)」
「張よ、それでもなお不甲斐ない闘いをしたときは、たとえキサマが死んでいても復活させて、それからもう1度殺すッ!
「ッッ……(やる。この人はなんか怪しげな秘術とかムリヤリ使ってもやる)」
「張よ。お前も、これであの少年と同等だ」
「ッッ……(それって、死ぬ寸前ってことですかー)」

 と言う感じに劉海王が暴れるのを希望する。
 劉海王、怒りのあまり50年ぶりに毛が生えたって感じで。
by とら


2003年6月26日(30号)
第2部 第174話 大擂台賽(だいらいたいさい) (554+4回)

 愛を知ったバキが強いのか、すごみの無い顔の張が弱いのか。
 とにかく、勝負にならない。末期のシコルスキーと同じだ。

 父親が子供と遊んでいるような気軽さでバキは張を持ち上げて、そのまま会場の端っこに降ろした。
 バキは、かつてジャックに持ち上げられて通路のはしに置かれたことがあるが、それをまねたのだろうか。
 勇次郎をまねたのなら『おしっこポーズ』を強要したのだろう。
 それはもう、君が漏らすまでこのポーズをやめないッ!ぐらいのいきおいで。

 バキに圧倒的される張を見て烈は失笑する。敵ならともかく、同胞にバカにされ張はまたまた血管を浮き上がらせる。ちょっとだけ不憫だ。

 なんか烈さん、中国に帰ってから態度がデカい。
 昔から態度がデカい人ですが、日本在住の時は怒りながら威張っていた。余裕がなかったのだろう。
 それに対して、現在は血管を浮かせることもない。情緒が安定している。
 実は烈老師、故郷を離れて寂しかったりしたのか?

「この試合まだ続けますか」

 誰の目にも勝敗はあきらかだった。
 ただ、烈のこの台詞は張に対する嫌がらせという感じもする。
 烈の言葉に反応したのか、張はバキに対して金的蹴りを敢行する。

「愚かな………」

 烈の指摘通りだ。
 古今の格闘漫画でバキほど睾丸を蹴り上げられた主人公はいないだろう。
 しかもいくど蹴られようと、玉1つ潰れることはない。鋼鉄の睾丸を持つ男、それが範馬バキである。
 パシッ とバキは金的蹴りを掌で受けているが、絵的にはつま先が目標に達しているように見える。
 だがバキの表情はまるで変わらない。蹴った張の方が目を見開き、汗を流している。
 バキの金的に当たったのかもしれない。そうであっても、張は岩のような感触に驚愕しているのだろう。

 つづけて張は全身をひねっての手刀を打ちこむ。
 勇次郎の最終奥義・鬼哭拳(独歩にとどめをさした技。勝手に命名)のように体が消えて見える恐るべき技だ。
 だが、バキはその攻撃より速くハイキックを顔面に寸止めしていた。
 打岩を作り上げた神速の手刀が通用しなかった。筆舌に尽くしがたい瞬間(とき)を永く永く堪え身につけた人ならぬ速力が敗れたのだ。

 張は敗北を認めた。心も折れたかもしれない。
 タクタロフやガーレンなどのロシアの人達のように、持ち上げてから叩きつけるのと、張のように期待も見せ場も無いまま終わるのと、どっちが幸せなのだろう。
 時々は張のことも思い出して、ネタとして使ってあげましょう。

 試合が終わり食事となる。
 面子はバキ、烈、梢江に劉海王だ。
 なんと劉海王が洋服を着ている。いつも半裸の衣装を着ていると思っていたが、ちゃんと洋服も着るようだ。薔薇のような柄がとってもステキです。

 その席でバキは擂台(らいたい)に出場しろと言われる。
 擂台とは「中国や台湾で行われる武術トーナメント」「この試合場を中国語ではそう呼ぶ」そうだ。
 もちろん問答無用で、拒否権もなさそうだ。

「これは生還するための戦いだ」

「しかし中国は広く そして中国拳法は深遠(ふか)い」
「わたしが言っているのは精神論ではない」
「実質的な治療として戦いこそが必要なのだ」


 ここに来てやっとバキの治療の話が出てきた。
 予想通りと言うべきか、擂台に出場することがバキの治療につながるようだ。
 ただの趣味でバキを擂台に出場させるのであれば、かなりヒドイ人だったが、これでちょっと安心できる。本当に治療になるのかどうかは怪しいが。

「百年に一度の」「大擂台賽が行われる」

 今まで沈黙を守ってきた劉海王が口を開いた。
 古代ローマでは絶滅したパンクラチオンが中国で生き残り、それが擂台だという。

「真なる海王を決定(きめ)る真なる擂台賽」

 劉海王の口から爆弾発言が出た。
 真の海王という言葉にバキは、劉海王を見直す。
 今ごろこの威圧感のあるじいさんも「海王」だと気がついたようだ。
 たぶんバキは、ドリアンが海王だということを知らない。あのころのバキはHのことで頭がいっぱいだった。ちなみに「H」は「変態」のことだそうです。
 だから、海王の名を継ぐ者が数人いるとは思っていなかったのだろう。

「そうわたしが劉海王」
「そしてここに烈海王がいる」

「中国全土に散らばる」
「幾人かの海王」
「その海王達が海皇(かいおう)になるための」


 3人どころではない、海王はまだいるのだ。
 範馬の種が世界中にバラまかれていたように、中国中に海王は潜んでいたようだ。
 まさに海王の中の海王を決める大擂台賽だ。

 ちょっと謎が解けた。
 海王の称号を持つ者が同時代に数人いるのは、その上に絶対的な称号の海皇がいるためだ。
 烈が弟子も持たず後輩の指導も行わず、諸国蛮勇記をしていたのは、より強くなって海皇になるという目標が合ったためだろう。

 そして、劉海王が百歳を迎えてなお「やっと半分生きたというところかの」と言ったのは、できればもう1回擂台賽に出場するつもりなのだろう。
 200年を生きようと企む劉海王の自信の根拠は、擂台賽にあるのかもしれない。
 擂台賽にはなにか特別な力があって、体内の毒を除去したり老化した肉体を若返られることも不可能では無いのだろう。
 そうだとすれば、烈がバキを擂台に上げようとするのも、あまりムチャな考えではない。
 しかし、仮面ライダー龍騎のようだ。12人の敵を倒して最後の1人になれば、望みが1つだけかなうって感じで。

 烈の強さを知るバキは、今の状態で擂台に上がる不安を隠せない。
 だが、2人の海王は笑いを見せる。
 バキが擂台に出場したがる理由があるのだ。
 切り札を最後まで伏せておく。この師弟はそろって遊び好きのようだ。

「とんでもない男がエントリーしている」

 バキが出場したがり、烈がとんでもないと評する男は1人しかいないだろう。
 同時刻、厚木基地に1人の男が立っていた。
 米軍ジェット機をタクシーがわりに使う男、世界各国の長が恐れるMr理不尽、隠し子100人説を持つ男……

「そう」


 地上最強の生物・範馬勇次郎、香港へ向かう。
 マホメドJrにコケにされたばかりなので、むちゃくちゃ不機嫌そうだ。
 やはりホテルは素手で破壊したに違いない。

「だめェッッ」

 早くも梢江が号泣して止める。
 闘わず毒による死を選ぶのか、闘って父に殺されるのか
 バキは究極の選択をしなくてはならない。



 虚凶範馬の血を引く者が大量にいるらしいことがわかったばかりなのに、今度は海王の名を継ぐ者が幾人かいることが判明した。
 もっとも烈の口ぶりや、襲名のきびしさを考えると海王はそれほど数が多くなさそうだ。


 ところで、大擂台賽に勇次郎が出場するとは誰も言っていない。
 香港では擂台とは場所が違うかもしれない。
 もしかするとエントリーしたのは勇次郎ではなく別の誰かかもしれない。

「エントリーしているのは加藤と末堂だ」
「だれェッッ!?」

 こいつら静かに死んでそうだし。治療してあげましょうよ。
by とら


2003年7月3日(31号)
第2部 第175話 勝利宣言(555+4回)

 勇次郎が出場する聞いただけで梢江は泣き叫ぶ。
 情緒の不安定さは、花山のスネを蹴り石を投げつけたときに証明ずみだ。
 巨凶なる範馬の命の精を受け止めただけあって精神の爆発力もただごとではない。
 1冊の雑誌を滅ぼす毒素をまき散らしているような激しい慟哭だ。

「………………………」

 2人の海王は目の前でいきなり切れられて、ちょっと引いているようだ。
 内心、こんな烈女は200年ぐらいたたないと通過できないと思っているのかもしれない。
 次々回の大擂台賽までには通過しておいてください。たぶん、範馬に勝つのに必要だ。

「そうですか……………」
「父親が出場(でる)んですか………………」


 勇次郎の名を聞きバキも汗を流す。早くも圧迫感を感じているのか、バキのしゃべり方も重い。
 しゃべりが重いのは、真横で彼女がブチ切れたせいかもしれないが。
 こうして考えると、梢江を彼女にしてから日常が危険な戦場となっていて、修行にはもってこいなのかもしれない。
 たぶんエンドルフィン出っぱなしです。

