スペシャルマッチ! (21)〜(25)


スペシャル・マッチ!(21)〜西田君の90分一本勝負、開始!作:MBO

<前回までのあらすじ>
今回から範馬グレートは「グレート」とのみ表記します。グレート巽なんかもいて紛らわしいとも思うんですが、ご了承ください。だって、めんどくせえんですもの。

小坊主「化け物オォォォォ!!!」
失禁して腰を抜かす小坊主。
そして、彼の眼前で繰り広げられている勝負は、それから僅か数秒でカタが付いた。
ザンッッ
小坊主のすぐ目の前に、白目を剥いて知念さんが倒れる。
刃牙「日に二度も負けるバカがいるか」
そう言い残すと、刃牙はくるっと背を向けて悠然と去っていった。
震えながら、小坊主は思わず呟く。
小坊主「しょ…勝負あり……」
ところで知念さんの顔が、尿の中に浸かってるんですけど。

さて同じ頃、やはり東京ドーム地下6階の一室で、ある計画が企てられていた。
部屋の中にいるのは3人。うち一人、神心会の加藤は、疲れた顔でベッドに横になっていた。
栗木「なあ西田、範馬グレートの正体は誰だと思う?」
西田「えっ? そんなのわかんないっス」
栗木と向かい合って座るのは伝統派空手の門下生、西田である。
栗木「そうだよなあ、分かるワケねえよなァ。……じゃあよ…」
と、ここで言葉を区切って栗木は何やらゴソゴソと鞄をあさり始めた。
中から出てきたのはなんと……!!
西田「グ、グレートマスク!?」
栗木「そうだ…もし俺が範馬グレートの正体だっつったら信じるかい?」
西田「! そ、そんな……嘘でしょ、栗木さん!」
慌てる西田の様子を見て、栗木はニヤリと笑った。
栗木「ああ、嘘だ。けど、よくできてんだろ、このマスク。カトーくんがわざわざ作ってくれたんだぜ」
そうか、それで加藤は…と、西田はチラリと横目で加藤を見た。
栗木「だから、今度はお前がガンバる番だ。な、西田」
西田「ハア?」
いま一つ事態が飲み込めない様子の西田。
栗木「わかんねー奴だな。いいか、次は決勝戦なんだぜ!! 決勝戦と言えば!?」
西田「と言えば?」
栗木「ドーンと盛り上がるに決まってんだろ! そして範馬ブラザーズが劇的に勝利する!」
西田には、ますますワケが分からなかった。範馬ブラザーズの優勝と自分が頑張るのと、何の関係があると言うのか?
栗木「覚めやらぬ拍手と歓声、沸きに沸く観客たち! そんな興奮の中で、範馬グレートはついにその正体を明かす!! どよめく一同! そう、マスクの下から現れた素顔は何と、あの伝統派の達人、栗木だった!!
西田「ゲッ」
西田にも、ようやく栗木の考えが解った。ニッコリと微笑む栗木。
栗木「……と、言うわけで西田君、君にはそれまで本物のグレートを引き止めて、時間稼ぎをして欲しいんだ。いや、心配いらない、俺の勇姿は後でビデオで見せてやるからさ」
西田は思った。「…やっぱ神心会に入っときゃ良かったなァ…」

西田の作戦は、まず本物のグレート(ジャック)を誘い出すところから始まった。
西田「あ、あの…すみません、こんな所まで連れてきちゃって……」
彼がグレートを連れてきたのは、地下6階の外れにある駐車場だった。ここは、予め栗木が調べていた場所で、場内アナウンスも聞こえない穴場なのである。もう決勝ははじまった頃かな、と西田は思った。
西田「…あ、あの、それで、そのう……」
グレート「………」
しどろもどろに話す西田。
彼が刃牙チームの控え室に行った時、幸いにも刃牙はいなかったので、割とあっさりここまで来ることが出来たのだが、それにしてもこの範馬グレートと言う男、ほとんど何も喋らないのである。色々と質問されて計画がバレたりするのも恐れていたが、逆にこうまで無口だと、マスクで表情が見えない事とも相俟って、返って不気味であった。
西田「(……ええ〜い、ここまで来て今更あとに退けるかッ! もうやるしかねえんだよォ!)」
そう自分に言い聞かせ、腹をくくった西田は、懐から一枚の色紙を取り出した!!
西田「お…俺、あなたの大ファンです! サ、サイン下さいッ!!」
(続く)



スペシャル・マッチ!(22)〜侵略者グレート!?作:MBO

<前回までのあらすじ>
範馬グレートに成り代わる作戦を考え付いた栗木は、門下生の西田に本物のグレート(実は正体はジャック)を呼び出させ、時間を稼がせる。果たして西田の運命は!?

