オルビム（1～10）感想

オルビム（1～10）感想

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2007年1月19日（3号） 第1話　生徒会長・黒

　監修：板垣恵介、原作：かさはら倫尚、漫画：井上元伸ッ！
　板垣ワールドがどんどん増殖しつづけている。
　そのうちに、チャンピオン板垣とか出るね。（ムチャすぎ）

　主人公は大庵（たいあん）高校 2年D組黒逸大冴（くろいつだいご）だ。
「海外ならとっくに飛び級で博士号」
　サイズの合わない靴をはいて、高校生100m走の新記録と同タイムを弾きだす。
　容貌も悪くない。
　立候補していなくても、90%の票を集めて生徒会長になるカリスマの持ち主である。
　そして、17歳にして借金三億六千万円だッッッ！

　偽名をつかい金融機関から三億を集めて、修学旅行に学年ごと世界一周クルージングの資金とする。
　どうも主人公・大冴はイベント大好き人間のようだ。
　ヤクザにやとわれた外国人犯罪集団も恐れず、己をつらぬく。

　完璧超人だけに大冴は格闘も強いのだ。
　迫力だけで、犯罪者集団を圧倒する。

　グレート巽の人間力や、丹波BOYの演出力を持ちつつ、鞍馬並みの天然素材というところだろうか。
　なんか餓狼伝の人ばっかりだ。
　刃牙よりも地に足の着いている超人かもしれない。

　なんで、こんな変態高校生が誕生したのか？
　その背後には産婦人科医・火村律善がいた。
　大リーグの鈴置一朗、ボクシングのマイク・タイレル（またタイソンいじるのか？）、企業家のビリー・ゲイツなどの偉人がいる。
　彼らの受胎は火村によって操作されたらしい。
　それでも、なお失敗作だと言う。
　とりあえず、マイク・タイレルはなんか納得だ。

　火村はローマ法皇ともつながっているようだ。
　う～む。「ローマ法王が悪の皇帝に見える件」ってのも、実は本当だったのかもしれない。

「"オーガナイズドバイオモジュール"」
「"八の大罪"は最終段階に入ったと――――――」

　大冴をふくめて八人の受胎操作人間がこの世の中にはいるらしい。
　それが八の大罪なのだろう。
　生命をもてあそぶのは、倫理的に罪といえる。
　キリスト教には『七つの大罪』という言葉がある。
　人間の犯しやすい七つの「傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲」問題のことだ。
　七つの大罪をモチーフにした映画「セブン」（wikipedia、Amazon）というものがある。
　幸い、関東圏では明日の日曜深夜に「セブン」を放送するので、見てグッタリしてください。

　余談だが、餓狼伝の堤城平は最初俳優のブラッド・ピッドをモデルにする予定だった。（餓狼伝格闘士真剣伝説）
　ブラッド・ピッドは「セブン」の準主役である。
　だから、まあ、多少は関連があるかもしれない。

　鈴置一朗とビリー・ゲイツを足しても（マイクはいらない）まだたりないような大人物が地球上に八人いる。
　人類の未来はどうなるのか！？
　むやみにスケールの大きい新作が誕生した。

（更新 07/1/20）

ｂｙ　とら

2007年2月19日（4号） 第2話　標的は黒

　監修：板垣恵介、原作：かさはら倫尚、漫画：井上元伸ッ！

　超カリスマ高校生の黒逸大冴（くろいつだいご）は、今日も大人気だ。
　携帯電話で株取引をしながら、女子に数式を教えて、生徒会会長として相談に乗っている。
　聖徳太子みたいなヤツだな。

　しかし、携帯電話に縛られているようでは、まだ小物だ。
　あらかじめ「○○株を平均●●円で買って、◎◎円まで上がったら売れ」と指示を出して、結果報告だけ聞けば大丈夫なレベルになれば、超一流だ。
　現在の情報を確認しなくても、過去の情報から未来を予測できたほうが、より高度な知力を必要とする。
　大冴には、まだ成長する余地があるようだ。
　最終的には、どこまで進化するのだろうか？
　背中に鬼は出ないよね。

