アニメ版 蒼天航路 感想 16話〜20話

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2009年7月21日(火)
第十六話 天子奉戴

 呂布(りょふ) 曹操と軍師たち 郭嘉(かくか)

 曹操陣営は、最強の武をほこる呂布と戦うこととなった。
 相手が変態的に強い怪物なので、まともに当たるのは良くない。
 だから、知恵で勝負するのだ。

 でも、曹操は収穫量の余剰分だけを頼りに、戦争をすると言いだす。
 予算の決定にあたって、歳出を歳入以下にしろということですね。
 赤字前提の計画を立てるなと。

 逆に、今までの軍はどうやって動かしていたのか?
 一般的には、略奪だ。
 孫子も言っている。他国でうばう食糧は20倍の価値がある、と。(孫子 作戦篇)
 自国を守る兵ですらけっこうタチが悪い。
 盗賊は民を殺しきったら、次の収入が途絶えるので手加減する。
 兵が民を略奪するときは、気にせず根こそぎうばう。兵のほうが容赦ない。(中国の大盗賊・完全版

 もちろん、他国に攻めこんだ兵はもっとタチが悪い。おぞましい略奪もあっただろう。
 攻めこまれた国には深い恨みがのこる。
 曹操の戦略は略奪を禁じる意味もありそうだ。
 領地を拡大していくときに、新しい土地の人間に恨まれないための布石だろう。
 徐州で青州兵が暴れて恨みをかったのを見て、方針を変えたのかもしれない。

 とうぜんムチャな要求をしても対応できる人材を見つけたから、戦略を変更したのだろう。
 郭嘉! 500の歩兵で勝つ軍師はお前だ!
 つねにちょっと高目の目標を与えることが、人を成長させるコツだそうで。


 陳宮(ちんきゅう)

 歩兵と騎馬の部隊が混在している軍は、両部隊の連携が重要となる。
 騎馬は機動力に優れ、突破力がある。だが、守りに弱い。
 歩兵は機動力で劣るが、弓や弩など射程のある兵器が使える。また守りも硬い。
 両者の短所を補い、長所を伸ばすように運用するのが、名将の采配なのだ。
 そして、今日も呂布はなにも考えずに突っ込んでいく。
 さすが知力の低さには定評のある呂布だ。

 曹操の軍師たちはムリヤリ策をひねり出すように仕向けられる。
 だが、呂布の軍師・陳宮は話を聞いてもらえない。
 平手打ちが返答がわりだ。
 この一撃でも死なないあたり、陳宮はけっこう頑丈ですね。

 呂布を誘いだしたのは夏侯惇だ。
 夏侯惇は猛将のようだが、こういう陽動も堅実に遂行できる。
 孫堅への助言などを思い返してもわかるが、けっこうマジメで常識的な人なんですね。

 夏侯惇に釣られた呂布をさらに引っ張るのは、曹操の役割だ。
 総大将みずからがオトリになる。
 夏侯惇とちがって、曹操は好き勝手に暴れちゃうので、作戦どおりに進むのか心配だけど。


 落石の計

 それでも曹操は作戦どおりに行動して、呂布を追いつめる。
 郭嘉の策は敵を隘路(あいろ)に追いつめて、落石の計だ。
 かなり教科書どおりの策ですな。
 引っかかる呂布は、やはり知力が並じゃない。平均よりもずっと下だ。この場に陳宮がいればな……

 完全に呂布をハメた。だが、逃がす。
 乱世をさらにかき回す役割を呂布に与える気らしい。
 でも、混沌は制御できないから混沌なのに。

 曹操の狙いどおりなのかは知らないが、呂布は徐州へむかう。
 徐州は陶謙の死後、劉備があずかっている。
 やはり、呂布の向かうところに破壊と混乱が発生するらしい。


 呂布を追いはらって一息ついたところで、新しい議題があがってきた。
 天子奉戴である。

 長安から廃墟となった洛陽に逃げてきた皇帝を保護するかどうか?
 そこが問題だ。
 後の歴史を知っている人間からすると、天子奉戴は正解といえる。
 ぶた づくしの中で すっごく爽やかな おしんこ みたいな存在であり、欠かせない。

 でも、当時の意識からすると、かなり扱いに困る存在だろう。
 漢王朝はすでに滅んだも同然だ。
 世は実力で領地を奪いあう群雄割拠の時代になっている。
 いまさら、皇帝を呼んできても意味が無かろう。
 現に、皇帝は長安にずっといたけど、影響力なんて在ったか?

