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2004年1月27日(増刊)
バキ外伝 〜範馬勇次郎誕生〜

 虎はなぜ強いと思う? もともと強いからだ。
 範馬勇次郎はなぜ強いのか。生まれたときから範馬勇次郎だったからだ。

 5万人の赤ン坊を取り上げたという産婆の達人・小倉ツネさん(101歳)が選ぶベスト・オブ・ベスト(あるいはワースト・オブ・ワースト)の赤ン坊がいる。

(言うたところで)
(いったい……)
(誰が信じるもんかね)


 86年間の産婆人生の中で出会った最強の赤子がいた。まさに86年に一人の逸材である。
 戦争の世紀と呼ばれた二十世紀にふさわしき超新生児だッ。
 時は195X年 4月×日 早朝にさかのぼる。

(俺を取り上げろ!!!)

 母の胎内から頭が出ただけの状態で、いきなり勇次郎は小倉ツネ(当時5X歳)に命令する。
 赤ン坊とは思えぬ強度をもつ肉体で、勇次郎はにらみつける。
 産婆に生殺与奪の権を握られている状況にもかかわらず、おそるべき傲岸不遜の態度だ。

(失敗は許さないッッッ)
(無事に取り出せッッ)


 勇次郎の闘気がほとばしる。
 おかげで、横から見ると母親の股間が爆発しているようだ。
 さすが勇次郎だ。強すぎる力で、自分自身の出産を困難にしている。
 勇次郎の半径4mは地球上でもっとも危険な区域と政府が認定するのもうなずける。

 この生物を外界に出すということは、腹に宿した核を分娩する図に似る。
 母の股間から漏れだす 放射能のような勇次郎の闘気がまぶしくて、小倉ツネさんおもわず目を閉じ顔をそむけてしまう。
 まともに見ていたら失明しそうな恐るべき闘気だ。
 これほどの光を股間から放てる女は、約40年後に松本梢江が達成したのみと伝え聞く。
 それほどの光量である。

 小倉ツネさんは、言葉ではなく"念"に似たもので命令を受けた。
 偉大な宗教家や政治家にも匹敵すると評される勇次郎の意志力は赤子のときから備わっていたのだ。
 この、目で物言わす意思の伝達が、世界暴力漫遊記で役立ったに違いない。


 そして、勇次郎最初の食事である。
 母の乳房に勇次郎はかぶりつく。
 この時すでに犬歯が一本生えていた。最初の食事は、流血事件となる。

(なにをしているッッ)
(早く飲ませろッッッ)


 脳に直に届く勇次郎の意思だった。
 あざがつくほど強く乳房を握りしめ、牙を立てて乳を喰らう。飽くまで喰らう。尽きるまで喰らう。

 弁慶は生まれたときすでに髪が肩まであり歯も生えそろっていたという。
 また古代ローマのカエサルは母の腹を切って取り出され、そこから帝王切開という名がついたと言われる。
 このように世界の超人は異常な誕生を向かえるものが多い。
 シャークスピアの舞台劇「マクベス」では、主人公マクベスは女から生まれた人間に殺されることがないと予言されるが、帝王切開で生まれた男に殺される。
 これも異端の生まれの起こす奇蹟なのかもしれない。

 つまり、勇次郎は神話世界の住人として光臨したのだ。

「これ以上の屈辱があるでしょうか」
「授乳を強要される母親!」

 母は出家して尼になりました。
 超人の母親は、常人にはつとまらないのだ。
 なお「最初で最後の子」といっているので、根強く残る「勇次郎は次男」説は崩壊した。
 勇次郎の前に人はなし。勇次郎の後にも人はなし。勇次郎は孤高に一人立つ。

 じゃあ、なんで勇"次郎"なんだろう。
 誕生直後から世界の頂点に立とうとする気迫をみせていたので、せめて名前だけでも一番を避けようという配慮なのだろうか。

 早朝に生まれ、午前に食事し、伝説を早くも二つ作った。
 そして、正午だった。
 屋敷全体が震えだすような泣き声を勇次郎が出す。
 地団駄や声で建物を崩壊寸前に追い込むのは赤子の頃からの習性だったようだ。

 そして、ピタリと泣き声が止む。
 勇次郎がカエルを握り殺して嗤(わら)っていた。
 記念すべき勇次郎・最初の犠牲者はココイヤドクガエル亜種だった。

「日本には生息するハズのないカエルでした」
「遠く南米地域にのみ生息するというその生き物は」
「微(わず)か1グラムという ほんの数滴で」
「体重60キロの大人10万人を絶命させるという――――――」

