近況報告7(略して恥ずかしい話)

板垣恵介トークショー(主観的報告)

(99/9/1)
 ずいぶん前の話になってしまいましたが、トークショーへ言ったときの主観的な感想などを…。

 トークショーはサンシャインの噴水広場で行われた。
 サンシャインの噴水広場は色々なイベントに使われている。私が以前そこで見たイベントは、桑島法子と豊島真千子が「Girls BE…」と言う「Boys BE…」の姉妹版の企画のものだった。念のために言っておくが、本来はパソコン関連のものを私は買いに行ったのだが、友人に連れられてイベントを見る羽目になったのだ。でも、私のほうが連れていった友人より楽しんでいたような気がする。
 当然ながら、桑島法子&豊島真千子のイベントと板垣恵介のイベントでは客層が違う。女性がほとんどいないのと、男性はごつい人が多い、気がする。
 ちなみにその日の私は実家から家に帰る途中だったので、やたら荷物を持っていてその上途中で買い物までして、夜逃げしている最中のような格好だ。

 この日は午前が「水島新司トークショー」で午後からが「板垣恵介トークショー」と言う構成なのだが、司会の人も客層の違いが気になるのか「今度は黒い人が多いですね」などと言う。「水島新司トークショー」の方は見ていないのだけど、それなりに女性ファンとかもいそうですし、客層が違うのも納得がいく。
「黒い人」というのは「黒い」服を着ている人が多いと言う意味か、色が「黒い」人が多いのか、どっちも多そうだったのでいまいちハッキリしなかった。
 まあ、とにかく板垣先生も黒い人だった。
 コミックスの写真などで見たことがあるのだが、実物の第一印象は「意外と細い人」だった。
 チャンピオンの作者の一言などで、体重を全盛期の状態ににする、などと書いているので、もう少し太い人かマッチョな人かと思っていたのだが、コミックスの写真よりも細い感じだ。
 でも、よく考えて見ると板垣先生は元ボクサーなので、筋骨隆々のタイプと言うよりは、スマートな筋肉質と言うタイプなのではないだろうか。
 とにかく、私が思っていたよりは細い人だった。

 会場でのトークショーは進むのだが、お客さんのノリがいまいちよくない。板垣先生も、「大丈夫? 話しわかりますか?」と言ったような感じでお客さんに確認を求める。
 始めてこう言うトークショーを見たのだが、まあ、いきなり会場大爆笑というようなノリを期待するほうがムリなのかもしれない。
 板垣先生の話し方はなかなか丁寧な感じで、自分の話がちゃんと相手に伝わっているのかどうかを確認しながら話しているような感じだ。物事にこだわる人なのかもしれない。

 司会者を相手に漫画家になったきっかけを話すのだが、やはり客の反応はいまいち鈍い。
 ちなみに私はかなり熱心に、うんうん頷きながら話を聞いていてでかい荷物を背負った格好といいかなりやばい人の雰囲気をかもし出していたに違いない。
 話は刃牙の連載についてになり、連載中の人気はあまり伸びなかったのだが、コミックスの1巻が出てみるとそれがあっという間に売り切れて、その時は編集部に「ざまー見ろ」って思いましたよ。と綺麗な落ちがついた。
 当時の事を思い出したのか、睨みつけるような目で「『ざまー見ろ』って思いましたよ」と会場を見渡す板垣先生。本来ならばここで会場大爆笑なのだろうが、思いっきりみんな引いてしまう。

