アニメ・十二国記 〜月の影 影の海〜 感想

 基本的に原作ネタバレです。
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月の影 影の海 1〜5話のあらすじ風の海 迷宮の岸風の万里 黎明の空東の海神 西の滄海

 月の影 影の海・第三話(再放送)
 アニメ版は陽子の闇の部分を全部杉本に渡している気がする。
 小説と違ってアニメでは登場人物の内面を描くのが難しいので、会話によって内面を見せようといういうのだろう。
 ついでに、視聴者に嫌われないように陽子はイイ子にしておきたいのだろう。
 ただ、そのせいで陽子が流されるだけの人間という印象が出てしまっている。

 そうなると、浅野は自分の主張を持てなかった陽子の弱い心だろうか。
 3話を見ていると、すぐに弱音を吐いていい人のようで何もできないダメ人間らしさが感じられる。杉本の毒が強すぎてわかりにくいけど。
 陽子が自立を考え状況に流されるのを止めようと考えるあたりから、浅野の存在意義も薄れ、文字通り流されて退場するのは、そう考えるとちょっと面白い。

 杉本なんだが、「私の世界」などと言っているのに「変な物近づけないでよ」とか、達姐(たっき)に名前を教えなかったり、さり気なく世界を拒否している。
 彼女が欲しかったのは、自分が必要とされている世界なのだろうけど、十二国の世界はこの女を必要としていない。
 本当はうすうすそれに気がついていて、だからヒステリックになっているのかもしれない。…好意的に考えれば。

 今回出てきた、達姐を刺し殺そうとするシーンは、後に楽俊を殺そうと考えるシーンとの対比がある。
 この時は餓えに追いつめられ殺意を持っていたのだが、度胸が無くてできなかった。
 楽俊の時は決断をする前に状況が悪くてできなかった。
 どちらも流動的な状況だったが、達姐事件をきっかけにして陽子は人を疑い獣への道を歩みはじめて、楽俊事件をきっかけに人を信じ獣から人へ戻ろうとする。
 そういう意味で、この辺が最初のターニングポイントだったのだろう。

 ところで景麒と舒覚の演劇をやっていましたが、あれって巧国でやっているから塙王が資金援助とかしているんだろうな。
 よく見ると景麒の額にツノらしき物が生えているのがポイントだろう。
 時代を変えて最近の事件を演劇にすると言うのは日本では良くあるが(忠臣蔵も太平記の時代としてやっている)中国ではどうだったんだろう?
 まあ、あちらは書く文字1つで首が飛ぶ国だから、その手の演劇はあまりやらなかったのではないだろうか。
(03/4/27)
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 月の影 影の海・第五話(再放送)
 そんなわけで大爆笑な5話でした。
 電波杉本の存在価値は暴言と暴走にあると見つけたり。

 陽子も見ず知らずの巧麟に切りつけられるより、クラスメートに切られるほうがこたえるだろう。
 これで今後もヤサグレまくって男を抱いて寝るより剣を抱いて寝ることに安心するのだろう。
 そんなわけで、この辺から陽子は獣になってしまう。
 獣だから、人間ではない楽俊に気をゆるすし、剣を振るうことにもためらいを持たなくなる。
 陽子が獣にと変わる分岐点で、かつての世界の友人と別れたのは偶然ではないだろう。

 ところでアニメでは偽王がどうどうと姿を見せているのだが、王様ってのはそう簡単に姿を見せるものなのだろうか。
 巧王も庶民(?)に姿を見せていたし、わりと気軽な世界なのかもしれない。
 それと、巧麟さんは王の勅命を無視しすぎだ。杉本も手ぬるいし…。
 まあ、電波にも人並みの心が残っていたということか。

 いざ、書いてみるとあんまりネタバレじゃなかった気がする(^ ^;
(03/5/11)
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 月の影 影の海・第六話(再放送)
 最初の攻城戦なのだが、攻めている正規軍は禁軍と言われているので、王の直轄軍のはずだ。
 装備・士気・錬度すべてにおいて最強のはずだが、王の直轄軍という立場上、王が不在で指揮系統が乱れているような感じだ。
 後の話である「風の万里 黎明の空」に出てくる禁軍はもっと強そうだった。
 騎獣はいないし、兵も少なさそうだ。
 やっぱり、麒麟が敵側にいると闘いにくいんだろう。