 日本にいないカエルをなぜつかんでいたのか。
 猛毒ガエルをつかんでなぜ無事だったのか。
 すべては謎のままだ。
 あえて答えるなら、それは範馬勇次郎だから、である。

 バキに毒手が効きにくかったのは、血筋だったようだ。
 超回復力だけではなく、毒に対する耐性も高いようだ。
 勇次郎の場合、生後数時間ですでに裏返っているっぽい。

 ところで、勇次郎の生家は、バカでかい屋敷だ。意外と裕福な家庭に生まれていることがわかる。
 そういう環境だから、モノを破壊するのには事欠かない幼年期だったのだろう。
 教わるまでもなく強かったのだろうから、裕福なのはオマケに過ぎないと思うが。
 これだけ素で強いと日常生活が大変そうだ。
 小学校のフォークダンスでクラスの女子を全員ジャガッた事だろう。


 勇次郎の誕生した日に、恐るべき偶然の一致があった。
 その日、その時に、各国の指導者たちが核の保有を決意した。
 発表の日時年月日はそれぞれ違えど、それは間違いなく勇次郎の誕生日であった。

 某国 元指導者(98歳)は語る。

「胸騒ぎというより」
「確信とも言える不安の根拠」
「何処(どこ)か…」
「たとえば東洋の何処か」
「そんなちっぽけな小国で」
「恐るべき兵器が生まれるッッ」


 無根拠のまま危機を事前にキャッチする直観力を有するという元指導者は、悪鬼誕生を肌で感じ取っていたのだ。
 核兵器は作ろうと思ってすぐにできるものではない。
 勇次郎が本格始動するまでの十数年に、大急ぎで用意したのだろう。
 ただ、核では勇次郎を止められないようなので、選択を誤った感はある。
 なお、無意識の知覚はフランス語で「ク・ドゥイユ(coup d'Oeil)」といい、ナポレオンはク・ドゥイユがあれば、戦場に臨んで地形を一瞥しただけで勝機をつかむことができると言ったらしい(松村劭「名将たちの戦争学」)。

 範馬勇次郎の誕生は、世界の指導者が思わず核にすがってしまうほどの危機的状況だったのだ。
 まさに赤子・勇次郎に世界が震撼した日だ。
 この日、本部あたりは理由もなく失禁していたかもしれない。

「この地球上に存在する人間をも含めた―――」
「強さを拠り所とするあらゆる生物にとっての
 一九五X年四月X日―――――――――」
「自動的に一つだけ「強さ」のランクが下がった」
「最悪の日!!!」


 バキ外伝 〜範馬勇次郎誕生〜 完ッ!
 元祖! 浦安鉄筋家族 外伝 ガキ 〜花園垣誕生〜とどっちがギャグ漫画か比べてしまうような すさまじい展開だった。
 バキの世界で、勇次郎より年上の闘士はそれなりに強いものが多い。ひょっとしたら、勇次郎誕生の時に、中途半端でヘッポコな人はショックで亡くなったのかもしれない。
 サムワンなんかは、あと30年早く生まれていたら、かなり危なかっただろう。

 ところで、「Liberater 美琴」という漫画を描いている渋谷とおるさんは、いたがき組の渋谷とおるさんだろうか。グラップラー刃牙35巻の巻末オマケを描いている人です。

 勇次郎にまつわる謎はほとんど解決しないのは予想通りだが、赤子の時から地上最強とは恐れ入った。
 彼には超えるべき父の背中など存在しないのだろうか。

 今回、勇次郎にもちゃんと母親がいるとわかった。そして、結局出てこなかった勇次郎の父親はどんな人なのだろう。
 母親は普通の人のようなので、やっぱり父が異常なのかもしれない。むしろ異常であれ。

 しかし、こういう赤ちゃんはイヤだ。
 指をつかませたら、ボキボキに折られるだろう。
 いない いない バーをやろうと顔を隠すと「一流同士はコンマ一秒の奪い合い、自ら視界を消したキサマは2度死んだッ!」と言って、言葉どおり致命傷となる攻撃をしてくれそうです。

 勇次郎のオムツも、アラミド繊維で作られた特注かもしれない。しかし、それでも国会議員(by 浦安鉄筋家族)並みのうんちを出して破きそうだ。
by とら


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