ザ・キング・オブ・グラップラー 第1回〜第9回


ザ・キング・オブ・グラップラー第1回 投稿者:睦月  投稿日: 6月 5日(水)19時21分07秒

「お前も本当の仲間を見つけろよ。」
憧れの人の声が聞こえる。
後ろ姿を追いかけるが離れる一方…

目が覚めるとその憧れの人、草薙京が隣の布団で寝息を立てている。
その姿を見て、矢吹真吾は現状を理解した。
学校創立記念日で金曜日が休みになり、草薙京とその父柴舟が出来た連休を使って東京の親戚の家に強化合宿に行くのに、昨日の木曜、学校が終わるとすぐに三人で出掛けた事。
夕食後、京が彼女のユキは家の用事で来れなかったと言ってた事。
真吾はジャージと鉢巻きに着替えながら、それらの事を思い出していた。

「京!起きんか!真吾はもう着替えとるぞ!」
声の主、柴舟は京の布団を剥がした。
「誰に物言ってんだ。親父。俺はもう着替えてるぜ。」
「寝る時も同じ格好だっただろ?」
そう京の返事に言葉を返したのは、親戚の草薙蒼司だった。
「近所案内ついでに俺もランニングに付き合う。」
伸びをしている京にそう言うと靴を履き始めた。

「体力測定で無意識に重りをイメージしたからかな…何か調子が違う」
朝飯前に犬を散歩させながら走っている少年、範馬刃牙が呟いた。
犬の散歩が糞さえ残さなければ良い公園を通っている時、犬が速度を落とし、地面にへばりつく様にした。
「ん?ムサシ、トイレか?」
ムサシと呼ばれた犬が糞をしている時に刃牙が何かに気付き、走っている四人に声を掛けた。
「KOFチャンプの草薙さんですよね?」
(続く)
●初の長めの小説です…至らない点があれば「ここが気に入らねえ!」と指摘下さい。


ザ・キング・オブ・グラップラー第2回 投稿者:睦月  投稿日: 6月14日(金)19時06分16秒

「ここしばらくはKOFは目立って無かったのに、よく俺の顔知ってたな。」
刃牙の方を向き、足を止める京。
「流石、草薙さん!有名ですね!」
真吾も足を止めて刃牙の方を見る。
「ところで、ニュース見ました?」
刃牙はムサシの糞をビニール袋に入れながら尋ねた。
「ニュースって?何が?」
「最凶死刑囚が逃走して、この東京に居るとか言う話かの?範馬刃牙君。」
ニュースと言っても三面記事と天気位しか見る事が少ないので、戸惑った京の代わりに横に居た柴舟が返事をした。
「何で俺の事知ってんすか?」
刃牙はムサシを芝生に座らせ、4人に正面向いて訊いた。
「武術をかじっとる身じゃからな」
「地下闘技場で最強の男って聞きましたが、がっちりした体以外は普通の人なんですね。範馬さんは何歳なんですか?」
答えた柴舟が話し終えた直後に、刃牙の名を聞き興味を示した真吾が前に出て笑顔で訊いた。
「17だよ。確か真吾君と同じ年だよね?」
刃牙も笑顔で答え、真吾に歩み寄った。何の変哲も無い歩き方に見えた。だが…
「寸止めしなかったら、君の金的は潰れていた。」
「油断し過ぎだ。真吾。普通に話す為に近づくだけなら、一歩で十分だった。」
刃牙と蒼司に言われ、真吾は自分の股と刃牙の膝の距離がほとんど無い事に気付いた。
「その程度で死刑囚に襲われたらどうする気だい?」
寸止めの状態のまま、刃牙は言った。
「お前も人の事言えた義理じゃねえだろ?」
京が口を挟んで、真吾の肘を指差した。
「普段の練習が癖になって出てきたんだろうな。金的入れてたら、お前の顎に肘が入ってたぜ。地下闘技場チャンプ?」
「あ…久しぶりに草薙さんに誉められた!」
喜ぶ真吾が刃牙と離れた瞬間、京にこずかれた。
「調子に乗んな。刃牙が本気で金的狙うなら足の甲で蹴ってるぞ。そうされたら、お前の肘は届いて無え。」
「…すみません…」
真吾は反省の気持ちを言葉にした後、刃牙の方を見て話した。
「…ところで刃牙君って呼んで良いかな?俺と闘って下さい!」