西田「お、オレ、大ファンなんですッ! サインください!!」
色紙を差し出し頭を下げる西田。緊張のため、腕が震えている。
西田「(頼む、うまくいってくれ…!)」
グレート「…………」
範馬グレートは相変わらず無言のまま、西田の手から色紙をひったくると、サラサラとサインをはじめた。
西田「(や、やった、上手くいった…!)」
心の中で喝采を叫ぶ西田、が、喜んだのも束の間、グレートはサインし終わったばかりの色紙をなんとビリビリと引き破ってしまった!!
し、しまった、バレたか!?
覚悟を決める西田だったが、グレートの反応はまたしても違っていた。
グレート「サインを失敗してしまった、悪いがもう一枚持っていたらくれないか?」
西田「(…ほっ…なんだ、ミスっただけか)ああ、いいですよ、これにお願いします」
西田は心から安堵した。それに、色紙の余りならまだ懐に大量にあるのだ。失敗して時間をかけてくれたほうが、助かるというものだった。
そして、西田は気付かなかった。グレートが「失敗した」と言って破り捨てた色紙には、ついうっかり”じゃっくはんまー”と書かれていたことに。
グレート「できた。これでいいか?」
今度は間違えなかったグレート、西田にサインした色紙を返す。そこには超へたくそな字で”はんまぐれーと”と書かれていた。
西田「うわっヘボっ! あッ! いや、なんでもないです!」
思わず漏れた呟きを、必死にごまかす西田。
西田「ええと、それでですね……」
そして、ここからが本番だった。額に冷や汗を浮かべながら、何とか言葉を搾り出す。
西田「あの、友達もファンなんスけど、そいつの分ももらえますか?」

――3分後――

西田「あ、あの、次は友達のイトコの親戚の親友の分を……」
グレート「………」
西田「アハ、アハッ、い、いや皆グレートさんの大ファンでもう……いやっはっは……」
西田はもう、泣きそうだった。顔じゅう汗だくだくである。ただ、彼の心の中には、”栗木殺す”と言う念だけが渦巻いていた。
グレート「……お前、わざと時間稼ぎしてないか?」
そりゃバレるわな
もうだめだ、そんな思いで目の前が真っ暗になった西田、しばらくうつむいていたが……
西田「アンタなんで覆面なんかしてんだよォォッ!!」
グレート「……!?」
西田「アンタのせいで栗木さんが……」
泣きながら叫ぶ西田、もうやけくそであった。そして、グレートもそんな西田を見て、だいたいのことは察したようだった。
西田「刃牙が危ないッ すぐ行ってくださいっス!」
その言葉も終わらぬ内に西田に背を向け闘技場へ走ろうとするグレート、しかし振り返ったそこには、一人の男が立っていた!
風間「範馬グレート…」
その男は、完璧グラップラーの一人、プロレスリング風間!
風間「プロレスを嘗めるなッ 俺が相手だッ!!」もうワケがわかりません。

同じ頃、闘技場では決勝戦がはじまろうとしていた。
場内アナウンス「白虎の方角、ヘル・グラップラーズ! 青竜の方角、範馬ブラザーズ!」
が、しかし登場した選手たちを見て観客たちは驚いた!
アナ「おおっとこれはどういう事だー!? 両チーム、リーダーのみの登場ですッ!!」
そう、闘いの舞台に現れたのは刃牙と象山だけだったのだ。ざわめく観客たち。
象山「私の方は、もう始めてもらってかまわんよ」
象山がそういいかけた時、青竜の方向から範馬グレートが入場してきた。
刃牙「おっ、遅かったじゃんオヤ…」
刃牙が言いかけたその時!
ガシッ
なんと、グレートは刃牙に、突然スリーパーホールドを仕掛けた!!
アナ「ああ〜ッこれはどういう事だ〜!! 範馬ブラザーズ仲間割れか〜〜〜ッ!?」
グレート「フッフッフ、死ねい刃牙!」
刃牙「な、何をするだァ〜〜! 許さ〜〜んッ!!」



スペシャル・マッチ!(23)〜グレートがいっぱい作:MBO

<前回までのあらすじ>
ようやくはじまったタッグトーナメント決勝戦、でも相棒のはずの範馬グレートがいきなり刃牙にスリーパーを仕掛けて…?