　モテモテな大冴だったが、本人は迷惑そうだ。
　同じ病院で同日に生まれた友人・ハルキと一緒にいるほうが楽しいらしい。

　この設定ッッッ！？
　女性向け対策もバッチリだ！
　たしか『衆道を嗜まざる女子（おなご）などおらぬ』と言う有名な言葉があった。
　この一撃で、チャンピオンREDの女性読者は心をワシ掴みにされたハズッ！
　…………でも、REDの女性読者って何人ぐらいいるんだ？

　地下の研究室で、法皇直属の特殊工作員シスター・ジョアンナは"オルビム"の秘密を聞く。
　遺伝子操作された1/10サイズのゾウやキリンが生息する"箱庭の大陸"が地下にはあった。
　やはり、秘密の研究所といえば地下だ。怪しげで、悪の香りがする。
　刃牙のリアルシャドー部屋も地下だし。

　刃牙で巨大カマキリが出たときに書いたが、生物の大きさは適切なサイズになっている。
　環境が同じままで小さくしたり大きくしたら、かえって弱くなるのだ。
　つまり、"箱庭の大陸"は特殊な環境になっているのだろう。
　または生物に苛酷な環境を与えていることになる。
　悪魔の実験室ですな。

　ライオンを倒すウサギが、そこにいた。
　ウサギを強くしている秘密こそ……

『オーガナイズドバイオモジュール（極少群生生命体構成）』
『略称』
『オルビムだ!!』

　ウサギの体内に潜む微小の生命群がオルビムの正体なのだ。
　10000000倍に拡大しても10cm以下に見えるサイズである。
　ウイルス（数十nm～数百nm）などに比べるとずいぶん大きい。
　未知の生命体なのだろうか。

　体内に別種の生命を共棲させることで強くなるパターンの作品はけっこうある。
　有名なところでは「バオー来訪者」「寄生獣」「ARMS」などだ。

　鳥や魚などの群は、あたかも一匹の生物のように行動する。
　そんな群生の特性を持っているのがオルビムなのだ。
　オルビムにはテレパシーのような機能がついているらしい。
　科学的に話が進むと見せかけて、あやしい方向に流れたな……。

　ジュラシックパークの作者であるマイクル・クライトンが、ナノテクノロジーの怪物を描いた『プレイ ―獲物―』という小説がある。
　この小説でも群生の行動が説明されていた。
　簡単に書くと、ひとつひとつが簡単な命令を実行しているだけでも、高度な行動が可能らしい。
　周囲の仲間が逃げたら、自分も逃げる。周囲が何かを見つけたら、自分も近づいてみる。そういう積み重ねで、知性ある行動っぽくなるそうだ。
　実は、オルビムも同じ原理かもしれない。

　なお、この小説は話として、あまり面白くない。
　群生の解説部分は面白いんだけど、ストーリーがジュラシックパークなんだよな。
　ハイテクを駆使して金儲けを企むけど、欲の皮突っ張って大失敗だ。
　マイクル・クライトンの6割はこんな感じです。

　バチカンの火薬庫と呼ばれるシスター・ジョアンナが、大冴に興味をもったらしい。
　試しに、大冴を攻撃してみようと行動するのだった。
　この大雑把で爆発しやすいところが、火薬庫と呼ばれるゆえんか。
　イロイロな物や人を爆発させてきたんだろうな。

　600mの狙撃は大冴に察知され、失敗に終わった。
　今度は至近距離での戦闘だ。
　スタンガンを強化したような武器『マイオトロングローブ』を使用する。
　マイオトロンってのは、FBIも使用しているらしい。（参考）
　映画『ハンニバル』で、レクター博士をノックダウンさせたのも、たぶんマイオトロンだ。

　コイツを喰らって、さすがの大冴も目がうつろになってしまう。
　だが、大冴の体内に棲むオルビムが、ムリヤリ体を動かす。
　人間離れした動きでシスター・ジョアンナの服を破りさる。
　敗北したシスター・ジョアンナに「抱かれたい」と思わせる、強力なカリスマ（？）であった。
　あのムチャな動きに、求愛効果でもあったのだろうか？

　しかし、大冴はハルキのほうが重要っぽい。
　オルビムは女体を好まないのだろうか？
　そして、残る七人のオルビムは、どこでナニをしているのだろう。

（更新 07/2/21）

ｂｙ　とら

2007年3月19日（5号） 第3話　覚醒、被験体10736

　黒逸大冴と同じ病院で生まれた春樹は、大冴のかげに隠れて地味で目立たない存在だった。
　好きな子に名前もおぼえてもらえない。
　この間『ゼルダの伝説』をやっていたら、女の子に名前を間違われていた。
　馬の名前はおぼえているのに、オレは馬以下かッ！
　春樹も、きっとこんな気分なのだろう。