「我々は海王の名に賭け範馬勇次郎氏を歓迎するつもりだが…………」

 己の誇りに賭けて勇次郎を迎え撃つという劉海王だった。
 海皇ではなく海王にしているところが、ちょっと賭け金ケチっているようだ。
 それはそれで、地上最強の悪鬼と知りながら闘いを挑む姿勢に、中国四千年の誇りと歴史を感じる。

「烈よ」
「君が日本で見た勇次郎氏の印象を語ってくれぬか」

「彼の参戦は栄えある 我 中国武術史―――――――」
「未曾有(みぞう)の一大事件かと………………」

「質問の答えになっていないが…… それほどの実力の持ち主ということかな」


 少林寺の僧でもあるだけに、なんだか禅問答のような会話だ。
 あ・うんの呼吸というか、深い師弟愛があるからこれでも会話が成立しているのだろう。
 ちなみに少林寺の開祖・達磨大師は禅宗をひらいた人でもあります。
 劉海王の容貌は達磨大師に似ているような、似ていないような…。

 なんにしても、一国の軍事力と同等の戦闘力を持つと評されている勇次郎の脅威は理解されているようだ。
 烈の諸国蛮勇記は本人の修行だけではなく、勇次郎をふくむ世界の強敵の情報収集も兼ねていたのかもしれない。
 まあ、本人はすごくワガママな人なんで、空手の師範になったり、幼児退行したドリアンを育ててみたり、地割れに飲まれて「救命阿(ジュウミンヤ)と叫んだり、余計なことばかりやっている。
 そう言えばドリアンは日本で放置だろうか。こっそり中国に輸入したのだろうか。

 烈は日本で勇次郎と遭遇した。
 だが、中国4000年がバキの17年を恐れているといわれ言い返せなかったり(事実、バキに負けた)、廊下をブッた斬る蹴りを見せられてちょっとビビってしまった。
 そんなこと詳しく報告できるわけがない。

 ちょっと抽象的な報告になってしまったのはそれなりの理由があるのだ
 たぶん、劉海王もその辺のことを見ぬいて、あまり深く追求しなかったのだろう。

「例えるなら…」
「大国が仕掛けてくる近代兵器による武力に対し――――――
 我々 拳法家が素手のみを武器に戦うことに似るかと……」


 しつこいようですが、一国の軍隊並の戦闘力だ。
 そりゃあもう戦車相手に素手で闘えと言うようなものだ。
 自称世界一の拳をほこるリチャード・フィルスだって、殴った拳の方が砕けている

 烈のこの絶望的な評価を聞いて、劉は大いに笑う。
 100歳をすぎてボケはじめているのだろうか。
 というか素手で戦うことはないだろう。中国武術を嘗めたと怒っていたのは一体??

「ならばもとより結果は見えているではないか」

「はい」
「我 中国武術の圧勝かと……」


 えっ、烈もボケた?
 ボケているにはあまりにも自信満々、背中から後光がさしている。
 中国に帰ってからいやに態度がデカかったが、ここまで増長していたとはッ。
 烈のこの暴言、というより妄言に梢江は泣きやみ、バキも固まってしまう。

 まさに泣く子も黙らす烈海王だッ。

 一応、烈のいっていることはまったくの妄言ではない。
 中国軍は近代兵器を人海戦術で撃ち破ったこともあるムチャな軍だ。
 地雷だろうと塹壕だろうと突っ込んで死体で埋めて突破したりするらしい。戦争に勝っても死者は敵よりも多い軍隊らしい。
 近代兵器はとにかく燃料がないと動かない。だから後方支援兵力に全体の約60〜65%の人員が必要となり、補給路が伸び切った状態で波状攻撃を受けると干上がる可能性がある。
 その点、歩兵中心の中国兵は食料さえあればなんとかしてしまう。
 中国武術兵なら走り、飛び、戦い、水の上も走る。
 近代兵器も4000年の歴史の前に敗れるしかあるまい。

 そんなわけで勇次郎1人を倒すまでに何人の犠牲者が出るか知らないが、いかなる犠牲をはらっても勇次郎は倒すつもりのようだ。
 受ける勇次郎は同時に四方の人間を倒せれば全世界の人間と喧嘩しても勝てると豪語している。
 勇次郎、記録に挑戦するチャンスだ。

 その場に緊急連絡が入る。夜更けではあるが来客者が現われたのだ。
 ザウッ範馬系の足音を響かせて足だけ見せる構図で、その人物は登場した。
 いかにも勇次郎と思わせる構図だが、ギャラリーは誰も汗をかいていないので勇次郎ではないだろう
 ちなみに張さんは早くも背景キャラとなって、その他大勢の中に溶け込んでいる。

 その男の正体はモハメド・アライJrだった。
 バキレビューを書いている大吉マスター21氏170話で指摘しているが、最近は「モハメド」と表記している。
 マホメッド → マホメド → モハメドと段々近づいている。
 そのうち、うっかりモハメド・アリと呼ばれるのではないかと心配だ。

 やってきた目的は当然、大擂台賽(だいらいたいさい)への出場だった。
 劉海王はオリバにも負けず劣らずの脅威的な肉体を見せつけながら、モハメドJrに実力を示せと言う。
 バラ柄のステキなシャツを着てくれたおかげで、オリバと同じく劉海王は胴が細いことがわかった。
 100歳超えた肉体でも、力だけで敵を圧倒できそうだ。
 早くこの人が戦うところを見たい。

 モハメドJrの相手は丸顔ヒゲ坊主の男だった。
 髪が剃られているため、張よりも格下と言う感じだが、この場に呼ばれたのだからただ者では無いだろう。
 張ではなくこの男に呼んだのは、Jrの実力を疑っているからだろうか。
 そして、なにもできずにバキに敗れた張の実力が疑問視されたのかもしれない。
 そうなると次期海王候補の資格を剥奪され、髪も剃られているのだろう。
 お前アッガイに乗ってやり直せって感じで。

 モハメドJrは地面の状態を確かめるように足元を見ながらステップを踏み始める。
 手には例によって巨大なグローブが装着されている。
 勇次郎に破られたグローブは通常サイズだったようなので、これとは別物だ。
 彼のバックには相手に合わせて使う、様々なサイズのグローブが大量に詰められているに違いない
 この相手ならグローブを外す必要は無いといい、戦いが始まる。

「さァ…」

 戦いは猪狩アライ状態で始まった。
 今度ばかりは逃げるわけにいかない。今度こそ追いつめられたモハメドJrだった。
 センスの見せどころである、この状況をいかに打破するのだろうか。

 劉海王が性格悪そうに「さァ」と笑う中、解答は次回へ持ち越される。


 こういう展開だと、前にJrが逃げたのも今回の前フリだったのではないかと思えてしまう。ダマされているのかもしれないが。

 そもそも、相手が勇次郎だったら何をやってもダメだ。
 だからあの場から逃げた。
 ホテルから出ただけじゃ心配だから、そのまま急いで空港へ行き中国へ海外逃亡する。

 Jrは猪狩アライ状態からの対策も考えていそうだ。ただ、対策が通用する相手に使わないと意味が無い。
 今回の相手は勇次郎とは違い、ちゃんと攻撃を食らいそうな感じを出している。
 そんなワケで今度はちゃんと期待できそうだ。

 今後の展開だが、相変わらずモハメドJrはグローブはつけたままなので打撃で戦うのだろう。
 しかし、この人はいつになったらグローブを外すのだろう。
 グローブ無しで殴って、拳を骨折したなんてオチはカンベンして欲しい。

 ところで、最近、少し梢江がかわいく見えてきた。
 いや、去年より視力が落ちてはいるんですけど、正常ですよ多分。馴れただけかもしれないけど。
by とら


2003年7月10日(32号)
第2部 第176話 因縁(556+4回)

 これでまた逃げ出したりしたらある意味、英雄だ。
 本日(?)2度目のアライ猪狩状態を経験するモハメドJrだが、こんどは逃げるわけにはいかない

 格闘センスが問われるこの難題に対するモハメド・アライJrの出した答えとは!?
 相手の足元にしゃがんだ。
 自らのフットワークを殺し、相手の土俵に限りなく近づく行動だ。

 アライ猪狩では、アライ側が拳で攻撃しようとすると相手の足の届く位置に無防備な顔面をさらさなくてはいけない
 顔面をさらしたくないから苦しむのだが、モハメドJrはそれを自分からさらしてしまった。

「さァ」

 前回とは逆に今度はJr顔面をさらして挑発する。
 アライ猪狩状態では立っているほうが攻撃を仕掛けようとすると不利になるのだが、この状態では寝ているほうが攻撃を仕掛けようとすると不利になるのだろうか。
 Jrは勇次郎を前にさっさと逃げたように、冷徹な判断力を持っている。
 この挑発にはなんらかの意味がありそうだ。

 対戦相手の小太り拳法家は一瞬あっけにとられながらも素早く蹴りを繰り出す。
 だが、見切る。
 静止した時間の中で見ていたかのように見切る。
 クツの底とJrのアゴまでの距離は指1本分もない。

