今週のバキ161話〜170話

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2003年3月20日(16号)
第2部 第161話 圧倒!! (541+4回)

 バキいらねェ。
 そう思う人たちの願いが届いたのか、今週はバキも梢江も出てこない。
 色々あるが、私はバキも梢江も必要だと思う。(ワル)がいるから話は盛り上がるのだ。

 謎の男・ミスターとチャンピオン・デイヴ。
 リングがせまく感じるようなプレッシャーを2人は出していた。
 周囲の人間は声も出さず、ミスターのステップ音だけが静かに響く。
 まさに固唾を飲んで見守っている。

 前号までのあらすじで、デイヴは『バーリトゥードの実力者』と書かれている。やはり総合系のチャンピオンのようだ。
 そのデイヴはガードを固めて前屈姿勢をとる。
 固いガードと険しい表情から、ミスターの拳を危険視しているのがわかる。
 立ったままでは分が悪いので、タックルからグランドに持ちこむことを狙っているのだろうか。

 一方のミスターは両手をぶらりと下ろしている。ほとんどノーガードだ。
 フットワークなどで攻撃をかわす自信があるのだろう。
 闘志をむき出しにしないクールな表情で、カカトをつけずにステップを踏んでいる。
 アウトボクシングのスタイルだ。

 クールな表情のミスターとは逆にデイヴは冷や汗を流している。
 強烈なプレッシャーを感じているのだろう。
 夢見ていたはずのスパーリングだが、攻める事ができない。

 こういう時は、基本を思い出すものだ。
 まずは左ジャブ。すぐに右を返す。
 基本通りの左右のワン・ツーだ。

 ミスターはその拳をかわした。
 ただ、よけたのではない。飛んでくる拳を観察している。
 写真を見るように観察しているのだ。

 ミスターがデイヴの拳をよけながら見ている2つのコマは、どちらも細かいシワまで描きこまれている
 前後のコマにはスピード線など動きを見せる効果が入っているが、この2つのコマにはそれが無い。
 殴ってくる拳を静止した絵のように見ているのだ。それが、このミスターの世界なのだろう。
 まさに神の領域だ。

 デイヴの攻撃はワン・ツーで終わらなかった。
 ボクシングではあり得ないコンビネーションだった。
 バーリトゥードの攻撃――――――、ワン・ツーからの右ハイキックだ。
 普通のボクサーなら予測不能のよけられない攻撃だった。
 だが、蹴りよりも速くミスターのパンチが当たっていた。
 デイブの顔の肉が波打ち、そのままロープまで飛ばされる。

(バックステップの体勢からハイキックに合わせた右ッッ)
(タフなデイヴが一パツでスッ飛んだッッ)


 トレーナだかマネージャだかの金髪眼鏡の男が驚愕する。
 デイブのワン・ツーをスローで見ていたかのように見切ってバックステップで攻撃をかわし、体を戻しながらハイキックに合わせてカウンターをとる。
 ミスターは恐ろしく高度で洗練された技術を平然とやってのけた。

「最強格闘技の科学(著:吉福康郎)」によると、強烈な打撃は腕の筋力だけで打つのではなく、体重の47.9%をしめる胴の重さを利用して打つ事が重要らしい。
 簡単な言い方にすれば、体重を乗せたパンチと言う訳だ。
 つまり、バックステップから前に踏み出すと胴が移動するので、その運動エネルギーを利用すると強烈な攻撃になるのだ。

 だが、デイヴの闘志は肉体のダメージを上回っていた。
 血管を浮かせブチ切れ状態になる。
 失礼のないよう、ブチ殺す気まんまんです。

 デイヴは一直線にローキックを繰り出す。これも普通のボクサーなら未知の攻撃だ。
 だが、ミスターは紙一重で見切ってこの攻撃をかわす。
 まるで静止した時の中にいるような精密な見切りだ。

 デイブが飛び出した。
 ローキックをよけられた瞬間にタックルにうつったのだ。
 ギャラリーからも「ナイスタイミング…」と言われた、バーリトゥードのチャンピオンならではのタックルであった。

 しかし、このタックルもデイヴの手が、ミスターの足に触れる瞬間までを観察されていた。
 デイブの手が作る影まではっきりと見る精密さだ。

 地をはう軌道を描き、左のアッパーカットがデイヴのアゴに吸い込まれていく。  そのままアゴを持ち上げるように当たり、デイブの上体ごと持ち上げ、すくい上げた。
 写真で確認しながら攻撃しているような精密な打撃だ。

 ミスターはさらなる追い討ちをかける。
 デイブのアゴは上がり、ガードもほどけている。
 無防備にさらされたアゴを狙いすまし、脳を揺らして意識を断ち切る絶妙の角度で当たるように右の拳が打ちこまれた。

 悲鳴も上げることができず、デイヴは顔からマットに沈んだ。
 絶対に起きあがる事のできない倒れ方だ。

 この攻防を終えても、ミスターは軽く息を吐いただけで汗もかいていない。
 余裕のスパーリングだ。
 アッパーカットで、脳に縦揺れを加え、次に横揺れを加える。
 恐らくデイヴの脳は複雑に震動していのるだろう。
 18オンスのグローブでも関係無さそうな打撃だ。
 グローブが手加減とか優しさになっていない、とてもキビシイ攻撃だった。

「ボクシン」「……グ?」

「NO(ノ)ォ……………… これはボクシングではない」


 眼鏡さんのつぶやきに。ミスターは例のサワヤカすぎる笑顔で返す。
 否定はしているが、ミスターの戦闘スタイルは完成されたアウトボクシングのようだ。
 本人が否定しているのは、スタイルはボクシングでもやっている事はルールに縛られない闘争であるということだろうか。
 自分はボクシングの技術しか使わないが、相手が蹴ってこようと組み付いてこようと、受けてたって撃破するつもりなのだろう。
   その辺の真意は次回以降へ。


 今週のチャンピオンは表紙がバキだ。
 カラーだと血色が良くて健康そうに見えるが、中はドロドロです。たぶん。

 主人公が死ぬとは思えないので、いずれ復活するのでしょうけど、何をどうやって解毒するのか気になります。
 オリバが毒を分析して解毒剤を完成させるのかも。
 もちろん「愛以外に毒を消すものなどあるものか」などと言って、バキに愛を注ぎこむ可能性もありますが。


 今週の作者コメントですが『先生多忙につきコメント取れませんでした。ゴメンナサイ。(担当・梅澤)』だそうです。
 板垣先生は、プライドでも見に行ったのでしょうか?
 北朝鮮への取材はいつでしたっけ?
 なんにせよ、現在の世界情勢は物騒なので、海外の取材は危険かもしれません。


 あっさりノックダウンされたデイヴさんだが、先週は「デイブ」だったのに、今週から「デイヴ」と呼ばれている。
 それは台詞が先週は横書きだったのが、今週は縦書きになっているのと関係あるのかもしれない。
 つまり、先週のは「翻訳された台詞」であり、今週は「本来の言葉に近い台詞」だったのだろう。
 その辺の微妙な差が発音の違いとなったのだろう。


 今週は、ミスターの芸術的な戦闘スタイルの演出が冴えていた。
 要所で動きを止めた絵が出てくるが、あれは写真映像を意識しているのだろうか。
 板垣先生は餓狼伝で1話丸ごとバックドロップに使うなど、最近演出にこっている気がする。
 もし、現在(いま)バキ特別編 SAGA[性]第2章を描くのなら、1話丸ごと射精に使うだろう。
by とら


2003年3月27日(17号)
第2部 第162話 何処(どこ)へ!! (542+4回)

 表紙のバキに目隠しされているのですが、とうとうご臨終でしょうか。
 それとも銃殺でしょうか?

 100人分の殺気を浴びてハゲてくれたら、もっとバキのことが好きになると思う。

 地平線の果てまで続く森の中に一本だけ道が通っている。
 その道を車で5分以上走っている。もしかしたら10分以上走っているのかもしれない。
 待つという時間は長い。たとえそれが5分でも――――――
 ――――客に対するいやがらせだろうか。
 あるいは、この待つという時間に耐えさせて、客を選別する気なのだろうか。
 なんにしても、この土地の持ち主はクセ者だ。

 森は突然途切れ、視界が開けた。
 目の前にあったのは「屋敷」と言う言葉を具現化したような豪華な家だった。
 大富豪以外には住むことが許されないであろう、超・豪邸だ。

 果てることのないと思われた森に、ゴジラだって入りそうな巨大な屋敷。
 これらを作った富は、拳1つで築いたものだという。

 体1つでクレーターを作ったガーレン並に偉大だ。……偉大かもしれない。


「ようこそ」
「優秀なる日本のジャーナリストよ」


 黒人の執事が出迎える。
 接客でも外さないサングラスに、歯をむきだしにした極上の笑顔と、オリバ系の細いヒゲが異常にウサン臭い
 5歳までの子供なら見た瞬間、確実に泣きだすウサン臭さだ。

 この人は本当に執事なんでしょうか。なんか、ナイフで人を刺し殺した経験がありそうだ。
 銃で撃ち殺したのではなく、小さい武器でハードに闘った経験がありそうなオーラが出ている。
 この男はただの執事ではない(と思う)。
 執事でありボディーガードなのだ(という気がする)。
 むしろ、ボディーガードが本職で執事姿はカモフラージュだ(と面白いなー)。
 これだけの男を飼いならしているのだ。この家の主人もただ者ではあるまい。

(…………ッッ!!!)
(この人が…ッ)
(20世紀――――――)
(最大最高の)
(スポーツマン……………!!!)


