今週の『どげせん』 (第1話～第10話)

今週の『どげせん』 (第1話～第10話)

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2010年11月5日（NO.2238） 第1話究極形態

　板垣恵介「企画・全面協力」、RIN「作・画」、秀井次吾朗「シナリオ協力」、斉藤直葵「CGart」
　『どげせん』が週刊漫画ゴラクで連載開始だッ！
　情報中毒者（略）さんも言っていますが、作・画のRIN先生は笠原倫先生っぽい。
　画業20周年記念で『イタバキ』を描いたときに、板垣先生と話が弾んで連載決定したんだろうか。

　主人公は土下座スタイルで登場する。
　上にカラスが大量にたかっていたので、最初のうち姿はみえなかったんだけど。
　これは長いあいだ微動だにせず土下座していたってコトだろうか。
　いわば、土下座千本ノック状態だ。

　顔をあげた、その容貌はッ！
　全盛期の田代まさし似？
　髪型とか、眼鏡とか、ヒゲとか。
　いや、ヒゲは田代まさしより少ないな。

　スーツにネクタイをしめながら、足元はスニーカーだ。
　動きまわる必要がある職業、または生活をしているのだろう。
　その男の姿は二日後とあるパチンコ屋で目撃される。

　主人公の隣に座るホスト・ヒロシはトラブルを起こしていた。
　ヒロシは自分の女をヘルスに沈めて借金100万をチャラにしていたのだが、その女が逃げ出してきたのだ。
　だが、女を追うヤクザ迫田がもう店内にやってくる。
　女がヒロシの所へ向かい、ヒロシはパチンコ屋にいると読んでいたようだ。
　この迫田というヤクザ、眼光も鋭く頭も切れる。

　迫田は女が客のチンポを噛んだと因縁をつけ借金を200万に増額する。
　ヒロシは自分が働きたくないので、女に泣きつく。
　200万円ぐらいなら、なんとかなりそうな金額だけど、自分が苦労するのはイヤなのが人間のサガってものだ。
　つうか、ヒロシはもうちょっと泣きつくセリフを吟味したほうがいいぞ。

「お前が店に戻ってくれないとオレもうマグロ漁船かも――」

　自分の都合だけで泣きついているもんな。
　漁船にのるハメになったら、お前と逢えないからイヤだ。ぐらいは言わないと。

　そして、ヤクザへの謝罪も頭をさげるだけだ。
　これでは誠意が足りない。ダメダメだよ。せめて土下座しよう。
　やはり、土下座のプロを呼んでくるしかないのか？
　お前はおとなしくマグロをとりにいけ。
　むしろ、臓器を売ってお前がマグロになれ。

　女・聖恵はヒロシの身勝手さに幻滅し、走って逃げる。
　そこに登場したのが、主人公だ。
　タクシーに乗って颯爽登場！
　さっそく逃走！

　主人公は聖恵が困っていそうだったので、あとをつけて助けに入ったようだ。
　聖恵を見守りつつ、周囲を見渡してタクシーを確保しておく視野の広さに油断の無さ。
　この男もかなりデキる。
　もしかしたら、のぞきの達人かもしれない。

　街を出るか警察に行けば聖恵は助かる。
　だが、どちらもイヤだという。
　履歴書の住所はウソだし、ヒロシも自宅を知らない。
　聖恵はかなりの訳アリ女のようだ。
　穏やかじゃないですね。

　どうやって聖恵をヤクザから逃がすのか？
　主人公は駅前のスクランブル交差点に迫田とヒロシたちを呼びだす。
　通行量の多い交差点だ。
　信号が青になり、主人公と迫田は道路のド真ン中で対峙する。
　主人公は聖恵に逃げられたというが、それで引きさがる迫田じゃない。

「この…通りでございます」
「どうか…お赦しを」

　DO・GE・ZAッ！
　見開き大ゴマで6ページにわたる超土下座だ。
　それはそれは一点の曇りもない見事な土下座でございました。

　スクランブル交差点の真ン中で土下座するものだから、大渋滞が発生している。
　相手に身をゆだねつつ、外部からプレッシャーを与える作戦か？
　防御と攻撃を同時におこなう高等戦術だ。
　やはり、この男ッ！デキるッ！？
　得意なのは、のぞきだけじゃなかった！

『遠くからも一目でわかる上下関係』
『でも本当に追い込まれたのは…』
『むしろ…ヤクザの方』
『なぜかそう見えたんです』

　相手が抵抗するのであれば、攻撃もできる。
　だが土下座だと全面降伏だ。
　殴る蹴るは、できるだろうけど、もう相手を追いこむ余地がない。
　だって降伏しているんだもん。
　これ以上どうしろというのだ。

　そして、周囲は渋滞になっている。
　ヤクザであっても世間に迷惑をかけるのは気まずいだろうな。
　これは、追い込まれている。

　土下座マンは、すでに選択肢を捨てて相手に身をゆだねた状態だ。
　迫田にできることは、土下座マンを許すか、さらに待つことだけ。
　最後の意地なのか迫田は土下座マンには声をかけずに去っていく。
　ヒロシを追いこむと宣言したのが、土下座マンに対する許しだろうか。

『土下座
　それは命への執着の究極形態』
『命恋（いのちごい）である』

　土下座で解決。これが『どげせん』か！？
　とりあえず、土下座のインパクトですべて持っていきやがった。
　でも、ただ土下座するだけじゃない。
　地の利を活かした知性派土下座ですね。

　今回たすけた聖恵は、他にも厄介ごとを抱えていそうだ。
　ヤクザ迫田も恥をかかされたまま終わるとは思えない。
　いや、土下座を許すのって恥なんだろうか？
　相手の面子を保つという点で、スゴい攻撃ですね土下座って……

　まあ、とにかく一話完結のようだが、いくつか謎がのこされた。
　次回以降にこれらの謎が明かされるかもしれない。
　明かされなかったら、土下座で謝罪ッ！

2010年11月12日（NO.2239） 第2話 30年の法律

　土下座でなんでも解決？
　最強土下座伝説どげせん第二話だッ！
　今回も主人公の名前が出てこないぞ。
　こうなったら、とりあえず田代と呼ぶか？呼んじゃうぞ？
　というワケで、本名が判明するまで田代（仮）と呼びます。