 静まってしまった会場をごまかすかのように司会の人が刃牙の登場人物モデルについて話しを振る。刃牙に登場する人たちはモデルが居ることが多いのだが、会場の人間もこの話題に再び熱気を取り戻す。
 が、勇次郎のモデルはいないと言う板垣先生の発言にいきなり会場の空気は冷める。
 今更、顔のモデルは「マット・デュロン」と言われても古い役者の顔は浮かんでこないので、やっぱり会場は盛り上がらない。
 と、そこで今まであまりしゃべらなかった方の司会(司会者は二人いた)の人が「独歩のモデルは?」と言ってきた。
 我々刃牙ファンの間では愚地独歩のモデルはどう見ても大山倍達と言うのが、定説なのだが「ワカっとらんな〜、あのアナウンサーも」と言った感じが会場内に流れる。
 ところが板垣先生の態度がはっきりしない。
「よく『マス・大山』だと言われるんですよね。でも、独歩って苦境に陥ったり負けたりするじゃないですか、それで極真の人たちから『大山倍達と愚地独歩は別人であると明文化しろ』と脅されたことがありまして」
 ここで会場大爆笑。初めて会場の者の心が一体化した。
 それはともかく話を聞いていると、どうも板垣先生は愚地独歩のモデルを「空手バカ一代」の「大山倍達」に求めているような気がする。この時点ではハッキリしなかったのだが、後の板垣先生の書いた「格闘士烈伝」を読むとそれがよくわかった。

 一度、爆笑してからは会場の雰囲気は良くなりリラックスした感じになる。
 板垣先生の格闘描写についてや、刃牙の展開についての話の後に、会場のお客さんにも質問をしてもらおうと言うことになる。

 司会の人がキャラクターのモデルなんかについての質問と言ったせいで何となくモデルの質問ばかりが続くのだか、ジャックのモデルがダイナマイト・キッドだったりとなかなかおもしろい内容だった。
 ちなみに私は忘れそうなことはメモしようと思ったのだが紙がすぐに出てこなくて腕にサインペンで書いていた。家に帰ると、汗で文字がにじんで読めなくなるのだが(笑)

 柴千春についての板垣先生のしゃべりは何か歯切れが悪い。
 何かを考え考えしゃべっているような感じだ。客観的報告でまとめているが、あれが本当に板垣先生の言いたかったことであるのか自身がもてない。
 「オレはやればできるんだ」と言っているだけの人に対する板垣先生の「オレはやったんだ」と言う自負心を私は感じた。そうなると、柴千春は口先だけの人に対しての応援メッセージを兼ねていると言うことなのだろうか。
 結局、なにかぼやけたまま千春の話は終わった。

 この辺で私は板垣先生に質問をしなくてはならないと思い始める。せっかく会場まで来たのだし、ファンとして何か話を聞きたい。だが、何を聞くべきか? 一発で受けの取れる話題は何か?(←この時点で方向性がおかしいのだが、当時は気がついていなかった)

 矢沢永吉さんの話が出る。以前、ビックコミック・スピリッツで読み切り漫画「MARIA」を描いていた板垣先生はそこで矢沢永吉さんと対談をしていた。
 メイキャッパーの作者コメントでもそのことに触れているが、矢沢永吉さんは板垣先生の目標なのだ。
 自衛官として暮らしても、どんなに階級が上がっても所詮公務員、給料はたかが知れていてアパートで奥さんと子供を抱えて暮らすのが関の山だ。と元自衛官である板垣先生の話にはリアリティーがある。しかも、板垣先生は制服組では無いだろうし、出世すら望めないだろう。根津進司「逃げたい やめたい 自衛隊」によると一般大学出身の幹部ですら定年前に1佐にしてもらうのがやっとだそうだ。出世の一点だけとっても、ガンダムのシャアに負ける。
 板垣先生はそう言う未来が見えちゃって、そこから「成り上がり」たくて自分の地上最強を目指したのだと思う。地上最強の格闘漫画家だ。

 と、言うことを考えながらも天内の事を質問しようと決める。
 モデルと言うより、彼の生死についてを………

 ムエタイの扱いが悪いという話が出る。
 板垣先生もこの手の話は毎回聞かれているようだ、「このことは一度はっきりさせておきましょう」と決意を新たに語り出す。
 強いからこそ、登場人物の強さを引き出すのに有効だという論法に会場の誰もが納得する。
 だが、それにしてもその扱いは……と言う感情は消え去らなかったのだ。

