スペシャルマッチ! (6)〜(10)
スペシャル・マッチ!(6)〜第四勢力の正体〜 作:
MBO
前回までのあらすじ〜タッグ・トーナメント一回戦、第一試合を見事制したのは我らが範馬ブラザーズ!!
しかし、いつもなら「オメデトウ」と刃牙を迎えてくれるはずの加藤の姿がそこにはなく…
控え室に戻ってきた刃牙。そこで目にしたのは、待ち構えていたかのように刃牙を睨む加藤の姿だった。
加藤「忘れるなよ刃牙。第二試合から上がるのは俺達だ」
バカかてめぇは、無理に決まってんだろが!! と、内心毒づく刃牙だったが、自分を裏切った加藤が、烈やガーレンにボコにされる姿を見るのもまた一興だと思い、今は口に出さなかった。
バタン
と、その時、控え室のドアが開き、一人の男が室内に倒れ込んできた。
加藤「は、花田! どうしたんだ!!」
花田「うう…」
彼の全身はアザだらけで、ひどい怪我だ。
刃牙「あ〜あ、またっスか? それで、一体誰にやられたんです?」
さすがにこういう事が続くと、対処する方も慣れたものである。しかし、花田にはもう喋る気力も無いようだった。
加藤「ちくしょう、烈とガーレンの野郎だな!! 俺達に勝てねぇと踏んで、闇討ちしやがったか!」
おいおい、寝言は寝て言えよ。そう思う刃牙だったが、やはり口には出さず、
刃牙「じゃ、ま、オレ花田さんを医務室に運んどきますから」
と、われ関せずを決め込んだのであった。
そして、闘技場。
アナ「おお、ようやく加藤選手が姿を現しました! しかし花田選手が見当たらないぞ? 何があったモーストデンジャラスコンビ!!」
加藤はつかつかと進み出ると、既に到着して待っていた烈&ガーレンに叫んだ。
加藤「やいコラてめぇら!! 不意打ちとは汚ぇんじゃねえか!?」
何の事か理解できず、一瞬唖然とする烈、ガーレンコンビ。
烈「どういう事だ? 貴様、我々の誇りを侮辱するのか?」
ガーレン「うむ、逃げるのであればもう少しマシな言い訳を考えたまえ」
加藤「な、何だとォ!? とぼけんじゃねぇッ!!」
逆ギレする加藤。
しかし、そこに救いの声が入った。
姫川「おやめなさい、花田を倒したのはこの私です!」
長田「それも、正々堂々と一対一でな」
突如、観客席から躍り出る二つの影。
観客「な、何だあの二人組みは〜ッ!?」「あいつらが花田を倒しただとォ!?」「あの細い方の格闘家、顔が鎬兄弟に似ているぞ!」
突然のハプニングに、騒然となる場内。
加藤「何だとォ〜? てめぇら…」
姫川「さあ加藤さん、あなたにも本当の空手を見せてあげましょう。かかってきなさい」
加藤「舐めやがって…八つ裂きにしてくれるぜ!!」
怒り心頭状態な加藤。だが、構える彼の肩に、ポンとガーレンが手をかけた。
加藤「な、なんだよこの手は………まさか…」
ガーレン「君では無理だ。私が代わる」
ズンッ、と圧倒的迫力のガーレン。後ろでは、烈も頷いている。
加藤「そんな……」
あっという間に意気を殺がれた加藤は、情けない声を出しつつトボトボと退場していった。そもそも彼らがこのトーナメントに出場すること自体がデンジャラスだったようだ。しかし、そんな加藤にはもう目もくれず、烈は乱入コンビに問い掛けた。
烈「貴様ら、目的は何だ」
姫川「ふッ、知れた事。格闘技漫画最高峰だのと名乗っておきながら、リアルシャドーだの範馬の血だのと戯れ言を並べ立てる軟弱なこの世界に、本物の格闘技を知らしめに来たのですよ」
ちょっと待てそれ全部ある一人の仕業じゃないのか。アナウンサーはそう思ったが、とりあえずその言葉は飲み込んだ。
そんな彼の気持ちなどお構い無しに、
ガーレン「待ちたまえ、それよりもまず先に名を名乗るのが筋と言うものだろう」
と、イチャモンをつけるガーレン。自分たちから「目的は何だ」と聞いておきながらそりゃねぇだろうと思う長田だったが、
長田「俺はFAWの長田だ。プロレスを使う」
と、律義に自己紹介をした。
姫川「私は北辰館空手の姫川と言います。是非、神心館の方と手合わせ願いたかったのですがね」