 そもそも、今の皇帝は董卓が擁立したものだ。
 正当性だってあやしい。
 苦労ばっかり増えて、有益な部分は少ないだろう。
 そんなふうに諸将が考えていたとしてもあやしくない。

 曹操が皇帝を迎えいれたのは、やっぱり宦官の孫という出自が大きいのかも。
 奴隷の孫みたいな肩書きでは、どうしても知識人層からの支持が弱い。
 荀イクみたいに名門の人間が部下になってくれているものの、他の連中は家柄があまりよくない。
 名門=有能ではないんだけど、教育をしっかり受けている名門だと有能な人間が育ちやすいのも事実だ。
 曹操は知識人層からの指示を期待して、皇帝を受けいれたのだろう。

 武として青州黄巾賊を吸収し、権威として皇帝を擁護する。
 曹操は強力な手札を二枚手に入れたようなものだ。
 あとは、どう使うかが問題なのだが……
 今まで皇帝が長安で生き腐れになっていたのは、董卓の残党に皇帝を使いこなす脳が無かったためだ。


曹操、天子奉戴す

 曹操は皇帝を保護することに決める。
 幼き皇帝はじゅうぶんに聡明だった。
 天と皇帝の関係を問答することで、皇帝の信任を得る。
 あいかわらず、うまく言いくるめている気がしないでもない。

 皇帝(天子)と天意の関係については思ったよりややこしいコトになっているらしい。
 私もまだ勉強中なので、自分が無知なことを知って間もないんですけど。
 現皇帝は次男だったので皇帝としての教育を受けていない。
 皇帝になってからは董卓政権での暮らしだったので、やっぱり教育受けてないのだろう。
 曹操は学があるから、皇帝にとっては勉強になるぞ。


 蒼天航路 (4) (講談社漫画文庫) 蒼天航路 (5) (講談社漫画文庫)
 今回の話は、蒼天航路(文庫版)4巻「その九十七 誘いの王」から5巻「その百 天を抱く者」まででした。(極厚蒼天航路だと3巻、4巻)
(更新2009/7/27)

2009年7月28日(火)
第十七話 曹操と劉備

 諸葛亮(しょかつりょう)。字を孔明(こうめい)という。

 いつのまにか曹操は42歳になっていた。
 もう初老(昔は40歳ぐらいから)ですが、まだまだ元気です。
 昔の人は生活が過酷だから、老化も早いらしい。

 曹操は、自分の拠点である許に皇帝をむかえる。
 これにより、さまざまな人間が集まるようになった。
 その中に いかにも変な人間がいる。
 輝いている彼の名は諸葛亮(しょかつりょう)、字を孔明(こうめい)という。
 おそらく三国志でイチバン有名な人間だが、真に活躍するのはずいぶん先だぞ。


 呂布 vs. 張飛

 そのころ、劉備の世話になった呂布は、さっそく劉備が留守のうちに乗っ取りを企てるのだった。
 いや、これは計画をたてた陳宮が悪いのか?
 あんまり裏切ってばかりだと、だれからも信用されなくなる。
 無視できないほどの大手ならともかく、中堅どころの存在だと今後が厳しい。
 徐州を手に入れたものの、呂布の未来はけっして明るくないのだ。

 呂布と対照的なのが劉備だ。
 劉備ほど世話になる相手を変えまくる武将もめずらしい。
 それでも、劉備は相手に信頼されているようだ。どんな手品を使っているのやら。
 劉備は、やむにやまれぬ事情を作ってから逃げだしているから、相手も納得しているのだろうか?


