今週のバキ141話〜150話

バックナンバー    今週の餓狼伝(最新版)    今週のグラップラー刃牙(アニメ版)
今週のバキ→

2002年10月3日(45号)
第2部 第141話 斬撃 (521+4回)

 かつては鳥のように軽やかに月面宙返りをした体も今は動かない
 車椅子に座っているのはロシアの英雄・レスリング400戦無敗の男・ガーレンであった。

 病院の屋上だろうか、かつての猛々しい覇気は無く、静かに空を飛ぶ鳥を見ている。
 怪我が治らず歩く事もままならないだけに、大空を自由に飛ぶ大鷲がうらやましいのだろうか。
 グラップラーな面々に比べるとケガの治り方が常人並に遅い気もするが、それはジャックにやられたダメージも影響しているのかもしれない。
 そして、ガーレンの回想が始まる。

 ウラン採掘場の横のガーレン小屋(ハウス)で、ガーレンはランプの光りを頼りに机に向かい書き物をしていた。
 電気が届いて無いのだろう。当然テレビも無い。
 娯楽がほとんど無い暮らしをしているようだ。
 ちなみに、ガーレンのモデルのカレリンは大の読書家らしいのですが、ガーレンも普段は1人静かに読書を楽しんでいるのかもしれません。

 紙が舞った。
 小屋の入り口が何者かによって開けられたのだ。  シベリアブリザードを背に受けて1人の男が立っていた。
 ドアを閉めようともせずに危険な香りを漂わせている。表情に怒りがある訳ではない。だが静かな表情の中で鋭く目が光っている。
 囚人の服なのでおそらく薄手の服であろう。寒い中を走って来たというのにワザワザ袖をまくっている
 肉の中にとてつもない熱がこもっているのだろう。

 足は裸足だ。
 舗装された道路を走ってきたわけでは無い。岩や石が転がる凍りついた極寒のシベリア凍土を走って来たのだ。
 この男はただ者では無い。

 ところで、こんな土地でトビラが開けられたら、入ってくる寒気にビックリして振り返ると思うのですが、飛んでいく紙の方で気が付くガーレンは寒さに強いと言うか鈍いと言うか、やっぱろただ者じゃありません。

 君は? と突然の来訪者に驚くガーレンの目がさらに見開かれていく。
 その視線はしだいに上へと上がり、ほとんど天井を見上げるような状態になる。

「バカな…ッッ」

 シコルスキーが頭上から襲いかかる。その所業はほとんど妖怪だ。
 既知の外側で起きた惨劇の記憶にガーレンは堅く目を閉ざし震えた
 ロシアの英雄であっても妖怪は怖いらしい。
 そもそも頭上から降ってくる敵と戦うのは、格闘技の想定には入っていないのだろう。

 なんにしても車椅子に乗っているとはいえ身長2m・体重169kgの震える大男を運ぶ看護婦さんの苦労がしのばれます
 失禁とかされたら常人の3倍ぐらいは流しそうだし。


 一方、シコルスキーの脱獄したミサイルサイトでは再び現場検証を行っているようです。
 どこから呼んだのかロッククライマーに現場を見せて、登れるかどうかを判断させているようだ。

「かんべんしてくれよ」
「オレたちは……………」
「猿や……」
「ヤモリじゃないんだ」


 チャレンジする前から敗北を認めています。
 確かに、取っ掛かりがほとんど見えないこの壁を登ることは普通の人間には不可能でしょう。
 では、道具を使用せずにこの壁を登るにはどんな能力が必要かと尋ねられる。

「これくらいの…………」
「ナットにつかまったまま……………」
「短編小説を一冊……………」
「気軽に読み終えられるような…………って」


 指の太さと同じぐらいのサイズのナットが天井に付けられている。それを指でつまんでぶら下がる
 イメージ映像は何故か全裸である。

 天井にぶら下がっていると頭が下になるので、かなり辛そうなんです。その状態で小説を気軽に読む事自体にも能力が必要な気がする。
 とにかく、とんでもない握力、と言うより指の力が必要なようだ。
 ……………花山さんならできるかも。
 試しにやってもらえないかな。もちろん全裸(最大限譲歩してふんどしの使用は認めます)

「しかし………」
「それはもう人間じゃない」


 そう、これだけの身体能力を持つ、と言うより天井に張りつくような生物は人間じゃありません。妖怪かミュータントです
 柳田国男の『遠野物語』にも壁に立つ男(妖怪?)の話が収められていたような憶えがありますし、やはり普通じゃないですね。
 早く人間になりたい?

 そんな訳でロシアン忍者からクラスチェンジしてロシアン・スパイダーマン(語呂悪ッ)に転職しちゃったかもしれないシコルスキーが再登場する。
 柳と分かれた後は別行動を取っているようで路地裏を1人で歩いている。
 そのシコルスキーの前に1人の男が出現した。

「誰だ…?」

 無精ヒゲを剃ったおかげか人語を取り戻している。

 今更エピソードを積み重ねたところで、見せられるだけの醜態を見せてしまった感のあるシコルスキーですが、まだ新たなる醜態を見せる余地があるのでしょうか。
 シコルスキーの前に立ちふさがったのはジャック・ハンマーであった。これはガーレンを通しての因縁なのか。
 ジャックよ、鎬紅葉との約束はどうした?


 場面は変わって友の黒帯によって絞首刑にされかけたドイルに話が戻る。
 帯を手繰り寄せて首がしまらないようにして、黒帯をロープ代わりにして壁を登ると言う、極めて現実的かつ有効な脱出法でドイルは危機を逃れる。
 良く考えたら、こうする事が正解だったハズなのですが、変な事ばかり考えて正統派の考えが浮かびませんでした。

 シコルスキーであれば帯を伝わらずとも登るであろう船の外壁を、ドイルは友情の帯を利用して登る。
 この辺はシコルスキーとドイルの対比描写にしているのでしょうか。
 自分の力しか頼れないシコルスキーと、間接的にだが友の助けで登るドイルの2人。同じ死刑囚であっても立場がかなり違う。
 そして、登りきると柳が日本刀を持って待ち構えていた

「その昔………」
「我が日本国では………」
「誇りを捨てた武士(サムライ)の」
「首をハネた――――」
「そして君もまた………」
「誇りを捨て去った」


 鯉口を切る動作すら見せないいきなりの抜き打ちが出る。
 血が飛び散り、ドイルの肉体が痙攣する
 どうなる、次回ッッ!!

 などと言いつつ、柳は首を刎ねていないと予想します。
 と言うのも柳は右手で鞘を持っている。つまり、剣を左手で抜いていることになる。
 本気で斬る気なら、そんな事はしないだろう。
 鞘を持つ右手にはちゃんと毒手の色をしているので、間違って右手で持たせちゃったと言う感じはしないのだが…。
 次回、何事も無かったように右手で日本刀を持っていたりするかもしれないので油断は禁物だ

 もしくはせっかく黒帯を返してもらったんだし、黒帯で日本刀を受け止めて「俺タチノ絆ハ、ソンナ物デハ断テヌッ!」とか言ってみるとか。
 でも、布だと簡単に切られちゃいそうだな。
 神心会の帯はワイヤーが入っている特別性ぐらいのハッタリが無いと助かりませんね。
 なんにしても血が出ているのでドイルはかなりピンチです。


 そして、もう1人の賞味期限が切れている男・シコルスキーですが。
 バキにバカにされる前や、オリバに吹っ飛ばされる前に今回のエピソードが入ってくれば十分にイカしていたんですけど、ちょっとタイミングが遅かった気がします。
 さらに今回は天井の無い場所での闘いなので妖怪じみた変態攻撃ができず未来は暗そうです。
 ジャックが具体的にどうパワーアップしたのか、まだ描写されてい無いので、次回は「何てパワーだッ」とシコルが驚いて終わってしまいそうです。

 で、シコルスキーをあっさり倒した所に、ジェーン登場で打倒勇次郎プロジェクトの始動が告げられたりするとかしないとか。

 なんにせよ、主人公たちにはお姫様抱っこしたまま、ずっと闘いから逃げまわっていただきたい
by とら


2002年10月9日(46号)
第2部 第142話 動かねェ… (522+4回)

 ナタの重さにカミソリの切れ味を持つと言う日本刀。決して折れず曲がらずと称される日本刀。
 ちょっと過大評価っぽい…

 それでも日本刀が危険な凶器である事に違いはありません。
 鋭利な刃が克巳との絆である黒帯を切り裂き、腕を切り裂き、一気に振り抜かれる
 血が大量に飛び散った。
 だが、柳は大きな違和感を感じていた
 刃が通過したとき、ギンッ、と言う硬質の音がなっている。
 刃を見ると2ヶ所に刃こぼれが生じている。
 ドイルは、腕を深く切られているが、切断はされていない。首もつながったままだ

(バカな……ッッ)
(真剣を腕で防ぐことなど…………ッッ)


 圧倒的優位に立っているにも関わらず、冷や汗をかいて柳はすごく変な表情になってしまう。
 無理に形容するなら、豆鉄砲を喰らった志村けん…、イヤ違うか。
 なんにしても、1度でも甘美な敗北の味を知ってしまうと武道家として再起不能なのでしょうか。
 戦闘中だと言うのに、柳さんは愕然とした表情で刃こぼれした日本刀を眺める。

「こいつ…ッッ」
「腕に鉄骨を!?」


 驚きながらも「名刀が………」と小さくボヤいているところがチャーミングで、なんか余裕あり気です。
 鉄に切りつけてしまったのでは、刃こぼれは仕方ありません。ただ、ここまでひどく欠けたのは腕のせいでしょうか。
 カッコつけて左手だけで斬りつけたのは失敗です

 鈴木眞哉「刀と首取り」や大塚忠義「日本剣道の歴史」などによると日本刀は硬い物に切りつけるとすぐに刃こぼれしてしまうそうです。
 ニュースステーションに居合の達人が出た事があったのですが、刃こぼれするからと言って紙しか斬ってくれませんでした
 それでも、昔テレビでパイプイスの足を日本刀で斬る映像を見た事がありますので、品物と腕があればそれほど刃こぼれしないのかも知れません。

 一方のドイルは左親指を「カチ」と鳴らすが反応が無い。

「チッ………
 動かねェ…
「配線が切れちまったか」


 むしろ、斬られた腕を心配してはどうでしょうか。かなり大きい傷口で放っておくと出血多量で死にそうです。
 そして、これが今回のサブタイトルだったようです。セリフ的に重みが足りないような気が…

 ところで、左の親指を曲げたと言う事は、ブレストファイヤーを撃つつもりだったようです。
 相手の姿が見えない状態だから、広範囲への無差別攻撃は間違っていないとは思いますが、船縁に張りついている状態では爆風が全部自分に返ってきてただの自爆に終わりそうです。

 一方、柳もいつまでも呆然としていられない。
 気を取り直し、今度は両手で剣を構え、真っ向から打ちこまんとする。
 垂直に打ちこむ、いわゆる「幹竹割り」だ
 頭蓋骨は結構硬いので、頭部を狙うと切り損ねることもあるらしいのですが、体のどこに鉄骨が入っているか分からない相手だけにとりあえず渾身の力をこめて斬ると思い定めたのでしょうか。