●一話目書いてしばらく後でバキを読み返し、ケアレスミス(?)に気付きました…
体力測定前に刃牙は不良一味&スペックと、克巳&烈はドリアンと、柳は渋川と会ってたんですよね…しかも白黒一同に出会った時、刃牙は「明日学校なんだ」…忘れてました…
オリバ、死刑囚入れると、話が自分の文章力では混乱しそうなので全く入れないつもりが、会話の中に入れざるを得なくなりました…抜けた所が多いですがお付き合い下さい。


ザ・キング・オブ・グラップラー 第3回 投稿者:睦月  投稿日: 7月 5日(金)19時24分44秒

「不意打ち貰っただけじゃ、まだ足りねぇってのか?」

「俺、もっと強くなって本当の仲間を見つけられる様に、実戦で色々な人と戦って、技を磨き上げたいんです!」

本当に怪我すると思ったが、こいつなりに考えての事なら別に何も言うまい。
そう思って京は
「こいつ、こう言ってるけど、これから学校なら無理に付き合わなくてもいいぜ。」
と刃牙に真吾の相手をしてくれるか訊いた。

「いいよ。」
「まぁ、何事も経験だ。胸貸してくれるならやって貰いな。」
あっさりと返事をした刃牙を見て、京は真吾に声を掛けた。

「では、行きます!」
そう宣言して、胸の高さに両方の拳を構え、左半身を前に出している真吾を、刃牙は見定めながら身構えた。
真吾は京から昔習った事を思い出しながら、右足を出した。
「そう…身長は俺の方が高いから…

「草薙さーん!焼きそばパンとコーヒー牛乳買ってきました!」
「お、サンキュ。じゃ今日は特別に技じゃなくて、闘い方を教えてやる。」
「でも…他に技は…?」
「ばーか。どんな技だって当たんなきゃ意味無ぇよ。」
「はい…」
「いいか。お前は結構背が高い。俺より少し低いけどな。
普通は背の低い奴と比べたら手足も長い。だから、自分より小さい奴が相手なら近づけずに一方的に攻撃できる。
大きい奴が相手なら逆に自分の攻撃が届く距離に入らないとまずいがな。」
「距離か…メモメモっと…」
「それに完璧な距離で当てれば、技の本当の威力が出る。まあ、技の距離を掴むにはやっぱ練習するしか無ぇけど。じゃ、頑張れよ。」
「はい。有難う御座いました!」

刃牙君の間合いには入れさせないッ!」

出した右足を刃牙の脇腹に向かわせた。
だが刃牙は左手で払うと、後ろに置いていた右足を踏み出し、右の拳を出した。

頬に拳の食い込んだ音がした。

顔を仰け反らせたのは刃牙の方だった。
真吾に拳が当たる前に、彼の右の拳が当たっていた。
京から習った拳は、ボクシングにおけるジャブは後ろに置いた拳でしていた。
体重こそは乗っていないが、流れを自分に持っていくと真吾は確信した。