グレート「フッフッフ、死ねい刃牙!」
ギリギリと締め上げるグレート、刃牙は間一髪腕をねじ込んで完全に決まるのは防いでいたが、前からは象山が迫ってくる。
アナ「刃牙、絶体絶命だァァーーッ!!」
刃牙「ううう、何するんだオヤジ…」
グレート「親父だと? 何を言っている、この声を聴いても俺が誰なのか分からんのか?」
アナ「ああッ言われてみればこの声はヘル・グラップラーズの…ッ」
グレート「フッ、本物の範馬グレートなら廊下でのびてるぜ」
刃牙「わから〜〜〜ん! 誰なんだお前わ〜〜〜ッ!!」
わめく刃牙。芝居なのか、本気なのか。
グレート「ええい、このバカめ、ならこの顔を見ろッ!!」
わざわざスリーパーを解いて自ら覆面を取るグレート、何が何でも”冥土の土産に教えてやろう”をやらなければならない辺り、悪役は損である。
アナ「ああーッやはり正体は巽だ〜〜〜ッ」
刃牙「あ、猪狩さん、なんか若返りましたね」
巽「ちがーうッ、俺は巽だッ」
と、刃牙のくだらない話に付き合いつつも、巽の頭の中ではある疑問が消えないでいた。
巽「(さっき、刃牙は範馬グレートのことを”オヤジ”と呼んだ。と言うことはグレートの正体は
  勇次郎なのか? いや、そんな筈はない。勇次郎だったらいくら不意打ちだったとはいえ、
  あんなにあっさりやられる筈がない……)」

その頃、駐車場では本物のグレート(ジャック)と西田が、完璧グラップラーの一人、風間と対峙していた。
西田「グレートさん、ここは俺に任せて、早く闘技場に行って下さいっス!」
ずいっと進み出る西田。
風間「何!? 何のつもりだ、貴様!!」
西田「悪いな。俺達は、台本通りにはできないんでね」
西田は、不敵に笑いながら、風間の目を見た。
風間「…どう言う意味かな…」
西田「台本ってのは…八百長って言やァワカるかい
ガッ
すかさず西田の胸倉を掴んで殴りかかる風間、しかし西田はそれを待っていた!
ブンッ
風間のパンチに、自分の拳を合わせる!!
メキィッ
そして二人の拳は同時に砕けた。
二人「〜〜〜〜〜ッ
うずくまる二人。グレート(ジャック)は速攻他人のふりをして行ってしまった。

グレート「(早く、早くしなければ刃牙が……ッ)」
闘技場へと急ぐジャック。ようやく入り口の付近までやって来た時、観客たちの歓声が聞こえてきた。どうやらまだ試合は終わってないらしい。ジャックはほっと、安堵の息を吐いた。が、しかし。
グレート「!?」
彼はそこで、信じられないものを見た。自分ではない範馬グレートが、一足早く闘技場の入り口へと向かって行くではないか!
グレート「(あっ! そうか、親父だ、親父に違いない。俺がなかなか来ないので、代わりに
  出てくれようとしているんだ)」
ジャックは、その範馬グレートの身長が勇次郎より一回り小さいことに気付かなかった。
だからこの時、「とりあえず自分は陰から観戦してよう」と決めてしまったのであった。

グレート「オラオラァ〜〜ッ!! コラてめーらヘル・グラップラーズ、不意打ちなんか
  しやがって汚えんだよ!!」
突如、闘技場に4人目となる戦士が飛び込んできた。
アナ「ああーッグレートです! 本物の範馬グレートが来たァ〜〜〜ッ!!!」
オオオオォォーっと、盛り上がる観客たち。
刃牙「遅かったじゃねえか!」
グレート「フ、待たせたな刃牙! 後は俺に任せろ!! うおおおおお!!!」
ヘル・グラップラーズに向かって突進するグレート!
グレート「ひゃいィィィ〜〜ッ!!」
メキッ
しかし、グレートのキックが到達するより全然早く、巽のパンチがグレートの顔面にめり込んでいた。
ズンッ
マスクの中から血を噴き出し、倒れるグレート。一瞬の出来事であった。
小坊主「勝負ありッッ」
                                  (続く)



スペシャル・マッチ!(24)〜お笑いの思想作:MBO

<前回までのあらすじ>
範馬グレート撃沈で、決勝戦早くも決着?