 ほとんどマトリックス状態で、連射される蹴りの嵐を上半身の動きのみでかわし続ける。
 父モハメド・アライは、パンチだけではなくあらゆる攻撃に対応できるとスウェーバックを防御技術の1つに選択した。
 そして、Jrはその技術を究極にまで高めたのだろう。上体をそらすだけではなく、横にも避けている所が新化形なのだろうか。
 その結果がこれだ。
 対応しすぎだ
 あんたの背骨はなんの材質でできている?
 なんか明らかに胴が伸びている気がするんですけど……。もう全局面対応型 闘争術の枠すら超える人外の秘術だ。

 既知の外側に存在する超絶防御に翻弄されながらも相手は蹴りを放ちつづける。
 しかし、その2本の足をモハメドJrは捕らえ、抱えこんだ。
 さらに相手の腰に身を寄せ、総合格闘技で言うガードポジションになる。

 この場合、上になっているJrが有利という訳ではない。
 体を足ではさまれているので相手に上手くコントロールされることもある。また下手に手を出すとその手をつかまれ、関節を決められる場合が多い

 だが、Jrの拳はモノが違った。
 閃光のように光ったと思ったらバスンッと重い音を立てて喰らっていた。腕を掴む時間もスキもない攻撃だ。
 この攻撃だけで視界が歪むようなダメージを受けている。
 たまらず逃げだし、ダオッと立ちあがる。

 四千年の歴史があるだけに立ち上がり方がムダにカッコいい
 烈老師も同じように立ち上がり方が美しかった。
 これはダウンしたと言う危機的状況であっても、自分にダメージはないとアピールするための技術かもしれない。
 どんな状況でも己を奮い立たせ、敵に精神的な圧迫感を与える立ち方を3500年前ぐらいに開発したのだろう。

「ワカったでしょ」
「立ってたほうがイイって」


 そういってJrは再びステップを踏みはじめる。
 本当に立っていたほうがいいのかは疑問だやっぱりアライ流の本懐は立って闘うことにある。
 Jrがこう言ったのは、また寝て欲しくないからだろう。

 あの作戦は勇次郎が相手では通用しない。勇次郎の蹴りはかわせないだろうし、グランドでの技術差を考えると、ガードポジションを取っても有利とは思えない。
 同様に全盛期の猪狩が相手でも勝利は厳しいかもしれない。

 そもそも、スウェーでよけられる顔面を狙わず、動きようのない腹や足を(そして金的)狙えばJrはかなり困ったはずだ
 最大の弱点である顔面をあえてさらすことで、他の弱点を隠しているのだ。
 攻撃されるとわかっている弱点は、もはや弱点では無い。
 相手は、1番攻撃しやすそうな所を狙ったつもりだが、そこは1番防御力の強い所でもあったのだ。

 恐らく相手を挑発したのも顔面を狙わせるための布石だったのだろう。
 そう何度も通用しなさそうな解決方法を見せて、ボロが出る前に得意な状態に移行させる。
 Jrは若いが恐るべき試合巧者だといえる。

 そんなわけでJrは自分の領域である立ち技勝負に相手を引きずりこんだ。
 たえずステップを踏み動きつづけるJrに対し、相手は静で対峙する。
 腰を落とし力を溜める。
 Jrが踏みこみ間合いに入った瞬間、溜めていた力を解放するように蹴りを放……
 カウンターッ!
 Jrの拳で壁まで吹っ飛ぶ。

「疾(はや)いッ」
「明らかに遅れて出していた


 後から出したのにも関わらず、相手に先に当たる恐るべき速力だ。
 野球ではスイングスピードが速いとボールをギリギリまで見極めることができ、より安打を打ちやすくなると言う。
 Jrの場合はギリギリまで相手の出方を見てもカウンターを取れる攻撃速度を有しているのだろう。
 それとは別に相手の攻撃はモーションが大きい気がする。ひょっとしてハデ好きですか?

 吹っ飛ばされて相手選手は壁際に追いつめられた。
 この選手にはいまだに名前がない。名前が無いからチョイ役だというのは予想がつくが、て呼びにくいので少し困る。
 そして名も無き中国武術家は、勇次郎に睨まれた小坊主なみの素晴らしい負け犬顔を見せた。
 この顔をしてしまっては逆転は無い。できる事は尿を漏らして読者の失笑を買うぐらいだ。

 すみやかにJrの連打を浴びヒザをガクガク震わせる。
 とどめは右フック。
 この一撃で相手のアゴは折れたか外れたか「ブラン…」となってしまう。
 必勝の確信があるのか、倒れる相手の姿も確認せずにJrは背を向ける

「スミマセンが………」
「どなたかグラヴを外してくれませんか」


 対戦相手を放置するのがアライ流のようだ
 ちなみに父のアライ氏はジャーナリストの取材中に回想したっきり帰ってきていない。ジャーナリストも読者も放置状態だ。

 そして、Jrの意外な弱点が今回わかった
 あの人は自分でグラブを外せない。
 ここは敵地なんで、餓死寸前まで外してもらえません。



 そのころバキはトレーニングを開始していた。
 前回は梢江とイチャついていたのだが、今回は血を吐きながらシャドーをしている
 それを見て梢江は涙に崩れる。
 愛する者を得て強くなったバキだが、生きて闘うために愛する者と決別したりするのだろうか。

 さて、擂台賽の参加者は5人が確定していると思われる。烈海王、劉海王、バキ、モハメドJr、範馬勇次郎。
 いずれも文句無しの怪物だが、どうも人数が足りない。トーナメント大会として成立させるには最低でも8人は欲しい。

 そこで是非とも参加して欲しいのは、幼年編で活躍した小林流の知念さん。
 紛らわしい、キサマは少林寺を嘗めたッ!と言われて瞬殺されそうだが。
by とら


2003年7月17日(33号)
第2部 第177話 決意(557+4回)

 馬鹿なッ。なんかバキが主人公っぽいことをやっているッ!?
 血を吐きながらシャドーをし、血を撒き散らしながら拳を振るう。
 エッ、熱血主人公みたいだおッ?
 なんか横には守ってあげたい系の美少女とかがいるし。ごめん、それはウソだ。
 少し前までイヤな液とか汁を飛ばしながらティッシュに埋もれていたとは思えない変貌だ。

 今のバキは、死ぬ気で頑張っている。むしろ、頑張りすぎて死にそうだ。
 涙を流す梢江には目もくれず、バキは動き回る。
 この場に梢江という人間が存在していることを忘れたかのように、ひたすら己の肉体を責めている。

「ガンバレ」

 初めて梢江が涙と嘆きの言葉以外のものをかけた。
 梢江に声をかけられたことより、その内容に驚きバキは動きを止めた。
 それはバキにとって予想していなかった言葉だったのだろう。

「ガンバレ…」
「バキ」
「ガンバレ…………」


 静かな決意をこめて梢江は言った。
 今までの梢江は必死にバキを止めようとしていた。それが、瀕死のまま闘おうとするバキを応援しようとしている。
 何が梢江の心を変えたのだろう。

「いいのか」
「ガンバっても………………」

「止めらんないよォ………」
「死んだって……………」
「たたかうんだもの……」
「そのためだけに…」
「お父さんとたたかうために生きてきたんだもの」


 こ、この女ッ、タブーに触れやがったッ
 バキは「俺は今まで一度だって……世界最強なんて夢見たことないぜ」とか、「いいんだけどね 強くなくても 自分を守り… そして――― もう1人」とか、梢江に言ってカッコつけていた。
 それはもう読者からブーイングを浴び、バカップル大王の名を欲しいままにしたほどだ。

 だが、それらの発言は建前だったのだ。
 本心ではあくまで地上最強の生物・範馬勇次郎を倒すことに執着していた。
 その事実を、恋人である梢江が指摘した。
 彼女は自分よりも勇次郎のほうがバキの心を支配していると気がついたのだ。

 死を目前にしてもバキは勇次郎との決着を望んでいる。それどころか、死んだって闘うと言われている。
 梢江はバキにとっての最愛の人かもしれない。
 しかし、バキがもっとも執着しもっとも心に刻みつけているのは、父・範馬勇次郎なのだ。
 その感情は負の方向を向いているかもしれないが、愛とすら呼べるほどの感情なのだろう。

「恋じゃ止められない」

 梢江はそういって泣き崩れた。
 愛では勇次郎にかなわず、恋じゃ止められない。
 かつては「最愛にくらべたら 最強なんて」と花山を撃退したこともある松本梢江だが、愛の差で敗北したようだ。

 バキは、勇次郎と闘うために生み出され、勇次郎と闘うために育てられ、勇次郎と闘い母を失い、勇次郎を倒すために生きてきて、勇次郎と闘って死ぬ、のだろうか。
 バキの人生の主成分は勇次郎なのだ。梢江は添加物でしかない。

 色々と回り道をしたが、バキは最期に自分が何をなすべきなのかを思い出したのだろう。
 そして、梢江はそれを横で応援する事しかできない。だから、彼女なりの覚悟でバキを応援するのだろう。
 もしかすると174話で勇次郎の出場を聞き、梢江が「だめェッッ」と言ったのは、バキが自分から離れていくのを予感したからかもしれない。