 ここで、私に質問が許されたので天内のモデルが宝塚の人ではないのかと、生死の判別を聞く。
 緊張したので、ちょっと声が裏返ってしまった。
 ここで板垣先生は少し驚いて、天内のモデルをなぜそう思ったの? と聞いてくる。インターネットで噂になっていると答えたのだが、この辺の気になると確認せずにいられない好奇心の強さを板垣先生に感じる。
 それはともかく、天内の生死についてを語るのだが、本人も分からないと言う答えが返ってくる。
 答えが意外な物と自覚しているのか、途中で「わかります?」と何度も確認してくる。
 まあ多少とは言え同人で創作をしている者にはよくわかる事だ。キャラクターが作者の思惑とは違うことをしでかすのは、ごくまれではあるが確実に存在する!

 モデルについてだが、なぜかここで高橋留美子さんの名前が出てきてビックリする。確か、高橋留美子さんは劇画塾(だっけ?)の出身らしいのでその関係で板垣先生とは友人なのかも知れない。
 何はともあれそこそこ会場で笑いが起きたので良かったと思う(←だから、考えがおかしいって、当時の俺)

 私の後に質問をしたのは、なぜか女の子だ。小学生高学年ぐらいという感じで、違和感バリバリ。イスに座っていたところを見ると(会場にはパイプイスが並べてありそれに座れない人は立ち見だ。ちなみに、私も立ち見だった)早い時間からいたことがわかるが、水島新司トークショーの時から座ったまんまではないのかと思ってしまう。
 会場はこの異質なお客さんに注目する中で彼女の質問は発せられた。
「なんで、先生はそんなに日に焼けているんですか?」
 子供っぽい、やや舌足らずな話し方に会場が違和感に包まれる。
 会場の男達は「なぜ、君はここにいるの?」と言う思いで一体化した。と、思う。

 そう言う感じでいくつか質問がかわされる。
 そなんなかで、「板垣先生にとって強さとはどんなものですか?」と言う質問が出てくる。
「『強さ』ですか。う〜〜〜ん」と板垣先生はお客さんの前で真剣に考え始めている。オイオイ、それは今考えることかい!? と思うのだが、口先だけの言葉ではなく、ちゃんと自分の発言に責任を持とうという考えの現れなのかも知れない。
 どっちにしても、トークショーの途中で考えられても司会の人が困るだけで、少しオロオロしている。
「強さ………」と板垣先生は考え考え話すのだが、やっぱりスッキリした答えは返ってこない。ただ、闘わないのが強さではなく、相手を叩きのめす強さを描いていこうとしていると言うような発言だけはしてくれた。


 最後に今後の展開についての話が聞けた。
 当時は刃牙外伝をやっているところだが、それも後2回ほどで完結するらしい。編集担当者らしき人に聞いているのがチョット微笑ましい。雑誌に載るのと原稿を描いているのとではタイムラグが生じるらしいので、かえって作者にはわからないらしい。

 二部では「闘う場所にしてもこういう人の多い場所(と会場をさす)で闘うことになると思います」との発言が飛び出す。この時の板垣先生の脳裏には暴れまくる男にぶちのめされる一般市民の姿が浮かんでいたに違いない。と、私は思った。
続いての「 同じところばかり描いていてもアシスタントの練習にもならないので」と言う発言にちょっと苦笑が起きる。聞いた話だが、二部に入ってから資料も無しに、へんてこな牢屋やミサイルサイト、ジープ、潜水艦を描かされていてアシスタントは泣いているそうだ。

 どっちにしろ次の展開は「人が死ぬ」「5対5の闘いをやるかもしれない」と言うものとわかり、期待に胸を膨らましながら私は家路に急ぐのだった。
 この感動をリアルタイムでホームページに上げようと………。
 主観的感想の方は一年ぐらいタイムラグが生じましたが(爆)



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