　主人公の田代まさし（仮）→

　今回の田代（仮）は『千ちゃん食堂』にやってきた。
　頑固そうな親父がひとりでやっている汚れた感じの店だ。
　メニューはラーメン、チャーハン、カレーなどの9品だけ。
　30年間つづいているらしいので、味は悪くないのだろう。

　店には先客として高校生3人がいた。
　そのひとり、樫宮（かしみや）高校 2-B 田中白也（びゃくや）は歴史の変化を目撃する事になる。

　メニューを右から左までながめつつ、田代（仮）は悩んでいる。
　どうも決定打にかけているようだ。
　そこで、メニューの最初と最後に登場する単語に注目する。
　ラーメンとカレーだ。どちらも超定番ですな。

「カレーラーメンには」
「できませんかね」

　田代（仮）、ナニ言いだすんだ！
　カレーもラーメンも単品でじゅうぶん美味しいのに。
　なんでも混ぜればイイってもんじゃないぞ。
　やっぱり田代（仮）は頭のネジがどっかゆるんでる。

　頑固店長はメニューに一切の変更を認めない。
　半チャーハンもダメだし、ラーメンに酢を入れるのもダメ。
　範馬勇次郎なみに顔をシワだらけ、トーンだらけにしてスゴむ。
　この迫力で過去30年間無敗だ。

　だが今宵の客はお願いの究極変態形態をあやつる男である。
　そう、無敵の土下座つかいだ。
　高校生たちが店を出た後の無人の時間を狙う。
　店長（店名からするに、千ちゃん）が背を向けたスキをついて、田代（仮）が仕掛けた。

　DO・GE・ZA！
　全裸でッッッ！
　顔の一部だからメガネはつけたまんま。
　流れるような動きで田代（裸）は土下座する。
　これは全裸流水の土下座だ。

（おかしいだろ確実に）（抱きついてきたらオレは……）（狂人か！？）（チンコでかめ！）（友情の始まり… ……いや）（ドッキリ！？）（そこまで頼む奴はいなかった）（正油ラーメンでいいじゃん）（作ってやった方がいいのか母ちゃん？）（洋服たたむな～）（この際ダキョーしても…）（否!!）

　千ちゃんの脳内に錯綜する思い。
　そして――――――――

『30年の歴史がわずか1秒で』
『覆った!!』

　短時間で完全脱衣達成の早業ッ！
　そして、全裸土下座ッッッ！
　もう、なんで全裸なのかわかりませんよ。
　買う前に『どげせん』だけ立ち読みしたんだけど、笑いをこらえるのが大変だった。

　でも、当事者にとってはたまらない。
　ここに人が入ってきたら、どうなるか？
　全裸の男に土下座させている所を見られたら、ご近所に悪いウワサが流れてしまう。
　もはや店主は降伏しカレーラーメンを作るしかない。
　全裸で抱きつかれたら、友情が始まっちゃうかもしれなかった。

　忘れ物を取りにもどった田中白也は、田代（仮）がカレーラーメンを食べているのを目撃する。
　田代（仮）は白也が樫宮高の生徒だと見抜いているようだ。
　もしかして、田代（仮）は樫宮高に赴任するのだろうか？
　土下座で歴史を動かす男が目指すものはどこだッ！？

　1話とは雰囲気を変えて来た第2話だった。
　土下座で解決するところは一緒だけど。

　1話のヒロイン聖恵は、なんかワケありっぽかったが、もう出てこないのだろうか？
　樫宮高と田中白也は今後も絡みそうな気がするけど。
　なにしろ、樫宮高の関係者がよく来る店で伝説を作ったのだ。
　これなら樫宮高で一目置かれる男になる。

　主人公の目的はなんなのだろう？
　樫宮高を土下座で制覇する気か？
　そして、学校をのっとり自分色にそめあげるのかも。
　最終的に世界初の土下座専門学校、通称『どげせん』が完成したりして。

　板垣恵介いわく、強さとはワガママを通すことだ。
　主人公は自分のワガママを土下座で通している。
　つまり、土下座＝強さなのだ。
　謝罪の土下座転じて、攻めの土下座へッ！
　土下座レジェンドは始まったばかりだ。

2010年11月19日（NO.2240） 第3話先のない懇願

　唯一無二の土下座漫画、土下座主人公ッ！
　今日は冒頭0コマ目からピンチだぞ。
　開始前に賞味期限10月7日の牛乳を飲んでいたのだ。
　作中が何月何日かしりませんが、読者時間としては11月19日ですぜ。
　一ヶ月前の牛乳なんて、ヨーグルトだよ。

　ちなみに私は冷蔵庫に入れわすれてダメになった牛乳を飲んだことがある。
　すごい異臭のする飲むヨーグルト（シュガーレス）になっていた。
　いきおいよく口にいれたので一口だけ飲んでしまい、結果は下痢ですよ。
　得た教訓として、牛乳は腐ったらニオイでわかる。
　それと、ダメになったものを冷蔵庫にもどすな！二次災害が起きるだろッッッ！

　主人公はコンビニのトイレに駆けこみ事なきを得た。
　痛んだ牛乳を一口飲むと、10倍の量が出ていく。（※ 個人の感想です）
　コップ一杯（200mlぐらい？）飲んだ主人公は、2kgぐらい出すことになる。
　一度のファイトで終わると思うな！

「コンビニでトイレだけ借りるのも気が引けるモノだ」

　ああ、これは良くわかる。
　ウ●コだけ店に落としていくのは申し訳ないよね。せめてお金も落としていかないと。
　だが、主人公は買わずに店の役に立つ事をしようと考える。
　それは立ち読み・座り読みの高校生に注意をすることだった。
　いや、フツウになんか買っていけばいいのに。カレーとか、カレーパンとか、ウコンの力とか。

　高校生の中には前回登場した樫宮（かしみや）高校 2-B 田中白也（びゃくや）がいた。
　主人公が千ちゃん食堂でおこした奇跡の正体を知る事ができるかも。白也はひそかに期待する。
　そして、主人公が動いた！
　はやくも土下座かッ！？
　コイツの伝家の宝刀はやたらと抜かれるぜ！