 えらそうな劉備(りゅうび)

 帰る家を失った劉備は、兵も食糧も天子様も持っている曹操のところへ行く。
 全部借りる気だッ!
 そして、たぶん返す気が無い。
 劉備、恐ろしいオッサン……(当時36歳)

 ちょっとグチなんですが、この辺りの流れは要約しすぎで、原作読んでいる私ですら話がわかりにくい。
 アニメ初見の人は、ナニがどうなっているのかわかるんだろうか?
 原作だと劉備が器の大きさを見せたり、人間の小ささを見せたりして、面白い話もあるんだけど。


 曹操と許褚 泣く劉備 曹操と劉備

 曹操は劉備を大歓迎する。
 この珍人大好き人間めッ!
 変な人材には目が無いのが曹操だ。
 とくに呂布と一騎討ちをした関羽はぜひとも部下に加えたいところだろう。

 そこで部下を賭けて、勝負しないか作戦なのか?
 最初に勝たせておいて、掛け金をつりあげ最後に落とす。
 なんとも賭博黙示録だ。
 だけど、泣いて うやむやのうちに終わらせちゃうのが劉備の天運だろうか。

 それにしても、許褚(きょちょ)の月を射ってゴーンって、どんな現象なんだ?
 アクエリオンの無限パンチに匹敵する、無限弓矢なんだろうか?
 空を飛んでいた孫悟空かなにかに当たったのかもしれない。


・蒼天雑学
・この時代の領主について
 この時代は変なもので、地元の有力者が独立して勢力を拡大する事例が少ない。
 曹操・劉備・袁紹・孫策(孫堅の長男)・劉表・劉焉たちは、みなよそからきて支配者になっている。
 つまり、やとわれ支配者が大半なのだ。
 軍事・経営の専門家を雇ったというような感じなのだろうか。

 このへんは日本の戦国時代も似たような話がある。
 武田信玄は、現代風に言うと親の経営がイマイチだったため従業員たちに代替わりを迫られて交代した。
 外部の社長という点で、日産のカルロス・ゴーン社長みたいな立場なんだろうか。

 徐州が劉備から呂布にあっさり鞍替えしたのも、二人とも雇われ大将だからという部分が大きいのかもしれない。
 おなじ担ぐなら、立派で有名な神輿のほうがいいのだろう。
 この時点での呂布は、劉備よりはるかに大物なのだ。
 温候という爵位だってもっている。水滸伝で、呂布をモチーフにしている呂方のアダ名は「小温候」となっている。


・放浪する劉備について
 この頃の劉備がどう動いたのかを振りかえってみる。
 中原では、袁紹と袁術の兄弟が争っているところであり、公孫瓚(こうそんさん)は袁術と同盟を結んでいた。
 劉備はこの公孫瓚の部下である。

 袁紹派の曹操は徐州の陶謙を攻めた。
 陶謙は公孫瓚に応援を求める。公孫瓚は部下である青州刺史の田楷(でんかい)を派遣した。
 このとき、田楷の部下だったのが劉備だ。(趙雲伝。劉備の伝では後世に書きかえられている)
 田楷は青州に帰り、陶謙の後を受けて劉備が徐州の支配者となる。

 呂布がやってきたので、劉備は受けいれる。
 最初、呂布は袁術の客となり、つぎに袁紹の客となった。
 喧嘩わかれして、袁紹派の曹操と戦い負けている。
 つまり、現在は反袁紹派といえるのかもしれない。

 劉備が袁術と戦っているスキに呂布が反乱をおこす。
 ここがワカらない。
 大きく見れば劉備と袁術は同盟者なのに、なんで戦っているのだ?
 劉備が反乱の兆しを見せたのだろうか?