(そんなことより…………………)
(眼がよう…………………………)
(眼が見えねェ……………………)


 絶望的な言葉を残しドイルは海に身を投げた
 刀は空を切り、手すりに激突し火花を盛大に散らす
 当然、さらなる刃こぼれが生じた。当たって無いように思える所もしっかり傷ついているのが不思議だ。

 余りのショックに柳は大口を開け眼を真っ暗にして声にならない悲鳴を上げる。
 背景に「ガビーン」とか「ズギャーン」とかの擬音が入るのが似合います。「ロマーン」は似合わないでしょう。
 なんかすっかり面白い人になってしまいました

 せっかく用意した名刀を台無しにされ、ドイルにはトドメを刺しそこね、良い所がどこにもありません
 今にも号泣しそうな、悔しさを滲ませた表情でドイルの落ちた海面を睨みつける。
 そんなに刀が大事ならずっと金庫に入れておけと言われそうです。
 さて、海に落ちたドイルですが、自力脱出できるとは思えません。誰かに回収してもらわないとダメですね。
 運が悪ければ、このまま海の藻屑となるしかなさそうです。


 ここで場面はもう一方のバトルへと移る。
 自慢の歯を見せつけて、ジャックがシコルスキーに宣戦布告する。
 そのジャックをクールに見つめるシコルスキーだが、その巨体に驚いているようだ。

「アンタらにとっちゃ敵側の人間だ」
「もっとも」
「オレの場合はアンタらといっしょ………」
「どっちかというとラフファイターかもな……」


 確かにジャックはラフファイターです。
 でも、「オレの場合はアンタらといっしょ………」と言うセリフを読んだ瞬間、ジャックも廃品利用の引きたて役なのかと勘違いした
 ジャックには、コイツらとは違う所を見せてもらいたいものです。
 とりあえず喧嘩の場所を探そうと、移動する両者。
 その間にシコルスキーはさり気なくジャックの実力を測る。

(強い……ッッ)
(とてつもなく!!!)


 深刻な表情で、汗を流す
 戦う前から敗北の準備をしてどうするッッ!


 そんな困った死刑囚のシコルスキーのために選んだ戦場は、便所だった

 ジャック、趣味悪ッ!


 これは寝技での決着は無いと見ていいのでしょうか。
 ここでのダウンは死を意味すると言う点では、禁酒法時代のマフィアの闘いに通じるものがあります。
 さすが、ラフファイターです。

「レディゴー……………」

 言うなり、ジャックがページ見開き全力パンチを打ちこむ。
 便所の澱んだ空気を掻き回す凄まじい拳がブっ飛んでいく
 よけるだけで冷や汗が出るこの一撃をなんとかかわし、シコルスキーは便器を踏み台にジャンプする。
 狙いは天井のスプリンクラーだ。
 スプリンクラーを指で掴み、天井にぶら下がったまま蹴る
 身長で負けていても、地の利を活かし高い打点からの意表を突いた蹴りだ。シコルが最初の攻撃を決めた。

 が、まるで効いた様子が無い
 ジャックは蹴られた頬をさすり余裕の態度を見せる。

 むしろ蹴ったシコルスキーの表情に余裕が無い。天井にぶら下がったまま冷や汗をたらしている
 やっぱ、ダメっぽい

 そして、相変わらず打撃を避けたりしないジャック・ハンマーは巨大(でか)くなった身体を活かした攻撃を繰り出すのだろうか。
 様々な予感をはらんで次回に続く。
 ただし、次週はお休みです。

 残った死刑囚の3人は、今の所ちゃんと活躍できていませんが、まだ活躍のチャンスはあるのでしょうか。
 ずいぶん長い間沈黙したままのオリバにそろそろ出てきてもらわないと、盛り上がりが弱くなりそうです。
 でも、しばらくはジャックが暴れてくれそうなので、今後の展開が楽しみなのですが。

 果たして、シコルスキーはジャックの牙から逃げ切る事ができるのか!?
 そして、ドイルの生死は!?
 柳はもう、ギャグキャラとしてやっていくしか無いのか?

 これじゃ、なんか、後ろ向きな活躍ばかりだぞッ!?
by とら


2002年10月17日(47号)
バキはお休み

 バキ無しのチャンピオンは立ち読みで済みそうな気がする今日この頃です。
 それでも一応買っていますけど。

 以前書いた6連新連載の傾向ですが、今週「SAMURAIMAN」が打ちきられたので、方向性が見えてきました。
 ギャグ・スポーツ・ファンタジーの各分野において、正統チャンピオン路線の3作品が打ち切られ、今までとは違う作風の3作品が残りました。
 ここまで綺麗に分かれるとは思っていませんでしたが、これはチャンピオンの読者傾向が今までとは違うものを求め始めたと解釈して良さそうです。
 つまり、正統チャンピオン路線の作品は今後減って行くのでは無いかと思われます。
 ところで私は漫画雑誌の人気アンケートほど信用ならない物は無いと言う偏見を持っているのですが、実際のところはどうなんでしょうね。
 グラップラー刃牙も連載当初は人気投票で半分より下だったらしいのですが、今はどうなんでしょうか。

 次号の新連載は「ストリート系リアルバウト!」と銘打っているのでバトル系のようです。ただ、「ストリート系」と言う部分が、今までのチャンピオン系バトル漫画とは一味違う感じがします。
 具体的には「キャラメルリンゴ」のように他の漫画のパクリっぽい話にするとかッ!(ォィ
 まあ、パクるにしてもどの雑誌のどんな漫画をパクるのかと言う問題があって、読者層は近いのかとか、作家を取られて恨んでいるのかとか、そう言う細かい所にも気になる部分があります。
 まあ、売れている漫画は扱っている「題材」がヒットの原因ではなく、作品そのものが面白い訳で安易に囲碁漫画とかを始めても人気出ないでしょう
 パクったパクられたは世の常なので、それよりもちゃんと面白い作品である事の方が大事だと思います。

 そう言う意味では「エイケン」とかは奇形巨乳漫画と言う表現の可能性を地動説並の衝撃で切り開いている作品ですし、これからはむしろパクられる側ですね。アニメ化も決定した事ですし。
 個人的には余り奇形巨乳漫画が増えると生理的にキモいんで、流行しないで欲しいのですが。

 元々、チャンピオンはバトル物が多い雑誌ですし、今は格闘技ブームなんだから、刃牙・最大トーナメント編の雰囲気をパクった作品を打ち出すぐらいのムチャをやっても良いのではないかと…

 ところで肝心のバキですが、読者の意表を突くためにシコルが勝つのではないかと言う意見が結構あります。
 ただ、シコルの忘れかけていた最終兵器である天井張り付きを、いきなり使っているので後は負けるだけと言う気がするんですけど…
 特技を生かした攻撃と言っても、あまりバリエーションが無さそうです。
 退屈な長編小説を朗読してジャックを眠らせるとか、そういうトリッキーな攻撃しか思いつきません。
 そう言う事をすると、仕掛けた自分が眠って天井から落ちると言う罠があるかも知れませんが。
 他に、シコルスキーの特技といえば…………、放尿デスカ?

 なんか、シコルスキーって心底色物キャラだったんですね

 もう、いっそうの事、シコルスキーは全部で12人の兄弟がいて、シコルスキー・プリンス(略してシコプリ)として、天井に張りつくのが大好きな12人のシコルスキーの物語にでもしちゃった方が良いのかもしれません。
 でも無駄に人数が増えても、たぶん端から順番に噛まれていくのであまり意味はなさそうですが。

 もう1人の生き残り柳ですが、バキと闘っていた時のあれほど読者の期待と人気を集めていたのに、八つ辺りでドイルに喧嘩を売り始めると人気が急落したようです。
 敗北は獅子を蚊トンボに変えると言う実例でしょうか。
 やっぱり、柳は渋川先生と闘うしかなさそうです。

 ところで、死刑囚編の鍵を握って居るらしいジャック母のジェーンさんはいつ登場するのでしょうか
 範馬の遺伝子を持った強化兵なんてネタはバキには出てこ無いだろうけど、今後の展開を考えると新手の敵キャラがどうしても必要っぽいですよね。
 まあ、とりあえずオリバが居るのでしばらくは安心なんですけど。

 それでも、1番の問題は主人公(とその彼女)をどう処分するかと言う問題です。。
 あのバカップルはまだ街中をお姫さま抱っこで疾走(はし)っているんでしょうか
 そして、お父さんはそれを仁王立ちで暖かく見守りながらストーキングしているのでしょうか。
 もう1人の息子であるジャックにも構ってあげて下さい
by とら


2002年10月24日(48号)
第2部 第143話 闘争領域(ファイティング・エリア) (523+4回)

 シコルスキーの死亡まで、あと何回?
 そんな読者の不安も知らずにシコルスキーは天井にぶら下がって勝ち誇る。
 便所の床をたっぷり踏んだ靴で顔面を蹴る屈辱プレイを成功させたのに、ジャックは平気な表情をしている。
 こ、この男、衛生観念が無いのかッ!?
 さすが獄中生まれは精神的タフネスさが段違いだ。

「たいそうな指の力だが……………」
「そんな状態でいつまで―――――」

 シコルが蹴るッ

 いつ蹴りの間合いに入ったの? って感じですが、とにかく蹴った。
 だが、ジャックの頬をかすっただけで避けられた。
 相手の意表を突く、ぶら下がった状態での蹴りだったが、同じ攻撃を2度繰り返しては通用しない
 ドカベンでも「山田にド真ン中を2度続けたら、ホームランだ」と言ったセリフは良く出てきます。ワンパターンは失敗のもとです。
 でも、「まさか3球ともストレートなんて」とか言って三振する事も多いですよね。どっちが正解なんだろ。

 ところで、公共の場で闘っているだけに、一般人が迷いこんで来たら大変です。
 100kgを超える体重で天井に張り付いている変態と身長2mを超える怪物が喧嘩しているのを見た瞬間に膀胱中の尿を1滴残さずこぼす事でしょう。

「よし………………ワカった」
「そのままでいい……………………」


 ―――――――ッッ
 奇しくも弟であるバキがシコルスキーに対して言ったセリフ「そのままだ」「フリチンのままでいいんだよ おめェは」に近い物があります。

 このセリフを聞いたシコルスキーは、パンツをはくことも許されず、バケツをかぶせられて、睾丸を潰された苦い過去を思い出したのかもしれません。
 しかし、改めて書いてみると、かなり常道を逸したバトルですね。

 あくまで天井にへばりつく事にこだわりを持つ変態に対して、ジャックは説得するのをあきらめた。
 バカと煙は高い所が好きなんだからしょうがない。
 もはや処置なしだ。
 せっかく背が伸びたんだから、高い所にいる敵を倒すのは新しい肉体のデモンストレーションにふさわしい。そんな事を考えていたりして。
 まあ、天井にくっついたままでは移動もできませんし、普通なら不利ですね。
 もっとも普通の人は天井にへばり付いたりしませんけど。

 ジャックはバキの格闘士に特有のやや前かがみの体勢を取り「ユラ…」と前進する。いや、前かがみじゃ、高い所に届かんて。

 対するシコルスキーはぶら下がり状態から蹴りを放つ。

 足を掴まれました。あっさりと。

 ヒット → よけられる → 捕まる、と蹴るたびに結果が悪くなっています。もうちょっと物を考えて攻撃しないとマズイって。

 ここからは、お仕置きタイムの始まりか?
 この状態でシコルスキーにできることは、変な悲鳴を上げたりして笑いを取るぐらいだ。

「………………ッッッ」

 良いリアクションが思い付かなかったためか、シコルスキーは必死で抵抗する。
 踏ん張る。投げられないッ!
 指先でスプリンクラーをつまんでいるだけにも関わらず頑張っている。シコルスキーの全体重とジャックの引く力を支えている
 なんと言う指の力だ。なんて丈夫なスプリンクラーだッ!