 大擂台賽(だいらいたいさい)への出場者はいまだ謎につつまれたままだったが、ついに新たな参加者が登場する。
 氏名不明なるも若き中国拳法家の青年だ。
 その青年は流れる水のように演武を舞う。
 外見は……グラップラー刃牙4巻に出てきた中国拳法の張くんに似ている気がする。
 なんか非常にヤバい物が食卓に出されたような気分だ。

 彼の外見で特徴的なのが手だ。
 体は細身のようだが、手が丸い。拳を作るとこんもりと丸っこい。ゴツゴツしていない。
 体質なのか、修行で造ったのか。どう見えるかより、どう造ったのかが重要だ。
 こういう手の持ち主は打岩をやりそうも無い。打震に似た北派の技を使うのかもしれない

 演武の最後は左の順突きだった。「リュッ」と拳を捻り込み、「タァン」と放つ。
 動と静を交えつつ、人差し指一本拳を決めた。
 その拳の周囲にはきらきらと光が見える。
 人差し指一本拳を使用(つか)うなら、拳が丸いことに意味がない。
 そうなると、拳が丸いのは周囲の光と関係あるかもしれない。

「いい感じで…………」
「仕上がってるじゃないか」


 その青年の鍛錬を椅子に座りながら見ていた男が居た。
 黒ずくめの格好に、エラそうな足の組み方が、勇次郎を思わせる。
 だが顔は克巳似だった。
 実力はともかく、ふてぶてしい雰囲気を強烈に発している。そんな所まで神心会の格兵器・克巳に似ている。

「拳も出来上がっている」

 克巳似にそういわれたが、張似は反応を返さない。無言で、液体の入ったツボに向かった。
 ツボには壱・弐…と番号が書かれている。どうもその順番通りに左手をひたしているようだ。
 毒手の特訓に似ているが、その正体は不明だ。
 こんなことをしていると本部さんに怒られるのではないかと不安だ。

「本当に擂台へ上がるおつもりですか」
「百年に一度のこの大擂台が………」
「この私にとってどのような意味を持つか…」
「おわかりですか」


 ふてぶてしい克巳似にたいして、張似は丁寧に答える。
 2人とも擂台に上がるようなので「海王」だと思われる。
 張似には「海皇」を目指すという以外に、なにか別の目的がありそうだ。

 若く見えるけど、実は150歳ぐらいで、さすがに3度目のチャレンジはないから今回が最後のチャンスだと思っているとか。いや、それは設定がムチャだ。

 もう一つ考えられることは、刃牙と同じように張似も体を壊している場合だ。
 刃牙と同じく、擂台へ上がる事で奇蹟の回復を狙っているのかもしれない。
 上手く行けば寿命が100年ぐらい延びる効果もありそうだ。

「容赦はしません」
「たとえ兄である」
「あなたが相手でも」


 ッッ! こいつら兄弟なのかッ!
 ヤオイの世界では兄弟カップリングは数倍の力を発揮するという。それはまさに「兄萌え」「弟萌え」の世界だ。
 いまだに続く「妹萌え」の流行が示す通り、血縁度とエイケンにおける露出度は高いほうがイイらしい。いや、いらねェよ。

 この2人は、鎬兄弟対決や範馬兄弟対決に続く第3の兄弟対決を生み出すのだろうか。
 なお現在の戦績は弟の2勝0敗。ちなみに板垣先生にはお兄さんがいるそうです。
 しかし、2人が兄弟だと2人とも「○海王」という名前なのだろうか。かなり紛らわしい。

 海王・弟(仮)は兄に対し宣戦布告をしながら、パンチングボールに右の掌を当てる。
 ブンッ
 手先が見えなくなるほどの高速で腕を動かすがパンチングボールはまったく動いていない。
 張似がパンチングボールに指を当てると、その一部が削ぎ落ちた
 高速の動きで表面の革を切り裂いたのだろうか。
 接触した状態から対象物を削ぐのが技だとすれば、寸勁の応用だろうか。
 左の光る拳と、右の切り裂く掌。アラミド繊維ってオチだとかなり本気でなじります。

 そして当日!!!

 ついに大擂台賽が開催となった。
 会場はかつてパンクラチオンが行われていたという古代ローマの円形闘技場 ――コロセウム―― を模したものだった。でも柱の装飾がちょっと中国風だ。
 中洋折衷の奇妙なデザインの会場で、刃牙を含む7人+αが闘いを繰り広げるのだ。

 餓狼伝の北辰館トーナメントは1回戦の半分も終わっていないのだが、バキでも同じようにトーナメントになるとはッ。
 これで後数年は両方でお祭りだろうか。

 それはいいのだが、会場はどこにあるのだろう。よくこんな物をこっそりと作っていたものだ。
 とりあえずこの大擂台賽、リザーバーは中国色を出すために格闘パンダが出てくるだろう。
 もちろん張洋王がブン投げられる。

 梢江もバキを援護するため、頭を丸めて参加するかも。
by とら


2003年7月24日(34号)
第2部 第178話 集結(558+4回)

 海王入場!!
 出てくる出てくる、海王が出てくるッ!

 これだけの数の海王を国のどこに隠していやがった。国際警察機構の目はフシ穴だ。
 大国の近代兵器を素手で圧倒すると豪語したのはダテじゃない。
 人間大量破壊兵器となった武術の結晶が12人。

『百年経ったらまたおいでッッ』


 常人には一生一度のお祭りだ。今日見れたアンタは運がいい。出だしからアナウンサーも沸騰して飛んでいる。そりゃ、ムリだ。百年はムリだ、落ちつけ。
 しかし、客は誰もつっこまねェ。誰もきいちゃ、いないのか。
 なにしろ、この場に海王が潜んでる。12人の海王が潜んでる。よそ見している余裕はない。

『天体の』
『位置を表わし十二黄(きゅう)ッッ』
『一年を月で隔てて十と二月ッッ』
『天・地・日・月 八方を守護する神を十二天ッッ』
『釈尊を護りし神が十二神将ッッ』
『基督(キリスト)に選ばれた弟子 十二使徒ッッ』


 まるでトリビアの泉の大洪水。たとえて言うならトリビア海王だ。
 とにかく「12」の数字にこだわるアナウンサー、役に立たないムダな知識をひろうする。
 ここで盛り上げておかないと、あとで海王たちに一発ずつ殴られるのだろう。

『そして今ッッ 母国を護る十二名の戦士がここにいる!!!』
『海王入場!!』


 秘密のベールに包まれていた海王たちが、ついに姿をあらわす。
 北から南から。中国全土(参考:地図)から、世界各地から12人の化物がやってきた。

『劉 海王ッッッ』
『黒龍江省 白林寺(びゃくりんじ)ッッ』


 さきがけは百歳拳士の劉海王。中国拳法界最強の呼び名も高い老拳士。
 次回、百年後の大擂台賽にも参加する気まんまんの超絶ジィさんだ。

 黒龍江省は中国の北東端、ロシアに接する辺境地。日本と因縁ある満洲(まんしゅう)と呼ばれた土地だ。
 戦国時代は燕国があり、土地の人を燕人(えんひと)と呼ぶ。
 三国志では破天荒の豪傑・張飛が燕人で、強兵が多い土地なのだ。


『烈 海王ッッッ』
『同じく黒龍江省 白林寺ッッ』


 二番槍は烈海王。最強クラスの武力を誇る蛮勇拳士、嘗めたらイカン。
 ただし範馬の一族には相性悪い。バカにされ、踏み台にされて敗れている。
 見せ場で油断すれば、背後をとられ注射でブスリ。それはもう、散々な目に合わされた。
 背後の範馬に気をつけろッ!