加藤の去っていった門を横目に姫川も続く。しかし、それを聞いた烈はなんともお怒りなご様子だ。
烈「貴様、我々カンフーを差し置いて神心館と闘いたいだと? 中国4000年の歴史を侮辱する言葉だ、直ちに訂正しろ」
またしても無茶な言いがかりをつける烈。なんて自分勝手な連中なんだ。姫川と長田はその理不尽な気迫に思わずたじろいだ。
その頃になってようやく小坊主達も動き始めていた。
小坊主「御老公、これは一体どうすれば…」「とにかく、止めるんだッ」
慌ただしく、闘技場になだれ込もうとする小坊主達。しかし……
光成「一歩でも闘技場に入ってみい!!」
ポン刀で脅す光成。わけの分からん迫力に、小坊主達は立ち止まるしかなかった。
(続く)
スペシャル・マッチ!(7)〜勝った方が二回戦進出だ!〜 作:
MBO
前回までのあらすじ〜タッグ・トーナメント第二試合に突如、姫川キッドとケンダマン長田のコンビが乱入! 「完璧(パーフェクト)・グラップラー」と名乗った二人は、この堕落しきった『グラ刃牙』界を正すためにやって来たと語った! 迎え撃つのは烈&ガーレンのわがまま2000万パワーズ!! どうなる、第二試合!
激戦は続いていた。
さすがに完璧グラップラーを名乗るだけあって、乱入コンビの実力は地下闘技場の観客を沸かせるにも十分なものだった。
しかし、試合の展開は依然として烈&ガーレン組が押していた。
姫川「くっ、何故だ!? 何故リアル格闘漫画のキャラである我々がこんな無茶な漫画の 連中に押される!? ………ハッ! そうか!!」
そう、姫川は今、ようやく重大な事実に気がついた。
リアルな格闘漫画のキャラクターと、無茶な漫画のキャラクターとでは、やはり後者の方が人間離れした強さを持っている分有利なのだ!!
姫川&長田「ぬううう…」
今更のことに歯ぎしりする二人。花田と加藤が余りにも貧弱すぎたため、「強い奴は派手に強いが、一度ザコに転落した奴はとことん弱い」という無茶漫画の法則を忘れてしまっていたのだ。
そして……
ガシッ
焦った二人はついうっかり側にあったガラスの破片を手にとってしまった。
斗場さんが車クラッシュをやった時に飛び散ったやつが、都合よく隅っこの方に残っていたのだ。
烈「ふん、笑止。”完璧”を名乗る格闘家が、凶器に手を出すとはな」
姫川&長田「はっ、し、しまった」
さらにそこへタイミング悪く小坊主が注意にやって来た。
小坊主「武器の使用は禁止されてます。今度持ち出したら、即、反則負けにするっスよ」
いい加減小坊主もやきが回ってきたようだ。
姫川&長田「あ、どうもすいませんっス…」
大人しくガラスを差し出す二人。けっこういい人だ。
しかし、その隙をわがままコンビが見逃す筈がなかった。
ガーレン「フンッ!」
烈「ハッ!!」
長田にガーレン・スペシャルが、姫川に足拳が炸裂する。
バキイッ
闘技場の壁に叩き付けられた二人は、がっくりと崩れ落ちた。
小坊主「勝負ありッッ」
アナ「烈&ガーレン、二回戦進出〜!!」
場内アナウンス「まもなく、一回戦第三試合を始めます…」
乱入事件の興奮覚めやらぬ場内であったが、プログラムは着々と進行していた。
アナ「それにしても、あの乱入コンビはいったい何者だったんでしょう? 御老公は御存知なんですか?」
光成「うむ…」
コホン、と咳払いをした光成は、一呼吸置いて観客たちに叫んだ。
光成「乱入コンビの正体を知りたいかァ〜〜〜ッッ!!」
観客「オォーーーッ!!」
色めき立つ観客たち。
光成「ワシもじゃ、ワシもじゃみんな!」
アナ「知らんのやないかボケェ!」
光成に聞こえないよう、アナは小声で吐き捨てた。
と、その時、青竜の方向からヘル・グラップラーズ1号&2号が入場してきた。
アナ「おお、正体不明覆面コンビの入場です! 遂にその素顔が明らかになるのかァ〜!?」
1号&2号「グフォッフォッフォ」
ヤな笑い方をしながら、覆面に手を掛ける二人。
バッ
覆面を取ったその素顔は!?