「いや…蹲踞（そんきょ）」
「これは座法のひとつで貴人が通行する際の敬意を込めた礼から来ている」

　座っただけかよ。つまり、土下座の前段階だ。
　嵐が起きる前、凪の構えッ！
　それでも動かない高校生たちに、主人公はさらなる行動にでようとする。
　もう、土下座るか！？
　早ぇえよ。水戸黄門でいったら8時25分ぐらいで印籠だすようなモンだぞ。

　だが、ここで主人公の腹で反乱が起きる。
　ゲリラ、じゃなくてゲリだ。とんだ腹中テロだよ。
　脂汗を流し顔面蒼白となった主人公の不気味さに、白也たちは去るのだった。
　結果的には宝刀を抜くまでもなく勝利した、コトになるのか？
　この主人公は勝つためには手段をえらばん。

　そして主人公はまたまた白也のまえに姿をあらわす。
　新担任、現国と古典の教師・瀬戸発（はじめ）として！

　教師かよ！？
　かたい商売のはずなんだが、みょうにギャンブラーな人生あゆんでいそうだよな。
　もしかして学校が依頼した土下座交渉人（ネゴシエイター）のエキスパートなのかも。
　瀬戸なら、瀬戸ならモンスターペアレンツ相手でも土下座でなんとかしてくれる！

　そして、瀬戸の腹はまだ下ったままだった。
　個室に入ろうとする白也をさえぎり、先を譲ってくれと頼む。
　今しゃがんでしまうと、漏れる。
　伝家の宝刀・土下座が使えない。
　というか、トイレでも土下座する気なのがスゴいな。

「てめ…」
「頼んでばっかいるんじゃねェ!!」

　白也が咆えた。
　その指摘は鋭い。
　土下座はするが瀬戸は自分のワガママをひたすら通しているのだ。
　最大利益を得ているのは瀬戸であり、土下座されても相手には敗北感がのこっている。
　瀬戸は油断できない男だ。

　白也に個室をゆずるつもりは無かった。
　だが、ゆずってしまう。
　冷静になってふりかえると、瀬戸の顔に説得されたと気がつく。

「ドゲ眉」
「ドゲ耳」
「ドゲ鼻」
「ドゲ眼」
「ドゲ髭…………の　ドゲ表情筋（づくり）！」
「まるで顔面（カオ）ごと土下座しているような………ッッ
　土下（ドゲ）リミナル!!?」

　表情だけで土下座効果をだした！
　はやくも3話目で土下座をせずに土下座している。
　ものスゴい達人の域だ！

　まるで弓矢を使わずに射る「不射の射」みたいだ。（中島敦「名人伝」（AA、青空文庫）
　たとえるなら、座らずの土下座だな。
　いや、立ち土下座？顔土下座？
　けっきょく、土下（ドゲ）リミナルか。

　おそるべき土下座キング・瀬戸発が樫宮高校にやってきた。
　かれは土下座でなにをなし、どこへ行くのだろう。
　というか、土下座をつかうまでもなく初戦を勝利しているのだが。

　まさか土下座部とか作ったりしないよね。
　素振りならぬ、素土下座100本とかやったりする。
　完成された土下座は、ジャブより速いッ！とか。
　重力を利用できるから、筋力を利用しないノーモーション土下座だってできるだろう。
　う～ん、土下座道は奥が深いな。

2010年11月26日（NO.2241） 第4話安全第一

　新世紀・最強土下座伝説『どげせん』第四話である。
　四、つまり死につうじる話数であり、今回の土下座は命がけだ！
　瀬戸発（はじめ）が今日も土下座る。

　樫宮（かしみや）高校 2-B 羽根ミチのカレシは超キケンらしい。
　その男とは3年の中西、ナカニシアツシだッ！
　ちなみに、2-Bってことは田中白也とおなじクラスですね。
　白也をのぞいた2-Bの生徒たちは瀬戸の恐ろしさをまだ知らないのだろう。

　話をもどす。
　中西の恐ろしさとは、避妊をしないところだッ！
　まるでエロゲーの主人公のようなデンジャラスっぷりだな。

　このキケンな会話を聞く男がいた。
　土下座の王ドゲキングこと瀬戸発だ。
　なぜか周囲にカラスをはべらせていて、カラスが妨害となってミチたちに見つからない。
　瀬戸は1話の冒頭でカラスまみれになっていた。
　奇跡の土下座はカラスすら従えるというのだろうか。

　担任としてなのか、瀬戸は悩んでいるようだ。
　正直いって、この人はナニを考えているのか読めない。
　たんなるワガママなのか、おせっかいのお人よしなのか？
　とりあえず、女に甘く、男にキビシい傾向があるようだ。

「ゴムを」
「するんだ」

　直球きた！
　中西を発見し、本人確認をすると、前置きなしだ。
　いきなり核心をつきすぎて、かえって何の話かワカらんぞ。
　避妊、じゃなくゴムをするんだ、かよ。
　具体的すぎて、ワカりにくくなっている気もしますが。

「そうしてくれんかナカダシ君」

「ナカニシです」

　細かいところでボケをみせる瀬戸先生だった。
　だが、瀬戸のボケにも中西は動じない。
　さすが超キケンな男だ。
　修羅場なれしているといったトコロか。

　中西は生のほうが気持ちいいということで瀬戸の提案をことわる。
　瀬戸をムシして中西は駅にむかう。
　ついたのはJR元府中駅だ。JR武蔵野線北府中駅のとなりだろうか。

「安全の為に」
「どうかゴムを」

　あとをつけていた瀬戸は、ここで勝負をかける。
　ダッシュして中西を追い抜き、下り階段の前で土下座だ！
　生徒相手でも土下座する。
　人目の多い場所でも土下座する。
　それが瀬戸の武器だ。

　だが、ここに地の利は無かった。
　瀬戸の横はスキマだらけだ。
　中西は動揺するものの瀬戸をよけて階段をおりていく。
　あっさり抜かれてしまった。
　まるでキーパー森崎くん並の守護神っぷりだ。

