今週の範馬刃牙 SON OF OGRE 11話〜20話

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2006年2月23日(13号)
第3部 第11話 ヒトとムシ (667+4回)

 最近おもうのだが、『範馬刃牙』という漫画のジャンルはなんだ?
 格闘………かな?
 ギャグ漫画………かもしれない。
 単独ジャンル『板垣恵介』かな、やっぱり。
 板垣の前に板垣無し。板垣のあとも、たぶん板垣無しだろう。
 漫画界のマダガスカル島ことユニーク漫画家・板垣恵介であった。(参考:マダガスカル島(ウィキペディア)


 今回も大マジメに妄想の昆虫と闘うぞッ!
 前回、幻影巨大カマキリの背後をとって 刃牙がチョークを決めた。
 絶対有利と思われる状況でなぜか刃牙が驚愕している。
 刃牙は、なにに驚いたのだろうか。

(バック奪(と)っても しっかり見られてんじゃん………ッッ)

 カマキリの複眼は横についているので うしろも見えるのだ!
 でも、見えるだけじゃダメだろ。
 人間の後頭部に目がついていても、チョークを決められたらほとんど関係ない。
 見えないことよりも、肉体構造上の弱点である首を絞められていることのほうが、重要だ。
 だから、カマキリが見ていたとしても あまり関係ない。

 刃牙の場合は梢江の股をムリヤリひらいて見たり、カーテンも閉めずにおっぱじめた前科がある。
 あいての嫌がるところを見たり、自分がやっているところを見せつけると、興奮するのだろう。
 ルミナをつれてきたのも、見せつけることで快感を高めるためなのだ!(断定)

 カマキリの視線を感じて、(理由は不明だがなぜか)刃牙が無防備になる。
 そのスキをついて前足を背後にのばし、カマキリが刃牙を捕らえた。
 刃牙の目前に、カマキリの口がせまる。
 もう、気分は映画のエイリアンだ! 哺乳類とはちがう構造の口が、恐怖をさそう。
 よだれが恐ぇえッ。

(く………ッッ 喰われる!!)

 刃牙が必死になって幻影の怪物ともみあう。
 やっぱり、チョークの間は空中に浮いていたようだ。
 物理法則を超えた、超・妄想力である。
 もしカマキリに喰われちゃったら、飲みこまれた肉はどこに消えるのだろう?
 範馬の妄想力ならば、異空間に肉をワープさせるぐらい 朝飯前なのか。

(ムチャだッッ 昆虫と力比べなんて…ッッ)

 ルミナくんは三部からのキャラクターなので知らないのだろうが、ムチャクチャをするのが範馬一族です。
 常識的をもっていて、おちついた行動をとる範馬一族などいない。
 刃牙なんて、満足にパンツも脱げないし、はかせない

 「昆虫と力比べ」も、冷静に考えれば大爆笑もののセリフだ。
 しかし、すっかり染まってしまったルミナは大真面目になっている。
 私は、コンビニでちょっと吹いた。
 もう地下室には狂人しかいない。あ、本物のカマキリは正常か。

 けっきょく、刃牙のひとり相撲なのだ。
 妄想で全盛期の曙を呼びだして「やっぱ最強は大相撲!」と言っているようなものです。


 カマキリが怪力で刃牙を引きこむ。
 オリバ&花山との三角関係になってしまった刃牙が越前裁きを喰らっているような状態だ。
 子供の手を引っぱらせて競わせるというアレです。
 ふたりの愛と握撃で引き裂かれる。
 愛とは 時にものすごく痛いものなのだ(いい話として終わらせましょう)。

 力も強いだろうが、トゲトゲも痛そうだ。
 さいわい出血はしていないが、あまり長く組みついているとヤバい。
 敵は体に刃物をうめこんでいるようなものだ。キゲンすぎる。

 刃牙は妄想のカマキリの腕を利用して飛びあがり、蹴りで突き放して脱出する。
 幻影を踏み台がわりにしやがった。
 あいてが昆虫(むし)であっても、やることは同じだ。範馬刃牙は真っ向から闘う!
 人だろうと、猛獣だろうと、昆虫だろうと、梢江だろうとッッ!(猛獣です)

 決意をかためた刃牙が、正面から打ちかかった!
 だが、外骨格の昆虫はかたい。

「まるで金属ッッ」

 やわらかそうな腹を狙わず、硬そうな足・胸・頭を狙うところが、マゾの発想だ。
 刃牙は、ほんとうに勝つ気があるんでしょうか?

 「ダイの大冒険」の悪役フレイザードは「戦うのが好きなんじゃねぇ」「勝つのが好きなんだ」と言っていた。(参考:悪役名簿
 奇麗事をぬぐいさった名言だ。
 刃牙の場合は「戦うのが好きなんじゃねぇ。痛いのが好きなんだ」でしょうか。
 なんで、痛い方向に向かって進みますか?
 あなたはホラー映画の登場人物ですか。忘れ物を取りに行くな。単独行動するな。


 8話感想を書くときに参考にした「昆虫の技能」によると、昆虫の外骨格は円筒状だから強いそうだ。
 平らにしていると弱い紙も、丸めて筒状にすると丈夫になる。
 だが、丸める径が大きくなると、どんどん平らな状態に近くなるので、弱くなってしまう。
 巨大化したカマキリの外骨格は、もろくなるはずだ。
 しかし、相手は妄想体である。理想的なパワーアップをしているのだ。まさに難敵である。

 猛然とラッシュをはじめた刃牙が、カマキリの前足をキャッチした!
 そのまま、妄想のカマキリにぶらさがって腕を十字固めだ。
 おいおい、キミはどこにぶらさがっとる。
 スゴいパントマイムを超えて、手品や魔法の世界になってしまった。

 カマキリの逆関節をとった。刃牙は一気にブチ折ろうと体重をかける。
 しかし、カマキリの怪力で持ち上げられて投げ飛ばされた。
 反動もなしに、刃牙の体は床の上から吹っ飛んだことになる。
 地下だから酸素がうすくなって、幻覚を見ているのだろう。
 酸欠で気絶するのが早いか、刃牙がカマキリに喰われるのが早いか、勝負だ!(どっちも負け)

(格闘技が………ッッ)
(通用しないッッ)



 格闘技は人間と戦うことを前提にした技術だ。昆虫には通用しない。
 宮本武蔵だって「五輪書」で、ムダなことはしてはいけないと書いている。
 きびしい闘争の世界では無駄なことをする余裕など無いのだ。
 昆虫と闘う技術は、格闘技にならなかった。作っても使わないし。

 ただ、範馬勇次郎と闘うための練習ならば話がかわる。
 範馬勇次郎は、はっきりいって人間じゃない。筋肉の組成がちがう。
 そんな異星人に勝つためには、エイリアンクラスの怪物を用意したい。

 常識を超えた強さをもつ悪鬼(オーガ)を倒すために、常識を超えた昆虫と闘う。
 考えようによっては合理的発想だ。狂っているけど。

 と、いうワケで、刃牙は人間が作った技術である格闘技の限界を感じている。
 ………9話で格闘技の動きを捨てたんじゃなかったけ?
 とりあえず、常識のワクを破壊して 構造改革をするしかない。
 目からビーム出すとか、それぐらいの気迫でガンバレ!


 次回のチャンピオンでは、プロボクサー亀田興毅と刃牙が ドリームマッチをするらしい。
 ボクサー兄弟の亀田三兄弟は刃牙ファンだ有名だ。
 カマキリだけでなく、実在ボクサーとも仮想ファイトをするとはッ!
 ちなみに、刃牙はシュートの平直行選手(刃牙のモデル)とも仮想ファイトをしたことがあります。(ただし決着はつかなかった)
 来週のチャンピオンは、いろいろな意味で見所満載だ。


 今週のチャンピオン・アンケートで、ちょっと気になるものがあった。
[E]本誌の漫画家さんにちなんだプレゼントがもらえるとしたら、次のう
 ちどれが一番ほしいですか?(2つまで)
 (1)サイン色紙 (2)漫画家さんの私物 (3)複製原稿 (4)直筆レター
 (5)漫画家さんに会える権利 (6)漫画に登場できる権利
 まあ、(5)か(6)だろうな。
 とくに(6)の漫画出場権が面白そうだ。

 きっと、漫画のなかでカマキリに喰われる役になるのだろうけど。
 板垣先生なら、読者だろうとお構いなしに きっとヤる!
by とら


2006年3月2日(14号)
第3部 第12話 戦闘形態(ファイトスタイル) (668+4回)

 自分が思い描いた妄想の巨大カマキリを倒すことができない。
 漫画風にいえば、キャラクターが一人歩きしている状態だ。
 描いている本人にも先の展開がどうなるのかワカらない。

 漫画家へのインタビュー集である「週刊少年『』」で、板垣先生はバキのイメージそのままだと評されていた。
 まるで、バキがバキを描いているようだと。
 ならば範馬刃牙は板垣恵介になりうる。
 カマキリの凄みを説明しているうちに、勝てる気がしなくなってきたのだろう。
 範馬刃牙も己の妄想を制御できないらしい。(「も」って断定すんな)


(こんなのフツウじゃないッッ)

 ルミナが常識的なツッコミをしやがった!
 異常事態に適応しているかと思ったら、まだ常識的な部分を残している。
 なんかイルカが唐突に「肺呼吸なのに水中生活なんてフツウじゃないッッ」と言い出すようなものだ。
 変態空間では、常識的なヒトが変態になる。

 精神と肉体を異常なまでに高めた刃牙世界では、死にそうな目にあうのが基本だ。
 不自然主義をつらぬくため、あえてフツウではないことをやる。
 もちろん、カマキリが見えているルミナも、すでにフツウの小学生ではない。

「そこまでやっちゃダメだ バキさんッッ」
「バカバカしいよ こんなことッッッ」


 まっとうで丁寧で親切な忠告(ツッコミ)が炸裂する。
 たしかに、バカ丸出しの一人遊びだ。
 ただ、残念ながらルミナは常識にしばられた者の視点で考えている。
 常識的にみると、たしかにバカバカしいほど意味がない。

 だが、逆に考えるんだ。「痛いのって気持ちいいんだ」と 考えるんだ。
 すると、刃牙の行為は整合性がとれる。困ったことに、ツジツマがあってしまう。
 すべてマゾの性癖という説明でカタがついてしまうのだ。
 ルミナには、それがワカらない。やはり小学生に、異常性癖の深遠な世界はまだ早いらしい。