 そこまでしてぶら下がる価値があるのか、理解に苦しみますが、とにかくシコルは必死だった。
 捕まれている足とは反対の足で、ジャックの顔面を蹴る。蹴る。蹴り続ける。
 反動でスプリンクラーを止めるネジがゆるんでいくが、それでもシコルは蹴るのを止めない。
 まるで聖域を守ろうとするかのような必死の抵抗だ。

 だが、範馬の一族は打撃を受ければ受けるほど強くなる
 ジャックの筋肉がうなる
 前足を踏みこみ、後ろ足で蹴り、上体ごとぶつけるようにして放った右正拳がシコルの腹にめり込んむ。
 全身の筋肉を捻って生み出した一撃が見開きで決まった。
 衝撃が体を貫通するような爆発的攻撃で、命綱であったスプリンクラーのネジは吹っ飛び、シコルスキーは便所の床を転がっていく。
 まるでコントの小道具のようにさり気なく配置されていたバケツとモップにぶつかりながらも、シコルスキーの右手はスプリンクラーを握ったままであった。
 よっぽど、気に入っていたんですね、スプリンクラー。

 スプリンクラーが破壊され、天井から水が噴き出た。
 大量の水でごまかしているが、シコルが大量のゲロを吐く。
 せっかくナイス・リアクションをしているのに背景に同化して目立っていない上、マックシングというゲロ吐きの横綱の前ではあまりパッとしません。
 いろんな意味で、たまらず便所からシコルスキーは飛び出した

 一方、便所の外ではごく普通の日常が続いていた
 電話ボックスから彼女に電話をするナンパな男がいる。わりと日常的です。
 少し、揺れがおきたようです。地震でしょうか。たまにあります。これも日常の範囲内です
 電話ボックスの中にびしょ濡れのロシア系白人が入ってきました。いきなり、非日常の世界に突入しました。
 日常的なシーンが1ページも持ちません。非日常的な現象が当たり前のように起きるのがバキワールドです。
 油断すると、虚ろな目をしているシコルスキーが乱入してきます。エレベーターや、高速道路も危険です。

「ショウちゃん……?」
「??………ショウちゃん…?」


 電話の向こうでは日常が続いているようですが、電話ボックスの中はすでに魔界と言うか魔空空間です。
 さらに、びしょ濡れのジャックも入ってくる。
 電話ボックスと言う限定された空間に男が3人
 全部で300kgはありそうな雄が詰め込まれています。

「どうしたの?」

「イヤ…」
「どうしたっつ〜〜〜〜〜か……」


 そりゃ、説明に困ります
 次回、電話ボックスでの恐怖の限定空間バトルが始まるッ!?

 はっきり言って、この闘いは消化試合のようなものだと思っていたのですが、始まってみると天性の芸人シコルスキー変なプレイにも素直に付き合うジャックのスタイルが噛み合って、トンデモ超絶バトルになっています。

 シコルを殴りたいだけなら、外からガラスごと殴ればいいんですけど、わざわざ電話ボックスの中におじゃましちゃう所がお茶目すぎ
 あの2人はどうやって闘うんでしょうね。狭い所だから、打撃は不利っぽいんですけど。
 烈なら寸勁とか使いそうですが。
 ジャックもいつの間にか寸勁使えるようになっていたりして。

 普通に考えれば、握力を生かした攻撃をシコルがして「どうだ手も足も出まい」と勝ち誇った所で「だが、歯は出るぜ」と噛み付きのカウンターが炸裂すると言うのが基本だと思います。
 まあ、安易な予想通りにはならないでしょうけど。

 とりあえず、今回巻き添えくったショウちゃんの無事を祈ります
 たぶん電話ボックスは木っ端微塵になるんでしょうけど。

 ところで「天井にぶら下がった状態では蹴りの威力が半減されるのでは?」と言う疑問があります。
 蹴りに限らず、打撃は下半身の踏ん張りが重要です。
 指だけで支えている状態では蹴った反動で、威力が逃げてしまうでしょう。
 と、先週まで思っていましたが、今週の無駄にすごい握力からすると、実は天井に張り付いた状態でも十分な攻撃力を出していたようです。
 もちろん、十分とはシコルスキーの実力からすると十分と言う意味で、ジャックを倒すのに十分と言う意味では無いのがポイントですが。

 どうせなら、ジャックにはシコルスキーに対抗して歯だけでスプリンクラーにぶら下がって欲しかったです。
 もちろん好きだらけなんで、攻撃はかわせません。

 次回のもう1つの予想ですが、シコルを倒す寸前のジャックは背後から何者かに斬りつけられる。
 ドイルの見送りにも行かず、ジャックへの復讐を狙っていた烈海王であった。
 烈の青龍刀が走るッ! 「キサマは中国武術を嘗めたッッッ」
 いや、それは私怨だ…
by とら


2002年10月31日(49号)
第2部 第144話 化物 (524+4回)

 いいんだ、ショウ君。君は好きなだけ失禁していい。その資格が十分すぎるほどある。
 電話ボックスの中でデカい外人2人を相手にしようと言うのだ。脱糞しようと誰も文句を言うまい(絵的にはともかく)
 そう思っていたら、「嬲(なぶ)る」と言う文字を思い出した。

「どーしたの??」
「急に黙ったりして――――――――」
「ナンカ変…………」
「イイオンナが通ったンでしょう」


 受話器の向こうでは日常が続いている。
 だが、こちら側ではすでに退屈だけど平穏な日常は終わっていた。
 電話ボックスの中は、修羅場だった。いや、地獄かな。格闘地獄。シベリアブリザードよりも恐ろしいってヤツ。
 狭い地獄で2人の戦鬼が睨み合っている。
 1分前のショウくんには、電話ボックスの中で全身ずぶぬれの外国人とおしくらマンジュウするなんて予想できなかっただろう。

 平然としているようだが、ジャックもこの狭い空間にシコルスキーが逃げこむとは思っていなかっただろう。
 この狭い空間では、シコルスキーお得意の張り付き殺法も使えないし、あんまり有利とは思えないが、シコルスキーにはそれなりの計算があるのだろう。

「ここならサイズの差はハンデにならない」
「むしろ…」
「不利なのはそちら…」


 ダメだこりゃ…
 キミ、駄目ッ! 本ッッッッ当〜〜〜〜に、ダメッ!

 ハンデがあるのはサイズではなく、パワーです
 分かりやすく日本語で言うと「力」だ! あ、ロシアの人だっけ。
 刃牙は基本的にパワーが無いとジェットコースターから落としてもらう事すら許されないシビアな世界だ。落とされて嬉しいかは、別問題だが。
 金竜山の小指を取って大喜びしている本部レベルに勘違いしている。
 ジャックを見上げる表情も駄目そうなうすら笑いで、駄目オーラが出まくっている。

「ちょっと聞いてンのォ?」
「ショーくん」

 その声が合図であったかのように、濃密な空気が爆発する。

 ドン
「おわッッ」


 ショウが絶叫した。電話ボックスの中が真っ白な光に満たされた。
 まるで内部で閃光弾を爆発させたような光が電話ボックスのガラス全面からほとばしる

 天地を揺るがす爆発のような攻撃だった。
 小説ならそう表現するであろう描写を、そのまま絵で表現するのは板垣恵介の真骨頂と言えよう。

 泣きそうなほど顔を歪めてシコルスキーは精一杯の力でチョップブローを叩きつけた。
 グラップラー刃牙300話でジャックがロシア人のガーレンに決めた技を、今度はロシア人のシコルスキーに決められる。なにやら因縁を感じます。
 そう言えば、300話は格闘地獄の始まりでもあります。なんかシンクロニシティーだ。

 なんにしても、役的に崖っぷちにいるシコルスキーは必死だった。
 狭い空間を物ともせずに、今度は下からアッパーカットをブチ込む。

「ちょッッ」
「チョットまって…ッッ」

 2頭の怪物に挟まれているショウくんは頭を抱えてへたり込む。
 頭上では壮絶な打撃戦が始まっているが、足元にはまだ空間が空いていて、ちょっとだけ安心だ。

「ひィィィッッ」

 シコルスキーが今度は肘を撃ち込む。
 狭い間合いでは肘は有効で強力な攻撃となる。
 必死な形相で肘を打ちこむシコルスキーに呼応したのか、ショウくんも絶叫する。

 シコルスキーは血管を浮かせてヒジを休まず振り下ろす。
 スプリンクラーの水でズブ濡れなのだが、必死に闘っているから汗もかなり混じっているはずです。
 足もとにいるショウくんを圧迫するようにジャックに迫り、至近距離から重爆を次々打ち込む。
 さらにジャックの頭を捕まえ、膝蹴りをアゴに決める。
 ダンスのような華麗なステップで膝を突き上げる
 あまりに見事に蹴り上げているので、なんか楽しんでいるようにも見える。
 ちょっと気合を入れすぎているので、ショウくんの体をかすめるような軌道になっているのもポイント高い。
 電話ボックスを激しく揺らす怒涛のシコルスキー・ラッシュだが、例によってジャックには効いていない
 ゆっくりと拳を握り締めて力を溜めるジャック。
 蹴られている事を意に介さず、バズーカー砲のような右拳を突き出す。
 だが、狙いが外れ、電話ボックスのガラスを突き破っただけだった。
 思わずジャックは汗をかいた。いや、まだ水が乾いていないだけかもしれない。でも、(あっちゃ〜、パンチ外しちゃったよ…。しかたないじゃん、手が伸びたのにまだ慣れてないんだから…)と内心では思っていそうだ。

(む………ッ 無理だ)
(こんな化物……ッッ)

 シコルスキーは逃げ出した
 今まで閉じられたままだった電話ボックスのドアを開けて外に飛び出そうとする。
 ちなみに、その時ショウくんを突き飛ばしてしまったため、ショウくんは逃げ出すチャンスを失った

 勇次郎とオリバの2人に喧嘩を売った人間とは思えない弱気な発言だ。
 たった一発のパンチで逃走を選択してしまうとは、かなり人生守りに入っている
 バキに股間を蹴られ失って初めて、健康の重要性を学んだのだろうか。

「敗(ま)けたくない!!!」

 格闘地獄と化した電話ボックスから必死の逃走を図ろうとするシコルスキーであったが、外の土を踏む前にジャックのアッパーカットを喰らってしまった。

「助けッッ」


 ゴッ


 ショウくんの悲鳴が空しく響き、ジャックのスーパーアッパーに電話ボックスが浮いたッ!
 う、浮きますか〜〜〜〜!? 電話ボックスがッ!
 水面を走る以上に、解説できないっスよ、コレ。