1号「その通り! 我々こそ完璧グラップラーのドン! ネプチューン象山だ!!」
2号「同じく、ブドー巽!!」
しかし、タイミング悪く彼らの自己紹介は場内アナウンスにかき消されてしまった。
場内アナウンス「白虎の方向、超人師弟コンビの入場です…」
象山&巽「…………」
気まず…。
(続く)
スペシャル・マッチ!(8)前編〜師弟出陣〜 作:
MBO
前回までのあらすじ〜ついに姿を現した完璧・グラップラーのドン、ネプチューン象山&ブドー巽! 対するは、ビル・ライレー&ローランド・イスタスの超人師弟コンビだ!!
―控え室―
場内アナウンス「白虎の方向、超人師弟コンビの入場です…」
イスタス「ビル、呼んでるぜ。行こう」
ビル「ああ…」
しかし、イスタスの呼びかけにビルはやる気のない返事を返しただけで、
席を立とうとはしなかった。椅子に腰掛け、うな垂れたまま、何度も目をこするビル。
イスタス「…? どうしたんだビル? まさか、目の病気が…!?」
ビル「…ああ、やはり君には言っておかねばならないな……。その通りだ、病状はどんどん悪くなっている。恐らく、私の命ももう長くはないだろう」
ならこんな大会にエントリーすんなよ。て言うか目の病気で死ぬことってあるの!?
イスタス「大変じゃないか! すぐに医務室に行ったほうが…!」
突然のことに動揺するイスタス。しかし、ビルは大きく首を振った。
ビル「…いや、いいんだ。この試合を棄権することはできない」
イスタス「しかし!」
ビル「なあイスタス、私は引退してからというものずっと考えつづけていたんだよ。やっぱり、一人の格闘家として、死ぬ時は闘って死にたいとね…。だから……」
じっと、イスタスの瞳を見つめるビル。今まで見たことのなかった師の表情に、イスタスは少し戸惑いを覚えた。
イスタス「………わかった。絶対に…絶対に優勝させてみせるさ、ビル!!」
ぐっとビルの手を握り締めるイスタス。
ビル「イスタス……」
ビルの瞳に、うっすらと涙が滲んだ。
ビル「…ナイスファイト…」
イスタス「…え?」
ビル「……ナイステクニック……ナイススピリッツ………」
イスタス「……いつの話だよビル…」
イスタスは思った。ビルは、目よりも頭のほうが悪いのかもしれない。
小坊主「始めいッッ」
ずいっと前に進み出る象山とビル。
アナ「おおーっと、双方チームリーダーが先手を務めるようです!」
そう、師弟コンビはビルが先に闘技場に出た。
ビルが「まずは自分が行く」と言って聞かなかったのだ。心配して止めるイスタスだったが、「これが俺の最後の授業だ」と言われては引かざるを得なかった。
しかし、象山と向き合った瞬間、ビルの態度は一変した。
ビル「おおッ!! ドッポ! ドッポ・オロチじゃないか!!」
いきなり、馴れ馴れしく象山に進みより、ガシッと腕を掴むビル。
張り詰めた緊張が一気に解かれる。
呆気に取られるイスタス、驚く象山、巽。観客の間にもざわめきが広がる。
ビル「いや〜、久しぶりだなぁ、まさか、こんなところで会えるとは思っていなかったよ」
しかし、ビルはいたって真面目なようであった。
象山「わけの解らぬことを……私は完璧グラップラーのドン、ネプチューン象山だ! 下品な空手家ごときと一緒にしないでもらおうか!!」
イスタス「あ、す、すみません。この人は頭が…いや、目が悪いんです。きっと見間違えているんでしょう」
とりあえず割って入るイスタス。が、
ビル「何を言うんだイスタス。どう見たってドッポ・オロチじゃないか。いや〜髪の毛もフサフサになっちゃって、よかったな、ドッポ」
象山の頭をなで始めるビル。象山は目を閉じて拳を握り締めたまま、プルプルと震えている。
その時、何事かと小坊主達が駆けつけてきた。慌てて取り繕うイスタス。そして、とりあえず試合の方は仕切り直しとなった。
アナ「前代未聞! こんな事があってよいのかァ〜!?」
(後半へ続く)