(もう――――――――――――――――――
 聞いちゃいない………)


 ルミナがどんなに叫んでも、刃牙の妄想は止まらない。
 目の前にあるリアル(?)な痛みに夢中なのだ。
 刃牙をふりむかせたいのなら、カマキリの一撃よりも"痛い"攻撃を与えれば良かろう。
 それぐらいやらないと、刃牙はふりむかないぞ。

 だが、カマキリはますます「実物チックになり」「体温まで感じるほどの――――」状態だ。
 カマキリは恒温動物ではないので、体温は低い。
 だが、ウィキペディアの説明によると「むしろ、昆虫は空を飛ぶ能力があり、このような高度な活動性を保つには、高い体温が必要である」らしい。(参考:恒温動物変温動物
 そういえば、ミツバチはスズメバチを熱で殺すためハネをふるわせて体温を上げたりする。(参考:ミツバチ
 妄想の巨大カマキリも練習中の烈海王なみにアツい漢なのかもしれない。

 先週のTV番組「世界一受けたい授業」で、「複目なので視界は悪いですがハエの時間は、人間の10倍のスピードで流れてい」ると言っていた。
 もしかするとカマキリも人間の数倍の速度で時間を感じているのかもしれない。
 カマキリの寿命は半年あまりだそうだ。半年でも十倍の密度で生きているのだろうか。


 全方向対応の複眼をもつ怪物だ。
 オマケに動きは速く、力も強い。
 調子にのってすごいバケモノを召喚してしまった。
 勇次郎に喧嘩を売った時点で、どうかしちゃっているぐらいに調子コキまくりだったので、いまさらですが。

 カマキリににらまれ、逃げ場がどこにもない状態だ。
 ルミナを襲っているスキに逃げろ、などと言いだしかねない。
 だが、範馬刃牙はヒーローの資格を失っていなかった! たぶん。

(俺は"逃げる為"に ここにいるのか!?)
(アイツと――――――)
(アイツと闘うときにも"逃げ場"を探すのか!!?)


 範馬勇次郎との闘いを思い浮かる。逃げることのできない闘いだ。
 まるで少年漫画の主人公のように、弱い心を押しやって決意をかためた!
 逃げるための言い訳なら無限に用意できる。
 いや、無限は大げさだけど、説得力十分な言い訳が可能だ。100%死ぬし(←言い訳)。
 だが、刃牙は逃げずに立ちむかう事を選んだ。
 妄想のカマキリと遊んでいるのは、寄り道に見せかけた最短距離だ! たぶん。

 刃牙の脳裏に浮かんだ勇次郎はデカい。身長3mはありそうだ。
 サイズの差が、そのまま実力差なのだろうか。
 逃げる気は無いのだが、絶望的な実力差がある。
 千里の道も一歩からだ。まずは目前のカマキリを倒す。
 闘いの先に、いつか勇次郎の背中が見えてくるだろう。

(考えろッッ)
(蟷螂と闘う―――――――)
(闘法(オリジナル)!!!)


 刃牙が巨大カマキリと闘っているのはマゾだから。
 性癖は別として、範馬勇次郎に勝つための特訓でもある。
 特訓というが、現実には存在しないバケモノと闘って意味があるのだろうか?

 フツウに考えれば、意味はない。
 しかし闘いでの発想や応用力をつけるための訓練としては有効だろう。
 常の方法で勇次郎を倒すことはできない。
 それでも、勇次郎がみせるわずかなスキをついて、奇想天外な一撃を加えればダメージを与えられそうだ。

 人間とは異質の存在であるカマキリの行動を分析し、弱点を見つけ、攻撃方法を開発する。
 闘いのカンを鍛える意味では、異質対決も有効なのだろう。
 もちろん、直接勇次郎とリアルシャドーをするのがイチバンだ。
 やっぱり、バキ最終回で勇次郎の幻影を呼び出したときに、ヒドイ目にあったのだろうか?
 マゾの刃牙ですら二度と呼びだしたくないと思うような大惨事だったのだろう。


 刃牙の一撃が首の下にはいる。
 手がカマキリの頭に隠れたので、喰われたのかと思った。
 いろいろ刃牙を悪く言っていますが、私も妄想のカマキリに喰われたら悲惨だと思っていたようだ。

 刃牙の一撃をくらってカマキリがあわててさがる。
 さがったカマキリとルミナがぶつかるところだった。
 これだけ見えているルミナならば、ぶつかればダメージを受けてしまいそうだ。

 自分の妄想でケガをするのは自業自得である。
 しかし、他人の妄想に巻きこまれてケガをしたら、映画「デビルマン」なみの悲劇だ。
 変態は捨ておいて、さっさと逃げ出したほうがよさそうなんだけど。


 刃牙はカマキリの首の下に柔らかな感触を感じていた。
 強固な外骨格に守られたカマキリの弱点だろうか。
 前回腹をねらえ的なことを書いた。
 よく考えると、手足がジャマで腹まで打撃が届かないのかもしれない。
 範馬刃牙はタダのマゾじゃなくて、合理的にものを考えるマゾなのだ。

 刃牙が使用(つか)った打撃は、人差し指と中指を使用する二本貫手だった。
 これぞ、蟷螂拳の攻撃だ!
 思いもよらぬところで範馬刃牙流の蟷螂拳が完成したのか?
 さっそく、巨大カマキリにオリジナルの蟷螂拳で挑もうとする。
 最大トーナメント決勝で、刃牙は他人の技をパクリまくった。
 ふたたび刃牙の天才が加速するのか!?
 次回へつづく!


 無意識のうちにベストの握りをする。
 独歩の菩薩拳を思い出させるエピソードだった。
 しかし、自分で考えた妄想なのに、知らないことが多すぎないか?
 刃牙の脳内にはあとづけ設定が好きなオサレ作家が住んでいるのかもしれない。

 カマキリの首の下が柔らかい場所は範囲が小さいのだろうか?
 二本貫手ならせまい範囲をピンポイントに狙って攻撃することができる。
 しかも、拳よりもちょっとだけリーチが長い。
 硬いところを打つと指にダメージを受けるが、かなり有効な攻撃かもしれない。
 でも、鎬昂昇ならもっと上手く攻撃できるのだろうな。

 これで刃牙が北派蟷螂拳、周家螳螂拳につづく、第三の蟷螂拳が誕生するかもしれない。
 範馬蟷螂拳は、開祖範馬刃牙が巨大カマキリとの闘いを妄想していたときに生まれた。
 などという、ウソっぽさ大爆発の誕生秘話が語られるのだろうか?
 誕生した瞬間にイロモノへの道が決まっているとは、呪われた武術だ。
by とら


2006年3月9日(15号)
第3部 第13話 好機(チャンス) (669+4回)

 バキ最終巻は本日発売だ。
 最終巻のトップである269話のトビラと 今週のトビラは ほぼ同一の絵だ。
 ……好意的に解釈すると、シンクロニシティーかな。
 それとも、自分で自分をインスパイヤしちゃったのだろうか?
 自分が生みだした存在に、自分がふりまわされている。


(その構えはファイティングポーズというよりは カマキリを真似ているように見えた)

 刃牙はライバルの技をパクリまくるのが得意だ。
 ファンの心にナニかを刻みつけたPS2ゲーム『グラップラー刃牙』でも、刃牙は相手の技をコピーする。
 そして、現在の刃牙はカマキリの行動をパクリまくっていた。
 そのうちに目が複眼になって、うまそうにバッタを喰ったりしますよ。

(格闘技の世界は野蛮だ)

 ボクシング通のルミナが解説をする。
 格闘技と他の競技には、決定的なちがいがある。
 野球とバスケットボールが戦うなんてありえない。
 しかし、格闘技には「どっちが強いんだ!!?」という問いがある。
 土台に強さという基準が存在しているのだ。
 格闘技には、他の流派と強さを競う余地がのこっているのだ。

 ルミナはきっと『板垣恵介の格闘士(グラップラー)烈伝』を読んだにちがいない。
 本によれば、『素手、武器を持たないという前提のもと、バスケットボールとサッカー、どっちが強いのかと言える世界、それが格闘技。』である。
 バスケとサッカー並みにルールがちがっていても、ケンカをすれば単純な強さを競うことになるのだ。

 河合克敏の高校柔道マンガ『帯をギュッとね!』ですら、柔道はケンカでも強いと解説が入る。
 格闘技はふつうのスポーツとはちょっとちがう。
 ルールの上での強さももとめるが、ルールを超えた普遍的な強さも考えてしまうのだ。

 あー、でも江川達也『まじかる☆タルるートくん』で、書道vs.剣道とかやってたな。
 にわのまこと『リベロの武田―超機動暴発蹴球野郎』だと、サッカーvs.ムエタイをやっていた。
 とりあえずファンタジーじゃないんで、鏡の中の世界や野球とバスケが戦ったりしない、としておこう。
 幻想のカマキリはファンタジーかもしれないが。


 格闘技は最強をめざして蛮勇をふるう競技だ。
「異種競技とも闘える」
 動物とも闘う。さらに想像上の巨大昆虫にもケンカを売る。

「そして とうとうバキさんは異種の世界から一週まわって――――――――――――――
 同種格闘技の世界へ踏み込んだ」


 ジョジョ6部では、宇宙を一周まわって別世界になった。
 刃牙も妄想を加速させて、脳内宇宙を一周まわってしまったようだ。
 そして、刃牙はカマキリに生まれ変わった!
 ………なんか映画の『ザ・フライ』みたいな展開だ。

 人間vs.昆虫の戦いは、刃牙がカマキリになることで昆虫同士の戦いにかわった!
 まさに同種格闘技だ。闘犬や闘牛ならぬ、闘カマキリだ。
 ………いいのか、それで?