 しかし、龍江なのになぜ林寺なのだ。
 もう一つの疑問は、日本へ行ったときの遠回りだ。
 中国縦断してまず香港へ行く。それはちょっとムダに動きすぎ。
 それとも、劉の魔の手から逃げるには、それぐらいのフェイントが必要なのか。


『孫 海王ッッッ』
『吉林省 節拳道(せっくんどう)ッッ』


 上品な雰囲気で、かすかな微笑を浮かべる孫海王だ。
 半裸の白林寺拳士とは違うとばかりに正装している。

 検索すると精武建身会(北派少林拳「節拳」)というものがあったので、北派の使い手だろう。
 吉林省は黒龍江省のとなりにある。この人もやはり燕人だ。近所なので、烈たちと面識もあるだろう。
 蛮勇の白林寺に対し、紳士の節拳道が対抗心をもっていると面白い。


『楊(よう) 海王ッッッ』
『山東省 金剛拳ッッッ』


 丸みを感じさせる姿に、強靭な意志を感じさせる太い眉を持っている。
 への字に結んだ口元と、眉間に刻まれた怒りジワが、激しい性格を物語る。

 山東省と言えば、水滸伝の梁山泊だ。いや、大吉さんのサイトではなく。
 中国には「山東大漢(山東の大男)」という言葉がある。山東には体格の優れた豪傑タイプの男が多いのだ。
 楊自身はそれほど大男ではないが、大男を相手に闘い続けたのだろう。
 それはもう108人組み手とか、天魁に始まり地狗に終わる108の必殺技とか、ワイヤーアクションしているような超絶技があるに違いない。
 反権力嗜好の山東大漢と揉みあい鍛えた体は金剛石(ダイヤモンド)ッ! てな感じの活躍を期待したい。
 体格、表情、出身地から、反逆系・根性系・打撃耐久力の高い男ではないだろうか。


『陳 海王ッッッ』
『福建省 三合拳(さんごうけん)ッッッ』


 初見の感想は、冥(くら)い目をした範馬刃牙か。とにかく目つきがヤバい。絶対、人にいえない仕事をしているに決まっている(偏見)。
 服装はドイルの服に似ている。動きやすさを重視しつつ、人に肌を見せない秘密主義的だろうか。
 大辞林 第二版によれば三合とは次の意味がある。
『さんごう ―がふ 0 【三合】
(1)陰陽道(おんようどう)でいう厄年の一。太歳・太陰・客気の三神が合すること。災害が多いという。
(2)金星・木星・火星が重なり合うこと。凶兆。三星合。』
 拳法に名前をつけるなら、もう少し幸せそうな名前にしましょうや。
 三合拳、こんな名前はかなりマズい。
 敵は必ず傷つけ殺し、自分も不幸になってしまいそうな暗黒拳の予感がする。
 この人は非童貞(=殺人経験アリ)だろうと、かなりの確信がもててしまう。
 なお、三合に関わる話には次のようなものがある。
 香港には、三合会と総称される犯罪組織が存在しているといわれる。元来、三合会とは、清朝打倒を目的として中国で結成された秘密結社であったが、徐々に犯罪組織へと変質し、現在では香港の犯罪組織の代名詞とされるほどになった。近年、三合会は、ストリート・ギャング等と呼ばれる不良青少年の集団への影響力を強め、また、それらの集団から三合会の構成員となる者が目立ち、三合会の青少年層への浸透が社会問題化している。
 三合会の資金源活動は、賭博(とばく)、売春、恐喝、みかじめ料、高利貸し、薬物の密売、ポルノ販売といった伝統的なものから、ダフ屋、まあじゃん教室の経営等といったものまで様々である。
 香港には、三合会を含む犯罪組織を規制する法律として、香港法第151章の規定がある。ここでは、三合会の組織そのものを違法なものとして禁止している。すなわち、三合会を形式的にとらえ、三合会の儀式を行い、また、その名称を使用する組織等を三合会であるとみなし、三合会を組織し、また、参加するだけでも犯罪としている。
平成元年 警察白書 「第4節 海外の組織犯罪の現状と対策 − 3 香港」
 え〜〜ー………。まあ、そんな感じなのだ。
 なんか、この人こそが最凶死刑囚ではないかと思えてきた
 福建省は香港のある広東省のとなりにある、ウーロン茶発祥の地だ。のんびり まったり。


『除 海王ッッッ』
『江蘇省 龍王拳ッッッ』


 お客さんも「でけェ〜〜」と驚く説明不要の最大海王。
 ただデカいだけならとても危険だ。三崎健吾似の男だが、同種の剃られた頭を持つ巨漢・立脇如水(現在ピンチ中@餓狼伝)を思い出してしまう。

 江蘇省は上海、南京を含む、昔から豊かな土地だ。
 長江の出口があるこの土地にふさわしく流派は水にちなんだ龍王拳。豪壮な南派中国拳法が炸裂しそうだ。
 服は洋服のようなので、洒落た土地柄にふさわしく洒脱な性格なのかもしれない。
 ところで中国人の「徐」姓は見たことがあるが、「除」姓は見た記憶がない。……ご、誤字じゃないですよね?
 すぐに負けそうな候補、その1。


『毛 海王ッッッ』
『河北省 受柔拳(じゅじゅうけん)ッッ』


 ぷっくりした人が出てきた。ずきん(バンダナ? 帽子?)をかぶり、おしゃれにも気を使っていそうだ。ハゲを隠しているだけかもしれないが
 まさか、太ったガイアでは無かろうな。

 河北省には首都の北京がある。おとなり河南省には少林寺がある。そんな感じで正統派だろうか。
 流派の名前からは受けの技が思い浮かぶ。必要以上に争そわない、護身の心と技術を持った流派なのか
 そうなると逆のイメージを持つ金剛拳の楊海王と闘えば、柔対剛の対決となり面白そうだ。


『サムワン 海王ッッ』
『タイ国 ムエタイッッ』


 って、ミギャ―――――――――ッッ!
 なぜに呪われた格闘術がこの大擂台賽に参加するのだ?
 まだ、いぢられ足りないのか。それとも、ついに、やっと、ようやく勝利する時が来たのか?
 バキ世界において、そこにいるだけでネタになってしまう格闘技、それがムエタイだ
 いや、正直いってダメだろう。(やられ役の)歴史が違いすぎる。10年前には通過してますよ。


『李 海王ッッッ』
『広東省 薬硬拳(やくこう)ッッッ』


 前回登場の張似のだ。
 名前の通り薬をもって拳を硬化させる流派のようだ。そうなると、パンチングボールは鋭く切り裂かれたのだろうか。
 きらきらひかる必殺の拳が不気味だ。
 サッカー選手にとってボールが友達ならば、ボクサーの友はパンチングボールだ。アライよ友の仇をとれッ!


『範 海王ッッッ』
『同じく広東省 拳王道ッッ』


 そして克巳似のだ。
 兄弟なのに苗字が違い、そして「範」の姓だ。こんな姓を持ったため、ネットで巨凶の噂が飛びかっている。なお、「範」姓も中国ではあまり見かけない。
 初登場の雰囲気も似ていたし、勇次郎が向かった香港は広東省に接している。
 勇次郎はこの男と接触したのかもしれない。
 流派も世紀末覇王って感じで仰々しい。やっぱりただ者ではなさそうだ。


『怒李庵(ドリアン) 海王ッッッ』
『米国(アメリカ)ッ 白林寺ッッ』


 出やがった…
 3番目に登場し、海王の価値を下げてしまった男だ。ついさっき、海王の称号はムエタイにトドメを刺されたかもしれないが。
 ちゅうか目がイってる。ヨダレがでてる。うしろでオリバが笑ってる。
 大丈夫か!? いや、ダメだろう。

 なんかムチャクチャだ。いいのか、こんなん出して。
 ジャージ着てるぞ、しかもスソをズボンに入れている。
 いまどき、えなりかずきか愚地克巳しかやらないようなセンスだ。
 むしろ、克巳が着せたのか?
 すごい不安と期待の中、夢見る海王が出陣する。


『寂(じゃく) 海王ッッッ』
『日本ッッ 空拳道ッッ』


 えっ、独歩?
 ではなさそうだが、ハゲ頭とメガネが似ている。
 顔半分を短目のヒゲで覆っているのだが、ヒゲは白黒混じっているので、それほど高齢ではなさそうだ。
 禅僧のような静かで落ちつきある雰囲気を出している。なかなか注目の拳士といえよう。

 以上、12名の海王が集結した。
 だが、中国の奥深さはこれだけではなかった。
 実在する伝説、奇蹟の体現者、正真証明の本物がまだ控えていた。

『百年経ったから また来たよ』

『齢(よわい) 百と四十六ッッ』
『前ッッ大擂台賽覇者ッッ』

『郭 海皇 その人ですッッ』


 車椅子に乗った老人だった。顔中にシワが刻まれている。むしろひび割れたシワで顔が形成されている
 帽子からはみだす髪はごく少ない。サングラスに隠され目は見えない。
 見えているのか、聞こえているのか、それすらはっきりしないような老いに包まれた人間だった。
 もう、これは人間と呼べないかもしれない。妖怪や神仙のたぐいに近いだろう。

 そう、スター・ウォーズに登場するジェダイマスター・ヨーダって感じだ。
 こりゃ闘うと強いですよ。アゴ外れますよ。ジョージ・ルーカスは一線を超えたと思いますよ。
 早く、この人が飛びまわる姿が見たい。

 続いて中華民国武術省が認めたJr、刃牙、勇次郎が紹介される。
 あの……「中華民国」って「中華人民共和国」の略称には普通使用しませんけど。一応、現台湾政権の正式な国名が「中華民国」なんで。

 つまり、台湾政権のお墨付き?
 むしろ、政府非公認の試合だろうか。むしろ、非公認というより黙認か。
 16個の核兵器が集まっているようなものだ。ヘタに刺激すると国が滅ぶ。

 そして、組み合わせが発表される。
 刃牙、劉、Jrは虚をつかれたような表情をした。勇次郎は無言だ。
 果たして、どのような対戦が組まれているのだろうか?
 発表は次回に…

 次回予想とかは省略します。
 正直いって、今回はちょっと長すぎ。ご精読ありがとうございました。
by とら

追記(03/07/27)