スペシャル・マッチ!(8)後編〜長いので二回に分けました〜 作:
MBO
小坊主「両者もとの位置ッ」
それぞれの門にさがる両チーム。
イスタス「いいかい、ビルは目を患ってるんだから、その事を忘れないでくれよ」
ビルに注意を促すイスタス。しかし、ビルはまだ諦めていない様子だった。
ビル「いや、あの手の感触は間違いなくドッポ・オロチのものだった…」
小坊主「始めいッ」
ビル「もう一度組み付くことができれば、それが確認できるはずだ!」
猛然と突進するビル。
ドガァッ
しかし、象山の強烈な蹴りによって阻まれてしまった。
ビル「まだまだァッ!」
立ち上がり、再び突進を仕掛けるビル。
アナ「さ〜あ、組み付けばビルが有利! そうはさせじと突き放す象山!! 掴まる前に一気に片をつけることができるかァ〜!?」
バキッ ドゴッ ガスッ
何度も何度も象山に向かっていくビル。しかし、その腕は象山に触れることすらできない。
烈「妙だな、あの象山という男…」
ガーレン「どうした?」
烈「組み付かれたくない気持ちは解るが、それ以前に触れられることすら恐れているような印象を受ける」
バシッ ザクッ ドスッ
尚も単調な突進を繰り返すビルに、容赦なく象山の鉄拳が襲い掛かる。
イスタス「…もういい、ビル!!」
イスタスは、師が痛めつけられる姿を見ていられなかった。
象山「どうした? 他に戦法を知らぬわけでもあるまい。何故無駄な攻めを繰り返す?」
ビル「……戯れ言はよせ、ドッポ!」
象山「………」
ザクッ
ビルの腹に象山の爪先が突き刺さった。秘技・足先蹴りである。
ビル「ぐふっ…」
崩れ落ちるビル。
小坊主「勝負ありッッ」
イスタス「ビルーーーッ!!」
駆け寄るイスタス、背を向けて立ち去る象山。
ビル「…ど…どうしてだドッポ……。私を忘れてしまったのか…? …こうして、あの時の約束を果たすために、ニッポンまで来たんじゃないか……」
苦しげに、かすれた声で呼びかけるビル。
その瞳は、もうほとんど視力を失いかけているかのようだった。
象山「ふん、知らんねえ。わざわざ日本にまで闘いに来たというのに、とんだ醜態だった様だな」
イスタス「……!」
ガシッ
イスタス「おい、あんた…」
立ち去ろうとする象山の肩を、イスタスが引き止めた。
イスタス「あんたが本当にドッポ・オロチなのかはどうでもいい。だけど、今の態度はあんまりに冷たすぎるんじゃないか!?」
怒りの眼差しを向けるイスタス。
象山「おやおや、難癖を付けるつもりかね? 敗者は敗者らしく、尻尾を巻いて逃げ出した方がいいんじゃないか?」
イスタス「!……貴様!!」
ドズッ
アナ「〜〜〜〜〜ッッ!!!」
イスタスの一本拳が、象山の右目に突き刺さっていた。
小坊主「…………ッッ!!」
一瞬、場内が静寂に包まれる。
イスタスも、象山も、ピクリとも動かなかった。
イスタス「………」
梢江「……きれい…」
そして……
象山「ほりゃああァァッ!!」
ガキイッ
沈黙を破ったのは、象山だった。左の下突きが、イスタスの顎を捕らえた。
イスタス「ガフッ」
吹っ飛ばされたイスタスは、柵に叩き付けられ失神した。
象山「……惜しかったのうイスタス…」
小坊主「しょ、勝負ありッッ」
象山「とっくの昔に義眼じゃよッ」
(続く)
スペシャル・マッチ!(9)〜みんな元気? 作:
MBO
<前回までのあらすじ>
ごめん忘れた。
〜今回と次回は回想シーンです。
前大会から約1億5000万年の月日を経てついに開催された第二回・スペシャルタッグトーナメントIN東京ドーム!! 既に沸点に達した熱気の中、盛大に開会セレモニーが催されていた。烈海王&アレクサンダー・ガーレン、天内悠&渋川剛気、ローランド・イスタス&ビル・ライレーなど1チームが入場するたびに震えるほどの歓声が巻き起こる。そして7番目のそのチームが登場した時、観客達の興奮はついに絶頂を超えた!!