(今だ!)
真吾は前にある左足を踏み込み、腰の回転と共に拳を出そうとした。

(フック入れてくる気じゃん…)
仰け反りつつも、そう感じ取った刃牙は踏み込んでカウンターで拳を打った。

だが
(危ねっ!)
と感じた真吾は頭を地に付け、飛んできた拳をかわし前に転がった。
刃牙の拳の空振りを戻すのと、真吾が起き上がるのは後者の方が僅かに早かった。

その僅かを見逃さず真吾が刃牙に向かって踏み込む。
「ぴしっ!」
真吾が掛け声を上げた時には、刃牙の頬に肘が入っていた。

●刃牙と真吾・京達の絡みは3話位と思ってたのですが
もうちょっと長引きそうです…


ザ・キング・オブ・グラップラー第4回 投稿者:睦月  投稿日: 7月19日(金)19時33分55秒

さらに真吾はもう一方の肘を腰を回しながら入れ、続けさまに腰を逆に回す勢いと共に跳び上がり足を上げた方の右足の方の拳でアッパーを放った。

「ぱしっ!どかーん!」

その声と共に入ったアッパーで、刃牙の体は宙に少し浮いた。

(あいつオリジナルの「錵研ぎ」って奴か。相変わらず変な気合の入れ方だが、問題は…)
京がそう思っている間にも、真吾は攻めの手を緩めなかった。

地に足が着いてすぐ真吾は跳び上がり、浮いている刃牙の体目掛け、跳んだもう一方の足で続けさまに2回蹴った。蹴りを受け前のめりの体勢になって落ちる刃牙。

だが蹴った反作用が真吾のバランスを崩し、頭から真っ逆さまに落ちる。

「うわっ!」

丁度、真吾の体が刃牙の背の上にある体勢だった。
このまま落ちれば、真吾の体重が真っ直ぐ刃牙に落下する。
しかし真吾の頭が僅か下の刃牙の肩に当たった時、真吾の勢いと体重に流されるように、刃牙の体はへそを軸に回転した。
真吾は落ちる前に、刃牙の回転した勢いを利用した踵の蹴りを尻に受け、うつ伏せに地面に吹き飛ばされた。

「間合いの取り方は上手いと思う」
踵で蹴った後そのまま着地した刃牙は、尻をさすりながら起き上がる真吾に言った。
「だが、一日中やられても効かない。」

「やっぱり全部ピンポイントで攻撃を外してやがったか。」
「しかし、わしがガードしても結構痛い真吾の攻撃を、急所を外しただけで無事とは物凄く丈夫な体じゃのう…」
京と柴舟が感心している一方

「君の弱点をこれから忠告するよ」
刃牙は言いながら構え、右足を踏み出すや否や、真吾が刃牙に踏み込んだ以上の速さで詰め寄った。
今度は構えを左半身を後ろにしていた真吾は、左の蹴りを出して止めようとした。
が、刃牙は着地した右足に力を入れ左に回り込み、半身に構えている真吾の正面に立ち、右拳でアッパーを仕掛けた。
後ろに体を反らし何とか避けた真吾が刃牙を見据えた瞬間には、もう右の脇腹に左拳が、鳩尾に右拳が、左足には蹴りが入っていた。
苦しさが腹が伝わり、意思とは反対に蹲ってしまう。

「まず、防御技術が未熟だ」
刃牙が一歩引いて構えを解かないまま言った。
「あと少し言う事が有るけど、続けられるかい?」

「だ…大丈夫!お願いします!」
真吾は足に力を入れ起き上がり、弱点が有るなら出来るだけ無くす為に、と思って構えを取った。

再び刃牙が間合いを詰めた。

今度は牽制せずに投げてやろう。
そう思い掴み掛かったが、手が後1センチで届く瞬間に体勢を低くし避けられると、足を掴まれ真吾は背中を地に着けてしまった。

「グラウンドでの攻防に弱いんだよ!」

>すいません。マイパソコンでないので中途半端なトコで終わってしまいました…


ザ・キング・オブ・グラップラー第5回 投稿者:睦月  投稿日: 9月 6日(金)18時57分51秒

(間が空いたので適当な(爆)あらすじ)
学校が金曜日休みになったのを利用して、前日夕方、京と真吾は父柴舟に連れられ東京の親戚の家に行った。
金曜の朝、範馬刃牙と遭遇。
真吾は強者と闘いたい思いから、刃牙に野試合を申し込む。
だが実力の差は歴然、寝技に持ち込まれた!