 立派な姿ではなかった。
 手足や体は常にふらふら動き、口からは唾液がたれて落ちている。
 立っていることが奇蹟と思えるほど、肉体が衰えている。

 だが、現在の姿は関係無かった。
 日本人ジャーナリストはふるえた。
 涙が自然にわき出る。

(10年………)
(10年以上も)(待ち焦がれた)(この瞬間!)

「あなたに…………」
「逢いたかった………………」


 かつての栄光が偉大であればあるほど、衰えた姿を人目にさらしたくはないだろう
 人を拒絶するような屋敷の作りも、そこに理由があるのかもしれない。
 このジャーナリストは、そんな彼と交渉し続けていたのだろう。
 逢いたいという純粋な思いを10年間訴えつづけて、やっと逢えたのだ。彼には涙する権利がある。

 お茶が用意される程度の時間が過ぎた。
 ジャーナリストもやっと落ち付きを取り戻し、2人はイスに座りインタビューを始める。
 お茶をのせた机は2人の間ではなく、脇に置かれている。
 イスに座る2人の間にはなにもない。ほんの1歩分の距離があいている。
 この距離と障害物のない空間が、ジャーナリストが傾けてきた10年の情熱に対する、誠意ある解答だろう。
 2人を隔てるものはなにもない。好きなことを聞いたらいい。言葉ではなく態度で語っている。

「ミスター マホメッド」
「インタビュー始めます」
「あなたにとって…」
「最大の富と――――――」
「最大の名誉と――――――」
「最大の尊敬をもたらせた」
「ボクシングとは」


 壁にはチャンピオンベルトがかかっている。
 若き日の写真もある。その姿は、先週活躍したミスターに似ていた。
 ボクサーであり、この写真である。2人の関係は……。考えずとも答えはすぐに出るだろう。

(震えが止まった)

 ボクシングという言葉を聞いたとたんミスター・マホメットの震えが止まり、弛緩した表情も引き締まる。
 なにより変わったのが眼だった。
 いままで黒1色で塗りつぶされていた虚ろな眼にが宿っている。

「日本のジャーナリストよ」
「ユージロー・ハンマ と い う 男 を 知 っ て い る か」

(オーガッッ)
「なぜその名前を‥‥ッッ」


 喋るのが困難なのか文字間隔が微妙に広いミスター・マホメッドの言葉は、ゆっくりと語っている口調とは逆に衝撃的な内容だった。
 と言うか、オーガの名を知っていたジャーナリストの存在も衝撃的だ。
 たぶん、この人は勇次郎に逢うために11年ぐらい待ちつづけているんでしょう(現在進行形)

 そのころバキは病院を脱走して刃牙ハウスに戻っていた。
 多少ニオイがこもっているかも知れませんが、打ちひしがれて疲れ果てて最後に辿りつくのはここだったのです。
 当然、梢江ちゃんも嗅ぎ当てて、この場にいる。早くもブチ切れモードだ。やっぱり、色々な意味で烈女です、この人。

「もういい」
「これは…」
「俺の闘いだ」


 相手が毒であっても、己の肉を信じ闘い抜くつもりなのだろうか。
 相手が毒だろうと医者だろうと宇宙人だろうと、肉体で勝てるなら俺の闘いだッ!
 そんな静かな自負が感じられる。
 さすが、Hも闘いにしてしまった男だ。
 こいつが全快したら、サジを投げた医者(紅葉)に「無知な医者に俺は勝ったッ!」と言いそうだ。
 毒を抜いて、もう1回梢江ちゃんとッッッ! と言うのが最大の動機だったらイヤだな。


 同時期、2人の怪物が接触していた。

「ごぶさたしてました」
「ミスター オーガ」

「デカくなったなマホメッドJr.(ジュニア)
「偉大な親父(オヤジ)は元気かい」


 やはりマホメッドの息子であった通称「ミスター」と、地上最強の生物・範馬勇次郎。恐るべき怪物たちの再会であった。
 そんな訳で、しばらくはバキと勇次郎、マホメッドとJr.という2組の親子を軸に話が進んで行くようだ。

 もしかすると、マホメッドの肉体は勇次郎に破壊されたのかもしれない。
 ジャーナリストが日本人と聞いて、同じ日本人である勇次郎の情報を入手できないか探ってみたのかもしれない。
 そうなると、マホメッドJr.が自分の技はボクシングでは無いといったのは、最終的に素手で勇次郎を殺すことを考えている可能性がある。
 ボクシングはスポーツであって殺人技術では無い。そんな意識の差がありそうだ。
 その辺がスポーツマンである父と、戦士である息子の差だろうか。
 だとすれば、刃牙&勇次郎とは逆の親子関係かもしれない。

 親しい人を集めてもらっておきながら逃亡しちゃうバキも、ワガママっぷりで勇次郎に追いつきはじめた気がする。
 背中に鬼が宿るとき、バキは毒をも超越しそうだ。

 ところで、あの場に本部が呼ばれなかったのは、彼もうっかり毒手をさわってしまったためと言う気がする。
 今ごろ、花田が「喰ってないじゃん」と号泣しているはずだ
by とら


2003年4月3日(18号)
第2部 第163話 神と鬼 (543+4回)

 157話に出たばかりなのに、勇次郎またもや降臨ッ!
 やはり、柳では喰いたりなかったのだろうか。
 まあ、喰う部分なんて、ほとんど無かったし。

 神と称されるボクシング元世界ヘビー級王者マホメッド。
 金メダルを川に投げ捨て、試合でのKO予告を実現させるなど、常人のスケールを越えたエピソードの持ち主だ。

「スポーツの枠を超えた伝説の数々」
「生きながら"神"となった男」


 生きながら神と呼ばれた男……。
 このフレーズは独歩を思いださせる。
 生ける伝説として"武神"と称された男
 両者とも、闘って強いと言うよりは、生き様がすごいと言うべき貫禄がある。
 範馬勇次郎を苦しめることができた人間は独歩以外にいないと言ってもいい(腕っこきのハンターとかはいるが…)
 このマホメッドも、独歩に匹敵する戦闘能力を持っているのだろうか。

 範馬勇次郎


 マホメッドや独歩が人々の尊敬を集め、生きながらと称えられているのに対し、この男は"鬼(オーガ)"と呼ばれている。
 人生の中で闘うのではなく、闘いの中の人生を選択した男だ。
 生きるエネルギーをありったけ闘いに、暴力に注ぎこんでいる格闘の魔人である。
 その鬼の名を、神が口にした。

「1976…………」
「私は日本にいた……………」


 日本で待ちうけていたのは、刃牙も勝てないと思っていたらしい全盛期のアントニオ猪狩であった。
 プロレスラーとの他流試合。
 遠くガス燈時代から米国で語り継がれる永遠のテーマ……。
 強いのは拳(フィスト)か関節技(ツイスト)か!?
 ヘビー級ボクシングとプロレスリング、遂には出せなかった答えがここにある。
 まさに世紀の一戦である。

 若かりし日の猪狩は、餓狼伝のグレート巽とそっくりだ
 華!
(コミックスでは台詞変わっていますが…)
 ただ腕を組んで立っているだけでがある。
 この猪狩は強そうだ。凄みがある。

「当初はアトラクションと思っていた
 このショー試合(マッチ)が―――――――」
「実は一切の手加減のない真剣勝負(リアルファイト)と聞き及び―――」
「わたしも本気(リアル)になった」


 凶悪な貌(かお)を見せる猪狩に、マホメッドの表情が真剣になる。
 グレートはグレートを知ったのだ。

 記者会見の猪狩とマホメッドの背後に垂れ幕があるが、そこに「ALAI」と書かれている。
フルネームは「マホメッド・アラァイ」なのだろうか?
 なんか発音しにくい。

 それはともかくマホメッドはこの真剣勝負に勝ち残るために、タイトルマッチと遜色のないトレーニングを開始する。
「後の世界チャンピオンも含む 屈強のスパーリングパートナー達」4人を呼び寄せ、エンジンをかける。
 スパーリングパートナーと言うのは非常に重要だ。
 弱い者を相手に練習しても強くなれない。実戦のカンも養われない。
 練習で自分の潜在能力を全て引き出せないようでは、実戦で限界以上の力は出せない。
 4人のスパーリングパートナーを連れて来た所にマホメッドの本気がうかがえる。

 マスコミの目を避け深夜のロードワークを始める。
 ボクサーのロードワークは重要だ。
 持久力を鍛えるだけではない。瞬発力も鍛えるために走るのだ。
 だから、ランダムにダッシュを加えながら走る。マラソンとは別の意味でハードなトレーニングだ。
 このロードワークについてくるにも一流の体力が必要になる。

 10分経過―――――――
 1人減っている。
 意外とチーム・マホメッドは体力不足だったのか?
 みなさん、脱落者にはなれているのか、そのまま走りつづけている。

 15分経過―――――――
 また、1人減った。
 どうでもいいが、深夜とはいえ道路の真ん中を走るのは良くない。
 交通事故を避ける努力も一流には求められるべきだと思う。