 アニメ版は原作よりも早めに情報公開している。原作を知らない人はどこまで陽子の正体に気がついているのだろう。
 知っている人間にとっては、もうバレバレすぎて気が気でないんですけど。
 やっぱり、「月の影 影の海」はラスト付近の怒涛のネタバレ展開が醍醐味だと思うだけに、アニメ初見の人はこのへんが不幸かもしれない。

 蒼でも猿でもないけど、蒼猿の出方はなかなか様になっている。
 ちょっと陽子さんが電波っぽく見えてしまいますが(ぉぃ
 と言うよりアニメの海客3人衆は、あまりに電波なんで、数百年もしたら「海の向こうの蓬莱国では電波ヤロウばっか」なんて思われていそうだ。
(03/5/19)
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 月の影 影の海・第七話(再放送)
 アニメ版だと賓満(ヒンマン)をつけられると十二国記語をしゃべれるようになる。だから杉本は役人と会話できるのだ。
 しゃべる言葉は違っても、しゃべる内容はやっぱり電波。
 クワで人を殴ろうとするなんて、やっぱり危険人物だ。
 塙麟も六太も土産もたせて蓬莱に送り返してやればいいのに。陽子なんかよりも、切実に国を滅ぼしかねない邪悪な存在だという気がするんですけど。
 ちなみにアニメ版では、人も蝕を越えて世界を渡れます。そもそも、こっちに来ているんだし。
 並の人間が渡れるのなら「黄昏の岸 暁の天」も話は簡単だったんだけど。

 原作とは違って陽子は朱姓の一座と旅をする。
 話にメリハリをつけるのと、陽子の人間的成長を見せるためだろう。
 ついでに親子の関係についての教育的な話とか…。「降りてこい。さもなくば、お前の仲間を切り刻む」とか言っといて今更という気もするが。

 朱姓の方々の芝居で、舒栄が偽王であるという疑いを題材にしていたが、あれってすごく微妙な題材を扱っている。
 ネタバレじゃない方で書いたけど、ヘタな事を言ったら首ちょんぱです。
 先代のことならともかく、現在進行形の話だからかなりヤバイだろう。
 しかし、なんでみんな偽王にだまされるかな。
 先代と同姓の者が王にならないと言う原則は「風の万里 黎明の空」で出てきた話なので、ひょっとしたら後付けの設定なのかもしれない。

 偽王でもがっちりと官僚を押さえていれば、それなりに国が持ちそうなので、下手をすると王がいらなくなってしまう(もちろん、最終的に国は破滅するんだろうけど)。
 そうなると、システムを考えた神様には都合が悪いので、血縁などで引き継げないように「同姓の王は立たない」という法則は必要不可欠だったのだろう。

 だから先王と同姓の人は、昇山をしないだろう。行くだけ損だし。
 そんなわけで、この法則は格好有名なんじゃないかとおもうのだが…。
(03/5/26)
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 月の影 影の海・第八話(再放送)
 大雑把に気がついたことだけ。
 電波杉ポンは十二国の神話に「でたらめじゃない」と食って掛かり(それも子供に)あいかわらずの電波っぷりを見せている。中国神話に詳しいのはファンタジーに逃げこむオタだからでしょう(アイタたた…)。
 しかし、この十二国の世界には極めて物理現象に近い神がいるのだが、この世界創造の話も実話(?)なのだろうか。
「華胥の幽夢」では、一代の王の治世が決して長続きしないことが判明しているが、それは神の計算ミスと言う可能性が感じられる。

 ついでに中国オタのマメ知識。
 天候不順や天変地異は王の治世が悪いからだという台詞があったが、その辺は中国でも一緒で地震や日蝕は天の警告とされている。
 逆に、龍などの珍獣が見つかるとめでたいらしく、皇帝が立つ前などはそう言う記録が目立つ。孫権などは赤いカラスが見つかったと年号を赤烏と変えたりしている。
 なお、この呉の赤烏元年(魏の景初2年・西暦238年)、倭の女王・卑弥呼が使者を魏に送ってきた。

 実際に天意の存在する世界では、天災の被害はとても大きいのだろう。
 陽子が剣を振るたびに、雹が1個落ちるといった具合に(- -;


