今週の餓狼伝 BOY

餓狼伝 BOYバックナンバー    餓狼伝バックナンバー    今週のバキ(最新版)
←前回の餓狼伝 BOY  バキ外伝 〜範馬勇次郎誕生〜  今週のバキ

2004年7月13日
餓狼伝BOY まとめ

 けっきょく『餓狼伝BOY』とはなんだったのか!?
 個人的には、「まわしネタ」しか書かなかったような気がする。たぶん、どこかでナニかを間違えた。
 休載も含めて、二十四週の軌跡をふり返ってみる。

タイトル内容
Vol.1「出会い」最強を目指す木戸は、殴られ屋を引退に追い込んだ丹波と出会う。
Vol.2「再現」丹波は試し割りを披露し、殴られ屋に仕掛けた秘策を見せる。
Vol.3「夢」丹波の秘策は本気の殺意だった。丹波は最強への夢を語る。
Vol.4「凶漢(きょうかん)」木戸も最強への夢を語る。ゲロ男・切雨がヤクザをつれて登場。
Vol.5「正体」切雨が本物の暴力を見せつける。そして彼の正体は教師だった。
Vol.6「脅迫」切雨は演技で暴力性を隠していた。正体を知る木戸を脅迫する。
休載---
Vol.7「怪物」切雨は木戸に転校を迫る。ピンチで丹波が登場する。
Vol.8「咆哮」丹波の攻撃は切雨に通用せず。謎発言「名優だなタンバ」
Vol.9「死闘」本気の殺意顔を見せたが、通じない。邪魔が入り戦いは中止。
休載---
休載---
Vol.10「告白」丹波の秘密部屋に木戸を案内する。丹波、実は弱いと判明する。
Vol.11「トリック」丹波の強さは演出とトリックだった。木戸もそれに気がついた。
Vol.12「急襲」それでも木戸は丹波を信頼している。切雨が丹波の学校に来る。
休載---
Vol.13「崩壊」切雨の刺客・山田により、丹波の打撃力が否定される。
Vol.14「期待」丹波のトリックが皆にバレる。木戸の期待に応えられるのか。
Vol.15「勝負」木戸が丹波をかばう。丹波は捨て身のビン割りを決める。
休載---
Vol.16「力技」丹波は力技で皆に実力を納得させる。そして切雨に勝負を挑む。
Vol.17「真実に‥」丹波は今までの嘘を捨て、真実の強さを手に入れようと決意する。
Vol.18「代償」捨て身の攻撃を丹波は放つ。これを殴られ屋が絶賛する。
最終話「最強」丹波、本気の殺意顔で気迫勝ち。核兵器が相手でも、負けない!

 ふり返ってみると、木戸と出会ってすぐに試し割りをして、その後殺意の表情を見せている。
 この話は、のちの伏線だ。
 板垣先生は何も考えず描いていたワケではないのだ。
 たぶん………。いや、きっとだッ!

 ストーリーを、さらにまとめると次のようになる。
・丹波と木戸の出会い(1〜3話)
・相撲教師・切雨との闘い(4〜9話)
・丹波のハッタリ伝説(10〜15話)
・丹波の最終決戦(16〜19話)

 実はきっちり起承転結をしている。
 最強を目指す少年二人が出会い、敵が登場し、意外と丹波が弱くて、決着。
 丹波と木戸の友情を縦糸に、丹波の成長を横糸にして、話が織り込まれている。

 登場人物に、現役の戦士はいない。
 殴られ屋は、殴らない。切雨は引退した力士だ。
 餓狼伝BOYはバトル中心の作品ではなかったのだ。

 餓狼伝BOYは、餓狼伝につながる話だ。未来は餓狼伝に通じている。
 だから、丹波はあまり強くなれなかったのだろう。
 主人公が強くない。だから強さを比べるのではなく、他の主題で話を進めたのだろう。


・ 丹波と木戸の友情について

 常に強さを見せつけていたい丹波くんは、初対面の木戸に対しても営業を忘れない。
 試し割りを見せて強いとほめられたら、いつもなら終りだっただろう。
 ただ、木戸も最強を目指す男だった。

 今思えば、丹波は木戸の目指す最強も理解していたのだろう。
 最強を目指すといいながらハッタリでごまかしていた自分に対し、木戸は真剣に戦っている。
 相手の存在に衝撃を受けたのは、木戸ではなく丹波かもしれない。

 そこに共通の敵である切雨があらわれる。
 丹波は初めてハッタリでごまかせない現実と向き合うことになる。
 今までの丹波なら逃げていたかもしれない。
 逃げなかったのは木戸の影響だろうか。
 最強を目指して立ち止まらない 同年代の男がいるのだ。自分は背を向けられるのか?