地に肩を付けた真吾の上になっている刃牙は、左手首を掴もうと狙った。

…掴まれたら「腕ひしぎ逆十字」をされるッ…
真吾は関節技は習っていない。
が、幾度となく目にしてるし、実際に受けた経験もあった。
それらの経験が築きあげた勘が、真吾に左の拳を打たせた。

だが、刃牙は腰を支点に回転した。
その様に見えた。
真吾のへその上にあった顔が、直後には真吾の足先にあった。
そして、足先にあった足は、右足は真吾の腰に、左足は股にあった。
瞬時に頭・足を逆にしただけでなく、右脇に真吾の左足首を抱え込んでいた。

(今度は膝十字とか云う技か!?)

真吾はそう思う瞬間に、右手で体を支え右足で刃牙の顔に向け蹴りを放った。

刃牙は右足を真吾の股に入れ、顔を離し避けた。
丁度、左太ももに馬乗りになっている体勢になり、真吾の体もそれに伴い右足が下になった。

真吾が左足に体温・気配を感じた時には、アキレス腱の辺りに激痛を覚えた。

「アキレス腱固めってんだ。親指の付け根を、足首から指4本上に当て、強くねじ込むンだが…」
真吾の顔に目をやり、刃牙は話を続けた。
「脛の骨の足首の関節の外に付いてる「ひ骨」の関節は特に外れやすい。おまけにアキレス腱を横から押してる。アキレス腱は横からの力には弱いんだ。」
「痛てて…ま、参りました!」
真吾は耐え切れず降参した。

刃牙は技を外しても向かって来る事は無いのを確かめると
「体は丈夫な様だが、急所はどうしょうも無く存在する。関節技対策も取り入れた方がいい。」
と言って真吾を解放した。

「どうだ?教えて貰って参考になったか?」
「はい…同じ年位なのに、こんなに差があるなんて…」
「まあ、お前とはキャリアが全然違うからな。なあ、刃牙。ところで…」
京が真吾に訊いた後で、刃牙に話し掛けた。

「草薙流古武術にグラウンドの技術とか無い理由教えてやるよ。」
そう言って、京は右手を前に出した。
「ちょっと、掴んでみな。」

「じゃあ、遠慮無く!」
刃牙は手首を極め、その状態から両足で京の体を挟むように飛び上がり、顎に蹴りを放った。
だが、顎に蹴りが届く前に、刃牙は手を離し距離を取った。

京の腕が触る事も出来ない位、熱くなったからだ。
京や彼の服は何ら変化は無いが、腕から炎が出ている。
放すのが遅れたら、火傷では済まなかった。
1m半離れていても、京に向かい合ってる部分が火照り、水分が無くなっていく感覚がした。

「そういう理由か。敵わないな。」
刃牙は苦笑しながら言った。
「それだけの腕なら死刑囚に絡まれても大丈夫そうだ。」
「逆にとっ捕まえて金一封貰ってやるぜ!」
京は炎を出すのを止めると、白い歯を出し笑いながら言った。

「刃牙くーん!早く準備しないと学校、遅れるわよー!」
その声の方に目をやると、制服を着た女性が居た。

「あの娘はガールフレンドかの?」
柴舟がにやついた笑みを浮かべ尋ねた。
「いやぁ…それ程までいってなくて…まあ、住んでる所の大家の娘さんですよ。」
刃牙は少し照れながら言った。
「じゃ物騒ですから、気を付けて!」

「流石オーガの息子じゃったな。本気同士ならワシでも及ばんかも知れん。」
帰り道、柴舟が呟いた。
「流石、範馬勇次郎の息子ってとこか。女の趣味はどうかと思うがな…あの娘相手にまんざらでもない様子だったし。」
「人の好みはそれぞれだからな。」
(容姿について言うのは失礼だし止めとこう…)
京と蒼司の会話に真吾は口を出さなかった。

家に戻ると
「ラルフ・ジョーンズって人から電話あったわよ。此処に連絡してって。」
蒼司の妹、葵が伝言してくれた。

朝食後、柴舟はそこに電話した。
彼の友人の部下で、腕利きの傭兵。
彼が何の様だろうか?