 結果的に劉備は袁紹派の曹操を頼る。
 やっぱり、派閥を変える気だったのかもしれない。
 今後、曹操は劉備に兵を与えて袁術に当たらせるつもりだ。
 呂布は袁術と緩やかに同盟を結んでいる。

 以上の流れだと、劉備は呂布に裏切られる前から曹操(袁紹)と通じていたと考えても良い。
 徐州の有力者は曹操(袁紹)よりも袁術を選び、呂布を頼ったのかも。
 やっぱり曹操が徐州で虐殺したのが良くなかったのだろうか。
 まあ、細かい話は歴史の闇の中といったところですけど。


 今回の話は、蒼天航路(文庫版)5巻「その百一 太尉袁紹」から5巻「その百九 夢の曹操」まででした。(極厚蒼天航路だと4巻)
(更新2009/8/3)

2009年8月4日(火)
第十八話 鄒氏夢幻

 袁術(えんじゅつ) 孫策(そんさく) 孫権(そんけん)

 非業の死をとげた孫堅(そんけん)の兵は同盟勢力の袁術(えんじゅつ)に吸収されてしまった。
 孫堅の遺子、孫策(そんさく)と孫権(そんけん)は玉璽を担保にして孫堅の兵を返してもらう。
 曹操が初老に入ること、若き獅子たちが飛躍しようとしていた。


 曹昂(そうこう) 曹親子

 いっぽう曹操の長男・曹昂(そうこう)は初陣をかざっていた。
 曹昂も孫策とだいたい同年代だ。
 父親が非常識人である反動か、かなり常識的に育っていますね。
 ちなみに、二十歳のときに孝廉に推挙されているので、すでに社会人として働いている。

 父親が超人かつ変人なので、子は普通に生きることすら困難だ。
 馬をならべて歩む曹昂はなにを思っているのだろうか?
 ちなみに曹操の心中をさっすることは、かなりあきらめ気味です。


 張繍(ちょうしゅう) 賈詡(かく) 鄒氏(すうし)

 曹操の今回の相手は張繍(ちょうしゅう)だ。
 族父(おじ)の張済は董卓子飼いである涼州兵の一派で、その兵を受け継いでいる。
 けっして侮れない存在だ。
 他の涼州兵とちがい、張繍は洛陽の東・中原へ出てきている。

 そして、さらに恐ろしいのが張繍の軍師・賈詡(かく)だ。
 鬼謀神算の持ち主なのだが、冷徹な策を編みだすところがヤバい。
 今回もおとなしく降伏するように見せて、なにやら画策している。

 張済の嫁である鄒氏(すうし)を使って、曹操に色仕掛けをして、骨抜きにする。
 その上で暗殺するのが作戦らしい。
 曹操は女癖が悪いことが世間に広まっているんだろうな。
 実際、悪いんだろうけど。

 ちなみに、族父(おじ)の妻は母とほぼ同じ扱いだ。
 母親を犯されているような感じなので、張繍は怒り心頭なのである。
 こういう作戦を考えて実行しちゃう賈詡は、鬼だ。


 典韋(てんい) 胡車児(こしゃじ)

 だが、曹操には護衛の典韋(てんい)がいる。
 典韋を倒さないかぎり、曹操に触れることもできない。

 将を射んと欲すれば、まず馬を射よ。曹操を殺すためには、まず典韋を倒せ。
 そんなワケで賈詡 子飼いの暗殺者・胡車児(こしゃじ)は典韋を狙う。
 陳舜臣の秘本三国志(AA)で、胡車児は異国人ではないかという説がのっている。
 西方の異民族・胡人で車児は元の名前の発音に漢字を当てた説だ。
 暗殺者(アサシン)と中国武術の対決ってのも面白い。
 蒼天航路の胡車児も目の色が異人風である。

 もっとも、正史での胡車児は武勇に優れた張繍配下にすぎない。
 敵軍の将であっても優れた人物を記憶している曹操の人材収集癖を示す挿話だ。
 勇将であれば、敵の配下でも欲しがる。
 美人であれば人妻でも欲しかる。
 それが曹操なのだ。


 

 典韋を隊長とする親衛隊は食事も任務中に行う。
 スキの無い鉄壁の布陣だ。
 でも、休憩をしないと仕事効率は下がるといいます。
 せめて許褚(きょちょ)隊と二交替制で警備すればいいのに。

 それとも、許褚隊は本拠地の許で皇帝をまもっているのだろうか。
 張繍があっさり降伏して、油断していたせいか将の数が少ない。
 夏侯惇がいれば、曹操の乱交を止めてくれたかもしれないのに。