観客「ス・エ・ドォ! ス・エ・ドォ!!」
「チ・ネ・ン! チ・ネ・ン! チ・ネ・ン!!」
アナ「末堂コールと知念さんコールの大合唱だァァァ〜〜〜ッ!!」
知念さん「至福の時だ……」
アナ「剛壮の空手と飛燕の小林流! このビッグかつ巨大な二人の超強力タッグを前にもはや我々は興奮を抑え切れません!!」
と、悦に浸る知念さんの脇をすりぬけ、末堂がガーレンの方へと向かった。
末堂「ふふ、ガーレンくん、君と当たることになったなら優しく正拳してあげよう」
アナ「おおッッさすがのガーレンも末堂の前では小さく見えますッ」
ガーレン「…………」
やばい、ガーレンがキレる、そう思った加藤がとっさに話題をすり替えにかかった。
加藤「…と、ところで刃牙がまだ来ねえなァ」
烈「………むう」
ジャック「やはり、新しいパートナーを見つけられなかったのか…」
と、なんとか場が収まりかけたその時、
ザッッ
突然乱入者が現れた!!!
ナイフ使いの人&倉石「チームが足りないと言うのなら、我々を参加させて頂こうッ!」
そう、将軍ガイアの元を離れたレンジャーコンビだ!!
花田「まっ、主人公いない方が誰が勝つかわかんなくて面白いんじゃないの?」
光成「うむ、やむを得んな、7チームで始めるかの…」
二人「聞いてくれー!!」
ナイフ使いの人「何だよォーこの大会には幼年編のキャラは出ちゃいけねえっつうのかよォーッ」
倉石「そうだそうだ、幼年編をバカにするなっ!」
ぐれる二人。こうスネられると肩を持ちたくなってしまうのが人情である。
観客達はたちまち二人を応援しはじめた。
観客「そうだよ、ワク空いてんなら出してやれよー!」
「かわいそうじゃねえかー!!」
「もしかしてナイフ使いの人と倉石のタッグにびびってんのかぁ!?」
そんなわけあるか。
小坊主「御老公、これは…」
光成「うむ、認めねばなるまいのォ…」
うまくいったな兄弟、と目配せするレンジャータッグ。一時はどうなることかと思ったが、今は会心の笑みを浮かべている。
が、しかし。
刃牙「ちょぉっと待ったァァァーッ!」
謎のマスクマンを引き連れ、ついに我らの主人公が登場! イチャモンを付けにやって来た!!
刃牙「誰がなんと言おうと、俺はそいつらの出場を認めないぜ!!」
光成「では、はぐれレンジャータッグを入れての8チームで大会を開始する…」
聞いてやれ。
(続く)
スペシャル・マッチ!(10)〜無敵の正拳!(前編) 作:
MBO
<前回までのあらすじ>
末堂&知念さんチームの入場で沸きに沸く開会セレモニーに、突如レンジャータッグが乱入してきてみんなびっくり?
刃牙「倉石さんとナイフ使いの人オォォッ!!」
観客「刃牙だッ」「刃牙が出てきたぞッッ」
刃牙「すぐに出て行くんだー」
恐い顔で睨み付ける刃牙。しかし、観客達の興味はむしろ刃牙の連れてきた謎のマスクマン(範馬グレート)に集中しているようだった。
観客「おい、誰なんだよアイツ…」「さあ、でも刃牙のパートナーだし強えんじゃねえの?」
「まさか、梢江ちゃんとか」「いや、どうせ範馬の一族だろ」
ナイフ使いの人「ヘッ、大方そこらのヘボ格闘家にマスクかぶせたんだろうぜ」
と、ちょっと話題が逸れかけつつある所で見かねた知念さんが割って入った。
知念さん「まあまあ刃牙くん、彼らも光成氏から正式に認可されたんだ。ここで帰れと言うのも、ちょっと可哀相じゃないか」
なかなかもっともだ。大人だね知念さん。
ナイフ使いの人「ふむ、それでは弱小チームには消えてもらいましょうか、末堂さんに知念さん」
今、範馬グレートのことを『そこらのヘボ格闘家』とか言ってたくせに。いや、それ以前にヘル・グラップラーズなんていう正体不明の、それこそどこの馬の骨とも知れない連中までいるではないか。しかし誰がどう見たって一番弱そうなのは
末堂&知念さんチームだった。まいったね墓穴。
末堂「だ、誰が弱小だとォーーッ!!」
お前だよ。
が、その時、怒りにまかせて殴りかかろうとした末堂の巨体がドウッと崩れ落ちた。
北沢「弱小を弱小といって何が悪い?」
北沢が、背後から強烈な一撃を浴びせたのだ。白目をむいて末堂は失神していた。
北沢「幼年編最強はこの俺だ」
よく解らないライバル意識を燃やしつつ、自慢の肉体を知念さんとレンジャータッグに誇示する。流石の知念さんとレンジャー二人も、これにはちょっとたじろいだ。
加藤「刃牙、お前にはどう見える、あの体躯…」
刃牙「どう見えるかより、どう作ったかなんだけど…」
二人「…………ドーピングしたに決まってるよなあ」
観客の方はと言えば、さっきまであれだけ末堂だの知念だの言ってたくせに、早くも北沢とレンジャーに乗り換えたようであった。
観客「キータザワ! キータザワ!!」「クーライシ!!」「ナイフ使いの人ォ!!」
声援が入り交じって飛ぶ。知念さんは孤立してしまい、うつむいたまま震えていた。
知念さん「…そうか、誰が幼年編最強か、か…」
ダッ
と、流石に北沢はヤバそうと見たか、ナイフ使いの人に飛び掛かった!!