　そんな春樹だが、なぜか顔面の筋肉を自在にあやつれるようになってしまう。
　こうなるともう、一人メイキャッパー状態だ。
　ほんの数ミリ顔を変化させるだけで、モテモテ君に大変身する。
　数ミリのコントロールができるなんて精密動作タイプですね。

　そして、女の子を誘ったらあっさりデート成功だ。
　オマケにホテルにまで行ってしまう。
　このイキオイで、性交も成功か！？（超親父ギャグ）

　キスのさいに唾液を媒介にオルビムを少女におくりこむ。
　無意識にだが、春樹はオルビムの力に目覚めはじめているのだ。
　自分の筋肉を自在にあやつり、他人の体をも意のままにあやつる。
　刃牙のリアルシャドーより数段上の力を手に入れたらしい。

　少女を四つんばいにさせて、下半身丸出しを命じる。
　命じるけど、見てるだけだ。
　春樹は十代なのに枯れているのだろうか？

　そして、少女にアナルへ指挿入を命じる。
　こッ、こいつ若いうちからなんてマニアックな性癖をッ！？
　春樹は少女を置いて街に飛びだす。
　さらに放置プレイまで追加しやがった。ここまで変態に覚醒するとは……
　……刃牙を超えたかもしれない。
　でも、尿浴びには勝てないか。方向性がちがいすぎる。

　一方、大冴は賞味期限で不祥事を起こしたウェリナガの株主総会に出席していた。
　新社長の背中に『再生』と刺青して覚悟を見せつける。
　板垣恵介の格闘士烈伝いわく『迫力があるから説得力もあるっていう寸法だった。』
　これで学校行事の資金も万全だ。

　しかし、大冴は祭は次で最後だと言う。
　八人のオルビムが目覚め、壮絶なサバイバルゲームが始まろうとしているらしい。

　今回、監修：板垣恵介、原作：かさはら倫尚の文字がなかった。
　井上先生は一人立ちしたのだろうか？
　ならば、今回の変態っぷりはすべて井上先生の仕事である。
　良き変態です。

（更新 07/3/21）

ｂｙ　とら

2007年4月19日（6号） オルビム感想　第4話暴虐の春

　太平洋のド真ン中に産婦人科医・火村律善の所有する律善島がある。
　島に自分の名前をつけちゃうセンスが、地下の独裁者って感じだ。
　カイジの会長みたいに、ペリカ札とか作って自分の顔を入れてそうな気がする。

　律善島に集められたのは、八人の少年たちだ。
　そして、少年たちは律善の孫娘を紹介される。
　人種や国籍も関係ない圧倒的な魅力の前に、少年たちは一瞬で恋に落ちた。
　そして、覚醒する！
　屋根をも超える跳躍力に、剛力に、三時間の潜水にッ！
　ちょっと、水の中三時間というのはヘンな行動ですけど。

　八人のうち勝者が、少女を得る事ができる。
　ここに、超人たちのバトルロイヤルが宣言された。

　ただ、春樹は目覚めなかった。
　まわりが変態に覚醒しているのに、一人だけ仲間ハズレってのは、ヒドい疎外感だろう。
　しかも、いきなり争奪戦から脱落しているようなものだし。
　春樹の性格は、この時ゆがんだに違いない。

　春樹は大冴を誘いだし、オルビムで操った少女たちに襲わせる。
　過剰な攻撃力ゆえに、よけると少女たちの体が傷つく。
　大冴はおとなしく打撃を受けるしかない。

　春樹は自分で戦わない。
　ゆがんだ性格であり、大冴を恐れているのだろう。
　まだ、手に入れた力の使いかたをワカっていない。

　大冴はダメージを受けることで出血する。
　その血を少女たちに与えることで、春樹の呪縛から解放した。
　ピンチをチャンスに変える見事な一手だ。
　これが、刃牙だったりすると三秒で射精して少女たちを解放しちゃったりするんだろうな。
　スマートさで、大冴におおきく劣っている。
　だが、そんなドロ臭さが範馬刃牙の魅力だ。