 理屈はともかく、コンクリートの基盤ごと宙に浮き、電話ボックスはそのまま横に倒れた
 ショウくんはシコルスキーの下敷き
になりました。
 シコルスキーは一撃喰らっただけで早くも虚ろな目をしている。
 それにしても、この人は虚ろな目が似合います

「ごめ…」
「ごめんなさいッッッ」
「ごめんなさいッ」
「ごめんなさいッ」

 別に悪くないし、誰も責めていないのだが、ショウくんは壊れたように謝りだした。
 気持ちは、よ〜〜〜〜〜くワカる。
 でも、無駄です。
 この2人は、そもそもショウくんの存在自体を気にかけていません
 もし、気にかけているとしたら、この状況はワザとだ。たまたま、巻きこまれた不幸な一般人で遊んでいるのだ。謝っても、止めてくれません。
 やっぱ、彼女に電話していたのが気に障ったのかもしれませんね。

 ショウくんを下にひいたままのシコルスキーにジャックが追い討ちをかける。
 寝転がったままでの右ストレートがシコルスキーのアゴに炸裂する。
 こんな体勢でも化物には関係無い。その衝撃で、寝ていた電話ボックスが起きた
 今度は天井を下にして起き上がった電話ボックス。
 それは見事な倒立でございます

「カンベンしてくれェェッ」
「カンベンしてくれェェッ」
「オレが悪かったァァッ」

 ショウくんの絶叫で今週は幕を閉じるのだった。


 今週の電話ボックスアクションを説明するのはかなり大変です。天内ジャンプ・コンクリ踏みぬき事件や、バキ懸垂・鉄棒破壊事件ならなんとなく理由がつけられそうなんですけど、今回はさすがに…
 でも、面白いから、良しッ!
 理屈だけ通して小さくまとまるよりも、理屈はぶっ飛ばしてハチャメチャな面白さを追求した方が個人的には好きです。

 さて、シコルスキーの寿命はまだ残っているのでしょうか。
 このままでは惨めすぎるので、まだ隠し芸を持っていそうです。
 例えば睾丸を責められても「俺のそこはすでに急所では無い! むしろ、無くしたッ!と息巻いてみるとか。いや、ダメだな。


 なんか妙にショウくんに親近感と憐れみを感じると思ったら、彼の絶叫って「エロバキ」を読んでいた時の自分の反応と同じなんですよね。
「ごめんなさいッ」「カンベンしてくれェェッ」「オレが悪かったァァッ」「救命阿(ジュウミンヤ)ッッ!!」
 ……なんで俺が謝らなくちゃいけないんだ。
by とら


2002年11月7日(50号)
第2部 第145話 化物(2) (525+4回)

 電話ボックスに男3人を詰め込み、逆さまにひっくり返してシェイクする。これは、罰ゲームでは無いッ!
 今回サブタイトルに丸囲み数字が使われていますが機種依存文字なので『(2)』と表記しております。

 電話ボックスの天井であるべき面が、今は床になっている。
 その床(?)に腐った魚の目をしたシコルスキーが額を撃ち付けて出血している。
 この人は本当に虚ろな目が得意ですね。

 逆さまになった電話ボックスの中で3人の男が、重力に引かれるまま底に集まる。
 さっきまで元気に悲鳴を上げていたショウくんも気絶しています。恍惚とした表情で気を失っているのが不幸中の幸いかもしれません。
 精神が壊れて廃人になっていなければ良いんですけど。
 位置的にシコルスキー+ジャック足して200kg以上の肉の下敷きになっていそうで心配です。と言うより、下敷きになったから気絶したのかも。

 静かになった電話ボックスからジャックが出て来た。出て来たのはジャック1人だけだ。
 やっぱり中はエラい事になっていたようで、慎重に片足ずつ外に出してゆっくり出てきています。
 この分だと残されたシコルスキーとショウくんは絡まり合ってほどけなくなっているかもしれません。

 そこへブラックスーツをビシッと着こなした3人の男が登場する。
 何者だろう?
 鎬紅葉の関係者であれば医療関係者なのだろうが、何か雰囲気が違う。荒っぽいイメージがあるし、なぜかロープを持っているからだ。
 シコルを拘束する気か? なら、警察関係者? 神心会は今回関係なさそうだと思うのだが…。
 そう思いつつ、ページをめくると、3人の黒服男が手際よく縛っている、電話ボックス
 えっ、そのまま縛っちゃうの?
 ねぇ、ショウくんをちゃんと外に出した?
 などと思っていると、1人の男がジャックの横に現われる。

「アンタほんとにデカくなったなァ…………」
「190センチの俺がはるかに見上げている」
「明らかに斗羽さん以上だ」


 いまだ消えぬ闘魂ッ!
 いまだ消えぬ傷痕の残し復活 アントニオ猪狩ッ!
 シコルスキーに付けられた傷跡を人目にさらし、偉大なるプロレスの巨魁が帰ってきた。
 そうなるとシコルスキーを拉致しようとしている黒服の男達は猪狩の配下なのだろう。なんとなく感じた暴力的な雰囲気は、ボスが物騒な人だからだろうか。

 ところで、ジャックの身長ですが第115話で烈が210cm以上あると言っていましたが、猪狩も斗羽(209cm)よりデカいと太鼓判を押してくれています。
 鎬紅葉は第116話で伸びたのは20センチと言いきっているので、193cmから213cmに伸びたのでしょうか。

 身長を気にしていると言うことは、猪狩さん、さり気なくジャックをプロレスにスカウトするつもりなのでは?
 デカいだけじゃなくて身体能力も折り紙付きですからファイターとしては申し分無い。ただ、性格がエンターテイメントに微塵も向いていないので止めた方がいいと思います。
 ジャックの試合はとても放送できるものじゃありません。
 観客席にまで血の雨が降るに決まっています。

 ちなみに弟のバキも違う意味で放送できない試合をやりそうです。
 観客席にまで黄金の雨を飛ばすに決まっています。

「いずれにしろアンタの提案には感謝している」
「実際 このロシア野郎には煮え湯を飲まされてるからなァ」


 そう言いながらも猪狩はどこか嬉しそうだ。この後予定しているお仕置きタイムを想像して笑いが止まらないのでしょうか。
 それにしても、このシコル拉致を提案したのがジャックとは驚きました。
 ジャックはあんまり細かい事をしない男だと思っていたのですが、範馬の血が騒いでお茶目な事をしたくなったのだろうか?
 それともドイルを倒しそこねたので紅葉に文句を言われて追い出され、たまらず猪狩のプロレス団体へ保護を求めたのかも。
 プロレス団体なら体のデカい外国人がいても不自然ではないので隠れるのに最適だと思います。
 または、紅葉に「いかに弟と言う存在が萌えるのか」を延々と聞かされて嫌気がさして逃げ出したのかもしれません。ジャックはどう考えても嫌な弟を持っているので弟萎えでしょう。
 もしくは、手術代を払うためのバイトかもしれません。

 それにしても、日本と言う国は神心会と猪狩のプロレス団体に裏で支配されているのかもしれない。
 なんで、こんなに情報収集能力が高いのだろうか。
 警察よりずっと優秀ですね。

 などと言っている間に電話ボックスはトラックに運びこまれる。
 どう考えても電話会社の所有物を破壊して盗む行為だと思うのですが、猪狩が通れば道理引っ込むの世界ですから気にするだけ時間の無駄です。
 こうして、シコルスキーは拉致されていくのであった。

(揺れている…)
(この感覚……??)
(逆さになっているのか俺は……!!?)


 勝手に移動させられているシコルスキーは闇の中で意識を取り戻した。
 どうやら、猪狩の部下たちは電話ボックスを元の位置に戻さずトラックに載せたらしい。
 天地を元に戻してあげてもいいと思うのだが、消極的な嫌がらせを狙っていたのかもしれない。もちろん、猪狩の指示で
 意識を取り戻した時のシコルスキーの首が真横に曲がっていて、すごく死にそうなんですけど…。

 シコルスキーは闇の中で膝を抱えて体育座りをする。情けない表情がとってもチャーミングだ。
 今のシコルスキーはどうしようも無く落ち目だ。
 シコルはそろそろ気が付くべきだ。逃げ出せば逃げ出すほど状況が悪くなっている事に。また逃げだすと、今よりもっとヒドイ目に会うだろう。
 しかし、そんなシコルスキーでも輝いていた時があった。
 舘岡と猪狩の顔を切り裂いた時や、猪狩に小便をかけていた時だ。
 そう、シコルスキーが輝いていた時、常に傍らに猪狩がいたのだ。
 シコルスキーにとって猪狩は活躍をもたらす男神さまなのだ。

 これは最後のチャンスではないだろうか。次に訪れる苦難に立ち向かい猪狩をまたやっつけちゃた時、シコルスキーにはイロモノ死刑囚としての輝かしい未来が………
 あんまり、いい輝きじゃ無いかなぁ…。

(止まった)

 移動を続けていたトラックが止まり、その荷台が開けられる。
 光りと同時に、地響きのようなうなりが聞こえてくる。

 ……ォォオォオオォオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオォ
 まぶしく輝くスポットライトと、場内に響き渡るうなり声。
 熱狂・歓声が渦巻き反響する地下ドーム内。

 そこは闘いの聖地、
東京ドーム地下闘技場だったッ!

 ワアアアアアアアアアアァ


 世界で最も熱く下品で恐いもの見たがりの観客が早くも興奮の沸点を超えている。
 伝説となった地下最大トーナメントが脳裏によみがえるッッ!

 1度はこの場に来たことがあるシコルスキーだが、客の入った状態は初めてだった。
 かつて経験した事の無い、観客たちの狂乱と熱気に呆然とするしかなかった。
 そこに出てくるはジャック・ハンマーであった。

「続きだ」

 ラウンド2ゥ〜
 シコルスキーの悪夢はまだ終わっていないが、今週はここで終わり。
 と言うわけで次回はシコルスキー地下闘技場地獄変です。

 ところで、ショウくんですが、しっかり電話ボックスの中に入れられたまま運ばれています
 頭を下にして軟体動物のような器用な格好で気絶したままです。誰か保護してあげてください
 でも、あんな格好で長時間気絶しているのは不自然です。
 考えるに、あれは物凄く一生懸命に死んだふりをしているのでしょう。それこそ死を覚悟した死んだふりだ。
 だから、次週は命がけの名演技で「あれ、どこココ?」と言って起きたふりをすると思う。


 さて、皆が忘れかけていた猪狩の復活ですが、これは観客と言う武器を使用した上でシコルスキーにガチンコファイトを挑むつもりでしょう。
 肉体的には圧倒的に負けていますが、脅威的な人間力の爆発で逆転勝利を狙っているはず。

 個人的な予想ですが、まだ状況を把握しきれていないシコルに対して、いきなり猪狩が怒鳴りつける。
「この前は3人相手で不覚を取ったが、今日は1対1だ。この傷の借り、貴様に3人分払ってもらうッ!」
「――――ッッ! なんかその言いかただと、オレが3人掛かりで猪狩を襲ったように聞こえないか!? みんな、今のはブラフ――――――――」
「ダッシャーッ!」
「スゲェ、さすが猪狩だ汚ぇ〜〜〜〜〜ッッ!」

 問答無用で盛り上がるお客さん。話を聞いてもらえず、すでにシコルの心は折れていた。

 もしくは、今回「斗羽さん」の名前が出ましたが、それが伏線で2mを超える謎の覆面巨人レスラー(正体バレバレ)が助っ人にやって来る。
 伝説のTI砲が今よみがえるッ! って感じで。

 ショウくんが会場に運ばれたのも、伏線かもしれません
 斗羽さんの復活は無理としても、単独での戦闘能力に不安がある猪狩はジャックとタッグを組みます。
 地下闘技場の歴史上初(?)となるタッグマッチだッ!
 ジャックと猪狩のタッグに挑むのは、ロシアのクモ男・シコルスキー携帯不能男・ショウだァ〜〜ッ!

