合気道の開祖植芝盛平が、「合気道」という呼称を使い始めたのは1948年です。つまり、当然武蔵以後に成立した武道ということになります。いくつか、疑問というか補足ですが……
しかし、合気道の原型となった武術については、様々あります。講道館柔道、起倒流柔術(グラップラー刃牙3話に出てきた鬼頭流柔術のモデル)、柳生心眼流柔術などなど様々です。この中には戦国時代から続いているものもありますので、武蔵が経験した武術もあるかもしれません。
つまり、客観的に見れば、「合気道」とは、戦国時代から戦後までの様々な「柔」の技術を結集した「柔」の究極体、ということになります。
しかし、真実は異なります。
合気道で唯一十段を取得した男、藤平光一がこの真実について著書で述べています。(渋川のモデルとなった塩田剛三ですら九段止まりなのを考えると、まさに伝説の合気道マスターと言えるでしょう。もっとも、塩田さんは十段を取る前に独立したので、実力は藤平さんより上かもしれませんが)
藤平さんは、合気道に入門後、厳しい鍛錬を積みますが、それでも齢70を超える植芝さんに敵わなかったと述べています。まさに「怪物」だったと。
藤平さんは、そうした植芝盛平の強さのルーツを探るため、植芝に柔道を教えていた鈴木新吾、という方にお話を聞きに行ったようです。
そこで鈴木さんは驚くべきことを言います。「植芝盛平は弱かった」と。
驚く藤平さんに、続けてこうも言いました。「柔道を習っても弱い、柳生心眼流の免許をもらっても弱いまま。そして、武田惣角に師事してからも弱かった」と。
武田惣角とは、当時の伝説的武道家で大東流合気柔術の始祖です。ほとんどの人は、この武田さんのおかげで、植芝は強くなり、合気道が生まれた、と誤解していたのです。
そして、鈴木さんは最後にこう話しました。「しかし、大本と出会ってから、植芝は見違えるほど強くなった」と。
藤平さんは、最後のこの一言で、鈴木さんの話が正しいことを確信したと言います。
同時に、植芝さんにまつわる様々な伝説(戦争中に弾を避けた、暴漢数十人を相手取り一人で倒した)が嘘だったことが分かったと言います。
植芝さんが柔道を習ったのが、兵役を終えた後だったので、兵役中にそんな芸当ができるはずがありません。
藤平さんは言います。「植芝盛平に関わるあらゆる伝説は、植芝を恐れ、慕い、憧れていた連中が作り出した幻想だ」と。
そして同時に、「だが植芝先生が強かったのは事実。本当に強かった。まさに怪物だった。その強さの秘密は大本にあったのだと確信できた」と述べています。
大本とは、最近刃牙道でも出てきた宗教のことです。
この大本と出会うことで、植芝は悟りを開き「自然体」を体得しました。そして、あの怪物じみた強さを発揮していたのです。
つまり、合気道とは「柔」という「技術」の究極体などではありません。
とらさんが今週の感想で述べていた様に、合気道は東洋哲学の悟りをもとに作られた「武道哲学」なのです。
古来より、東洋哲学には必ず「自然体」という単語が出てきます。悟りを開いた者は「自然体」になると。
「自然体」とは即ち「脱力」のことです。
植芝は悪魔的な性格の持ち主で、弟子には「脱力」などという言葉は少しも教えずに「柔道のように力を入れろ」と教えていたようです。
しかし、藤平光一は、鈴木氏の話をもとに、植芝の強さの源は「脱力」にあると見極めました。
塩田剛三は、そういった話を聞かず、驚異の観察力で「脱力」を見極めました。
このお二人は、意地悪な師匠の言葉を鵜呑みにしないことで、「合気道」の極意を学んだのです。
塩田さんも、藤平さんも、哲学的な名言には事欠きません。その背景には、大本に出会って強くなった植芝、そして合気道の武道哲学としての側面が大きかったのでしょう。
その証拠に、藤平さんの著作には、合気道の「技術」に関する話は一切出てきません。藤平さんは知っていたからでしょう。植芝盛平の強さとは「柔」という「技術」に支えられたものではなく「東洋哲学」の「悟り」によってもたらされる「脱力」にこそあったということを。
もっとも、植芝の弟子たちは大本の教義には疑問を呈することが少なくなかったといいます。決して大本が究極の宗教、というわけではないのでしょう。
しかし、仏教で悟りを得る人もいれば、イスラム教で得る人もいます。儒教で得る人もいれば、大本で得る人もいる。それだけの話だったのでしょう。
つまり、人間にとって「揺るぎない信念」がどれほど大切なのかということを藤平さんは植芝さんから学んだのでしょう。
すなわち、武蔵が出会った「合気道」とは、戦後に成立したまぎれもない新武道ということになります。その元になる武術を武蔵が経験していても、何の問題もないということです。
長くなりましたがこんなところです。
私が刃牙を好きな理由の一つには、この「脱力」を前面に押し出している、というところもあります。(少々脱力について誤解されてるところもあるようですが・・・)
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