 丹波が弱いと知っても、木戸は丹波を見捨てない。
 木戸も、丹波の目指す最強への道が困難だと知っているのだろう。
 目前の障害である切雨に立ち向かうことで、二人の友情は深まる。
 丹波は、木戸の期待に応えるべく、安穏なハッタリ人生を捨てる決意をする。

 勝利の後で、互いの最強論を戦わせてみる。丹波の勝ち。チクショー。
 最強を目指す二人とはいえ、向かう方向が違う。
 それをムリヤリ競わせてみたら、まあ腕力がもの言いますわな。という話か。
 木戸があまり悔しくなさそうなのは、これが言葉遊びだからだろう。

 丹波が本格的に餓狼の道に進むのはいい。木戸はどうなったのだろうか?
 年齢的にはそろそろ政界に出てくるころだろうか。
 いつか、本編に再登場するのだろう。それより、本編の再登場はいつだ?


・ 丹波の成長について

 トリックと演出と演技力で、丹波文七は最強を演じていた。
 今夜も殴られ屋ハルヤを引退に追い込む大活躍をする。
 そのあと、なにをしにハルヤ家に乗り込んだのかは不明だ。

 そこで木戸と出会って、いつものように(?)だます。
 ところが、そこに本物の暴力をもつ切雨があらわれる。
 恐かったのか、丹波は無反応だ。嘘で生きていた丹波が現実の暴力に弱いのか。

 木戸のピンチに、思わず丹波は飛び出す。
 しかし、現実は無情である。丹波は張り手で吹っ飛ばされる。
 丹波は張り手で吹っ飛ばされてばかりだ
 張ったり好きな性格が災いしているのかもしれない。

 切雨には殺意の表情も通用しない。
 この表情は、ハルヤさんには通用していたようだ。
 切雨の方がより修羅場をくぐっているだろう。だから、殺意が演技かどうかわかったのだろう。

 そして、トリックがばれる。
 山田と五分る。とんだ恥さらしだ。
 でも、木戸の期待に応え、真に最強を目指すため丹波は捨て身になる。
 丹波文七が一皮むけた瞬間だ。

 そして切雨と勝負して気迫勝ち。
 今までの殺意の表情は、演技で出していたものだろう。
 しかし、今度は不退転の覚悟が作った表情だ。
 意識を失った状態だからこそ出せたのだろう。

 今の俺は核兵器にも勝てる。相手が核だろうと、ボタンを押すのは人間だッ!
 ハッタリ性格は、すぐには直らないらしい。


 色々と不明な部分はあるが餓狼伝BOYは完結した話になっている。
 謎は多少残っているが、全部説明するのは読者に想像する余地を残さないヤボというものだろう。
 バキも最近その傾向があるが、いい意味でツッコミの余地を残した作品作りといえる。

 正岡子規だって著書「水滸伝と八犬伝」で『趣向の上に就て見ても水滸伝は無邪気で八犬伝は理屈っぽい。文句の上に就て見ても八張同様である。此点に於て八犬伝は著く水滸伝に劣つて居る。』と書いている。
 あまり理屈っぽくなっても、堅苦しいのだ。
 もっとも板垣作品は、理屈っぽくなるとは思えない。
 ツッコミの余地ありまくりの愛すべき作品だ。


・ 作品の終わり方について

 餓狼伝BOYは板垣作品の中で初めて完結した作品となった。
 メイキャッパーも完結しているが、あれは一話完結的な作品だ。
 ストーリー物としては餓狼伝BOYが最初の完結作品になる。

 餓狼伝BOYの終わり方は、いさぎよい。
 最後に新設定が出てきたりしない。話の続きに未練を見せず、普通に終わっている。
「次回から新章、木戸の前にムエタイ教師がやってくる」こんな予告が入っていても違和感が無い。
 板垣作品の終わり方は、こんな感じだろう。

 バキの最終回はいつやって来るのかワカらない。
 ただ、餓狼伝BOYの最終回から、その予想ができる。
 最強の敵であり実父である範馬勇次郎をバキは倒す。
 仲間となんか気のきいた会話をして、何事も無く、完!

 相手を力任せにブン投げるかのような華麗な投げっぷり。
 有無を言わせぬ完結感だ。次回、勇次郎の兄・勇太郎が出てきてもおかしくない終わりかただ。


・ そして、餓狼伝へ

 来年のことはわからない。しかし、餓狼伝が復活する日は近い。と願う。
 餓狼伝が休載してから、餓狼伝BOYが始まるまで約一ヶ月かかった。
 それを考えると夏休み前後に餓狼伝の復活があるのだろう。

 餓狼伝は人気があるとは思う。話も盛り上がっているところだ。
 でも、出版社倒産や掲載誌休刊を引き起こす作品に救いの手はあるのだろうか。
 板垣恵介は、まさに劇薬だ。
by とら


メニューに戻る

餓狼伝 BOYバックナンバー    餓狼伝バックナンバー    今週のバキ(最新版)