 20分経過―――――――
 マホメッドの後には1人しかいない。
 これは、ちょっとおかしい。いくらなんでも減り過ぎだ。


 そして、誰もいなくなった…
 チーム・マホメッドは大将のマホメッドを残し全員謎の失踪をとげた。

「異変に気付いた」

 遅えっ――――――――――ッ!
 あんた、マイペース過ぎ。

 仲間、走ってないじゃん。
 仲間、走ってないじゃんッッ。
 警察だよゥッッ(もしくはCIAかFBI)。



 慌てて周囲を見渡すが、当然誰もいない。
 まるで宇宙人に拉致されたかのような不可思議な失踪だった。

「あたりに立ち込める獣臭―――――――」
「都会の只中(ただなか)にいながら わたしは本当に仲間達が猛獣に襲われたことを懸念した」


 宇宙人にさらわれた事を懸念しなかったのは、冷静であると評価できる。
 だが、猛獣の心配と言うのは、どうかと思うが。
 そもそも、この人は獣臭を知っているのだろうか?
 知ってそうだ。
 スパーリングパートナーに困って猛獣を殴ったことがあるに違いない。

「チャンプ……」

 その声はけして大きいものではなかった。
 だが、声を聞いた瞬間にマホメッドの背に電撃が走った。
 頭の後の毛が逆立つような殺気と言うヤツだろうか。
 マホメッドは背後を振りかえった。

「猛獣以上の男が―――――――――
 そこにいた!」


 間違えようもなく、範馬勇次郎だ。
 ベトナム傭兵時代と同じく髪を後でしばっている。
 足には雪駄、もしくはサンダル履きだ。
 こんなものを履いて、世界王者のロードワークをつけていたのだ。
 自由型の水泳をバタフライで優勝するようなムチャクチャさだ。

「男はその風貌(ふうぼう)だけで わたしに理解(わか)らせた」
「仲間達はこの男に消された


 外見だけで思い知らせてしまうと言う、超暴力?
 勇次郎のレベルはどんどん上がりつづけている。
 なお、消されたマホメッドの仲間たちは「後の世界チャンピオンも含む」と言われているので、全滅ではないようだ。
 3人ぐらいは死んでいるかもしれないが。

「わたしがそれまで戦った競技者達とは全く異質
 存在感!!!


 これは勇次郎が単純に強いと言うことだけではないだろう。
 勇次郎は競技者=スポーツマンでは無い。
 勇次郎は魔獣であり、戦士だ。
 異種格闘技戦であっても受けて立つマホメッドであるが、その精神はスポーツマン=ボクサーとして組みあがっているようだ。
 猪狩は強くても、人に闘いを見せるプロレスラーだ。意識はスポーツマンに近い。
 だから、真の意味での戦士と出会うのは、これが初めてなのだろう。

「逢いたかったぜ…………………」

 背景が歪むほどの熱気と闘気を放ちながら、勇次郎は言った。
 間合いの外であり、手はポケットに突っ込まれたまま。戦闘開始にはまだ遠い状況だ。
 だが、マホメッドの肌は汗で濡れていた。
 ロードワークの途中だからではない。それとは別種の汗が流れている。

「リング上でもガードを上げたことのなかったこのわたしが――――」
「初めてガードを固めたッッ」


 今までにない異質な相手を前にマホメッドは生き残れるのか!?
 って感じで次回へ続く。

 前回までマホメッドJrが言っていた言葉が色々と連想される話だった。
 競技者として生きた父に対し、戦士と言われるJr。
 ボクサーとして生きた父に対し、自分の技術はボクシングではないと言うJr。
 Jrは、やはり勇次郎を素手で倒すことを目標に強さを求めているのだろうか。

 Jrのファイトスタイルは、ガードを固めないものだったが、それは父のスタイルと同じものだ。
 Jrは父のカタキを取るため、競技者では無く戦士として父のスタイルを使用して、勇次郎を倒すつもりなのかもしれない。
 親子2代に渡る執念だろうか。

 ところで、1976年の日本にいた勇次郎は何歳なんでしょうか?
 グラップラー刃牙15巻・第126話では1977年に19歳の範馬勇次郎が登場しています。
 つまり、この時の勇次郎は18歳のはず。
 すでにベトナムで暴れ、こっそり1児(?)の父でもある状態です。
 どうも刃牙は1978年に誕生し、17歳のバキがいる世界は1995年で止まっていると考えるのが妥当なようです。

 勇次郎が暴れるたびに衝撃で地球が逆回転して、時間軸が狂っている可能性は多いにありますが。
by とら


2003年4月10日(19号)
第2部 第164話 神の真意 (544+4回)

 バキ世界では、格闘選手が引退する理由の第1位は「範馬勇次郎にボコられた」に違いない。
 そして今回の獲物は偉大なるボクシングヘビー級世界王者のマホメッドであった。
 果たして彼は生き残れるのか!?(注:引退しておでん屋になるのは生き残れていないとします)

「蝶のように舞い(フロート ライク ア バタフライ)
 蜂のように刺す!(スティング ライク ア ビー)


 161話でマホメッドJrが見せたのと同じ技術だ。
 静止した時の中で相手の拳を見極め、スウェー&バックステップで攻撃をかわし、踏みこんで打ちぬく!
 神速といえるフットワークと心眼といえる見切りが無いとマネのできない技術だ。
 将棋や囲碁のプロ棋士は打った手を全て憶えていて正確に手順を再現できるそうですが、父の技を正確に再現できるJrは天才と言えるでしょう。

 いかなる怪物(モンスター)と向き合ってもガードを上げなかった男。
 近代ボクシングが1814年のイギリスで産声を上げてから初めて無防備(ノーガード)を戦術として取り入れた男。

 当時のボクサーとは各段にレベルが違っていた男。
 生きながら伝説となり神と称された男、それがマホメッドだった。
 そのマホメッドがガードを上げたのだ。

「路上に姿を現したその男に
 それほどの脅威を感じだのだ」


 マホメッドはそう回想する。
 ガードしている拳の間から見える表情がすでに負けモードに入っているっぽい
 普段のスタイルを崩したと言う事は、精神的に追い込まれている証だ。柔道家が打撃戦に引きこまれたような危機感がある。
 だが、マホメッドは闘志を失っていなかった。
 前進、ステップインからジャブを打つ。

「当たった!」

 あらゆる格闘技で最も速い技……。
 どんな一流同士でも当てられることを前提にしなければならぬ技……。
 それが、左ジャブだ。

 当たることを確信するのどころではなく、当たることが前提の攻撃だ。
 だが、その拳は空を切っていた。

「ボクシングとは明らかに体系の異なる体術(パフォーマンス)

 マホメッドの攻撃を微動だにせず勇次郎はよけた
 ボクシングと言うより人間の扱える技じゃない…。
 動いていないのに、なんで当たらないのだろう。
 板垣先生が著書「激闘 達人烈伝」で書いていた宇城憲治さんのような技術なのだろうか。

 続けてジャブを放つマホメッドだが、その拳はことごとく外される。
 今度は不可思議の術は使われていない。
 勇次郎の足がおどるようにステップを切っている。
 そう、勇次郎は蝶のように舞っているのだ
 ボクシング以外の技術を見せたと思ったら、今度はボクシングの技術で圧倒する。
 さすが、あらゆる格闘技をマスターしたと言われる男だ。

「想像できるだろうか」
「わたしが生涯を賭けた技術力」
「触れもしない」


 自分の存在意義を否定されるような圧倒的な敗北感を受けて、マホメッドは停止した。
 拳が下がるが、ノーガードと言う訳ではない。
 握っていた拳が開かれている。戦闘意欲を無くしてしまったようだ。

「なにが欲しい…」
「君の要求はなんだ…?」


 マホメッドさん、あきらめモードに入りました
 もう、金で解決するならそれでイイや、って感じの投げやりな状態だ。
 でも、勇次郎の望む物は暴力以外に無さそうなので「思いっきり殴らせろ」と言われそうだ。

 ニィ…


 勇次郎がいつもの笑いを見せた。
 マホメッドの前に現れてから、初めて見せた笑いだった。
 この人がこういう笑いをすると不幸なことが起きそうなんですけど。

「見せてくれ」
「アンタの本当の得意技はボクシングじゃねぇ」
「さらに言うなら」
「アンタが目指したものは世界ヘヴィ級チャンピオンじゃねェッッ」


 突然の勇次郎の指摘を受けて、マホメッドは黒目に光が無くなってしまう。
 これは早くも再起不能の前兆だろうか?
 現在の老いたマホメッドは、ボクシングと言う言葉を聞いたとたん目に光が戻ったが、若い頃は逆にキレると目から光が失せるのかもしれない。

「リング上でのアンタの動きを見りゃ
 一目瞭然」
「あれはボクシングというより」
「もっと全局面的な」
「あらゆる攻撃を想定した―――――」

「いわゆる格闘技!」


 昔、刃牙が「ボクシングは格闘技としてあまりにも不完全すぎる(12巻 107話)」と言った。
 マホメッドの技術は、不完全な格闘技=ボクシングではなく純粋な格闘技だと言う。
 マホメッドはボクシングのルール内で闘っていたに過ぎず、実際はあらゆる攻撃を受けても対応できる心構えでいたのだろうか。
 ダウンを奪ったときも、場合によっては追い討ちをかけるつもりでいたのかもしれない。
 クリンチを受けたら、投げられるのを警戒したのかもしれない。
 マホメッドなら相手が試合中に耳に噛みついてきても、対応できるのかもしれない
 なんか「修羅の門」ボクシング編みたいですが…。

「世界中の…………」
「名だたるトレーナー達が想像すらしていなかった」
「わたしの夢……………」
「それを……」
「ボクサーですらない路上で出会った 一東洋人に見透かされていたとは……」