 大擂台賽トーナメントは通常通りのトーナメントとは限らない。
 勇次郎には声をかけたようだが、刃牙とJrは飛び入り参加だ。つまり元は12人参加のトーナメントを考えていたのだろう。
 通常の16人トーナメントなら、4回勝てば優勝だがこの大会の場合では郭海皇は3回闘えば優勝になるように組まれているかもしれない。

 どちらにしても参加者は最低1回は闘う必要がある。その最初の1回を勝ちぬけるかが問題だ。
 刃牙の最大トーナメントではすでに名前の出ている選手(以下、既知選手)は9名であり、初登場の選手(以下、無名選手)が23名である。
 そのうち既知選手同士の対戦は1組、既知選手と無名選手の対戦は7組、無名選手同士の対戦は8組だ。

 また餓狼伝のトーナメントでは現時点の8戦目で既知選手11名、無名選手8名(名前不明1名含む)である。
 そのうち既知選手同士の対戦は1組、既知選手と無名選手の対戦は6組、無名選手同士の対戦は1組(敗者の姿は描写されていない)だ。

 以上のことを考えると、既知選手同士の対戦は少なく(だが1つはある)、既知選手と無名選手の対戦を多くしようとする傾向があるようだ。

 大擂台賽トーナメントにこれを当てはめると既知選手は8名、無名選手は8名と非常にバランスがとれている。
 これでオーソドックスに通常のトーナメントを組むのであれば、既知選手同士の対戦は1組、既知選手と無名選手の対戦は6組、無名選手同士の対戦は1組になるのではないだろうか。
 そうなると、無名選手同士で闘うのはサムワン海王の可能性が高い。ムエタイはよく知られている格闘技であり、一方的に負けるには都合がいいからだ。

 組み合わせは、こんな感じの予想がつくが、誰が勝つのかを予想するのは難しい。
 1回戦を突破できた既知選手は最大トーナメントでは9名のうち6名で、餓狼伝では8名のうち5名が確定している。
 既知選手の勝率は高いが、確実に3名ほど脱落するようだ。
 今大会で1番危険なのは烈だ。何度も活躍しているだけに、あっさりと負けるかもしれない。
 今回登場した選手の半数が1回で消えていくのは非常に惜しい。
 4人ずつのブロックに分けて、ブロック内を総当り戦にしませんか?(ムチャだ)


 今回登場した海王たちの流派についてメールや掲示板で次のような情報をいただきました。

・尽海王さん
『三合拳の「三合」は形意拳や心意六合拳の外三合・内三合から来てるのではないでしょうか?
ちなみに六合拳という武術は実在しています
(中略)
あと孫の節拳道は「截拳道(ジークンドウ/せっけんどう)」も含まれていると思います
ちなみに中国武術には末尾に「道」のつく武術は原則として存在しません』


・しどさん
『もう既に他の方からご指摘されているかもしれませんが、
「陳海王」の「三合拳」というネーミングについてです。
この「三合拳」の「三合」とは、武術用語の「三合」では
ないでしょうか?
私も以前中国武術を学んでいたのですが、中国武術には
「六合」という言葉が有り、「太極拳」「形意拳」「八卦掌」
といった「内家拳」と呼ばれる流派で重要とされる事です。
「六合蟷螂拳」「心意六合拳」という名前の武術も実際に有ります。

そしてその六合は「外三合」と「内三合」に分類されます。
 外三合とは、手と足を合わせる事、肘と膝を合わせる事、
肩と胯を合わせる事、だそうです。
実際に学んで居た時の記憶では、手足の位置の事や、手足の
動きを合わせる事の重要さを戒めた言葉です。
 内三合とは、心と意を合わせる事、意と気を合わせる事、
気と力を合わせる事、だそうです。
言葉の意味ですが、何年も学んでいたくせに良く分りません、
申し訳ございません。』


・建川さん
『今回出てくる拳法のうち、金剛拳、三合拳、龍王拳はすべて少林寺拳法で使われている名称です。
三合拳とは蹴りの攻撃に対して反撃する技術のの総称、、
金剛拳は投げたり倒したあと相手を固めて動けなくなる技の総称、
そして竜王拳は腕等を捕まれたときの抜き技の総称です。

寂 海王はどっからどう見ても少林寺拳法の開祖、宗道臣(そうどうしん)(中野道臣みちおみ)です。

ちなみに三崎健吾は少林寺拳法界で超有名な三崎敏夫先生がモデルです。』


・田磨さん
『ところで今週のバキなんですが、寂海王のモデルはほぼまちがいなく少林寺拳法開祖、
宗道臣だと思います。彼は正真正銘の日本人で戦時中に特務機関員として中国に渡り、
紆余曲折の末に義和門拳の21代目を継いで帰国後、少林寺拳法をつくりました。
ひょっとすると寂海王の経歴はまんまこのままかもしれません。
というか、見ためそのまんまです。似すぎです。似せすぎです。いくらなんでも。』


・いるかピアスさん
『ムエタイは中国拳法にすっごく密接な関係があると、月刊空手道で読んだことがあります。かつて中国拳法はムエタイと何度か異種格闘技戦をしているそうです。どこのどの流派かは忘れましたが、とにかく中国拳法の連戦連敗だったそうです。何度目かの勝負で中国拳法にもようやく初白星を揚げたそうですが、その時ケンポー家が特訓していたのは・・・
中国拳法でなくムエタイだったそうです!』
 有益な情報をありがとうございます。

 中国拳法に「三合」という概念があったのを知らなかったのは私の勉強不足でした。
 こうなると陳海王がどのように闘うのか早く見たくなってきました。16人の中で半分は負ける事になりますが、陳海王は誰もが負け組に予想している。ぜひ、奇蹟を起こしていただきたいッ!(負ける事を前提にした応援)

 また、金剛拳の楊海王と竜王拳の除(でけェ〜〜)海王が闘えば相手を固める技と、腕等を捕まれたときの抜き技の応酬になり、面白い展開になるかもしれません。
 まあ、この2人も負け組入りが予想されているので少し寂しいところですが。

 寂海王の真のモデルといわれる宗道臣氏の写真が載っているサイトは、こちらです。
 似ていますね。ヒゲとか、メガネの種類も同じです。
 寂海王は上に出てきた陳・楊・除とは違い勝ち組予想を多くされています。見た目からも、強そうなオーラを感じるこの人は、かなりの実力がありそうです。

 そして、ムエタイッ!
 いや、ムエタイはドラゴンボールのヤムチャみたいなものですし。死なないように頑張ってください。
by とら


2003年7月31日(35号)
第2部 第179話 資格(559+4回)

 第1試合が巨漢海王・除 vs ムエタイ海王・サムワンだったら俺は怒る。
 だが、発表されたトーナメント表には2人の名前しかなかった
 ごく普通の16人制トーナメントだが書かれている名前は劉海王、もう1人は範馬勇次郎であった。
 これで前回ラストが刃牙・劉・Jr・勇次郎の引きで終わったかがわかる。
 名前の書かれている2人と、勇次郎に因縁浅からぬ2人だ。

 そして―――――、いきなりの大一番(ビッグカード)決定―――!
「悪鬼 ――地上最強の生物―― 」「拳神 ――中国拳法界の実力No.1―― 」
 大国の近代兵器を素手の中国武術をもって圧勝してみせる自信鎬昂昇の前例を超えられるのか、はやくも試される。

「闘神 劉 海王の戦いが見られるぞッ」
「犠牲者は日本人だッ」


 観客は勇次郎を知らないので劉海王の圧勝を予想している。
 劉海王を「闘神」と称しているので、ここの観客は中国拳法に詳しいようだ。
 そもそも、こんな100年に1度の大会を見に来るのだから、観客たちの大半が中国拳法の関係者だろう。
 中華民国と言っているのは、彼らが非合法のヤバイ集団だからかもしれない。

 それはそうと、この2人以外の組み合わせはどうなるのだろう。
 観客は劉海王が闘うとわかった瞬間に忘れてしまったようだが、説明してもらわないと落ちつかない。

『武術性を重要視するためッッ』
『公平を期すためッッ』
『敢えて一回戦ずつの発表とさせて頂きますッ』


 連載中の板垣版・餓狼伝と同じく、誰が誰と闘うかは始まってみないとわからない。前田光世方式なトーナメントだ。
 闘う前から相手の実力を探るのではなく、ごく自然に対戦が決まり、ごく自然に決着となるのだろうか。
 メシを喰うのは構わんが、女を求めるのはやめていただきたい。特に激ヤセの人は。

(本当に現われたッッ)
(公(おおやけ)の大会には一度も参加したことはないハズ)


 毒のせいか、父親が間近にいるせいか、バキは息を乱し汗を流している。
 路上で格闘家を襲撃するのが基本姿勢の勇次郎が、普通に大会に参加して、普通に開会式にでている事に驚いているようだ。
 よく見ると烈も勇次郎を気にしているかのように振りかえっている。
 自分の師が勇次郎と闘うのだ。烈の心境も穏やかではないのだろう。
 その心配を少しは怒李庵とバキにもわけて欲しい。