　オルビム8人の闘いが、ついにはじまる。
　大冴の能力は一体どんなものなのだろうか？
　春樹の場合は変身のようだ。
　やっぱり、サイボーグ009のようなタイプなんだろうか。
　そうなると、大冴の能力は加速装置かもしれない。

　でも、さすがに火を吹くオルビムはいないと思いますが。

（更新 07/4/22）

ｂｙ　とら

2007年5月19日（7号） オルビム感想　最終話開幕！ロマンチック大戦！！

　疵面は休載でピンチだが、オルビムは最終回でもっとピンチだ。
　次回作にご期待ください。

　オルビムは、火村律善がナチスドイツで発見した。
　やっかいな物はとりあえずナチスのせいにしておけばOKみたいな風潮だ。
　悪役としては便利だし。

　総督の死後を任せることのできるカリスマを作るためにオルビムは開発された。
　柘植久慶『「三国志」合戦事典　英雄たちの激闘全ガイド』によると、組織の長は後継者を育成する配慮が必要らしい。
　一般論としてはともかく、カリスマで成り立っている組織には当てはまらない。「合戦事典」はデキの悪い本だ。
　カリスマってのは、代わりが無いから貴重なのだ。No.1でオンリー1ですよ。
　花山が死んだら、花山組に代わる人材などいない。花山組は瓦解するしかないのだ。

　人間はいずれ死ぬ。
　カリスマで成り立っている組織を存続させるには、忠誠の対象を個人から組織に切り替える必要がある。
　江戸時代の初期では、藩主個人に対する武士個人の忠誠を藩に対する武士一族の忠誠に切り替える作業が行われている。
　殉死の禁止などで、個人の個人に向けた忠誠心は、組織への忠誠にかわっていったのだ。（参考「殉死の構造」）

　ちなみに『シグルイ』の時代は、まだ個人が個人に忠誠を尽くす時代だ。
　藤木源之助の考えはやや先進的なものである。
　元が武士ではないので、世間とすこしズレているのかもしれない。

　でも、カリスマを人工的に作りつづけることができれば、カリスマ組織のままでやって行けるンじゃねェの？
　と、ナチスは考えたらしい。
　……考えるわけ無いよな。
　自分よりスゴいカリスマが出てきちゃったら、現総督の立場無いじゃん。
　反乱起こされたら困るよ。カリスマは二人もいらん。
　カリスマが重要だった戦国時代だと、後継者と現当主の間に勢力争いが起きることは珍しくない。
　有望な後継者は、有力な簒奪者にもなるのだ。

　だから、火村博士の行動は独断専行なのだろう。
　法皇にも「オリビムを注射すれば、すごいカリスマになりますよ」と言ってダマしたんだろうな。
　でも、火村博士の狙いはもっと大きいらしい。
　最強のオルビムと孫娘が結ばれたとき、なにかが起きる！
　でも、最終回なので謎は謎のままです。

　大冴 vs. 春樹は、春樹の圧倒的優位に進む。
　なにしろ春樹は筋肉大移動ができるのだ。
　最近は筋肉大移動がブームですか？

　オマケに大冴は血＝オルビムを出しすぎている。
　優しさがアダになった。
　しかし、優しさは人間にとって大切なものなのだ！
　ということで、大冴が気合勝ちする。
　真空状態を作ると聞くと、柳龍光を思い出す。
　酸欠も加わって、マジ一撃必殺なのだろうか。

　俺たちの戦いは、始まったばかりだ！で、終わってしまった。
　独特のハッタリ感は好きだったので、かなり残念だ。
　ちょっと超人バトルになるのが遅すぎたのだろうか？

　あと、主人公・大冴の強さと美貌以外のカリスマ感が弱かったのか痛い。
　同じ方向性のカリスマだと、『ベルセルク』のグリフィスが近いと思われる。
　大冴は、比べるとかなり見劣りする。
　ただし、大冴はまだ若い。成長の余地が多いにあるのだ。五年後はもっとスゴいことになっているかもしれない。

　やっぱり人間としてのスゴさってのは、知性と度量と気力だと思う。
　今回のラストで春樹を許したような度量を見せるシーンがもっとあれば良かったんですけど。
　なんにしても、井上元伸先生の次回作を要チェックだ。
　また、板垣先生がプロデュースしたりするのだろうか？

（更新 07/5/26）

ｂｙ　とら

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