 目の光が再び消えた。Switch(スウィッチ)が入ったのだ。
 さらに第2段階として、目が白目になったッ!
 もう、汗も引いている。
 そこにいるのはボクシング・ヘヴィ級王者マホメッドではなかった。
 格闘家、戦士・マホメッドが降臨したのだ。

「どうやら…………」
「ここからが本番だな」


 今まで構えをとっていなかった勇次郎が構えた。
 両手をあげた、本気の構えだ。

 対するマホメッドは、今度こそガードを下ろし、リズムを取り跳ねる。
 蝶は舞いはじめた。

『◆ 人智を超えた頂上決戦が 今、始まるッ!!』


 そんなワケで死にかけの主人公のことはすっかり忘れて、過去の頂上決戦で盛り上がっている。
 マホメッドは、今までボクシングスタイルを取ることで自分に枷をはめていたようだ。
 今まで隠していた真のスタイルが、どれだけの戦闘力を持っているのか気になるところだ。
 個人的な予想だが、Jrの闘い方はボクシング技術でフリールールを闘っていたようだったので、マホメッドも同じスタイルではないかと思う。

 なんにせよ、前回書いた「Jrは父のカタキを取るため、競技者では無く戦士として…」という予想は外れていました。まだまだ功が成っておりません。
 とりあえず、Jrはちゃんと父のことを尊敬していて、その技術を受け継いだようです。

 今週のマホメッドは、誰にも打ち明けられないまま朽ち果てようとしていた「わたしの夢……………」をかなえるチャンスを得て喜んでいそうだ。
 ボクシングのルールがもっと自由なら私は…なんて試合中に思っていたのだろうか?


 マホメッドJrがスパーリングをしていた頃だが、掲示板でL−90さんが次のような考察をしていた。
『ミスター(仮)は、ナックルの部分ではなく、掌側で顎をすくい上げています。ボクシングの打ち方ではありません。ボクシングしか知らない人は、必ずナックルの部分で当てようとします。なぜならそれ以外の部分で当てることは反則だからです。ミスター(仮)がボクシングではないと言ったのは、ボクシングのルールに囚われない、まさに「拳」闘だと言うことではないでしょうか。ミスター(仮)の正体が楽しみです。』

 当時読んだ時にかなり納得したのだが、今改めて読むと深い意味が感じられる。

 闘いの中で拳のみを攻撃に使用するのがボクシングなのだが、スポーツ化の中で色々なルールがついて、拳のみで闘う格闘技では無くなってしまった。
 マホメッドは、そう言った失われたボクシングの技術を使うのではないだろうか
 例えばバックハンド・ブローとか、下半身へのパンチ、後頭部や背中への打撃、故意のバッティング(頭つき)などだ。
 なんかセコイ攻撃ばかりになってしまった…。

 次回のマホメッドには、想像を絶するテクニックを出してくれる事を期待します。
 いきなり石を掴んで殴るとか、砂を投げつけるとか、砂を浴びて姿を消すのは止めていただきたいが。
by とら


2003年4月10日(19号)
第2部 第165話 神の空白(ブランク) (545+4回)

 本気の勇次郎と闘い無事ですんだ者はほとんどいない。
 主役の特権でバキは軽傷(?)だったが、他は病院送りか火葬場直行である。
 そう考えると、数日後にちゃんと解説していた本部さんはすごく頑丈だ。
 力士に踏まれても元気だったし、象に踏まれても平気かもしれない。

 解説の神の話は置いといて、神と称されたボクサーが、ボクサーの肩書を外して本気になった。
 その隠された実力は鬼に通じるのだろうか。

 勇次郎は渦巻く闘志をまとい両腕を広げる。
 激しい闘志とは逆に体は動かさず、"待ち"の状態だ。
 逆にマホメドは闘志は内に秘め、ステップを踏んで舞いつづける。

 真剣を構える侍の対峙のように、膠着して動かない。
 この状況だと、動いていない勇次郎の方が体力を消耗しないので有利だろう。
 マホメドは汗をかいているが、勇次郎には余裕がみえる。

 これには経験の差もあるはずだ。
 勇次郎は戦場にまで出向いて人をブン殴りつづけてきた
 地面がコンクリートだろうが地雷が埋まっていようが、関係ない。
 だが、マホメドは初めてのフリーファイトである。緊張しているのだろう。

 経験者の余裕だろうか、勇次郎は両手を下ろす。
 1歩動いたのか、少しだけ上体が前に進んだ。
 その瞬間、マホメドが突っ込んできた。
 上段・中段・下段とジャブ3連発をページ見開きで放つ!
 これには勇次郎も、車がはねた泥水を「いやん」とよける女子高生のようなポーズでかわすしかなかった。
 とりあえず、ボクシングでは反則となる下半身への攻撃を解禁している。
 どの攻撃も直撃はしなかったが、全て勇次郎にかすっている。

「さっきとは大違いだぜ」
「チャンピオン」

「ボクシングなんかじゃねェ…………………」
「打(パンチ)・突(ストライク)・蹴(キック)
 組(グラップル)・投(スラム)・極(キャッチ)
 全局面対応型 闘争術」


「あえて言うなら…………………」
「マホメド・アライ流 拳法!


 勇次郎も認めた、マホメド・アライ流 拳法!
 天内流格技に匹敵するイケてないネーミングセンスだが勇次郎が言ったのだから仕方がない。
 そもそも「天内流格技」も勇次郎が言い出したのかもしれない。
 もっとも、2回戦からは無かった流派にされていますが。

 とりあえず、流派の名前のことはいいとしよう。
 163話の感想で、私が名前を「アラァイ」と読んだのも忘れてください

 今考えるべきはマホメドの全局面対応型・闘争術についてだ。
 やはり、ボクシングの技術を中心に全局面に対応できる技を構築しているようだ。

 敵の組・投・極に捕まらないように一撃離脱を心がけ、蹴りに対するリーチの短さは懐に飛びこむフットワークの瞬発力で補う。
 打(パンチ)のみを使いながらも全局面に対応し、相手がよけにくいように上中下に打ち分ける。
 まさにアライ流の「拳による闘う法(のり:方式・やり方)」である。

「だが…………」
「残念ながら未完成
「徴兵拒否を強行したためのタイトル剥奪」
「あの――――――― 3年半の空白(ブランク)が」
「アライ流拳法の完成を遅らせた!」


 バキ世界の強さの証である「我が意を通す」行為をしたが故のブランクが、強さを弱める結果となる。
 なんと皮肉なことであろう。

 マホメドも気にしていたのか、この言葉を聞き唇を噛んでいる。
 その怒りをぶつけるかのように(人はそれをヤツ当たりという)、勇次郎の顔面へジャブを打つ。
 よけられた。
 だが、アライ流はここから胴・脚と狙っていくのだ。
 だが、狙うべき勇次郎の姿が消えていた。

「なッ…………… Wッッ」

 勇次郎が足元に寝ていた。
 ボクシングはもちろん、ほとんどの打撃系格闘技の想定に入っていない回避方法にマホメドは虚をつかれた。

 倒れている人間を攻撃するのは以外と難しいらしい。
 だが、仰向けで寝る人間が早く動けるわけがない。
 本当だったら、打撃を打ちこむチャンスだったはずだ。

 だが、そのチャンスを生かすことができなかった。
 アライ流拳法、いまだ完成ならず。

 先に動いた勇次郎に脚をはらわれマホメドは宙を舞わされた
 勇次郎の手が伸び、マホメドの手をつかむ。
 だが、そこから組・投・極に行くことも無く、マホメドは足から着地する。いや、着地するように勇次郎がコントロールしたのだろう。

「あの3年半があったから――――――」
「オレはアンタを尊敬している」


 マホメドの手をつかんだまま、握手をしたまま勇次郎はそう告白した
 尊敬しているのなら、もっと穏便に告白できなかったのだろうか。
 でも、これが勇次郎の愛情表現なのだろう。
 逆に考えると、勇次郎はこういう暴力的な愛情表現をされるのが嬉しいのかもしれない。

 そう考えれば、勇次郎が息子たちをやたらと挑発しているのは、俺に暴力を振るってくれというメッセージなのかもしれない。
 勇次郎も、やはりマゾなのか?

 上でマホメドの事を、我が意を通したと書いた。
 勇次郎がこれで「ワガママを貫き通す=強さ」と思ったのなら、マホメドはかなり罪作りな人間だ。
 日本人ジャーナリストに語るのは、自分があの怪物を生み出す原因の1つだったと言う罪の告白だったりして。

 今週から名前がマホメッドからマホメドに変わっているのだが、なんでだ?
 まあ、ちょっとした発音の違いなんだろう。
 平尾・平井・平山と3つの名前をもつボクサー(幼年編 9・10巻)に比べれば全く自然そのものである。
 ちなみに平山(or 平尾 or 平井)は親の都合で名前が平山→平尾にかわったと推測している。
 だから、学校関係者は現在の姓である「平尾」で呼び、昔からの知り合いであるジム関係者は旧姓の「平山」で呼んでいるのではないだろうか。
「平井」は刃牙が1度だけ呼んだ名前なので、単純に間違えただけだろう。


 次回予想。
「あなたのこと尊敬しています!(なぜか敬語。似合わなくても敬語)
 そう言って勇次郎は熱烈にマホメドの手を握り締める。
「でも、尊敬と喰欲は別です!」
 ゴキャッ!