 巨大カマキリがつっこんでくる。人間カマキリもつっこむ。読者もつっこみたい。
 二本指貫手と、独歩が天内戦で見せた足先蹴りで、カマキリの弱点を攻める。
 って、思いっきり人間技じゃねェかッ!
 ダ、ダマされたッッ。


 カマキリになると見せかけて、カウンターを使いこなす人間にもどりやがった。
 松尾象を真正面から力でねじふせた範馬勇次郎とは、逆の発想だ。
 なんというか、…………ずるい。卑怯だ。すくたれ者か。
 勇次郎に比べると、ちょっと印象がよくない。

 だが、まともに戦って勇次郎に勝てる可能性は低いのも事実だ。
 いさぎよく戦うことが目的ではない。勇次郎に勝つのが目的だ。
 汚い手段を使ってでも範馬勇次郎を倒す。
 ついに刃牙が決意したのだろうか。
 世界中から腕っこきのハンターを こっそりスカウトしていたりして。

 妄想のカマキリがふっとびルミナの体をスリぬけた。
 カマキリの姿が見えても、触れることはできないようだ。
 まだ間にあう。
 今なら、正常な人間として社会に戻れるぞ。それ以上、ふみこむのはキケンだ。

「攻撃は強力でバツグンに巧いが防御となるとからっきし」

 刃牙がカマキリの弱点を指摘する。
 てっきり自分の弱点をいっているのかと思った。
 刃牙がカマキリと戦ったのは、範馬一族に似ているからだろうか?
 作戦なんて ほとんど考えずに突っこんでいくのが範馬流だ。


 昆虫というのは ムズかしい行動をしない。
 シンプルな機能で大量生産するのだ。
 カマキリは、目の前で動いているものをとりあえず襲う。他にはナニも考えていない。
 『カマキリは大雪を知っていた』によると、カマキリは死体を食べないそうだ。
 動いていないものは、認識できないのだろうか。
 もし巨大カマキリに襲われても、死んだフリでやりすごせるゾ!

 そして、カマキリは防御を攻撃以上に考えていない。
 とてもスキだらけだ。
 相手の弱点をみつけた範馬はおそろしく強い。
 まさに野生のオキテで、弱いところから攻めていく。
 闇にそまった範馬刃牙が、キケンな輝きを見せる。

 おそいかかってくるカマキリに対し両手を大きくあげる。
 今にも飛び立ちそうな勢いだ。
 カマキリと戦っているときだって、空中に浮いていた時間があったのだ。刃牙は飛ぶ気だ。
 昆虫になった後は、鳥になるつもりか!?
 飛翔しそうな範馬で次回につづく。


 かなり飛びそうな雰囲気がある今週の刃牙でした。
 鬼哭拳の構えに似ているが、間違っても ただブン殴るだけなんてことは無いんだろうな。
 マジメな格闘は別の人にまかせて、独自の進化をするのだろう。
 カマキリ戦は妄想のパフォーマンスとしては面白かったけど、格闘家としてダメになった印象がある。
 でも、妄想の力で飛べたらスゴい。

 範馬勇次郎は水陸で無敵という状態になっている。
 のこるは空だ。
 さすがの範馬勇次郎も空中戦は苦手だろう。
 空で戦えば、勝てるかもしれない。
 ただ、刃牙が飛べるなら、勇次郎も飛びそうだ。きっと刃牙よりも高く飛ぶ。
 超常の力を出しても勝てる気がしねェ………。
 あとは腕っこきのハンターたちを呼ぶしかないか。

 今は地下室にいる。
 調子にのって飛ぶと(刃牙はぜったい調子にのる)、天井に頭を打ちつけて首の骨を折りそうだ。
 そうなると、密室殺人となって自動的にルミナが疑われてしまう。
 刃牙の死体は、どう考えても自殺に見えないだろうし。
 巨凶・範馬の血は他人に迷惑をかけずにはいられないのだ。
by とら


2006年3月16日(16号)
第3部 第14話 同種から捕食種へ (670+4回)

 浮いています。
 刃牙の足が10cmぐらい浮いています。
 コイツ、ついに飛びやがったッッ!

 手塚治虫+米原秀幸の『Dämons(原作:鉄の旋律)』なみの超能力だ。
 刃牙って、見えないだけで大事なモノを失っているのかもしれない。
 捧とかサオとかが 柳の毒で腐れて落ちたのか。
 梢江との関係を解消したのは、能力不全になった刃牙なりの思いやりだったのだ(決めつけ)。
 柳の腕を折ろうとしたとき、毒手が股間に触れたんだろうな、きっと。
 今の刃牙は鉄の股間を持つ男か?


 人類初の妄想力による浮遊に成功した刃牙がよゆうを見せる。
 完璧に思えたカマキリだったが、弱点が見えるようになったのだ。
 ただ、具体的な弱点を説明してくれない。
 カマキリの視力は弱いから、細部の動きが見えないとか、そういう解説がほしかった。

 説明がないと、カマキリを倒せなくて困った刃牙が、脳内設定を変更したと誤解しそうだ。
 それとも、カマキリの動きになれただけなのか?
 どちらにしても、おこり(攻撃の際、最初に起こす動作 byグラップラー刃牙3巻を見落とさなければ、大丈夫っぽい。

 カマキリの攻撃をかわし、反撃する。
 額にある三つの単眼に頭突きを喰らわせ、ノドもとに二本貫手を刺す。
 弱点を見せた敵には、とことん強い。思うがままにカマキリをいたぶる範馬刃牙だった。
 まさに地上最強の妄想王だ。

(バキさん…なんか 変化(かわ)った)
(顔が――――)
(なんか余裕……)


 バキさんの態度が傲慢になりました。
 きっと、家を借りても家賃を払わず『お前の家に居てやるのを光栄とおぼえろ』などと言って、娘にちょっかいを出すのだろう。
 いや、出しました。いろんな意味で。

 弱者をいたぶるのは、範馬の伝統だ。
 たしかに、範馬勇次郎は圧倒的に強い。
 しかし、勇次郎は強者を狩るばかりではなく、負けたての闘士をダメ押しでたおす「残飯処理」も多い。
 サムワンの二度噛みは、とくにヒドい。
 ライオンだってハイエナが捕らえた獲物をうばうそうだ(参考:ライオン(ウィキペディア))。
 勇次郎も小物が倒した獲物を奪いとるのが好きなのだろうか。

 そして、刃牙の攻撃が進化する。
 刃牙の動きは、カマキリではなく鳥になった。
 鳥の影が壁にうつるほどの妄想 具現化で一気に勝負をきめるのか。

 鳥を模した刃牙のかまえは、真剣なだけに笑える。
 なんか昔 片岡鶴太郎が、こんな芸をやっていたような覚えがある。
 刃牙は格闘家よりも芸人が似合っているかもしれない。
 鳥ポーズをとる刃牙に、妄想の巨大カマキリもビックリしているようだ。
 さすが、刃牙が生みだした幻影である。リアクション能力も高い。

 弱点を見切ってしまえば、100Kgのカマキリであっても怖くない。
 常人の感覚だと、巨大な昆虫なんて 襲ってこなくても怖い というか不気味だ。
 しかし、奇の中に美を見出す範馬刃牙である。まったく問題なし。
 幻影のカマキリも実物大にもどしてしまう。
 うたがいもなく、バキの完全勝利であった。

 てっきり、100Kgのカマキリをクリアしたので、今度は1トンのカマキリとヤる!と言い出すかと思った。
 刃牙もわりと大人になったようです。
 勇気と無謀のちがいはワカっていないようですが、勇気と超絶無謀の差に気がついたらしい。
 部屋いっぱいギュウギュウに押し込められるような巨大カマキリを呼びだして圧死しする心配はなくなった。


 あっ!とランダムさん刃牙感想「あれ?昔話では蟷螂は鳥を倒したんじゃなかったっけ? 」と指摘されています。
 宇宙を一周したから、カマキリと鳥の力関係が逆転してしまったのだろうか。
 自分で生みだした妄想だから、力関係が逆転してもよかろう。
 しかし、範馬勇次郎には都合のいい妄想など通用しない。
 イメージトレーニングで生みだした心の強さを、どうやって現実の強さに結びつけるのかが今後の課題だ。
 いや、今後というか ずいぶん前から課題だったハズなんですが。

 死刑囚編で刃牙が唯一からまなかった稀代のペテン師海王・ドリアンは、独歩を狙っていた。
 もし、刃牙に催眠術をかけていたら、コロっとダマされていたかもしれない。
 もちろん、刃牙はマゾなので普通の幻影をみないだろう。
 それでも大苦戦するのは間違いない。

 相性が最悪の難敵ドリアンと刃牙は、死刑囚編・大擂台賽でスレちがう。
 本当にスレちがうだけだ。おなじ空間にいながら闘わない。
 なんという幸運だろうか。範馬刃牙の運は超一流だ。


 で、次回はどんなバトルが待っているのだろう。
 異次元の死闘を終えたのだから、今度は現実の戦いが見たい。
 まえに板垣先生がいっていた「リングの上での殺人は罪に問われない」という展開は、ちょっとムリっぽいのだが。
 ちょっと前の作者コメントで「はじめの一歩」作者の森川ジョージ先生をやたらと挑発していたのは、リングの殺人者が描きたいためだったのか?

 どうだ、オレのボクシング漫画はここまでやるゾ!
 そんな感じで挑戦中なのだろうか。
 正直、短期集中連載で板垣先生の本格ボクシング漫画というのも見てみたい。
 なにしろ国体出場経験のある、ボクサー漫画家なんだし。

 14号の対談にて、ボクシングの亀田三兄弟 次男・大毅選手に漫画に出して欲しいといわれて、笑ってゴマかしていた板垣先生だった。
 もちろん、笑いながらも板垣先生の脳内では凄惨な絵が浮かんでいたのだろう。
 というワケで、ボクサーが出てくる可能性もある。

 でも、バキ最終巻でアライJr.と闘い、範馬刃牙になってからアイアン・マイケルの幻影と闘った。
 もう、ボクサー分はいっぱいです。これ以上、ボクサーをいぢめないでください。
 そんな感じがあるので、ボクサーは無いだろう。


 いずれ刃牙とオリバが闘う日がやってくる。
 オリバだったら、100Kgのカマキリをふつうに折りたたんで倒しそうだ。強さの説得力がハンパじゃない。
 刃牙との実力差はまだまだ大きいと思われる。
 勇次郎のまえに、オリバを倒すという課題がのこっているのだ。

 あと、背がのびたジャック兄さんもいる。
 痛いおもいをして背をのばしても、ステーキを喰って残飯(敗者)処理をしたていどの活躍だ。
 いいかげんに、まともに闘う相手はいないのだろうか?
 F-1マシンが制限速度を守って公道をチンタラ走っているような、歯がゆさを感じる。

 戦いで全力を出しきる板垣作品では、同じ戦士がもういちど闘うというケースが少ない。
 背が伸びているが、ジャックと刃牙の再戦は成立しにくい。
 と、なると三人目の範馬兄弟が出てくる可能性もある。
 範海王という不発弾があったので、今度こそ爆発して欲しい。

 とりあえず、梢江をめぐるアライJr.とのあらそいは蒸しかえさないで欲しい。
 ドカベンにおけるサチ子争奪戦と同じぐらい、興味がもてない話題だ。
 まあ、いじりやすいネタになるという点では、サチ子争奪戦よりはるかにマシだが。
 ドカベンも、何年サチ子争奪戦をやるんでしょうか?