 ところが、食事のおにぎりには毒が入っていた。
 典韋隊は戦わずして壊滅状態だ。
 元気なのは食べなかった曹操の族子(おい)・曹安民のみ。
 毒により目はかすみ役に立たない。
 だが、典韋は気魄と体力をふりしぼって立ちつづける。

「これより この両足は不動の拠点じゃ」

 襲いかかる刺客を見えぬ目で感じとり、撃破していく。
 だが、毒による限界はすぐにおとずれる。
 最後に胡車児を抱き殺し、典韋墜つ。

 これで曹操は防御がなくなり、丸裸となった。
 曹昂は敵の包囲が迫る中、決死の脱出を果たさねばならない。
 名馬・絶影に父をのせ、包囲を突破できるのか!?


 呆けた曹操

 というか、曹操が呆けちゃっている!
 性交の快楽をあげるために、薬物を併用したんだろうか。
 最近は、芸能界を薬物汚染が騒がせているのだが、なんと時勢にかなった話題なんだ。
 薬物、絶対ダメ! という主張を身をもって見せてくれた曹操であった。


 しかし、まぁ、曹操はまた裏切られていますね。
 この人は生涯に何回裏切られているんだか。
 今回、曹操は張繍から人質をとっていなかった。
 さらに兵の武装解除や、兵権剥奪もしていない。
 油断、というより温情がアダとなった形だ。

 三国志演義の曹操は、人を騙してばっかりの悪人という印象が強い。
 だが先入観をなくして見返すと、曹操は人を信じているのに裏切られてばかりなのだ。
 こんな調子だと、性格も歪むよな。
 しかし、今後も曹操はがんばって信じる姿勢を崩さない。立派な態度だ。
 もっとも、人をダマすこともありますが。

・蒼天雑学
・典韋
 一番強い武将は誰だという話をすると、たまに次のような主張をする人がいる。
 「100万人ぐらいいる雑兵のなかで一番強い兵のほうが、有名武将より強い」
 たしかに一理ある。
 有名武将は家柄の関係で兵を率いたり、個人の強さよりも指揮能力で強かったりする。

 だが、おおくの兵の中から個人の武勇で出世した人間もいる。
 まさに数万の兵の中でもっとも強かった男だ。
 それが呂布であり、典韋なのだ。

 一兵卒からはいあがった典韋は、まさに曹操支配下にある数百万の人間のなかで最強のひとりといえる。
 その死闘は歴史書・三国志のなかでも異彩を放つ戦いぶりだ。

 過去に典韋の考察を書いています。
 やや今後のネタバレになのでご注意を。

 今回の話は、蒼天航路(文庫版)5巻「その百九 夢の曹操」から5巻「その百十四 子脩の剣」まででした。(極厚蒼天航路だと4巻・5巻)
(更新2009/8/11)

2009年8月11日(火)
第十九話 猿と龍

 曹昂、死す 呆ける曹操

 前回のあらすじで、曹操は罠にあえてはまってみたなどと言われている。
 ちょっと試したつもりが、ドハマりしたワケですね。
 今週の曹様はかなりカッコ悪い。

 曹操は本当に薬漬け(?)で呆けていたようだ。
 それでも周囲の人間が盛りたててなんとかしてくれる。
 作り上げた組織が優れている証拠だ。と誉めておこう。
 優れた経営者ってのは自分が働くのではなく、人を働かせるものですよ。

 そして、曹操は天運にも恵まれている。
 曹操が生きていれば、この戦は勝ちなのだ。
 雷までが曹操の味方になってくれる。
 コレには賈詡(かく)もビックリというか、こんなん予想不可だろ。

 だが、曹操は自分の生存のために最大の犠牲を払う。
 長男・曹昂(そうこう)の命だ。
 儒教的な考えだと、子は親のために命を投げ出して当然とされている。
 でも、本当に死なれたら当然つらい。

 曹昂は生母・劉氏を亡くしたので、曹操の正妻である丁氏に育てられる。
 二人に血のつながりは無いが、親子の心情があったらしい。
 丁氏は曹操が息子を犠牲にして自分だけ生き延びたと非難して家を出て行く。
 って、この場面をナレーションだけで済ますのか!?
 蒼天航路 随一のツンデレ丁氏はクールに去るぜ。