アナ「よ……ッ」
小坊主「勝負ありッッ」
アナ「弱〜〜〜いッ!! 範馬グレート、顔面パンチ一発で沈んだ〜〜〜ッ!!!」
刃牙「……!!」
観客「何じゃそりゃーっ!!」「マジ弱〜ッ!」「ロジャー・ハーロンかお前わ〜〜〜ッ!!」
刃牙「ちょっと待て〜!!」
小坊主の方へダッシュし、抗議に行く刃牙。
刃牙「てめえオレが誰だか分かってんのかッ!? この漫画の主人公だぜ!!?
  何で負けなきゃなんねえんだよォーーーッ!!」
小坊主「そ、そんなこと言われても…」
いきり立つ刃牙に、小坊主もタジタジである。
加藤「(く、栗木さん…!)」
観客席では、今しがたやって来たばかりの加藤が、事の成り行きを見守っていた。
闘技場中央に横たわる範馬グレートの正体を、ただ一人知っている男である。
加藤「(俺は信じてます! 栗木さんは、地獄の淵から何度でも甦る男だって…!!)」
しかし、加藤の予想を裏切った方に事態は動いた。
もう一人のグレートが、闘技場に降り立ったのである。
事の重大さに気付いたジャックが、即、行動に出たのだった。一同の視線が、集中する。
グレート(ジャック)「(もう、どうのこうの言ってる場合じゃない…!)」
ジャックも必死だった。そして、高らかに叫んだ。
グレート(ジャック)「俺が本物の範馬グレートだ!!」
場内にざわめきが広がる。困ったのは、ヘル・グラップラーズだ。
象山「こらこら、イカンなあ。君達は、マスクマンであるのをいい事に複数の人間を戦わせていたのか?」
ヘル・グラップラーズとしては、せっかく掴んだチャンスである。何としてもモノにしたかった。
戦いが長引けば、あの範馬のことである、どんな理不尽な事をやらかすか分からない。
刃牙「な、何言ってやがんでえ! 本物のグレートはコイツ一人だって!! その、弱っちい
  グレートも、どうせお前らのセコイ作戦なんだろ!」
刃牙はまだ事態をよく把握していなかったが、とにかく今はこの新しいグレートにすがる他なかった。
巽「フン、何をバカなことを。とにかく、我々はこの通り、範馬グレートをK・Oしたんだ。
  つまらんアガキはよしてもらおうか」
と、巽は倒れているグレートを指差した。
加藤「(栗木さん…立って、立ってくださいっスよ……!!)」
客席では加藤が、無様にのされているグレート(栗木)を見つめて、拳を震わせている。
その時! 加藤の目に、栗木の指がかすかに動いたように見えた!
――そして、歌が、聞こえてきた。
グレート「♪傷ついた体で〜 もう一度立ちあがれ〜♪」
観客「歌だッ!」「倒れてる方のグレートが歌ってるぞ!!」
見ると、グレート(栗木)が、歌を口ずさみながら、ヨロヨロと体を起こそうとしている!
グレート「♪傷ついた拳を〜 もう一度振りなおせ〜♪」
観客「バ、”刃牙のテーマ”だ!!」「しかも二番ッ!!!」
ふらつきながらも、今、栗木・グレートは立ちあがった!!
グレート「♪刃〜牙〜〜 ラ〜ララ〜ラーラーラー♪」
観客「英語わからねえんじゃねえかー!」「うわ〜ッダサ!!」
客席は、爆笑と沈黙が半々と言った感じになった。刃牙や象山たちは、呆然と立ち尽くしている。
加藤「(栗木さん、今日のアンタはいつにも増してカッコイイぜ…!)」
加藤は、涙を流していた。
グレート(栗木)「(盛り上ってる…盛り上ってるぞ!!)」
そう確信すると、栗木はおもむろにマスクを剥ぎ取った!
全員「!!」
刃牙が、ジャックが、象山が巽が、アナウンサーが、観客が、一斉に息を呑んだ。
謎のグレートの正体は、栗木だったのである。
栗木「(不死鳥のように甦る男・栗木…! 今、俺はかっこイイ……)」
場内は、水を打ったように静かになっていた。
栗木「(フフ、凄いとみんな騒ぐが、凄過ぎると声も出なくなるもんだ…)」
栗木は、阿呆のように口をパクパクさせる刃牙たちの前をスタスタと通りすぎ、ミッちゃんの方へと歩いていった。
栗木「光成よ、お前もこうして大会を妨害されたんじゃ立つ瀬がなかろう」
いきなり態度がでかくなる栗木。
栗木「オレからのビッグ・ボーナスだ」
と言って、栗木はニヤリと笑った。
栗木「4人掛け…」
おいおい。
栗木「決勝に残った4人、雁首揃えてここに集めろッ!!
  本物の闘いを見せてやるッッ!!!」
もう集まってんよ、栗木!
                             (続く)