「もしもし、ワシじゃが」
「お、その節は教官がどうも。」
アメリカ人とは思えない位、日本語が流暢だ。

「休みでも取れたのか?」
「そんなトコかな。オーガにやられて久々の休暇って…」
「オーガじゃと!?」

●あとがき
H前の刃牙なのに強くしすぎたかな…と思うこの頃。
寝技ならともかく、立ち技でも真吾、歯が立たないってのは…
KOF2002が出るようですが、ドリームマッチって事でストーリーは進まないそうで。


ザ・キング・オブ・グラップラー6回 投稿者:睦月  投稿日:10月 3日(木)13時01分37秒

都会の中心部からやや離れた喫茶店。
コーヒーにこだわりのある店としても有名だが、昼の定食もあって割と流行っている店だ。
だが店内は昼休み前だからか客は少ない。

ひゅーっ。
その男にとっての軽食を済ませた後の一服。
食事の終わりそうなもう一人の男。
煙草の煙を嫌がって手で扇ぎ返す女。

「あっ、悪りぃ、レオナ。煙かかっちまったか?」
一服していた男が手で扇いだ女に謝った。
レオナと言われた女は、その男の声の方に顔をちらっと向けるとまた窓の外を見つめた。
彼女は緑の瞳でやや色白。
肩まである青がかった髪の後ろを無造作に上の方で結んでいる髪型。
年は18歳だが176cmと女性にしては大柄で無表情。
口数も少なく年以上に大人びた雰囲気である。

「ちょっと向こうで吸ってくらあ。」
煙草を持って移動した男は、レオナよりも一回り大きくスーツの上からでも引き締められた、それでいて太い筋肉を感じさせる体つき。
39歳と思えない程、若く精悍な顔立ちで、緑がかった瞳に男にしては少し長めの黒髪だった。
その男の名はラルフ・ジョーンズといった。


ザ・キング・オブ・グラップラ−第7回 投稿者:睦月  投稿日:10月 3日(木)19時58分20秒

その喫茶店の初老の店長が店の前での異変に気付いた。
普通の人間から見たら怖そうで、お世辞にも美青年とは言えない2人の若者が、一人の優しそうだがひ弱そうな少年を追い掛けていて、2人で挟み少年の頬を叩き突き飛ばしている。
ラルフは少年が店前に逃げてきた時から不審に思っていた。
煙草を吸い終わり、レオナと食事の終わっていた連れの男を一目見ると、また苛立ちを顔に出しながら店前に視点を移した。

連れの男もラルフと体格が似通っている。
肉体同様引き締まった顔に金髪。
涼し気な目はサングラスで隠れていた。
前髪は眉毛に少しかかる程度。
横の髪は耳にかかっていない。
後ろは首がしっかり出ている。
この男もレオナも、ラルフと同じ頃に店前の出来事に気付いていた。
彼らは軍人と云う仕事柄、周りには敏感である。
もっとも、流石に店前で暴力行為をしたら一般人でも簡単に分かるので、この場合は意味の無い事かも知れない。

「テメエよ?俺達見て逃げただろ!?」
「い…いや。僕は本当に急いでいるんで…」
少年は怯えきって、目は周りにすがる様に泳いでいる。
2人の若者は少年の言葉が無かった様に態度を変えない。
わざと伸ばしているのか不精ヒゲの様な髭を生やした男が何かを取り出し、少年の喉元に突き付けた。
「試しちゃうよ?20万ボルト。」

「スタンガン…」
「ここで待っててくれ。大佐に派手な事されちゃ困るからな。」
若者2人の持ってる武器、身のこなし等を見ていたレオナに、男はそう言って席を立ちラルフに近付いた。
店長は注意しようと店の扉を開けた。