「さっさと退場しな」
「規則違反だぜ」


 いつまでも会場を去ろうとしないバキに勇次郎は会心の鬼笑いを浮かべる。
 この人は自分の都合で暴力はよくないといったり、規則を持ち出したりする。本人は守る気なんてサラサラ無いんだろうけど。
 それとも、今のところは、高級フランス料理が喰えるので面倒なテーブルマナーも守るつもりだろうか。
 ……いつテーブルをひっくり返すのか、心配だ。

 勇次郎に規則を指摘されたのは、掲示板荒らしにネチケットを注意されたような微妙な感じだろう。納得していないような顔のままバキは去っていった。
 そして、擂台には二人の漢が残る。
 劉海王は勇次郎よりも頭1つ分は大きい。年齢は2倍以上だろう。
 その偉大な実績を持つであろう劉海王の相手として、勇次郎がふさわしいのか? 無謀にもアナウンサーはそれを問う。
 第2試合が始まる前に、このアナウンサーが行方不明にならないことを祈る。100年経ったらまたおいで。

 勇次郎の前に瓦(かわら)40枚が積み上げられた。高さは成人男子と同じぐらいだ。
 瓦は異常に丈夫そうだ。外観には装飾がない。見た目が美しい美術品ではなく、風雨に耐える実用品の瓦だ

『あなたがこの擂台に立つ資格があるというなら』
『ぜひッ 挑んで頂きたいと思うのですッッ』
『果たして何枚まで粉砕可能か!?』
『ぜひッ 挑んで頂きたいと思うのですッッ』


 アナウンサーのなめきった発言で、勇次郎の表情が鬼に近づいていく。
 一言しゃべるごとに寿命が縮んでいるのを、あのアナウンサーは知らないのだろう。
 無知とは幸せであり、不幸だ。

「瓦割り……」
「考えてみたら初めての体験……………」


 闘いの中で淘汰され積みあげられた格闘(グラップル)の結晶そのもののような男だ。こういう見世物的な破壊はやらないのだろう
 もっとも、監禁用シェルター(?)を壊したり、廊下を蹴りで切ったり、ジャガッタ・シャーマンの背骨をポキポキにしたりとかは、やっている。
 そういう破壊は、むしろ好きかもしれない。あえて言えば、趣味か?
 どうも、見世物的な破壊が嫌いなのではなく、壊しがいのある物しか壊さないタイプなのだろう
 ゴジラが都庁や東京タワーを壊しても、その辺のスーパーには見向きもしないのと同じだ。
 景観を守る条例ができて3階以上の建物がなくなった日本に上陸したゴジラみたいに落ちこんでいそうだ。
 と、思っていたら勇次郎はけっこう嬉しそうだ。
 普段やらないから逆に新鮮なのだろうか。

「こんな せんべい程の土の塊を……」
「何枚割ったところで何の目安にもなるまいが」


 そういって勇次郎は手を瓦の上に置いた。
 駄菓子と言ったり、せんべいと言ったり、勇次郎は日本のお菓子が大好きなのか?
 勇次郎が酒を飲んでいるシーンを見た記憶がないので、実はお菓子好きの下戸かもしれない。

 試し割りが上手くても、実戦で強いわけではない。と常識的なことが言いたい訳ではなく、この試し割はつまらんッ!と思っているようだ。
 この程度の試し割りができても、アマレス選手が本格的なジャブを打てる程度にしか役に立たないという事だろう。

 勇次郎は片手ハンドポケット状態で瓦に手を置いたままだ。
 この状態では試し割りは、普通できない。
 破壊力は運動エネルギーに比例する。運動エネルギーは速度の二乗と重さに比例する。
 手を置いたままでは速度はゼロだし、体重もほとんどかかっていないので、重さもあまりない。

 さらに、手の平を瓦に当てているのもよくない。
 運動エネルギーは接触している面積に集中する。同じ力でも指で壁に穴はあけられないが、画鋲を使えば穴があく。
 瓦を割るなら、接触面積が小さくなる手刀か拳の方がいい。

 だが、勇次郎の前では常識は引っ込む。
 勇次郎は、体を沈め手に力をこめた。
 寸勁に似た技術なのだろうか、見かけの速度はゼロなのに破壊の力が瓦を伝わっていく。
 最初に砕けたのは1番下の瓦だった。何らかの衝撃波が走ったのだろうか。
 そして、上部も崩壊する。
 勇次郎の手に触れている瓦が粉微塵になってふき飛んでいく。
 手刀や拳の破壊では無い。手から高周波でも出していそうな粉砕だった。
 一息に地面まで手を落とす。瓦40枚がこまかな破片になっていた。

『ゆ…ッ』
『有資格者でしたァァッッ』


 思わずアナウンサーも認めてしまった。恐るべきパフォーマンスだった。
 勇次郎は恐るべき破壊の芸術家だ。ただ壊せばつまらない物も、絶妙の技で芸にかえる。
 ストーキング行為もストリートパフォーマンスにかえる男なのだ、この程度は朝飯前なのだろう。
 さすが目立ちたがりの血族・範馬一族の長である。

 接触面から離れた方のダメージが大きいという特徴は、バキ69話で劉海王が見せた波紋の打撃も同じようだ。
 勇次郎が劉海王戦の前にこの技を見せたのもなにかの因縁だろう。


 今回の試し割りもそうだが、ジャガッタ背骨折りや、ジャックの紅葉潰しなど、範馬一族は体重を増減できるとしか思えない技を使う。
 まぁ、実際は足を踏ん張って横方向の力を加えているのだろう。ベクトルの計算が合わない気もするが、それは誤差と言う事で。


 一回戦からとんでもない組み合わせになり、次回がますます見逃せなくなってきた。
 劉海王の技術はどこまで勇次郎に通用するのだろう。
 単なる力比べを四千年もかけて中国武術という芸術にまで昇華させたのだ、劉海王が簡単に敗れるわけがない。
 危機を迎えれば、そうあの声が聞こえるはずだ。
「ハッッ、なんてザマだい。これが海王の名を継いだものだと言うのだから、あきれてものも言えんわ。
 海王の名を継ぐものってのはな、ボウヤ。この地球上でイチバ〜〜〜ン強ぇぇ男のことを言うんだぜ」
「か…郭 海皇さまッッ」
 そう郭海皇ぐらいになれば、幽体離脱だって素でやっている。むしろ肉体にくっついている時の方が短い。
 もう、人間というよりピッコロ大魔王の眷属に近い。
 口からタマゴを生むし、カラーで見れば色は緑だ。
 そんな訳で劉も人間を捨てて、勇次郎に反撃するに違いない。

 ところで、試し割りを勇次郎にさせようとしたとき、勇次郎が本気でブチ切れないか心配だった。
「この俺を前によくもそこまでほざけたもの……」
 ダンッッ!

 勇次郎の地団太で会場に巨大な亀裂が走る。
 観客・選手を問わず、集団 救命阿(ジュウミンヤ)状態になる。なんなくて、よかった…
by とら

追記(03/08/04)

 とりあえず、お詫びです。

『勇次郎が酒を飲んでいるシーンを見た記憶がない』と書いたところ、グラップラー刃牙の6巻「第52話 扉のむこうに!!」で酒を飲んでいると指摘がありました。  確かに飲んでいます。ボトル2本も開けています。独歩がかけつけボトル一本で、反応がコンマ1秒遅れるのなら、勇次郎は握力がハンマ1Kg落ちているかもしれません(ハンマは巨凶を表わす数字)。

 岩本さん、江口さん、かんぴさん、へのへのもへじさん、みなさんありがとうございました(五十音順)。  なお、かんぴさんには勇次郎が飲んでいた酒「BEEFEATER」の情報も教えていただきました。重ねてありがとうございます。

 上でもちょっと書きましたが、勇次郎があまり酒を飲まないのは常住坐臥たたかいの中にいるからだろうか。
 勇次郎の基礎体力を考えると紅葉とドアノブ対決で互角なのはおかしい。
 やっぱり飲みなれないものを飲んで、調子悪かったんでしょう。
 それから酒を飲んでいないのは、やっぱり失敗したと思っているのかもしれない。
 そんな訳で劉海王が酔拳とかをやり始めたら、オーガ大ピンチか?
by とら


2003年8月7日(36+7号)
第2部 第180話 惨劇(560+4回)

 コイツは後片付けがたいへんだッ!
 砕け散る瓦(かわら)、飛び散る破片!
 画面に姿はでてこないが、こっそり小坊主(?)が床を掃除しているのだろう。
 勇次郎と劉海王のジャマにならないように、はいつくばって。
 時間かせぎためか、勇次郎が試割りについて語りだす。

「試割り」
「くだらぬショーだ」


 前回も勇次郎は「何枚割ったところで何の目安にもなるまいが」と言っている。
 そもそも勇次郎は瓦割りすらやったことがない。
 超実戦派からすると、試割りは遊戯にすぎないのだろうか。

 それでも、必要以上に粉々にくだいて自分の実力を見せつけている。
 結局、ハデなパフォーマンスが大好きなのだろう。

「もの言わぬ決して反撃せぬ物体を相手に」
「思う存分 殴り叩き蹴り……壊す
「無抵抗をいいことに」


 勇次郎はたとえ弱くても抵抗する人間の方が好きらしい
 岩を殴るぐらいなら、ジャガッタをつぶし、チャモアンを指であしらいたいようだ。
 悲鳴をあげてムダに反撃す人体を相手に、思う存分 殴り叩き蹴り……壊す。
 それが勇次郎の試割りか?