 なんだかんだ言って、マホメッドの拳を砕く勇次郎であった。
by とら


2003年4月24日(21+22号)
第2部 第166話 鬼の敬意(リスペクト) (546+4回)

 あいかわらず勇次郎の考えていることは、わかりません
 本気でマホメドを尊敬しているのだろうか。
 そんな読者の心配を知ってか知らずか、勇次郎は両手で力いっぱいマホメドの手を握りしめる。
 マホメドも不安なのか、にぎられている手を神妙な表情でながめている。
 静かに睨みつけてくる勇次郎に対し、マホメドはひたすら汗を流す。
 そりゃあもう、口の中に銃をつっこまれている気分だろう。

「明らかに…………」
「君より弱い俺をか……?」


 ボクサーにとって命そのものとも言える拳を握られながらも、マホメドはそうたずねた。
 相手を怒らせたら、即握りつぶされるような状況である。
 ここで、手のアップが出てくるのが意味深だ。

 ただ、マホメドは圧倒的な戦闘力の差を見せつけられた所なので、ちょっとヤケクソなのだろう。
 最強をつかめぬ拳などに、なんの意味があろうか。そんなことを考えているのかもしれない。

「明らかに俺より弱いアンタをだ……………」

 それでも勇次郎はマホメドを尊敬するという。
「黒人のため」「ベトコンのため」「あらゆる弱者を代表して戦った」マホメドを「力なき者の希望だ」と言う。

 勇次郎らしからぬ発言だ。
 どちらかと言うと、勇次郎は力なき者を認めないタイプの人間だと思う。
 でも、この時の勇次郎はまだ10代(?)の凶暴な若者なので、その後の人生経験で「力こそ全て」と悟ったのかもしれない。イヤな悟りだが。

 勇次郎の言葉にマホメドの目が真っ黒になる。
 もしかしたら本人は弱者の代表として闘っているつもりはなかったのかもしれない。
 だから、こんな事を言われて困ってしまったとか。

 素直に考えれば、マホメドも勇次郎がこんな事を言い出すとは思っていなかったので、ビックリしたのだろう。

「悪い気はしないが…………」
「落胆しているよ」
「君のあまりの強さに」
「そして俺の弱さに」
「負けず嫌いなのでな」


 密かに作り上げていた全局面対応型 闘争術もまるで通用しない圧倒的な実力差だった。
 おそらく3年半の空白がなくてもこの差は埋まらないだろう。
 頂点を極めようとしている男だけに、誰にも負けたくないと言う気持ちは大きいようだ。しょんぼりと勇次郎に背を向け歩き始める。
 さり気なく勇次郎はその横に並んで、ついて行く。

 マホメドの闘ってきた強敵―――――
 怪物と称されるボクサーたち、人種差別、国家、どれも1人の人間が立ち向かうには強大すぎる敵だった。

 ライバルの中でも、「後退のネジを外した男」と言われるボクサーは、そのキャッチフレーズが対勇次郎戦の独歩を思い出させる。

 また、「2R(ラウンド)でアゴを叩き割られながら最終R(ラウンド)まで闘ったこともあった」と言う話は先週のアッパーズで板垣先生がボブ・サップを批判していたのと反対のエピソードだ。

 たとえ勝てなくても、痛みでは決して倒れないものこそ真のファイターだ。
 そう言う主張が感じられる。

「戦う技術が偉大なのではない」
「ハートだッ」
「例え国家が相手でも屈しない」
「アンタの心根こそが偉大なんだ!」


 大声で主張しているわけではないが、力強く勇次郎は語った。
 グラップラー刃牙・幼年編で語られたヂギール戦士の心得に似た台詞だ。

 心が折れぬかぎり敗北はない。

 グラップラー刃牙からバキに至るまで、数多くの闘いが行われているが、その闘いは互いの心を折る闘いだったのかもしれない。
 そう言う意味では、死刑囚たちも「敗北を認める=心が折れる」ことを潔しとしない格闘士だったのだろうか。

 小説版・餓狼伝 XII巻にも似た話が出てくる。
 『 一対一の喧嘩の闘いは、技術と技術の闘いではない。/魂と魂の闘いである。/魂を折るか折られるか。/そういう闘いである。』

 世界最大最強の国に対しても魂を折られず、屈せず、歯向かったマホメドを勇次郎は尊敬しているのだろう。
 勇次郎もワガママを通しているが、それは影でコソコソと言う感が多少ある。
 だから、国に正面切って喧嘩を売って意地を貫き通したマホメドを尊敬しているのだろうか。


 なお、餓狼伝 XII巻には次のような敗北条件も書かれている。
 『殺されたら、負けだ。』
 そんなワケで柳は負けたらしい。(勝手に殺してはいけません)


 そう言う勇次郎の夢は『力』だった。
 財力や権力などという複雑なものではなく、「ごく単純な肉体的腕力!」
「己の五体のみを条件とした絶対的闘争力」

 この台詞を聞いてマホメドの目の色がまたもや変わり、足が止まる。
 常識からすると、本気で世界征服の野望をもっているような、バカバカしい夢かもしれない。
 だから、人は自分が実現できる範囲の夢や野望を見ようとする。

 だが、この男は大マジメに真剣に世界最強を夢見て、実現させようとしている。
 ある意味では、世界征服を本気でやろうとして、しかも結構イイ線まで行っている人物を発見したような衝撃がある。

 真っ黒だったマホメドの目が、白くなる。更なる進化(?)を遂げたのか?

「わたしの息子に会ってくれ!!!」

 自分の夢よりも一回り大きくバカげた野望を持つ男を前にして、マホメドはそう叫んだ。
 自分の才能と夢を受け継ぐであろう、Jrにこの地上最強の生物を見せたいと思ったのか。

 でも、勇次郎は気に入りすぎると喰わずにはいられない人なので、不幸な事件が起こらないように気をつけた方がいいだろう。
 勇次郎は人を喰う、と言うより人の夢や希望を喰うことに快楽を感じる人ですから。
 そう言えば、後に世界王者になった者がいるマホメドのパートナーたちも、勇次郎に出会わなければ、全員世界王者になれていたかもしれない。


 一方、病院から逃亡中のバキは飛騨の安藤宅へ来襲するのだった。
 梢江も同伴で。


 そう言えば怪作「殺し屋1(イチ)」を描いた、山本英夫氏が、「ホムンクルス」と言う作品を新連載した。
 頭蓋骨に穴を開けると霊感が出てきて、幽霊とかが見えるよって話らしい(なのかなぁ?)のですが、今週のラストはなんかそんな感じ。
 ヒィィィッ! 部屋の隅に梢江が、梢江が見えるよォッ!
(じょばぁぁ〜〜〜ッ)


 ところで、最近の鉄拳伝タフでは「呪怨」と言う技が出てきています。
 脳障害を起こす攻撃で、記憶喪失になって不気味な人影とかが見えるようになる技らしい(なのかなぁ?)のですが、今週のラストはなんかそんな感じ。
 ヒィィィッ! 部屋の隅に梢江が、梢江が見えるよォッ!
(じょばばばばぁぁぁ〜〜〜ッ)


 そう言う冗談はさて置き、これで勇次郎Jr(バキ、ジャック)、マホメドJr、夜叉猿Jrと親子2代に渡る戦士が登場しそうな予感がある。
 そこに克巳も加わるのだろうか?

 次回はバキの寵愛をめぐって夜叉猿Jr(メス)と松本梢江(メス)が種族を超えた超絶バトルをすると思います。
 で、バキも安藤さんもそろって失禁。
by とら


2003年5月8日(23号)
第2部 第167話 遅すぎた (547+4回)

:バキは衰弱しているはずなのに、なんであんな山奥まで行けたんですか?
A:梢江ちゃんがバキをかついで行きました。

:バキは病院を抜け出しています。紅葉はバキを探していないんでしょうか?
  神心会に頼めば
南極に逃亡しても見つけ出して 拉致 連れてきてくれると思うのですが?
A:実はみんなバキのことをあまり心配していません。だって範馬の(以下略)

 まあ、その辺のことは置いときましょう。


 突然あらわれたバキを見て、安藤さんは失禁せんばかりに驚く。
 というか、突然やって来たことに驚くべきなのか、バキがヤセていることに驚くべきなのか、彼女同伴なのに驚くべきなのか、ヤセた原因がその彼女にあるのかと突っ込むべきなのか、驚くポイントが多すぎて大変そうだ。

「ちょっとヤセちゃって……………」

 いきなりそんな事を言われても、ツッコム穴が多すぎて逆にツッコメない安藤さんであった。
 とりあえず、バキにシャツを脱ぐように言う。これで体に大量のキスマークがついていたり、縄やムチやロウソクの跡があれば、笑ってグーで突っ込めると言うものだ。

 上半身裸になったバキの姿を見て、梢江は痛ましそうに目をそむけた。
 バキの体はやせているだけではなく、皮膚の色がまだらに変色していた
 どす黒い血が皮膚の下にたまっているのか、筋肉組織が死にかけているのか。
 毒手製作途中にある皮膚のような不気味な状態だ

 これが肉が腐り骨髄も侵されると言われる毒手の威力だ。
 だが、バキの乳首はあいかわらずピンク色だった。少なくともトーンは貼っていない。
 このセクシー野郎がッ、Peッ

 山岳監視員を長年やっているのはダテではなく、安藤さんは「自然物による毒」とバキの症状を見破る。
 しかも、「病院では治せない………」らしい。

 バキが病院を出たのは単なるワガママではなく、無知な科学者には治療できぬ毒物であることを理解していたためのようだ。
 なにも考えていないようで、ちゃんと目的地にたどり着いてしまうのが範馬バキの強味であろう。
 言いかえるなら、本能的なゆえに的確(ただし)かったッ