『対象者の退場（フレームアウト）!!
　土下座ここに…』
『破れたり！』

　ついに土下座が敗北した。
　いや、もともと敗北のポーズが土下座だったか。
　とにかくミッションに失敗したってことだ。
　瀬戸の土下座もここらが限界だろうか。

　だが、いままで瀬戸は土下座で奇跡をおこしてきた。
　まだナニか作戦があるのかもしれない。
　朝、登校してきたらまだ土下座しているというような、粘りの土下座があるのかも。

　だが、ここで真の奇跡がおきる。
　すこし時間をさかのぼろう。
　学生横綱から各界入りした幕下力士・賀来（かく）は親方に立川まで使いにいかされる。
　賀来は巨大なハラがじゃまとなり、足元が死角となる力士だった。
　ちなみに幕下だから、『バチバチ』の阿形あたりと同格ですね。
　あとちょっとの出世で関取と呼ばれるようになって、使いぱしりにされることも無くなるぞ。がんばれ！

　その賀来が足元にいた瀬戸につまづいた！
　しかし、そこは超パワー力士である。
　瀬戸をそのまま吹っ飛ばした。
　土下座のまま瀬戸が宙にまう。

　そのまま階段落ちだ。
　土下座の構えをいっさい崩さず、土下座のまま転がり落ちる。
　血まみれになり、頭から落ちても形は土下座を保っていた。

（ここの男）
（中出しより危険！）

「まいりました」
「ゴム…します」

　瀬戸の迫力勝ちだった。
　まさにアオリ文句どおり、 "回転土下（ドゲ）落ち"完成ッ!!
　今回も新技、というか新土下座をだしやがった。
　土下座レパートリーはいくつあるんだ！？
　このまま連載がつづいていけば、土下座48手が完成するだろう。

　今回の瀬戸はラッキーだったのだろうか？
　賀来が偶然やってきたから土下座が成功したように見える。
　だが、そこは土下座のプロである瀬戸のことだ。
　なんらかの秘策があったにちがいない。

　それとも、賀来の死角を知っていて、あえてあの場で土下座したのだろうか？
　すべて計算通りといわれたら、うっかり信じてしまいそうな気もする。
　あの土下座、実は失敗して立ったときのほうが恐かったりして。

2010年12月3日（NO.2242） 第5話最上級の礼

　天上天下唯我土下座。
　どげせん5話目だ！
　瀬戸発（はじめ）は樫宮（かしみや）高校の現国・古典教師である。
　今日は古事記と日本書紀の類似性を説明していた。

　あ、ちゃんと授業もできるんだ。
　てっきり授業できずに土下座して謝っているのかと思っていたよ。

「押忍（オシ）ッ」

　そこに遅刻してやってきた生徒がいる。
　2-B 空手部員貝塚洋介であった。
　遅刻してきたのだが、挨拶もなしに座る不遜な態度だ。
　瀬戸ならばとっくに土下座しているタイミングですよ。

　そして瀬戸は貝塚に注意をする。
　貝塚は「押忍」と挨拶したという。
　空手部にとって「押忍」は最上級の敬意をこめた言葉だ。
　貝塚の主張につきあうのが面倒なのか、瀬戸は流して授業にもどる。
　これが事件になるとも知らずに……

　ところで、空手の挨拶が押忍なのはいいだろう。
　でも、それを関係ない人にまで使うのはいかがなものか。
　コミケのルールは会場の外に持ちださないのが紳士のたしなみですよ。
　精神修養がまでできていないようだ。

　そして、押忍が通用しなかったことを恨んだ貝塚は瀬戸を空手道場につれこむ。
　空手部の主将は「押忍」をバカにされたと謝罪を要求する。
　ひょうひょうとかわす瀬戸に主将はブチ切れた。
　瀬戸に道着をきせて、稽古という名の私刑（リンチ）を仕掛ける気だ。
　土下座vs.フルコン空手の異種格闘技戦がはじまる！

　瀬戸は上を羽織っただけで、メガネもネクタイも外していない。
　死ぬ気か！？
　ケンカのときにメガネを外さないと顔面パンチで失明の危険がある。『サンガース』でも言っていた。
　瀬戸よ、顔面だけはもらっちゃダメだ。

　手とは腕を上下に構える「天地上下の構え」をとる。
　意外とさまになっているが、実力はホンモノだろうか？
　とりあえず顔面がガラ空きっぽいのが心配だ。

　主将はいきなり前蹴りだ。
　リーチ・速度に優れスキも少ない前蹴りは空手で多用される技である。
　ヒザを引き上げた後で、蹴りこむ鍛えられた動きだ。
　だが、からぶった。瀬戸に当たっていない。
　いや、フェイントだ。

　真の狙いはカカト落とし！
　前蹴りをフェイントにした二段攻撃だ。
　これならメガネに当たる事もなく、過度の危険は避けられる。
　だが、シロウト（？）相手に頭部を攻撃するのは危険すぎるぞ。
　空手部主将は中出しなみにヤバい！

　だが、土下座る！
　カカト落しよりも速い土下座だ。不発！
　これはもうジャブより速い！
　そう、瀬戸の土下座は中出しよりも危険なのだ。

　だが、神速の土下座で攻撃を回避しても後がつづかないぞ。
　今回はギミック無しの素土下座だろうか。
　ここからどうやって主将を追い込む気だ！？

（こッ）
（これはッッッ）
（土下座じゃないッッ）
（――――どころか）
（こ…これは！）
（構えだ!!!）

　その姿は獲物を狙う獅子のごとく。
　主将はたしかにライオンを感じとっていた。
　そして確実に喰われるであろう自分をイメージしてしまう。
　これは瀬戸に呑まれたな。

　土下座ではない、力を溜めた凪の構えだ。
　たしかにいつもの土下座ではない。
　つま先は立てられ、地面をつかんでいる。
　手は握られたままだ。
　まさに攻撃的土下座！

　眠れる獅子、いやうずくまるライオン、いやいや伏せる狻猊だ。
　攻撃の構え伏猊土下座が完成した！
　まさに百獣の王の土下座だ。
　この土下座には帝王の貫禄と野獣の蛮勇がある。