・おまけ
 掲示板で teruさんに教えていただいた「ネズミを倒すカマキリ」動画
 ちょっとエグい。
 カマキリって、マジ強いんだ。
鳥を襲って喰らうカマキリ」に匹敵するショッキングだ。
by とら


2006年3月23日(17号)
第3部 第15話 鬼の笑み (671+4回)

 ついに妄想の巨大カマキリという試練を乗りこえた!
 ながく つらい闘いだったが、おかげで成長した気がする。
 刃牙も成長しただろうが、ルミナや読者の成長も大きい。

 仮想生物戦記カマキリの次は 仮想古代生物ティラノサウルスだろうか。
 そんな心配もあったが、無事に次の話に進む。
 今回は、キャプテン・ストライダムが山奥のホテルをたずねる。
 従業員が日本人っぽいので、どうやら日本のようだ。

 山奥のホテルには、まだ見ぬ強敵が ひそんでいるのだろうか?
 それとも神心会幹部たち、セレブな金持ち格闘家が遊びに来ているのだろうか。
 烈海王や渋川先生も加わって、にぎやかな集まりになりそうだ。
 ちなみに本部はセレブ仲間に入れてもらえません。

「時速20キロデ流レル殺人プールヲカ」

 山奥ホテルの名物は殺人プールだった!
 疵面 11話で、オリンピックに出る人間でも時速時速8kmでしか泳げないという話がでた。
 50m自由型で21秒64が世界記録だ。つまり時速8.3kmである。
 つまり、時速20kmの流れるプールは人外の領域なのだ。

「それは増水時のみのことでして」
「時速4キロを超えた時点で使用禁止となります」
「あの方以外は…」


 ホテル従業員が「殺人」という物騒な言葉をあわてて否定する。
 1500m自由型の世界記録が14分34秒56だ。
 時速6.2kmというところだ。
 となると、時速4キロでも十分キケンだと思う。
 やっぱり殺人プールだよ。

 と、冷静になってキーワードを読み解けば、泳いでいるのがだれかわかります。
 最初に読んだときは、あまり深く考えずにいたのでわかりませんでした。
 ホテル従業員が「あの方」と言っているから、アライ父という可能性を考えた。
 なんかリゾートで遊んでいそうだし。まちがいなくセレブだし。
 そして、刃牙が妄想で生みだした魚人かとうたがった。

「案内シテクレ」

「さきほどから お待ち申しております」


 言外に「あの方を待たせてんじゃねェよ、Peッ」という意味をこめている。
 なんですか、この地味だけど確実な無礼をはたらく従業員は。
 まるでジャブのようにジワリと効いてくる無礼さだ。
 もしかすると「あの方」の指示なのだろうか。
 「オレが許す。無礼にふるまえッッ!」「〜〜〜〜〜ッッ!?(じょばァ)」なんて会話があったのかもしれない。

 キャプテン・ストライダムはプールに案内される。
 殺人プールがあると聞いていたようだが、来たのは初めてらしい。
 呼ばれて、わざわざ山奥のホテルに来たなんて、ご苦労なことです。
 しかも増水時だ。地盤がゆるんでいたりしてキケンなんじゃなかろうか。
 キケンだけど、あの方の招待を断ったほうが もっとキケンだ。という計算がありそうだ。

 氾濫した川みたいな状態の流れるプールだった。
 瀧の水を引きこんで、自然の流れを利用したらしい。
 でも、瀧って時点でアウトだと思う。
 なにしろ瀧ですよ。すごい水圧のはずだ。この時点で時速4kmは覚悟しないといかん。
 死ぬ気で楽しめってか。山籠りの修験者じゃないんだから、ハハ。

「正直に申しあげますと完全な設計ミスでした…」

 流水強度の偽装かッ!?
 つうか、設計以前に計画をまちがえていないか?
 どう闘うかよりも、だれと闘うかでまちがえたようなものだ。
 だれと戦うかをまちがえたら、いいファイトをしても取り返しがつかない。
 ……カマキリ…………。

 たとえ一級建築士であっても、ムリなものはムリなのだ。
 つまり、瀧の流れを引きこむという計画が通った時点で敗北している。
 だれが計画したのかが問題だ。
 こういうワガママを言いそうな人って………。

「お喜びになるのはあの方のみでして…」

 ………自作自演っぽい。

 いや、自演ではないな。ワガママを押し通しただけだろう。
 よろこんでいる当の本人は、現在潜水中だった。
 ぜんぜん浮かんでこないで、もぐりっぱなしだ。

 そして、飛翔する!
 範馬勇次郎がまるでトビウオのように水面から飛びだした。
 板垣先生のちょっとアレなデビュー作『メイキャッパー 2巻』にいわく「男にとってバタフライ以外は水泳じゃねえんだよォ!!」
 メイキャッパーのセリフを体現するがごとく、力強いバタフライであった。

 やっぱり、キサマか勇次郎ッッ!
 まるでノストラダムスのように 我々の前に立ちはだかってきやがる。(参考:キバヤシ名言 第二位
 山奥にホテルが建築されたのも、殺人プールが作られたのも、増水時にわざわざストライダムが呼び出されたのも、
 すべて、アンタがたくらんだことだったのか、範馬勇次郎ッッッ!
   (※ 自分の妄想を根拠に人を責めるのは止めましょう)

 時速20kmのバタフライで約一時間泳ぎつづける。
 恐るべき持久力だ。
 そして、うれしそう。
 地上最強の生物って呼ばれているだけに、陸が大好きなのかと思ったら、水中も好きらしい。
 疵面で花山が水中でも戦えるところを見せたから、対抗する気になったのだろうか。
 とりあえず、時速20kmならペンギンと互角らしい。

「最モ消耗ノ激シイ バタフライダゾ」

「蝶々(バタフライ)というより鷲(イーグル)………」

「鮪(マグロ)ダナ マルデ…」

「鮪(マグロ)というより鯱(シャチ)かと………」


 ストライダムのいうことに、いちいちツッコム従業員であった。
 やっぱアンタ、勇次郎に命令されているでしょ。
 めちゃめちゃ無礼だ。
 お客様の会話をダメにしてどうする。ほら、ストライダムが黙っちゃった。

 ぞんぶんにストライダムをへこましたところで、勇次郎がプールからあがる。
 なにしろ範馬勇次郎ですから、ふつうに上がったりしません。
 泳ぐ勢いで飛び上がります。本当にトビウオみたいだ。
 きっと犬の散歩をするだけでも、アフリカのサバンナに行ったりするんでしょう。

 水中メガネをしているのが、ちょっと意外である。
 身を守るものなんて つけない人かと思っていたんだが。
 そして、息も乱れている。
 範馬勇次郎ですら息を乱すハードな運動だったのだろう。
 やっぱり、殺人プールだ。

「バケーション中だぜ」
「なんの用だストライダム」


 うわっ、ヒドイ言い方だ。
 しかし、ストライダムがいやがらせを受けた理由はわかった。
 おそらく勇次郎の居場所を探してストライダムは連絡をしたのだろう。
 で、用があるならキサマのほうから来い といわれて、山奥までやってきたと。
 休暇をジャマされたんだから、多少のいやがらせをして からかいたいと思ったのだろう。

 だから、手のこんだドッキリみたいなことになっているんだ。
 ストライダムが来ると連絡があったので、ドッキリ用にあわてて殺人プールを作ったのかも。
 勇次郎なら、それぐらいヤる。
 正確には、人にやらせそうだ。


 わざわざストライダムがやってきたのは、範馬刃牙の話をするためだった。
 まあ、当然だろう。刃牙以外のようで勇次郎のジャマをしたら、折られる。

 どこでどう調べたのか、ストライダムは刃牙が妄想の巨大カマキリと戦ったことを知っていた。
 特殊部隊を動かして、刃牙の部屋を盗聴したのだろうか。
 さぞかし狂気に満ちた音が録音できたことだろう。
 リングの呪いのビデオみたいですね。
 聴くと一週間後に巨大カマキリが出てきて殺される。

 キャプテン・ストライダムは「発想ノ次元ガ違ウ」と刃牙を大絶賛する。
 なるほど、そうほめればいいのか。
 勇次郎の前では、ちゃんと刃牙をほめておかないとキケンだ。
 ライオンの口に手を突っこんでいるような状態である。
 機嫌をそこねると噛みつかれてしまう。

「エフッ」「エフッ」「エフッ」「エフッ」


 謎の怪音をたてて勇次郎が笑った。
 そして座っていたイスを引き裂く。
 あ〜〜〜〜、ホテルの備品がだいなしに……。
 こ、これも喜びの表現なのか?