 ついでに「蓬莱」は具体的に日本をさすのではなく、秦代の徐市(またの名を徐福)と言う男が海のかなたにあるとした伝説の島のことだ。
 それで、いつの間にか海の向こうにある「倭国」を「蓬莱」と呼ぶようになったようだ。この辺は詳しく知りませんが。
 でも蓬莱の話は出てきて、小説では陳舜臣の「秘本三国志」が面白いエピソードにまとめている。ちなみに、このころは蓬莱=亶洲(タンシュウ)としていて、蓬莱=倭の考えは無いようだ。
 だから、十二国の世界は、漢代に生まれ、その後は海客・山客のもたらす情報で彼の国の様子が伝えられているのだろう。

 オタ話ばかりで申し訳ない。


 月の影 影の海・第九話 第十話(再放送)
 管理人の怠惰により、九話と十話の感想を同時に書きます。
 この2回はオリジナルの要素が強い。
 オリジナルの部分を増やすのはいいのだが、さり気なく重要そうなエピソードを削っているのがちと寂しい。
 たとえば、陽子が楽俊と再開したとき、原作では楽俊が働くことができてうれしいと言う。
 アニメではカットされているこの台詞には、半獣であるために働きたくても働けない悲しさがある。
 不況が人の心をまずしくするのか…。
 杉本を役所に連れていった男たちも、生活に困っていなかったからああいう親切ができたのだろうか。

 その後の展開だが、壁落人のところに偶然やって来ると言う展開は、ちょっと強引だと思う。
 偶然にする必要があったのか?

 壁落人のところには杉本もやって来るが、ブチ切れて妖魔を呼んでおきながら、また戻ってきて「自分こそが王にふさわしい」と妄想をぶちまけるのは、かなりの変人だと思う。
 やっぱり、頭のネジが数本はずれているのか?

 あと、陽子が王だとわかってから楽俊が「景王さま」と呼ぶまでの間が妙に長いのと、陽子がすぐに訂正させなかったのが気になる。
 前にもかいたが「景王さま」と呼ぶことはいい感じの演出だと思うが、そのタイミングがちょっと変ではないだろうか。

 また、アニメ版だと延麒が陽子を探し回っていたから、正体が分かってもビビらないのがちと寂しい。
 この辺は原作を知っている人向けのサービスと、初めて見る人への配慮が交錯している部分なのだろう。

「……おいらには三歩だ」で、ちゃんと楽俊が3歩あるいてくれるのがちょっと微笑ましい。
 実際歩いてみたら4歩だったりしたら笑える。
「わたしが遠くなったんじゃない。楽俊の足が短いから遠ざかったんだ」とか言われそう。
 で、次回からは「東の海神(わだつみ) 西の滄海」の話がはじまる。
 ただし、尚隆が王になるまでの話だけで、斡由や更夜は出てきません。


 月の影 影の海・第十一話 第十二話(再放送)
「東の海神(わだつみ) 西の滄海」の話なのに更夜が出てこないとテレビを破壊しそうになった人も安心してください。そのうちにいい事があります。

 六太をなでようとした禎衛の手をはらっておきながら自分はなでる少春にちょっと萌え。
 本当は禎衛の方が先輩のはずなんですけどね。

 少春はもう出てきませんが、少春役の釘宮理恵さんは別の役で登場します。ちなみに男の子なんで私はキャスト見るまで気がつきませんでした。

 六太が蓬莱に逃げるきっかけを作った雁の女官は驪媚(りび)でした。
「東の海神(わだつみ) 西の滄海」で六太と捕らえる人間の檻にされた人ですね。
 アニメ版はこういう細かいところで無駄にファンサービスしている。気づかんちゅうねん。
 ちなみに、驪媚役の勝生真沙子さんは、細かいところで色々登場しています。
 たしか、景麒の女怪である芥瑚(かいこ)や、泰麒の女怪である汕子(さんし)とか。……女怪ばっかりですね。

 12話の杉本は電波出しすぎていて本気で困りました。
 だから「凶暴 杉本」「殺そう 杉本」「電波杉本」「アニメのお姉さん 電波」とかの電波ワードで検索に引っかかるんですね。トホホ…