「俺とジャックも即席コンビだ。これで互角の勝負になるな」

「互角じゃ無ェ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」


 きっと、ショウくんの不幸はこれからが本番だ。
by とら


2002年11月14日(51号)
第2部 第146話 夢舞台(ドリームステージ)(526+4回)

 はっきり言って公開処刑
 地下闘技場のお客さんたちは、かつての古代ローマのように奴隷同士を死ぬまで闘わせたあの時代を再現させたいようです。
 右を見ても、左を見ても、360度全方位を血に餓えた大馬鹿ヤロウな紳士淑女が囲んでいる。新型の音声兵器の様な熱狂的歓声が会場を震わせる。

 大歓声の中でジャックにうながされシコルスキーはトラックから降りる。
 あっさり言う事に従っているのは、あまりの異常事態に脳が麻痺しているんでしょうね。ある意味、全然悪くないのに謝りつづけたショウくんと同じ状態です。

 さて、そのショウくんですが、電話ボックスに置き忘れられています。そして、トラックごと闘技場から退場していく。
 バキ史上最大の巻き込まれ役だったショウくんだけに、もう1華咲かせてくれるのではないかと期待していましたが、これで出番は終わりのようです。
 どう考えても寝違えていそうな格好のまま運ばれましたが、そのままの格好で駐車場にトラックごと放置されたりして。

 ショウくんの入れ替わるように、徳川光成が登場する
 やはり、この男が黒幕かッッ!
 地下闘技場戦士を闘いに巻きんだのはこの男だ。ごく普通の市民や警察官も数多く巻き込まれれいる。
 死刑囚たちが脱獄して日本を目指したのも、裏でこの男が手配したからと噂もある。

 今までは直接闘いの場に出てこなかったが、とうとう目の前でファイトを見たくなったようだ。
 紛争地域を諸国漫遊する水戸黄門とは違い、自分の所へ紛争地域を作る所がより巨凶って感じだ。徳川家は進化している。

「シコルスキーくん」
「大変な人気じゃな」


 横文字、つまり外国語で御老公はシコルスキーに語りかける。
 伊達に全世界の格闘家と交わっている訳ではなく、ちゃんと外国語が使えるようだ。

 ところで御老公は「人気」と言っていますが、動物園のパンダに対するそれではなく、闘牛の牛に対するそれだと言う事を忘れてはいけません
 お客さんは、シコルスキーが惨めにやられるのを見たいのでしょうね、たぶん。
 ごめん。俺も、見たいとちょっと思っている。

「シコルくん」
「きみは自由だ」
「逃げることも」
「戦うことも」
「そして敗北を認めることも」


 自由。そんな事をいうとアンチェイン=オリバがやって来そうです。むしろ裏で待機してそう。御老公なら、やりかねません。

 それだけではなく、「シコル」呼ばわりされて、ヤバ気なニオイを漂わせています。
 なんか、お客さんはかってに期待して盛り上がっているし、この状況で逃げたり敗北を認めたら「バカヤロウッ 試合開始前じゃねェか」「ふざけんな」「再試合だッ やりなおさせろォッ」とお客さんが暴動起こします。
 もちろん、御老公は「ワシもじゃ、ワシもじゃみんな!!」と言って煽ります。

「ルールは素手同志」
「いたってシンプルだがそれを守るも守らぬも自由」
「君の素性は観客へ説明してある」
「死刑囚と」
「みんな君の反則に期待しているぞ(はぁと)」


 やっぱり、ここはタチ悪いお客さんばかりです。
 期待していると言っていますが、反則技であっさり勝っちゃったら、やっぱり暴動が(以下略)

 そして、お客さんのほとんどは、「死刑囚だから、最悪殺してもモンダイなし」と思っているのだろう。

「出会ってしまった超雄同志」
「闘う場所は問題ではなかろうッッ」
「南極だろうが海底だろうが街中だろうが」
「そして地下闘技場(ココ)だろうが………じゃッ」


 あと、便所とか電話ボックスの中もね。
 とりあえずシコルスキーとしては、出会ったのでは無く拉致られたんですけど、と言いたいだろうが大歓声の前では余りにも小さすぎる声だ。

「我々は卑怯かなシコルくん」

 シコルスキーを追い詰める御老公の言葉にシコルスキーの表情が変化(かわ)っていく。
 最初は呆然とするだけだった。次に状況を理解し、戸惑い、苦しみ、そして笑う。

「わかったよ」

 シコルスキーも(おとこ)である。
 胸に熱い魂を宿している格闘士なのだ。
 中指一本拳を握り締めてシコルスキーは闘志を再燃させた。
 
「すぐに開始(はじ)めてくれ」

「シコルくん」
「もう始まっとる」


 ジャック・ハンマーはすでに服を脱いでいた。グラップラー・ファンにはお馴染みの黒のトランクス姿に変身し、当方に迎撃の準備あり、状態だッ!

 狂気とも言える情熱と執念によって鍛え上げられたジャック・ハンマーの肉体を見てシコルスキーは生唾を飲む。
 まともに闘っては勝てないと感じたのだろうか。

 ところでジャック兄さん、細い体は捨てたんですか?
 常識的には筋肉がある方が強いのだろうけど、高密度に細く引き絞られたダイヤモンドの筋肉と言う設定も好きでした。ピンチになったらまたゲロって痩せるのでしょうか。

 この巨体の男にシコルスキーは酷い目にあわされ続けている。
 便所でボコられ、電話ボックスの中でも勝てず、逃げようとして殴られ気絶して、今度は正面から挑むしかない。
 シコルスキー本日何度目なのかは忘れたが、またもや大ピンチだ。

「吉報だ」
「この試合…………」
「反則敗(ま)けがない」


 主催者に反則を促され、観客に反則を期待され、対戦相手にも反則を容認される。
 だって、反則しないとコイツ絶対勝てないもんそう思われているのだ。

「オオォオオォオオオ」

 シコルは咆えた。
 その叫びは、屈辱なのか、喜びなのか。ただ言える事は、闘う男の咆哮だと言う事だけだ。
 ジャック vs シコルスキー 次回、戦闘開始ッ!

 ………と思って油断していると、シコルの後頭部を猪狩がドロップキックで狙っていたりするかも。
 もちろん、シコルスキーはあっさりかわして、また猪狩の顔面を切り裂いちゃったりするんだろうけど。いきなり襲ってくるから思わず、って感じで。


 他の予想として、反則を仕掛けるのはジャックという展開も考えられます。
 なにしろ、最大トーナメント編では噛み付きとドーピングでブイブイ言わせていた人ですから。

 対するシコルですが、コイツも何か隠し技を持っていそうです。
 例えば、足の指の力が凄いとか、足の臭いが凄いとか。
 シコルスキー本人の引き出しにもう何も入っていないのであれば、ガーレンとタクタロフに応援してもらう。
「こんなことやったって強くなんかなれねェだろうけどよォ」
「おう」(← 肯定するなよ…)
「ハラショー シコルスキー!」
「ウラー! ロシア共和国ッ!」

「強くなれるさ………。絶対に強くなる………」


「勝負ありッ! 勝者 ジャック・ハンマー」
「担架だッ 急げッ!」

 ロシアと言う時点で、ダメっぽい。


 今回出てこなかった猪狩は、裏でイベントの演出をしてそうですが、まだまだ大暴れしそうな予感があります。
 何しろ作者コメントが「アグネス仮面再開。その面白さ恐るべし。」です。
 ビックコミック・スピリッツで連載中の「アグネス仮面」では猪木をモデルにしたマーベラス虎嶋が大暴れしているところです。板垣先生が対抗心を燃やし、俺の猪狩だって負けてねェッ! と大活躍させるかもしれません。
 例えば、こっそり落とし穴が仕掛けられていて、中にはジャックの弟の家から拾ってきた使用済みのティッシュがギッチリと詰まっていたりするとか。
 こんな所に落とされたらマジ泣きします
by とら


2002年11月21日(52号)
第2部 第147話 超雄対決!!(527+4回)

 見せてやれシコルスキー、ヤケクソになった人間がどれほど恐ろしいかをッ!
 刻み付けろシコルスキー、お前の行き様を、そして死に様をッ!
 ………………すまん。不吉な応援しかできん。

「オオオオオオオ」
「ォオォオォォォオ」
「ォオォオオォォ」
「ォオォォオォ」


 1ページ丸ごと5コマに渡ってシコルスキーが咆える。
 前回のラストから叫びっぱなしだ。
 咆え終わったシコルスキーはシャツを脱ぎ捨て、地面に叩きつける。
 乳首も描いてもらってセクシー全開で、なんか破滅的なハイテンションで、もうチキンランでも絶対にブレーキは踏まないと言うよりブレーキつけ忘れましたって感じの状態だ。
 ズボンとパンツまで脱ぎ捨てるんじゃないかと心配になるほどの迫力がある。

「ダヴァイ(こい)ッッ」


 シコルスキーは再び咆えた。
 両手を広げ、ページを見開きで使って、自分の全存在を使って咆えた。
 闇の生き物であった自分を、会場にいる人間全ての目に焼き付けるように咆えた。
 最近のチャンピオン読者はロシア人と言うと瀬口たかひろの描いているロシアン・メイドしか思い出さないんじゃないかと心配だし、あやつが「ハラショー」と言うたびに心の中で「セルゲイ」と付け加えているのは俺だけだろうか、と言う思いもこめつつ(推測)咆えた。

 極寒の国・ロシアからやって来た男の熱き叫びが観客を震わせた。
 会場中がどよめく。
 観客の期待感が直接空気を震動させてシコルスキーの体に響いてくるようだ。
 皆が期待している。シコルスキーと言う黒の格闘士に期待しているのだ。

「いい貌(かお)だ」

 血管を浮かせ、迷いを消したシコルスキーの貌を見てジャックは満足そうに言った。
 それでこそ潰す価値がある。やっと、好みのタイプになった。そんな意味がこめられていそうだ。

 シコルスキーが走った。
 超低空タックルを狙うかのような低い姿勢のダッシュから、接触直前で起きあがる。ロシアンフック気味の中指一本拳で2撃打ち込んだ。
 ガードをしたジャックの腕が切れている。
 その切れ味は鈍っていない。むしろ以前より鋭くなっているかもしれない。

 自分より背の高い人間に対して有効と言われるロシアンフックを応用して一本拳を打ち込み、意識を上空に向けさせて、ボディーに廻し蹴りを叩きこむ。
 背に抜けるような強烈な蹴りを喰らい、ジャックの体が「く」の字に曲がる。

 勝機はここだ。手の届かなかったジャックの頭が下がっている。
 シコルスキーはジャックの頭を掴み、ヒジを落とした。
 だが、狙いは頭では無い。首の根元、延髄へヒジ打ちを次々と叩きこむ
 延髄 … 大辞林第二版によると『脊椎動物の脳の最下部で脊髄の上部に続く部分。脳幹の一部。大脳・中脳・小脳および脊髄からの神経繊維が通り、一部の神経はここを中継点とする。また、心臓の働き、呼吸運動、血管の収縮拡張、唾液分泌、せき・くしゃみの反射などを支配する中枢がある。』となっている。
 つまり、生命維持に必要不可欠な部分である。
 そこをヒジで連打する。
 シコルスキーは表情を夜叉猿のように歪めて(ちょっと楽しそう)連打する。
 その表情に人間の知性は無い。もはやシコルスキーは獣であった。
 また「ふしゅる ふしゅる」と言い出すかもしれない。
 結局なんだったんだろ「ふしゅる」って。ただの呼吸音だったのか?