　足元からの攻撃は防御しにくい。
　骨がむきだして痛みを感じやすいスネを狙われる可能性もある。
　土下座は意外と厄介な構えだ。

　この構えは、映画『カンフーハッスル』(AA)に出てきた蝦蟇功（がまこう）の構えに似ている。

　蝦蟇功の構え上から見た図 →

　映画ではこの状態から、すごい突進力で突っこんでいった。
　瀬戸もその気になれば凄まじい一撃を放つことができそうだ。

　ちなみに、蝦蟇功は武侠小説『射雕英雄伝』『神雕侠侶』が元ネタだ。
　悪の大ボス欧陽鋒や、美形の主人公楊過が使う技なので、本来はこんな土下座モーションじゃないと思う。

　瀬戸は土下座のまま、主将を威圧する。
　そして、瀬戸の目は主将がビビっているのを冷静に観察しているようだ。

「どーかね」
「そろそろお開きにしては…」

「何ィ」　イラッ

「仕切ってる…この状況で」
「ドゲ幹事」

「おっ」
「押忍」

　土下座しながら仕切る。
　ツッコム余裕があったのは白也だけだ。
　空手部員たちは、上から目線の発言にイラっときている。
　だが土下座に恐怖を感じていた主将はあっさり、瀬戸の言葉にしたがってしまうのだった。
　今日も土下座で勝利だ！

　ついに瀬戸が攻めの土下座をだした。
　いや、だすまでもなく勝利しちゃったな。
　瀬戸にとって土下座とは凶器を収めるための鞘なのかもしれない。
　いつか、刀を抜くときがくるかも。

　瀬戸は確実に樫宮高校での地位を高めているようだ。
　この男の土下座は、どこまで昇りつめるのか！？

2010年12月10日（NO.2243） 第6話進路相談

　私立樫宮（かしみや）高校に、いかにもな高級車がのりつけてきた。
　出てきたのは文芸組若中迫田登志夫（さこたとしお）だ。
　1話に出てきたヤクザですね。

　ゴラクの発行元は日本文芸社だから、ヤクザの名前が文芸組か。
　秋田書店の漫画『疵面（スカーフェイス）』だと秋田組だし。
　『ブラック・エンジェルズ』では集英会・講談組・小学組が抗争している話があった。（文庫2巻）
　極道組織が出版社の名前を冠するのは業界の常識ですな。

　今日も白スーツがまぶしいぜ！
　こういう着こなしができる職業って、芸能人かヤグザぐらいだろうな。
　『トップを狙え！』(AA)の宇宙怪獣とおなじく、自分は危険だとアピールする警告色みたいなものか。
　高校生に立ちふさがる勇気があるワケもなく、みんなビビって道をあけるのだった。やはり、警告色だ。
　迫田が探していたのは、とうぜん瀬戸発だ。

　交差点（スクランブル）土下座から一ヶ月がたっていた。
　迫谷は瀬戸への遺恨がないようだ。
　勝つだけならなんとかなる。力づくで押さえつけたり、卑怯な手をつかえばイイ。
　だが、恨まれる。後に遺恨がのこれば復讐があるかもしれないし、警戒しなきゃダメだ。

　勝利して、さらに相手に恨まれないのは理想的だけにむずかしい。
　だから三国志の諸葛亮は異民族の叛乱後も、その頭領を任用した。（三国志5 諸葛亮伝）
　蘇東成老師は、ボスとは戦う相手ではなくて話し合うべき存在であり、戦線の拡大と報復を防ぐために絶対必要な存在という。（達人烈伝）
　瀬戸は土下座で恨まれない勝利を得た。まさに完全勝利だ。
　土下座、おそるべし。

　なぜか瀬戸はヒザを抱えこんで体育座りしていた。
　もともと元気な人ではなかったが、なにか落ちこむコトでもあったのかも。
　また古すぎる牛乳を飲んで腹くだして、今回は間に合わなかったとか。

「頼みがある」

「忙しいんだ」

「何に……？」

「禁煙…に」

　相変わらず、あくまでワガママな瀬戸発だった。
　土下座しなくても我が意を通す気マンマンだよ。
　瀬戸がへこんでいるように見えたのは、ニコチン切れだったようだ。

　何もしないコトに忙しい。
　ハイレベルな忙しさだ。
　瀬戸のワガママは、板垣先生の「A型の自分をB型に見せるのに忙しいんだよね」みたいだな。（イタバキ）
　でも、けっきょく瀬戸は迫田に連れていかれる。
　土下座ぬきではこんなものか。

　迫田は瀬戸に詫び方を教わりにきたらしい。
　なるほど。謝罪の土下座なら瀬戸に聞くのがイチバンだ。土下座のスペシャリストだもん。
　だが、瀬戸の土下座は過酷だぞ。厳しいぞ。たぶん。
　最低でも全裸で土下座をさせられる。
　そして、最大級の土下座になると何をやらされるのか想像もつかない。
　東京スカイツリーのてっぺんで土下座ぐらいは、序の口なんだろうな。

　迫田の組長は糖尿病で勃起不全らしい。
　そして、迫田は組長の奥さんと一度だけヤッてしまった。
　この事実はすでに幹部会にバレている。
　指の一本や二本じゃすまないと迫田は考えているようだ。
　じゃあ、チンポ一本なんだろうか？

「追求されるのは責任じゃない」
「あんたの気持ちだ」
「愛か？」
「性欲か？」
「同情か？」

　なんか、瀬戸が良いコトいったッ！
　いきなり核心を突くような鋭い発言だ。
　土下座だけの男と侮っていました。
　ちょっと、いや、かなり感心して見直したよ。

　一時間後、ふたりは料亭（？）・菊水に行く。
　幹部たちの前で迫田は糾弾されようとしていた。
　あきらかに関係者ではなさそうな瀬戸が横にいる。不審者感がハンパじゃない。
　迫田は瀬戸に、この場から離れないでくれという。
　たった1時間でえらい親密な仲になりましたな。

　姐さんも出席して迫田が責められる。
　キレ者の迫田は組にとって必要な人間だろう。
　だが、同時に敵も多いと思われる。
　有能な人間は、優秀だからこそ扱いにくく危険なのだ。
　迫田が処罰されるのは間違いない。