 今回、麒麟の末路について語られている。麒麟は美味いらしい。
 以前から疑問に思っていたのだが、国が傾きかけてヤケクソになっている王の中で1人くらいは食っちゃった人とかいるんだろうか。

 あと原作でも号をつけてもらえていない景麒だが、予王はなんて名前をつけたのだろう。
 あの人は景麒ラヴなんだから名前をつけたと思うんだけど。
 異国風に「フランソワーズ」とかそんな感じで「主上、そのセンスはあまりに…」と病に落ちたのだろう。
 なんにしても、自分の精神を確実に苦しませてくれる王を選ぶマゾな性質はなんとかできなかったのだろうか。

 そう言えば、予王と言うおくり名だが、「予」を漢和辞典で調べると「なまける」という意味があるらしい。
 おくり名は基本的に死後に決められるので、生前の行いで字は決められるらしい。
 やったことに対して、「予」はそれなりに優しい選択だと思う。
(03/6/29)
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 月の影 影の海・第十三話(再放送)
 主がヤケクソなら麒麟もヤケクソになると言う感じで塙麟が陽子をかばって死亡確認される。オウムが飛びこんでいくのは、食べに行くからなんですね。本当に麒麟は報われません。
 妖魔があれだけお行儀が悪いと言うことは、王の罪がそうとう重いのだろう。参考「黄昏(たそがれ)の岸 暁の天(そら)」
 たぶん塙王は門を出てすぐに全身の骨がとけてフニャフニャになっています。

 それで、原作のラストは景麒とのシーンで終わっているのだが、アニメは次回の引きを残している。
 十二国記シリーズはいつもラストシーンが始まりで終わっていると思う。
 苦難の末に王になることを決意したところで終わり、やっと自分の王を選ぶ事ができ王が即位して終わり、生まれた国の最初の根本となる方針を決めて終わり、救えるのであればただ1人のためだけの法をもつくる決意をみせて終わり、ビンタで終わる。最後はウソです。

 常になにかと闘い、それに勝利して道が開けたところで話は終わっている。
 だから十二国記のラストはなんとも言えないさわやかな開放感がある。(と思う)
 そんなワケで次回作は戴国の乱が沈静化に向かった後の話で王を再び見つけ出し終わると見ているのだが、どうだろう。
 そして作中時間で約4年後(?)に峯麒の帰還と王選びがあるはずだ。秦麒の話とかぶる可能性があるので、メインでは扱わないだろうが芳と慶の縁は深いので陽子視点で話が進むかもしれない。
 しかし、蝕が多過ぎる。世界の重要12人+12匹のうち胎果が増えすぎている。
 これは十二国の世界とこちらの世界の境界が崩れはじめているためだろうか?
 そして、本来親交の少ないはずの王たちが共同で事に当たろうとする傾向が見られている。これは果たして天帝の意にそうものなのだろうか?

 まあ、そういう心配は本が出てからして(ぐはっ)、尚隆は今回の陽子親征もユーザーサポートにお伺いを立てて問題無いことを確かめたんだろう。

 さて、魔性の子・杉本は高里くんに何をするつもりだろう。
 約1年前の私と友人間では、こんなやり取りがあった。
D>  とら的には杉本嬢が
D> 「私の方が王にふさわしいのよ『御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓う』と制約しなさい!
D>  するのよ!」と高里くんの頭を押さえて土下座させようとするのでは無いか心配です。

あわわわわ。
杉「あんたはダメな麒麟なのよ私がひろってあげるから制約しなさい!」
高「そうか僕はダメな麒麟なんだ…(へなへなー)」
泰国あらため杉国。(あわわわわわ
杉本なら十二国まるごと平定してくれそう。
そして平定したあとコケて全部ふっとばしそう…
 まあ、そんな感じで原作で、杉本を日本に置いていったのは実に素晴らしいことだと思う。
 杉本が王になったら、絶対に周囲4ヶ国ぐらいをまきこんでこけると思う。タイトルが7国記になってしまう。
(03/7/9)
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ネタバレじゃない感想
月の影 影の海 1〜5話のあらすじ
風の海 迷宮の岸
風の万里 黎明の空
東の海神 西の滄海

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参考リンク:十二国記・公式サイト