 更に、膝蹴りをアゴに決め、頬に拳を打ち込む。
 シコルスキーの猛攻にジャックの体がゆれる。
 そのスキを逃さない。
 追撃のドロップキック!
 下から突き刺すような蹴りが入った。

 だが、ジャックは倒れない。上半身は崩れても、足はしっかりと踏みとどまっている。
 シコルスキーも止まらない。
 夜叉猿に襲われ逃げ出した栗木くんを彷彿とさせる魂も振り落とすような必死のダッシュでジャックの胴にタックルをかます。
 そのまま押しこむ。身長でも体重でも圧倒的に負けているシコルスキーだが、止まらない。
 一気にジャックを柵まで押し込む。
 が、あっさり持ち上げられた
 恐るべき怪力だ。
 踏ん張る様子も見せずにジャックはシコルスキーを持ち上げた。
 持ち上げて……投げやすいように持ち替えていますね、ジャックさん。
 以外と神経細かいと言うか、お茶目さんと言うか…。これにはシコルスキーも冷や汗かいて見守るしかありません。2mを超える男の肩の上で色々と体勢を変えられるのは、かなり恐そうだ
 で、投げやすい体勢が決まったよう―――――― ン投げェ〜〜〜ッ!
 頭を下にしたままシコルスキーが一直線に飛んでいく
 そのまま柵に激突して、柵をブチ破る
 ジャックは轟然とシコルスキーを見下す。ダメージは無いようだ。
 たった1回投げられただけで、一気にダメージが逆転してしまったシコルスキーである。

「予想通り…………」
「まさに予想通りだ」


 なぜか不敵なセリフを吐くシコルスキーであった。
 セリフの真意は次号で明かされる、と良いな…。

 自分の攻撃が効かないのが予想通りなのか、圧倒的にパワーで負けているのですぐに逆転されてしまうのが予想通りなのか…。
 これって負け惜しみのセリフではなく、実は負けっぱなしなセリフなのかもしれない。
 この状況で、シコルが「お前の弱点は見切った」などと言い出しても信用できない

 またはシコルが投げられる時にさり気なくジャックのパンツのゴムを切っていてトランクスがずるっと落ちたりして。
 そこは、凄いモン見たがりのお客さんがいる場所ですから「ププッ」とか笑われちゃうわけです。
 すかさず「まさに予想通りだ。真ん中の足も延長手術すれば良かったかな、ジャック?」などと責めれば泣いて逃げ出してくれるかも。

 今のシコルスキーは必死に闘っていて、好感が持てます。でも、好感が持てたからと言って勝てる訳では無いのが、刃牙の世界です。
 特にシコルスキーには逆転を期待できる隠し要素が無い。
 後はジェットコースターから落ちるだけって感じの危険な芳香がします。

 とにかく、シコルスキーの「予想通り」はなんだったんでしょうね。
 次回、回想シーンに入ってシコルスキーの脅威の身体能力の謎が明らかになれば勝てる可能性が少しは出てくるんですけど、今の所かなりダメっぽいですね。

 予想通りに柵が壊れたので、破片を柵を武器にするとか、柵が壊れたのでそこから逃げ出すとか、なんか弱い予想しか出てきません。

 どう考えても不利なのに、シコルスキーが妙に元気に見えるのは、脳がヤケになっているからなのだろうか。
 だめだよ、シコルスキー。彼は食べられない
 むしろ君が喰われる側だ。
by とら


2002年11月28日(53号)
第2部 第148話 凶器攻撃ッ (528+4回)

 読者の「予想通り」に大ピンチなシコルスキーであった
 だが、ヤツは不敵な笑みを浮かべていた。

「知っていたさ…………………」
「こうなること……」
「これでいい……………」
「ここまではこれでいい……」


 投げられた時に頭を打ったのか?

 なんか、ボクシング関係者じゃないのに初代ヘビー級チャンピオン・サリバンが見えていそうな反応です。
 ………電波 届いちゃってる?

 そう思っていたら、シコルスキーは壊れた柵からこっそりと釘を引きぬいていた。
 さすが死刑囚だ。相手に柵を壊させて武器を入手する。ピンチをチャンスに変える見事な機転と言えよう。
 でも、……セコっ
 なんですか、ひょっとして自力では柵を壊せないからジャックの力を借りたんですか?
 そんな小さな武器(?)ではなく、もっと大きな武器を手に入れる努力をしろ。

 なんか、シコルスキーはやる事が小さい
 スプリンクラーにしがみつく事にこだわったり、狭い電話ボックスを闘いの場所に選んだり、こっそり抜いた釘を隠し持ったり、小さい事ばっかりだ。
 なんか小さくまとまっちゃっているよなぁ。

 小さな武器を手に入れて、小さな幸せを噛みしめているシコルスキーだが、目の前には巨漢の男による大砲並の攻撃が待っていた。
 上半身を極限まで捻って搾り出した渾身の横蹴りがシコルスキーのボディーに炸裂する。
 シコルスキーは宙を舞い、観客席まで飛んでいく。
 だが、転んでもただでは起きないのが死刑囚だ。観客席にいた白髪の老人が持つ(ステッキ)を奪い取る
 手に入れた獲物の長さは1mほどだろうか。釘より20倍はデカい
 いい武器を手に入れた。
 でも、シコルスキーは転びすぎているけど、拾うものは少ないですね。

「出たッ」
「凶器攻撃ッッ」

 杖を手にしたシコルスキーを見て、お客さんも御老公も大喜びだッ
 さすが、凄ぇもの好きの観客です。退廃したローマ国民の方がナンボかマシだ。

 それはともかく、これが地下格闘技場が東京ドームの下に移転してから初めての武器使用でしょうか。
 獣に対しての武器の使用は卑怯な行為ではない。武器を持ってこそ人間は獣と対等になれるのだ。
 つまり、武器の使用が許されているシコルスキーは、ジャックとの戦闘力差が獣と人間並みに開いていると判断されているようです。
 そんなカード組むなよ…。白帯の初心者とボ・ブサップを闘わせるようなものだぞ。

「フンッ」

 シコルスキーはせっかく武器を携帯したのに、ジャックにつまらなさそう表情をされて「フンッ」と言われてしまう。
 ジャックは、シコルスキーとの戦闘力差が獣と人間以上に開いていると判断しているようです。

 そんな態度を取られてもシコルスキーはめげなかった。杖を中段に構える。左手で杖の後部を握り、右手を添える。サウスポースタイルだ。

「槍術か………」
「やめておけ」


 銃ぐらいは持ってこないと勝負にならないと言うのでしょうか。
 それでもシコルスキーは諦めない。
 前足を踏みこみ顔面へ向け突く。これはかわされる。
 後ろ足を蹴り出し、胴へッ!
 踏み込みの前足をしっかり踏みしめ体重を乗せた基本に忠実な突きだ。シコルスキーはさり気なく武術の心得があるようだ。

 腹に当たっているが、シコルから見た打点は上段である。つまりこれはシコルスキーにとっては上段突きだ。身長差があるので無理に顔面を狙うのは得策ではないと判断したのだろう。
 この攻撃は最初の突きから2回目の突きへの連携にスキが無かったようだ。1撃目はフェイントで相手の注意を逸らし、本命は2撃目にあったと思われる。
 シコルスキーの右腕はパンチを打つ時のようにちゃんと伸びている。
 右手の握りを前にしたのは、ジャブの速さと利き腕(?)の強さを兼ねたかったからだろうか。

 板垣先生は中国拳法系の武術である太気拳の取材に行ったらはずが、立ち会う事になりボコボコにされた経験がある。
 板垣先生の著書である『格闘士烈伝』では『自ら手を出すしかないところまで、追い詰められてはいたが、真っ直ぐ攻めるのではなく、フェイントをかけて攻撃をしかけよう。(中略)フェイントをかけてから、一気に距離を詰め、渾身の力を振り絞ってボディを狙おう。』とある。

 このシコルスキーの攻撃はフェイントをかけて、ボディーを狙うと言う点で板垣先生の体験と共通している。
 もしかすると、板垣先生は当時の追い詰められた心境を思い出しながら描いていたのかも。

 攻撃の前にフェイントをかけると言うのはボクサーのサガなのだろうか。
 バキの展開もフェイントの展開に惑わされると本命のパンチを喰らってしまう侮れない。

「刺したァッ」

 シコルスキーの攻撃にお客さんたちは大興奮している。
 が、シコルスキーは驚愕の表情のまま固まっていた。
 杖の先がジャックの腹筋に跳ね返されている。
 御老公が満面の笑みを浮かべてそれを見ている。なんて、ジジィだッ。

「本物の槍じゃなきゃ俺の腹筋は通らねェ」

(そ……………
 そこまで鍛えているのか)

 とたんにシコルスキーが駄目な表情になった。今まででイチバン駄目な表情だ。
 杖も落としてしまう。ダメダメだ。

 だが、シコルスキーはまだ諦めていなかった。隠し持っていた釘を投げ付ける。
 ジャックの顔に吸い込まれるように釘が飛んで行く。
 だが釘は止められた。ジャックの歯で、だ。
 ジャックは歯で受け止めた釘を口の中に入れて咀嚼し吐き出す。釘だった物体はぐにゃぐにゃに捻じ曲がっていた。

(人間じゃねェ…………ッッ)

 なにを今更と言う気もしますが、このセリフでシコルスキーも栗木くんレベルになりました。なんか惨めです。

「選手交替だ」
「おまえにふさわしい相手だ」

 十分に戦力差を見せ付けたと判断したのか、ジャックが下がった。
 そして、替わりに出て来た男とは…

「環境利用闘法師範(マスター)――――
 ガイア 見参!!!」


 と、言うわけで幼年編から、ず――――――――――――――――っと再登場を待ち望まれていた(自称)大地の神・ガイアの電撃参戦で次回へ続く。

 どうも、シコルスキーは休むヒマも無く順番に殴られる運命にあるようです。
 しかしまあ、皆さんいい笑顔で登場してきますね。
 ガイアさんも実に嬉しそうに登場しております。
 ひょっとして、新しい人格を開発したのでしょうか?