　瀬戸はどんな指南をしているのか？
　迫田にとって人生の進路相談だ。
　姐さんにたいする迫田の気持ちは愛・欲・情のどれだ！？
　瀬戸はどんな土下座を伝授したのかッ！？
　どげせん、初の連続話だ！

　自分が土下座するだけでなく、人にも土下座を伝授するようになったのだろうか？
　この調子だと、最終的に百万の土下座とか、星の鼓動は土下座！なんてレベルになるかも。

　ラジオデイズ：対談板垣恵介の巻で、『どげせん』の話もでている。
　板垣先生はネームチェックはもちろん、絵のチェックもしているらしい。
　たしかに前回のカカト落しは板垣ワールドっぽい動きだった。
　前蹴りは板垣ワールドっぽくない動きだったけど。
　奥の深い土下座道が今後も用意されているらしいぞ。

　今回は本編で土下座しなかったので、表紙で土下座だ。
　有名なビートルズ「アビイ・ロード」風（↓画像）の土下座ですね。
　アビイ・ロード土下座！
　進む方向が左右逆なのは、縦書き・横書きという文化のちがいだろうか。
　横書きは左から右に進む（ページをめくっていく）が、縦書きだと逆になる。
　瀬戸の土下座は前進して行く、前向きな土下座だ！

2010年12月17日（NO.2244） 第7話黒と白の勾玉（まがたま）

　ヤクザ組長の奥さんに手を出したのがバレました。どう謝罪すれば良いのでしょうか？
　前回の宿題は、超難問だ。
　さすがに土下座じゃ解決できないだろうな。
　土下座ニスト瀬戸発はこの状況をどう打開するのか？

　誰ひとり声をたてない。
　緊迫した空気の中で迫田登志夫（さこたとしお）は、姐さんとの逢瀬を回想していた。
　ここで、エロシーンを回想しすぎて勃起しちゃったら、問答無用で切腹だろうな。
　だが迫田はマジメに自分の気持ちを確認しようと思考をめぐらせる。

（オレは…姐さんに）
（惚れているのか…？？）
（姐さんは俺を…）（義理）（両想い）
（射精）（溜まっていて…）（締まりが…もう）（愛…いや出来心？）
（ハーモニカ）（クンニ）（尺八）
（でなきゃあんな事まで）（劣情…いや烈情！）（涼子って呼んで）（いや肉欲!?）
（結論!?）

（ただ一度だけ…
　そして…決して愛するまい…）

　これが迫田の真情だった。
　『葉隠』(AA)っぽく言えば『恋の至極は忍恋と見立申候』『一生忍びて思い死するこそ、恋の本意なれ』（聞書二の二）ってところだろうか。
　組長（オヤジ）の詰問に迫田は弁解しない。
　目を閉じて座ったままだ。
　汗もかかず平静を保っている。

　これが何かを決意した漢（オトコ）の顔ってヤツかも。
　瀬戸はそんな迫田の顔をチラ見していた。
「追求されるのは責任じゃない」「あんたの気持ちだ」
　というのが前回で見せた瀬戸の主張だった。
　瀬戸は迫田の表情から、その気持ちを読み取ったのだろうか？

（ただ一度だけ…　そして…決して愛するまい…）

　一度だけのあやまち。愛するがゆえに、愛さない決意をする。
　それが迫田の気持ちだろうか？
　わかりにくい。
　人の気持ちは、わかりにくいのだ。

　そして、瀬戸が動く。
　左手をハンドポケットしたまま立ち上がった。
　不審な動きに反応して、周囲の人間もフトコロに手をいれる。
　これは銃撃戦になるのか？

　と、思ったら瀬戸は床に投げられた不倫の証拠写真を手にとる。
　それはともかく、手はポケットから出しておこうよ。
　短気で臆病なヤツがいたら撃たれていたかもしれないぞ。

「不貞ではない」
「祈願だ!!」

　証拠写真にはお互いの股間に顔をうずめる迫田と涼子の姿があった。
　クリントン元米大統領はオーラルセックスはセックスじゃないから不倫じゃないと言ったことがあった。
　まあ、日本者通用しないだろうし、ヤクザならなおさら。
　どうみても、シックスナインの構えです。

　しかし瀬戸はひるむことなく、自説をつづける。
　周囲のヤクザにツッコミいれられても平然とした態度だ。
　すごい胆力だな。

「黒白（こくびゃく）」
「黒の勾玉（まがたま）と」
「白の勾玉が」
「結合（あわさる）!!」

「すると」
「宇宙が祈願の気で満たされる」
「対（とも）土下座！」
「組長の手術の成功を心から祈願する2人のパワーは」
「銀河系宇宙を内包するエネルギーを生むんです」

　土下座宇宙論きちゃったッッッ！
　はやくも宇宙だ。銀河系だよ。
　出下座で天元突破しそうな勢いで、すごい理論をブチまけちゃった。
　とうぜんヤクザたちには意味不明だ。

　だが、組長だけは何事かを考えている。
　宇宙土下座にナニか感じるものがあったのだろうか？
　組長はしばし考える。
　そして、迫田の涼子への気持ちを問う。
　これこそ瀬戸が問題にしていたことだ。

　瀬戸の狙い通りの展開になったという事だろうか？
　ここで、迫田は涼子と視線を合わせる。
　迫田の手はなにかを耐えるようにズボンを強くつかんでいた。
　やはり、愛さない決意をしているのだろうか。

「祈願の為の…」
「同志です」

　この言葉で迫田は無罪放免となった。
　そんなアッサリ開放で良いんですかいと言う気もしますが。
　三国志演義(AA)で、董卓の愛妾に部下の呂布が手をだしたと怒った時、「絶纓の宴」の故事をだしてなだめた事があった。
　女のことを見逃してやったら、恩義を感じて部下が死力を尽くして働いてくれるようになる。と言うことだ。
　組長はコレを狙ったのかもしれない。

　なんにしても、迫田の指は全部のこったままだ。
　今回も土下座で勝利した。
　しかし、逆（リバース）土下座が完成する前から、対（とも）土下座だよ。
　基礎をかためず応用で攻めてきやがった。
　アグレッシブ土下座だな。