「昼前から堂々と…この国が安全大国ってのも昔話ですね。」
「おいおい、クラーク。オヤジ臭え事言うなよ。俺達のオフィスから見たら立派に安全大国じゃねーか。」
そう言って、外に出ようとラルフが足を挙げる瞬間に、クラークと呼ばれた男は手をラルフの肩に置いて制止した。
「私が行きますよ。任務前に騒ぎ起こすとマズイですし。」
「俺じゃ騒ぎになるってのか?」
ラルフが文句を言った時、店長がおずおずとした態度で2人に話し掛けた。

「この子は本当に急いでる様じゃ無いか。それに逃げたと言うだけで暴力を振るうと、もっと逃げられる事は解るだろう?」
温和な口調だった。
だが、髭の生えている男は店長の骨の感触がする細めの肩を、両手で鷲掴みにし自分の方に引き寄せると共に、思いきり膝を挙げ店長の腹に蹴りこんだ。

ぼすっ。
響かない音だったが、それに反比例し店長は腹を押さえ倒れ込んだ。
「うるせえンだよ!クソじじい!殺すぞ!?」
髭の男は倒れている店長の胸ぐらを掴み
「俺達がこいつと話してんだよ。落とし前付けて貰おうか?立ち話も何だしよ、店ン中で話すべ。」
髭の男は、少年を小突いていたもう一人の痩せた男に、顔を店に向けて合図をすると乱暴に扉を開けた。
(続きます)

●後書き
第6回は済みませんでした。昼休みに書いていたら時間無くなりまして…
9月6日から久しぶりなんで前を忘れられてそうで怖いのですが…
昔買ったネオジオフリークで調べたり、資格試験も控えてたりと忙しく…って、言い訳ですね…皆さんに申し訳立たないっす…

なお、KOFを知っておられる方は2000までのキャライラストを想像して下さい。
2001、02のオフィシャルイラストは私の中で「無かった事にして下さい。」byZOO1。なので…

アニメあずまんが終わって淋しいです。最後のお辞儀が淋しさを引き立てます…
でも、だからこそ、よくある「人気あるから引き延ばす漫画」より名作になるのでしょうね…



ザ・キング・オブ・グラップラー第8回 投稿者:睦月  投稿日:10月11日(金)21時04分20秒

からん、からん。
2人の青年が獲物の肩を持って店の中に入ってきた。
気が弱い、力が弱い人間は、彼らの格好の獲物だった。
髭の男が捕まえているのは、この店の店長。
腹に手を押さえ、かすかな呻き声を上げている。
痩せた男の方が捕まえている少年は恐怖から口が震え歯がカチカチと鳴っている。
「ぼ…僕は本当に急ぐので…」
少年は思い切って、また同じ事を言った。
思い切っても、実際には痩せた男にギリギリ届く程度の声にしかならなかった。
「ふーん」
全く興味無さげな反応に見えた。

「ウッッ…」
少年が股間を押さえ蹲った。
痩せた男が少年の、格闘技では「金的」と言われる素人でも大抵の人間が知ってる、急所に蹴りを放ったのだった。
「黙れ。俺らが虐めてると思われんだろーが。」
痩せた男が胸倉を掴み、只でさえ萎縮している少年にさらに凄んだ。

目の前で行われている光景にラルフは我慢がならなくなった。
無論、2人以外の店の中の僅かな人間は皆、良い気分では無かった。
ラルフは痩せた男の肩に手を置くと
「お嬢ちゃん、ここはダンディーに飯食ったりコーヒー飲んだりする場所だ。乱暴はよしな。」
そう言って、痩せた男がポケットに隠していたバタフライナイフを指差し
「それから危ないオモチャは置いとけ。」
「きゃんゆーすぴーくじゃぱにーず?」
痩せた男は悪びれる様子も無く、たどたどしい英語を話した。