 どんなに心を痛めても、前向きに考え次に生かすのが指導者に求められる。
 曹操は苦しみも糧にして、さらなる覇道を目指すのだった。
 ならばよし。


 袁術(えんじゅつ)

 そのころ、玉璽を入手した袁術は有頂天だった。
 中国では古来から印鑑社会だ。
 役職につくと印鑑をもらう。
 この印鑑が身分を保証しているようなものだ。
 とは言っても乱世だから名ばかり支配者とか、実質支配者とかが入り混じっているんですが。
 どう棲みわけていたのかは、ちょっとワカりません。

 かつて始皇帝が天下統一をはたしたとき、玉璽を作らせた。
 国家の実印みたいな物だ。
 始皇帝ってのは『キングダム』(AA)の秦王・政ですね。あいつは東アジア最大の重要人物だ。
 彼の組みたてた中央集権と郡県制は、現代日本にも影響している。

 玉璽を入手したことで、天命を受けた気になった袁術は皇帝を名乗る。
 なんで、こんなコトになってしまったんだ……
 袁術がどんどん猿っぽくなっているぞ。
 なんだろう、このトキメキは。もしかして、袁術が大好きなのか、俺は。

 猿とはいえ、袁術は一大勢力を築いている。
 その軍勢が曹操の庇護する漢皇帝・献帝を狙ってきた。
 相手は猿だが大軍だ。どう防ぐのか?


 曹操と荀イク

 対策を立てるのは荀イクだった。
 荀イクはどっちかというと、政治・戦略という長期的な計画を立てるのが得意だったハズ。
 こういう戦術は郭嘉の担当だと思うのだが、なんで荀イクなんだろうか。

 袁術との相性なのか?
 圧倒的大軍で攻めるというのは、戦術というより戦略的要素が大きい。
 ドラクエでボスに勝てません → レベルを99にしろ。みたいに、へっぽこに戦っても勝てるのが戦略的優位だ。
 だからこそ、戦略の部分から揺り動かすために荀イクの出番なのかもしれない。
 あと、袁術に家柄で勝てるのは荀イクぐらいだもんな。

 お前ら、皇帝の軍とか言ってるけど私利私欲でまとまっているだけじゃん。バーカ。バーカ。  極端に言えばこんな感じ。本質を突いたツッコミで袁術軍は総崩れだ。
 平和に暮らしている私にはイマイチ実感できないんですが、大義名分ってのはやっぱり大事らしい。
 人が人を殺すという狂気において、免罪符になるのは正義を行っているという大義名分なのだ。


 餓える袁術兵 泣く袁術 荀イク

 食うためだけに集まっている袁術兵には食の保証をし、懐柔した。
 作られた大義名分には、皇帝詐称を指摘して粉砕する。
 そして、実際の戦力である四将軍が倒されたら、袁術軍は組織として機能しなくなるのだった。
 大義も将も兵も、ぜんぶ粉砕されてしまって、袁術は泣いちゃう。

 荀イクはあえて袁術にトドメを刺さない。
 世間を騒がせることで、間接的に曹操陣営を助けてくれると判断したのだ。
 まさに戦略的思考ですな。

 あと、曹操が所属している袁紹派にとって袁術は共通の敵だ。
 袁術が存在している限り、曹操と袁紹は助け合い、争わない。
 曹操と袁紹は根本的な考えがちがうため、いずれ戦わなくてはならない存在だ。
 袁術の存在は、決戦までの時間をかせぐ材料になる。


 猿術

 そういえば、袁術の『袁』に けものへんをつけると『猿』になる。
 気がついたら袁術の画像ばかりになっていたので、泣きながら半分に減らしました。


・蒼天雑学
・三国志の薬物
 この時代、科学は未発達であり、科学そのものの地位も高くなかった。
 だが、医学・薬学はけっこう進歩している。
 三国志に伝は立てられていないが、張機(ちょうき)の『傷寒論』は優れた医学書として後世でも参考にされていたらしい。