アナ「ち、知念さんが突っかけたァ!!」
一秒間に12発も打ててねえと思うけど、小林流・飛燕の連撃だッ! でもやっぱり!
シャクッ
知念さん「…………!!」
ブシュゥゥーと、知念さんの腕から激しい出血。
ナイフ使いの人「モグ…ペッ」
アナ「う、腕が食いちぎられたァァァーッ!!」
ナイフ使いの人「噛み付きなど、戦場格闘技では基本に過ぎん」
と、ジャック&北沢チームを意識したようなことをおっしゃる。
観客「すげーッ!!」「ナイフ持ってるくせに噛み付きだし!!」
腕を押さえ、うずくまる知念さん。絶体絶命だ。しかし、その瞳はまだ光を失っていなかった!!
(後編に続く)
スペシャル・マッチ!(10)〜無敵の正拳!(後編) 作:
MBO
<前回のあらすじ>
知念さん出血多量で、残り時間3分!?
脅威の必殺技だった(過去形)噛み付きをくらい、大ピンチの知念さん。
と言うより、このトーナメントのルールではどちらか片方がやられてしまえば勝負ありなので、本来なら末堂が倒された時点で知念さんもいつ失格にされてもおかしくないのだ。
知念さん「全て…全て失った! 観客も…相棒も……全て!!」
ガックリうな垂れる知念さん。しかしそこに希望の光が!
内藤「とりあえず正拳突き100本!」
平尾「うりゃ!!」
木茂山のダンナ「こんなことしたって第二部にゃ出れねえかもしれねえけどよお」
平井「せりゃ!!」
補導員鈴木さん「俺達にグレートなところ見せてくださいっスよ知念さん!!」
平田「とりゃ!!」
幼年編ザコのみんなが、駆けつけてくれたのだ!!
平尾(仮)が一人三役で水増ししようとしているあたり、泣かせる。
知念さん「みんな…」
知念さんの頬を、大粒の涙がこぼれおちる。
知念さん「……こうじゃない」
みんな「は?」
何を思う知念さん。
知念さん「本当の正拳は、こうじゃないんだ…」
内藤「なあ〜んだ、それなら知ってるっスよ、これでしょ?」
と、菩薩拳の形に握ってみせる内藤。
知念さん「違う、それも違う! 真の正拳はこれだァ!!」
と、知念さんは右手を開いて薬指と小指だけ折った怪しげな形に握った!
みんな「ええ!?」
知念さん「グーにも…」
と、今度は普通に拳を握る知念さん。
知念さん「パーにも…」
と、次は手を開いてみせる。
知念さん「そしてチョキにもッ!!」
みんなに向かって勝利のブイサインをかざす。
知念さん「何にも負けないッ! この形こそが、無敵の正拳なんだァァァ!!!」
そう言って最初の形に握り直すと、再びナイフ使いの人に突進した!
べきイ
アナ「知念さん突き指ィィィ〜〜〜〜ッ!!」
何やってんだ知念。
みんな「うわ〜だめじゃん!!」「あと正拳じゃないし!」
のた打ち回る知念さん、呆気に取られる一同。
小坊主「勝負アリッッ」
かくて、参加8チームが決定したのだった。
(回想編終わり)
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