「いかに巨大化しようが想像はあくまで想像」
「実物の子犬にも劣るシロモノよ」


 ッッッ!
 読者がツッコミたくて しょうがなかった事をあっさりツッコミやがった!
 さすが範馬勇次郎だ。神にすらケンカを売る男だ。
 妄想アイアン・マイケルの五話から、前回の十四話までを無価値に変えてしまった。
 なんてこったい。

 ただ、勇次郎は宇宙クラスの親バカなのに、親バカを隠している人だ。(つまり ツンデレ)
 刃牙をしかる言葉を額面どおりに受け取ってはいけない。
 うっかり同意すると、天内みたいな目にあう。

 なにしろ、刃牙に「俺はこれだけ強いんだぞ」とアピールするためだけにアフリカで松尾象を狩ったぐらいだ。
 そのうちに、動物愛護団体から、刺客が送られますよ。

 勇次郎は、ストライダムを連絡係にして、刃牙の反応をさぐる。
 ついでに、速攻で日本に帰国した。休暇のふりしてストライダムの報告をまつ。
 ストライダムがおそいので、ドッキリをしかける。
 本当に、素直じゃないんだから、この鬼父(パパ)は。

 勇次郎が最高級に喜ぶと魔人モードになって「エフッ」「エフッ」「エフッ」という笑い声になるのだろうか?
 範馬の笑いはむずかしすぎる。
 どちらにしても、今度は勇次郎が刃牙へメッセージを送り返すのだろう。
 気の毒なのは、連絡係になるストライダムだ。
 きっと、またバキに暴言を吐かれるぞ。
 範馬一族は、とことん最悪な連中なのだ。


 四月八日に府中フォーリス前にて、板垣先生のサイン会がある。
 都心では『獅子の門 白虎編』以来のサイン会だ。
 またトークショーとかがあるとムチャな話が聞けると思うのだが、無いらしい。ちょっと残念だ。
by とら


2006年3月30日(18号)
第3部 第16話 次戦(ネクストステージ) (672+4回)

 話は飛んで米国テキサス州ダラスだ。
 1963年11月22日にJ・F・ケネディ第35代大統領が暗殺された場所だ。
 現在のアメリカ大統領はG(ジョージ)・ボッシュである。
 ボッシュ大統領が、なんとケネディ暗殺時と同じコースでパレードをおこなうパフォーマンスを敢行するのだった。
 しかし、世評はあまり良くないらしい。

 グラップラー刃牙時代の大統領は勇次郎と親しげに話していた。
 どうも、彼は引退してしまったようだ。
 作中時間はあまりたっていないはずだから、老齢による引退というよりは、選挙に負けたのだろう。
 天内を勇次郎に貸したら壊された、不幸な人だった。

 現在の大統領は ちょっとアホっぽい。
 モデルと思われるジョージ・ブッシュ大統領とおなじく、愛読書は『はらぺこあおむし』だと思われる。
 ところで、『ブッシュ はらぺこあおむし』で調べても一次情報が見つからない。もしかすると、ガセネタなのか?

 ちょっとホリエモン似の山本健一がアメリカから衛星中継だ。
 日米初の衛星中継はケネディ暗殺だったというトリビアつきである。
 山本はケネディの命をうばった銃弾の数をぼやかしている。
 ケネディ暗殺にはいろいろと情報規制や謎があって銃弾の数がハッキリしないのだ。
 映画『JFK』でもツッコミが入っていた「ありえない飛びかたをする弾丸」を考え出して弾数を減らしているのだ。

 こんな、グニャグニャ曲がる銃弾を撃てる人間なんていない。
 いや、一人だけいる。
 ジョジョ5部のグイード・ミスタだッ!
 そうか、ケネディ暗殺の犯人はミスタだったんだ。
 ケネディは第35代大統領である。ちょうど不吉な数である「4」をさけた数字になっている。これならミスタも安心だ。


 映画『ザ・シークレット・サービス』に出てきたクリント・イーストウッドみたいな護衛に守られてボッシュ大統領が、暗殺現場を通りすぎようとしている。
 まさに、通りすぎる、その時であった。
 とつぜんアメリカからの映像がとだえ、山本からのアナウンスも聞こえなくなる。
 すわ、一大事かッ!?

 この襲撃は範馬勇次郎かッ!?
 息子が妄想の巨大カマキリを倒したのに対抗して、現実の巨大国家を倒そうと考えていそうだ。
 国家転覆クラスの親バカである。親バカが国を滅ぼすのだ(本人たちとは関係ない国だけど)。
 大統領の車の前に立ちふさがって、車を真正面からふっとばす姿がカンタンに想像できる。

 勇次郎は、核兵器よりもキケンな生物かもしれない。
 ご機嫌うかがいのために大統領から お歳暮が届いたりするのだろう。
 前大統領のときはハムの詰め合わせだったのに、ボッシュ大統領になってからタオルになってしまい、怒っているのだろうか。
 タオルじゃ喰っても栄養にならないし。


 山本からの映像と音声が一時回復する。
 現場は大混乱だ。
 空っぽになった車が停車している映像が見える。
 車は無事だ。破壊されていない。
 勇次郎の手口にしては、おとなしい気がする。

『大統領がたった今』
『何者かによって誘拐されたもようです』

 現場の山本から緊急ニュースがとどいた。
 映像がとぎれた一瞬のあいだに 大統領が誘拐されたらしい。
 勇次郎が誘拐なんてめんどうな事をするだろうか。
 むしろ自分は座ったまま、その辺にいるロシアの人に指示を出すのが勇次郎流だ。

 松村劭「ゲリラの戦争学」によると、要人の誘拐はテロ行為にあたる。
 テロリストは交戦能力がないので、戦闘部隊を襲わずに『防護力のない襲撃目標を選ぶ』。
 交戦能力がありまくる勇次郎が、テロ行為をするのだろうか。
 ……っと、ここで映像が入りました。

『ご覧下さい東洋人ですッ』
『東洋人の少年がッッ』
『大統領を運び去ったのですッッ』

 ……バカだ
 じゃなくて、バキだ。
 いつの間に渡米しやがったんだ。
 というか、ナニをやっとんじゃッッ!
 ああ、国際関係がッッ……

 刃牙は、ついに米軍にケンカを売る気になったのだろうか?
 巨大カマキリに勝ったから、米軍にも勝てると思い込んだか。
 コレだから感性だけで生きている人間は扱いにこまる。
 昆虫並みに回路ON/OFFだけの判断で生きているっぽい。
 カマキリと友情でも結んでくれ。
 なんか勇次郎の名前をだせば助かると思っていたりして。
 実際、助かりそうだけど。

 いろいろ問題はあるが、大統領をかっさらう刃牙の勇姿がすこし輝いてみえる。
 勇次郎がまたイスを破壊しながら「エフッ エフッ」奇声をあげてよろこびそうだ。
 お歳暮がタオルでも許すッ! みたいな状態だろう。

 大統領を担いで逃げ出したので、刃牙だけを撃つのがむずかしい。
 見事な誘拐技術に勇次郎も大満足しているはずだ。
 また、襲撃方法もカメラに写らないほど すばやかったらしい。
 たぶん、鳥をリアルシャドーして空中から襲いかかったのだろう。
 空飛ぶ人にたいする警備体制はマニュアルにのっていない。
 飛べるようになった時点で、刃牙の勝ちだ。


 刃牙は近くのレストランへ逃げこむ。
 狙撃される窓がないというのが理由だ。
 狂っているようでいて、ちゃんと計算している。
 巨大カマキリを妄想するような狂人にも、それなりの理性があるのだ。

「捕まるのが目的ですから」

「合衆国アリゾナ州立刑務所」
「そこへ収監してもらいたい」


 オリバかッ!?
 刃牙の目的はオリバなのかッ!
 合理的な行動のようだが、やっぱり根本的におかしい。
 オリバに会いたいなら、ストライダムあたりに話をすれば普通に会えただろう。
 捕まったら、収容される場所をえらぶ権利は無い。かえってオリバに会えなくなる
 刃牙は異常事態のリアルシャドーはできても、現実のシミュレーションができないようだ。

「もしその要求が飲めぬとしたら…?」

「ソッコー アンタに暴行を加える」
「死なないていどにね」

 うわっ、すごいこと言いやがった。
 完全に範馬ダークサイドに魅入られている。
 いや、よく考えたら範馬そのものがダークサイドだ。
 だから範馬らしくなったというべきか。
 だから、タイトルに範馬がついて「範馬刃牙」なんだ。

 腕力で己の意をとおす範馬勇次郎のように、刃牙も腕力で自分の要求をとおした。
 アメリカ大統領を雄(オス)として屈服させる。
 これなら範馬勇次郎も合格点を出すだ。
 しかし、とんでもなく非合法なアタックだった。
 問答無用で銃殺されても知らんぞ。

 大統領が外にだした指示はコーヒー代の現金10ドルだけであった。
 たぶん、刃牙のコーヒー代もおごらされた。
 クレジットカードはどうしたんでしょうか。
 アメリカはカード社会なので、現金よりもカードです。
 たぶん、刃牙に召しあげられちゃったんでしょう。

 次回は、アリゾナ州立刑務所でオリバと握手だ。
 さらに、二話同時掲載である。だてに、餓狼伝を休むわけではない。
 今回の続きはかなり気になるだけに、うれしい情報だ。


 それにしても、天内がいれば刃牙の暴挙も止められたかもしれない。
 いまごろ、天内はナニをしているんでしょうか。
 美形だけに植毛は欠かせない。植毛が終わらないことには、外に出ることができないだろう。
 それ以前に、生きているのか?
 オリバ屋敷への案内人として出てくることに期待する。


 刃牙はオリバになんの用があるのだろう。
 勇次郎以外の誰とも戦わないという発言を刃牙は過去にしている。
 オリバと戦うつもりは無いのだろうか。

 いまさらオリバに勇次郎情報を聞くというのも変だ。
 だいたい、刑務所に収監されたら勇次郎とは戦えなくなるぞ。
 まさか、オリバにかくまって欲しいのか?
 日本からコズエ・マツモトがやってくるから、かくまって欲しいのか?

 でも、最終的に刃牙とオリバは戦うことになるだろう。
 むしろ戦ってくれ。刃牙 vs. オリバはひさしぶりのビックマッチだ。
 今から期待感が高まっている。

 刃牙は、大擂台賽の勝ち残りをひとりずつ消去していそうな予感がある。
 アライJr.は肉体的にも人生的にも敗北を味あわせた。
 すでに、寂海王も葬られていたりして。
 そうなると、のこりは烈とオリバだ。
 烈には一度勝っているのでパス。最後のエモノがオリバになる。
 すっかり巨凶範馬となった刃牙なら、やりかねない。

 次回予告には「アリゾナ刑務所には驚愕の秘密が」と書いてある。
 どんな仕掛けがまっているのだろう。
 予想としては、風雲オリバ城か、オリバーランドになっているで、どうだ?
「オリバ様のもとへ行きたくば、われらを倒してみよ!」
 オリバ四天王が登場だ。

 オリバーランドだと、オリバのきぐるみが そこらじゅうにいる恐怖のテーマパーク完成となる。
 子飼いのドリアンが希望したメリーゴーランドとジェットコースターも完備だ。
 ちなみにぜんぶ人力で動かす。
 アリゾナ刑務所の人は号泣しながら働くのだった。そして、壁に絵を描かせられる。
by とら


2006年4月6日(19号)
第3部 第17話 道筋 (673+4回)

『逮捕』『拘留』『裁判』『判決』

 早ッ!