 安藤さんはバキを座らせ、怪しげな薬ビンから怪しげな粉や昆虫の卵(?)を取りだし、スリ混ぜる。
 プチ プチと昆虫の卵(?)をつぶす音を立てながら安藤は薬を完成させていく。
 自然物の毒に対しては自然物の薬と言う訳だろうか。
 しかし、材料が毒砂に負けないくらいゲテモノっぽい感じがする。

「イワナでも釣ながらよ」
「何日でも休んでったらいいや」


 安藤はそれだけを言った。
 変にバキを心配する言葉も、ムダな慰めの言葉もない。真に優しさのこもった言葉だ。
 この言葉だけで梢江は涙し、バキも素直に礼を言う。
 安藤は2人に背を向けたまま、ふりかえらずに薬を作りつづけた。

 そして毒功じゃなくて、薬功完成
 真っ黒だし、ドロドロっぽいし、材料が何かわからない
 安藤さんは「苦ェぞ」と言っているが、苦いの2クラス上ぐらいのマズさがありそうだ。
 飲んだあと髪が抜けるとか、尿が止まらなくなるとか、そんな副作用がないのか心配だ。

「まず……」

 一息で薬を飲み終えたバキは、おどろおどろしい古印体フォントサンプルで心からの感想を言った

 さて、山でのバキの生活は、昼は安藤さんのすすめる通り釣をして(梢江同伴)、日暮れには顔中シワだらけになるほどマズい薬を飲んで、夜は静かに寝る(梢江同伴)

 のべつまくなくイチャつく2人は今に始まったことではないが、死にそうな彼氏についてきて山に登ったり、体が変色しているバキと一緒に寝たりするのは偉いと思う。
 普通なら山の上までついて行きたくないだろうし、変色した体になんか触れたくないだろう
 自分がつらい時に、真の友がわかると言いますが、危機のときにこそ相手をどれだけ好きなのかもわかるようだ。

 今の梢江は最愛のための覚悟に満ちている。
 激しさはないが、死ぬ直前の江珠に匹敵する強さがありそうだ。
 これがオリバの言っていた、「愛以外に人を強くするものなどあるものか」という事なのだろうか。
 そりゃ、ヤクザに石投げつけたりスネ蹴ったりもします。

 ところで、魚釣をしている2人は無邪気に心底楽しんでいるっぽい。
 そうやって一時でも不安を忘れていられるのは、今のバキにとっては凄くありがたいのではないだろうか。
 こういった描写は、11ヶ月の長期入院を経験した事のある板垣先生ならではのリアリズムだろうか。

 一方、安藤さんは若い2人に気を使ったのか外でタバコをふかしていた。
 富士山の自動販売機は標高も値段も1番高いというが、こんな飛騨の山奥ではタバコはかなりの貴重品だろう。
 だから楊枝に刺してフィルターがこげそうなほど短くなるまで吸って味わっている。
 貴重品のタバコをふかさずにはいられない、やりきれない気持ちがあるのだろう。
 安藤は星空に1人つぶやく。

「バキよ」
「遅すぎたぜ」


 ………マジで新連載「バキ2世」ですか?


 話は20年ほど前にさかのぼる。
 範馬勇次郎 17歳(?)は蝶ネクタイをつけて正装している幼児を睨みつけていた。
 相手に闘う意志があるのなら、子供でも本気で殴りかねない男である。かなり危険だと思うが…、いいのか?
 もちろんその子供はマホメドの子供であった。

「わたしの子」
「というより…………」
「わたしの………」
「夢だ」


 ひそかに開発していたマホメド・アライ流の後継者のつもりだろうか。
 まだ幼すぎて才能があるのかどうか分からないと思うが、わが子に期待をかけるのが親心だ
 内心では勇次郎も「マホメドもしょせん人の子、親バカか…」と思っているかもしれないが、彼も子を持つと「地上最強の親バカ」と言われたりするので、おかしなものだ。

 マホメドの夢である幼児は、後に梢江に渡される人形で遊んでいる。
 この人形を通じて2人のJrに接点が生まれているのだが、それはまだ誰も気がついていない。
 というか、バキがこのまま死んだら接点無いままなんですけど。
by とら


2003年5月15日(24号)
第2部 第168話 継ぐ者たち (548+4回)

 瀬戸際 闘病中のバキは欠席です。
 科学療法でも自然療法でもダメ出しされましたが、どう決着をつけるのだろう。

 そんなバキの事は未来に置いといて、まだ回想中である。
 勇次郎が指摘したとおりマホメドの目指していたのはあらゆる格闘技に対応するスタイルだった。

「わたしの防御に――――― ブロックや」
「ダッキングといった近距離での技術が少なく―――――――――」
「ステップバックと――――――――」
「スウェーバックが圧倒的に多いのは―――――――――」
「この2つの防御技術だけがパンチだけではないあらゆる攻撃に」
「対応できるものだからだ」


 マホメドはボクサーと戦いながらも、空手家の蹴りをイメージしたり、組み付き(グラップル)攻撃をイメージして、対応を考えていたようだ。
 怪物といわれた挑戦者たちと闘いながら、こんな事も考えていたとはけっこう余裕がある。
 いや、こんな事を考えていたから苦戦したのかもしれない。

 仮想組み付き攻撃の相手は、柔道着らしきものを着ている白人はサンボの選手だろうか?
 アメリカ人ならレスリングの方がなじみがありそうだが、当時の仮想敵国=ソ連の格闘技と闘うことを想定していたのかもしれない。

 組み付いてくる相手は、直線的に後ろに下がっても捕まりそうなので、ステップバックよりもサイドステップの方が有効ではないだろうか。
 それはそれとして、組み技対策として近距離での闘いを避け、拳よりも遠い間合いから攻撃してくる蹴りはスウェーバックでかわすという防御技術を考えていたようだ。

 烈先生が相手だと見えない目潰しで視界を奪われて一撃で倒されそうだ…
 やはり、アライ流拳法はまだ完成していない。
 空手もまだ完成していないようだ。

 しかし、3年半のブランクはマホメドからフットワークを奪った。
 防御の要を失ったのだ。羽をもがれた鳥に等しい惨めな状態だ。
 こうなっては地を駆けるダチョウになるしかない。マホメドは「ブロックとロープワークを駆使するファイティングスタイルに変貌」する。


 ん、「ブロック」??
 え〜〜、163話のラストや、164話の冒頭でアライさんは言っている。

「リング上でもガードを上げたことのなかった」


 上げてるじゃん。

 思いっきりガードの間から相手をのぞいているじゃんッ。
 自分で「ブロックとロープワークを駆使する」って言ってるじゃんッッ(スネを蹴っている気分で)。
 言ってることちがうじゃん。
 おかしいじゃん。

 って、そうか、現在のアライさんは、記憶障害を起こすほどに病状が進んでいたのかッ!
 病院だよゥッッ!

 と、まあ、そんな感じでヤキがまわりつつあるマホメドは勝利のために己のスタイルを捨てたのだった。

「わたしの求める わたしのスタイルは 幻に終わる」

 世界最強の国にすら喧嘩を売った漢が、志を曲げるのだ。さぞかし無念であろう。
 また同時に、アライ流の完成は、世界トップクラスの実戦で磨く必要があったことがうかがえる。
 己の流派を創設すると言うことは、これほどまでに困難なことのだろうか。

「それを恥じるかい」

 目前の勝利のために、未来の夢をあきらめる。勇次郎には、その微妙な感覚がわかったのだろう。
 空白の3年半を尊敬すると言いながら、きびしい質問をしている。
 言われたマホメドは何も言わずに目を閉じた。
 ボクシングで負けたくないという思いと、アライ流を完成させたかったという思いが、脳内で格闘しているのだろう。

「Boooo」

 勇次郎とマホメドが真面目な話ばかりして、かまってくれなかったのでJrがキレた
 あろうことか勇次郎のスネに拳を叩きつけるという暴挙を敢行する。
 これは火山の火口に命綱をつけずにバンジージャンプをする事にも似た愚挙だ。無知とは恐い。

「ほう」

 笑ったッッ!
 勇次郎が鬼スマイルを見せた。
 ヤバイッ。この人は笑っているときも危険だ。機嫌がいいときも危険だ。怒っている時は最悪だ。
 要するに、安全ピンが元からついていない手榴弾なみに危険なのだが、この笑い方は喰うモードに入りつつある状態で、撃鉄をおこした銃に等しい。

 だがJrは睨みつけてくる勇次郎に臆することなくパンチを打ちつづける。
 大人でも膀胱が空になるまで漏らしつづけると言われる勇次郎の気迫を前に、なんという胆力だろうか。
 戦う技術が偉大なのではない、ハートだッ!
 まさに、Jrはマホメドの夢なのだろうか。

 ところでJrですが刃牙・幼年編の平山(or 平尾 or 平井)みたいな顔になっている。
 顔はいいとしても、頭、頭髪だ。
 ちょっぴり悩めるお年頃のオリバさんにも匹敵するような後退をみせている。
 若い、というより幼いうちからこれでは、父の夢は継げても、毛髪に夢はなさそうだ。

 そして、勇次郎はいつまでも殴られているような生物ではなかった。
 周囲に妖気すら漂わせる、力のこもったデコピン
 それを容赦なくJrの額に撃ち込んだ。
 吹っ飛んで、Jrは壁に当たるまで転がった。

 子供の遊びではない。
 神様と称されたムエタイの5冠王・チャモアンを一撃で屠(ほふ)ったデコピンなのだ。

 くしくも神と呼ばれる2人の男、チャモアンとマホメドの邂逅でもあり、シンクロニシティーを感じるのもムリではあるまい。イ〜〜ヤ自然じゃッッ

 Jrはその一撃に耐えた。
 出血し、じわりと涙をにじませながらも死ぬこともなく意識を保っている。

「泣くな!!!」

 自分から攻撃しておいて、泣くことを許さない。
 まさに泣く子もだまる範馬勇次郎だ。だまると言うか黙らせているのだが。
 まあ、ちゃんと泣きやんだJrも偉い。

「いいファイトだった」

 わが子が地上最強の生物にも屈しないハートを見せたので、マホメドもうれしそうだ。
 とりあえず、この時点でJrはムエタイ5冠王よりもタフらしい
 まあ、バキ世界のムエタイと比べても…

「世界中にバラまかれた俺の種」
「ガキ供と い〜〜〜〜〜い親友(ダチ)になりそうだぜ」



 ナニ言い出しますか鬼父さんッ!
 あんた、まだ隠し子いるのッ!?
 バラまくって、ジェーンも確信犯ッ!?