 たとえば、麻沸散という薬は麻酔薬として利用されていたようだ。
 麻沸散は傷の治療に活躍している。
 この手の麻酔薬はうまく調整すれば、麻薬として利用できるはずだ。

 世界共通の薬物として酒の存在も見逃せない。
 蒸留技術がないので、アルコール度数が低く大量に飲まないと酔えなかったそうだ。
 曹操の詩『短歌行』にも出てくるように、日ごろのウサばらしには酒を飲むのがイチバンてっとり早いのだろう。
 『酒に対しては当に歌うべし、人生幾何ぞ』(参考)
 ちなみに、孫権は酒乱で、宴会のたびにすごく絡んできます。

 もうすこし後の時代だが五石散という麻薬も有名だ。
 この頃には議論を交わしあって気分を高揚させる、清談というものが流行っている。
 五石散を服用して清談をすると盛り上がるそうだ。

 この五石散は使いかたが面倒だ。
 使い方が難しく間違えると、死ぬ。
 さらに使用後は薬効を散らすため、歩き回らなくちゃいけない。これが散歩の語源だ。
 退廃的な行為のくせに、マジメに服用しなくちゃいけない。
 A型人間じゃないと使いこなせないな、こりゃ。

 使い方を失敗して死ぬ人もいるんだが「バカかお前は?」みたいな書かれ方をしていて、ちと気の毒だ。
 マジメで計画的な人だけが使ってくださいということなんだろうか。
 なお、この薬を使うと肌が荒れるらしい。
 だからダボっとした服を着て、楽なサンダルをはくようになる。(魯迅『魏晋の気風および文章と薬および酒の関係』)
 有名な五石散の服用者である何晏はいつもオシロイをつけていた。
 井波律子さんは肌荒れ対策の意味もあると考察している。
 薬物使用ってのは、いろいろと面倒なことが多いらしい。

 学園物で清談部とかがあったら、1年生は基礎練習でひたすら散歩なんだろうな。
「オレたちは 早く一発キメて清談がしたいんスよ!」
「バカヤロウ! 2時間の散歩もできないヤツが何を言う!」
 どんな部活動だ。


 今回の話は、蒼天航路(文庫版)5巻「その百十四 子脩の剣」から5巻「その百十九 荀イクの決断」まででした。(極厚蒼天航路だと4巻)
(更新2009/8/18)

2009年8月18日(火)
第二十話 不動の魔人

 荀攸(じゅんゆう)と荀イク 曹操

 曹操陣営に新たな人材が加わった。
 荀イクの甥である荀攸だ!
 年の離れた兄の子なので、甥だけど年上です。
 ジョジョで言えば、荀イク=仗助 荀攸=承太郎だ。

 軍師は増えたものの、みな曹操を意識しすぎている。
 有能すぎる上司をもつと部下が萎縮してしまうのかもしれない。


 楽進(がくしん) 楽進(がくしん)

 武官では、楽進(がくしん)が一兵卒から将に抜擢された。
 小柄ながら肝っ玉が強い。
 人呼んで"攻めの楽進"とは、まさしく彼のことだ。

 個人的なイメージは小さな花山薫だった。
 餓狼伝に堤城平が出てきてからは、堤のほうがあっていると思いましたが。
 楽進は防御せずに突っこんでいく。
 罠があろうと敵がいようとお構いなしだ。
 その蛮勇が兵を奮いたたせる。


 于禁(うきん) 于禁(うきん)

 さらに古参の将軍・于禁(うきん)も吼える。
 アニメじゃ出番なかったんですが、于禁は青州兵を吸収したときに曹操の配下になった。
 略奪をしている青州兵を止めるなど、公平で胆力に優れた将だ。
 出番はほとんど無いけどな!