 アメリカ大統領を拉致監禁した国際的犯罪なのに全工程が一ページ四コマで終了してしまった。
 普通だったら、最低一年はかかるじゃないのか?
 刃牙はまだ日本国籍なんだろうし、いろいろと国際問題になりそうだ。

 精神鑑定をすれば、間違いなく"変態"と認定してもらえただろうし。
 地上最強の生物である父を素手で倒すために、巨大なカマキリを妄想で生みだして倒したんだけど、物足りないからオリバと戦うため刑務所に入ろうと思ってやりました。
 どこからツッコンでいいのか医者もなやむ。
 それにしても、範馬刃牙になってから正常な話って無いんだな……。

 いっそうのこと『バキSAGA中古は1円から!)』も一ページ四コマでやればどうか?
『(風呂とか)いらないッ!』『準備』『発射』『次回作にご期待ください』
  有害 有罪です。


『合衆国アリゾナ州立刑務所』

 もう、到着だ。
 大統領が刃牙との約束をまもってスピード決着だったらしい。
 さすが大統領だ。公約をまもらないと支持率に響くのだろう。
 証人となるウェイターが横にいたから、ウソをつくわけにもいかないし。
 もっとも、大統領よりもこわい 地上最強のパパが裏から手をまわしていたのかもしれない。

「アメリカにはペンタゴンが2つある」
「一つは言わずと知れたアメリカ合衆国国防総省 またの名をホワイトペンタゴン」


 今週の刃牙トリビアです。明日からさっそく実戦で使用(つか)え……るかどうかは、自己責任だな。
 有名な合衆国国防総省ペンタゴン(参考:ウィキペディア)以外にも、ペンタゴンがあるらしい。
 …………キン肉マンに出てきた超人ですか?
 ペンタゴンって、死んだり負けたりしかしていないのに、「ストップ ザ タイム / さいとう ようじ」ってテーマ曲があるのか!?

 そして アリゾナ州立刑務所が「ブラックペンタゴン」だ。
 つまり、こっちがキン肉マンでいうところのブラックホールだな(ちがいます)。
 ちなみに、ブラックホールのテーマ曲は「バミューダ ミステリー / 串田アキラ」だ。
 たぶん歌手の差で、ブラックホールの勝ちだな。
 つまり「ブラックペンタゴン」の勝ちと思っていただこう。

 指紋、網膜、DNAまでも登録する。
 まるでVIP待遇だと、刃牙も大満足だ。
 きっと知らないうちにGPS端子を埋めこまれて、居場所までチェックしてくれるようになるぞ。

 じっくりとチェックを受けた刃牙は、バキ87話に登場したアリゾナ州立刑務所長M(マイケル)・ホールズらしき人物と面接をすることになる。
 誰もいない部屋でふたりっきりだ。
 刃牙はまったく拘束されていない。普通の囚人にたいする扱いとはちがう。
 刃牙に危険はないと保障されているようだ。大統領から指示があったのだろう。
 用件はオリバについてだ。

「君の名を告げたとたん すぐ連れてくるようにと」

 命令されたのかッッ!?
 ブラックペンタゴンのNo.1はキサマではない、このビスケット・オリバだッ!
 きっとそんな感じで、毎日教育しているんだろうな。
 バキ88話に登場した、明日に輝けオリバ壁紙に、ホールズの絵が追加されているかもしれない。

 刃牙は「10mおきにアクリル製の障壁」がある廊下をすすみ、オリバに会いに行く。
 途中にはあいかわらず精神が壊れかけた感じの囚人たちが入っている。
 精神を病んでいると、刑務所ではなく精神病院へ連れて行かれる。
 だから、刑務所に入った時点で彼らはまともな精神状態だったはずだ。
 それにバキ87話では、もうちょっと大人しかった。

 オリバによって精神を破壊されたのだろうか。
 日本で死刑囚五人を捕まえるという目的は達成できなかった。
 中国でストレス発散したものの、不満が残ったのだろう。
 ヤツ当たりで、廃人にされたのだとしたら、かなり不憫だ。
 ムエタイ選手なみに不幸だ。

 そして、超豪華な廊下をとおる。
 刃牙が扉に触れるより先に、オリバが向かいでるのだった。
 刃牙の動きも完全掌握している。アンチェイン・オリバに知らぬことなど無い。

「ウェルカム ミスター刃牙」

 敬意をひょうし「ミスター」を付けている。
 範馬勇次郎の息子として、じゅうぶんな実力をつけたと認めたのだろうか。
 しかし、オリバに会う前から汗を流してしまった刃牙は、気迫で負けている。
 犯罪をおかしてまで会いにきたのに、大丈夫なのか?
 間に浦安鉄筋家族をはさんで、次回につづく!
by とら


2006年4月6日(19号)
第3部 第18話 第2の男 (674+4回)

 恐怖の一週間に二話掲載だ。
 板垣先生がコメントで『週刊連載が忙しいなんて嘘です。もう一本描けます。ねェ、森川ジョージさん。』と書いている。
 たしかに刃牙は休まず二話掲載だけど、餓狼伝がお休みじゃないですかッ!?
 餓狼伝も描いてください。

 つうか、また森川先生に挑戦状を叩きつけているな……。
 一歩と宮田なみに縁がないと思ってあきらめたほうが、いいのかも。
 個人的には、試合当日に宮田がトラックから子供を助けて死ぬ"どこのタッチだよ"的な展開を予想していたんだけど。


「友 遠方より来る また楽しからずや」

 オリバが論語からの引用で刃牙をむかえる。
 ちょっと郭海皇を意識した発言だったのかもしれない。
 オリバの超肉体と超知力でも、郭海皇の超長寿を達成できるかどうかあやしい。
 さらに、146歳になっても髪の毛を残す中国四千年の技術を手に入れたいはずだ。
 髪の毛まで「繋がれぬ(アンチェイン)」状態だったのは、オリバにとっても計算ちがいだろう。

 まず、オリバは上等なコニャックをすすめる。
 刃牙は断った。
 うむ、未成年だしな。
 未成年だけど、エロ漫画の主演男優でもある。児童ポルノ法については忘れてください。
 いや、アレは芸術(アート)なのでエロちがう。非常に前衛的な作品なのだ。

「ハハ……そーゆーと思ってさ…」
「最高級のジャスミンティの二番茶だ」


 たぶん、一番茶はオリバが自分で飲んだ。
 一番茶と二番茶はつんだ時期がちがうという解釈が一般的のようだ。
 ただ、鉄観音茶は最初の一杯は捨てて二杯目から飲む場合もあるらしい。
 中国茶の飲み方という点では、後者の解釈が正しいかもしれないが、意地悪している前者のほうが好みのタイプだ。
 なお、刃牙がくるタイミングにあわせてお茶を出したのは超知力による先読みだろう。

 オマエの考えることは すべてお見通しだ。
 オリバのさりげない先制パンチだ。
 でも鈍感な刃牙には通用していないっぽい。
 鈍感は打たれ強いのだ。

「練習台にゼヒ俺を………と…」

 オリバさんが怒っております。
 このオレに噛ませ犬になれと申したか。
 それがしにムエタイになれと申したかッ!
 きっと内心では激怒していることだろう。虎眼流剣士なみに大激怒だ。

「おっしゃるとおりです」

 性格の悪さに磨きがかかった刃牙がなめきった答えを返す。
 面接でコレやったら、受験・バイト・就職の区別なくバーリ・トゥードに落される。
「本命の練習台にゼヒうちを………と…」
「おっしゃるとおりです」
 面接官が速攻で灰皿を投げつける。

「女子部井上さんの練習台にゼヒ私を………と…」
「おっしゃるとおりです」
 梢江をくどくさいにも応用できる。敗北必死だ。
 ただ、負けて勝つ場合もあるんだけど。


「全米の悪党4071名が集まる ここアリゾナ州立刑務所」
「4070名が俺の首を狙っている」


 ちゃんと自分も悪党にカウントしている。
 自分以外のすべてが首を狙っていると言う。
 神心会の門下生も愚地独歩に挑めるスペシャル組み手がある。
 下からの挑戦を受けることは、自分の強さを保ちつつ、最強をアピールするのに必要な行為なのだろうか。

 でも、オリバ・コレクションの囚人たちは戦闘不能っぽいんですけど。まだ首を狙っているのか?
 死刑囚編でオリバは、ドイルに斬られて顔に疵がのこった。
 つまり、弱みを見せたことになる。
 オリバだってケガをするのだ。万能無敵ではない。限界があるのだ。
 ナメられないために、オリバ・コレクションの囚人たちをシメなおして、精神崩壊させちゃったのだろうか。
 No.1を維持するのも、なかなか大変なのだ。

「ボウヤは今日プロテストを受けたばかりの練習生」
「世界チャンピオンとデビュー戦ってワケにはいかねェ」


 刃牙の実力は大擂台賽でじゅうぶん知ったはずだ。
 ゆえにオリバの発言には裏があるのだろう。
 日本で刃牙が巨大カマキリを発現させたという情報を、オリバは知っていると思われる。
 だから、日本でどれだけ成長したか確認するつもりなのだ。
 そのために当て馬を用意した。
 超頭脳は、確実に敵の弱点をさがしだす。

 だが、いきりたつ刃牙は止まらない。
「クス…ッ」と範馬っぽい笑いで立ちあがり、ケンカ体勢だ。
 すでに勇次郎は「エフッ エフッ エフッ」という進化した笑いになっている事を刃牙は知らない。
 やはり、勇次郎の背中は遠いのだ。

「あなたの最大のミスは俺をこの部屋に入れたことだ」

 いや、そんな誰でも思いつくようなことを自慢気にいわれても……。
 とうぜん、オリバにはなんらかの備えがあるだろう。
 そう考えるのが普通だ。
 基本的に相手のホームで攻撃を仕掛けるのは、キケンな行為だ。
 最初からイカサマ麻雀を仕掛けられているに等しい。

 とりあえず、出されたお茶を飲まなかったのは、正解だろう。
 しかし、ここでケンカを売るのは大丈夫なのか?
 天井にタライとか仕掛けてあるんじゃないのか?