スペシャル・マッチ!(25)〜4人!!作:MBO

<前回までのあらすじ>
栗木乱入で、タッグトーナメント決勝戦、もうメチャメチャです。

栗木「決勝に残った4人、雁首揃えてここに集めろッ!! 本物の闘いを見せてやるッッ!!!」
突然の栗木の発言に、場内は騒然となった。
刃牙「こ…ッのクソ野郎、ふざけやがって…!!」
じりじりとにじり寄る刃牙たち。しかし、その時”待った”がかかった。
張「勝利者であるあなた達がでるまでもない、この場は我々にお任せ下さい!!」
声の方を見ると、玄武の方向に4つの人影が!
加藤「あ〜〜ッ高木、あの野郎ッ!」
巽「…風間」
栗木「に、西田、お前まで…」
そう、その4人とは張、高木、風間、西田だった!!
西田「栗木さん、もうやめて下さい! やっぱり何か間違ってますよ、栗木さんのやり方…!」
西田が、訴えるように言う。
栗木「………」
張「ミスター・栗木、我々ではご不満かな?」
張は、自信満々だった。そして、その一言が、栗木を動かした!
栗木「愚か者どもが、皆殺しにしてくれるわッッ!!!」
ダッ
栗木が走った。張に向かって。
栗木「ッダァァァ〜〜〜!!」
バキッ
観客「……!」
張のパンチが、カウンターの形で栗木の顔面にめり込んでいた。
栗木「あびゅッ」
吹っ飛ばされた栗木、
栗木「フッ、どうやら手加減はいらねえ様だ!」
と、今度は西田に突っ込んでいく。
西田「!」
西田は、とっさに身構えた。胸の鼓動が高鳴る。覚悟していたことだが、ついにこの時が来てしまったのだ。――栗木と本気で勝負しなければならない時が。
西田「うおおおおお!」
西田と栗木は、ほとんど同時に蹴りを放っていた。
ベキィッ
西田「…こ…この人ッ……」
またもカウンターの形で、西田のキックが決まっていた。
西田「この人弱い!!」

本部「じッ、実戦でアレをやりおるかッ!!」
観客席、加藤の隣に、いつの間にか解説ヅラの本部が現れていた。
加藤「…何だよ、アレって」
本部「本来、カウンターとは相手の攻撃をかわしつつ叩き込むパンチのことだ。だが、栗木の
  場合は違う。あいつは、相手の動きを見切っているのに、わざわざそれが、自分に対して
  カウンターになるように動いているんだ。………いや、正確に言うなら、栗木本人は何も
  分かっちゃいねえ、手が、足が、体が勝手にそう動いてるってヤツだ…」
加藤「……?」
本部「まあ、解りやすく例えるなら…」
と言って、本部は少し考える仕草を取った。
本部「ジャンケンで後出ししたくせに負ける…と言った所か」
加藤「! ……て…天才めッ…!!」
改めて、加藤は栗木の才能に感嘆した。
本部「相手が10の力で攻撃してくれば、それを2倍にも3倍にもして食らう。相手の攻撃の
  力が強大になればなるほど、栗木の受けるダメージも大きくなってしまう…」
それ、全然当たり前じゃないか。
本部「アレをやってちゃあよ…」
本部は、天井を仰いで言った。
本部「だァ〜れにも勝てねえ、勝てる道理がねえ」

そんな会話が為されていた頃、闘技場では栗木が高木や風間にも向かっていったがことごとく返り討ちに遭い、今や4人からボコボコの袋叩きにされていた。
刃牙「くは〜っ、もう見てらんねーよ」
呆れたように刃牙が言う。
しかしこの時、うずくまりリンチされる栗木の体からは、まだ闘志は失われていなかった!
張・高木・風間・西田「!!」
観客「お、おい見ろよ! 攻撃されてんのは栗木の方なのに……ッ!」
張たち4人は、攻撃の手を弱め、じりじりと後退していた。
本能的に、栗木から何かを察したのだ。
栗木「図に乗りやがって…」
                            (続く)

(続く)




スペシャルマッチ! 外伝

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スペシャルマッチ!

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