（あの時俺の目の前で…）
（地面（ぢべた）に一番近かった最底辺のあの頭に）
（全く頭があがらねえ）

　迫田も認める土下座効果だった。
　負けて勝つのが土下座流ってことだな。
　これで瀬戸はヤクザ組長にも顔がきくようになったのだろうか。
　土下座による町内制覇も遠くないな。

　今回は気持ちの機微にふれる話だったせいか、非常に難解だった。
　人の心はむずかしいね。
　あと、土下座宇宙論も。
　さすがゴラクはオッサン雑誌だ。小中学生にはサッパリわからんだろうな。

　ところで、迫田の「同志」発言にはどんな意味があるのだろうか？
　「不倫」「同志」と言えば、尾崎豊と斉藤由貴の不倫騒動だ。
　モルモン教徒である斉藤由貴にとって、不倫は戒律違反になる。
　記者会見で、二人の仲を問われた斉藤由貴は「同志」とこたえた。

　戒律違反、不倫、同志とキーワードがそれなりにそろっている。
　これは迫田が涼子にだけ通じるように言った、愛と別れの言葉なのかも知れない。
　そういえば斉藤由貴が主演したドラマ『スケバン刑事』ではポニーテールがトレードマークだ。→
　涼子姐さんも、ポニーテールなのは偶然だろうか？

　とうとう土下座で宇宙まできてしまった。
　まだ空も海も制覇していないのに、急ぎすぎではなかろうか？
　それとも改めて空と海で土下座をするのかも。
　スカイダイビング土下座や、スキューバダイビング土下座だ。
　瀬戸ならば、陸海空の土下座を完成させるにちがいないッ！

2010年12月24日（NO.2245） 第8話祈りのポーズ

　土下座ですべてを解決する男・田代まさしじゃなくて瀬戸発（はじめ）ッ！
　今日は病院へやってきた。
　雨の病院では手術が行われている。
　患者は2tトラックに巻き込まれた主婦だった。

　手術室の前で待つのは、樫宮（かしみや）高校 2-B 宿沢ケジメである。
　指輪にサングラス、ピアス、クツなどからして、彼は不良を気取っているようだ。
　そんな彼でも母親の容態は心配らしい。
　不良だろうと、聖人だろうと、母の前では息子にすぎない。
　そう交通事故の被害者は彼の母親なのだ。

　ちなみに、ドラマや漫画では手術室の前にソファーがあって、関係者がそこにたむろしている。
　普通の病院だと手術室の前はジャマなのか、ソファーなど置かれていない。
　手術は長いと5時間ぐらいかかる。ロビーや食堂で待たないと家族も体調を崩してしまう。

　担任の瀬戸がやってきた。
　そして、祈りのポーズを指導する！
　さすが教師だ。なんでも教えてくれるよ！
　って、ことでイイのか？
　おせっかいとか、そういう以前に形容しがたい不自然さを感じるんだけど。

　母親への祈りは形からはいる。
　まず、イスに座っちゃダメ。……なるほど。
　宿沢はヒザをついて祈ってみる。これはキリスト教式か？
　だが、瀬戸は「頭が高い」とダメ出しをする。
　とまどいつつも宿沢が頭の位置を下げていくとバランスを崩し、倒れて……

「それだ」

　土下座じゃねーかッ！
　けっきょく、コレがやりたかったダケじゃね？
　とことんまで土下座好きだな。
　お見合いして「ご趣味は？」と聞かれたら「土下座です」と返すようなレベルだ。

　だが、今回の土下座はココで終わらない。
　形を整えたら、今度は魂を入れる。
　土下魂（どげこん）、注入だ！

「思い出せ」
「羊水を」
「それだ！
　お前がかつて10ヶ月間も取り続けてきたその姿勢（ポーズ）だ！」

　土下座、すなわち胎児の構えッッッ！
　けっきょく土下座のポーズだな。
　現代によみがえった恐竜時代の原始人だって取る祈りのポーズだ。（範馬刃牙 17巻 133話）
　やはり天に思いを届かせるには、誠意が必要ってことなんだろうか。

「それでは私も…」
「介助土下士として…」
「ともに祈ろう」

　瀬戸は生徒にだけ土下座させるような男ではない！
　自分だって土下座したいもの！
　というわけで、介助土下座だ。
　介助・土下座！？
　しかも土下士だと！

　瀬戸は一流の土下座ニストだったということだろうか。
　オマケに介助の資格ももっている。
　わからん。どこまで本気で、どこからギャグで言っているのか、まったくわからん。
　とりあえずコンビニで吹いてしまったのは確かだ。
　つまり、ギャグなのか？
　いや、いや。瀬戸はどこまでも超本気っぽい。

　とにかく土下座で祈ります。
　黄金コンビでもなかなかできないツイン土下座ですよ。
　もう『どげせん』は言ったモン勝ち。楽しんだモン勝ちじゃ！

「微生物から」
「魚類へ」
「やがて脊椎動物へと進化した」
「あの300余日間を遡（さかのぼ）れ！」

　迫力が生みだす説得力で、祈りまくる！
　魚類と脊椎動物の順番がアレな感じだけど、この勢いは誰にも止められない。
　土下座だけど体感速度は時速270kmぐらい。新幹線だ。ゴキブリの速さだ！
　そして、この土下座が雨を止めた！
　いや、雨は関係ないッッッ！

　雨が上がったのは関係ない。
　関係ないと思うが、とにかく手術は成功した。……やっぱ、関係あったのか？
　とにかく、驚異の土下座パワーだ！
　青汁なんかよりも超効く。ダイエットにも最適だよ。
　今回の手術は、ただの骨折だったので命に別状は無かったようだが……
　まあ、成功にはちがいない。

　瀬戸は今日も土下座で奇跡を起こす。
　雨は……関係あったのかもしれない。
　どちらにしても、一話の冒頭で見せたように、土下座のポーズは祈りなのだ。

　土下士と名乗ったからには、土下座使いの集団もいるのだろうか？
　これは土下座ファイトの予感がする。
　あるいは高校教師らしく土下座甲子園だろうか。

　ラジオデイズで板垣先生が話していた、土下座銀河と土下座胎児の話が出てきた。
　とりあえず、当面のネタは出しちゃったということだろうか？
　今度はどんな土下座ねたが出てくるのだろう。
　土下座とは逆・水魚のポーズだ！ ……とか？