 今回の敵は曹昂(そうこう)や典韋(てんい)を殺した張繍(ちょうしゅう)軍だ。
 于禁は彼らへの哀悼をささげ士気を高める。
 自ら動いて士気を高める楽進と、停止したまま士気を高める于禁という二種の方法で張繍と戦う。


 曹操軍 対 張繍軍 李通(りつう)・幼少のときの字は万億(ばんおく)

 張繍の軍師・賈詡(かく)と曹操が戦術を読みあう。
 曹操は細かく兵を分散させる。
 賈詡は曹操軍に対応するため、自軍も分散させた。

 大で小を討つのが戦術の基本だ。
 そのためには相手を分散させたい。
 相手を分散させるためには、まず自分が分散してみせる。
 高度な戦術の駆け引きだ。

 曹操軍がズッコイのは、めちゃ強い将軍がそろっていることだろう。
 敵の背後から急襲する新手は万億(ばんおく)だ。
 新人や無名を投入したのは敵を油断させるための策だったのかもしれない。
 最近、夏侯惇とかの出番が無いですね。


 呂布(りょふ) 高順(こうじゅん) 張遼(ちょうりょう)

 呂布が徐州をのっとってから、それなりの年月が経っている。
 いまだに破綻していないということは、呂布にもちゃんとした経営手腕があるのだろう。
 まあ、陳宮がひとりでやってくれているのかもしれないけど。

 今日も光って絶好調の呂布には騎馬軍団が形成されている。
 陥陣営(敵陣を陥落させる者)と あだ名される高順(こうじゅん)と、勇将の張遼(ちょうりょう)だ。
 人材がそろってきて陳宮はご満悦である。
 最近は呂布も言うことを聞いてくれるようになった。
 もう、こうなったら天下を取るしかない!
 陳宮の夢は無限にふくらんでいるようだ。


 逃げる劉備 関羽 対 張遼

 曹操 vs. 呂布、その間にいるのが劉備だ。
 国境地帯はイチバン紛争がおきやすい危険地域だ。
 自軍の消耗をさけるため、傭兵である劉備にまかせるという思想だろうか。
 劉備はずいぶん後まで、ずっと同じように国境に配置される傭兵部隊でありつづける。
 雇う人がいるということは、戦術レベルで優秀な軍隊だったのだろう。
 でも、戦略がないから放浪しつづける。

 劉備は紛争地域にいるのだが、あんまり危機感を感じていない。
 自分の第六感を信じているのだろう。
 でも、肝心な第六感がはたらくのが、いつも遅いんだよな。
 今日も気がついたと同時に逃げだしている。

 劉備を逃がすため、殿(しんがり)を勤めるのが関羽だ。
 もっとも難しいといわれる殿だが、関羽ならまかせて安心できる。
 と思っていたら、敵軍には関羽に対抗心を燃やす張遼がいた。
 武器は関羽と同じ青龍刀を選んでいる。
 青龍刀と青龍刀の激突だ!

 劉備は呂布軍がいつのまにか強くなっていることを感じとる。
 ここで、また魔性の第六感がひらめく!
 曹操に借りた兵は解散させて、呂布に投降しよう!
 もう、劉備がなにを考えているのが普通にわかりません。
 やはり英雄の考えは常人には理解できないものなのか……


・蒼天雑学
・万億(ばんおく)
 アニメ版の長さを考えると、今回が最初で最後の出番じゃなかろうか?
 この人は、歴史上では李通(りつう)と言います。
 幼少のときの字は万億であり、一般的な字は文達(ぶんたつ)という。
 蒼天航路では、なぜか古い字で呼ばれている。
 なんとなく、でっかい感じがするからだろうか?

 李通も私兵をもっている豪族タイプの武将だ。
 仲間とともに、二千余家の人々を集めていたらしい。
 三国演技では第十八回で張繍に襲われた曹操の後詰を助けて登場し、そのあとずっと出てこない。
 第五十八回で唐突に出てきたら、馬超に槍で刺されて落馬する。
 あまりパッとしない人だ。

 正史では曹仁を助けて「勇冠諸將(武勇は諸将第一であった)」と言われている。
 この記述のおかげで「三国武将で最強は誰だ?」論に名前がでてくることが多い人です。


 今回の話は、蒼天航路(文庫版)5巻「その百二十 袁紹の檻」から6巻「その百二十六 王者の投降」まででした。
(更新2009/8/24)
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