 女性の好みが「強さ > 外見」だったのも狙っていたのかッッ!?
 ぁああ、と言うかその言葉は世界の崩壊をまねくってば…

 肉体的資質も、天才も、努力も、四千年の歴史も、科学も、兄弟愛も(あ、これ関係無いな)、全部チャラにする血縁制度を安易に持ちこまないで欲しかった。
 これはもう、巨凶なる範馬の血は、数百年昔に地球に帰化した宇宙人というオチですか。

 とか言いながら、範馬一族がいっぱい出てくれば、インフレが起こって加藤が範馬を倒すという逆転現象もありうるのではないかと期待してしまう。
 ザクだってガンダムに勝てるんだァ〜〜〜「ちゅど〜〜〜ん」って感じで。いや、それ負けてるじゃん。


 範馬一族が大挙して押し寄せるかどうかはともかく、マホメド・アライ流拳法について気になる部分がある。
 マホメドは防御に関しては全局面対応の方法論を編みだしている。
 問題と言うものは解き方がわかれば後は簡単だ。
 逆に言えば、解き方を見つけるのが難しい。

 ただ、マホメドは防御の話はしても、攻撃方法には触れていない。
 闘争は敵を倒すことだ。攻撃をしなくては、勝利はない。

 マホメドは足元に寝た勇次郎を攻撃できなかった。攻撃は、まだまだ未完成だったのかもしれない。
 足はフットワークに専念し、腕は攻撃に専念するのがアライ流の基本思想だろう。
 人間の体の構造上、その思想は間違ってはいない。

 ただ、寝た状態の敵への攻撃や、組み付かれてしまったときの対処方法などはまだ考えていなかったのではないだろうか。

 その辺の問題解決はJrが引き継いだのだろう。
 161話のデイヴ戦では、低空タックルにもちゃんと対応している。
 今後の展開で、完成されたアライ流の攻撃を見ることができそうだ。

 ところで、ファンの間で根強くあった「死刑囚たちは範馬の血筋」と言う噂だが、今回の勇次郎の発言でちょっとだけ可能性が上がった気がする。
 同じ血縁を持つものだから、シンクロニシティーを起こしたのかもしれない。

 さて、代役もいるとわかったし、これでバキも安心して退場できるさ!(ォィ
by とら


2003年5月22日(25号)
第2部 第169話 あの日の約束 (549+4回)

 もう普通のプレイでは満足できないバキと梢江は絶壁を登る。
 しかも、道具の使用は一切認めず素手での登坂だ。
 ただでさえ死にそうなのに、わざわざ危険なことにチャレンジしている。自分の運命は自分で選ぶつもりだろうか。

 そんな危険を乗り越えて、たどりついたのは夜叉猿の洞窟だった。
 バキと梢江を出迎えるのは歴代 夜叉猿の遺骨ッ!
 それはそれは最大トーナメント終了時の「遅えぞチャンプッッッッ」状態でございます。
 デートの場所にしてはいささかエキサイティングに過ぎる。

 先代・夜叉猿は勇次郎に頭をくだかれたので、頭の無い骨格が1つあるはずだが、見当たらない。
 どこの馬の骨ともわからぬ頭蓋骨を、代わりに付けているのかもしれない。
 さすが人間に1番近い生物だ。柔軟な発想をしている。

 バキは夜叉猿一族とは親子二代にわたって因縁がある。その思いを込めて、ずらりと並ぶ遺骨たちに手を合わせる。
 梢江もこわごわと手を合わせ目をつぶる。
 なんの説明もなくこんなところに連れてこられても文句1つ言わない。梢江もそうとう根性が座ってきた。
 夜叉猿Jrに倒されたリザーバーの栗木くん(伝統派空手)なら、「人間じゃねェ……」と言って外に飛び出し、崖から転げ落ちているところだ。

 すぐに環境に順応したのか、落ちつきを取り戻した梢江は夜叉猿の骨を眺める。
 当然、なんの骨かわからないのだろう。図鑑にだってのっていない。

「ペキン原人…………?」

「ハハハ」
「ここは日本だぜ」


 梢江のギャグは失敗に終わった。
 ペキン原人の骨は現在紛失して見つかっていない(参考)。
 だから「こんな洞窟に失われた北京原人の化石が隠されていたのか!」という渾身のギャグだったのだが、毒で脳がただれているバキはうまくツッコムことができなかったようだ。

 もしくは、梢江は映画「北京原人の逆襲」で北京原人を知ったのだろうか。
 そうであれば、巨大猿を「ペキン原人」と認識してもおかしくない。

「ここで交わした約束………」
「もう誰にも負けない………………って」
「いったい今日まで…………………」
幾度負けたことか……


 バキが敗北宣言したッ!

 なかなか負けを認めない死刑囚たちに比べればずっと謙虚な態度かもしれないが、ちょっと寂しい発言だ。
 体を壊しているせいか、かなり後向きの発想になっている。
 ヘタすると、腕っこきのハンターを雇って勇次郎を撃ち殺してボクも死ぬ、と言いだしそうだ。

 それも、夜叉猿一族の遺骨を見てリアルな死を実感したためだろうか。
 自分の将来像を突き付けられたようなものだ。
 もちろん「おまえはHしだしたら止まらない猿みたいなヤツだ」という意味ではない。
 バキは己の死が近い事に気がついている。「もっとも深刻な」敗北を喫しようとしている」のだ。

 悩めるバキの前に夜叉猿が帰ってくる。
 今度ばかりは梢江もさすがに悲鳴を上げる。
(ペキン原人ッッ! ペキン原人の逆襲よォッ!)とか内心で思っているのかもしれない。

「忘れたのかい梢江……」
「彼は最大トーナメントの出場選手だよ」


 試合には出てないけどね。
 試合前に加藤とゲランをツブし、本人(本猿?)は克巳にツブされ、大会を荒らしただけと言う気もするが、一応出場選手らしい。

 バキは激ヤセしているので、夜叉猿が知らない人だと思って襲いかからないか心配だ。
 まあ、そのときは梢江がスネを蹴り上げて、石を投げつけて夜叉猿を倒してしまいそうだ。
 この後、なにがあったかは誌面には描かれていない。
 ひょっとしたら本当に死闘があったのかもしれない。

 安藤さんの山小屋に帰ってみると、烈海王が待ちうけていた
 小さッ!
 確かに烈はデーター上では背の低い方だ。
 だが、安藤さんと並ぶとドリアンと柳ほどの体格差がある。
 おいおい、烈ってこんなに小さかったのかよッ。
 烈はバキを心配してやってきたらしい。憂いをおびた、柔かな表情でバキを迎えている。

 に、似合わねェ……。
 とことん笑顔が不気味な男だ。
と言うか笑って細められた目が白目になっていてパーフェクトナチュラルパワーに恐い。

「バッ」
(ズ…ッ)

 烈老師(せんせい)が殴ったッッ!
 握手すると見せかけ、不気味な笑顔を見せて、バキのボディーに渾身の一撃を打ちこむ。
 たまらず一撃でバキはダウンする。

 そうだ、アンタはフリチン……じゃなくて、蛮勇を振るうべき人なんだ
 血管がピクピクしていない烈なんて、毛の生えた独歩みたいなもんですよ!(謎)

 全盛期のバキなら、このボディー攻撃をカウンターの胴廻し回転蹴りで切って落としているだろうが、今のバキにはそんな力は無い。
 烈も充分な勝算をもってバキに不意討ちを仕掛けたのだろう。

「ちょッとォッ」

 すかさず、梢江がブチ切れる。
 ヤバイッ、烈老師スネをガードですッッ!
 あと飛礫注意報ッ!


 だが、そこは歴戦の烈海王である。
 抜かりなく「あとはお任せください」と発言し、自分は悪くない事をアピールする。
 さらに中カ(字が出ません上が[化]で、下が[十])人民共和国のロゴが入ったヘリコプターが上空に飛来した。
 バキ、このまま中国へ拉致かッ!?