 しかし、この密閉空間で環境利用闘法の使い道があるんでしょうか
 少ない資源をよりよく使うと言う点で、ガイアがより上手く釘を使って見せるのでしょうか。
 やっぱり、セコっ


 この調子だと、次々とお馴染みの格闘士がやって来そうです。
 もちろん第1候補は猪狩ですが、本部にも再登場してもらいたいものです。

「解説・驚愕・実況師範(マスター)――――――
 本部以蔵 見参!!!」


 シコルスキーはリアクション王としての素質は十分にあります。
 解説術も学べば、背景で驚く人として十分に活躍できそうです。

 でも、本部さんだと解説を始める前にシコルに秒殺されそうです
 勝てる、こいつには勝てるッ! とか言われて。
by とら


2002年12月5日(1号)
第2部 第149話 小さな怪物(モンスター) (529+4回)

 みんな覚えているかい? かつてオーガにも匹敵すると称された超軍人・ガイアの降臨だよ。
 オーガに0コマで倒されたのはナイショさ

「誰ェ? こいつ!?」
「こいつも死刑囚ゥ!?」
「大人か!?」


 忘れた、と言う以前に、誰もガイアを知らないようだ。
 良く考えたら「わずか5名ながら最少にして最強の実戦部隊」の存在は日本政府の極秘事項です。みんなに知られている方が問題ですね。

 アニメ版刃牙の作画も不安にさせた危険な世界情勢下では、特殊部隊の必要性は高くなると思いますが、わざわざ来てくれたのでしょうか。
 ひょっとすると、部隊が解散していてヒマなのかも。
 なにしろ、民間人の少年(13歳)にメンバーが順番にボコられて、その少年の父親にメンバーまとめてボコられた過去があります。その戦闘力が疑問視されたのかもしれません。

 初めて訪れた地下闘技場をガイアは興味深そうに見まわす。ガイアの事だ、さり気なく偵察しているのだろう。
 一方、御老公は伝説の超軍人の存在をすでに知っていた。さすがと言うべきであろう。

「この男が…………」
「ガイア」
「こんなやさ男が修行時代のバキを仮死状態まで追いつめたというのか……」


 修行時代のバキを追いつめた、この言い方は微妙だ。修行時代では弱そうに感じる。
 同じ修行時代なら、ユリーや石丸トレーナーも刃牙を気絶させ、追いつめている
 でも、「オーガにも匹敵すると称された」まで言っちゃうと、かなりウソになるので、さっきのセリフがベストなのだろうか。

「ジャックは!?」
「引っ込めェッッ」
「帰れ未成年ッッッ」
「出る幕じゃねェぞォッッ」
「軍隊オタクウウッッ」


 観客は見ず知らずのガイアよりも、新生・ジャックを見たいらしい。
 もの凄い勢いで罵声を浴びせ、物を投げつける。飲み物関係が多いのですが、さり気なく週刊少年チャンピオンが混ざっているのがポイントだ。角が当たったらかなり痛い。

 ガイアは小柄な上に年齢不祥な顔をしています。彼の正確な年齢はわかりません。
「グラップラー刃牙」17巻146話で1981年に20歳と読める表現があります。ただ、「バキ」の世界が西暦何年なのかわかりません。刃牙が13歳の時は1995年で、ガイアは34歳になります。バキが17歳の世界では38歳でしょうか。

 ここのお客さんはマナーは悪すぎるが、眼力は1流だ。迷彩模様のバンダナとシャツを着用しているのを見ただけで、ガイアを軍隊オタクと見破って(?)いる。

 観客が荒れに荒れているのでシコルスキーは不安そうな表情になる。
 自分も不甲斐無い闘いをしたら、こんな風に酷い言葉を投げつけられるのかと心配しているのでしょうか。
 それなら、予想は大当たりです。ヤジられないように頑張ってください。

 一方、自称・大地の神とまで言ってしまう自信家のガイアさんはブチ切れ寸前です。
 いや、切れました。

「アッ」

 武器にもなる自慢の大声で観客を威圧する。
 空気の震動が伝わり、天井からゴミが降ってくる。
 大勢の観客がいるのに無差別に音声兵器を開放するわけは無い。そう思っていました。
 しかし、先に牙を剥いたのは観客の方でした。
 敵相手にガイアが気を使う訳もなく、巻き添えがいくら出ようと容赦ありません。

「ハハ軽くやっても響くな………」
「屋内は………」

 とりあえずシコルスキーにはメチャ効きだ。
 聴覚は奪われた。視界も歪んでいるのかもしれない。呆然としたまま、口も開きっぱなしだ。ドロドロかな?

 親切なガイアは、シコルスキーの聴力が回復するまで待つ。
 この間、天井のスポットライトと三つ葉の葵が出ているだけのコマが1つだけ挿入される。このコマでどれだけの時間が過ぎたのだろうか。決して一瞬では無いと思う。
 ガイアは根気強く待っていたのだろう。

「聞こえるかい」

 シコルの回復を待ちくたびれたのか、ガイアさんは耳をほじっています。
 声をかけられただけなのに、シコルスキーはビックリしすぎ。全身が震動しています。
 ビクッとか擬音が入らないだけマシですが、ちょっとビビリ過ぎ

「ここは」
「なにを使って闘ってもいいんだって?」


 そう言って、手の横幅より大きな刃が付いているナイフを取り出す。
 老人から奪った杖や釘しか使えなかったシコルスキーとは装備が大違いだ。気のせいかシコルは悔しそうだ。と言うか、やっぱりビビっています。

 特に気負う事も無くガイアはナイフを投げた。
 ナイフはシコルスキーの耳をわずかに切り、そのまま選手入場の「朱雀」看板に刺さる。
 それを機に、シコルスキーが動いた。上体を低くして、突っ込む。
 ッドン
 銃声が響く。ガイアがシコルスキーの足元に銃弾を撃ち込んだのだ。
 シコルスキーは思わず、踊り上がるように飛び退る。だから、ビビリ過ぎなんだってばッ!
  いや、いきなり撃たれたらビビりますね、普通は。
 昔は防弾チョッキを着けていたとは言え、銃を持った猪狩をからかっていたフシがありますが、今のシコルはダメダメです。

 ガイアはシコルスキーを驚かしたことに満足したのか、銃を後方に投げ捨てた。
 前方に捨てなかったのは、シコルがダッシュして銃を拾っちゃったら、ちょっとシャレにならないからだろう
 そうなったら、銃を持ってムチャクチャ強気になるシコルスキーと、ノムラに変身して命乞いをするガイアの姿が見られたかもしれない。

「予(あらかじ)め用意したものを使うのは格闘の名に恥じる」
「環境利用闘法とは言わん」
「ここ…………」
「たった今 身を置くこの環境」
「この条件のみを利用する」


 確か「新・傭兵マニュアル完全版(著 毛利元貞)」には、素手で敵を倒す技術より、周囲の物を武器に変えるセンスが傭兵には必要だと書かれていました。
 環境利用闘法とはまさに戦場を生きぬく傭兵の戦い方なのだろう。
 でも、この地下闘技場には使える物があまりありません。
 と、思っていると、ガイアが腕を振り上げた。
 そこから里中のサブマリン投法もビックリのアンダースローで地面の砂をかきあげシコルスキーにぶつける。
 誰もが最初に思い付くであろう、砂を利用した目潰しだ
 環境利用闘法などと大層な名前をつけておいてやる事はこんなモンかよッ。
 だが、ガイアの狙いは違っていた。

「歯だッ」
「砂に混じった爪や歯がささってるッッ」


 砂ではなかった! 予想外の攻撃がシコルスキーを襲う!
 衝撃的な攻撃方法にショックを受けて、つい読み流してしまいそうですが、疑問が1つあります。
 歯が刺さってもあまりダメージ無いのでは?
 少なくとも致命傷にはなりませんよね。
 しかし、砂に歯が混じっている事を良く見ぬけたものだ。
 環境の把握と言う点では、やっぱり凄い人だ。

 そして、次回はどんな闘法が飛び出すのかッ!?

 なんでしょうね、本気でなにも思い付きませんが…。
 柵を自力で壊して、釘を引き抜くとか?
 シコルとやる事が一緒では、お客さんが暴動を起こします。また大声出して鎮圧するしか無いでしょう。

 結局、この状況だと無理に武器を探すより、素手で闘った方が早くて強いのではないだろうか。それを言ったらおしまいだが。


 今週のちょっとイイ話です。
 こちらに板垣先生の談話があります。
 この記事によると、無理をしてナイフの資料を買った板垣先生は「まだ給料日までこんなに日があるのに、こんなものを買っちゃって……」と奥さんに怒られたそうです。
 でも、役に立つ資料だったので資料を使うたびに「また、使っちゃったよ」と奥さんに言うらしい。
 掛けてもいいが、今回もナイフが出てきたので「また、使っちゃったよ」と言ったのだろう。
 ええ、掛けてもいいです。牛丼大盛り+卵ぐらいなら。


 それにしてもガイアは誰が呼んだのだろう。
 バキはイチャツクのに急がしそうなので除外する。
 やっぱり、御老公が怪しい。

 ガイアを知る人物に依頼して呼んで来たのではないだろうか。
 候補は3人いる。

 安藤さん、国松先生、ジェーンだ。

 安藤さんとレンジャー部隊は共に勇次郎に殴られた仲だ。ベッドを並べて入院していただろうし、そこで仲良くなっても不思議ではない。
 最大トーナメントに安藤さんは来ていた。そこで御老公はガイアを呼ぶ企みを始めたのかもしれない。

 国松先生は軍人に顔が効く。
 彼のツテを頼りガイアに連絡をしたのかも。

 ジェーンは傭兵繋がりだ。
 ただし、この場合だとジャックの願いで呼ばれた可能性が高い。
 ジャックはガイアがいることを知っていた。
 ガイアの環境利用闘法を学びたいと思って、ジャックはこの企みを考えたのかも。


 次回はガイアの環境利用闘法が炸裂してくれないと困るわけですが、何をどうやるんでしょうか。
 スポットライトの光を利用するとか(またはライトを消す)、響く音響を利用するとか、そのぐらいしか思い付きません。
 どっちにしても、地味な攻撃になりそうだ。
 でも、たまたま地面に落ちていた銃を利用するのは避けて欲しい。
by とら


2002年12月12日(2+3号)
第2部 第150話 未知なる闘法 (530+4回)

 ガイアは地下闘技場選手が落とした歯や爪を再利用して攻撃した。
 大地の神を自称するだけあって、地球に優しい男である
 かつてガイアは水を武器にした。
 水面にバキを叩きつけ、水を投げつける「水弾」でバキを苦しめた。