「日本語の発音とかは結構うめーがよ…
お嬢ちゃんとお坊ちゃんの区別もつかねーのか!?」
髭の男はそう言った瞬間、スタンガンを持った右手をラルフに向けて放った。

バリバリ!かビリビリ!かビィィィツ!か発音し辛い音が鳴った。
髭の男は手応えを感じ口元が綻んだ。
口元が綻んだのはもう一人居た。
「ピカ○ュウの10万ボルトの2倍っても大した事無いネェ。」
「ピ…ピカ○ュウ?」
笑みを浮かべながらスタンガンを左手で受け止めたラルフは、髭の男の言葉を無視し右手で髭の男の肩を掴んで引っ張り、捕まっていた店長を引き離した。

「俺らの仕事場じゃあ、てめぇらみてえな華奢な体の奴を嬢ちゃんつーんだよ!!」
その言葉と共に、引っ張った髭の男の頭に体重を乗せて勢い良く額を叩き込んだ。
ごんっ。
鈍い音がした。
直後に、けたたましい音をたて扉にぶつかった。
入り口から外に吹っ飛ばされ、髭の男は頭を抱えて呻いている。
その頭から血が少し滲み出ていた。

「や…野郎!このガキがどうなってもいいのか!」
意外な事態に動揺した、痩せた男が少年の首にナイフを突き付ける。
「一時の快楽に任せて後先考えず、確実に自分より弱い相手のみ襲う。それも恨みも罪も無い者に向かって。あなたは戦士じゃ無いわ。」
座って様子を観察していたレオナがいつの間にか立ち上がっていて、痩せた男を見下す様に呟いた。
引きつった笑い顔に怒りの色を浮かべ、少年をレオナに向け突き飛ばすと
「戦士なんざなりたくもねーよ!!クソアマが!!」
そう叫びバタフライナイフで彼女に切り掛かった。

痩せた男は、レオナ目掛け突っ込む少年を彼女が受け止めた瞬間に生じる隙に切ってやろうと思っていた。
切る箇所については何も考えて無かった。
脅す事はよくあるが、戦う経験は無いに等しかったのだ。

しゅっ。
鮮血が飛び散ると云う痩せた男の予想は大外れだった。
レオナは少年を右手で横に持ち、左手で作った手刀でナイフの刃を切り落としていた。
「ひ…」
「ここは引き下がるか立ち向かうかよ。私はどちらでも構わないわ。」
静かな声だった。
手を出したら今度は自分がナイフと同じ運命になる。
痩せた男は店長と少年の感じた2人分の恐怖を感じた。
外に出て髭の男の方に逃げ出そうと走った。
扉を開けて店を出た。
少し安心感が戻った。

「甘ったれるなよ。社会出たら、こんな程度の仕置きじゃ済まないぜ。」
共に外に出たクラークに、台詞と共に両肩を掴まれた時、少しの安心感は消え、心は恐怖のみに囚われた。
しゅうううん。
両耳から空気を裂く様な音が聞こえる。
掴まれた時に頭上に放り投げられたのだ。
空を飛んでいるという感触より体を支える所が無い恐怖、投げた大男が小さく見える位の高さに居る恐怖が心臓を締め付けた。

どすっ。
人の体温の感触。
助かった。
そう認識すると涙が浮かんできた。
下に相棒の髭の男が居る事に気付くのに3秒ほどかかった。

「か…過剰防衛になったらどうしましょう…?」
「いーの。いーの。こっちは20万ボルト受けたんだぜ?悪いのはあっちだろ?ま、日本の法律は詳しく知らねーけどさ。」
驚いている店長にラルフは笑顔で答えた。


ザ・キング・オブ・グラップラー第9回 投稿者:睦月  投稿日:10月21日(月)14時10分45秒

ラルフが店長と話している隙に髭の生えた男は、携帯電話を掛けていた。
ぼそぼそと話していて、その会話を聞き取れた者は話してる本人と上に乗っかっている痩せた男だけだった。
「てめぇら…仲間呼んだからよ…礼はたっぷりするぜ…」
頭突きを受け吹っ飛んだ衝撃から来る痛みを堪えながら、見下ろしてる敵達に精一杯脅しをかけた。