 それに対し、劉海王は服を脱ぎ、筋肉を見せつつ返答する。
 大擂台賽の参加者16名中で劉海王は最重量かもしれない。
 血管を浮かせた鋼鉄の筋肉は怒李庵海王より上か。
 中国四千年の英知をつかい、百年かけて作りあげた脅威の肉体だ。

「拳技とは」
「弱者の為にこそ存在するものなれば」
「かつては破壊不可能だった物体を」
「ある日突然打ち壊せる」
「何者も傷付けることなく得られる上達の実感」
「進化の途上という条件付きならば」
「あながち無意味とも思えぬが」



 筋肉で威嚇(いかく)しながら勇次郎の主張に異をとなえる。
 ここで勇次郎の意見に賛成してしまっては、血を流して打岩をつくっている弟子たちの立場がない。

「いないじゃん。いまのハナシじゃさ………。
 打岩 どこにもいないじゃん。
 しつれいじゃん。中国武術の前であんなハナシ…。
 キサマは中国武術を嘗(な)めたッッッ!


 とキレてスネを蹴りだしそうだ。
 白林寺の伝統・打岩のためにも、中国武術の名誉のためにも、劉海王は勇次郎に負けるわけにはいかない。

 勇次郎の目が危険に輝いた。
 まるで仁王像の目のように、白目が闇のなかで光っている。

 範馬勇次郎はくちごたえを許さない。
 反論する人間はたたきつぶす。
 最近の例では柳龍光がヤられている。

 今の勇次郎はキケン度が最大だ。
 末堂が冷静になったように、本部が武器の使用をしたようにッ、猪狩が愛人に変装をほどこしたようにッッ!

「教えてやるよ」
「丹念に積み上げた上達の実感だった百年余りが」
「取るにも足らぬ錯覚の歴史だったことを!!!」


 勇次郎の背景が歪んだ。
 闘気と殺気がうずまき、砕けた瓦の破片がまう。
 やや前屈姿勢で前進の意志をみせる勇次郎に対し、劉海王は後ろ足に体重をのせ不動の構えだ。

 劉海王が目をむいた。
 呼吸。すばやく息を吸いこむ。
 鶏口(けいこう)。5本の指をつまむようにしてそろえ、急所、とくに目の攻撃にもちいる。
 六波返しの初弾と同じ手の型だ。

 高い打点から基本どおり、目標は勇次郎の目だ。
 歯を食いしばり、初弾から最大の力をこめ必殺を狙う
 だが、その背景の闇に白い残像があることに気がついていなかった。
 劉海王の手がつくる残像よりも、速くかすれた光が走った。

「ざく」

 劉の手が勇次郎の目前でとまった。
 勇次郎の手が劉の顔にささっている。

 貫手(ぬきて)が顔の横、耳の前に突きささり、内側から劉の顔面をつかんでいる。
 この光景に観客は声も出ない。

「動くな」
「えれェことになるぜ」


 顔の肉を中からつかんで劉を屈服させた。
 巨大な肉体を持つ劉海王が、勇次郎の攻撃で体を丸めている
 体験したことのないダメージと屈辱に、劉が冷や汗を流す。
 これは逆転不能の状態か。もう、「まいった」をするしかないのか。

 だが、どんなに不利でも劉はおとなしくなるようなタイプではなかった。
 自分に突きささっている勇次郎の手首をとる。

「あ〜〜〜…… これだ」

 勇次郎がかわいそうな人を見下す表情でいう。
 即、投げた。
 まるで渋川流のようにバオッっと片手ハンドポケットのままで投げ飛ばす。
 勇次郎は劉を投げたさいに「ピッ」とちぎるような音をたて、劉とは反対の方向に腕をふる。
 劉は受身もとらず、顔から地面に叩きつけられた。
 ピクリとも動かない。

 自分たちの信じる拳神・劉海王がなにもできずに倒された。
 予想を超えた事態に観客たちは「……深……」と漢字で静まりかえる。
 光の届かない、深い海の底のような「……シン……」とした光景だった。

「100年も使ったんだ」
「とっかえてやんな」


 そういって勇次郎が投げたのは、ハギ取られた劉海王の顔面の皮膚だった。

 なんてこったいシィット! まるごと皮がカァット!
 治せるなら波紋法の使用もアリという方向でお願いします。

 敗北するとかしないとか言う前に、死にそうだ。
 肉ごとゴッソリと取れているようなので、今の劉は骨がじかにみえている状態なのだろうか。

 それとも、自ら顔の皮膚を外してダメージを最少に押さえているのかも。
 そもそも、あんなにスッキリと顔が取れるのは作り物という可能性もある。
「素顔をさらすのは81年ぶりか…」
「推定年齢19歳、美形だッ!」

 と会場がどよめくとか。

 普通に考えればあの状態から復活はあり得ないと思うが、劉海王には期待していたので、奇蹟の復活を信じたい。
 でも、来週はチャンピオンがお休みで、再来週はバキが作者取材でお休みだ。
 この状態で3週間待てとおっしゃるかッッ!

 ところで、今週の作者コメントは以下の通りだ。
『SAGA』サガ…。
『バキ』セックス編のタイトル、やっぱり失敗?
 ナニを今さら。
 もう、今となっては『SAGA[性]』でないと許せないぐらいの気分だ。
 道行く人を捕まえて、ムリヤリ読ませたい。もう、究極のイヤし系まんが最高峰だ。

 SAGEの話は置いといて、問題は3週間後だ。
 いったい何が起きるのだろうか?

 もしかすると、イキオイで今回のラストを描いてしまった板垣先生が、答えを考えるのに3週間という時間が必要だったりして。
by とら


2003年8月21日(38号)
バキはお休み

 今週は作者取材のためお休みです。

 衝撃をよんだ前回のラスト、あれで劉が倒されたのかどうかはわからない。
 だが、海王の中でも強いと思われる劉海王ですら、勇次郎に善戦すらできないという状態は非常にこまる。
 勇次郎の対戦相手がいなくなるからだ。

 作品の都合上、勇次郎とバキは決勝で闘うことになるだろう。
 そうなると、勇次郎はバキ以外の相手と2回闘うことになる。

 勇次郎の相手にふさわしい2人は誰か?
 郭海皇、烈海王、範海王、李海王のいずれかだと私は思う。

 勇次郎と闘うには、劉以上の実力者でないと生皮のコレクションを増やすだけで終わってしまう。
 そうなると、海王をこえた海皇か、師のカタキを討とうとする蛮勇なる若武者か、範馬と因縁深きものなどが順当に思われる。

 郭海皇が本当に強いのなら、毒状態のバキには荷が重すぎる。
 ここは勇次郎が闘うしかないだろう。

 烈は刃牙と一度闘っているので、再戦では新鮮味がたりない。
 また、勇次郎は刃牙の対戦相手とたたかう傾向がある。烈は刃牙の成熟度をはかるために勇次郎に喰われるキケン性が大だ。

 世界中にどれだけ勇次郎の種がバラまかれたのか知らないが、種のほとんどは打倒勇次郎を狙っていそうだ。
 そんなワケで範と李は勇次郎を狙っている、…たぶん。

 ちなみに、中国では夫婦別姓なので必ずしも父の姓を名乗るとは限らない。
 三国志で有名なのは王平だ。彼は上司の馬謖がポカした定軍山で見事な撤退戦をした武将である。
 昔は母方の姓を名乗っていて何平といっていた。
 三国志演義ではうっかり、王平と何平を別人として書いているのは、ナイショだ。

 そういうことがあるので、李海王は母方の姓を名乗っているのかもしれない。
 彼ももしかしたら、種の一つなのだろうか。


 逆に、勇次郎とは闘わないだろうというのは、アライさんだ。
 彼はホテルで勇次郎から逃げている。やっぱり、実力的に勝てないのだろう。

 それ以上にJrで心配なのが、グローブだ。
 彼は素手で闘えるのだろうか。
 グローブは拳を保護するためのもので、むしろ武器と言ってもいい。
 アイアン・マイケルがグローブを外したため、拳をツブされたように、Jrも拳を破壊されるかもしれない。

 グローブを外したJrが、どのような闘いを見せるか。これも大擂台賽の見所の一つだ。
 グレートな父をもつ2代目同士でバキと闘うと予想するが、どうだろう。


 一番読めないのが怒李庵海王だ。
 そもそも彼は出場できるのかどうかすらアヤしい。
 なんの説明もなくオリバがかわりに出てくる可能性もある。
 なんか目がうつろだし、今の怒李庵はムエタイにも遅れをとるかもしれない。
 まあ、サムワン海王は新キャラの引き立て役に使いすてられる可能性が高いので、それはないと思うが。
by とら


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