「ご免ッッ」

 居合いの黒川さん、もしくは武士っぽい掛け声で刃牙が襲いかかった。
 刃牙の拳がオリバの顔面にメリこむッ!
 が、打ち抜けない。
 オリバは余裕だ。微動だにしない。

 逆に、打った刃牙があわてて下がった。
 うん。なんか、とっても刃牙らしい感じがする。
 刃牙はこれぐらいのヘタれ加減を残しているほうが にあっている。
 オマエに勇次郎のマネはムリだ。

 オリバは来週No.2の男とファイトする。
 そして、刃牙はNo.2と同じ部屋に入るのだ。
 今の刃牙は日本の高校生ではない。受刑者だ。
 受刑者間に存在する掟が刃牙におそいかかる、のか?
 次回へつづくッ!


 「軍鶏」や「ショーシャンクの空に」だと、尻を狙われる展開になるけど、刃牙なら大丈夫だろう。
 今の刃牙なら尻で握撃ぐらいできそうだ。
 食事をジャマされたり、寝込みをおそわれたら、ちょっとヤバいかも知れないけど、まあ何とかなりそうだ。

 肝心の相手は、どんなヤツなのだろうか。
 意表をついてジャック兄さんだったら笑ってしまう。
 成長促進剤を喰ってリアルに巨大したカマキリが寝ていたら泣いてしまう。
 せめて、哺乳類でありますように。
 アナコンダやワニだと微妙だ。


 16話で、ケネディー暗殺犯はミスタと書きました。
 それに関して掲示板で指摘を受けました。

> ホル・ホースさん > とらさん、曲がる弾なら俺も居ますよ

> 名無しさん◇やれやれだぜさん > ホル・ホースも思い出してあげて下さい・・・・(ノД`)

 ああ、そんなのあったね。
 スイマセン、素で忘れていました。土下寝 __σ--____
 でも、ホル・ホースは一番より二番で、タバコすったり禁煙したり習慣をコロコロかえちゃうキャラなんで許してくれますよね。
 ちょっとイイワケすると映画『JFK』だと、銃弾は曲がるだけではなく空中で止まったと説明していたので、ミスタのセックスピストルズじゃないとダメだと思ったワケです。
 どちらにしろ、アメリカ大統領とスタンド使いの間には因縁がありそうだし、拳銃のスタンド使いが関わっている可能性はあります!(妄言による断言)
by とら


2006年4月13日(20号)
第3部 第19話 唯一の自由 (675+4回)

 カマキリ編の次は監獄編だ。
 どうも、最初が「か」で始まるのが特徴らしい。
 じゃあ、次は海王編だな。(もう、やりました)

(空きベッドが2つ…………)

 刃牙は入ってすぐに現場の確認をする。
 どこにどんな障害物があるのか。何者かが身を潜ませていないか。
 戦場の確認をするのは戦士としての習性だ。
 刃牙は入り口から一歩も動かず慎重に周囲をさぐる。
 暗い部屋に目がなれるのを待っているのかもしれない。

 しかし、オリバの部屋での刃牙は無防備だった。
 雰囲気に飲まれていたのだろうか。
 肝心なところで役に立たないの範馬刃牙であった。
 まあ、冷静な刃牙よりも金的を蹴られて舌を出しているほうが、刃牙らしい。

 闇のなかで、何者かがベッドから起き上がる。
 そして、刃牙にむかって呼びかけるのだった。

「バキ…」

(お 俺の名を………ッッ!?)


 刃牙さん、かなりビビっています。
 オリバが支配している刑務所なんだから、挑戦者である範馬刃牙の名が知れわたっている可能性だってある。
 名前を呼ばれたぐらいで動揺しすぎだ。
 まあ、刃牙だって人並みに不安を感じて気持ちが萎縮しているのだろう。

 刃牙の名を呼んだ男がベッドから出てきた。
 影になっていた顔に光がさす。
 男は、鉄人アイアン・マイケルであった。
 頭をツルツルに剃っちゃったので、ちょっと別人っぽい感じだ。

 『グラップラー刃牙』(24)他参照などと書いてあるけど、つい最近に出てきたばかりだ。妄想だけど。
 刃牙も妄想でブッ倒したあとだけに、ちょっと気まずい。
 今の俺なら、全盛期のアンタだって楽勝っスよ などと失礼な事をいわなければいいのだが。

「今夜はこのまま眠るんだ」

 アイアン・マイケルが刃牙に親切な忠告をする。
 それより、なんでアンタがここにいンの?
 疑問に答えるスキをみせない。さすが腐っても世界チャンピオンだ。
 少年のような白いブリーフが眩しいぜッ!

「マイケル」
「"ナンバー2"って君のことだったんだ…………」


 元世界チャンピオンにタメ口たたく範馬刃牙18歳であった。
 全盛期のマイケルを蹴って倒したのだ。妄想だけど。
 敗北して毛も無くなったマイケルなんて、怖くないのだろう。

 強がってろよ塩ブタめッ的な笑顔で刃牙はマイケルを見るのだった。
 No.2がマイケルなら、すぐにでもオリバへの挑戦権をうばえる。
 刃牙の基準ではカマキリ以下だ。
 ハチミツのように甘い考えが刃牙を支配しているのだろう。

「俺などベスト10にすら入っちゃいねェ」

 刃牙がまたもや衝撃をうけまくる。
 最近なめきった考えが多かっただけに、予想外の事態にたいしての耐性が落ちたのかもしれない。
 命の惜しいアイアン・マイケルは刑務所ランキングには参加していないらしい。
 高名なボクサーなんだから、出所すれば日の当たる場所に帰ることもできる。
 K-1から誘いだってきているだろう。
 マイケルには今後の生活設計のほうが重要なのだ。

 それにしても、凶悪犯罪者ばかりを集めた刑務所になんでマイケルが入っているのだろう。
 やっかいな犯罪をしたのだろうか。

(ヘヴィ級チャンプだったマイケルが刑務所(ここ)に怯えきっている…ッッ)

 またも失礼な驚きかたをする刃牙であった。
 怯えきっているは言いすぎだろ。
 刃牙のなかで現在のマイケルはどれだけ弱いのだろう。
 アライJr.を倒しちゃった今、もうボクサーに商品価値はのこっていないのか?

 早く寝ろといいながら、いっこうに寝ようとしない刃牙とマイケルであった。
 そこへ、もう一人の囚人が現れる。
 老人であった。一見すごみはない。
 だが、あっさりとマイケルの背後を取るなど、あなどれない。

 ミスター2(セカン)は、寝ていてもすべて聞いているらしい。
 うっかり屁をだすと厳しいお叱りを受けるかもしれない。
 そいつに触れることは死を意味するのか?
 オリバに挑戦するだけに、タダ者ではないようだ。

 その時、ベッドで寝ている男が動いた。
 ベッドから手足がはみだす。恐るべきでかさだ。
 あきらかにサイズ間違えている。アイアン・マイケルが手の上にのれるぞ。
 ただ、迫力や殺気があるとデカくなるのが刃牙ワールドだ。
 迫力があるから大きく見えるだけで、実際は『魁!!男塾』の大豪院邪鬼ぐらいの大きさかもしれない。

「…………もうオヤスミ」
「おまえさんには――――――」
「今夜が最後の安息になるでな……」


 老人に不安になる言葉をかけられ、最後の夜が終了する。
 巨大カマキリよりもおそろしい なにかがこの監房にはひそんでいるのだ。

 そして、朝ッ!
 ベルの音で朝がはじまる。
 朝日で確認する巨人は、やっぱりデカい。
 でも、ちょっと細い。ちょっと、いや…… かなり弱そうな感じがするぞ。

(2メートル40? …50?……もっと?………………
 やるか…!!? ここで……ッッ)


 さっそく刃牙がキケンなことを考える。
 一時期は平和主義になっていたけど、今の刃牙は狂犬のようだ。
 闘うことばかり考えている。
 梢江とのファイトばかりを考えるよりは、はるかに健康的だ。

 が、巨人はあっさりと刃牙に背をむける。
 そして、清掃箱に話しかけるのだった。
 えっ、もしかして物と会話しちゃう ヤバい人なのか?

「2(セカン)……」

 バン

「グッドモーニン ミスターバキ」


 呼ばれて飛びでてきた〜〜〜〜!
 一晩清掃箱の中に隠れていたのかよ!
 わりとさわやかそうな感じの男であった。
 ドリアンを思いっきり若返らせて二十代にすれば、こんな感じだろうか。
 頭に帽子かバンダナのようなものをつけていて、それがドリアンっぽいイメージになっている。

 掲示板でいただいた ずずさんの情報によればモデルは「ゲバラ」らしい。
 直接的な戦闘能力ではなく、人間力に秀でたモデルを持ってきたようだ。
 次回からは「革命」編か?