 病院でさじを投げられ、山で見放され、今度は中国でしょうか。
 燃料などの問題があるので、ヘリが中国から直に来ているとは思えない。中国大使館などを経由しているのだろう。
 それにしても段々と規模の大きくなる闘病生活だ。そのうち無重力環境を求め宇宙に行くかもしれない。

 中国四千年が通用しなければ、今度はシベリアに連行され、ガーレンのウラン採掘場で放射能を浴びて突然変異を期待するのだろう。

 中国に行くとなると劉海王が久々に登場すると思われる。怪しげな気功や針や薬とかがてんこもりで出てきそうだ。
 百歳になっても若々しい劉海王の秘密が明らかに、なる?


 ところで、今週のアッパーズでの板垣先生コメントが『俺が拳銃を所持していると通報したのはどこのどいつだ。(板垣)』、今週のチャンピオンでは『理由もクソもない。イキナリの家宅捜索。俺が拳銃持ってるだと!?』でした。
 アッパーズのコメントはギャグなのかなんなのか、判断がつかなかったのであえて触れなかったが、どうやら板垣先生は拳銃の不法所持の疑いで家宅捜索を受けたようだ

 日本の警察はとろけるように甘い。
 板垣恵介が拳銃を所持するだろうか?
 否、断じて否ッ!
 あの人は銃を撃つより、殴ることを好む人です。あ、あんまフォローになってねぇ…

 一応、Yahoo!ニュースで検索かけましたが、関連する記事は無いようです。
 まあ、自衛隊で実弾の発砲経験のある人ですから、警察に狙われていたのかもしれません。


 それは置いといて、なんか正式ではない手段で海外に行きそうな勢いのバキですが、梢江も連れていくのでしょうか。
 烈の寺は女人禁制とかそういうオチが待っているかも。
 そして、毒だけではなく新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)にも気をつけた方がよいかと。

 劉海王に会ったら会ったで「ふむ、お主が烈の弟か…」「え、どう言う事ですか?」「実は烈の父親は範馬勇次郎なんじゃよ」なんて事があるかも。
 その場合、驚くポイントは勇次郎は何歳で烈を造ったのかということだ。
 烈は推定30歳なので、仕込みは勇次郎……7歳??
 ムリだッ!


 だが、あの範馬勇次郎であるなら、あるいは……。
 なんか勇次郎って、あの顔のまま生まれてきて、いきなり範馬立ちとかしそうなイメージがあるんですけど。
by とら


2003年5月29日(26号)
第2部 第170話 五里霧中 (550+4回)

 毒で弱った腹にキッツい一発をもらったバキは悲鳴もあげずに崩れ落ちた。
 そう、毒で弱っていようと関係無い。殴る時は思いっきり殴る、それが蛮勇大王・烈海王なのだ。
 バキは弱った腹筋を殴られたのだ、ひょっとしたら、はずみであんこが出たかもしれない。(参考:じーらぼ!過去ログ5月17日

 間髪をいれず登場したは「中華人民共和国」ヘリコプターだ。
 刃牙を殴った直後という絶妙のタイミング。おそらく殴るまで隠れていたのであろう。
 なにがなんでもバキを殴る。烈海王の強固な意志がそこにある。

 ヘリからおりた4人の男。ビシリと整列し、制服の胸には「中華人民共和国 特別搶救隊」とある(「華」は「化十」、「隊」は右の部分が「人」)。
 搶救を検索すると、レスキュー系の話題に引っかかる。特別救護隊と言う感じだろうか。
 なお、漢語林で「搶」を引くと『(1)つく。つきさす。 (2)とどく。到着する。 (3)あらそい取る。奪い取る。』
 烈がバキをつきさして(1)、救護隊が到着し(2)、バキを奪い取る(3)完璧だ。

「王(ワン) 以下(イーシャ)四名(スーミン)ッッ」

 どう言う組織に所属して、なにを目的としているのかはわからないが、軍隊的な鉄の規律で作られたプロ組織のようだ。
 この四名+烈は、日本が隠密裏に編成していた最少にして最強の5人組みレンジャーに勝るとも劣らない力を有していそうだ。
 破壊も拉致もお手のものだろう。

「ごくろうッ 既に聞いてあるとおりだッ」

 四人の同志を迎え、烈もムダに気合が入っている。
 小さい「ッ」も増量サービス中だ。
 やはり、バキを殴れたのが嬉しいのかもしれない。

 なんで、烈が中国からこんな人達を呼べたのかというと、中国での烈海王は大変な名士だかららしい。
 中国拳法という武の総本山に所属し、しかも最強者=海王の名を継ぐ者である。
 神心会をスケールアップしたような危険な武闘集団なのだろう。

 さらにヘリの中から徳川光成がおりたつ。本当にこの人は出たがりだ。
 地下闘技場の歴史の中で最も若くエキサイティングな王者の最期を看取りにきたのだろうか。
 とりあえず、他の死刑囚たちは全部片付いちゃったし、あとは毒手の被害者を見学して、その威力を確認するぐらいしか楽しみが無いのだろう(ひでェ)

「各方面へ手を回して頂き」
「感謝しております」
「救いますッ 必ずッッ」

「一切の手続きは無用」
このまま中国へ飛んでくれッッ」

 手続きしろッ!

 各方面に手を回して、密入国の手配をしちゃったんでしょうね。バキ本人の意志とは関係なく。
 しかし、先週もつっこんだ通り、ヘリでは燃料が持たないはずだ。

 こちらのサイトによれば、西独MBB社のBO105C小型双発ヘリコプターが1,714.837kmの航続距離を記録している。
 なお、同じサイトにはシコルスキー・ヘリコプターの話なども乗っている。
 そして、JALの案内によれば成田・上海間で1,796kmッ!

 惜しい、ちょっと足りないッ

 だが、問題はない! 100キロメートルまでなら!
 と言う訳で足りない分は、烈老師がなんとかしてくれます。するったら、するんだッ!


 そのころマホメドJrはアライ流を完成させたと勇次郎に告白していた。
 密室で2人っきり、逃げ場は、無いッ。

「言葉で説明するものでもないでしょう」
「御自身で確認したらいい」


 言ってはいけない状況で、言ってはいけない台詞を言った。
 勇次郎を挑発するのは危険すぎる。

 例えば、柳龍光。死にました(断定すんなよ)。
 または、居合の黒川さん。死にました(断定すんなよ×2)。
 このままでは、マホメドJrの身が危ないッ!

 そんな状況でありながら、マホメドJrはグローブをはめる。
 18オンスの化物グローブではなく普通のサイズだ。おそらくは戦闘用、対勇次郎用のスペシャル・ウェポンだろう。
 グローブを装着し、いつもの様にステップを踏みはじめる。
 右腕をぐるぐる回し、余裕の笑みすら見せている。
 己の技術にそこまでの自信があるのか、ただの勘違いか。

「あらかじめ断っておく」
「俺の拳は(※)刃引き をしちゃいねェ………(※ 刀剣等の刃を斬れないように引き潰すこと。)
「本身(ほんみ)でいかせてもらう」


 真剣にも匹敵すると言われる勇次郎の拳だ。命懸け、極限の試し斬りとなりそうだ。
 ちなみに、刃引きは刀身全体をするだけではなく、刀を抜き差しするときに誤って手を斬らないように鍔元部分だけを刃引きすることも多い。
 敵を気遣うのではなく、自分の安全のための刃引きだ。
 好んで危険を引き寄せる勇次郎は、ただの1ヶ所も刃引きをしていない危険な存在だといえる。
 神の息子と、悪鬼の対決は次回以降へ続く。


 国家規模の陰謀によりヘリにのせられたバキと梢江は、ついに目的地に到着する。
 書かれていないコマ間では、烈が人力でヘリのプロペラを回したりして大変だったのだろう。
 とりあえず無事に着陸した。そこは烈の回想シーンによく登場する巨大な寺の前であった。

「………………ッッ」

 出迎えを見て梢江は驚愕した。

 ハゲ・禿げ・HAGE。

 そろいもそろって、つるっつる。禿げ率100%の僧たちが、ひざまずいて出迎えていたのだ。
 今ここで、ハゲにされるッおそらく梢江はそう思ったのだろう。

 神秘のベールに包まれた中国拳法の聖地でバキはいかに ハゲる 癒されるのだろうか。
 ついでに、烈が「やはりここではコレに限るな」と言って、ズラを外しハゲになったりしたら、ちょっと嫌だ。


 バキがここで回復するかどうかわからない。ここでもサジを投げられて、またどこかに連れていかれる可能性もある。
 ただ、バキたちが寺を出るころには、看病ついでに中国拳法を修行した梢江が手のつけられないほど強くなりそうで、ちょっと恐い。
 そして、松本梢江流・拳法はお腹にやどっている新しい命が引き継ぎ、完成させるのだろう。
 範馬刃牙流格闘術は、なかったことにしてください。


 今回のタイトルの「五里霧中」だが、出典は『後漢書・張楷伝』である。
 張楷は五里四方に広がる霧・五里霧を生み出す能力を持っていて、そこから五里霧の中「五里霧中」という言葉が生まれた。伴野朗の「呉・三国志」ではその辺のエピソードをしつこく書いている。
 ちょうど中国つながりのタイトルであり、バキを回復させるには神仙の秘儀が必要であると言う危機感をあおるタイトルでもある。


 中国旅行(穏便な表現)は予想通りでも、マホメドJrのピンチ(?)は予想外だった。
 完成されたアライ流はどのような攻防をみせるのだろうか。
 だが、克巳や山本稔のように「完成した」と称される人達は、すぐ負ける。マホメドJrの未来も暗い気がする。
by とら


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