　今年の『どげせん』はこれにして終了だ。
　次回は新年明けまして土下座。

2011年1月7日（NO.2246） 第9話降り積もる言魂

　樫宮（かしみや）高校の生徒がバットを民家に投げ飛ばしてしまった。
　家主は評論家の大島弁だ。
　最強のクレーマーになりうる人物です。
　事件を起こした生徒の担任は瀬戸発だ。

　また、瀬戸だよ。
　事件が瀬戸を目指してやってくるような感じだ。
　土下座がかたちどる渦は、世界のトラブルを引きこむブラックホールなのだろうか。
　そして、今日もなぜかカラスに好かれている瀬戸であった。

　瀬戸はサーフィン雑誌を読み、天気予報を聞いていた。
　関東地方は午後から冷えこむらしい。
　波乗りでもする気なのだろうか？

（来るッ）
（死闘（たたかい）になるッ）

　ビックウェーブと戦う気か！？
　瀬戸の思考はわかりやすいようで、サッパリわからん。
　本当にサーフィンのグッズを買いに行く。

　ホテルで瀬戸は装備を整える。
　サーファースーツを着込み、靴下には使い捨てカイロを貼りつける。
　透明なゴム手袋をして、手の平にもカイロだ。
　そして、上に背広を着る。

　これは海に行くのではないな。
　土下座の準備だ。
　ひょっとして土下波乗りか！？
　サーファーボードの上で土下座だ！

　などと思っていたら、瀬戸は大島弁のところへいく。
　パネルディスカッションのゲストに呼ばれて会場入りする所に押しかけたようだ。
　瀬戸はなかなかの情報収集能力を持っているな。
　名刺をわたして自己紹介する。
　そして、瀬戸のやることはただ一つだ！

　ドゲッ

　なんじゃ、その効果音はッ！？
　まさに土下座音だ。
　瀬戸はフォームだけでなく、音まで完成させつつあるらしい。

　みごとな土下座であった。
　だが大島は言葉を操る言魂使いだ。
　無言の土下座に驚きはするが、納得しない。
　土下座の瀬戸を放置して、会場入りする。

　数時間後であろうか、大島は仕事を終えて会場の外にでる。
　この日の東京は豪雪だった。
　外に出た大島が見たものは、まったく崩れぬ瀬戸の土下座だった。

『雪中　土下達磨（どげだるま）』

　不動の瀬戸に雪が積もり、雪ダルマならぬ土下達磨となっている。
　動けば雪が乱れてしまう。
　瀬戸が数時間まったく動いていない事を饒舌に、雄弁に語る雪だった。

　そして、謝罪の土下座だ。
　大島も涙をながす土下座かな。
　無言の言魂を見て、大島が謝罪を受け入れたことは間違いあるまい。

　ところで、数時間も土下座していたら話しかける人が出てくると思う。
　だが、瀬戸は動くわけに行かない。
　そうなると生徒の田中白也かヤクザの迫田登志夫をあらかじめ呼んでおいて、フォローさせたのかも。
　天気予報で雪が降ることを予測し、防寒対策をして土下座する。
　けっこう頭脳派の瀬戸なら根回しをしていてもおかしくない。

　ところで瀬戸はカイロの量が多すぎたらしい。
　おかげで、汗ダラダラだ。
　でも、その汗も誠実っぽい演出になっている。
　技術と作戦・体力だけではなく運まで味方になった。
　まさに無敵の土下座だな。

　瀬戸は今日も土下座で勝利する。
　自然の力を取り入れる自然（ロギア）系だよな。
　新春、初土下座は純白の土下座であった。
　2011年は、こりゃ土下座で飛躍するな。

2011年1月14日（NO.2247） 第10話おおきな木

　連載10話目の節目をむかえた今週の『どげせん』です。
　負けて勝ちをとる土下座道をつらぬき、8戦全勝だ！
　コミックス化はまだなんだろうか？
　きっと土下座で交渉中なんだろうな。

　今回の樫宮（かしみや）高校は、柔道部員 3-C 伊武正俊が登場だ。
　瀬戸の担任は2-Bなので、ほとんど関係の無い生徒のハズ。
　よそのクラスの生徒だろうと面倒をみる。
　基本的にお節介な性格なのだろう。

　瀬戸はどんな悩みも土下座で解決させてきた。
　実績だけ見れば、良い先生のハズなんだが、それを感じさせない。
　能ある鷹が土下座する。
　有能でありながら、なんか気楽に接することができるあたりが、瀬戸のスゴいところだ。

　さて、瀬戸は『家畜人ヤプー』(AA)を読みながら伊武と話をしている。
　ちなみに『家畜人ヤプー』は板垣恵介漫画秘話『イタバキ』の表紙で笠原倫が読んでいた本だ。
　あまり真剣に見えない人生相談（？）の態度が瀬戸らしさだな。

　伊武は道場横にあるリンゴの木に一日千回の打ち込みをするよう言われていた。
　以後、1年365日、3年で1095日、合計1,095,000回だ。
　本当にやっていたのなら100万回を達成している。
　愚地独歩の打撃なみに完成された投げになっていそうだ。
　でも、さすがに休日まで学校に来てやってないよね？

　伊武は部長がマネージャーを口説く日も、部室の温度が50度を超える日も、ひたすら打ち込みをしていた。
　そのお陰か、都大会の個人準優勝している。
　優勝できていないところに残酷なリアリズムを感じる。

　そんなリンゴの木が切り倒される事になった。
　瀬戸と伊武は木が切られるところを見守る。
　木に苦労させられてきた伊武だった。さんざん悪態をつく。
　しかし、切り倒されたあとの切り株を見て、伊武は思わず土下座する。

「謝りたいと感じたなら
　それはもう感謝だから」

　範馬刃牙17巻 131話の愚地克己と同じことを言う瀬戸であった。
　今回は人に土下座させている。
　自分が土下座するだけでなく、人を土下座に追いこむのも超一流だ。
　瀬戸発が動けばタイガーマスクですらマスク脱いで土下座するにちがいない。
　たぶん、土下座してくれと土下座してお願いする。

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