「それが砂ならばなお一層強力な―――――」
「ましてやその砂に爪や歯などの固形物が入り混じっているとなるともはや―――――」
「それは兵器」

 強肩外野手のバックホームのような強烈な投法だった。
 人間は体力面で野生動物に劣っている。だが、人間にはあらゆる生物を凌駕する身体能力がある
 それは遠投力だ。
 まあ、物を投げられる動物がほとんどいないだけなのだろうが、物を自力で投げ飛ばす能力は人間が誇れる物なのだ。(注:夜叉猿は例外です)
 その全生物の頂点を極める能力で、全ての競技の世界記録を塗り替えることだって可能と豪語する男がシコルスキーを撃ちのめす。
 砂に混じった歯や爪がスコルスキーの皮膚を破り肉に食い込む。皮膚を徹底的に痛めつけるこの攻撃は鞭打に似たダメージがありそうだ。
 観客に「まるでショットガンだッッ」と称された環境利用兵器の攻撃にシコルスキーは頭を抱えて背を向ける。やっぱり、マゾでないと耐えられないぐらい痛いのだろう。
 12月7日の「K-1 WORLD GP 2002」で、石井館長は相手に背を向ける奴は絶対に強くなれないと言っていましたが、シコルスキーも強くなれないのでしょうか…。

 なんにしても、シコルスキーは血だらになっていく。
 背を向ければ背を撃たれ、思わず逃げ出しかける。
 ガイアは一切容赦しない。更なる追い討ちで砂を投げつづける。

 この描写はドイルに嬉しそうに金票(ヒョウ)を投げつける烈海王を連想させます
 死刑囚の持つ危険性と狂気を、白格闘家が凌駕する瞬間だろうか。

「ウオォオオオオオオォオ」

 シコルスキーが咆えた。
 ガイアの攻撃にシコルスキーはしゃがみこんで身を丸め、当たる面積を最少にして耐え忍ぶ。
 無策ではあるが、頑張って踏みとどまっている。

「痛てッ」「ピッ」「こっちまで飛んでくる」
「まるで環境破壊ッッ」「ヒィッ」


 水の攻撃が「水弾(すいだん)」ならば、砂の攻撃は「砂弾(さだん)」だろうか?
 観客席にまでガイアの砂弾が飛び散る。
 液体(闘いの聖水・黄金水・尿)であれば受け止める事も辞さなかった最強の観客たちも、砂はカンベンしてくれ状態だ。
 大地の神を自称するガイアは地球には優しいが、人間が過ごしやすい環境は気にしていないようだ。環境には厳しい態度で臨むらしい。

 ところで「ピッ」ってのはどんな悲鳴だ? 萌え系の悲鳴か?(類例:「はわわっ」。小さい「っ」がポイントです)

 十分にシコルスキーを痛めつけて満足したのかガイアは一息つく。
 ついでに自分を未成年扱いし罵声を浴びせた観客にも報復ができたので、思い残すことも無いだろう。
 たっぷりと汗をかいたガイアはシャツを脱ぎ捨てた。

「いい汗をかいた」
「環境利用闘法………………」
「ここからが本番ッッ」


 これまでの攻撃で、シコルスキーの心は削られていそうだ。だが、ガイアにして見れば、これはウォームアップに過ぎなかったのだ。
 更にいびられるシコルにとっては迷惑な話ですが…

 ガイアは両手で砂をすくい上げ、宙にまき散らす。
 たちまち闘技場内は砂ボコリに覆われる。

「なに!?」
「砂遊びかッ」
「すげェ 砂ぼこりッ」
「やっぱり未成年」


 ガイアが何をやりたいのかサッパリわからない。これでは、砂遊びする未成年と思われてもしかたない。
 シコルスキーもガイアの珍行動の真意がわからず、思わず見守ってしまう。
 バキ世界では、変な行動を取り始めた人を呆然と見るのは良くない非常に良くない。
 いきなり歌い出したり、演武を始めたり、キャンディーと言い出したら危険です。…って全部同じ人の行動ですが。
 まあ、とにかく呆然と見ているだけだと次のページから延々と酷い目に逢うに決まっている
 さて、シコルスキーの場合は…

「いない!!!」
「本当に………………ッッ どこにもッッ」

「消えたぞッ」


 目の前で見ていたはずシコルスキーと、上方から見ていた観客が同時にガイアを見失った。
 あり得ない現象にシコルスキーが体全体でグルグル回って周囲を探る。自分のシッポを追いかけている犬のようで、ものすごくマヌケだ。
 そうやって見回していると、地面にぼんやりと浮かぶ足を発見すた。影がちゃんとある。

「フフ…」
「バ〜〜〜〜〜〜〜カ」


 砂の保護色の中でガイアが笑った
 あんたは映画の「プレデター」かいッ! と突っ込みつつ、今週は終わる。

 特殊部隊が行う偽装は隠れる場所に生えている木や草を使うのが基本らしい。つまり、砂漠であれば砂をかぶるのがベストの偽装になるのだろう。
 こう言う闘技場であれば、観客に偽装するのがベストか?
 いや、なんか違うなそれは。

 ガイアが行った保護色は、いい汗をかいたのがポイントだと思います。
 汗に濡れた体なので、舞い上げた砂がくっついているのでしょう。
 靴や服、バンダナにまで砂がついているのはちょっと不思議ですが。

 あと、あちこちで言及されていますが闘技場の砂は入れ換えていないのでしょうか。バキの聖水も混じっていそうで非常に嫌です。
 あと、斗羽さんが潰した車のガラスとかも混じっていそうで、かなり危険だと思われます。


 それにしても、舞い上げた砂ぐらいで姿が見えなくなるのだろうか
 普通に考えれば、ならない

 だが、シコルスキーは普通の状態では無い。直前まで砂で攻撃されている。
 だから現在のシコルスキーは砂恐怖症になっているはずだ
 ガイアが砂を舞い上げた時にシコルスキーはビビったはずだ。恐怖で無意識に砂を見ないようにしただろう。
 だから全身砂まみれの変態が近づいたとき、その姿を無視したのだろう。
 これは危険な状態だ。ゴールキーパーのくせにボール恐怖症になってしまったキャプテン翼の森崎くんぐらい危険です。
 シコルスキーは、ガイアの事が見えなかったのではなく、見なかったのだ。
 なんか、見なかったゴキブリはいないと思い込んで忘れようとする行為に似ている。
by とら


2002年12月19日
チャンピオンごとお休みなんだってばッ

 死刑囚編もそろそろ終わりが見えてきたので少しおさらいをしてみます。

 だいたい1話「シンクロニシティー」(99年9月16日)から23話「開始!!」(2000年3月2日)までが、死刑囚編の序章といえるでしょう。23話からが本格的なバトル開始となり、いきなり独歩の手が切られたりします。

 29話「2度目の…!!」(2000年4月13日)からがスペック編となり、花山との超絶バトルが繰り広げられます。
 そして、39話「男の本能」(2000年6月29日)で決着する。
 この頃は割りと短い闘いで終了しています。なんか毎週ダマされたと言い続けていたような展開だった覚えがあります。

 この後、ドイルや柳がバキと闘ってバキは敗北を知ってしまいます。
 そう、バキがヘタレ、運命の歯車が狂ってしまったのはここが始まりだったのです。
 ここで、柳が素直に負けていれば後の悲劇は起こらなかったのだ。
 済んでしまった事とは言え、うーん…。

 そして、48話「試合と喧嘩」(2000年9月7日)からがドリアン編の始まりとなる。
 ここからが、負けても負けない死刑囚編が開始されるわけです。
 結局、海王の称号って意味があったの? って感じになりながら83話「キャンディ」(2001年6月7日)でドリアン編が終了するまで、実に35話が経過しています。
 この辺は、コミックスで読むと丁度いいテンポなんですけど、連載中はややスローテンポと言う印象がありました。

 そして、その後は梢江ちゃんが拉致監禁されるなどショッキングなイベントが発生しつつ、3人に減った死刑囚をカバーするように新キャラの登場となる。
 タイトルもそのまんまで83話 「ミスターオリバ」(2001年7月5日)です。
 途中の92話「もう一人の男」(2001年8月9日)で勇次郎が登場するなどの波乱を見せつつ、この後はオリバ紹介編と言えるでしょう。

 少しオリバ編とかぶっていますが、106話「斬撃」(2001年11月29日)からがドイル編になる。
 なんかドイル編はつい最近の話だと思っていたのですが、1年前から始まっていたんですね。
 ドイル編もドリアン編と同じく、次々と地下格闘士が闘いを挑んで行くと言うパターンになります。
 これもドリアン編と同じく、途中でバキが発情して話の腰を折ったりします。死のXデーが段々近づいてくるという不気味な恐怖を感じる展開でした。
 途中の115話「約束」(2002年2月14日)でジャック兄さんが成長してカムバックします。
 そう言えば、この話の前半はバカップルが前田光世方式でHすると相談した回でした。ジャックにとってバキとは、人生と言う名の道に落ちている馬糞のような物でしょうか。
 関わりたくないけど、うっかり踏んでしまい中々取れない。ガムでもいいんだけど、イメージ的に馬糞です。

 まあ、そんなこんなでバキ特別編 SAGA[性]も始まったりしながら、129話「それぞれの敗北」(2002年6月13日)でドイルが敗北を認めて、ドイル編終了となる。
 ドリアン編ほどではないものの23話分も続いた事になります。エロバキがあったせいで余計に長く感じましたが、意外と短いものです。
 そして、間に柳を挟んで現在はシコルスキー編となっています。

 こうして、今までの流れを振り返ると、敗北した死刑囚は全員6月に敗れている事に気が付きます。6月の花嫁ならぬ、6月の死刑囚が敗北とゴールインと言うわけです。
 狙って6月にしたのか、偶然に6月になったか不明ですが中々面白い偶然です。

 そうなると、シコルスキーが敗北するのは来年の6月になるのか?
 いくらなんでも、シコルスキーの体がそこまで持つとは思えません。いつ沈んでもおかしくない泥の船のような状況です。
 やっぱり、途中で泣いて逃げ出すのでしょうか。
 とりあえず砂を利用した保護色は、全方位への無差別放尿でガイアについた砂を洗い流せば破る事ができそうです。問題はそれだけの尿が出るのかということですが…(そうか?)。

 そして、もう1人の死刑囚・柳の今後も気になります。
 名刀を傷つけられ、心も傷ついている柳ですが彼が求める物はどこにあるのでしょうか。またヤツ当たりをしそうですね。
 今までの経緯からすると、2回勝った事のある渋川先生に喧嘩を売って気分転換を図るのでは無いかと思われます。
 そして、渋川 → オリバ → 園田と順番にボテクリ回され、最後は意識の無い患者(ドイル)がトドメをさして、両者ノックダウンとなるのではないでしょうか。
 それにしても、海に落ちたドイルはどこで何をやっているのでしょうか。末堂や夏恵さんのように気がついたらいなくなっていそうで怖い。

 シコルスキーの命は風前の灯なので、2003年はオリバと柳がメインになるのではないだろうか。
 ジャックが出て来たと言うことは、母のジェーンがこの闘いにどう関わっているのかが明らかになって行くのだろう。
 ………ひょっとして、シコルスキー敗北の直前にジャックの回想が始まって、4ヶ月ぐらいジャック幼年編をやって6月にシコルスキーが敗北するのではないだろうか。
 それは、いくらなんでもやりすぎか…。
by とら


← 131話〜140話  ↑最新↑  151話〜160話→

メニューに戻る

バックナンバー(仮)    今週の餓狼伝(最新版)    今週のグラップラー刃牙(アニメ版)