「日頃の行いが悪いのか、運も無い様だな…」
クラークは怯えるどころか、呆れる様なむしろ哀れみを持って口を開いた。
自分で彼らの仲間の相手をするなら、哀れみは感じないが。
まあもっと罰が欲しいなら、と台詞の続きは言わないで置いた。

「コイツらっすか?自称正義っぽい馬鹿?」
「無視してりゃ良いのによ!」
足をふら付かせながら、起き上がる髭の男に柄の悪い男が話し掛けた。
手には上品なハンドバッグと明らかに持ち主が他人と分かる物。
呼ばれる前、彼がひったくった物だった。
「一対一じゃ強くても全員で囲んで一斉にボコりゃ楽勝でしょ!」
そういう彼の後ろには、顔はそれぞれ違うものの、また柄の悪そうな青年10人程が居た。
「この金髪のお兄さんに、日本名物のリンチをプレゼントしちゃいますか!」

「俺達の待ち合わせの相手は…」
クラークの呟きの意味はすぐに男達にも判った。
ぼうっ。
「うあっちぃ!」
青年達の一人が足元に熱さを感じて叫び声を挙げた。
見ると足に付いた火が体中に燃え移っている。

「人様のものをひったくった罰じゃ!バッグは持ち主に届けて置く。」
声の方を見ると、髭の生えた男の様に不精髭で無く、鼻の下や顎を隠す程の髭を蓄えた歳50程の男。
横には高校生ほどの青年が2人。

「やんのか?ゴラァ!!」
火を浴びた男以外の柄の悪い一団が、新たに現れた3人に一斉に飛び掛った。
先程言っていた理論では確実に倒せる方法を取ったのだ。
人間の手足は限られている。
10人位で囲んで同時に攻撃すれば、対処しきれまい。
そう踏んでの常套手段だった。

「ほおりゃああ!!」
囲まれた3人はそれぞれ120度ずつ別の方向に向け跳ぶや否や、喉を震わせて叫び、手を斜めに振り上げた。
その内の2人の手から炎が出て曲線を描いている。
柄の悪い連中と炎や拳がぶつかり音を立て、ついで連中は攻撃を受けた体勢のまま地面に当たった。
「百式、鬼焼き。こういう使い方も出来る。」
かかって来る相手の居ない事を確認した髭の中年の男は、1人炎を出せなかった連れの青年に技の説明をした。
「成る程。メモメモ…」
理解してから、青年は通っている学校の手帳にメモを取る。

「鬼教官と平気で友達付き合いが出来る草薙柴舟、その息子京とその弟子真吾だ。」
ラルフがクラークの呟きの続きを言った。
髭を蓄えた中年、草薙柴舟はラルフに話しかける。
「範馬勇次郎にやられたと聞いたから心配しとったが、その必要は無かったか。」
「1ヶ月経ったし、もう元気っすよ。溜まった書類仕事を病院でやらされたのは下手な任務より辛かったけど。勇次郎との事は店の中で話しますか。」
「範馬って…刃牙君のお父さん…!?」

「過剰防衛じゃねぇか!訴えるぞ!」
意識のある一人がラルフたちの背に向かって声をあげ、真吾の台詞を掻き消した。
「炎を出されたと言う気か?もし信じても一部始終言えば罰を受けるのはお主等じゃ。」

3人は興味を持っていた。
中でも真吾は今朝、勇次郎の息子刃牙と闘い、彼の強さを肌身に感じている。
彼の父はどんな人間で、どれだけ強いのか。
「範馬勇次郎の話は仕事でも格闘家関係でも耳にしてたんだが…」
珍しく表情に影を落としながら、ラルフが口を開いた。
(続きます)



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