 刃牙世界では、ムダにデカイ人に強者なしだ。
 斗羽さんぐらいの思い入れとハッタリを持ってこないと強くなれない。
 背を伸ばしたジャックは、強くなったかもしれないが、出番は激減した。
 ムダにでかいと損ばかりなのだ。

 と言うわけで、ミスター2がデカい人でなくてよかった
 刃牙をおどかすため(?)一晩立っていたなんて、かなりイイ人のようだし、今後が期待できる。
 あいていたベッドが二つだったのは、ミスター2への伏線だったらしい。
 刃牙がまちがってミスター2のベッドに入らないように、するためアイアン・マイケルにはあらかじめ指示を出していたのだろう。
 No.2は、かなりの策士かもしれない。


 ところで、最近の刃牙はダメすぎる言動が多い。
 おどろきすぎで、ビビりすぎだ。
 そのうちに、尿を漏らすだろう。
 ただ、そんな刃牙のほうが高感度高い。

 小学生の前で最強をきどった高校生は、どうも好きになれない。
 誰とも闘わない宣言をしたのも、イマイチだった。
 梢江とイチャチャパラダイスなのにも困る。

 だが、渡米してからの刃牙は動揺しまくって ビビりまくる。
 おまけに行動がムチャクチャだ。
 かなり好戦的になっている。
 まるで、今までの刃牙が裏返ったような変身だ。

 今の刃牙ならボケもツッコミも驚愕もできる。
 オールラウンドファイターに生まれかわった範馬刃牙がかなり輝いている。
 でも、解説役がいないんだよなぁ。
 だれか、本部を逮捕しよう。

 それにしても、無事にオリバを倒しても 刃牙は出所できないよね。
 オリバと刑期は別問題なんだし。
 自信たっぷり100%なのに、先のことを何も考えていない刃牙が、ちょっと好きだ。


追記 ('06 4/14)
 清掃箱について書き忘れていたので追記する。ついでに文章もチェックする。

 そもそも監獄内に清掃箱って置いてないと思うのだが。
 刑務所側にとって、脱獄や自殺をされてはこまる。
 だから常に囚人をコントロールして目の届く範囲に置いておきたいはずだ。
 囚人が隠れることのできるような場所を作るとは思えない。
 実際に隠れているし。

 アメリカの刑務所事情にくわしくないので自信はない。
 でも、普通じゃない状況だ。
 おそらくミスター2の特権だろう。

 ランキングが上がるといろいろと特典がつくと考えれば、ランキング上位を目指す心情もわかる。
 最初は食後のおやつにプリンがつくところからはじまり、少年チャンピオンの差し入れが許されたりする。
 最終レベル・アンチェインにたっすると、刑務所への出入りも自由なのだろう。

 もっともオリバの不可拘束っぷりは本人の筋肉によるところが大きい。
 刃牙がオリバを倒して、オリバの筋力を超えれば、刃牙もまた不可拘束ぞい。
 体もやっぱりすごいマッチョになるのだろうか。
by とら


2006年4月20日(21号)
第3部 第20話 監獄と地獄 (676+4回)

 無精ヒゲにサワヤカ笑顔の2(セカン)が清掃箱の中から登場だ。
 刃牙世界で無精ヒゲといえば本部のチャームポイントが思いつく。
 そして、さわやか笑顔はミスター アライJr.の専売特許だ。
 ……だいじょうぶなのか、2とやらは。

 ミスター2は今回も名前が出てこない。
 名前がないとすこし不便なので、仮に本井と名づける。
 本部と荒井(アライ)を足した名前だ。
 豊臣秀吉が、丹羽長秀と柴田勝家から苗字を一字ずつもらい羽柴とした故事にあやかった。(参考:豊臣秀吉
 いかにも出世しそうな名前である。

 他の三人が着替えるなか、本井(仮)と刃牙だけが おしゃべりを続けている。
 周囲の空気を読め。すぐに着がえろ。
 偉大なるマイペース男二人は団体行動がニガテらしい。

「君が大統領ボッシュにしてのけたこと」
「心から賞賛したい」
「奴の息の根を止めてくれたらもっとパーフェクトだったがね ハハハ」


 本井(仮)はサワヤカに物騒なことをいう。
 どうも大統領にうらみがあるようだ。
 ケチなチンピラなどではなく、政治的な犯罪者だろうか。
 もしかすると国際的なテロリストなのかもしれない。
 大統領を拉致した刃牙の行動もテロにちかいので、親近感を持ったのだろう。

 受刑者は外部の情報をかんたんに入手できない。
 本井が政治犯であった場合はなおさらだろう。
 なのに、大統領の拉致を知っている。
 本井は独自の情報網を持っているらしい。さすがNo.2だ。

「ワカらないことはなんでも聞いてくれ」

 本井がさわやかに解説家宣言をする。
 この人なんでも知っとるのか?
 やはり本部のポジションかもしれない。

 とりあえず18話から投げっぱなしになっている「受刑者間にだけ存在する」「掟」を教えて欲しい。
 アイアン・マイケルも前回「説明はあとだ」と いったのに説明してくれないし。
 今のまま話が進むと、柳龍光の「低酸素の毒」なみに無かったことになりそうで心配だ。

 鉄人・巨人・老人の三人はもくもくと服を着ている。
 チャックを上げるアイアン・マイケルの姿に、哀愁をこえたなにかを感じてしまった。
 こんな細かい動作なのに、ものすごいダメキャラ感が出てしまっている。
 とうとうヌードになった元アイドルって感じで。
 ここまで達したのか……。


 刃牙の質問は「ナゼ清掃箱に……」だった。
 想像以上に普通の質問だった。
 もうちょっと、重要なことを質問すればいいのに。
 しかし、本井さんも一晩かけて完成させたネタを流されてはたまらない。
 刃牙の質問が「……」と終わらないうちに回答する。

「戦士(ウオリアー)だからね」
「横になりたきゃ―――――――」
「死んでから存分に楽しんだらいい」


 戦士に安楽な日など不要だ。
 すさまじい闘争心であった。
 しかし、戦士にとって 休息して体力を回復させるのも仕事のうちではないのだろうか?
 本井は普通の戦士と一味ちがう価値観で生きているようだ。

 最近リアクションに目覚めはじめている刃牙は汗を流し、つばを飲みこむ。
 早くもプレッシャーを感じているようだ。汗を流すタイミングが早い。
 だが、増長王子・範馬刃牙は大胆な質問をぶつけるのだった。

「この場でアンタをブッ倒したら」
「オレが2(セカン)になれるのかな」


 横で着がえていた三人に電撃が走ったッッッ!
 こ、このバカッ! 空気を読めッッッ!
 聞いていいことと悪いことがあるだろ。
 そんな思考が三人の脳内にうずまいていたかもしれない。

「死ぬにはいい日だ」

 本井がヤる気だッ!
 ふたたび三人に電撃が走る。
 ああ、もう。アイアン・マイケルがとことんダメな表情だ。
 今のマイケルなら安田大サーカスに混じっていても違和感ないぞい。

 試合場に向かうヒクソン・グレイシーは、控室を出るとき、「今日は死ぬにはいい日だ」というらしい。
 元はベトナム戦争時のアメリカ兵が言っていた言葉だそうだ。(『板垣恵介の激闘達人烈伝』より)

 常に死ととなり合わせの戦士は、死にたいして冷淡に見えるたいどを取る。
 たとえば『映像の世紀 第2集 大量殺戮の完成』だと、第一次大戦で横で死んでいく戦友にたいして無関心なたいどをとる兵士が映像にのこっている。
 大量に発生する死は、人間の感覚をマヒさせるらしい。
 2(セカン)の精神状態も、死屍累々たる戦場にあるのだろう。

 朝イチバンに死ぬ覚悟をする。
 甘ちゃんだったアライJr.には無い思考だ。
 勇次郎と戦おうとしている刃牙も、死を覚悟している。
 漫☆画太郎 作品のように死は不条理にやってくるのだ。
 もちろん死なないように最善は尽くすが、死ぬときもある。くしゃみで爆死する。
 その覚悟が二人にはあるのだろう。

 だが、こんなことを相手に確認してしまうのは、刃牙の甘いところだ。
 リアクションにあふれていても、思いっきりが足りない。
 無言のまま、攻撃を仕掛けるぐらいの死に狂いが必要だろう。
 言葉が多すぎるのは、自信をなくしているためだろうか。


 おしゃべりをしすぎて闘いの機会は失われた。
 看守が乱入して廊下に整列となったのだ。
 軍隊のようにきびしい規律で囚人たちは縛られている。
 会話をする自由すらない。
 だが、ミスター2・本井はちがった。

 整列もせずにブラブラ歩いて、看守のポケットからタバコをぬきとり一服している。
 コッソリ抜いたわけではない。堂々と抜いている。
 本井はシカトされているのか?
 だとすると清掃箱に入っていたのもイジメなのだろうか。

 『ショーシャンクの空に』などの監獄物では、囚人たちにとってタバコは通貨のようなものだ。
 たとえるなら『ニンテンドウ DS Lite』なみに貴重品である。中古品なのに高い って感じだ。
 そんなタバコを看守から抜きだすのだ。
 とんでもないVIP待遇といえる。

 本井がアイアン・マイケルに話しかけて、マイケルが答えた。
 そして、マイケルだけが看守に殴られる。
 ああ、マイケル…………。
 そんな神々しいまでのダメキャラになっちゃって。

「まるでミスター2(セカン)が存在しないかのような看守達の態度は異様さを極めた」

 本井は、ひとり別メニューを喰べる。
 そんなワガママも通るのだ。
 看守の拳銃をぬきとり もてあそんでも止められない。
 タバコなんかより はるかに問題になる行動だ。

 それでも看守たちは無視しつづける。
 本井に話しかけられても、答えないので、意味のある無視なのだろう。
 一週間、本井を無視できるかどうか賭けているとか?
 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の七変化みたいなネタだったりして。


 とりあえず本井は、ハエの動きも見切れる男だと判明した。
 その他はいっさい不明だ。名前も不明だし。
 オリバほどではないが、かなりの自由を満喫している。
 もちろんオリバは全食事をステーキに変更するという荒業だって普通にやっているのだろう。

 そして、ミスター2(セカン)の向かいに座った男が、なにかをヤるッ!
 No.2の座を狙うのは刃牙だけではないのだ。
 次回、2(セカン)の真の恐ろしさが明らかになる、のか?


 謎は謎のまま、すごい勢いで投げっぱなしだ。
 看守も無視できない(ちがう意味で無視してるけど)影響力をもっている。
 2(セカン)のトイレだけウォシュレットぐらいの豪華待遇がありそうだ。

 2(セカン)は武装していないようだ。
 監獄内でたよりになるのは肉体だ。
 やはり、強力な肉体を持っているのだろうか。
 刃牙の試合を見ていたはずのマイケルがビビっているぐらいなんだから、最大トーナメント時の刃牙以上なのだろう。

 それにしても、アイアン・マイケルがあそこまで落ちぶれるとは……
 ただの いじられ芸人になっている。
 それも2のしわざか?
 なにかボクシングに恨みでもあるのだろうか。

 マイケルの頭がツルツルになったのも、2の力だろうか。
 いや、アレは毛髪だけは自由にならなかったオリバがやらせた可能性が高い。
 2がバンダナ巻いているのも、同じく毛髪が理由だろうか?
 バンダナをとると落ち武者みたいな髪形になっているのかもしれない。
by とら


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